• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H04N
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H04N
管理番号 1379861
異議申立番号 異議2021-700414  
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-12-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-04-30 
確定日 2021-11-10 
異議申立件数
事件の表示 特許第6781208号発明「双方向メディアガイダンスアプリケーションを使用してオーディオコンテンツを識別するシステムおよび方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6781208号の請求項1?14に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6781208号の請求項1?14に係る特許についての出願は、2010年(平成22年)9月27日(パリ条約による優先権主張 2009年9月30日 米国、2009年9月30日 米国、2009年9月30日 米国)を国際出願日とする出願である特願2012-532220号の一部が平成27年3月27日に新たな特許出願(特願2015-65809号)とされ、当該特願2015-65809号の一部が平成29年2月20日に新たな特許出願(特願2017-28904号)とされ、当該特願2017-28904号の一部を平成30年7月9日に新たな特許出願としたものであって、令和2年10月19日にその特許権の設定登録がされ、同年11月4日に特許掲載公報が発行された。
その特許について、令和3年4月30日に特許異議申立人松田純一により特許異議の申立てがされた。
当審は、令和3年6月25日付けで取消理由を通知し、それに対し、特許権者は、令和3年9月29日に意見書を提出した。

2 本件発明
特許第6781208号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?14に係る発明(以下、「本件発明1」?「本件発明14」という。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1?14に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
なお、符号(A1)?(O1)は、説明のために当審で付したものであり、以下、各構成要件を「構成A1」?「構成O1」という。

(本件発明1)【請求項1】
(A1)オーディオアセット情報記憶システムであって、
前記システムは、
(B1)オーディオアセットと関連付けられるオーディオアセット情報を記憶するように構成されるデータストアであって、前記オーディオアセット情報は、前記オーディオアセットを埋め込んでいるビデオ番組と関連付けられるビデオ番組情報を含む、データストアと、
(C1)i)前記オーディオアセットを取得するための選択可能なオプションとともにユーザ機器を介して表示するために前記オーディオアセットと関連付けられる前記オーディオアセット情報を提供することであって、前記オーディオアセット情報の少なくとも一部分は、前記オーディオアセットの特徴と一致するオーディオ選好データを前記ユーザ機器のユーザプロファイルが含んでいることを決定することに応じて提供される、ことと、ii)前記選択可能なオプションを介して前記オーディオアセットを取得するための要求を受信することと、iii)前記オーディオアセットを取得するための前記要求を受信したことに応じて、前記オーディオアセットを前記ユーザ機器に提供することとを実行するように構成されるプロセッサと
(D1)を備える、システム。

(本件発明2)【請求項2】
(E1)前記データストアは、第1のデータストアであり、
(F1)前記オーディオアセット情報は、オーディオアセットシグネチャと、前記第1のデータストアとは異なる第2のデータストアの中のメディアコンテンツに対する識別子と、タイトルと、アーティストと、アルバムと、アルバムアートと、オーディオアセットのジャンルと、オーディオアセットの種類と、歌詞と、再生時間とのうちの少なくとも1つを含む、
(G1)請求項1に記載のシステム。

(本件発明3)【請求項3】
(H1)前記ビデオ番組情報は、番組タイトルと、ビデオ番組のジャンルと、ビデオ番組の種類と、エピソードと、シリーズと、放送スケジュールと、オーディオアセットの場所と、オーディオアセットの開始時間と、オーディオアセットの終了時間と、歌詞と、オーディオテキストと、オーディオアセット品質とのうちの少なくとも1つを含む、
(G1)請求項1に記載のシステム。

(本件発明4)【請求項4】
(A1)オーディオアセット情報記憶システムであって、
前記システムは、
(B1)オーディオアセットと関連付けられるオーディオアセット情報を記憶するように構成されるデータストアであって、前記オーディオアセット情報は、前記オーディオアセットを埋め込んでいるビデオ番組と関連付けられるビデオ番組情報を含む、データストアと、
(I1)i)前記オーディオアセットを取得するための選択可能なオプションとともにユーザ機器を介して表示するために前記オーディオアセットと関連付けられる前記オーディオアセット情報を提供することと、ii)前記選択可能なオプションを介して前記オーディオアセットを取得するための要求を受信することと、iii)前記オーディオアセットを取得するための前記要求を受信したことに応じて、前記オーディオアセットを前記ユーザ機器に提供することとを実行するように構成されるプロセッサと
を備え、
(J1)前記データストアは、遠隔データストアであり、
(K1)前記プロセッサは、さらに、i)複数のユーザ機器データストアを監視することと、ii)前記複数のユーザ機器データストアに記憶されていない、前記遠隔データストアに記憶されたオーディオアセット情報を識別することと、iii)前記識別されたオーディオアセット情報を前記複数のユーザ機器データストアに提供することとを実行するように構成される、
(D1)システム。

(本件発明5)【請求項5】
(L1)前記オーディオアセット情報の少なくとも一部分は、前記オーディオアセットを埋め込んでいる前記ビデオ番組を表示または記録するように前記ユーザ機器が設定されていることを決定することに応じて提供される、
(G1)請求項1に記載のシステム。

(本件発明6)【請求項6】
(M1)前記特徴は、前記オーディオアセット情報に含まれる、
(G1)請求項1に記載のシステム。

(本件発明7)【請求項7】
(A1)オーディオアセット情報記憶システムであって、
前記システムは、
(B1)オーディオアセットと関連付けられるオーディオアセット情報を記憶するように構成されるデータストアであって、前記オーディオアセット情報は、前記オーディオアセットを埋め込んでいるビデオ番組と関連付けられるビデオ番組情報を含む、データストアと、
(I1)i)前記オーディオアセットを取得するための選択可能なオプションとともにユーザ機器を介して表示するために前記オーディオアセットと関連付けられる前記オーディオアセット情報を提供することと、ii)前記選択可能なオプションを介して前記オーディオアセットを取得するための要求を受信することと、iii)前記オーディオアセットを取得するための前記要求を受信したことに応じて、前記オーディオアセットを前記ユーザ機器に提供することとを実行するように構成されるプロセッサと
を備え、
(N1)前記オーディオアセット情報の少なくとも一部分は、前記オーディオアセットを埋め込んでいる前記ビデオ番組の特徴と一致するビデオ選好データを前記ユーザ機器のユーザプロファイルが含んでいることを決定することに応じて提供され、
(O1)前記特徴は、前記ビデオ番組情報に含まれる、
(D1)システム。

