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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1380271
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-02-28 
確定日 2022-01-04 
事件の表示 特願2017−519980「ウェブベースのコンテンツとの対話中におけるコンピュータユーザデータの収集および処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 1月 7日国際公開、WO2016/001257、平成29年 9月 7日国内公表、特表2017−526094、請求項の数(19)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続きの経緯

本願は、2015年(平成27年)6月30日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2014年7月3日、英国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成31年 1月30日付け:拒絶理由通知
令和 元年 5月24日 :意見書、手続補正書の提出
令和 元年10月24日付け:拒絶査定(原査定)
令和 2年 2月28日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 3年 4月27日付け:拒絶理由(当審拒絶理由)通知
令和 3年 7月21日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明

本願の請求項1〜19に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」〜「本願発明19」という。)は、令和3年7月21日になされた手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1〜19に記載された事項により特定される発明であり、このうち、本願発明1は、以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
コンピュータユーザと、プロセッサおよびプログラムコードを格納するためのメモリと通信するデータ記録コンポーネントを有するコンピューティングデバイスとの対話中に、コンピュータユーザ挙動データを収集するコンピュータ実装方法であって、前記データ記録コンポーネントは、ウェブカメラであり、前記方法は、
前記プロセッサで実行するプログラムコードを使用して、ウェブページまたはメディアプレーヤに利用可能なデータ収集起動スクリプトを動作させることを備え、前記データ収集起動スクリプトを動作させることは、
前記プロセッサで実行するプログラムコードを使用して、前記ウェブページまたはメディアプレーヤに関連付けられた追跡可能要素を検出することを備え、前記追跡可能要素は、記録可能なトレースを残すように前記コンピュータユーザが対話できる前記ウェブページまたはメディアプレーヤの任意の部分を含む、
追跡可能要素を検出した際に、前記ウェブカメラの起動をトリガするために、ブラウザベースアプリケーションプログラムインターフェース(API)を呼び出すことと、
前記プロセッサで実行するプログラムコードを使用して、前記コンピューティングデバイス上の挙動データ収集アプリケーションの開始をトリガすることとを備え、前記方法はさらに、
前記コンピュータユーザと前記コンピューティングデバイスとの間の前記対話中に、前記ウェブカメラによって記録された挙動データを収集するために、前記プロセッサで実行するプログラムコードを使用して、前記ウェブカメラにアクセスするために前記ブラウザベースアプリケーションプログラムインターフェースを前記挙動データ収集アプリケーションによって呼び出すこととを備える、コンピュータ実装方法。」

また、本願発明2〜19は、本願発明1を減縮した方法の発明である。

第3 引用文献、引用発明等

1.引用文献1の記載事項について
(1)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特表2014−511620号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審付与。以下同様。)。

