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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 C11D |
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管理番号 | 1379891 |
異議申立番号 | 異議2021-700604 |
総通号数 | 264 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2021-12-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2021-06-25 |
確定日 | 2021-11-26 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6808714号発明「洗浄組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6808714号の請求項1ないし23に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件特許に係る出願は、平成28年(2016年)7月28日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2015年8月3日 米国)を国際出願日とする出願であって、令和2年12月11日に特許権の設定登録(請求項の数23)がされ、令和3年1月6日に特許掲載公報が発行され、同年6月25日に合同会社SAS(以下「申立人」という。)により請求項1?23の係る特許に対して特許異議の申立がされたものである。 第2 本件発明について 1 本件発明1?23 本件請求項1?23に係る発明(以下、「本件発明1」?「本件発明23」といい、まとめて「本件発明」ということもある。)は、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 (a)0.5?25重量パーセントのアルカリ性化合物、 (b)1?25重量パーセントのアルコールアミン化合物、 (c)0.1?20重量%のヒドロキシルアンモニウム化合物、 (d)5?95重量%の有機溶媒、 (e)0.1?5重量%の腐食防止剤化合物、および (f)2?25重量%の水 を含み、12.4以上のpHを有する組成物。 【請求項2】 前記アルカリ性化合物が、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、2-ヒドロキシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。 【請求項3】 前記アルコールアミン化合物が、モノエタノールアミン(MEA)、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2-(2-アミノエトキシ)エタノール、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルエタノールアミン、N-ブチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジグリコールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、N,N-ジブチルエタノールアミン、N-メチル-N-エチルエタノールアミンおよびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。 【請求項4】 前記ヒドロキシルアンモニウム化合物が、硫酸ヒドロキシルアンモニウム、塩酸ヒドロキシルアンモニウム、硝酸ヒドロキシルアンモニウムおよびリン酸ヒドロキシルアンモニウムからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。 【請求項5】 前記ヒドロキシルアンモニウム化合物が、硫酸ヒドロキシルアンモニウムである、請求項4に記載の組成物。 【請求項6】 前記溶媒が、N-メチルピロリドン(NMP)、N-エチルピロリドン(NEP)、γ-ブチロラクトン、メチルエチルケトン(MEK)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルスルホン、ジメチルホルムアミド、N-メチルホルムアミド、ホルムアミド、テトラメチル尿素、テトラヒドロフルフリルアルコール(THFA)およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。 【請求項7】 前記溶媒が、ジメチルスルホキシド(DMSO)またはテトラヒドロフルフリルアルコール(THFA)である、請求項6に記載の組成物。 【請求項8】 前記腐食防止剤化合物が、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、置換トリアゾールまたは置換ベンゾトリアゾールである、請求項1に記載の組成物。 【請求項9】 前記腐食防止剤化合物が、5-メチル-1H-ベンゾトリアゾールである、請求項8に記載の組成物。 【請求項10】 前記腐食防止剤化合物の量が、全組成物の0.5重量%以下である、請求項9に記載の組成物。 【請求項11】 前記腐食防止剤化合物の量が、全組成物の0.3重量%以下である、請求項9に記載の組成物。 