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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09G
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09G
管理番号 1380212
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-10-21 
確定日 2021-12-15 
事件の表示 特願2016−550185「マイクロディスプレイデバイス用の列バス駆動方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 8月13日国際公開、WO2015/120152、平成29年 3月23日国内公表、特表2017−508179〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 出願の経緯
本願は、平成27年2月5日(パリ条約による優先権主張2014年2月5日、米国)を国際出願日とする外国語特許出願である。そして、令和1年6月6日付けで特許請求の範囲についての補正がされ、令和1年6月18日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、同月25日に原査定の謄本が送達された。これに対して、同年10月21日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に特許請求の範囲について補正(以下、「本件補正」という。)がされた。
また、審判請求人は令和2年2月21日付けで上申書を提出した。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1についての補正を含むものである。本件補正前及び本件補正後の請求項1に係る発明は、以下のとおりのものである。(下線は補正箇所を示す。)

(1)本件補正前
「 【請求項1】
画素アレイに使用するための列信号を生成する方法であって、
2つ以上の制御可能バスバッファを直列に接続して前記2つ以上の制御可能バスバッファの直列接続されたストリングを形成することであって、前記2つ以上の制御可能バスバッファのそれぞれの出力は付随ノードを駆動するものであり、各ノードは関連する制御可能ローカル出力バッファの入力に電気的に結合されている、形成することと、
前記2つ以上の制御可能バスバッファの直列接続されたストリングの入力に列データ信号を提供することと、
各ノードが順次時間的に駆動されるように、前記2つ以上の制御可能バスバッファの直列接続されたストリングにおいて各制御可能バスバッファを順次有効化することであって、前記制御可能ローカル出力バッファが有効化中のときに少なくとも関連するノードが有効化中であるように、前記制御可能ローカル出力バッファのそれぞれを、前記制御可能バスバッファの前記順次有効化の順番でかつこの順次有効化と同期して順次有効化することと、
を含む方法。」

(2)本件補正後
「 【請求項1】
画素アレイに使用するための列データ信号であって、それぞれ特定の画素列用である列データ信号を生成する方法であって、
2つ以上の制御可能バスバッファを直列に接続して前記2つ以上の制御可能バスバッファの直列接続されたストリングを形成することであって、前記2つ以上の制御可能バスバッファのそれぞれの出力は付随ノードを駆動するものであり、各ノードは関連する制御可能ローカル出力バッファの入力に電気的に結合されるように、形成することと、
前記2つ以上の制御可能バスバッファの直列接続されたストリングの入力に前記列データ信号を提供することであって、前記制御可能バスバッファの1つが前記列データ信号を受信して、その出力が他の制御可能バスバッファに与えられて、順次このように続いていくものである、ことと、
各ノードが順次時間的に駆動されるように、前記2つ以上の制御可能バスバッファの直列接続されたストリングにおいて各制御可能バスバッファを順次有効化することであって、前記制御可能ローカル出力バッファが有効化中のときに少なくとも関連するノードが有効化中であるように、前記制御可能ローカル出力バッファのそれぞれを、前記制御可能バスバッファの前記順次有効化の順番でかつこの順次有効化と同期して順次有効化することと、
を含む方法。」


2 本件補正の目的
本件補正は、補正前の請求項1に記載した事項のうち、「画素アレイに使用するための列信号を生成する方法」を「画素アレイに使用するための列データ信号であって、それぞれ特定の画素列用である列データ信号を生成する方法」に限定し、「前記2つ以上の制御可能バスバッファの直列接続されたストリングの入力に列データ信号を提供すること」を「前記2つ以上の制御可能バスバッファの直列接続されたストリングの入力に前記列データ信号を提供することであって、前記制御可能バスバッファの1つが前記列データ信号を受信して、その出力が他の制御可能バスバッファに与えられて、順次このように続いていくものである、こと」に限定することを含むものである。
そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と、本件補正後の請求項1に記載される発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、請求項1は、本件補正により「前記2つ以上の制御可能バスバッファのそれぞれの出力は付随ノードを駆動するものであり、各ノードは関連する制御可能ローカル出力バッファの入力に電気的に結合されている、形成することと」という記載が、「前記2つ以上の制御可能バスバッファのそれぞれの出力は付随ノードを駆動するものであり、各ノードは関連する制御可能ローカル出力バッファの入力に電気的に結合されるように、形成することと」と変更されており、これは文章上の誤記を、本来その意味であることが明らかな内容の語句に正すものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5号第3号に規定する誤記の訂正を目的とするものにも該当する。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定される目的に適合する補正である。そこで、本件補正後における請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下、「本件補正発明」という。)が、同法同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下で検討する。

