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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G06Q
管理番号 1379876
異議申立番号 異議2021-700697  
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-12-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-07-19 
確定日 2021-11-18 
異議申立件数
事件の表示 特許第6821085号発明「プラントの保全管理方法及び保全管理システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6821085号の請求項に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6821085号の請求項1?8に係る特許についての出願は、令和元年9月11日に出願され、令和3年1月7日にその特許権の設定登録がされ、同年1月27日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、同年7月19日に異議申立人 藤本歩(以下、「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。

第2 本件発明
特許第6821085号の請求項1?8の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(以下、それぞれ、「本件発明1」?「本件発明8」という。)
「【請求項1】
流体の処理を行うプラントの保全管理方法であって、
前記プラントを構成する機器にて発生すると想定される事故として複数抽出された事故を示す情報をコンピュータが取得する工程と、
前記情報によって示される複数の事故について、各事故の起因となり得る事故起因事象の発生頻度と、当該事故の発生を防止するための安全装置の正常動作の失敗確率とを、コンピュータが取得する工程と、
コンピュータにより、前記各事故に係る前記事故起因事象の発生頻度と、当該事故に係る前記安全装置についての失敗確率との乗算値であるリスクを算出し、予め設定したしきい値と比較する工程と、
前記複数の事故につき、算出した前記リスクが前記しきい値より大きい場合に、当該リスクに係る前記機器及び前記安全装置を保全作業対象候補として、コンピュータによりリストアップする工程と、を含むことを特徴とするプラントの保全管理方法。
【請求項2】
前記事故の発生を防止するために、複数の前記安全装置が多重に設けられている場合に、前記リスクは、前記事故起因事象の発生頻度に対し、これらの安全装置についての失敗確率を重ねて乗算して算出されることを特徴とする請求項1に記載のプラントの保全管理方法。
【請求項3】
前記発生頻度と失敗確率とを取得する工程にて取得される前記事故起因事象の発生頻度は、前記プラントにおける当該事故起因事象の発生実績を反映して求めたものであり、また、前記取得される前記安全装置の失敗確率は、当該プラントにおける当該安全装置の正常動作の失敗の発生実績を反映して求めたものであることを特徴とする請求項1に記載のプラントの保全管理方法。
【請求項4】
前記事故起因事象の発生頻度または前記安全装置の失敗確率への前記発生実績の反映は、ベイズ推定に基づいて行われることを特徴とする請求項3 に記載のプラントの保全管理方法。
【請求項5】
流体の処理を行うプラントの保全管理システムであって、
前記プラントを構成する機器にて発生すると想定される複数の事故について、各事故の起因となり得る事故起因事象の発生頻度と、当該事故の発生を防止するための安全装置の正常動作の失敗確率とを含むリスク算出情報を取得する情報取得部と、
前記情報取得部にて取得した前記リスク算出情報に基づき、前記各事故に係る前記事故起因事象の発生頻度と、当該事故に係る前記安全装置についての失敗確率との乗算値であるリスクを算出し、予め設定したしきい値と比較するリスク評価部と、
前記複数の事故につき、算出した前記リスクが前記しきい値より大きい場合に、当該リスクに係る前記機器及び前記安全装置を保全作業対象候補としてリストアップして通知する通知部と、を備えることを特徴とするプラントの保全管理システム。
【請求項6】
前記事故の発生を防止するために、複数の前記安全装置が多重に設けられている場合に、前記リスク評価部は、前記事故起因事象の発生頻度に対し、これらの安全装置についての失敗確率を重ねて乗算して前記リスクを算出することを特徴とする請求項5に記載のプラントの保全管理システム。
【請求項7】
前記情報取得部は、前記プラントにおける前記事故起因事象の発生実績を反映して当該事故起因事象の発生頻度を求め、また、当該プラントにおける前記安全装置の正常動作の失敗の発生実績を反映して当該安全装置の失敗確率を求める機能を備えることを特徴とする請求項5に記載のプラントの保全管理システム。
【請求項8】
前記情報取得部は、ベイズ推定に基づいて前記事故起因事象の発生頻度または前記安全装置の失敗確率への前記発生実績の反映を行うことを特徴とする請求項7に記載のプラントの保全管理システム。」

第3 申立理由の概要
申立人は、以下の甲1?甲10を証拠方法として提出し、本件発明1、2、5、6は、甲4に記載された発明、甲5に記載された発明、周知慣用技術(甲5?8)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明3、7は、甲4に記載された発明、甲5に記載された発明、周知慣用技術(甲5?9)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明4、8は、甲4に記載された発明、甲5に記載された発明、周知慣用技術(甲5?10)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、したがって、請求項1?8に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1?8に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。

<証拠方法>
甲1:IEC 60300-3-11, Dependability management - Part3-11:Application guide - Reliability centred maintenance Edition 2.0 - INTERNATIONAL STANDARD, IEC, June 2009,pp.6-14
甲2:Reliability-centered Maintenance Second Edition(Volume1), John Moubray, Industrial Press, Inc.,1997,pp.321-323
甲3:BS/EN 61508-6, Functional safety of electrical/electronic/programmable electronic safety-related systems - Part 6:Guidelines on the application of IEC 61508-2 and IEC 61508-3, BSI(British Standards Institution), Dec.2001,pp.11,13-20
甲4:Meridium ENTERPRISE APM Software overview,2016
甲5:BS/EN 61508-5, Functional safety of electrical/electronic/programmable electronic safety related systems - Part 5:Examples of methods for the determination of safety integrity levels - Annex D, Annex F, BSI(British Standards Institution), May 2010,pp.27-29,38-43
甲6:Meridium APM SIS Management V3.6.1.6.0,2017,pp.17,181,448,453
甲7:Meridium APM Asset Health Manager V3.6.0.0.0,2014,pp.5,43,64,66
甲8:特開2018-205992号公報
甲9:Safety Instrumented Systems Verification: Practical Probabilistic Calculations, William. M. Goble,et.al, ISA(The Instrumentation, Systems and Automation Society),2005,pp.30-39,54-57
甲10:Risk-based Inspection Methodology - API RECOMMENDED PRACTICE 581,Third Edition, API(American Petroleum Institute),April 2016,pp.1,23,43