【請求項12】 前記腐食防止剤化合物が、構造(I) 【化1】 ![]() の化合物であって、式中、 R^(1)は水素、置換または非置換C_(1)-C_(12)直鎖または分岐アルキル、置換または非置換C_(5)-C_(10)シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキル、および置換または非置換C_(6)-C_(12)アリールまたはヘテロアリールからなる群から選択され、 R^(2)?R^(5)はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、置換または非置換C_(1)-C_(12)直鎖または分岐アルキル、置換または非置換C_(5)-C_(10)シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキル、および置換または非置換C_(6)-C_(12)アリールまたはヘテロアリールからなる群から選択されるか、または隣接する任意の2個のR^(2)?R^(5)が、それらが結合する環炭素原子と共に6員環を形成する、請求項1に記載の組成物。 【請求項13】 前記腐食防止剤化合物が、 【化2】 ![]() 【化3】 ![]() である、請求項12に記載の組成物。 【請求項14】 半導体基板上における未露光の感光性ポリマーフィルム、露光した架橋ポリマーフィルムまたは非感光性ポリマーフィルムを、65℃?85℃の温度で、請求項1?請求項13のいずれか1項に記載の組成物を用いて処理することを含む、半導体デバイスの製造方法。 【請求項15】 (i)半導体基板上の、少なくとも1種のポリイミドポリマーまたはポリイミド前駆体ポリマーを含有する感光性ポリマーフィルムを、パターニングして、パターン化されたフィルムを形成する工程、 (ii)前記パターン化されたフィルムを、イオン注入、プラズマもしくはウエットエッチング、または金属蒸着で処理する工程、および (iii)請求項1?請求項13のいずれか1項に記載の組成物を使用して前記感光性ポリマーフィルムを剥離する工程、 を含む、半導体デバイスの製造方法。 【請求項16】 (i)アブレーション条件下でポリマーフィルムをレーザーに露光させる工程、および (ii)請求項1?請求項13のいずれか1項に記載の組成物を用いてレーザーアブレーションデブリを洗浄する工程を含む、半導体デバイスの製造方法。 【請求項17】 (i)ポリマーフィルムを含む半導体基板を提供すること、 (ii)任意で、光または他の照射光源を用いて前記ポリマーフィルムをフラッド露光すること、 (iii)任意で、露光処理後の前記ポリマーフィルムを露光後ベーク処理にかけること、 (iv)任意で、露光後ベークされたポリマーフィルムをハードベークにかけること、 (v)レーザーを用いてレーザーアブレーションプロセスにより前記ポリマーフィルム内にビアを開口して、パターン化されたポリマーフィルムを形成すること、 (vi)組成物を用いて前記パターン化されたポリマーフィルムからレーザーアブレーション後デブリを除去すること、 (vii)ビア上に溶融した導電性ペーストを塗布することによって、ビアの内側を含む領域に導電性ポストを形成すること、 (viii)任意で、ポリマーフィルムの上から導電性ペーストを除去するために、前記パターン化されたポリマーフィルムを導電性ペースト除去剤溶液ですすぐこと、 (ix)高温で組成物を用いて前記パターン化されたポリマーフィルムの非アブレーション領域を除去すること、および (x)任意で、前記パターン化されたポリマーフィルムを水または水溶液ですすぎ、残留物を除去すること、 を含むプロセスであって、 (vi)および(ix)の工程で用いられる前記組成物の各々は、請求項1?請求項13のいずれか1項に記載の組成物である、プロセス。 【請求項18】 前記基板が銅であり、前記ポリマーフィルムが、(a)置換または非置換直鎖アルケニル基および置換または非置換直鎖アルキニル基から選択される少なくとも1つの官能基を持つ末端封鎖基を有する、少なくとも1種の可溶性ポリイミドポリマー、(b)少なくとも1種の反応性官能性化合物(RFC)、(c)少なくとも1種の開始剤、および(d)少なくとも1種の溶媒、を含む組成物から得られる、請求項17に記載のプロセス。 【請求項19】 レーザーアブレーションが、マスクを用いた投影エキシマレーザーを使用することにより達成される、請求項18に記載のプロセス。 【請求項20】 レーザーの波長が、355nm以下である、請求項18に記載のプロセス。 【請求項21】 レーザーの波長が、308nm以下である、請求項18に記載のプロセス。 【請求項22】 (a)アルカリ性化合物、(b)アルコールアミン化合物、(c)ヒドロキシルアンモニウム化合物、(d)有機溶媒、(e)腐食防止剤化合物、および(f)水、を含む組成物であって、前記組成物のpHが12.4以上であり、前記有機溶媒が水に対し0.5?0.8の相対エネルギー差(RED)を有する、組成物。 【請求項23】 25℃で5cSt?12cStの動粘度を有する、請求項22に記載の組成物。」 2 本件明細書の記載 本件特許明細書には次の記載がある。 (1)「【0002】 ポリマーフィルムのレーザーアブレーションの間、デブリが常に形成され、その量およびタイプは、フィルムの組成およびアブレーションの処理条件に依存する。このデブリは大部分がテラス上に堆積されるが、一部は構造体の底部および内壁へ到達し得る。はんだ付けや金属蒸着などのさらなる構成要素の構築工程を可能にするためには、完全な除去が必須である。フィルムに影響を与えることなくそのようなデブリを化学洗浄することは、本発明の焦点の1つである。さらに、本発明の組成物の設計は、組成物が高温で効率的な剥離剤として作用することを可能にする。 【0003】 本開示は、室温(たとえば、25℃)でのレーザーアブレーション後洗浄プロセスのための洗浄組成物を記載し、当該洗浄組成物は、再加工プロセスのためおよび/または高温(たとえば、65?85℃)での後処理後のためのポリマー層の剥離組成物としても働き得る。 ・・・ 【0008】 本開示の幾つかの実施形態は、レーザーアブレーションプロセスの後、残留物を洗浄するのに適し、また、異なる処理条件下では、ポリマー層の剥離にも適する組成物に関する。