3 独立特許要件についての判断
(1)本件補正発明
本件補正発明は、前記1(2)に記載された事項により特定されるとおりのものである。

(2)引用文献
特開平10−282939号公報(以下、「引用文献1」という。)は、原査定の拒絶の理由に引用された文献であり、公開日は本願の優先日より前である。

(3)引用文献に記載された発明等
ア 引用文献1には、以下の記載がある。(下線は当審による。)

「【0004】液晶表示パネルLCDは、液晶を介して互いに対向配置された一対のガラス基板を備え、一方のガラス基板の液晶側の面には、X方向に延在し、かつ、Y方向に並設されるm本のコモン電極(走査線)が形成され、このm本のコモン電極のそれぞれは、対応する各コモンドライバ(IC−C1〜IC−C5)に接続される。
【0005】また、他方のガラス基板の液晶側の面には、Y方向に延在し、かつ、X方向に並設されるn本のセグメント電極(データ線)が形成され、さらに、このn本のセグメント電極は上下2つに分割され、この2分割されたn本のセグメント電極のそれぞれは、上側の対応する各セグメントドライバ(IC−U1〜IC−Un)、あるいは、下側の対応する各セグメントドライバ(IC−L1〜IC−Ln)に接続される。
【0006】前記複数のセグメント電極と複数のコモン電極との交差部が画素領域を構成し、上側の各セグメントドライバ(IC−U1〜IC−Un)、下側の各セグメントドライバ(IC−L1〜IC−Ln)および各コモンドライバ(IC−C1〜IC−C5)から、前記複数のセグメント電極および前記複数のコモン電極に各駆動電圧を印加して、前記画素を駆動する。」

「【0010】図6は、図5に示す液晶パネルLCDのセグメント電極に印加されるデータ信号線駆動電圧及び、コモン電極に印加される走査線信号駆動電圧の一例を説明するための図である。」

「【0014】図3に示すセグメントドライバは、シフトレジスタ回路301、ビットラッチ回路302、ラインラッチ回路303、出力回路304およびランダムロジック回路310から構成される。なお、ランダムロジック回路310内には、データラッチを必要としない時にセグメントドライバ1個をスタンバイ状態とするスタンバイ回路307を有する。308はEIO1回路、309はEIO2回路でセグメントドライバのシフト方向により、前段のセグメントドライバからのキャリー信号を入力しシフトレジスタ回路301に内部キャリー信号CAR1、CAR2及びスタンバイ回路307にスタンバイ信号STBYを出力したり、次段のセグメントドライバにキャリー信号を出力したりする。なお、図3には240出力のセグメントドライバを示し、Y1〜Y240は各出力端子を示す。」

「【0020】出力回路304は、ラインラッチ回路303から入力された表示用データの電圧レベルを液晶駆動用の高電圧レベルに変換し、また電源回路102から供給される3レベルのデータ信号線駆動電圧を選択するため、この高電圧レベルに変換したデータと、交流化信号Mとから、前述した交流化演算を行い、電源回路102から供給される3レベルのデータ信号線駆動電圧の中の1つを各セグメント電極(データ信号線)に出力する。」