(本件発明8)【請求項8】
(A2)オーディオアセット情報を提供する方法であって、前記方法は、オーディオアセット情報記憶システムによって実行され、前記オーディオアセット情報記憶システムは、プロセッサと、データストアとを備え、
前記方法は、
(B2)前記プロセッサにより、オーディオアセットと関連付けられるオーディオアセット情報を前記データストアに記憶することであって、前記オーディオアセット情報は、前記オーディオアセットを埋め込んでいるビデオ番組と関連付けられるビデオ番組情報を含む、ことと、
(C2)前記プロセッサにより、前記オーディオアセットを取得するための選択可能なオプションとともにユーザ機器を介して表示するために前記オーディオアセットと関連付けられる前記オーディオアセット情報を提供することであって、前記オーディオアセット情報の少なくとも一部分は、前記オーディオアセットの特徴と一致するオーディオ選好データを前記ユーザ機器のユーザプロファイルが含んでいることを決定することに応じて提供される、ことと、
(C3)前記プロセッサにより、前記選択可能なオプションを介して前記オーディオアセットを取得するための要求を受信することと、
(C4)前記プロセッサにより、前記オーディオアセットを取得するための前記要求を受信したことに応じて、前記オーディオアセットを前記ユーザ機器に提供することと
(D2)を含む、方法。

(本件発明9)【請求項9】
(E1)前記データストアは、第1のデータストアであり、
(F1)前記オーディオアセット情報は、オーディオアセットシグネチャと、前記第1のデータストアとは異なる第2のデータストアの中のメディアコンテンツに対する識別子と、タイトルと、アーティストと、アルバムと、アルバムアートと、オーディオアセットのジャンルと、オーディオアセットの種類と、歌詞と、再生時間とのうちの少なくとも1つを含む、
(G2)請求項8に記載の方法。

(本件発明10)【請求項10】
(H1)前記ビデオ番組情報は、番組タイトルと、ビデオ番組のジャンルと、ビデオ番組の種類と、エピソードと、シリーズと、放送スケジュールと、オーディオアセットの場所と、オーディオアセットの開始時間と、オーディオアセットの終了時間と、歌詞と、オーディオテキストと、オーディオアセット品質とのうちの少なくとも1つを含む、
(G2)請求項8に記載の方法。

(本件発明11)【請求項11】
(A2)オーディオアセット情報を提供する方法であって、前記方法は、オーディオアセット情報記憶システムによって実行され、前記オーディオアセット情報記憶システムは、プロセッサと、データストアとを備え、
前記方法は、
(B2)前記プロセッサにより、オーディオアセットと関連付けられるオーディオアセット情報を前記データストアに記憶することであって、前記オーディオアセット情報は、前記オーディオアセットを埋め込んでいるビデオ番組と関連付けられるビデオ番組情報を含む、ことと、
(I2)前記プロセッサにより、前記オーディオアセットを取得するための選択可能なオプションとともにユーザ機器を介して表示するために前記オーディオアセットと関連付けられる前記オーディオアセット情報を提供することと、
(C3)前記プロセッサにより、前記選択可能なオプションを介して前記オーディオアセットを取得するための要求を受信することと、
(C4)前記プロセッサにより、前記オーディオアセットを取得するための前記要求を受信したことに応じて、前記オーディオアセットを前記ユーザ機器に提供することと
を含み、
(J1)前記データストアは、遠隔データストアであり、
(K2)前記方法は、
前記プロセッサにより、複数のユーザ機器データストアを監視することと、
(K3)前記プロセッサにより、前記複数のユーザ機器データストアに記憶されていない、前記遠隔データストアに記憶されたオーディオアセット情報を識別することと、
(K4)前記プロセッサにより、前記識別されたオーディオアセット情報を前記複数のユーザ機器データストアに提供することと
(D2)をさらに含む、方法。

(本件発明12)【請求項12】
(L2)前記オーディオアセット情報の少なくとも一部分は、前記プロセッサにより、前記オーディオアセットを埋め込んでいる前記ビデオ番組を表示または記録するように前記ユーザ機器が設定されていることを決定することに応じて提供される、
(G2)請求項8に記載の方法。

(本件発明13)【請求項13】
(M1)前記特徴は、前記オーディオアセット情報に含まれる、
(G2)請求項8に記載の方法。

(本件発明14)【請求項14】
(A2)オーディオアセット情報を提供する方法であって、前記方法は、オーディオアセット情報記憶システムによって実行され、前記オーディオアセット情報記憶システムは、プロセッサと、データストアとを備え、
前記方法は、
(B2)前記プロセッサにより、オーディオアセットと関連付けられるオーディオアセット情報を前記データストアに記憶することであって、前記オーディオアセット情報は、前記オーディオアセットを埋め込んでいるビデオ番組と関連付けられるビデオ番組情報を含む、ことと、
(I2)前記プロセッサにより、前記オーディオアセットを取得するための選択可能なオプションとともにユーザ機器を介して表示するために前記オーディオアセットと関連付けられる前記オーディオアセット情報を提供することと、
(C3)前記プロセッサにより、前記選択可能なオプションを介して前記オーディオアセットを取得するための要求を受信することと、
(C4)前記プロセッサにより、前記オーディオアセットを取得するための前記要求を受信したことに応じて、前記オーディオアセットを前記ユーザ機器に提供することと
を含み、
(N2)前記オーディオアセット情報の少なくとも一部分は、前記プロセッサにより、前記オーディオアセットを埋め込んでいる前記ビデオ番組の特徴と一致するビデオ選好データを前記ユーザ機器のユーザプロファイルが含んでいることを決定することに応じて提供され、
(O1)前記特徴は、前記ビデオ番組情報に含まれる、
(D2)方法。

3 取消理由の概要
当審において、請求項1?14に係る特許に対して通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

(1)請求項1?3、5?10、12?14に係る発明は甲第1号証(特開2001-350480号公報)に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2項の規定により取り消されるべきものである。

(2)請求項1?3、5?10、12?14に係る発明は甲第1号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2項の規定により取り消されるべきものである。

(3)請求項4、11に係る発明は甲第1号証及び甲第2号証(国際公開第2007/021038号)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2項の規定により取り消されるべきものである。

(4)請求項5、12に係る発明は甲第1号証及び甲第3号証(特開2006-340396号公報)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2項の規定により取り消されるべきものである。

4 甲第1号証
(1)記載事項
甲第1号証には、次の記載がある。なお、以降の下線は説明のために付されたものものである。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本願発明は、通信網を介して音楽を配信する音楽配信システム、並びに、この音楽配信システムにおける音楽配信方法及び、音楽発注装置に関するものである。」

「【0010】インターネット等のネットワーク1に、ユーザ端末2、音楽配信装置3、放送局端末4、配信専用端末5が接続される。ユーザ端末2は、パソコンにより構成され、ユーザの操作により発注データを音楽配信装置3に送信する。配信専用端末5は、コンビニ等に置かれた、音楽配信の発注及び受信専用のコンピュータである。また、ユーザ端末として携帯電話、PHS等の移動電話6を使用することもできる。この場合は、中継局7を介してネットワーク1に接続される。」

