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審決分類 審判 査定不服 特29条の2 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N
管理番号 1380246
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-01-23 
確定日 2021-11-17 
事件の表示 特願2016−558367「マルチレイヤコーデックのためのHEVC SEIメッセージの汎用的な使用」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月 1日国際公開、WO2015/148550、平成29年 6月 1日国内公表、特表2017−514361〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)3月24日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2014年3月24日、米国、2015年3月23日、米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成28年11月11日 :国際出願翻訳文提出
平成28年11月22日 :手続補正および上申書提出
平成30年 2月27日 :手続補正および上申書提出
平成31年 1月30日付け:拒絶理由通知
令和 1年 7月 5日 :意見書提出および手続補正
令和 1年 9月13日付け:拒絶査定
令和 2年 1月23日 :拒絶査定不服審判請求および手続補正
令和 2年 2月14日 :前置報告
令和 2年 5月20日 :上申書提出
令和 2年10月29日付け:当審拒絶理由通知
令和 3年 1月22日 :意見書提出および手続補正書

第2 当審拒絶理由通知の概要
令和2年10月29日付けで通知した当審拒絶理由通知の概要は以下のとおりである。

(拡大先願)本件出願の請求項1−17に係る発明は、その出願の日前の日本語特許出願であって、その出願後に国際公開がされた下記の日本語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の日本語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記日本語特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない(同法第184条の13参照)。

先願:PCT/JP2015/056552号(国際公開2015/137237号)(優先権主張の基礎となる出願:特願2014−051851号(平成26年3月14日出願))

第3 本件補正発明
上記拒絶理由に対して、令和3年1月22日付け手続補正書により補正された請求項1−17のうち請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)は、次のとおりのものである。(なお、本件補正発明の各構成の符号は、請求項の記載を分説するために当審で付したものであり、請求項の記載を符号A〜Gを用いて、以下、構成A〜構成Gと称する。)

【請求項1】
A ビデオデータを復号する方法であって、前記方法が、
B 第1のレイヤおよび少なくとも1つの第2のレイヤを含むビデオデータのマルチレイヤビットストリームのアクセスユニットを取得することと、
B1 ここにおいて、前記アクセスユニットを取得することが、前記第1のレイヤの1つまたは複数のビデオコーディングレイヤ(VCL)ネットワーク抽象化レイヤ(NAL)ユニットを取得することと、
B2 前記第2のレイヤの1つまたは複数のVCL NALユニットを取得することとを備える、
B3 前記第1のレイヤは第1のピクチャを含み、前記第2のレイヤは第2のピクチャを含み、
C 前記アクセスユニットを復号することと、ここにおいて、前記アクセスユニットを復号することが、
C1 前記マルチレイヤビットストリームが、前記第1のレイヤの前記VCL NALユニットと、1つまたは複数の第1の非VCL NALユニットとの間に、前記第1のレイヤ以外の任意のレイヤのコーディングされたピクチャについてのいずれのNALユニットも含まず、
C2 前記第2のレイヤの前記VCL NALユニットと、1つまたは複数の第2の非VCL NALユニットとの間に、前記第2のレイヤ以外の任意のレイヤのコーディングされたピクチャについてのいずれのNALユニットも含まないように、
C3 前記第1のレイヤの前記VCL NALユニットに適用可能な第1のSEIメッセージを含む前記1つまたは複数の第1の非VCL NALユニットと、前記第1のレイヤの前記VCL NALユニットとを連続的に復号すること、
C4 および、前記第1のレイヤの前記1つまたは複数の第1の非VCL NALユニットと前記第1のレイヤの前記VCL NALユニットとを連続的に復号した後、前記第2のレイヤの前記VCL NALユニットに適用可能な第2のSEIメッセージを含む前記1つまたは複数の第2の非VCL NALユニットと、前記第2のレイヤの前記VCL NALユニットとを連続的に復号することを備える、
C を備え、ここにおいて、
D1 前記第1のレイヤの前記VCL NALユニットが前記第1のレイヤの前記第1のピクチャのVCL NALユニットであり、
D2 前記第1のSEIメッセージが前記第1のレイヤの前記第1のピクチャに適用可能な第1のプレフィックスSEIメッセージを備え、
E1 前記第1のレイヤの前記1つまたは複数の第1の非VCL NALユニットと前記第1のレイヤの前記VCL NALユニットとを連続的に復号することが、
E2 前記マルチレイヤビットストリームにおいて、前記第1のレイヤの最初のVCL NALユニットに先行する前記1つまたは複数の第1の非VCL NALユニットを復号することを備え、
F1 前記第2のレイヤの前記VCL NALユニットが前記第2のレイヤの前記第2のピクチャのVCL NALユニットであり、
F2 前記第2のSEIメッセージが前記第2のピクチャのVCL NALユニットに適用可能な第2のプレフィックスSEIメッセージを備え、
A 前記方法がさらに、
G 前記マルチレイヤビットストリーム中の前記第1のピクチャに後続する前記1つまたは複数の第2の非VCL NALユニットを復号すること
A を備える、方法。