第4 甲1?10の記載
1 甲1(IEC 60300-3-11, Dependability management - Part3-11:Application guide - Reliability centred maintenance Edition 2.0 - INTERNATIONAL STANDARD, IEC, June 2009,pp.6-14)
甲1には、以下のとおりの記載がある。
「Reliability centred maintenance(RCM) is a method to identify and select failure management policies to efficiently and effectively achieve the required safety, availability and economy of operation. Failure management policies can include maintenance activities, operational changes, design modifications or other actions in order to mitigate the consequences of failure.」(6頁2?5行)
(当審訳)
RCMは、必要な安全性、可用性、及び運用の経済性を効率的かつ効果的に達成するための故障管理ポリシーを識別及び選択する方法である。故障管理ポリシーには、故障の結果を軽減するために、保守作業、運用の変更、設計の変更、またはその他のアクションを含めることができる。

「RCM provides a decision process to identify applicable and effective preventive maintenance requirements, or management actions, for equipment in accordance with the safety, operational and economic consequences of identifiable failures, and the degradation mechanism responsible for those failures. The end result of working through the process is a judgement as to the necessity of performing a maintenance task, design change or other alternatives to effect improvements.」(6頁9?14行)
(当審訳)
RCMは、特定可能な故障の安全性、運用上及び経済上の結果、及びそれらの故障の原因となる劣化メカニズムに従って、機器の適用可能で効果的な予防保守要件または管理アクションを特定するための決定プロセスを提供する。そのプロセスを実行した結果、メンテナンスタスク、設計変更、またはその他の代替手段を実行して改善を行う必要があるかどうかが判断される。

図1には、「RCMのプロセスの概要」について、以下の事項が記載されている。
「2.FUNCTIONAL FAILURE ANALYSIS」(2.機能故障分析)として、フィールドデータを収集して分析すること、機能故障を特定すること。
「3.TASK SELECTION」(3.タスクの選択)として、失敗の結果を評価し、適切な障害管理ポリシーを選択して、メンテナンスタスクを出力すること。
「5.CONTINUOUS IMPROVEMENT」(5.継続的改善)として、安全性、運用上、経済上の目標を監視し、フィールドデータを出力すること。

「Figure 2 shows the principal factors which need to be considered in the development stage, that is before operation, and those which are used to update the programme, based on operational experience, once the product is in service.
The initial maintenance programme, which is often a collaborative effort between the supplier and the user, is defined prior to operation and may include tasks based on the RCM methodology. The on-going maintenance programme, which is a development of the initial programme, is initiated as soon as possible by the user once operation begins, and is based on actual degradation or failure data, changes in operating context, advances in technology, materials, maintenance techniques and tools. The on-going programme is maintained using RCM methodologies. The initial maintenance programme is updated to reflect changes made to the programme during operation.」(13頁26?36行)
(当審訳)
図2は、開発段階、つまり運用前に考慮する必要のある主な要因と、製品が稼働した後の運用経験に基づいてプログラムを更新するために使用される要因を示す。初期保守プログラムは、多くの場合、サプライヤとユーザ間の共同作業であり、運用前に定義され、RCM方法論に基づくタスクが含まれる場合がある。継続的保守プログラムは、初期プログラムの発展であり、運用が開始されるとすぐにユーザによって開始され、実際の劣化または故障データ、運用状況の変化、技術の進歩、材料、メンテナンス技術とツールに基づくものである。継続的プログラムは、RCM方法論を使用して維持管理される。初期保守プログラムは、運用中に成された変更を反映するように更新される。

2 甲2(Reliability-centered Maintenance Second Edition(Volume1), John Moubray, Industrial Press, Inc.,1997,pp.321-323)
甲2には、以下のとおりの記載がある。
「These projects led to the widespread adoption of RCM by nuclear facilities in North America, by EdF in France and now to an increasing extent by nuclear facilities throughout the world.
The author and his associates began working with the application of RCM in the mining and manufacturing sectors in the early 1980s. Since then, we have worked on more than 500 sites in 32 countries spanning all six continents.」(321頁30?36行)
(当審訳)
これらのプロジェクトにより、北米の原子力施設、フランスのEdF、そして今では世界中の原子力施設でRCMが広く採用されるようになった。著者とその仲間は、1980年代初頭に鉱業及び製造業でのRCMの適用に取り組み始めた。それ以来、6大陸すべてにまたがる32カ国の500を超えるサイトで作業を行ってきた。

「・nuclear facilities
・offshore oil and gas
・oil refining
・petrochemicals
・pharmaceuticals」(322頁下から7?3行)
(当審訳)
・原子力施設
・海底油田、海洋ガス田
・石油精製
・石油化学製品
・医薬品

3 甲3(BS/EN 61508-6, Functional safety of electrical/electronic/programmable electronic safety-related systems - Part 6:Guidelines on the application of IEC 61508-2 and IEC 61508-3, BSI(British Standards Institution), Dec.2001,pp.11,13-20)
甲3には、以下のとおりの記載がある。
「IEC 61508-1 provides an overall framework based on a risk approach for the prevention and/or control of failures in electro-mechanical, electronic, or programmable electronic devices.」(13頁12?14行)
(当審訳)
IEC 61508-1は、電気機械、電子、またはプログラム可能な電子デバイスの故障を防止及び/または制御するためのリスクアプローチに基づく全体的なフレームワークを提供する。

「IEC 61508-1 requires that a hazard and risk analysis at the process/machine level is carried out to determine the amount of risk reduction necessary to meet the risk criteria for the application. Risk is based on the assessment of both the consequence (or severity) and the frequency (or probability) of the hazardous event.」(13頁21?24行)
(当審訳)
IEC 61508-1は、プロセス/マシンレベルでのハザード及びリスク分析を実行して、アプリケーションのリスク基準を満たすために必要なリスク削減の量を決定することを要求する。リスクは、危険なイベントの結果(または重大度)と頻度(または確率)の両方の評価に基づく。

4 甲4(Meridium ENTERPRISE APM Software overview,2016)
(1)甲4には、以下のとおりの記載がある。
ア 「Meridium ENTERPRISE APM Software overview」(表紙)
(当審訳)
Meridium 企業APMソフトウェア
イ 「APM Strategy
Improve the plan
At the heart of the Meridium Enterprise APM landscape is the ability to effectively develop, implement, maintain and optimize intelligent asset strategies over the life of an asset. These strategies are comprised of the individual and collective actions performed to maintain, operate, monitor and inspect assets at an optimal cost with maximum risk reduction. These strategies should be based on the output of rigorous engineering methodologies and analysis, manufacturer’s recommendations, organizational best practices, and human experience depending on type and risk profile of the asset. Effectively managing the asset can provide tremendous value by enabling organizations to achieve the optimal balance of cost, risk and performance.