「【0012】音楽配信装置3は、ネットワーク1に接続される送受信部9、CPU等により構成される処理部10、記憶部11から構成される。記憶部11は、番組DB12、検索DB13、曲DB14、発注履歴DB15、専用端末DB16、発注者DB17を含む。各DBの構造の詳細については後述する。図2は、図1のシステムにおける、番組DB12、検索DB13、曲DB14の構造と、各DB12?14と発注者、配信先との間のデータの流れを示す。」

「【0016】配信要求データ種別は、配信される曲データの種別、配信された曲データを記録する媒体の種別などである。曲データの種別としては、フルコーラス、試聴、カラオケ、歌詞などがある。媒体の識別としては、MD、CD-Rなどがある。その他のデータについては後述する。番組DB12は、A放送局の番組表19、B放送局の番組表20、C放送局の番組表21からなる。つまり、番組DB12は、放送局データと放送時間データと曲コードを備える。なお、番組DB12は、音楽配信装置3が持つ代わりに、各放送局端末4が自局の番組表19?21の1つを持つようにしても良い。この場合も、各番組表19?21全体により番組DB12が構成される。
【0017】音楽配信装置3は、ユーザ端末2から発注データ18を受信すると、そこに含まれる放送局名データ、放送時刻データに従って、番組DB12から曲コードを検索する。放送局名、放送時刻に該当する曲コードが見つかると、曲コードを用いて曲DB14を検索する。曲DB14は、曲コード、曲データ、試聴データ、曲情報等を記憶している。曲データは、曲をディジタル信号化したデータであり、レコード配給会社等から提供されるものである。試聴データは、曲の内容の一部を取り出したものである。曲情報は、曲名、発売日、歌手名、歌手に関する情報、ジャケットの写真又は絵などの曲に関する情報である。」

「【0021】図3は、ユーザ端末の構成を示す。ユーザ端末2は、パソコンにより構成され、CPU等から構成される処理部25、記憶部26、キーボード27、ディスプレイ28、スピーカ29等を具備する。記憶部26には、音楽発注及び配信音楽受信のためのプログラムが記憶されており、処理部25はこのプログラムに従って処理を行う。
【0022】ユーザ端末2に、テレビ受像機23、ビデオデッキ24が接続される。なお、テレビ受像機23の代わりにラジオ受信機等、ビデオデッキ24の代わりにMDデッキ等を使用する場合もある。以下に、発注及び配信の具体的処理を、実施例ごとに説明する。
(実施例1)実施例1は、ユーザが発注した音楽が自分のユーザ端末に配信される例である。
【0023】ユーザは、テレビ受像機23(図3)で放送を視聴するときに、ユーザ端末2の音楽配信ソフトを立ち上げておく。図4は、本例の音楽配信の処理を示す。図5は、音楽配信ソフトを立ち上げたときに、ユーザ端末2のディスプレイ28に表示される音楽発注画面30を示す。音楽発注画面30には、放送局名を入力する枠31、放送時刻を入力する枠32、試聴ボタン33、発注ボタン34が表示される。放送局名入力枠31には、現在テレビ受像機23が受信している放送局名が表示され、放送時刻枠32には現在の時刻が表示される。なお、放送局名は、テレビ受像機23から送られてくるチャネル数と、ユーザ端末2にセットされている地域情報から得ることができる。
【0024】ユーザは、現在放送されている曲が欲しいと思ったとき、試聴ボタン33をクリックする。すると、放送局名データと放送時刻データから発注データ18が作成されて、ネットワーク1を経由して音楽配信装置3に送信される(S1、図4)。音楽配信装置3では、処理部10により、記憶部11の番組DB12から、発注データ18に含まれる放送局名と放送時刻に該当する曲コードを検索する。曲コードが得られると、曲DB14から曲データを抽出する(S2)。これらのデータの内容等については、図2を用いて説明済みであるので、それを参照されたい。本例では、試聴データが要求されているので、試聴データ、曲情報等をユーザ端末2に送信する(S3)。
【0025】ユーザ端末2では、データを受信すると、試聴データを再生し、確認画面を表示する(S4)。図6は、確認画面を示す。確認画面35には、放送局名表示枠36、放送時間表示枠37、曲名表示枠38、歌手名表示枠39が表示され、それぞれに、音楽配信装置3が検索した曲の情報が表示される。また、OKボタン40、キャンセルボタン41が表示される。さらに、画面に「試聴中です」と表示がされて、スピーカ29から試聴データが再生されて出力される。
【0026】ユーザは、確認画面35と試聴曲から欲しい曲の発注がされたことを確認するとOKボタン40をクリックする。この確認作業により、ユーザは実際に配信予定の曲を確認してから発注をすることができ、発注ミスを防止することができる。また、希望の曲でなかった場合は、キャンセルボタン41をクリックする。ユーザ端末2から音楽配信装置3に、OK信号又はキャンセル信号が送信される(S5)。確認画面35では、「試聴中です」の表示に代えて「ダウンロード中です」の表示がされる。
【0027】音楽配信装置3では、ユーザ端末2からキャンセルデータを受信すると処理を終了する。OK信号を受信すると、曲データ、曲情報等を配信先に送信する(S6)。本例では、配信先の指定がされていないので、配信先のアドレスは発注データを送信したユーザ端末2のアドレスとなる。ユーザ端末2では、配信されてきた曲データ等をメモリに蓄積する(S7)。なお、曲データの最後にデータ解読のキーデータを付加して、曲データを最後までダウンロードしないと再生できないようにする。曲データ等のダウンロードが終了すると、ダウンロード終了信号が音楽配信装置3に送信される(S8)。」

「【0031】(変形例3)放送中には、放送局名と放送時刻をユーザ端末2に記憶させるだけとし、放送終了後に、記憶したデータを確認しながら試聴及び発注をすることができる。図7は、本例における音楽発注画面30を示す。図7については図5と異なる点についてのみ説明する。
【0032】本例では、試聴ボタン33、発注ボタン34と並んでメモボタン42が配置される。また、放送局名表示枠36の表示内容を切り替えるためのボタン43が隣接して配置される。ユーザは、放送を聴いていて、放送された曲が気に入れば、音楽発注画面30のメモボタン42をクリックする。これにより、放送局名データと放送時刻データが記憶部26(図3)に記憶される。この操作を繰り返し行えば、複数のデータが記憶部26に記憶される。ユーザが、放送終了後に、放送局名表示枠36の隣にある切替ボタン43をクリックすると、放送局名表示枠36と放送時刻表示枠37に、記憶されたデータが次々に表示されていく。この表示ごとに試聴ボタン33を押せば、前述の図4の処理が順次実行されて試聴可能となる。そこで気に入った曲を発注する。」