第4 当審の判断
1 先願および先願発明
(1) 先願について
先願である、国際出願PCT/JP2015/056552号は、本件の優先権主張日以前の平成26年3月14日を出願日とする特願2014−051851号を優先権主張の基礎となる出願(以下、「先願に係る優先権主張の基礎となる出願)という。)とし、本件出願後に国際公開2015/137237号として国際公開がされた国際特許出願である。
先願に係る優先権主張の基礎出願の明細書、特許請求の範囲、又は図面(以下、「先願の優先権主張の基礎となる出願の明細書等」という。)と、先願に係る国際出願の明細書、請求の範囲、又は図面(以下、「先願明細書等」という。)とを比較すると、少なくとも先願明細書等の段落[0001]〜[0016]、[0018]〜[0344]及び図1〜図24は、先願の優先権主張の基礎となる出願の明細書等の段落【0001】〜【0016】、【0029】〜【0348】及び図1〜図24と共通の記載がなされている。
そうすると、先願明細書等の上記範囲においては、先願の優先権主張日の基礎となる出願の優先権主張の効果が及ぶものである。
ここで、先願の優先権主張の基礎となる出願の明細書等と先願明細書等に共通して記載された事項から、先願に記載された発明を認定する。

(2) 先願に記載されている事項
先願に係る優先権主張の基礎となる出願の明細書には、以下の記載がある。(下線は強調のために当審で付した。各構成の末尾の段落番号及び図の番号は、先願明細書等のものである。)

「[0049] VCL NALユニット : VCL(Video Coding Layer、ビデオ符号化レイヤ)NALユニットとは、動画像(映像信号)の符号化データを含むNALユニットである。例えば、VCL NALユニットには、スライスデータ(CTUの符号化データ)、及び当該スライスの復号を通じて共通で利用されるヘッダ情報(スライスヘッダ)が含まれる。(【0056】)
[0050] non-VCL NALユニット : non-VCL(non-Video Coding Layer、非ビデオ符号化レイヤ、非VCL)NALユニットとは、ビデオパラメータセットVPS、シーケンスパラメータセットSPS、ピクチャパラメータセットPPS等の各シーケンスやピクチャを復号する時に利用される符号化パラメータの集合であるヘッダ情報や補助情報SEI等の符号化データを含むNALユニットである。(【0057】)
・・・
[0053] レイヤ : 特定の階層(レイヤ)のレイヤ識別子の値(nuh_layer_id,nuhLayerId)をもつVCL NAL UNIT及びそのVCL NALユニットに関連付けられたnon-VCL NAL UNITの集合、あるいは、階層的な関係をもつシンタックス構造の集合の一つである。(【0060】)
・・・
[0056] 対象レイヤ : 復号または符号化の対象となっている階層のことをいう。なお、対象レイヤに対応する復号画像を対象レイヤピクチャと呼ぶ。また、対象レイヤピクチャを構成する画素を対象レイヤ画素と呼ぶ。(【0063】)」

「[0086] 図6、特にNAL Unit Type Classで示されるように、各NALユニットは、NALユニットタイプに応じて、ピクチャを構成するデータ(VCLデータ)と、それ以外のデータ(non-VCL)に分類される。ピクチャは、ランダムアクセスピクチャ、リーディングピクチャ、トレイリングピクチャなどのピクチャ種別によらず、全てVCL NALユニットに分類され、ピクチャの復号に必要なデータであるパラメータセットや、ピクチャの補助情報であるSEI、シーケンスの区切りを表わすアクセスユニットデリミタ(AUD)、エンドオブシーケンス(EOS)、エンドオブビットストリーム(EOB)などは、non-VCL NALユニットに分類される。(【0093】)」