「【0029】本発明の1側面によれば、セグメントドライバのシフトレジスタ、ビットラッチ回路、ラインラッチ回路、出力回路を任意の出力数分ごとにブロック分割し、そのブロックごとにスタンバイ機能を有し、そのブロックがデータをラッチする以外は回路が停止することとする。
(中略)
【0031】本発明の他の側面によれば、ブロック単位ごとに内部データバス及び内部データラッチ用クロックも分割し、その分割された内部データバス及び内部データラッチ用クロックもスタンバイ機能を有し、上記ブロックの動作を開始するには前段のブロックからの開始信号を用い、ブロックの動作の停止は動作中のブロックからの停止信号を用いる。
(中略)
【0033】
【発明の実施の形態】以下、本発明をSTN方式の単純マトリックス型液晶表示装置に適用した発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
(中略)
【0035】図1は、本発明の一実施例を示すもので、セグメントドライバのブロック図を示す。
【0036】シフトレジスタ301、ビットラッチ回路302、ラインラッチ回路303、出力回路304を40出力数分ごとにブロック分割し、そのブロックごとにスタンバイ回路305を有する。なお、SSSDはブロック内のデータバス、SSSCL2はブロック内のデータラッチ用クロック信号線を示す。また、内部データバスSSD及び内部クロック信号線SSCL2も上記ブロックごとに分割し、その分割された内部データバスSSD及び、内部クロック信号線SSCL2ごとにスタンバイ回路306を有する。」
(中略)
【0038】ランダムロジック回路310には、出力タイミング制御用ラインクロックCL1、4ビットの表示データDATA、表示データラッチ用クロックCL2、交流化信号M、キャリー信号EIO1、EIO2が入力されている。
【0039】図2は、図1に示すブロックのタイミング図を示す。なお、説明の関係上右シフト(Y1→Y240)において以下説明するが、左シフト(Y240→Y1)も同様である。」

「【0046】次にブロックICBLK3からのキャリー入力により内部データバスSSD(4)、内部クロック信号SSCL2(4)及び、ブロックICBLK4はスタンバイ状態から動作状態となり、ブロックICBLK4は表示データをラッチする。
【0047】ブロックICBLK4は、出力Y121〜160のデータをラッチすると次段ブロックにキャリーを転送するとともにスタンバイ状態となりブロック内データバスSSSD(4)及びブロック内クロック信号SSSCL2(4)をLowレベルに固定し、内部回路を停止する。なお、内部データバスSSD(4)、内部クロック信号SSCL2(4)はブロックICBLK(5)へデータ及びクロックを伝えるため、動作状態を保持する。
【0048】ブロックICBLK4からのキャリー入力により内部データバスSSD(5)、内部クロック信号SSCL2(5)及び、ブロックICBLK5はスタンバイ状態から動作状態となり、表示データをラッチする。ブロックICBLK5は、出力Y161〜200のデータをラッチすると次段ブロックにキャリーを転送するとともに、スタンバイ状態となりブロック内データバスSSSD(5)及びブロック内クロック信号SSSCL2(5)をLowレベルに固定し、内部回路を停止する。なお、内部データバスSSD(5)及び内部クロック信号SSCL2(5)も前段同様動作状態を保持する。
【0049】ブロックICBLK6も同様に動作する。出力Y201〜240のデータをラッチすると次段セグメントドライバにキャリーEIO2を出力するとともに、スタンバイ回路307により内部データバスSD及び内部クロック信号SCL2をLowレベルに固定し、セグメントドライバ全体をスタンバイ状態とし内部回路を停止する。」

「【0056】図11に示すようにブロックICBLK1において出力Y40のデータが、ラッチ回路302に取り込まれるタイミングでデータ取り込み用信号SOUT10が出力される。データ取り込み用信号SOUT10はブロックICBLK2のスタンバイ解除信号として図10に示すスタンバイ回路305の信号線SET_Nに入力される。
【0057】信号線SET_NがLowレベル(ただし信号線SET_NはLowレベルで有効とする)となると、フリップフロップ回路FSR1でスタンバイ信号STBYNをHighレベルに固定し、内部データバスSSD及び、内部クロックSSCL2をそれぞれブロック内データバスSSSD及びブロック内クロックSSSCL2に出力する。」

「【0063】次に図1の内部データバスSSD(5)とSSD(6)間にあるスタンバイ回路306の動作を図14において説明する。信号SET_Nは,ブロックICBLK4の最終段シフトレジスタのキャリー信号を信号SET_N信号に入力する。信号SET_Nが入力されると、フリップフロップ回路FSRでスタンバイ信号STBYN2をHighレベルに固定し内部データバスSSD(5)およびSSCL2(5)をそれぞれ内部データバスSSD(6)およびSSCL2(6)に出力する。信号RESET_Nはシフトレジスタのリセット信号(前述のCLEAR)を入力する。信号RESET_Nが入力されるとスタンバイ信号STBYN2をLowレベルに固定し、内部データバスSSD(2)および内部クロック信号SSCL2(2)の出力をLowレベルに固定としスタンバイ状態となる。また,シフトレジスタのリセット信号(前述のCLEAR)が入力されず最終段までデータラッチが完了した場合,チップ全体がスタンバイ状態となり内部データバスSD及び内部クロック信号SCL2がLowレベルに固定されスタンバイ状態となる。」