レーザーアブレーション後プロセスの後に洗浄組成物として使用される場合、半導体基板上のポリマー層は、たとえ除去されたとしてもわずかしか除去されないことが必須である。剥離プロセスで使用される場合、ポリマー層の全てが除去され、下にある基板が清浄であることが重要である。本発明者らは、予想外にも、本明細書に記載の組成物が上記の洗浄プロセスおよび剥離プロセスの両方において有効に使用され得ることを発見した。」 (2)本件発明における各成分についての記載 ア (a)アルカリ性化合物 「【0010】 本開示の洗浄/剥離組成物に使用され得る前記アルカリ性化合物(a)は、特に限定されない。幾つかの実施形態では、前記アルカリ性化合物は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウムおよび重炭酸カリウムなどの無機塩基、ならびに第4級アンモニウム水酸化物などの有機塩基を含む。好ましいアルカリ性化合物は、第4級アンモニウム水酸化物である。前記第4級アンモニウム水酸化物の例としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、2-ヒドロキシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)およびそれらの混合物からなる群から選択することができる第4級アンモニウム水酸化物が含まれるが、これらに限定されるものではない。好ましい第4級アンモニウム水酸化物は、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドおよび2-ヒドロキシルトリメチルアンモニウムヒドロキシドである。より好ましい第4級アンモニウム水酸化物はテトラメチルアンモニウムヒドロキシドである。」 イ (b)成分 「【0012】 本開示の洗浄/剥離組成物に使用される前記アルコールアミン化合物(b)は、特に限定されない。これらのアルコールアミン化合物としては、モノエタノールアミン(MEA)、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2-(2-アミノエトキシ)エタノール、3-アミノ-1-プロパノール、アミノ-2-プロパノール、2-アミノ-1-ブタノール、5-アミノ-1-ペンタノール、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、3-メチルアミノ-1-プロパノール、4-アミノ-1-ブタノール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノエタン、1-ジメチルアミノ-2-プロパノール、1-アミノ-1-シクロペンタンメタノール、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、2-イソプロピルアミノエタノール、2-プロピルアミノエタノール、2-(tert-ブチルアミノ)エタノール、5-アミノ-2,2-ジメチルペンタノール、2-アミノ-3-メチル-1-ブタノール、N-メチルアミノエタノール、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルエタノールアミン、N-ブチルエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、N,N-ジブチルエタノールアミン、N-メチル-N-エチルエタノールアミンおよびこれらのアルコールアミンの2種以上の混合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。」 ウ (c)ヒドロキシルアンモニウム化合物 「【0014】 本開示の洗浄/剥離組成物に使用され得る前記ヒドロキシルアンモニウム化合物(c)は、特に限定されない。ヒドロキシルアンモニウム化合物の例としては、硫酸ヒドロキシルアンモニウム、塩酸ヒドロキシルアンモニウム、硝酸ヒドロキシルアンモニウム、リン酸ヒドロキシルアンモニウム、過塩素酸ヒドロキシルアンモニウム、クエン酸ヒドロキシルアンモニウム、および酢酸ヒドロキシルアンモニウムが含まれるが、これらに限定されるものではない。」 エ (d)有機溶剤 「【0016】 本開示の組成物における有機溶剤(d)(たとえば、水混和性有機溶媒)としては、水との相溶性の高いもの、たとえば、N-メチルピロリドン(NMP)、N-エチルピロリドン(NEP)、γ-ブチロラクトン、メチルエチルケトン(MEK)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルスルホン、ジメチルホルムアミド、N-メチルホルムアミド、ホルムアミド、テトラメチル尿素、テトラヒドロフルフリルアルコール(THFA)、およびそれらの混合物が含まれ得る。幾つかの実施形態では、前記有機溶媒は、水に対し、約0.8以下(たとえば、約0.75以下、約0.7以下)および/または約0.5以上(たとえば、約0.55以上、約0.6以上、または約0.65以上)の相対エネルギー差(RED)を有するものから選択される。REDは、ハンセン空間におけるハンセンパラメータとハンセン空間における相互作用半径(Ro)との距離の比(Ra)である。Raは、次の式により定義される:(Ra)^(2)=4(δ_(d2)-δ_(d1))^(2)+(δ_(p2)-δ_(p1))^(2)+(δ_(h2)-δ_(h1))^(2)(式中、δ_(d)、δ_(p)、およびδ_(h)はそれぞれ分散、分子間力、および分子間水素結合の間のエネルギーである。)ハンセンパラメータのさらなる詳細は、次の参考文献に記載される:「Hansen, Charles (2007).Hansen Solubility Parameters:A user’s handbook, Second Edition.Boca Raton, Fla:CRC Press.ISBN 978-0-8493-7248-3」。 