「[0087] (アクセスユニット)
特定の分類ルールにより集約されたNALユニットの集合のことをアクセスユニットと呼ぶ。レイヤ数が1の場合には、アクセスユニットは1ピクチャを構成するNALユニットの集合である。レイヤ数が1より大きい場合には、アクセスユニットは同じ時刻(同一出力タイミング)の複数のレイヤのピクチャを構成するNALユニットの集合である。なお、アクセスユニットの区切りを示すために、符号化データはアクセスユニットデリミタ(AUD:Access unit delimiter)と呼ばれるNALユニットを含んでも良い。アクセスユニットデリミタは、符号化データ中にあるアクセスユニットを構成するNALユニットの集合と、別のアクセスユニットを構成するNALユニットの集合の間に含まれる。(【0094】)
[0088] 図7は、アクセスユニットに含まれるNALユニットの構成の一例を示す図である。同図において、AUには、AUの先頭であることを示すアクセスユニットデリミタ(AUD)、各種パラメータセット(VPS,SPS,PPS)、各種SEI(Prefix SEI,Suffix SEI)、レイヤ数が1の場合は1ピクチャを構成するVCL(slice)、レイヤ数が1より大きい場合はレイヤ数分のピクチャを構成するVCL、シーケンスの終端を示すEOS(End of Sequence)、ビットストリームの終端を示すEOB(End of Bitstream)等のNALユニットから構成される。なお、図7において、VPS,SPS,SEI,VCLの後の符号L#K(K=Nmin..Nmax)は、レイヤID(あるいは、VPS上で定義されたレイヤの順番を示すインデクス)を表わす。図7の例では、AU内に、VPSを除き、各レイヤL#Nmin〜レイヤL#NmaxのSPS,PPS,SEI,VCLが、レイヤID(あるいは、VPS上で定義されたレイヤの順番を示すインデクス)の昇順で存在する。図7の例では、VPSは、最低次のレイヤIDでのみ送られる。なお、図7において、特定NALユニットがAU内に存在するか、または繰り返し存在するかを、矢印によって示している。(【0095】)
[0089] 例えば、特定のNALユニットがAU内に存在すれば、そのNALユニットを通過する矢印で示し、特定のNALユニットがAU内に存在しなければ、そのNALユニットをスキップする矢印で示している。例えば、AUDを通らずに、VPSへ向かう矢印は、AUDがAU内に存在しない場合を示す。また、VCLを通過してから再びVCLへ戻る矢印は、1以上のVCLが存在する場合を示す。(【0096】)
[0090] また、最低次以外の上位のレイヤIDを有するVPSがAU内に含まれてもよいが、画像復号装置は、最低次以外のレイヤIDを有するVPSを無視するものとする。また、各種パラメータセット(VPS,SPS,PPS)や補助情報であるSEIは、図7のように、アクセスユニットの一部として含まれてもよいし、ビットストリームとは別の手段でデコーダに伝達されてもよい。なお、図7は、アクセスユニットに含まれるNALユニットの構成の一実施形態に過ぎず、アクセスユニットに含まれるNALユニットの構成は、ビットストリームを復号することが可能な範囲で変更が可能である。(【0097】)」