「【図1】

【図2】



「【図10】



「【図12】



イ 引用文献1に記載された発明
(ア)引用文献1の【0004】ないし【0006】、【0038】及び【図1】の記載から、スタンバイ回路306(4)には、ランダムロジック回路310のスタンバイ回路307から内部データバスSDを介して、特定の画素列を駆動するためのデータ信号線駆動電圧を生成するための表示データDATAが入力されることが読み取れる。

(イ)引用文献1において、【図2】のタイミング図から、各ブロック内データバスSSSD(4)ないしSSSD(6)が動作状態(Highレベル)となっているときには、必ず対応する各内部データバスSSD(4)ないしSSD(6)が動作状態(Highレベル)となっており、各ブロック内データバスSSSD(4)ないしSSSD(6)は、各内部データバスSSD(4)ないしSSD(6)の動作開始(Highレベルの立ち上がり)の順番に順次動作開始しており、かつ、各ブロック内データバスSSSD(4)ないしSSSD(6)と各内部データバスSSD(4)ないしSSD(6)の動作開始のタイミングは一致していることが読み取れる。

ウ 前記(ア)、(イ)を踏まえつつ、引用文献1の前記アの記載をまとめると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「液晶表示装置の一方のガラス基板の液晶側の面には、X方向に延在し、かつ、Y方向に並設されるm本のコモン電極(走査線)が形成され、他方のガラス基板の液晶側の面には、Y方向に延在し、かつ、X方向に並設されるn本のセグメント電極(データ線)が形成され、複数のセグメント電極と複数のコモン電極との交差部が画素領域を構成しており、各セグメントドライバ及び各コモンドライバが複数のセグメント電極および前記複数のコモン電極にそれぞれデータ信号線駆動電圧及び走査線信号駆動電圧を印加して、画素を駆動する方法であって(【0004】ないし【0006】、【0010】、【0033】)、

各セグメントドライバは、出力タイミング制御用ラインクロックCL1、4ビットの表示データDATA、表示データラッチ用クロックCL2、交流化信号M、キャリー信号EIO1、EIO2が入力されるランダムロジック回路310を有しており(【0035】、【0038】)、
各セグメントドライバは、データ信号線の数が40出力数分ごとにブロック分割され、各ブロック(ICBLK1〜6)は、シフトレジスタ301、ビットラッチ回路302、ラインラッチ回路303、出力回路304を備え、そのブロックごとにブロック内の回路を停止状態とするスタンバイ回路305(1)〜(6)を有しており、(【0029】、【0036】)
セグメントドライバ内部のデータバスはブロックごとに分割され、ブロック内データバスSSSDは、上記スタンバイ回路305と上記ビットラッチ回路302を接続し、内部データバスSSDは、上記スタンバイ回路305とスタンバイ回路306を接続するものであり(【0036】、【図1】)、ICBLK4〜6にそれぞれ対応するスタンバイ回路306(4)〜306(6)は、内部データバスSSD(4)とSSD(5)を介してこの順に直列に接続され、スタンバイ回路306(4)からの出力を受ける内部データバスSSD(4)は、分岐してスタンバイ回路305(4)及びスタンバイ回路306(5)に接続され、スタンバイ回路306(5)からの出力を受ける内部データバスSSD(5)は、分岐してスタンバイ回路305(5)及びスタンバイ回路306(6)に接続され(【図1】)、

上記出力回路304は、ラインラッチ回路303から入力された表示用データの電圧レベルを液晶駆動用の高電圧レベルに変換し、また電源回路102から供給される3レベルのデータ信号線駆動電圧を選択するため、この高電圧レベルに変換したデータと、交流化信号Mとから、交流化演算を行い、電源回路102から供給される3レベルのデータ信号線駆動電圧の中の1つを各セグメント電極(データ信号線)に出力するものであり(【0020】)、

スタンバイ回路306(4)には、上記ランダムロジック回路310のスタンバイ回路307から内部データバスSDを介して特定の画素列を駆動するためのデータ信号線駆動電圧を生成するための表示データDATAが入力され(【0004】ないし【0006】、【0038】、【図1】、前記(ア))、