【0017】 特定の実施形態では、前記有機溶媒(たとえば、水混和性有機溶媒)は、グリコールエーテルであってもよい。前記グリコールエーテルとしては、グリコールモノ(C_(1)-C_(6))アルキルエーテルおよびグリコールジ(C_(1)-C_(6))アルキルエーテルが含まれてもよく、これには(C_(1)-C_(20))アルカンジオール、(C_(1)-C_(6))アルキルエーテル、および(C_(1)-C_(20))アルカンジオールジ(C_(1)-C_(6))アルキルエーテルが含まれるが、これらに限定されるものではない。グリコールエーテルの例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、酢酸トリエチレングリコールエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、モノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールジイソプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、1-メトキシ-2-ブタノール、2-メトキシ-1-ブタノール、2-メトキシ-2-メチルブタノール、1,1-ジメトキシエタン、および2-(2-ブトキシエトキシ)エタノールが含まれる。グリコールエーテルのより典型的な例は、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリ(プロピレングリコール)モノメチルエーテルおよび2-(2-ブトキシエトキシ)エタノールである。 【0018】 本開示の組成物における好ましい溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)およびテトラヒドロフルフリルアルコール(THFA)である。より好ましい溶媒は、テトラヒドロフルフリルアルコール(THFA)である。」 オ (e)腐食防止剤 「【0020】 本開示の洗浄/剥離組成物に使用され得る腐食防止剤化合物(e)としては、芳香族ヒドロキシル化合物、アセチレン系アルコール、カルボキシル基含有有機化合物およびその無水物、ならびにトリアゾール化合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。」(当審注;段落【0027】まで続くが摘記を省略する。) (3)本件発明の各成分の量についての記載 ア 「【0009】 幾つかの実施形態では、本明細書に記載の洗浄/剥離組成物は、(a)0.5?25重量パーセントのアルカリ性化合物、(b)1?25重量パーセントのアルコールアミン化合物、(c)0.1?20重量%のヒドロキシルアンモニウム化合物、(d)5?95重量%の有機溶媒、(e)0.1?5重量%の腐食防止剤化合物、および(f)2?25重量%の水を含む。」 イ (a)の量 「【0011】 本開示の洗浄/剥離組成物に使用されるアルカリ性化合物(a)は、本開示の組成物の総量に対し、約0.5重量%以上(たとえば、約1重量%以上、約2.5重量%以上、または約5重量%以上)?約25重量%以下(たとえば、約20重量%以下、約17.5重量%以下、約15重量%以下、約12.5重量%以下、または約10重量%以下)の量で存在する。」 ウ (b)の量 「【0013】 本開示の洗浄/剥離組成物に使用されるアルコールアミン化合物(b)は、組成物の総量に対し、約1重量%以上(たとえば、約2重量%以上、約3重量%以上、または約4重量%以上)?約25重量%以下(たとえば、約22.5重量%以下、約20重量%以下、約17.5重量%以下、約15重量%以下、約12.5重量%以下、約10重量%以下、約7.5重量%以下、または約5重量%以下)の量で存在する。」 エ (c)の量 「【0015】 本開示の洗浄/剥離組成物に使用されるヒドロキシルアンモニウム化合物は、組成物の総量に対し、約0.1重量%以上(たとえば、約0.5重量%以上、約1重量%以上、約1.5重量%以上、または約2重量%以上)?約20重量%以下(たとえば、約17重量%以下、約14重量%以下、約11重量%以下、約8重量%以下、または約5重量%以下)の量で存在する。」 オ (d)の量 「【0019】 本開示の洗浄/剥離組成物に使用される溶媒は、組成物の総量に対し、約5重量%以上(たとえば、約10重量%以上、約15重量%以上、約20重量%以上、約25重量%以上、約30重量%以上、約35重量%以上、約40重量%以上、または約45重量%以上)?約95重量%以下(たとえば、約90重量%以下、約85重量%以下、約80重量%以下、約75重量%以下、約70重量%以下、約65重量%以下、約60重量%以下、約55重量%以下、または約50重量%以下)の量で存在する。」 カ (e)の量 「【0028】 本開示の洗浄/剥離組成物に使用される腐食防止剤化合物は、前記組成物の総量に対し、約0.1重量%以上(たとえば、約0.2重量%以上、約0.4重量%以上、約0.6重量%以上、約0.8重量%以上、または約1重量%以上)?約5重量%以下(たとえば、約4重量%以下、約3重量%以下、約2重量%以下、約1.5重量%以下、約1重量%以下、約0.5重量%以下、または約0.3重量%以下)の量で存在する。幾つかの実施形態では、腐食防止剤の好ましい量は、前記組成物の総量に対して0.2重量%?0.4重量%である。」 キ (f)の量 「【0029】 本開示の洗浄/剥離組成物に使用される(脱イオン水、純水、超純水などの)水の量は、前記組成物の総量に対し、約2重量%以上(たとえば、約4重量%以上、約6重量%以上、または約8重量%以上)?約25重量%以下(たとえば、約20重量%以下、約17.5重量%以下、約15重量%以下、約12.5重量%以下、または約10重量%以下)である。」 (4)実施例 「【0082】 ・・・ 洗浄/剥離組成物の実施例 【0083】 水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)2.5部、モノエタノールアミン4.3部、硫酸ヒドロキシルアンモニウム0.5部、テトラヒドロフルフリルアルコール(THFA)85部、5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール0.2部、および水7.5部を用いて組成物を調製した。当該洗浄/剥離組成物のpHは、メトロームpH電極(部品番号6.0233/100)を備えたメトロームモデル716ベースユニットを用いて測定すると14.9であった。前記洗浄/剥離組成物の動粘度は、キャノン-フェンスケ粘度計150サイズを用いて25℃で測定した。動粘度は8.5cStであった。 洗浄手順の実施例 【0084】 積層ウエハLA-1は、1”×2”片に切断し、上記で得られた洗浄/剥離組成物300mLを含有する600mLのビーカーに垂直に配置した。前記ビーカーの内容物を25℃で磁気棒を用いて攪拌した。温度は、温度調節器を用いて一定に維持した。5分後に、ウエハ片を取り出し、すぐに水ですすぎ、窒素パージを用いて乾燥させた。洗浄の有効性は、光学顕微鏡を用いて、および金のスパッタリング後SEMにより、決定した。ウエハのトップダウン画像および断面画像は両方、洗浄後に残留物がないことを明らかにした。膜厚損失の程度は、Dektakプロフィルメータを使用して残りの膜の厚さを測定することによって決定した。アブレーションデブリはフィルムに損傷を与えずに完全に除去された。膜厚の損失は観察されなかった。 剥離手順の実施例 【0085】 積層ウエハLA-1は、1”×2”片に切断し、上記で得られた洗浄/剥離組成物300mLを含有する600mLのビーカーに垂直に配置した。前記ビーカーの内容物を85℃で磁気棒を用いて攪拌した。温度は、温度調節器を用いて一定に維持した。60分後に、ウエハ片を取り出し、すぐに水ですすぎ、窒素パージを用いて乾燥させた。剥離の有効性は、光学顕微鏡を用いて、および金のスパッタリング後SEMにより、決定した。ウエハのトップダウン画像および断面画像は両方、洗浄後に残留物がないことを明らかにした。膜厚損失の程度は、Dektakプロフィルメータを使用して残りの膜の厚さを測定することによって決定した。レーザーアブレーション後に残留するポリマー層の完全な剥離が観察された。」 第3 特許異議の申立についての判断 1 特許異議の申立の概要 (1)特許異議の申立の概要は次のように、本件発明1?23は、特許法第36条第6項第1号に規定される要件を満たさないというものであり、申立人は次の甲第1号証を提示した。 (2)甲第1号証(特開2012-227291号公報)の記載事項 甲第1号証には、次の記載がある。 ア 「【請求項7】 水と、塩基性有機化合物と、酸性有機化合物と、有機溶媒とを組み合わせて含有し、pHが1.5?5.0に調整されたことを特徴とする半導体基板洗浄用の洗浄組成物。 【請求項8】 前記有機溶媒を洗浄組成物中に5?40質量%含有させたことを特徴とする請求項7に記載の洗浄組成物。」 イ 「【0014】 本発明の洗浄組成物は、水(a)と、塩基性有機化合物(b)と、特定の酸性有機化合物(c)と、有機溶媒(d)とを組み合わせて含有し、pHを酸性の特定領域に調整したことを特徴とする。・・・ 【0027】 洗浄組成物中における水溶性有機溶剤の含有量は、洗浄組成物の全質量に対して、3?49質量%の濃度で使用することが好ましく、5?40質量%の濃度で使用することがより好ましく、8?30質量%の濃度で使用することが特に好ましい。上記下限値以上とすることで、有機溶媒を導入したことによる特有の作用、具体的にはメタルの表面性状の維持や剥離の防止、シリコンウエハの腐食抑制効果を高いレベルで引き出すことができる。一方、上記上限値以下とすることで、洗浄組成物の十分な洗浄性能を妨げず好ましい。なお、上記下限値は好ましい実施形態における設定として特に重要であり、洗浄対象となる材料や洗浄組成物の成分によっては、これが過少量であるとかえって洗浄性を劣化させることにもなる。」 ウ 「【0056】 <実施例、比較例> 以下の表1に示す成分をそこに示した組成(質量%)で水に含有させて洗浄組成物101?127を調液した(実施例)。水は、半導体製造工程で使用される一般的な超純水を用いた。また、上記実施例に対し以下の表1に示す成分組成について代え、洗浄組成物c11?c17(比較例)を調液した。なお、表中に組成(質量%、ppm)を示した成分はこの量を含有させ、塩基性有機化合物は各試料について示したpHになる量で含有させた。これらに水の組成(質量%)を合わせて100質量%となることを意味する。 【0057】 <洗浄試験> 上記第1及び第2実施形態について、ビアホール形成後、パターンウエハを走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)により観察したところ、いずれもビアホール壁面にプラズマエッチング残渣及びアッシング残渣が認められた(図1(c)及び図2(c)参照)。また、上記第3実施形態について、配線形成後、パターンウエハをSEMにより観察したところ、配線の上面及び側面にプラズマエッチング残渣及びアッシング残渣が認められた(図3(c)参照)。なお、各評価についてどの実施形態を対象にしたかは、各評価項目に図面の番号を記載することにより示している。複数の実施形態を対象としたものについては、その平均評価値とした。 【0058】 表1に記載した温度に調温した上記各洗浄組成物に上記残渣の付着したパターンウエハの切片(約2cm×2cm)を浸漬し、表1?3に記載した浸漬時間後にパターンウエハの切片を取り出し、直ちに超純水で水洗、N_(2)乾燥を行った。浸漬試験後のパターンウエハの切片の断面及び表面をSEMで観察し、フォトレジスト及び残渣(プラズマエッチング残渣及びアッシング残渣)の除去性(特大メタルの洗浄性)、並びに、Alべた膜剥れの抑制性、ベアシリコンウエハの変色の抑制性、Al配線の表面荒れ防止性について下記の判断基準に従って評価を行った。