「[0136] 図16に示すように階層動画像復号装置1は、NAL逆多重化部11、及びターゲットセットピクチャ復号部10を含んで構成される。さらに、ターゲットセットピクチャ復号部10は、non-VCL復号部12、パラメータメモリ13、ピクチャ復号部14、復号ピクチャ管理部15、及び出力制御部16を含んで構成される。また、NAL逆多重化部11は、さらにビットストリーム抽出部17を備える。(【0140】)
[0137] 階層符号化データDATAには、VCLにより生成されたNALU(NAL Unit)の他に、パラメータセット(VPS、SPS、PPS)やSEI等を含むNALUが含まれる。それらのNALはVCL NALUに対して非VCL NALU(non-VCL NAL unit)と呼ばれる。(【0141】)
[0138] 出力制御部16は、外部より供給される出力指定情報と、パラメータメモリ13に保持されたアクティブVPSのレイヤセット情報、及び出力レイヤセット情報に基づいて、出力制御情報として、対象出力レイヤセットTargetOptLayerSetのレイヤ構成を示す対象出力レイヤIDリストTargetOptLayerIdList、及び対象出力レイヤセットの復号に必要とするレイヤの構成を示す対象復号レイヤIDリストTargetDecLayerIdListを導出する。導出された対象出力レイヤIDリストTargetOptLayerIdList、及び対象復号レイヤIDリストTargetDecLayerIdListはそれぞれ、ビットストリーム抽出部17、及び復号ピクチャ管理部15へ供給される。なお、出力制御部16における対象出力レイヤIDリスト、及び対象復号レイヤIDリストの導出処理の詳細については後述する。(【0142】)
[0139] NAL逆多重化部11の備えるビットストリーム抽出部17は、概略的には、ビットストリーム抽出処理を行い、階層符号化データDATAから、出力制御部16より供給された対象復号レイヤIDリスト、及び復号対象最高次サブレイヤ識別子TargetHighestTidによって定まる集合、ターゲットTargetSetに含まれるNALユニットから構成されるターゲットセット符号化データDATA#T(BitstreamToDecode)を抽出する。なお、ビットストリーム抽出部17における本発明との関連性の高い処理の詳細について後述する。(【0143】)
[0140] 続いて、NAL逆多重化部11は、ビットストリーム抽出部17より抽出されたターゲットセット符号化データDATA#T(BitstreamToDecode)を逆多重化して、NALユニットに含まれるNALユニットタイプ、レイヤ識別子(レイヤID)、テンポラル識別子(テンポラルID)を参照し、ターゲットセットに含まれるNALユニットを、ターゲットセットピクチャ復号部10へ供給する。(【0144】)
[0141] ターゲットセットピクチャ復号部10は、供給されたターゲットセット符号化データDATA#Tに含まれるNALUのうち、non-VCL NALUをnon-VCL復号部12に、VCL NALUをピクチャ復号部14にそれぞれ供給する。すなわち、ターゲットセットピクチャ復号部10は、供給されたNALユニットのヘッダ(NALユニットヘッダ)を復号し、復号したNALユニットヘッダに含まれるNALユニットタイプ、レイヤ識別子、及びテンポラル識別子に基づいて、non-VCL NALUの符号化データをnon-VCL復号部12へ、VCL NALUの符号化データをピクチャ復号部14へ、復号したNALユニットタイプ、レイヤ識別子、及びテンポラル識別子と合わせて供給する。(【0145】)
[0142] non-VCL復号部12は、入力されるnon-VCL NALUからパラメータセット、すなわち、VPS、SPS、および、PPSを復号してパラメータメモリ13に供給する。なお、non-VCL復号部12における本発明との関連性の高い処理の詳細について後述する。(【0146】)
[0143] パラメータメモリ13は、復号されたパラメータセットを各パラメータセットの識別子毎に、パラメータセットの符号化パラメータを保持する。具体的には、VPSであれば、VPS識別子(video_parameter_set_id)毎に、VPSの符号化パラメータを保持する。SPSであれば、SPS識別子(sps_seq_parameter_set_id)毎に、SPSの符号化パラメータを保持する。PPSであれば、PPS識別子(pps_pic_parameter_set_id)毎に、PPSの符号化パラメータを保持する。なお、パラメータメモリ13に保持される符号化パラメータには、各パラメータセットのレイヤ識別子、及びテンポラル識別子が含まれていてもよい。(【0147】)
[0144] また、パラメータメモリ13は、後述のピクチャ復号部14が、ピクチャを復号するために参照するパラメータセット(アクティブパラメータセット)の符号化パラメータを、ピクチャ復号部14へ供給する。具体的には、まず、ピクチャ復号部14で復号されたスライスヘッダSHに含まれるアクティブPPS識別子(slice_pic_parameter_set_id)により、アクティブPPSが指定される。次に、指定されたアクティブPPSに含まれるアクティブSPS識別子(pps_seq_parameter_set_id)により、アクティブSPSが指定される。最後に、アクティブSPSに含まれるアクティブVPS識別子(sps_video_parameter_set_id)により、アクティブVPSが指定される。その後、指定されたアクティブPPS、アクティブSPS、アクティブVPSの符号化パラメータを、ピクチャ復号部14へ供給する。また、パラメータメモリ13は、同様に、出力制御部16が出力制御情報を導出するために参照するアクティブパラメータセットの符号化パラメータを、出力制御部16へ供給する。(【0148】)
[0145] ピクチャ復号部14は、入力されるVCL NALU、アクティブパラメータセット(アクティブPPS、アクティブSPS、アクティブVPS),及び参照ピクチャに基づいて復号ピクチャを生成して復号ピクチャ管理部15へ供給する。供給された復号ピクチャは、復号ピクチャ管理部15内のバッファに記録される。なお、ピクチャ復号部14の詳細な説明は後述する。(【0149】)
・・・
[0147] (non-VCL復号部12)
non-VCL復号部12は、入力されるターゲットセット符号化データから、ターゲットセットの復号に用いられるパラメータセット(VPS,SPS,PPS)を復号する。復号されたパラメータセットの符号化パラメータは、パラメータメモリ13に供給され、各パラメータセットの有する識別子毎に記録される。なお、non-VCL復号部12は、パラメータセットに限定されず、図6において、non-VCLに分類されるNALユニット(nal_unit_type=32..63)を復号してもよい。パラメータセットと同様に、復号されたnon-VCLの符号化パラメータは、パラメータメモリ13において、各々記録される。(【0151】)」

「[0241] (ピクチャ復号部14)
ピクチャ復号部14は、入力されるVCL NALユニット、および、アクティブパラメータセットに基づいて復号ピクチャを生成して出力する。(【0245】)
[0242] 図17を用いて、ピクチャ復号部14の概略的構成を説明する。図17は、ピクチャ復号部14の概略的構成を示した機能ブロック図である。(【0246】)
[0243] ピクチャ復号部14は、スライスヘッダ復号部141、CTU復号部142を備えている。CTU復号部142は、さらに、予測残差復元部1421、予測画像生成部1422、及びCTU復号画像生成部1423を含んでいる。(【0247】)
[0244] (スライスヘッダ復号部141)
スライスヘッダ復号部141は、入力されるVCL NALユニットとアクティブパラメータセットに基づいてスライスヘッダを復号する。復号したスライスヘッダは、入力されるVCL NALユニットと合わせてCTU復号部142に出力する。(【0248】)
[0245] (CTU復号部142)
CTU復号部142は、概略的には、入力されるVCL NALユニットに含まれるスライスセグメント(スライスヘッダおよびスライスデータ)、及びアクティブパラメータセットに基づいて、ピクチャを構成するスライスに含まれる各CTUに対応する領域の復号画像を復号することで、スライスの復号画像を生成する。CTUの復号画像は、CTU復号部142内部の予測残差復元部1421、予測画像生成部1422、及びCTU復号画像生成部1423により生成される。(【0249】)」