「【0011】
本開示は、人々が映像を視聴する際の人々の精神状態を分析するための様々な方法及びシステムを説明する。映像に対する人々の反応を適切に評価する能力により、他の映像の正確な推薦が可能となる。これらの映像は、限定されることはないが、エンターテイメント、教育、又は一般情報を含む、いかなる目的のものでもよい。映像に反応した精神状態の評価は、これらの映像に対する人々の真の反応に関する比類なき洞察を提供する。精神状態とは、感情状態又は認識状態であり得る。感情状態の例には、幸福又は悲しみが含まれる。認識状態の例には、集中又は混乱が含まれる。これらの精神状態を観察、捕捉、及び分析することにより、映像に対する人々の反応に関する重要な情報を得ることができる。精神状態の評価に共通して使用される用語の一部は、覚醒及び/又は誘意性である。覚醒は、人の活性化又は興奮の量に関する表示である。誘意性は、人が好意的に又は否定的に受けとめたかに関する表示である。感情は、覚醒及び誘意性の分析を含み得る。感情は、笑顔又は眉間にしわを寄せる等の表情に関する顔の分析も含み得る。分析は、映像を視聴しながら誰かが笑顔になった時、又は誰かが顔をしかめた時をトラッキングするといった単純なものでもよい。一部の実施形態では、他の映像の推薦は、誰かが、1つ又は複数の映像を見る間に笑顔になった時のトラッキングに基づいて行われてもよく、その個人を笑顔にさせた映像と類似点を持つ映像を推薦する。
【0012】
図1は、映像表示に関するフロー図である。フロー100は、映像をレンダリングするためのコンピュータ実施方法のためのものである。フロー100は、映像の選択(110)から開始され得る。映像は、多数の映像に関する感情の収集を自動化しているシステムによって選択されてもよい。複数の実施形態では、映像は、映像に関する感情の収集を望む人によって選択されてもよい。映像は、YouTube(商標)及びVimeo(商標)の映像の一方を含んでいてもよい。フロー100では、ウェブ対応インタフェース内への映像の埋め込み(120)が続いてもよく、ウェブ対応インタフェースは、精神状態データの収集を起動させる。ウェブ対応インタフェースは、ウェブページ又はウェブアプリケーション等を含み得る。埋め込み(120)は、感情の収集を起動させるウェブページのURLに対して、映像に関するリンクを挿入することを含み得る。埋め込み(120)は、ユーザが自身の映像を挿入できるリンクを提供することを含み得る。感情は、表情を評価することによって収集され得る。表情の評価には、笑顔又は眉間のしわの評価が含まれ得る。感情は、注目、没頭、興味、好き、及び嫌いからなる群の内の1つの評価を含み得る。感情は、生理機能を評価することによって収集され得る。
【0013】
フロー100では、ウェブ対応インタフェースの配布(130)が続く。ウェブ対応インタフェースの配布は、URLの送信を含み得る。URLの送信は、電子メール、テキストメッセージ、Facebook(商標)の投稿、Twitter(商標)メッセージ、Google+(商標)の投稿、LinkedIn(商標)の投稿、ソーシャルネットワークの更新、及びブログ入力からなる群の内の1つを用いて達成され得る。一部の実施形態では、この送信は、映像に関連するウェブページ上のボタンを押す又は選択することによって達成され得る。ボタンを選択することによって、映像が配布され得る。一部の実施形態では、ボタンを選択することによって、精神状態データ又は精神状態データの分析も、映像と共に配布され得る。フロー100は、おそらくウェブ対応インタフェースにおける映像の再生(140)と、映像が再生されている間の精神状態データの収集(150)とをさらに含み得る。映像を視聴する一団の人々に関して、精神状態データが収集されてもよい。
【0014】
収集される精神状態データは、生理学的データ、顔データ、及びアクティグラフデータからなる群の内の1つを含み得る。生理学的データには、皮膚電位、心拍数、心拍数変動、皮膚温度、及び呼吸の内の1つ又は複数が含まれ得る。顔データは、表情、動作ユニット、頭部ジェスチャー、笑顔、眉間のしわ、一瞥、下がった眉、及び注目等からなる群の内の1つ又は複数に関する情報を含み得る。推測され得る精神状態は、フラストレーション、混乱、落胆、躊躇、認知的過負荷、集中、没頭、関心、退屈、探究、自信、信頼、喜び、フラストレーション、誘意性、疑念等からなる群の内の1つを含み得る。精神状態データは、個人に関して収集されてもよい。同様に、精神状態データは、複数の人から捕捉されてもよい。
【0015】
フロー100では、精神状態データの分析(160)が続き得る。精神状態データを分析すること(160)によって、精神状態情報を生成し得る。1人又は複数の視聴者に関する精神状態が、収集された精神状態データに基づいて推測され得る。
【0016】
フロー100では、精神状態データの集約(170)が続き得る。精神状態データは、映像を視聴する複数の人から収集されてもよく、複数の人からの精神状態データが集約されてもよい。従って、精神状態データは、一団の人々全体にわたって集約される。集約(170)の結果は、グラフ表示の掲示の一部として示され得る。」