ICBLK4が出力Y121〜160の表示データDATAをラッチすると、信号SET_N(キャリー信号)がスタンバイ回路306(5)に入力され(【0047】、【0063】、【図12】)、スタンバイ回路306(5)がスタンバイ状態から動作状態となり、内部データバスSSD(5)がスタンバイ状態から動作状態となる(【0046】、【0047】、【図2】、【図12】)と共に、信号SET_Nがスタンバイ回路305(5)に入力されてスタンバイ回路305(5)がスタンバイ状態から動作状態となり、ブロック内データバスSSSD(5)がスタンバイ状態から動作状態となり(【0048】、【0056】、【0057】、【0063】、【図2】、【図10】)、

ICBLK5が出力Y161〜200の表示データDATAをラッチすると、信号SET_N(キャリー信号)がスタンバイ回路306(6)に入力され(【0047】、【0048】、【0063】、【図12】)、スタンバイ回路306(6)がスタンバイ状態から動作状態となり、内部データバスSSD(6)がスタンバイ状態から動作状態となる(【0046】、【0047】、【図12】)と共に、信号SET_Nがスタンバイ回路305(6)に入力されてスタンバイ回路305(6)がスタンバイ状態から動作状態となり、ブロック内データバスSSSD(6)がスタンバイ状態から動作状態となり(【0048】、【0056】、【0057】、【図2】、【図10】)、

各ブロック内データバスSSSD(4)ないしSSSD(6)が信号SET_N(キャリー信号)の入力を契機として動作状態(Highレベル)となっているときには、必ず対応する各内部データバスSSD(4)ないしSSD(6)も信号SET_N(キャリー信号)の入力を受けて動作状態(Highレベル)となっており(【0046】ないし【0048】、【図2】、前記(ウ))、各ブロック内データバスSSSD(4)ないしSSSD(6)は、各内部データバスSSD(4)ないしSSD(6)の動作開始(Highレベルの立ち上がり)の順番に順次動作開始しており、かつ、各ブロック内データバスSSSD(4)ないしSSSD(6)と各内部データバスSSD(4)ないしSSD(6)の動作開始のタイミングは一致している(【0039】、【図2】、前記(イ))、

前記液晶表示装置の前記画素を駆動する方法」

(4)対比
ア 引用発明の液晶表示装置において、「X方向に並設されるn本のセグメント電極(データ線)」と、「Y方向に並設されるm本のコモン電極」との交差部により「画素領域」が構成されているから、その「画素」は、「アレイ」状に構成されており、これは本件補正発明における「画素アレイ」に相当する。また、引用発明において、「複数のセグメント電極」に印加される各「データ信号線駆動電圧」は、「Y方向に延在する」「セグメント電極」に結合する画素を駆動するものである。よって、引用発明の「Y方向に延在する」、各「セグメント電極」上の複数の「画素」は、本件補正発明の「特定の画素列」に相当する。そして、引用発明の「複数のセグメント電極」に印加される各「データ信号線駆動電圧」は、上記複数の「画素」を駆動するための信号であるから、本件補正発明の「特定の画素列用である」「列データ信号」に相当する。

イ 引用発明において、「出力回路304」は、「ラインラッチ回路303から入力された表示用データの電圧レベルを液晶駆動用の高電圧レベルに変換し、また電源回路102から供給される3レベルのデータ信号線駆動電圧を選択するため、この高電圧レベルに変換したデータと、交流化信号Mとから、交流化演算を行い、電源回路102から供給される3レベルのデータ信号線駆動電圧の中の1つを各セグメント電極(データ信号線)に出力するもの」であるから、この「出力回路304」において、データ信号線駆動電圧が「生成」されていると認められ、このことは、本件補正発明において、「列データを生成する方法」に相当する。

ウ 引用発明において、「スタンバイ回路306(4)」ないし「スタンバイ回路306(6)」は、表示データの経路(「バス」)である内部データバスSSDの間に設けられ、信号SET_N(キャリー信号)の入力によりスタンバイ状態から動作状態に制御されており(【0063】の「信号SET_Nが入力されると」、「内部データバスSSD(5)」を「内部データバスSSD(6)」に「出力する」旨記載されている点を踏まえれば)当該制御により表示データDATAを内部データバスSSDに出力したり、その出力を止めたりしているものであるから、本件補正発明における「2つ以上の制御可能バスバッファ」に相当する。