「[0259] (ビットストリーム抽出部17)
ビットストリーム抽出部17は、出力制御部16より供給される出力制御情報(出力レイヤセットのうち、復号対象となるレイヤの構成を示す対象復号レイヤIDリストTargetDecLayerIdList、及び、及び対象最高次テンポラル識別子TargetHighestTidに基づいて、ビットストリーム抽出処理を行い、入力される階層符号化データDATAから、対象最高次テンポラル識別子TargetHighestTid、及び対象復号レイヤIDリストTargetDecLayerIdListによって定まる集合(ターゲットセットTargetSetと呼ぶ)に含まれないNALユニットを除去(破棄)し、ターゲットセットTargetSetに含まれるNALユニットから構成される対象レイヤセット符号化データDATA#T(BitstreamToDecode)を抽出し、出力する。(【0263】)
[0260] より具体的には、上記ビットストリーム抽出部17は、NALユニットヘッダを復号するNALユニット復号手段を備える。(【0264】)
[0261] 以下、図19を参照して、本実施例に係るビットストリーム抽出部17の概略的な動作について説明する。図19は、ビットストリーム抽出部17におけるアクセスユニット単位のビットストリーム抽出処理を示すフロー図である。(【0265】)」

「【図6】



「【図7】



(3) 先願に記載された発明
図6から、nal_unit_typeが39のものがPREFIX_SEI_NUTという名称を与えられており、NALの内容はSEIであることが読み取れる。(以下、図6より認定される事項という。)
これを踏まえると、上記(2)によれば、先願には、次の発明(以下、「先願発明」という)が記載されているものと認められる。先願発明の各構成は、符号(a)〜(t)を用いて、以下、構成(a)〜(t)と称する。

(a) 階層動画像復号装置1は、NAL逆多重化部11、及びターゲットセットピクチャ復号部10を含んで構成され、ターゲットセットピクチャ復号部10は、non−VCL復号部12、パラメータメモリ13、ピクチャ復号部14を含んで構成され、NAL逆多重化部11は、さらにビットストリーム抽出部17を備え、([0136])
(b) non−VCL復号部12は、パラメータセット(VPS,SPS,PPS)を復号するものであり、non−VCL復号部12は、パラメータセットに限定されず、non−VCLに分類されるNALユニット(nal_unit_type=32..63)を復号してもよく、([0147])
(c) ピクチャ復号部14は、スライスヘッダ復号部141、CTU復号部142を備え、([0243])
(d) NAL逆多重化部11の備えるビットストリーム抽出部17は、階層符号化データDATAから、ターゲットに含まれるNALユニットから構成されるターゲットセット符号化データDATA#Tを抽出するものであり、([0139])アクセスユニット単位のビットストリーム抽出処理をするものであり、([0261])
(e) NAL逆多重化部11は、ビットストリーム抽出部17より抽出されたターゲットセット符号化データDATA#Tを逆多重化して、ターゲットセットに含まれるNALユニットを、ターゲットセットピクチャ復号部10へ供給し、([0140])
(f) ターゲットセットピクチャ復号部10は、供給されたターゲットセット符号化データDATA#Tに含まれるNALUのうち、non−VCL NALUをnon−VCL復号部12に、VCL NALUをピクチャ復号部14にそれぞれ供給し、([0141])
(g) non−VCL復号部12は、入力されるnon−VCL NALUからパラメータセット、すなわち、VPS、SPS、および、PPSを復号してパラメータメモリ13に供給し、([0142])
(h) パラメータメモリ13は、ピクチャを復号するために参照するパラメータセット(アクティブパラメータセット)の符号化パラメータを、ピクチャ復号部14へ供給し、([0144])
(i) ピクチャ復号部14は、入力されるVCL NALU、アクティブパラメータセットに基づいて復号ピクチャを生成し、([0145])
(j) スライスヘッダ復号部141は、入力されるVCL NALユニットとアクティブパラメータセットに基づいてスライスヘッダを復号し、入力されるVCL NALユニットと合わせてCTU復号部142に出力し、([0244])
(k) CTU復号部142は、入力されるVCL NALユニットに含まれるスライスセグメント及びアクティブパラメータセットに基づいて、ピクチャを構成するスライスに含まれる復号画像を復号するものであって、([0245])
(l) VCL NALユニットとは、動画像(映像信号)の符号化データを含むNALユニットであり、VCL NALユニットには、スライスデータ、スライスヘッダが含まれ、([0049])
(m) non−VCL NALユニットとは、VPS、SPS、PPS等のピクチャを復号する時に利用される符号化パラメータの集合であるヘッダ情報や補助情報SEI等を含むNALユニットであり、([0050])
(n) レイヤとは、特定の階層(レイヤ)のレイヤ識別子の値をもつVCL NAL UNIT及びそのVCL NALユニットに関連付けられたnon−VCL NAL UNITの集合であり([0053])、復号の対象となっている階層である対象レイヤに対応する復号画像を対象レイヤピクチャと呼ぶものであり、([0056])
(o) 各NALユニットは、ピクチャを構成するデータ(VCLデータ)と、それ以外のデータ(non−VCL)に分類され、ピクチャの復号に必要なデータであるパラメータセットや、ピクチャの補助情報であるSEI、シーケンスの区切りを表わすアクセスユニットデリミタ(AUD)、エンドオブシーケンス(EOS)、エンドオブビットストリーム(EOB)などは、non−VCL NALユニットに分類されるものであり、([0086])
(p) NALユニットの集合のことをアクセスユニットと呼び、レイヤ数が1より大きい場合には、アクセスユニットは同じ時刻(同一出力タイミング)の複数のレイヤのピクチャを構成するNALユニットの集合であり、([0087])
(q) 図7は、アクセスユニットに含まれるNALユニットの構成であって、同図において、AUには、AUの先頭であることを示すアクセスユニットデリミタ(AUD)、各種パラメータセット(VPS,SPS,PPS)、各種SEI(Prefix SEI,Suffix SEI)、レイヤ数が1より大きい場合はレイヤ数分のピクチャを構成するVCL、シーケンスの終端を示すEOS(End of Sequence)、ビットストリームの終端を示すEOB(End of Bitstream)等のNALユニットから構成され、([0088])
(r) 図7において、VPS,SPS,SEI,VCLの後の符号L#K(K=Nmin..Nmax)は、レイヤIDを表わすものであり、図7の例では、AU内に、各レイヤL#Nmin〜レイヤL#NmaxのSPS,PPS,SEI,VCLが、レイヤIDの昇順で存在し、([0088])
(s) 各種パラメータセット(VPS,SPS,PPS)や補助情報であるSEIは、図7のように、アクセスユニットの一部として含まれ、([0090])
(t) nal_unit_typeが39のものがPREFIX_SEI_NUTという名称を与えられており、NALの内容はSEIであり、(図6より認定される事項)
(u) 図7のアクセスユニットに含まれるNALユニットの構成は以下のとおりである、