Reliability Centered Maintenance and Failure Modes and Effects Analysis
Reliability Centered Maintenance (RCM) and Failure Modes and Effects Analysis (FMEA) methodologies evaluate the function of the asset, the failure modes and the consequence of asset failure allowing for the definition of comprehensive maintenance, operational, and inventory strategies that balance costs and risks with overall production goals. Meridium RCM/FMEA capabilities constantly evaluate the asset’s performance using data collected through standard processes within EAM and condition/process monitoring systems. When assumptions or parameters are deviated from, users can be notified if the maintenance or operational strategy needs to change.」(4頁右欄31行?5頁左欄18行)
(当審訳)
APM戦略
計画の改善
Meridium企業APM環境の中心にあるのは、資産の耐用年数にわたって知的な資産戦略を効果的に開発、実施、維持、最適化する能力である。これらの戦略は、最大のリスク削減を伴う最適なコストで資産を維持、運用、監視、検査するために実行される個々のアクションと集合的なアクションで構成される。これらの戦略は、資産の種類やリスクプロファイルに応じて、厳密なエンジニアリング手法や分析、メーカーの推奨事項、組織のベストプラクティス、人の経験などの成果に基づいて行われる。資産を効果的に管理することで、組織はコスト、リスク、パフォーマンスの最適なバランスを達成することができ、非常に大きな価値を提供することができる。
信頼性中心保全と故障モード影響解析
信頼性中心保全(RCM)と故障モード影響解析(FMEA)の手法は、資産の機能、故障モード、および資産の故障がもたらす結果を評価し、コストとリスクを全体的な生産目標とバランスさせる包括的な保全、運用、および在庫戦略を定義することができる。Meridium RCM/FMEA機能は、EAM内の標準プロセス及び状態/プロセス監視システムを通じて収集されたデータを使用して、資産のパフォーマンスを常に評価する。前提条件またはパラメータが逸脱している場合、保守または運用戦略を変更する必要があるかどうかをユーザに通知できる。
(当審注:
APMとは、Asset Performance Management(資産パフォーマンス管理)のことであり、ライフサイクルを通して資産のパフォーマンスとコストを追跡、管理、分析する手法のこと。
EAMとは、Enterprise Asset Management(企業資産管理)のことであり、企業が保有する設備資産に関するさまざまな情報を、そのライフサイクルを通じて一元管理することで、資産自体とそれにかかわる業務を可視化・標準化・効率化する業務改善手法のこと。)
ウ 「SIS Management
The Meridium SIS Management capability addresses the need to manage the reliability and performance of critical process instrumentation and safety instrumented systems(SIS) as well as address compliance requirements. It is based on international industry standards ISA84/IEC61511 and IEC 61508.」(9頁右欄4?10行)
(当審訳)
SIS管理機能
Meridium SIS管理機能は、重要なプロセス計装及び安全計装システム(SIS)の信頼性とパフォーマンスを管理する必要性に対応し、コンプライアンス要件にも対応する。これは、国際的な業界標準ISA84/IEC61511及びIEC61508に基づく。
エ 「APM Metrics
Meridium provides a robust framework to apply balanced scorecard principles to APM. Strategies, objectives and key performance indicators (KPIs) can be defined to support the measurement of APM indices such as availability, reliability, lost production, regulatory compliance and asset/strategy cost management. Meridium APM Metrics allows KPIs to be displayed in a dashboard or scorecard layout and provide automatic alerting when thresholds are exceeded so corrective action can be taken.」(10頁右欄1?10行)
(当審訳)
APM指標
Meridiumは、バランススコアカードの原則をAPMに適用するための堅牢なフレームワークを提供する。戦略、目標、及びKPIを定義して、可用性、信頼性、生産の損失、規制への準拠、資産/戦略のコスト管理などのAPM指標の測定をサポートできる。Meridium APM指標を使用すると、KPIをダッシュボードまたはスコアカードのレイアウトに表示し、しきい値を超えたときに自動アラートを提供して、修正措置を講じることができる。
(当審注:KPIとは、Key Performance Indicator(重要業績評価指標)のことであり、組織の目標を達成するための重要な業績評価の指標のこと)
オ 「Bringing an unprecedented level of connectivity and integration to today’s plant performance landscape through standardized data loaders, adapters and connectors as well as specialized integration services, Meridium APM Connect drives the collection, sharing and consolidation of critical asset information in the most effective manner to drive IT productivity cost and maintenance efficiencies.
・EAM Adapters to extract data from and interact with customer EAMs(SAP^((R)),IBM Maximo^((R)),Oracle^((R)))
・Machine-to-Machine (M2M) Connectors to retrieve real-time historian information from various sources including OPC, Emerson AMS, and GE Bently Nevada System 1」(11頁左欄11行?右欄4行)
(当審訳)
標準化されたデータローダ、アダプタ、コネクタ、及び特殊な統合サービスを通じて、これまでにないレベルの接続と統合を今日のプラントパフォーマンスランドスケープにもたらす。Meridium APM Connectは、重要な資産情報の収集、共有、統合を最も効果的な方法で推進し、ITの生産性コストと保守効率を向上させる。
・顧客のEAM(SAP^((R)),IBM Maximo^((R)),Oracle^((R)))からデータを抽出して相互作用するためのEAMアダプタ
・OPC、Emerson AMS、GE Bently Nevada System 1などのさまざまなソースからリアルタイムの履歴情報を取得するためのMachine-to-Machine(M2M)コネクタ