除去性及び腐食性の評価結果を表1に記載した。 【0059】 <ビアホールないしリセス周辺の表面の残渣除去:図1?図3> AA:フォトレジスト及び残渣が完全に除去された。 A:フォトレジスト及び残渣がほぼ完全に除去された。 B:フォトレジスト及び残渣の溶解不良物が残存していた。 C:フォトレジスト及び残渣がほとんど除去されていなかった。 【0060】 <Alべた膜剥れの抑制性> AA:Alべた膜剥れは見られなかった。 A:Alべた膜剥れが配線全体に対して0.1%以下で起こっていた。 B:Alべた膜剥れが配線全体に対して1%以下で起こっていた。 C:Alべた膜剥れが配線全体に対して5%以下で起こっていた。」 エ 「【0064】【表1】 ![]() 」 2 申立人の主張及び当審の判断 (1)申立理由の概要 申立人は、本件発明1?23について、それらの記載が特許法第36条第6項第1号の規定の要件、いわゆるサポート要件を満たさないと主張している。 (2)サポート要件の判断手法 ア 判断の枠組み 一般に「特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであり,明細書のサポート要件の存在は,特許出願人(…)が証明責任を負うと解するのが相当である。・・・」されているところ、〔知財高裁平成17年(行ケ)10042号平成17年11月11日判決言渡。〕このような観点に基づいて、申立人の主張を後記(3)以降で検討する。 イ 本件発明の課題について (ア)本件発明1?13、22?23について 前記第2、2(1)に摘記した本件特許明細書の段落【0008】の記載から、上記各発明の課題は、「レーザーアブレーションプロセスの後、残留物を洗浄するのに適し、また、異なる処理条件下では、ポリマー層の剥離にも適する組成物」を提供することであると認められる。 (イ)本件発明14?21について 上記各発明の課題は、「レーザーアブレーションプロセスの後、残留物を洗浄するのに適し、また、異なる処理条件下では、ポリマー層の剥離にも適する組成物を用いた製造方法」を提供することであると認められる。 (3)本件発明1について ア 成分(a)について (ア)申立人の主張の概要 a アルカリ性化合物について、本件発明1において「0.5?25重量%のアルカリ性化合物」と特定されているのに対して、アルカリ性化合物の具体例としては、前記第2、2(4)に摘記した本件特許明細書の段落【0083】に記載された「水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)2.5部」だけである。そして、本件発明1のように「アルカリ性化合物」に拡張・一般化すること、及びその量を「0.5?25重量%」に拡張・一般化することはできない。 b 前記1(2)エに摘記した甲1の段落【0064】【表1】を参照すると、アルカリ性化合物がTMAHであるの試料番号106とアルカリ化合物がKOHである試料番号108とは、残渣除去性が大きく相違している。このように、アルカリ化合物の種類によっては、本件発明の課題が解決できない発明を含むものである。 (イ)当審の判断 a 前記(2)アに示した枠組みに照らすと、申立人の主張は、本件発明1は、「0.5?25重量%のアルカリ性化合物」の具体例が1つしか記載されていないので、それ以外の態様は、前記(2)イ(ア)において認定した課題を解決できると認識できる範囲を超えている可能性があるという主張と解されるが、具体的にどの部分が「課題を解決できると認識できる範囲」を超えているか主張するものでない。そして、一般に具体例と技術常識に基づいて、当該具体例を含む所定の範囲においてその課題を解決できると認識でき、かつ、本件発明1について、「0.5?25重量%のアルカリ性化合物」という範囲の中にその課題を解決できないといえる具体的な態様が含まれていることを申立人が具体的に立証しているわけでもない。したがって、主張は、採用できない。 b 前記1(2)エに摘記した1の段落【0064】【表1】を参照すると、試料番号106と試料番号108とでは、アルカリ性化合物の種類以外に、有機溶媒(Sl)の量が試料番号106では、1質量%含有されているのに対し、試料番号108では、10質量%であるという点で違いがあることが読み取れる。そして、試料番号106では残渣除去性がBであるのに対し、試料番号108では残渣除去性がAAである違いがあるのは、塩基性有機化合物の違いによるのか、有機溶媒の量が異なることによるのかは判然としない。前記1(2)アに摘記した甲1の請求項8の記載からみて、試料番号106における有機溶媒の量が5質量%以上でないことが要因であると解される。申立人の主張は採用できない。 イ 成分(b)について (ア)申立人の主張の概要 アルコールアミン化合物について、本件発明1において「1?25重量%のアルコールアミン化合物」と特定されているのに対して、アルコールアミン化合物の具体例としては、前記第2、2(4)に摘記した本件特許明細書の段落【0083】に記載された「モノエタノールアミン4.3部」だけである。そして、本件発明1のように「アルコールアミン」に拡張・一般化すること、及びその量を「1?25重量%」に拡張・一般化することはできない。 (イ)当審の判断 前記ア(イ)aと同様である。 ウ 成分(c)について (ア)申立人の主張の概要 ヒドロキシルアンモニウム化合物について、本件発明1において「0.1?20重量%のヒドロキシルアンモニウム化合物」と特定されているのに対して、ヒドロキシルアンモニウム化合物の具体例としては、前記第2、2(4)に摘記した本件特許明細書の段落【0083】に記載された「硫酸ヒドロキシルアンモニウム0.5部」だけである。そして、本件発明1のように「ヒドロキシルアンモニウム」に拡張・一般化すること、及びその量を「0.5?25重量%」に拡張・一般化することはできない。 (イ)当審の判断 前記ア(イ)aと同様である。 