(a) 階層動画像復号装置1。

2 本件補正発明と先願発明との対比
次に、本件補正発明と先願発明とを対比する。

(1) 先願発明の構成(a)「階層動画像復号装置1」は、本件補正発明の構成Aの「ビデオデータを復号する方法」と、ビデオデータを復号するためのものである事項で共通する。
ただし、本件補正発明の構成Aは「復号する方法」という方法の発明を特定する事項であるのに対して、先願発明は「動画像復号装置」という物の発明を特定する事項である点で相違している。

(2) 先願発明の構成(d)〜(f)について、
「NAL逆多重化部11の備えるビットストリーム抽出部17は、階層符号化データDATAから、ターゲットに含まれるNALユニットから構成されるターゲットセット符号化データDATA#Tを抽出するものであり、アクセスユニット単位のビットストリーム抽出処理を行うものであ」ること、
「NAL逆多重化部11は、ビットストリーム抽出部17より抽出されたターゲットセット符号化データDATA#Tを逆多重化して、ターゲットセットに含まれるNALユニットを、ターゲットセットピクチャ復号部10へ供給し」、
「ターゲットセットピクチャ復号部10は、供給されたターゲットセット符号化データDATA#Tに含まれるNALUのうち、non−VCL NALUをnon−VCL復号部12に、VCL NALUをピクチャ復号部14にそれぞれ供給し」ていることから、
先願発明は、復号の一工程において、階層符号化データDATAに含まれるNALユニットを、ターゲットデータセット符号化DATA#Tとして、アクセスユニット単位にビットストリーム抽出し逆多重化して取得し、そのNALユニットのうち、non−VCL NALUをnon−VCL復号部12に、VCL NALUをピクチャ復号部14にそれぞれ供給しており、当該アクセスユニット単位中にはnon−VCL NALユニットとVCL NALユニットが含まれているといえる。

次に、先願発明の構成(p)について、「NALユニットの集合のことをアクセスユニットと呼び、レイヤ数が1より大きい場合には、アクセスユニットは同じ時刻(同一出力タイミング)の複数のレイヤのピクチャを構成するNALユニットの集合であ」ることから、アクセスユニットは複数のレイヤのピクチャを構成する複数のNALユニットからなるといえる。
そうすると、先願発明の「ビットストリーム抽出部17」における「ビットストリーム抽出処理」では、復号の一工程として、NALユニットを複数のレイヤのピクチャを構成する複数のNALユニットからなるアクセスユニット単位にビットストリーム抽出するものであり、当該アクセスユニット単位にはnon−VCL NALユニットとVCL NALユニットが含まれているといえる。
さらに、先願発明の構成(n)、(q)から、復号対象の階層(レイヤ)に対応する復号画像(ピクチャ)があり、アクセスユニットに含まれるNALユニットの構成として、レイヤ数が1より大きい場合はレイヤ数分のピクチャを構成するVCLがあることから、復号対象のレイヤにピクチャが1つ含まれていることがいえる。

以上のことから、先願発明の上記「ビットストリーム抽出処理」では、本件補正発明の構成Bの「第1のレイヤおよび少なくとも1つの第2のレイヤを含むビデオデータのマルチレイヤビットストリームのアクセスユニットを取得する」ことを行っており、上記「ビットストリーム抽出処理」は、構成B1の「前記第1のレイヤの1つまたは複数のビデオコーディングレイヤ(VCL)ネットワーク抽象化レイヤ(NAL)ユニットを取得することと」、構成B2の「前記第2のレイヤの1つまたは複数のVCL NALユニットを取得することとを備える」ものであり、構成B3の「前記第1のレイヤは第1のピクチャを含み、前記第2のレイヤは第2のピクチャを含」むといえる。