「【0058】本例によれば、ユーザが同じ曲を二重に発注することが防止できる。
(実施例8)音楽配信装置3は、ユーザの好みに合った曲が放送される予定であるときは、その情報をユーザに送信することにより、ユーザからの音楽の発注を推進することができる。
【0059】図18は音楽配信装置3の発注者DB17の構造を示す。発注者DB17には、予め、ユーザが登録した発注者ごとの好みの条件、例えば、歌手名、ジャンル等が記憶されている。なお、この発注者DB17は、発注者に対するアンケートにより作成しても良い。また、発注履歴DB15を調査することにより、発注者ごとの好みを推定して作成しても良い。
【0060】図19は、本例の音楽配信の処理を示す。各放送局において、新しい番組表19?21(図2)ができると、音楽配信装置3に送信される(S51)。音楽配信装置3は、新しい番組表19?21を受信すると、番組表19?21について、発注者DB17の各発注者ごとに好みの条件に合致する放送内容があるか否かを検索する(S52)。条件にあった番組を抽出すると、発注者のユーザ端末2に対して、放送を紹介するメールを送信する(S53)。ユーザは、受信した(S54)番組案内を見て、興味がある番組を視聴し、好みの曲があれば、前述の方法にて発注をする。」





(2)甲1発明1、甲1発明2
上記(1)の記載事項から、甲第1号証には、次の2つの発明(以下、「甲1発明1」及び「甲1発明2」という。)が記載されている。
なお、(a)?(n)は、説明のために付されたものであり、以下各構成を「構成a」?「構成n」という。
また、各構成の末尾の括弧内に、対応する明細書の記載箇所を示した。

〔甲1発明1〕
(a)音楽配信装置3であって、(【0012】)
(b)ネットワーク1に接続される送受信部9、CPU等により構成される処理部10、記憶部11から構成され、(【0012】)
(c)記憶部11は、番組DB12、検索DB13、曲DB14、発注履歴DB15、専用端末DB16、発注者DB17を含み、(【0012】)
(d)番組DB12は、放送局データと放送時間データと曲コードを備え、前記番組DB12における放送時間データは、曲コードに対応した放送開始時刻及び放送終了時刻のデータで構成され、(【0016】、【0012】、図2)
(e)曲DB14は、曲コード、曲データ、試聴データ、曲情報等を記憶しており、曲データは、曲をディジタル信号化したデータであり、曲情報は、曲名、発売日、歌手名、歌手に関する情報、ジャケットの写真又は絵などの曲に関する情報であり、(【0017】)
(f)ユーザ端末2のディスプレイ28に表示される音楽発注画面30には、現在テレビ受像機23が受信している放送局名、現在の時刻が表示され、(【0023】)
(g)ユーザは、現在放送されている曲が欲しいと思ったとき、試聴ボタン33をクリックすると、放送局名データと放送時刻データから発注データ18が作成されて、ネットワーク1を経由して音楽配信装置3に送信され、
音楽配信装置3では、処理部10により、記憶部11の番組DB12から、発注データ18に含まれる放送局名と放送時刻に該当する曲コードを検索し、曲コードが得られると、曲DB14から曲データを抽出し、試聴データが要求されているので、試聴データ、曲情報等をユーザ端末2に送信し、(【0024】)
(h)ユーザ端末2では、データを受信すると、試聴データを再生し、確認画面を表示し、確認画面35には、放送局名表示枠36、放送時間表示枠37、曲名表示枠38、歌手名表示枠39が表示され、それぞれに、音楽配信装置3が検索した曲の情報が表示され、また、OKボタン40、キャンセルボタン41が表示され、(【0025】)
(i)ユーザは、確認画面35と試聴曲から欲しい曲の発注がされたことを確認するとOKボタン40をクリックし、(【0026】)
(j)ユーザ端末2からOK信号を受信すると、曲データ、曲情報等をユーザ端末2に送信し、(【0026】、【0027】)
(k)発注者DB17には、予め、ユーザが登録した発注者ごとの好みの条件、例えば、歌手名、ジャンル等が記憶されており、(【0059】)
(l)新しい番組表19?21を受信すると、番組表19?21について、発注者DB17の各発注者ごとに好みの条件に合致する放送内容があるか否かを検索し、条件にあった番組を抽出すると、発注者のユーザ端末2に対して、放送を紹介するメールを送信し、(【0060】)
(m)ユーザは、受信した番組案内を見て、興味がある番組を視聴し、好みの曲があれば、前述の方法にて発注をする(【0060】)
(a)音楽配信装置3。

〔甲1発明2〕
(a)音楽配信装置3であって、(【0012】)
(b)ネットワーク1に接続される送受信部9、CPU等により構成される処理部10、記憶部11から構成され、(【0012】)
(c)記憶部11は、番組DB12、検索DB13、曲DB14、発注履歴DB15、専用端末DB16、発注者DB17を含み、(【0012】)
(d)番組DB12は、放送局データと放送時間データと曲コードを備え、前記番組DB12における放送時間データは、曲コードに対応した放送開始時刻及び放送終了時刻のデータで構成され、(【0016】、【0012】、図2)
(e)曲DB14は、曲コード、曲データ、試聴データ、曲情報等を記憶しており、曲データは、曲をディジタル信号化したデータであり、曲情報は、曲名、発売日、歌手名、歌手に関する情報、ジャケットの写真又は絵などの曲に関する情報であり、(【0017】)
(f)ユーザ端末2のディスプレイ28に表示される音楽発注画面30には、現在テレビ受像機23が受信している放送局名、現在の時刻が表示され、(【0023】)
(g)ユーザは、現在放送されている曲が欲しいと思ったとき、試聴ボタン33をクリックすると、放送局名データと放送時刻データから発注データ18が作成されて、ネットワーク1を経由して音楽配信装置3に送信され、
音楽配信装置3では、処理部10により、記憶部11の番組DB12から、発注データ18に含まれる放送局名と放送時刻に該当する曲コードを検索し、曲コードが得られると、曲DB14から曲データを抽出し、試聴データが要求されているので、試聴データ、曲情報等をユーザ端末2に送信し、(【0024】)
(h)ユーザ端末2では、データを受信すると、試聴データを再生し、確認画面を表示し、確認画面35には、放送局名表示枠36、放送時間表示枠37、曲名表示枠38、歌手名表示枠39が表示され、それぞれに、音楽配信装置3が検索した曲の情報が表示され、また、OKボタン40、キャンセルボタン41が表示され、(【0025】)
(i)ユーザは、確認画面35と試聴曲から欲しい曲の発注がされたことを確認するとOKボタン40をクリックし、(【0026】)
(j)ユーザ端末2からOK信号を受信すると、曲データ、曲情報等をユーザ端末2に送信し、(【0026】、【0027】)
(n)ユーザは、放送された曲が気に入れば、音楽発注画面30のメモボタン42をクリックし、これにより、放送局名データと放送時刻データがユーザ端末2の記憶部26に記憶され、この操作を繰り返し行えば、複数のデータが記憶部26に記憶され、ユーザが、放送終了後に切替ボタン43をクリックすると、放送局名表示枠36と放送時刻表示枠37に、記憶されたデータが次々に表示されていき、この表示ごとに試聴ボタン33を押せば、前述の処理が順次実行されて試聴可能となり、そこで気に入った曲を発注する(【0032】、【0021】)
(a)音楽配信装置3。