エ 成分(d)について (ア)申立人の主張の概要 有機溶媒について、本件発明1において「5?95重量%の有機溶媒」と特定されているのに対して、有機溶媒の具体例としては、前記第2、2(4)に摘記した本件特許明細書の段落【0083】に記載された「テトラヒドロフルフリルアルコール85部」だけである。そして、本件発明1のように「有機溶媒」に拡張・一般化すること、及びその量を「5?95重量%」に拡張・一般化することはできない。 (イ)当審の判断 前記ア(イ)aと同様である。 オ 成分(e)について (ア)申立人の主張の概要 腐食防止剤化合物について、本件発明1において「0.1?5重量%の腐食防止剤化合物」と特定されているのに対して、腐食防止剤化合物の具体例としては、前記第2、2(4)に摘記した本件特許明細書の段落【0083】に記載された「5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール0.2部」だけである。そして、本件発明1のように「腐食防止剤化合物」に拡張・一般化すること、及びその量を「0.1?5重量%」に拡張・一般化することはできない。 (イ)当審の判断 前記ア(イ)aと同様である。 カ 組成物のpHについて (ア)申立人の主張の概要 組成物のpHについて、本件発明1において「12.4以上のpHを有する」と特定されているのに対して、組成物のpHの具体例としては、前記第2、2(4)に摘記した本件特許明細書の段落【0083】に記載された「14.9」だけである。そして、本件発明1のように「12.4以上のpHを有する組成物に拡張・一般化することはできない。 (イ)当審の判断 前記ア(イ)aと同様である。 (4)本件発明2について ア 申立人の主張の概要 アルカリ化合物について、本件発明2において「テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、2-ヒドロキシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)およびこれらの混合物からなる群から選択される」と特定されているのに対して、アルカリ性化合物の具体例としては、前記第2、2(4)に摘記した本件特許明細書の段落【0083】に記載された「水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)」だけである。そして、本件発明2のうち水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)以外のアルカリ化合物に拡張・一般化することはできない。 イ 当審の判断 前記(3)ア(イ)aと同様である。 (5)本件発明3について ア 申立人の主張の概要 アルコールアミン化合物について、本件発明3において「モノエタノールアミン(MEA)、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2-(2-アミノエトキシ)エタノール、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルエタノールアミン、N-ブチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジグリコールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、N,N-ジブチルエタノールアミン、N-メチル-N-エチルエタノールアミンおよびこれらの混合物からなる群から選択される」と特定されているのに対して、アルコールアミン化合物の具体例としては、前記第2、2(4)に摘記した本件特許明細書の段落【0083】に記載された「モノエタノールアミン」だけである。そして、本件発明3のようにモノエタノールアミン以外のアルコールアミン化合物に拡張・一般化することはできない。 イ 当審の判断 前記(3)ア(イ)aと同様である。 (6)本件発明4について ア 申立人の主張の概要 ヒドロキシルアンモニウム化合物について、本件発明4において「硫酸ヒドロキシルアンモニウム、塩酸ヒドロキシルアンモニウム、硝酸ヒドロキシルアンモニウムおよびリン酸ヒドロキシルアンモニウムからなる群から選択される」と特定されているのに対し、ヒドロキシルアンモニウム化合物の具体例としては、前記第2、2(4)に摘記した本件特許明細書の段落【0083】に記載された「硫酸ヒドロキシルアンモニウム」だけである。そして、本件発明4のように硫酸ヒドロキシルアンモニウム以外のヒドロキシルアンモニウム化合物に拡張・一般化することはできない。 イ 当審の判断 前記(3)ア(イ)aと同様である。 (7)本件発明5について ア 申立人の主張の概要 本件発明5においては、(c)成分のヒドロキシルアンモニウム化合物が特定されているが、(c)成分以外の(a)成分、(b)成分、(d)成分、(e)成分については特定されていないから、本件発明1と同様にサポート要件を満たさない。 イ 当審の判断 前記(3)ア(イ)aと同様である。 (8)本件発明6について ア 申立人の主張の概要 本件発明6においては、(d)成分について、「N-メチルピロリドン(NMP)、N-エチルピロリドン(NEP)、γ-ブチロラクトン、メチルエチルケトン(MEK)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルスルホン、ジメチルホルムアミド、N-メチルホルムアミド、ホルムアミド、テトラメチル尿素、テトラヒドロフルフリルアルコール(THFA)およびこれらの混合物からなる群から選択される」と特定されているのに対して、有機溶媒の具体例としては、前記第2、2(4)に摘記した本件特許明細書の段落【0083】に記載された「テトラヒドロフルフリルアルコール」だけである。そして、本件発明6のようにテトラヒドロフルフリルアルコール以外の有機溶媒に拡張・一般化することはできない。 