エ 引用発明において、「スタンバイ回路306(4)」ないし「スタンバイ回路306(6)」は、内部データバスSSD(4)、内部データバスSSD(5)を介してこの順に直列に接続されており、一本のデータの経路(「ストリング」)を形成しており、このことは、本件補正発明の「2つ以上の制御可能バスバッファを直列に接続して前記2つ以上の制御可能バスバッファの直列接続されたストリングを形成する」ことに相当する。

オ 引用発明において、スタンバイ回路306(4)からの出力を受ける内部データバスSSD(4)は、分岐してスタンバイ回路306(5)及びスタンバイ回路305(4)に接続され、同様に、スタンバイ回路306(5)からの出力を受けるSSD(5)は、分岐してスタンバイ回路306(6)及びスタンバイ回路305(5)に接続されている。
上記の内部データバスSSDが分岐する箇所(以下、「データバス分岐点」という。)は、本件補正発明の「ノード」に相当する。また、当該データバス分岐点は、スタンバイ回路306(4)、スタンバイ回路306(5)の出力側に「付随」する形で存在しているから、本件補正発明の「付随ノード」に相当する。
そして、引用発明において、スタンバイ回路306(4)、スタンバイ回路306(5)のそれぞれの出力側に付随するデータバス分岐点に表示データDATAを出力することは、本件補正発明における「2つ以上の制御可能バスバッファのそれぞれの出力は付随ノードを駆動する」ことに相当する。

カ 引用発明において、スタンバイ回路305(4)ないしスタンバイ回路305(6)は、40出力分を有する各ブロックに設けられ、全体の出力240本のうちの一部である40出力に対応するものであり、信号SET_N(キャリー信号)の入力によりスタンバイ状態から動作状態に制御され、当該制御により表示データDATAをブロック内データバスSSSDに出力したり、その出力を止めたりするものであるから、本件補正発明の「制御可能ローカル出力バッファ」に相当する。

キ 引用発明において、各データバス分岐点は、特定のスタンバイ回路305と電気的に結合されており、このことは、本件補正発明において、「各ノードは関連する制御可能ローカル出力バッファの入力に電気的に結合されるように、形成」されることに相当する。

ク 本件補正発明の「前記列データ信号」において「前記」が指しているのは、「特定の画素列用である列データ信号」であり、この「前記」との語句に着目すれば、「前記列データ信号」は、個々の(1列分の)「特定の画素列」用に「出力」される列データ信号であるようにも解される。しかしながら、「前記列データ信号」は2つ以上の制御可能バスバッファの直列接続されたストリングの「入力に」「提供」されることが特定されており、また、明細書の記載も参酌すれば、当該「前記列データ信号」は、「(ストリングの)入力に提供される」、「特定の画素列を駆動するための列データ信号に対応可能な入力データ信号」であると解釈するのが相当であり、以下では、かかる解釈の下で検討する。
引用発明において、直列に接続されたスタンバイ回路306(4)ないしスタンバイ回路306(6)のうち、スタンバイ回路306(4)には、スタンバイ回路307からデータバスSDを介して特定の画素列を駆動するための表示データDATAが入力されており、当該表示データDATAは、「出力回路304」において、「液晶駆動用の高電圧レベルに変換」され、「この高電圧レベルに変換したデータと、交流化信号Mとから、交流化演算を行い、電源回路102から供給される3レベルのデータ信号線駆動電圧の中の1つを各セグメント電極(データ信号線)に出力」されるから、この表示データDATAは、上記「特定の画素列を駆動するための列データ信号に対応可能な入力データ信号」に相当する。
よって、スタンバイ回路306(4)へ上記表示データDATAを入力することは、本件補正発明の「2つ以上の制御可能バスバッファの直列接続されたストリングの入力に前記列データ信号(特定の画素列を駆動するための列データ信号に対応可能な入力データ信号)を提供する」ことに相当する。