5 甲第2号証
(1)記載事項
甲第2号証には、次の記載がある。

「なおこの実施形態では自己のリス卜が楽曲ファイルリスト2であり、比較対象リストががヒットチャート20であり、この比較対象リストの上で判別可能に表示したものが比較後ヒットチャート21である。図5では楽曲ファイルリスト2とヒットチャート20との比較結果を、比較対象リストの上すなわちヒットチャート20の上に比較後未所有リスト24として表わしている。 この比較後未所有リスト24は、ヒットチャート20から所有する楽曲部分の表示を省略し、未所有の楽曲のみを抽出して表示したものであり、楽曲名は立体的なポタン表示25とされてさらに目立つようになっている。このように未所有の楽曲のみを抽出して表示することもこの発明の権利範囲内である。」(10頁34?41行)

「 第9実施形態
図20および図21はこの発明の第9実施形態のリスト比較表示装置を表わす。 このものはミュージックストア側すなわち楽曲販売サーバに関するものであり、処理装置16は楽曲販売部17やメール作成部18や比較表示部19を制御すると共に、後述する入力装置100や表示装置101や記憶装置102や通信装置103と言ったものを制御する。記憶装置102には販売用の楽曲ファイルやヒットチャートなどの各種のリストが記録されている(図20)。
図21はこの楽曲販売サーバのリスト比較表示処理プログラムの動作をフローチャートで表わしたものである。 図示しないユーザ一端末からこの楽曲販売サーバにアクセスして来たら、ユーザー端末側から楽曲ファイルリストを取得し(ステップS25)、処理装置16の比較表示部19はこの楽曲ファイルリストと記憶装置102に記録してあるヒットチャートとを比較して(ステップS26)、2つのリストの違いすなわちヒットチャートにあって楽曲ファイルリストにない品名があるか否かを調べ(ステップS27)、違いがある場合にはヒットチャート上でその品名をハイライトさせた比較後ヒットチャートを表示装置101に表示し(ステップS28)、この比較後ヒットチャートを電子メールにしてユーザー端末へ送信し(ステップS29)、違いがなければ処理を終了する。なお入力装置100はヒットチャートを作成したりする時に使用する。
この比較後ヒットチャートではユーザーの所有ファイルはそのままに、未所有ファイルがハイライト表示される。従って楽曲販売サーバの管理者が比較後ヒットチャートを見ると、このユーザーが未購入の楽曲名が一目瞭然に分かる。またこの比較後ヒットチャートは電子メールでユーザーに送られるため、ユーザーが比較後ヒットチャートを見て、どの楽曲が購入済でありまた未購入であるかが一目瞭然に分かる。これは両者にとって大きな利点である。 なおユーザー端末側から楽曲ファイルリストを取得する代わりに、ユーザーのダウンロードリストを用いて前記比較処理を行なうように構成することが出来る。また楽曲販売部17を独立させてこの処理装置16に接続し、両者で連係を取るような構成も可能である。
なおこの実施形態では自己のリストがヒットチャートであり比較対象リストが楽曲ファイルリストであり、自己のリス卜の上で判別可能に表示したものが比較後ヒットチャートである。これは上述の図2のリスト比較表示の説明図を借りて見ると分かりやすい。この図に於いて楽曲販売サーバの管理者は比較後ヒットチャート21を見ればよい。またこの図が電子メールでユーザーに送られる。また図5の例を借りれば比較後未所有リスト25を表示するようにする。この際に比較後未所有リスト25とヒットチャート20とをカスケード表示するなどしてもよい。また図6の例を借りれば比較後プレイリスト27を表示するようにする。実はこれはヒットチャート20を元にした前記比較後未所有リスト25の下方にプレイリスト26を繋げたものであるが、楽曲販売サーバの管理者にとってユーザーの未所有ファイル28が一目瞭然であると共に、ユーザーのプレイリスト26を調べることが出来る利点がある。なお各楽曲ファイルの品名を楽曲ファイルの購入に繋げるためのリンクやスイッチとして設定しておくことが望ましい。ユーザーにとっては未所有の楽曲名が明示されることによって購買意欲が直に刺激されるわけであるから、このままストレートに楽曲の確認や購入の手続きに移行出来る方が良く、楽曲販売サーバ側にとっても有利となるからである。新譜発売のお知らせなどに利用しても効果がある。なお得られた結果をユーザーに通知する必要がなく楽曲販売サーバの管理者が利用するだけであるならば、ステップS29の電子メールでのユーザー通知を不要とすることが出来る。」(12頁48?13頁29行)

(2)甲2技術
上記(1)の記載事項において、「比較後未所有リスト24」は、「比較後ヒットチャート21」と同様に、比較後のヒットチャートの情報として例示されているから、「比較後ヒットチャート21」についての実施形態が、「比較後未所有リスト24」についても同様に実施されるものと認められる。
すると、上記(1)の記載事項から、甲第2号証には、次の技術(以下、「甲2技術」という。)が記載されているといえる。

〔甲2技術〕
楽曲販売サーバが、ユーザー端末側から楽曲ファイルリストを取得し、ヒットチャートにあって楽曲ファイルリストにない品名があるか否かを調べ、ヒットチャートから所有する楽曲部分の表示を省略し、未所有の楽曲のみを抽出して表示したものである比較後未所有リストを電子メールにしてユーザー端末へ送信する技術。