イ 当審の判断 前記(3)ア(イ)aと同様である。 (9)本件発明7について ア 申立人の主張の概要 本件発明7においては、(d)成分について、「ジメチルスルホキシド(DMSO)またはテトラヒドロフルフリルアルコール(THFA)である」と特定されているのに対して、有機溶媒の具体例としては、前記第2、2(4)に摘記した本件特許明細書の段落【0083】に記載された「テトラヒドロフルフリルアルコール」だけである。そして、本件発明6のようにテトラヒドロフルフリルアルコール以外の有機溶媒に拡張・一般化することはできない。 イ 当審の判断 前記(3)ア(イ)aと同様である。 (10)本件発明8について ア 申立人の主張の概要 本件発明8においては、(e)成分について、「トリアゾール、ベンゾトリアゾール、置換トリアゾールまたは置換ベンゾトリアゾールである」と特定されているのに対して、腐食防止剤の具体例としては、前記第2、2(4)に摘記した本件特許明細書の段落【0083】に記載された「5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール」だけである。そして、本件発明8のように5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール以外の有機溶媒に拡張・一般化することはできない。 イ 当審の判断 前記(3)ア(イ)aと同様である。 (11)本件発明9について ア 申立人の主張の概要 本件発明9においては、(d)成分の有機溶媒が特定されているが、(d)成分以外の(a)成分、(b)成分、(c)成分、(e)成分については特定されていないから、本件発明1と同様にサポート要件を満たさない。 イ 当審の判断 前記(3)ア(イ)aと同様である。 (12)本件発明10について ア 申立人の主張の概要 本件発明10においては、(e)成分について、「全組成物の0.5重量%以下」と特定されているが、(e)成分以外の(a)成分、(b)成分、(c)成分、(d)成分については特定されていないから、本件発明1と同様にサポート要件を満たさない。 イ 当審の判断 前記(3)ア(イ)aと同様である。 (13)本件発明11について ア 申立人の主張の概要 本件発明11においては、(e)成分について、「全組成物の0.3重量%以下」と特定されているが、(e)成分以外の(a)成分、(b)成分、(c)成分、(d)成分については特定されていないから、本件発明1と同様にサポート要件を満たさない。 イ 当審の判断 前記(3)ア(イ)aと同様である。 (14)本件発明12について ア 申立人の主張の概要 本件発明12においては、(e)成分について、化学式(I)で限定しているが、(e)成分以外の(a)成分、(b)成分、(c)成分、(d)成分については特定されていないから、本件発明1と同様にサポート要件を満たさない。 イ 当審の判断 前記(3)ア(イ)aと同様である。 (15)本件発明13について ア 申立人の主張の概要 本件発明13においては、(e)成分について、化学式(I-a)?(I-k)で限定しているが、(e)成分以外の(a)成分、(b)成分、(c)成分、(d)成分については特定されていないから、本件発明1と同様にサポート要件を満たさない。 イ 当審の判断 前記(3)ア(イ)aと同様である。 (16)本件発明14?21について ア 申立人の主張の概要 本件発明14?21は、本件発明1?13に係る組成物を用いた半導体デバイスの製造方法であるが、本件発明1?13に係る組成物がサポート要件を満たさないので、半導体デバイスの製造法についてもサポート要件を満たさない。 イ 当審の判断 前記(3)ア(イ)aと同様である。 (17)本件発明22について ア 申立人の主張の概要 本件発明22は、(d)成分について、「有機溶媒が水に対し0.5?0.8の相対エネルギー差(RED)を有する」という特定されているが、(d)成分以外の(a)成分、(b)成分、(c)成分、(e)成分については特定されていないから、本件発明1と同様にサポート要件を満たさない。 イ 当審の判断 前記(3)ア(イ)aと同様である。 (16)本件発明23について ア 申立人の主張の概要 本件発明23は、本件発明22にさらに、「25℃で5cSt?12cStの動粘度を有する」という特定事項を追加したものであるが、具体例としては、前記第2、2(4)に摘記した本件特許明細書の段落【0083】に記載された8.5cStのみであるから、5cSt?12cStの範囲で課題が解決できるとはいえず、サポート要件を満たさない。 イ 当審の判断 前記(3)ア(イ)aと同様である。 3 小括 以上のとおり、申立人の主張はいずれも認められない。特許異議の申立の理由により、本件発明の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさないものということはできない。 第4 むすび 以上のとおり、本件発明1?23に係る特許を取り消すべきということはできない。 また、他に本件発明1?23に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2021-11-16 |
出願番号 | 特願2018-506163(P2018-506163) |
審決分類 |
P
1
651・
537-
Y
(C11D)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 古妻 泰一、菅野 芳男 |
特許庁審判長 |
蔵野 雅昭 |
特許庁審判官 |
木村 敏康 門前 浩一 |
登録日 | 2020-12-11 |
登録番号 | 特許第6808714号(P6808714) |
権利者 | フジフイルム エレクトロニック マテリアルズ ユー.エス.エー., インコーポレイテッド |
発明の名称 | 洗浄組成物 |
代理人 | 加藤 和詳 |
代理人 | 中島 淳 |