ケ スタンバイ回路306(4)がスタンバイ回路307から表示データを受信して、その表示データDATAがスタンバイ回路306(5)に出力され、スタンバイ回路306(6)についても順次、同様の受信・出力が行われるから、このことは、本件補正発明における「制御可能バスバッファの1つが前記列データ信号(特定の画素列を駆動するための列データ信号に対応可能な入力データ信号)を受信して、その出力が他の制御可能バスバッファに与えられて、順次このように続いていくものである」ことに相当する。

コ 引用発明において、スタンバイ回路306がスタンバイ状態から動作状態となると、その出力側にある内部データバスSSDがスタンバイ状態から動作状態となる。よって、引用発明において、スタンバイ回路306(4)、スタンバイ回路306(5)、スタンバイ回路306(6)が、(キャリー信号の入力に従い)この順にスタンバイ状態から動作状態となることは、本件補正発明における「各制御可能バスバッファを順次有効化する」ことに相当するとともに、スタンバイ回路306(4)〜(6)をスタンバイ状態から動作状態にすれば、データバス分岐点を含む内部データバスSSDも動作状態となるので、このことは、「各ノードが順次時間的に駆動される」ことに相当する。

サ ブロック内データバスSSSD(4)が動作状態となっているときには、必ず内部データバスSSD(4)が動作状態となっており、このとき、スタンバイ回路305(4)と、SSD(4)にあるデータバス分岐点も動作状態にあるといえるから、このことは、本件補正発明の、「前記制御可能ローカル出力バッファが有効化中のときに少なくとも関連するノードが有効化中である」ことに相当する。
各ブロック内データバスSSSD(4)ないしSSSD(6)は、各内部データバスSSD(4)ないしSSD(6)の動作開始の順番に順次動作開始しており、かつ、各ブロック内データバスSSSD(4)ないしSSSD(6)と各内部データバスSSD(4)ないしSSD(6)の動作開始のタイミングは一致しており、このことは、スタンバイ回路305(4)〜(6)と306(4)〜(6)の動作開始順序及び動作開始タイミングについてもいえるから、本件補正発明の「前記制御可能ローカル出力バッファのそれぞれを、前記制御可能バスバッファの前記順次有効化の順番でかつこの順次有効化と同期して順次有効化する」に相当する。

上記ア〜サの対比内容をまとめると、引用発明は、本件補正発明の構成を全て含む。
よって、本件補正発明は、引用文献1に記載された発明である。
また、本件補正発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえる。

シ なお、本件補正発明の「2つ以上の制御可能バスバッファの直列接続されたストリングの入力に前記列データ信号を提供する」における「前記列データ信号」について、仮に「特定の画素列」用(1列用)のデータ信号を意味すると考えたとしても、引用発明において、スタンバイ回路307からスタンバイ回路306(4)への表示データDATAの信号線は(図12に複数本存在する記載があることを考えれば)、液晶表示装置の各ブロックICBLKの出力に対応する本数(40本)存在し、各信号線に各画素列用(1列用)の入力データ信号が提供されると考えるのが自然である。したがって、上述のように考えたとしても、引用発明が本件補正発明の構成を全て含むという結論に変わりはない。
仮に引用発明において、信号線が各ブロックICBLKの出力に対応する本数ではなく、それより少ない本数しか有しておらず、(例えば「特定の画素列用の列データ信号」が複数連なった)シリアルな入力データ信号が、当該少ない本数の信号線に入力されるものであるとしても、シリアル通信がパラレル通信となるよう、各ブロックICBLKの出力に対応させて同数のデータ線(内部データバスSSD)を設けることにより、各データ線には各画素列用の入力データ信号を入力するようにする程度のことは、当業者の設計事項の範囲内である。よって、そのような場合であったとしても、本件補正発明は、引用発明から当業者が容易に発明できたものである。

(5)審判請求人の主張について
ア 審判請求人は、審判請求書において「引用文献1の発明では、ブロックICBLK1,ブロックICBLK2,ブロックICBLK3,…がラッチする信号は画素列用の信号とは無関係です。(中略)例えばブロックICBLK1の出力Y1〜40のデータは、画素アレイの1列のためのデータではありません。」と主張している。
しかし、当該主張については、上記(3)シで述べた理由により、採用できない。