(3) 先願発明の構成(g)〜(i)について、
「non−VCL復号部12は、入力されるnon−VCL NALUからパラメータセット、すなわち、VPS、SPS、および、PPSを復号してパラメータメモリ13に供給し」、
「パラメータメモリ13は、ピクチャを復号するために参照するパラメータセット(アクティブパラメータセット)の符号化パラメータを、ピクチャ復号部14へ供給し」、
「ピクチャ復号部14は、入力されるVCL NALU、アクティブパラメータセットに基づいて復号ピクチャを生成し」ていることから、
上記(2)と合わせると、先願発明は、復号の一工程において、アクセスユニット単位にビットストリーム抽出し逆多重化して得たNALユニットのうち、non−VCL NALUをnon−VCL復号部12に、VCL NALUをピクチャ復号部14にそれぞれ供給し、non−VCL復号部12はVPS,SPS,PPSを復号し、次いでピクチャ復号部14はnon−VCL復号部12で復号したアクティブパラメータセットを用いてVCL NALUを復号しているといえる。

以上のことから、先願発明も本件補正発明の構成C同様に「アクセスユニットを復号する」といえる。

(4) 先願発明の構成(q)(r)から、アクセスユニットは、VPS,SPS,PPS、各種SEI、VCL等のNALユニットから構成され、SPS、PPS、各種SEIの後にVCLが、レイヤIDの昇順の順で存在しているといえる。
また、先願発明の構成(u)について、図7から、アクセスユニットに含まれるNALユニットの構成として、レイヤ数のループ K=Nmin・・・Nmaxという2つの台形で囲まれた間に、SPS L#K、PPS L#K、SEI L#K、VCL L#Kがこの順序で並んでいること、当該上側の台形の上側にAUD,レイヤNminのVPSが、当該下側の台形の下側にEOS,EOBが、それぞれこの順で並んでいること、が読み取れる。

そうすると、先願発明の構成(o)、(s)、(u)について、図7から、アクセスユニットの構成として、最初にAUD、レイヤNminのVPSが並んでおり、その次に、レイヤIDの昇順で、すなわち、レイヤNminについて、SPS,PPS,SEI,VCLがこの順で並び、次いでレイヤNmin+1について、SPS,PPS,SEI,VCLがこの順で並び、以降レイヤNmaxまで、SPS,PPS,SEI,VCLがこの順で並び、最後にEOS、EOBが並んでいることが読み取れるものといえる。

したがって、先願発明におけるアクセスユニットは、どのレイヤにおいても、同じレイヤのSPS,PPS,SEIとVCLの間に、異なるレイヤの情報を含まないといえるから、本件補正発明の構成C1、C2同様に、「第1のレイヤのVCL NALユニットと、1つまたは複数の第1の非VCL NALユニットとの間に、第1のレイヤ以外の任意のレイヤのコーディングされたピクチャについてのいずれのNALユニットも含まず」、「第2のレイヤのVCL NALユニットと、1つまたは複数の第2の非VCL NALユニットとの間に、第2のレイヤ以外の任意のレイヤのコーディングされたピクチャについてのいずれのNALユニットも含まない」という構成を有するといえる。

また、先願発明の構成(b)、(g)から、non−VCL復号部12は、入力されるnon−VCL NALUからパラメータセット、すなわち、VPS、SPS、および、PPSを復号するが、これに限定されず、non−VCLに分類されるNALユニット(nal_unit_type=32..63)を復号してもよいところ、構成(t)からnal_unit_typeが39のものがPREFIX_SEI_NUTという名称を与えられており、NALの内容はSEIであることから、non−VCL復号部12は、パラメータセットに限定されず、PREFIX_SEI_NUTという名称のNALであって、その内容がSEIであるNALユニットを復号することがいえる。
そうすると、先願発明のnon−VCL復号部12は、入力されるnon−VCL NALUから、VPS、SPS、PPS、PREFIX_SEI_NUTという名称のSEI、を復号することがいえる。