6 甲第3号証
(1)記載事項
甲第3号証には、次の記載がある。

「【0006】
各テレビ配信設備は、番組ガイドサーバを有する。所望ならば、番組ガイドサーバも、テレビ配信設備または他の配信設備から離れた場所にあるケーブルシステムネットワークノードまたは他の設備に設置され得る。各番組ガイドサーバは、主設備により提供される番組ガイドデータを格納し、各テレビ配信設備と関連付けられた複数のユーザのユーザテレビ機器上にインプリメントされた番組ガイドクライアントへ番組ガイドデータへのアクセスを提供する。番組ガイドサーバはまた、ユーザデータ(例えば、ユーザ選好プロフィール、視聴制限(parental control)設定、録画設定およびリマインダ設定、視聴履歴、および他の適切なデータ等)も格納する。
【0007】
番組ガイドデータを番組ガイドサーバに提供し、ユーザデータをサーバに格納すると、ユーザのテレビ視聴経験を向上させ得る様々な機能を行う機会をユーザに提供することができる。ユーザは、例えば、番組ガイドサーバによって格納され、サーバによって使用されるユーザ選好プロフィールまたは他のお気に入りを設定して、ユーザの番組ガイド視聴経験をカスタマイズし得る。番組ガイドサーバは、ユーザ選好プロフィールに基づいて番組ガイドデータをフィルタリングし得る。次いで、ユーザが興味を有するデータのみをガイドクライアントに提供し、これにより、ユーザのテレビ機器のメモリ要件を最小限に抑え、ローカル配信ネットワークの帯域幅要件を低減することになり得る。」

「【0019】
格納デバイス56は、テレビ配信設備16に伝送される番組ガイドデータを主設備12を用いて格納するのに適したメモリまたは他の格納デバイス(例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ等)であり得る。ユーザデータ(例えば、ユーザ選好プロファイル、選好、視聴制限設定、録画およびリマインダ設定、視聴履歴、および他の適切なデータ)も、番組ガイドサーバ25によって格納デバイス56に格納され得る。番組ガイドデータおよびユーザデータは、任意の適切な形式(例えば、構造化照会言語(SQL)データベース)で格納デバイス56に格納され得る。所望ならば、格納デバイス56は、オンデマンドで再生される映像ファイルも格納し得る。」

「【0081】
番組ガイドサーバ25はまた、ユーザの視聴履歴を格納デバイス56に記録し得る。視聴履歴は、任意の適切なアプローチを用いて生成され得る。番組ガイドクライアントは、例えば、ユーザが所定の時間よりも長く見た番組全てを追跡し、番組ガイドクライアントが動作している世帯と、現在アクティブ状態の選好プロフィール(単数または複数)と、番組(またはその番組の識別子)と、ユーザがその番組を見た時間の長さとを記録し得る。番組ガイドクライアントはまた、ユーザがペイ・パー・ビュー番組を注文した時間も追跡し、番組を録画し、番組についてリマインダを予約し、この情報も視聴履歴の一部として番組ガイドサーバ25へと提供し得る。他の種類の情報も視聴履歴に含まれ得る。ユーザが定義した式は、例えば、番組ガイドサーバ25によって格納され、これにより、ユーザがサーチする番組の種類が追跡され得る。加えて、ユーザの人口統計学的数値も番組ガイドサーバ25によって計算され、広告または推奨番組の対象をより正確に決定するために用いられ得る。ユーザの人口統計学的数値を計算するシステムについては、例えば、1998年8月25日に出願された、Knudsonらによる米国特許出願第09/139,777号(Attorney Docket No.UV-58)に記載がある。本明細書中、同出願の全体を参考のため援用する。」

「【0085】
番組ガイドは、視聴履歴、選好プロフィール、またはこれらの任意の適切な組み合せに基づいて、個人用にされた視聴推薦を行い得る。番組ガイドサーバ25は、例えば、番組カテゴリおよびユーザが見た番組の格付け、リマインダが予約された番組、サーチされた番組、または最も注文が多かった番組についての式を定義する視聴履歴から、リレーショナルデータベース式を構築し得る。次いで、番組ガイドサーバ25は、番組にユーザ選好プロフィール基準を適用し、個人向けの視聴推薦を生成し得る。さらに別のアプローチにおいて、番組ガイドサーバ25または番組ガイドクライアントは、同様の式、プロフィール、視聴履歴等に基づいて、主設備12またはテレビ配信設備16によって生成される視聴推薦をフィルタリングし得る。
【0086】
例示目的のため、ユーザが図9aおよび9bに示す式を実行し、図13a?13fのユーザプロフィールを設定した場合を想定すると、番組ガイドサーバ25は、映画Armageddonが実行された式の基準を満たし、現在のユーザプロフィールの基準も満たすと判定し得る。Armageddonは、映画(大好き)、アクション(大好き)となっており、違法格付けになっておらず、PG-13の格付けになっている。番組ガイドサーバ25は、映画Armageddon(またはその識別子)およびその放送時間を番組ガイドクライアントに知らせ、この映画について視聴者推薦を表示するよう(例えば、第2の識別子を用いて)番組ガイドクライアントに指示し得る。番組ガイドクライアントは、ユーザが見ている番組または番組ガイド表示画面の各々の上に視聴者推薦オーバーレイ(例えば、図20aおよび20bに示すオーバーレイ2111等)を表示し得る。ユーザは、リモートコントロール40上の適切なキー(例えば、「情報」キー等)を押して、推薦された番組についてのさらなる情報へアクセスし得る。図20cは、例示的なさらなる情報画面を示す。さらなる番組情報の画面については、例えば、上述の1999年7月16日に出願された、Knudsonらによる米国特許出願第09/357,941号(Attorney Docket No.UV-114)に記載がある。ユーザが例えば「はい」を選択すると、番組ガイドクライアントは、視聴推薦番組が放送されるチャンネルにユーザテレビ機器22をチューニングし得る。所望ならば、視聴推薦は、適切なグラフィック(例えば、推薦番組を示すグラフィック)を含み得る。」

(2)甲3技術
上記(1)の記載事項から、甲第3号証には、次の技術(以下、「甲3技術」という。)が記載されている。

〔甲3技術〕
テレビ配信設備が番組ガイドサーバを有し、当該番組ガイドサーバが、視聴履歴の一部として番組を録画した情報が提供され、視聴履歴に基づいて視聴推薦を行い、例えば、映画Armageddonおよびその放送時間を番組ガイドクライアントに知らせ、この映画について視聴者推薦を表示するよう番組ガイドクライアントに指示する技術。

7 当審の判断
(1)本件発明1について
(1-1)対比
本件発明1と甲1発明1を対比する。

ア 構成A1、構成B1、構成D1について
甲1発明1の「記憶部11」(構成b)の「曲DB14」(構成e)が備える「曲データ、試聴データ」は、本件発明1の「オーディオアセット」に相当する。