イ また、審判請求人は、「引用文献1に記載の発明は、そもそも、「画素アレイに使用するための列データ信号であって、それぞれ特定の画素列用である列データ信号を生成する方法」に関するものではないため、「特定の画素列用である列データ信号が制御可能バスバッファから他の制御可能バスバッファに順次与えられ、各ノードが順次時間的に駆動されるように、前記2つ以上の制御可能バスバッファの直列接続されたストリングにおいて各制御可能バスバッファを順次有効化することであって、前記制御可能ローカル出力バッファが有効化中のときに少なくとも関連するノードが有効化中であるように、前記制御可能ローカル出力バッファのそれぞれを、前記制御可能バスバッファの前記順次有効化の順番でかつこの順次有効化と同期して順次有効化する」との構成(以下、「バッファ有効化プロセス」と呼ぶ)について開示も示唆もありません。」と主張している。
しかし、前記第2の3(4)クで述べたように、「制御可能バスバッファの1つが受信して、その出力が他の制御可能バスバッファに与えられ」る「前記列データ信号」は、制御可能バスバッファの直列接続されたストリングの「入力に」「提供」されるものであり、当該「前記列データ信号」は、「(ストリングの)入力に提供される」、「特定の画素列を駆動するための列データ信号に対応可能な入力データ信号」であると解釈するのが相当であるから、引用文献1の「表示データDATA」は、上記「特定の画素列を駆動するための列データ信号に対応可能な入力データ信号」に相当し、引用発明のスタンバイ回路306(4)〜(6)においては、複数の信号線を介して、単純マトリックス型液晶表示装置の各列の画素を駆動するための表示データDATAが順次出力されていくことになる。
そうすると、引用発明においても、審判請求人の主張する上記「バッファ有効化プロセス」が成り立っていることとなるから、審判請求人の上記主張は採用できない。

(6)請求人の上申書における主張について
審判請求人は、令和2年2月21日に提出された上申書において、本件補正発明を「前記制御可能バスバッファおよび前記制御可能ローカル出力バッファとは異なるコントローラを用いて順次有効化する」とする補正案を提示しており、当該補正案の請求項1に係る発明は引用文献1から容易に想到し得るものではないと主張している。
しかし、引用発明において、「スタンバイ回路306」、「スタンバイ回路305」は、これらとは独立した異なる構成要素である「ブロックICBLK」からの信号SET_N(キャリー信号)により、順次有効化されているから、引用発明における各「ブロックICBLK」は、当該補正案における「前記制御可能バスバッファおよび前記制御可能ローカル出力バッファとは異なるコントローラ」に相当する。
よって、本件補正発明が上記補正案のとおり補正されたとしても、依然としてその発明が、引用文献1に記載された発明である、という結論に変わりはない。

(7)独立特許要件についてのまとめ
よって、本件補正発明は、引用文献1に記載された発明であり、また引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、もしくは同法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4 むすび
以上より、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願に係る発明
本件補正は、上記第2において述べたとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2の1(1)に記載された事項により特定されるとおりのものである。

2 原査定における本願発明についての拒絶理由1及び2の概要
(理由1)本願発明は、特開平10−282939号公報(前掲の引用文献1)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
(理由2)本願発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

3 引用文献に記載された発明等
引用文献1には、前記第2の3(3)において認定したとおりの引用発明が記載されている。

4 判断
本願発明は、本件補正発明の「画素アレイに使用するための列信号を生成する方法」に関する限定を省き、「2つ以上の制御可能バスバッファ」間の信号の出力及び受信方法に関する限定を省いたものである。
引用発明は、前記第2の3(4)で述べたように、本件補正発明の構成を全て含む。そして、本願発明は、本件補正発明から上記の限定を省いたものであるから、引用発明は、本願発明の構成を全て含む。
よって、本願発明は、引用文献1に記載された発明である。
また、本願発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるともいえる。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
また、本願発明は、同法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

審判長 中塚 直樹
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2020-07-31 
結審通知日 2020-08-04 
審決日 2020-08-20 
出願番号 P2016-550185
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G09G)
P 1 8・ 121- Z (G09G)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 中塚 直樹
特許庁審判官 中澤 真吾
濱野 隆
発明の名称 マイクロディスプレイデバイス用の列バス駆動方法  
代理人 堤 健郎  
代理人 金子 大輔  
代理人 中田 健一  
代理人 杉本 修司  
代理人 野田 雅士  
代理人 小林 由佳  
代理人 谷口 洋樹  
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