ここで、上記(3)のとおり、先願発明は、復号の一工程において、non−VCL復号部12はnon−VCLであるVPS,SPS,PPSを復号し、次いでピクチャ復号部14はnon−VCL復号部12で復号したアクティブパラメータセットを用いてVCLNALUを復号しているといえること、上記のとおり、アクセスユニットの構成として、レイヤIDの昇順で、レイヤNminについて、SPS,PPS,SEI,VCLがこの順で並び、次いでレイヤNmin+1について、SPS,PPS,SEI,VCLがこの順で並び、以降レイヤNmaxまで、SPS,PPS,SEI,VCLがこの順で並んでいることがいえるから、これらを合わせると、先願発明はあるレイヤIDに関するPREFIX_SEI_NUTという名称のSEIを含むnon−VCLを復号した後、続いてVCLを復号するという処理を、レイヤIDの昇順で行うものといえる。
このことから、先願発明においても、本件補正発明の構成C3、C4同様に「第1のレイヤのVCL NALユニットに適用可能な第1のSEIメッセージを含む1つまたは複数の第1の非VCL NALユニットと、第1のレイヤのVCL NALユニットとを連続的に復号すること」、「および、第1のレイヤの1つまたは複数の第1の非VCL NALユニットと第1のレイヤのVCL NALユニットとを連続的に復号した後、第2のレイヤのVCL NALユニットに適用可能な第2のSEIメッセージを含む1つまたは複数の第2の非VCL NALユニットと、第2のレイヤのVCL NALユニットとを連続的に復号することを備える」ものであり、
さらに本件補正発明の構成E1、E2同様に「第1のレイヤの1つまたは複数の第1の非VCL NALユニットと第1のレイヤのVCL NALユニットとを連続的に復号することが、マルチレイヤビットストリームにおいて、第1のレイヤの最初のVCL NALユニットに先行する1つまたは複数の第1の非VCL NALユニットを復号することを備え」るものであるといえる。

(5) 上記(2)のとおり、先願発明の構成(n)、(q)から、復号対象の階層(レイヤ)に対応する復号画像(ピクチャ)があり、アクセスユニットに含まれるNALユニットの構成として、レイヤ数が1より大きい場合はレイヤ数分のピクチャを構成するVCLがあることから、復号対象のレイヤにピクチャが1つ含まれていることがいえる。
そうすると、アクセスユニットに含まれるNALユニットのうち、あるレイヤIDに対するVCLは、このレイヤIDのレイヤに含まれるピクチャであるといえる。
したがって、先願発明においても、本件補正発明の構成D1、F1同様に、「第1のレイヤのVCL NALユニットが第1のレイヤの第1のピクチャのVCL NALユニットであり」、「第2のレイヤのVCL NALユニットが第2のレイヤの第2のピクチャのVCL NALユニットであ」るといえる。

また、上記(4)のとおり、先願発明は、あるレイヤIDに関するPREFIX_SEI_NUTという名称のSEIを含むnon−VCLを復号した後、続いてVCLを復号するという処理を、レイヤIDの昇順で行うものといえる。
そうすると、先願発明において、あるレイヤIDのプレフィックスSEIが、同じレイヤIDに対応するVCLであって、同じレイヤIDのレイヤに含まれるピクチャであるVCLに適用可能であるといえる
したがって、先願発明においても、本件補正発明の構成D2、F2同様に、「第1のSEIメッセージが第1のレイヤの第1のピクチャに適用可能な第1のプレフィックスSEIメッセージを備え」、「第2のSEIメッセージが第2のピクチャのVCL NALユニットに適用可能な第2のプレフィックスSEIメッセージを備え」るといえる。

(6) 上記(4)のとおり、先願発明は、本件補正発明の構成C4同様に「第1のレイヤの1つまたは複数の第1の非VCL NALユニットと第1のレイヤのVCL NALユニットとを連続的に復号した後、第2のレイヤのVCL NALユニットに適用可能な第2のSEIメッセージを含む1つまたは複数の第2の非VCL NALユニットと、第2のレイヤのVCL NALユニットとを連続的に復号する」ものであるから、第1のレイヤのVCL NALユニットを復号した後、複数の第2の非VCL NALユニットを復号するものといえる。
また、上記(5)のとおり、先願発明において、アクセスユニットに含まれるNALユニットのうち、あるレイヤIDに対するVCLは、このレイヤIDのレイヤに含まれるピクチャであるといえるから、第1のレイヤのVCL NALユニットは、第1のレイヤのピクチャであるといえる。
したがって、先願発明も、本件補正発明の構成G同様に、「マルチレイヤビットストリーム中の第1のピクチャに後続する1つまたは複数の第2の非VCL NALユニットを復号する」といえる。

(7) まとめ
以上の(1)〜(6)の対比に基づき、本件補正発明と上記先願発明とを比較すると、本件補正発明は「ビデオデータを復号する方法」という方法の発明であるのに対して、先願発明は「階層動画像符号化装置」という物の発明である点で相違するものの、その余の点においては一致している。

3 判断
上記相違点について検討するに、本件補正発明と先願発明のカテゴリ表現が相違することは、実質的なものではなく、本件補正発明は先願発明と実質的に同一の発明である。

第5 むすび
以上のとおり、本件補正発明は、その出願の日前の日本語特許出願であって、その出願後に国際公開がされた上記先願発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の日本語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記日本語特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について検討するまでもなく、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

審判長 清水 正一
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2021-06-18 
結審通知日 2021-06-22 
審決日 2021-07-05 
出願番号 P2016-558367
審決分類 P 1 8・ 16- WZ (H04N)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 清水 正一
特許庁審判官 川崎 優
五十嵐 努
発明の名称 マルチレイヤコーデックのためのHEVC SEIメッセージの汎用的な使用  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 岡田 貴志  
代理人 井関 守三  

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