(2)引用発明
上記(1)より、甲4には、
「Meridiumは、APM(企業の資産のパフォーマンスを管理する)ソフトウェアであり、そのRCM(信頼性中心保全)/FMEA(故障モード影響解析)機能は、
EAM(企業資産管理)内の標準プロセス及び状態/プロセス監視システムを通じて収集されたデータを使用して、資産のパフォーマンスを評価し、前提条件またはパラメータが逸脱している場合、保守または運用戦略を変更する必要があるかどうかをユーザに通知でき、
APM指標を使用すると、KPI(重要業績評価指標)をダッシュボードまたはスコアカードのレイアウトに表示し、KPIがしきい値をこえたときに自動アラートを提供する、
APMソフトウェア。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

5 甲5(BS/EN 61508-5, Functional safety of electrical/electronic/programmable electronic safety related systems - Part 5:Examples of methods for the determination of safety integrity levels - Annex D, Annex F, BSI(British Standards Institution), May 2010,pp.27-29,38-43)
(1)甲5には、以下のとおりの記載がある。
ア「BS/EN 61508-5, Functional safety of electrical/electronic/programmable electronic safety related systems - Part 5:Examples of methods for the determination for safety integrity levels」(表紙)
(当審訳)
BS/EN規格61508-5、プロセス産業における電気・電子・プログラマブル電子機能安全の基本安全規格-パート5:安全度レベル(SIL)を決定する方法の例
(当審注:BS/EN 欧州の統一規格EN規格を英国が国家規格BS規格として採用し、英国規格協会(BSI)が発行したもの。)
イ 40頁Table F.1の項目及び脚注

「Impact event description」インパクトイベント記述
「Overspeed of rotor leading to fracture of casing」ケーシングの破壊につながるローターの速度超過
「Initiating cause」開始要因
「Speed control system fails」速度制御システム故障
「Loss of load」負荷喪失
「Clutch failure」クラッチ故障
「Initiation likelihood」開始確率
「Intermediate event likelihood」中間イベントの発生確率
「NOTE2 Units in columns 4,8 and 10 are events per year.」
注2 列4、8及び10の単位は、1年あたりのイベント数である
「NOTE3 Units in columns 5 to 7 and 9 are dimensionless. The numbers between 0 and 1 are the factors by which event likelihood may be multiplied to represent the mitigating effect of the associated protection layer. Thus 1 means no mitigating effect and 0.1 means a factor of 10 risk reduction.」
列5?7及び9の単位は無次元である。0と1の間の数字は、イベントの可能性に関連する保護層の軽減効果を現すために乗じることができる係数である。したがって、1は軽減効果がないことを意味し、0.1は10倍のリスク軽減を意味する。
イ 「F.2 Impact event
Using Table F.1, each impact event description (consequence) determined from the hazard identification is entered in column 1 of Table F.1.」(38頁27?29行)
(当審訳)
F.2 インパクトイベント
TableF.1を使用する場合、ハザード識別から決定された各インパクトイベントの説明(結果)が、TableF.1の列1に入力される。
ウ 「F.4 Initiating cause
All the initiating causes of the impact event are listed in column 3 of TableF.1
Impact events may have many initiating causes, and all should be listed.」(38頁37?39行)
(当審訳)
F.4 開始要因
インパクトイベントの全ての開始要因は、TableF.1の列3にリストされる。インパクトイベントは、多くの開始要因を有することがあり、全ての開始要因がリストされる可能性がある。
エ 「F.5 Initiation likelihood
Likelihood values of each of the initiating causes listed in column 3 of Table F.1, in events per year, are entered into column 4 of Table F.1. Initiation likelihood can be calculated from generic data on equipment failure rates and knowing proof test intervals, or from facility records.」(39頁1?5行)
(当審訳)
F.5 開始確率
TableF.1の列3にリストされている各開始要因の発生確率値は、1年あたりの回数であり、TableF.1の列4に入力される。開始確率は、機器の故障率とプルーフテストの間隔に関する一般的なデータから計算でき、または施設の記録から計算できる。
オ 「Each PL consists of a grouping of equipment and/or administrative controls that function independently from other layers. Design features that reduce the likelihood of an impact event from occurring when an initiating cause occurs are listed first in column 5 of Table F.1.」(41頁3?6行)
(当審訳)
各保護レイヤは、他のレイヤとは独立して機能する機器や管理制御のグループである。開始要因が発生したときに、インパクトイベントが発生する可能性を低減する設計上の特徴は、Table F.1の5列目の最初に記載される。
カ 「-Specificity: A PL is designed solely to prevent or to mitigate the consequences of one potentially hazardous event (for example, a runaway reaction, release of toxic material, a loss of containment, or a fire)」(41頁8?10行)
(当審訳)
-特異性:保護レイヤは、1つの潜在的に危険なイベント(例えば暴走反応、有毒物質の放出、封じ込めの喪失、または火災)の結果を防止または軽減するために設計される。
キ 「F.7 and F.8 Additional mitigation
Mitigation layers are normally mechanical, structural, or procedural. Examples include:
- restricted access;
- reduction of ignition probability;
- any other factors that reduce the vulnerability of persons exposed to the hazard.
Mitigation layers may reduce the severity of the impact event, but not prevent the event from occurring. Examples include:
- deluge systems in the case of a fire;
- gas alarms;」(41頁42行?42頁7行)
(当審訳)
F.7とF.8 追加緩和策
緩和レイヤは通常、機械的、構造的、または手続き的なものである。例えば、以下を含む。
-アクセス制限
-発火の可能性の低減
-危険にさらされている人の脆弱性を低減する他の要因
緩和レイヤは、インパクトイベントの重大性を低減することができるが、事象の発生を防止することはできない。
例えば、以下を含む。
-火事の際の放水システム、
-ガス警報器
ク 「The intermediate event likelihood for each cause is calculated by multiplying the following factors and the result in frequency per year entered in column 8 of Table F.1:
- vulnerability of the most exposed person;
- initiation likelihood (column 4);
- PFDavg of the Protection Layers and mitigation layers (columns 5,6 and 7).」(42頁16?20行)
(当審訳)
各要因の中間イベントの発生確率は、以下の係数の乗算により計算され、1年あたりの頻度を示す結果は、Table F.1の列8に入力される。
-最も危険にさらされた人の脆弱性、
-開始確率(列4)、
-保護レイヤと緩和レイヤのPFDavg(列5、6及び7)。
ケ 「PFDavg is the average probability of failure on demand of the safety-related protection system」(28頁6?7行)
(当審訳)
PFDavgは、安全関連の保護システムの要求時失敗確率である。
コ 「The total intermediate event frequency should be compared with the tolerable risk frequency for the associated severity level. if the total intermediate frequency exceeds the tolerable frequency, then risk reduction will be required.」(42頁23?25行)
(当審訳)
中間イベントの合計頻度は、関連する重大度レベルの許容可能なリスク頻度と比較する必要がある。中間イベントの合計頻度が許容可能な頻度を超える場合は、リスクの低減が必要になる。
(2)甲5発明
上記(1)のTableF.1の列3,4、列5,6,7、列8との関係から、
甲5には、
「ケーシングの破壊につながるローターの速度超過をインパクトイベントとし、速度制御システム故障、負荷消失、クラッチ故障を開始要因とした場合、
機器の故障率とプルーフテストの間隔に関する一般的なデータから計算するか、施設の記録から計算できる各開始要因の1年あたりの開始確率値(列3,4)と、開始要因が発生したときに、インパクトイベントが発生する可能性を低減する各保護レイヤ(列5)、インパクトイベントの重大性を低減する緩和レイヤ(列6,7)における保護レイヤと緩和レイヤの要求時失敗確率との積をとって中間イベントの合計頻度(列8)を計算し、
中間イベントの合計頻度が許容可能な頻度を超える場合は、リスクの低減が必要になるという、
BS/EN規格61508、プロセス産業における電気・電子・プログラマブル電子機能安全の基本安全規格における安全度レベル(SIL)を決定する方法」(以下、「甲5発明」という。)が記載されている。