甲1発明1の「曲名、発売日、歌手名、歌手に関する情報、ジャケットの写真又は絵などの曲に関する情報」である「曲情報」(構成e)は、「曲データ、試聴データ」(「オーディオアセット」)とともに「曲DB14」に記憶されているから、本件発明1の「オーディオアセットと関連付けられるオーディオアセット情報」に相当する。
また、甲1発明1の「放送局データと放送時間データ」(構成d)は、「曲コード」を介して「曲DB14」の「曲データ、試聴データ」(「オーディオアセット」)と対応付けられているから、本件発明1の「オーディオアセットと関連付けられるオーディオアセット情報」に相当する。
そして、前記「放送局データと放送時間データ」は、「番組DB12」(構成d)のデータであるから、「番組情報」といえる点で本件発明1の「前記オーディオアセットを埋め込んでいるビデオ番組と関連付けられるビデオ番組情報」と共通する。
しかしながら、前記「放送局データと放送時間データ」は、「番組DB12から、発注データ18に含まれる放送局名と放送時刻に該当する曲コードを検索」(構成g)するためのもの(例えば、図2における曲コード「02135612」に対する放送局名「C放送局」及び放送時間「10:05?10:12」)であるから、「曲コード」すなわち曲のみに関連付けられるものであって、ビデオ番組に関連付けられているとはいえない。してみると、上記「番組情報」が、本件発明1では「前記オーディオアセットを埋め込んでいるビデオ番組と関連付けられるビデオ番組情報」であるのに対し、甲1発明1では曲のみに関連付けられるものである点で、両者は相違する。
なお、本件特許の明細書の【0165】には、「ビデオ番組情報」は「放送スケジュール」及び「オーディオアセットの開始時間、オーディオアセットの終了時間」を含んでもよいとの記載があるが、当該「ビデオ番組情報」は、その記載自体の意味に基づけば、ビデオ番組に係る情報と解するべきものであるから、甲1発明1の曲のみに関連付けられる「放送局データと放送時間データ」は、本件発明1の「ビデオ番組情報」に相当するものとはいえない。

甲1発明1の「記憶部11」(構成c)は、上記「放送局データと放送時間データ」(「オーディオアセットと関連付けられるオーディオアセット情報」)を備えた「番組DB12」、及び、上記「曲情報」(「オーディオアセットと関連付けられるオーディオアセット情報」)を記憶した「曲DB14」等を含むから、「オーディオアセットと関連付けられるオーディオアセット情報を記憶するように構成されるデータストアであって、前記オーディオアセット情報は、番組情報を含む、データストア」である点で本件発明1と共通する。

そして、甲1発明1の「音楽配信装置3」は、上記「記憶部11」において本件発明1の「オーディオアセット情報」に相当するデータを記憶しているから、本件発明1と甲1発明1は「オーディオアセット情報記憶システム」(構成A1、構成D1)である点で一致する。

イ 構成C1について
甲1発明1の「CPU等により構成される処理部10」(構成b)及び「ユーザ端末2」(構成h)は、本件発明1の「プロセッサ」及び「ユーザ機器」にそれぞれ相当する。

イ-1 構成C1のi)について
甲1発明1は、ユーザ端末2の確認画面35において、音楽配信装置3が検索した曲の情報が放送局名表示枠36、放送時間表示枠37、曲名表示枠38、歌手名表示枠39にそれぞれ表示され、また、OKボタン40が表示される(構成h)ものである。
前記「放送局名表示枠36、放送時間表示枠37」に表示されるものは、「音楽配信装置3が検索した曲の情報」であるから、構成gの「番組DB12から、発注データ18に含まれる放送局名と放送時刻に該当する曲コードを検索」する際に、番組DB12の「放送局データと放送時間データ」(「オーディオアセットと関連付けられるオーディオアセット情報」)から「発注データ18に含まれる放送局名と放送時刻」に対応して特定された「放送局名」及び「放送時間」であると認められる。
また、前記「曲名表示枠38、歌手名表示枠39」に表示されるものも、「音楽配信装置3が検索した曲の情報」であるから、構成gの「番組DB12から、発注データ18に含まれる放送局名と放送時刻に該当する曲コードを検索し、曲コードが得られると、曲DB14から曲データを抽出」することで得られた曲DB14における曲情報(「オーディオアセットと関連付けられるオーディオアセット情報」)のうちの「曲名」及び「歌手名」である。
そして、甲1発明1は、前記「番組DB12」及び「曲DB14」からの情報がユーザ端末2の確認画面に表示されるから、「ユーザ機器を介して表示するために前記オーディオアセットと関連付けられる前記オーディオアセット情報を提供すること」が行われるものといえる。

さらに、前記「OKボタン40」は、クリックされることで曲データがユーザ端末2に送信される(構成i、構成j)ものであるから、本件発明1の「前記オーディオアセットを取得するための選択可能なオプション」に相当する。
そして、甲1発明1の音楽配信装置3における各種処理(送信処理を含む。)が上記「処理部10」(プロセッサ)で実行されることは明らかであるから、甲1発明1の「処理部10」(プロセッサ)は、「i)前記オーディオアセットを取得するための選択可能なオプションとともにユーザ機器を介して表示するために前記オーディオアセットと関連付けられる前記オーディオアセット情報を提供すること」を実行するように構成されたものといえる。

甲1発明1の「発注者DB17」(構成k)は、予め、ユーザが登録した発注者ごとの好みの条件、例えば、歌手名、ジャンル等が記憶されたものであるから、「オーディオ選好データ」を備えた「ユーザプロファイル」である点で、本件発明1と共通する。

甲1発明1の「番組表19?21について、発注者DB17の各発注者ごとに好みの条件に合致する」「番組を抽出」(構成l)することは、本件発明1の「前記オーディオアセットの特徴と一致するオーディオ選好データをユーザプロファイルが含んでいることを決定すること」に相当する。
そして、甲1発明1の上記曲情報等をユーザ端末2に送信すること(オーディオアセット情報を提供すること)は、番組表19?21について、発注者DB17の各発注者ごとに好みの条件に合致する番組を抽出して、発注者のユーザ端末2に対して、放送を紹介するメールを送信し(構成l)、ユーザは、受信した番組案内を見て、興味がある番組を視聴し、好みの曲があれば、前述の方法にて発注をする(構成m)ことに基づき実行されるから、甲1発明1は、「前記オーディオアセット情報の少なくとも一部分は、前記オーディオアセットの特徴と一致するオーディオ選好データをユーザプロファイルが含んでいることを決定することを少なくとも条件として提供される」ものである点で共通する。

しかしながら、「ユーザプロファイル」が、本件発明1では「前記ユーザ機器の」ものであるのに対し、甲1発明では「音楽配信装置3」(「オーディオアセット情報記憶システム」)におけるものである点、及び、「決定することを少なくとも条件として提供される」ことが、本件発明1では「決定することに応じて」なされるのに対し、甲1発明1では、「抽出」すること(「決定すること」)に加え、さらに、「発注者のユーザ端末2に対して、放送を紹介するメールを送信し、ユーザは、受信した番組案内を見て、興味がある番組を視聴し、好みの曲があれば、前述の方法にて発注をする」ことに基づきなされる点で、両者は相違する。