「【0018】
図2は、映像に対する顔面反応を捕捉するためのシステムである。システム200は、電子ディスプレイ220及びウェブカメラ230を含む。システム200は、電子ディスプレイ220上に示された映像222に対する顔面反応を捕捉する。顔データには、映像及び精神状態に関連する情報の集まりが含まれ得る。顔データには、表情、動作ユニット、頭部ジェスチャー、笑顔、眉間のしわ、一瞥、下がった眉、上がった眉、ニヤニヤ笑い、及び注目からなる群の内の1つ又は複数に関する情報が含まれ得る。一部の実施形態では、ウェブカメラ230は、人210の映像を捕捉することができる。人210の画像もまた、コンピュータ(ラップトップ、ネットブック、又はタブレット等)のカメラ、ビデオカメラ、スチールカメラ、携帯電話カメラ、モバイルデバイスカメラ(限定されることはないが、前面カメラを含む)、熱探知カメラ、CCDデバイス、三次元カメラ、デプスカメラ、及び視聴者の異なるビューを捕捉するために使用される複数のウェブカメラ又は捕捉した画像データの電子システムによる使用を可能にし得る他の種類の画像捕捉装置によって捕捉されてもよい。ディスプレイ220上に表示された映像222に対する人210の顔面反応の捕捉には、精神状態データの収集が含まれ得る。ディスプレイ220上に表示された映像222に対する人210の顔面反応の捕捉には、生理学的データの捕捉が含まれ得る。生理学的データには、心拍数、心拍数変動、皮膚温度、及び呼吸等の内の1つ又は複数が含まれ得る。
【0019】
電子ディスプレイ220は、映像を表示することができる。映像222は、限定されることはないが、コンピュータディスプレイ、ラップトップ画面、ネットブック画面、タブレットコンピュータ画面、携帯電話ディスプレイ、モバイルデバイスディスプレイ、ディスプレイを備えたリモートコンピュータ、テレビ又はプロジェクタ等を含むどのような電子ディスプレイ上に表示されてもよい。電子ディスプレイ220は、キーボード、マウス、ジョイスティック、タッチパッド、ペン型スキャナ、運動センサ、及び他の入力手段への接続を含み得る。映像222は、ウェブページ、ウェブサイト、又はウェブ対応アプリケーション等の中に表示されてもよい。人210の画像は、映像捕捉装置によって捕捉されてもよい(240)。一部の実施形態では、人210の映像が捕捉されるが、他の実施形態では、一連の静止画像が捕捉される。
【0020】
動作ユニット、ジェスチャー、精神状態、及び生理学的データの分析は、人210の捕捉画像を用いて達成することができる。動作ユニットを用いて、笑顔、渋面、及び精神状態の他の顔面指標を識別することができる。頭部ジェスチャーを含むジェスチャーは、興味又は好奇心を示し得る。例えば、映像222に向かって移動する頭部ジェスチャーは、興味の増大又は解明に対する願望を示し得る。捕捉画像に基づいて、生理機能の分析を行うことができる。捕捉された情報及び画像に基づいて、感情の分析(250)を行うことができる。分析には、顔の分析及びヘッドジェスチャーの分析が含まれ得る。分析には、生理機能の評価が含まれてもよく、心拍数、心拍数変動、呼吸、発汗、体温、及び他の身体的評価からなる群の内の1つの評価が含まれてもよい。」

「【0056】
上記方法は、1つ又は複数のコンピュータシステムにおける1つ又は複数のプロセッサで実行されてもよい。実施形態では、様々な形式の分散コンピューティング、クライアント/サーバコンピューティング、及びクラウドベースのコンピューティングが含まれてもよい。さらに、本開示のフロー図に関して、描写したステップ又はボックスは、例示及び説明目的でのみ提供したものであることが理解されるであろう。これらのステップは、変更、削除、又は並べ替えが行われてもよく、本開示の範囲から逸脱することなく、他のステップを追加してもよい。さらに、各ステップは、1つ又は複数のサブステップを包含してもよい。上記の図面及び記載は、開示したシステムの機能面を示すが、これらの機能面を具現化するためのソフトウェア及び/又はハードウェアの特定の構成は、明記されない限り、あるいは、文脈から明白でない限り、これらの記載から推測されないものとする。このようなソフトウェア及び/又はハードウェアの構成は全て、本開示の範囲に入るものとする。」