6 甲6(Meridium APM SIS Management V3.6.1.6.0,2017,pp.17,181,448,453)

181頁図面から、次の項目がみてとれる。
「Low Gas Pressure Shutdown」低ガス圧停止
「Frequency of Initiating Event」開始イベント頻度

甲6には、以下のとおりの記載がある。
「Pre Alarm」
「A number representing the point on the process variable range at which the pre-alarm should be triggered」(448頁)
(当審訳)
プレアラーム
プレアラームがトリガーされるプロセス変数範囲上のポイントを表す数値

「Required SIF Action
A description of the action that the instrumented function performs in response to a triggered alarm.」(453頁)
(当審訳)
要求されたSIFアクション
トリガーされたアラームに対応して、計装化された機能が実行するアクションの記述。

7 甲7(Meridium APM Asset Health Manager V3.6.0.0.0,2014,pp.5,43,64,66)
甲7には、以下のとおりの記載がある。
「The Meridium APM Asset Health Manager (AHM) module provides tools that help you evaluate the overall health of equipment. Using AHM, you can view a graphical representation of a piece of equipment’s health and then make decisions about what action to take in order to mitigate risk, if necessary.」(5頁2?5行)
(当審訳)
Meridium APM Asset Health Manager (AHM)モジュールは、機器の全体的な状態を評価するのに役立ツールを提供する。AHMを使用すると、機器の状態をグラフで表示し、必要に応じて、リスクを軽減するために実行するアクションを決定できる。

「In the baseline AHM database, you can use AHM to view a graphical representation of data in the following types of records:
・(略)
・KPI records and their linked KPI Measurement records」(5頁10?13行)
(当審訳)
ベースラインAHMデータベースでは、AHMを使用して、次のタイプのレコードのデータのグラフィック表現を表示できる。
・KPIレコードとそれらにリンクされたKPI測定レコード

「A black triangle that identifies the most recent reading value for the Health Indicator.」(64頁9?10行)
(当審訳)
黒の三角形は、状態指標の最新の読み取り値を示す。

42頁図面66頁表から、次の事項が読み取れる。
「Water Heater」温水器
バーチャートにおける緑色の範囲はNormalの範囲、黄色の範囲はWarningの範囲、赤色の範囲はAlertの範囲を示す。バーチャート上の黒の逆三角が現在の状態を示す。