イ-2 構成C1のii)、iii)について
甲1発明1は、ユーザによりOKボタン40がクリックされる(構成i)と、ユーザ端末2からOK信号を受信して曲データ、曲情報等をユーザ端末2に送信する(構成j)から、甲1発明1の「処理部10」(プロセッサ)は、「ii)前記選択可能なオプションを介して前記オーディオアセットを取得するための要求を受信すること」と「iii)前記オーディオアセットを取得するための前記要求を受信したことに応じて、前記オーディオアセットを前記ユーザ機器に提供すること」を実行するように構成されたものといえる。

以上から、本件発明1と甲1発明1は、構成C1のii)、iii)を備える点で一致する。

ウ 一致点、相違点
以上ア?イから、本件発明1及び甲1発明1の一致点及び相違点は、次のとおりである。

〔一致点〕
(A1)オーディオアセット情報記憶システムであって、
前記システムは、
(B1’)オーディオアセットと関連付けられるオーディオアセット情報を記憶するように構成されるデータストアであって、前記オーディオアセット情報は、番組情報を含む、データストアと、
(C1’)i)前記オーディオアセットを取得するための選択可能なオプションとともにユーザ機器を介して表示するために前記オーディオアセットと関連付けられる前記オーディオアセット情報を提供することであって、前記オーディオアセット情報の少なくとも一部分は、前記オーディオアセットの特徴と一致するオーディオ選好データをユーザプロファイルが含んでいることを決定することを少なくとも条件として提供される、ことと、ii)前記選択可能なオプションを介して前記オーディオアセットを取得するための要求を受信することと、iii)前記オーディオアセットを取得するための前記要求を受信したことに応じて、前記オーディオアセットを前記ユーザ機器に提供することとを実行するように構成されるプロセッサと
(D1)を備える、システム。

〔相違点1〕
「番組情報」が、本件発明1では「前記オーディオアセットを埋め込んでいるビデオ番組と関連付けられるビデオ番組情報」であるのに対し、甲1発明1では曲のみに関連付けられるものである点。

〔相違点2〕
「ユーザプロファイル」が、本件発明1では「前記ユーザ機器の」ものであるのに対し、甲1発明では「音楽配信装置3」(「オーディオアセット情報記憶システム」)におけるものである点。

〔相違点3〕
「決定することを少なくとも条件として提供される」ことが、本件発明1では「決定することに応じて」なされるのに対し、甲1発明1では、「抽出」すること(「決定すること」)に加え、さらに、「発注者のユーザ端末2に対して、放送を紹介するメールを送信し、ユーザは、受信した番組案内を見て、興味がある番組を視聴し、好みの曲があれば、前述の方法にて発注をする」ことに基づきなされる点。

(1-2)特許法第29条第1項についての判断
上記(1-1)のとおり、本件発明1は、相違点1?相違点3において甲1発明1と相違するものであるから、甲第1号証に記載された発明ではない。

(1-3)特許法第29条第2項についての判断
上記相違点1について検討する。
オーディオアセットを埋め込んでいるビデオ番組と関連付けられるビデオ番組情報は、甲第2号証及び甲第3号証のいずれにも記載も示唆もされていないし、自明のものであるとも認められない。
したがって、相違点2及び相違点3について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者であっても、甲1発明1等に基づいて容易に発明することができたものとはいえない。

(2)本件発明2、3、6について
本件発明2、3、6は、本件発明1の構成を備えるものであるから、上記(1)と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明ではないし、当業者であっても、甲1発明1等に基づいて容易に発明することができたものとはいえない。

(3)本件発明4について
本件発明4は、本件発明1と同じ構成B1を備えるものであり、甲1発明1は、少なくとも上記相違点1に係る構成B1の構成を備えていない点で、本件発明4と相違するものである。
したがって、本件発明4は、上記(1)と同様の理由により、当業者であっても、甲1発明1及び甲2技術等に基づいて容易に発明することができたものとはいえない。

(4)本件発明5について
本件発明5は、本件発明1の構成を備えるものであるから、上記(1)と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明ではないし、当業者であっても、甲1発明1等に基づいて容易に発明することができたものとはいえない。
また、上記(1)のとおり、相違点1に係る本件発明5の構成は甲第3号証(上記6)に記載も示唆もされていないから、当業者であっても、甲1発明1及び甲3技術に基づいて容易に発明することができたものとはいえない。

(5)本件発明7について
本件発明7は、本件発明1と同じ構成B1を備えるものである。これに対し、甲1発明2は、甲1発明1と共通する構成a?構成jを備え、かつ、甲1発明1と異なる構成である構成nにおいても「オーディオアセットを埋め込んでいるビデオ番組と関連付けられるビデオ番組情報」は存在しないから、少なくとも上記相違点1に係る構成B1の構成を備えていない点で、本件発明7と相違するものである。
したがって、本件発明7は、上記(1)と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明ではないし、甲1発明2等に基づいて容易に発明することができたものとはいえない。

(6)本件発明8?14について
本件発明8?14は、それぞれ本件発明1?7とカテゴリが異なる発明であり、甲1発明1、甲1発明2との間に少なくとも上記相違点1と同様の相違点を有するものである。
したがって、本件発明8?10、12、13は、上記(1)、(2)、(4)と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明ではないし、甲1発明1等に基づいて容易に発明することができたものとはいえない。
本件発明11は、上記(3)と同様の理由により、甲1発明1及び甲2技術等に基づいて容易に発明することができたものとはいえない。
本件発明12は、上記(4)と同様の理由により、甲1発明1及び甲3技術に基づいて容易に発明することができたものとはいえない。
本件発明14は、上記(5)と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明ではないし、甲1発明2等に基づいて容易に発明することができたものとはいえない。

8 むすび
以上のとおりであるから、請求項1?14に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に請求項1?14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2021-10-29 
出願番号 特願2018-129799(P2018-129799)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (H04N)
P 1 651・ 113- Y (H04N)
最終処分 維持  
前審関与審査官 富樫 明  
特許庁審判長 五十嵐 努
特許庁審判官 木方 庸輔
樫本 剛
登録日 2020-10-19 
登録番号 特許第6781208号(P6781208)
権利者 ロヴィ ガイズ, インコーポレイテッド
発明の名称 双方向メディアガイダンスアプリケーションを使用してオーディオコンテンツを識別するシステムおよび方法  
代理人 石川 大輔  
代理人 飯田 貴敏  
代理人 森下 夏樹  
復代理人 福永 聡  
復代理人 田中 宏樹  
代理人 山本 秀策  
代理人 山本 健策  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