8 甲8(特開2018-205992号公報)
甲8には、以下のとおりの記載がある。
「【0001】
本発明は、機器診断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
発電所などのプラントでは、信頼性向上と保守作業効率化を目的として、運転中に実行可能な機器診断技術の導入が進められている。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような従来の技術では、保守すべき機器を推定することはできるものの、その緊急性を把握することができず、結果的に優先度が高い機器の保守が後回しになってしまうことがあり、必ずしも効率的に保守作業が行われているとは言い難い。
【0006】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、プラントに異常が発生した場合、保守すべき機器および緊急性を提示することが可能な機器診断システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
(1)複数のセンサにより計測されたプラントの状態を表す計測値を用い、前記プラントを構成する複数の機器の中から保守すべき機器を特定する機器診断システムであって、
前記プラントの正常な動作時における前記センサの計測値を格納した正常時計測値データベースと、
前記機器それぞれの記録を格納した機器情報データベースと、
計測した前記センサの計測値と、前記正常時計測値データベースに格納された前記センサの計測値とを用い、前記プラントの異常度を算出する異常度計算手段と、
前記異常度計算手段により算出された異常度に基づき、異常なパラメータを推定する異常パラメータ推定手段と、
前記機器情報データベースに格納された記録を用い、推定された前記異常なパラメータから異常な機器を特定する異常機器特定手段と、
特定された前記異常な機器により発生する前記プラントへのリスクを計算するリスク計算手段と、
計算された前記リスクに基づき、前記異常な機器の保守優先度を判定する優先度判定手段とを備えている機器診断システム、
(2)記録が機器の異常発生記録であり、前記機器の異常発生記録が前記機器名とパラメータ名とを含んでいる前記(1)に記載の機器診断システム、
(3)記録が機器の仕様書であり、前記機器の仕様書が前記機器名とパラメータ名とを含んでいる前記(1)に記載の機器診断システム、および
(4)プラントが原子力発電プラントであり、リスクが炉心損傷頻度またはプラント停止確率である前記(1)から(3)のいずれか1項に記載の機器診断システム
に関する。
【0008】
なお、本明細書において、「異常度」とは、機器に関連するパラメータが、当該機器の正常状態における分布からどの程度離れているかを表す指標である。また、本明細書において、「機器の異常発生記録」とは、当該機器に異常が発生した際の記録であって、少なくとも当該機器の機器名と当該機器に関連するパラメータ名とが記載されているドキュメントを意味し、「機器の仕様書」とは、少なくとも当該機器の機器名と、当該機器に関連するパラメータ名とが記載されているドキュメントを意味する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、プラントに異常が発生した場合、保守すべき機器および緊急性を提示することが可能な機器診断システムを提供することができる。」
「【0013】
図1は、本発明の一実施形態を示す概略構成図である。当該機器診断システム1は、複数のセンサ(不図示)により計測されたプラントの状態を表す計測値を用い、プラントを構成する複数の機器の中から保守すべき機器を特定するものであり、例えば、本実施形態で示す原子力発電プラント等に適用される。当該機器診断システム1は、図1に示すように、概略的に、正常時計測値データベース10と、機器情報データベース20と、計測値入力手段30と、異常度計算手段40と、異常パラメータ推定手段50と、異常機器特定手段60と、リスク計算手段70と、優先度判定手段80と、結果出力手段90とにより構成されている。」
「【0033】
次に、異常機器特定手段60において、機器抽出部61が、機器情報データベース20に格納された記録21を用い、パラメータごとに、登場する各機器名の数を数えてリスト化する(ステップS105)。次いで、異常機器特定部63が、ステップS104にて推定された異常なパラメータから異常な機器を特定する(ステップS106)。例えば、本実施形態では、異常パラメータ推定手段50により異常なパラメータであると推定されたポンプ圧力のリストから、給水ポンプが最も異常な可能性が高い機器として特定される。
【0034】
次に、リスク計算手段70が、ステップS106にて特定された機器のプラントへのリスクを計算する(ステップS107)。本実施形態では、炉心損傷をリスクの対象とし、起因事象A(例えば、地震や火災など)の発生、出力制御、給水および減圧の故障のいずれもが同時に生じたときに炉心損傷が発生する場合を想定している(図9参照)。ここで、起因事象Aの発生確率(P0)を1×10^(-2)、出力制御の故障確率(P1)を1×10^(-2)、減圧の故障確率(P3)を1×10^(-2)とする。また、給水ポンプと給水制御装置のいずれかが故障した場合に給水機能が喪失するものとし(図10参照)、その発生確率(P2)は、給水ポンプと給水制御装置の故障確率の和として1×10^(-2)回/年である。(図11参照)。したがって、現状で機器に異常がないときに炉心損傷が発生する確率(炉心損傷頻度P)は、P0×P1×P2×P3=1×10^(-2)×1×10-2×1×10^(-2)×1×10^(-2)=1×10^(-8)回/年と算出される。一方、ステップS106にて特定された給水ポンプが、現状で故障している場合には、P2=1となり、炉心損傷頻度P=1×10^(-6)回/年と算出される。なお、起因事象が複数存在する場合には、起因事象ごとに炉心損傷頻度を算出し、その和を炉心損傷頻度Pとする。
【0035】
次に、優先度判定手段80が、ステップS107にて計算されたリスクに基づき、異常な機器の保守優先度を判定する(ステップS108)。優先度判定手段80は、通常、リスクが所定値以上となったとき優先度が高いとして保守作業を早期に実施する。例えば、機器故障時の炉心損傷頻度が1.0×10^(-7)以上である場合、その機器の保守優先度が高いとして保守を計画よりも早めて行う。一方、炉心損傷頻度が1.0×10^(-7)未満である場合、保守優先度が低いとして当初の計画通り定期検査時に保守を行う。上記例では給水ポンプ故障時の炉心損傷頻度が1.0×10^(-6)であるので、給水ポンプの保守優先度は高いと判定される。なお、特定された保守対象機器、算出された優先度などの結果は、結果出力手段によりディスプレイ画面への表示等で出力される。」

9 甲9(Safety Instrumented Systems Verification: Practical Probabilistic Calculations, William. M. Goble,et.al, ISA(The Instrumentation, Systems and Automation Society),2005,pp.30-39,54-57)
甲9には、以下のとおりの記載がある。

(31頁3?25行)
(当審訳)
式3-2により機器の故障率が計算できる。式3-2のΔNfは、単位期間において故障した装置の個数、Nsは、単位期間の最後まで稼働した装置の個数、Δtは、機器の故障間隔である。Table3-1は、すべてのユニットの故障時間と、セットの動作時間間隔中の故障率の計算を示す。Table3-1には、33時間後に1個目の機器が故障し、96時間後に2個目の機器が故障する例を示す。96時間経過後の機器の故障率は、式3-2より、0.000567(=1÷(96-33)×28)(故障/時間)と算出される。

「The failure rate could then be obtained by dividing the number of failures by the operating hours. A detailed operational hour calculation is shown in Table 3-4.」

(35頁19行?37頁2行、37頁Table3-4)
(当審訳)
故障した機器数を稼働時間で割ることにより故障率が得られる。Table3-4の例では、409時間から8339時間までの故障率を、この間に故障した機器数19(=26-7)を各機器の総稼働時間120152時間で割って0.000158(故障/時間)と算出している

「EXAMPLE4-10
Problem: A valve used in a safety instrumented system has a failure rate of 0.002 failures per year. The valve is not tested. It will be used during the lifetime of the process unit, 25 years. The demand is estimated to be once every 100 years. What is the probability of failure during a demand?
Solution: Equation (4-17) gives the average probability of failure. This is appropriate for this problem using a time interval of 25 years. The average probability of failure=0.002 x 25/2=0.025(57頁1?8行)
(当審訳)
例 4-10
問題:安全計装システムで使用されるバルブの故障率は、年間0.002回である。バルブはテストされていない。プロセスユニットの寿命である25年間使用される。要求は100年に1回と推定される。要求中に失敗する確率はいくらか?
解答:式(4-17)は、失敗の平均確率を与える。これは、25年の時間間隔を使用するこの問題に適する。失敗の平均確率=0.002×25/2=0.025

「EXAMPLE4-11
Problem: A valve is used in a safety instrumented system. It has a failure rate of 0.002 failures per year. The valve is tested each year. The inspection and test will detect broken valve stems, tight packing, jammed actuators and leakage. Seat leakage and sealing ability of the valve are not tested. It is estimated that 70 % of the failures are detected during that test. The valve is used for the lifetime of the process unit, 25 years. The demand is estimated to be once every 100 years. What is the average probability of failure?
Solution: Equation (4-8) is used. The average probability of failure equals
(0.7)x0.002x1/2+(1-0.7)x0.002x25/2=0.0082」(57頁14?23行)
(当審訳)
例4-11
問題:安全計装システムでバルブが使用されている。故障率は年間0.002回である。バルブは毎年テストされる。検査とテストにより、バルブシステムの破損、パッキングの密集、アクチュエーターの詰まり、及び漏れが検出される。バルブのシート漏れとシール能力はテストされない。テスト中に障害の70%が検出されたと推定される。バルブは、プロセスユニットの寿命である25年間使用される。要求は、100年に1回と推定される。失敗の平均確率はいくらか?
解答:式(4-8)を使用する。平均故障確率は、(0.7)×0.002×1/2+(1-0.7)×0.002×25/2=0.0082になる。

10 甲10(Risk-based Inspection Methodology - API RECOMMENDED PRACTICE 581,Third Edition, API(American Petroleum Institute),April 2016,pp.1,23,43)
甲10には、以下のとおりの記載がある。
「This recommended practice, API RP 581, Risk-Based Inspection Methodology, provides quantitative procedures to establish an inspection program using risk-based methods for pressurized fixed equipment including pressure vessel, piping, tankage, pressure relief devices (PRDs), and heat exchanger tube bundles.」(1頁3?5行)
(当審訳)
この推奨プラクティスであるAPI RP 581、リスクベースの検査方法は、圧力容器、配管、単ケージ、圧力逃がし装置(PRD)、熱交換器チューブバンドルなどの加圧固定装置のリスクベースの方法を使用する検査プログラムを確立するための定量的手順を提供する。

「The calculation of risk outlined in API RP 581 involves the determination of a probability of failure (POF) combined with the consequence of failure (COF).」(1頁11?12行)
(当審訳)
API RP 581で概説されているリスクの計算には、失敗の結果(COF)と組み合わせた失敗の確率(POF)の決定が含まれる。

「Inspection effectiveness is introduced into the POF calculation using Bayesian Analysis, which updates the POF when additional data is gathered through inspection.」(23頁30?31行)
(当審訳)
検査の有効性は、ベイジアン分析を用いたPOFの計算に導入される。ベイジアン分析は、検査を通じて追加のデータが収集されたときにPOFを更新する。

「As previously discussed, Weibull parameters for the failure on demand curves have been determined based on the analysis of a sample set of data. Initially, these values are default (suggested) parameters for the listed fluid services. As inspection data is collected for each PRD, these parameters may be adjusted for each device based on the inspection results.
Applying a Bayesian updating approach to problems of this type is common to adjust probabilities as new information is collected.」(43頁22?27行)
(当審訳)
前に説明したように、要求時故障(failure on demand)曲線のワイブルパラメータは、データのサンプルセットの分析に基づいて決定される。最初、これらの値は、リストされた流体サービスのデフォルト(推奨)パラメータである。PRDごとに検査データが収集されるため、これらのパラメータは、検査結果に基づいてデバイスごとに調整できる。この種の問題にベイジアン更新アプローチを適用することは、新たな情報が収集されるときに確率を調整するために一般的である。

第5 申立理由に対する当審の判断
1 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「APM(企業の資産のパフォーマンスを管理する)ソフトウェア」が、EAM(企業資産管理)内のプロセスについて、RCM(信頼性中心保全)を行うことと、本件発明1の「流体の処理を行うプラントの保全管理方法」とは、いずれも、「プロセスの保全管理方法」である点で共通する。
イ 引用発明の「KPI(重要業績評価指標)をダッシュボードまたはスコアカードのレイアウトに表示し、KPIがしきい値をこえたときに自動アラートを提供する」ことと、本願発明の「コンピュータにより、前記各事故に係る前記事故起因事象の発生頻度と、当該事故に係る前記安全装置についての失敗確率との乗算値であるリスクを算出し、予め設定したしきい値と比較する工程と、前記複数の事故につき、算出した前記リスクが前記しきい値より大きい場合に、当該リスクに係る前記機器及び前記安全装置を保全作業対象候補として、コンピュータによりリストアップする工程」とは、いずれも、「値が、予め設定したしきい値と比較する工程と、値が前記しきい値より大きい場合に、コンピュータにより報知する工程」である点で共通する。
ウ 以上、ア、イによると、本件発明1と引用発明とは、以下の一致点、相違点を有する。
[一致点]
プロセスの保全管理方法であって、
値が、予め設定したしきい値と比較する工程と、
値が前記しきい値より大きい場合に、コンピュータにより報知する工程と、
を含むことを特徴とするプロセスの保全管理方法。
[相違点1]
「保全管理方法」における「プロセス」が、本件発明1では、「流体の処理を行うプラント」であるのに対し、引用発明では、EAM(企業資産管理)内のプロセスであり、「流体の処理を行うプラント」とは特定されていない点。
[相違点2]
本件発明1が、「前記プラントを構成する機器にて発生すると想定される事故として複数抽出された事故を示す情報をコンピュータが取得する工程と、前記情報によって示される複数の事故について、各事故の起因となり得る事故起因事象の発生頻度と、当該事故の発生を防止するための安全装置の正常動作の失敗確率とを、コンピュータが取得する工程と」を有し、「コンピュータにより、前記各事故に係る前記事故起因事象の発生頻度と、当該事故に係る前記安全装置についての失敗確率との乗算値であるリスクを算出」するのに対し、引用発明では、そうではない点。
[相違点3]
「予め設定したしきい値と比較する」「値」が、本件発明1では、「前記各事故に係る前記事故起因事象の発生頻度と、当該事故に係る前記安全装置についての失敗確率との乗算値であるリスク」であるのに対し、引用発明では、「KPI(重要業績評価指標)」である点。
[相違点4]
「値が前記しきい値より大きい場合に、コンピュータにより報知する工程」が、本件発明1では、「当該リスクに係る前記機器及び前記安全装置を保全作業対象候補として、コンピュータによりリストアップ」するのに対し、引用発明では、KPIがしきい値をこえたときに自動アラートを提供するものである点。
(2)相違点に対する判断
[相違点2]、[相違点3]、[相違点4]について、まとめて検討する。
甲5発明は、事故の起因となり得る複数の事故起因事象の発生頻度と、各事故起因事象の発生を防止又は軽減するための安全装置の正常動作の失敗確率との乗算値の合計値を算出し、合計値がしきい値より大きい場合に、リスクの低減が必要になるということを一般的に示したものである。
引用発明の「KPI(重要業績評価指数)」について、甲7に現在の機器の状態を表示する例は挙げられているが、引用発明のMeridiumソフトウェアが、国際標準規格61508に準じたものであるとしても、「KPI(重要業績評価指数)」として機器の状態ではなく、事故が発生する確率を採用する動機はないから、甲5発明の「事故の起因となり得る複数の事故起因事象の発生頻度と、各事故起因事象の発生を防止又は軽減するための安全装置の正常動作の失敗確率との乗算値の合計値」を、引用発明の「KPI(重要業績評価指標)」として採用することが、当業者が容易に想到し得た事項とはいえない。
また、甲5発明は、事故の起因となり得る複数の事故起因事象の発生頻度と、各事故起因事象の発生を防止又は軽減するための安全装置の正常動作の失敗確率との乗算値の合計値、すなわち、リスクの合計値を算出して、合計値をしきい値と比較しており、個々のリスクについて、当該リスクに係る機器及び安全装置を評価するものではないから、引用発明の「KPI(重要業績評価指標)」として、甲5発明の「事故の起因となり得る複数の事故起因事象の発生頻度と、各事故起因事象の発生を防止又は軽減するための安全装置の正常動作の失敗確率との乗算値の合計値」を採用したとしても、上記[相違点4]に係る構成は得られない。
そして、甲1、甲2は、RCM(信頼性中心保全)一般について示され、甲6には、甲4のソフトウェアのプレアラーム機能、甲7には、甲4のソフトウェアの機器状態の表示機能、甲9には、機器の故障率の計算、甲10には、リスクベースの検査方法について、それぞれ、記載されているが、いずれも、上記[相違点2]?[相違点4]を開示するものではない。
また、甲3は、甲5と同じ国際標準規格を示した文献であり、「IEC 6150801は、プロセス/マシンレベルでのハザード及びリスク分析を実行して、アプリケーションのリスク基準を満たすために必要なリスク削減の量を決定することを要求する。リスクは、危険なイベントの結果(または重大度)と頻度(または確率)の両方の評価に基づく。」との記載はあるが、上記と同様の理由により、引用発明に甲3に記載された事項を採用する動機はない。
また、甲8には、原子力発電プラントを構成する複数の機器の中から保守すべき機器を特定する機器診断システムにおいて、異常の可能性が高い機器(給水ポンプ)を特定し、起因事象(例えば、地震や火災など)の発生、出力制御、給水および減圧の故障のいずれもが同時に生じたときに炉心損傷が発生する場合を想定し、機器故障時の炉心損傷頻度がしきい値以上である場合、その機器の保守優先度が高いとして保守を計画よりも早めて行うことが記載されている。
しかしながら、甲8には、異常の可能性が高い機器について機器故障時の炉心損傷頻度を想定するものであり、「想定される事故として複数抽出された事故」について、「各事故の起因となり得る事故起因事象の発生頻度と、当該事故の発生を防止するための安全装置の正常動作の失敗確率」とに基づいてリスクを算出することは記載されていないし、引用発明の「KPI(重要業績評価指標)」として、甲8の「炉心損傷頻度」を採用する動機もない。
したがって、引用発明、甲5発明、甲1?甲3、甲6?甲10に記載された事項に基づいて、当業者が上記[相違点2]?[相違点4]に係る構成を容易に想到し得た事項であるとはいえない。
よって、上記[相違点1]について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明、甲5発明、甲1?甲3、甲6?甲10に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2 本件発明2?4について
本件発明2?4は、本件発明1を引用し、さらに、限定を付加したものである。
本件発明2?4と引用発明とは、少なくとも、上記[相違点1]?[相違点4]において相違する。
したがって、本件発明2?4は、上記1に示した理由と同様の理由により、引用発明、甲5発明、甲1?甲3、甲6?甲10に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 本件発明5について
本件発明5は、本件発明1の「プラントの保全管理方法」の発明を「プラントの保全管理システム」として記載した発明であって、上記[相違点1]?[相違点4]に対応する構成を有しているから、上記1に示した理由と同様の理由により、引用発明、甲5発明、甲1?甲3、甲6?甲10に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4 本件発明6?8について
本件発明6?8は、本件発明5を引用し、さらに、限定を付加したものである。
本件発明6?8と引用発明とは、少なくとも、上記[相違点1]?[相違点4]に対応する構成において相違する。
したがって、本件発明6?8は、上記1、3に示した理由と同様の理由により、引用発明、甲5発明、甲1?甲3、甲6?甲10に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

5 小括
以上によれば、本件発明1?本件発明8は、引用発明、甲5発明、甲1?甲3、甲6?甲10に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第6 むすび
以上のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2021-11-10 
出願番号 特願2020-504030(P2020-504030)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (G06Q)
最終処分 維持  
前審関与審査官 上田 威  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 吉田 誠
高瀬 勤
登録日 2021-01-07 
登録番号 特許第6821085号(P6821085)
権利者 日揮グローバル株式会社
発明の名称 プラントの保全管理方法及び保全管理システム  
代理人 特許業務法人弥生特許事務所  
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