「【0059】
コンピュータは、コンピュータ可読ストレージ媒体からのコンピュータプログラム製品を含む場合があり、この媒体は、内蔵又は外付け、リムーバブル及び交換可能、又は固定のものでもよいことが理解されるであろう。さらに、コンピュータは、本明細書に記載のソフトウェア及びハードウェアを含み得る、それらとインタフェースをとり得る、又はそれらを支援し得る基本入出力システム(BIOS)、ファームウェア、オペレーティングシステム、又はデータベース等を含み得る。
【0060】
本発明の実施形態は、従来のコンピュータプログラム又はそれらを実行するプログラマブル装置に関与するアプリケーションに限定されない。例えば、本願発明の実施形態が、光コンピュータ、量子コンピュータ、又はアナログコンピュータ等を含み得ることが考えられる。コンピュータプログラムをコンピュータにロードすることにより、任意の記載した機能を行い得る特定のマシンを生成してもよい。この特定マシンは、任意の記載した機能を実行する手段を提供する。
【0061】
1つ又は複数のコンピュータ可読媒体のどのような組み合わせも利用することができる。コンピュータ可読媒体は、ストレージ用のコンピュータ可読媒体でもよい。コンピュータ可読ストレージ媒体は、電子、磁気、光、電磁、赤外線、半導体、又はどのような上記の適切な組み合わせでもよい。コンピュータ可読ストレージ媒体のさらなる例には、1つ又は複数のワイヤを有する電気接続、ポータブルコンピュータフロッピーディスク、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ(EPROM)、フラッシュ、MRAM、FeRAM、相変化メモリ、光ファイバ、携帯コンパクトディスク読み取り専用メモリ(CDROM)、光ストレージデバイス、磁気ストレージデバイス、又はどのような上記の適切な組み合わせも含まれ得る。本文書の文脈において、コンピュータ可読ストレージ媒体とは、命令実行システム、装置、又はデバイスによって、又はそれと関連して使用されるプログラムを包含又は保存可能な、どのような有形媒体でもよい。
【0062】
コンピュータプログラム命令は、コンピュータ実行可能コードを含み得ることが理解されるであろう。コンピュータプログラム命令を表現するための様々な言語には、限定を受けることなく、C、C++、Java、JavaScript(商標)、ActionScript(商標)、アセンブリ言語、Lisp、Perl、Tel、Python、Ruby、ハードウェア記述言語、データベースプログラミング言語、関数型プログラミング言語、命令型プログラミング言語等が含まれ得る。複数の実施形態では、コンピュータプログラム命令を、保存、コンパイル、又は解釈し、コンピュータ、プログラマブルデータ処理装置、プロセッサ又はプロセッサアーキテクチャの異種の組み合わせ等で実行することができる。限定されることなく、本発明の実施形態は、クライアント/サーバソフトウェア、サービス型ソフトウェア、又はピアツーピアソフトウェア等を含むウェブベースのコンピュータソフトウェアの形を取り得る。」

(2)引用発明
上記(1)の記載からみて、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「人々が映像を視聴する際の人々の精神状態を分析するための方法であって、精神状態とは、感情状態又は認識状態であり、映像表示に関するフロー100は、コンピュータ実施方法であり、
フロー100は、映像の選択から開始され、フロー100では、ウェブ対応インタフェース内への映像の埋め込みが続き、ウェブ対応インタフェースは、精神状態データの収集を起動させ、ウェブ対応インタフェースは、ウェブページ又はウェブアプリケーション等を含み、埋め込みは、感情の収集を起動させるウェブページのURLに対して、映像に関するリンクを挿入することを含み、
フロー100では、ウェブ対応インタフェースの配布が続き、ウェブ対応インタフェースの配布は、URLの送信を含み、この送信は、映像に関連するウェブページ上のボタンを押す又は選択することによって達成され、ボタンを選択することによって、精神状態データ又は精神状態データの分析も、映像と共に配布され、フロー100は、ウェブ対応インタフェースにおける映像の再生と、映像が再生されている間の精神状態データの収集とをさらに含み、
収集される精神状態データは、顔データを含み、顔データは、表情、動作ユニット、頭部ジェスチャー、笑顔、眉間のしわ、一瞥、下がった眉、及び注目等からなる群の内の1つ又は複数に関する情報を含み、フロー100では、精神状態データの分析が続き、精神状態データは、映像を視聴する複数の人から収集され、
映像に対する顔面反応を捕捉するためのシステム200は、電子ディスプレイ220及びウェブカメラ230を含み、システム200は、電子ディスプレイ220上に示された映像222に対する顔面反応を捕捉し、ウェブカメラ230は、人210の映像を捕捉することができ、
ディスプレイ220上に表示された映像222に対する人210の顔面反応の捕捉には、精神状態データの収集が含まれ、
動作ユニット、ジェスチャー、精神状態の分析は、人210の捕捉画像を用いて達成することができ、動作ユニットを用いて、笑顔、渋面、及び精神状態の他の顔面指標を識別し、頭部ジェスチャーを含むジェスチャーは、興味又は好奇心を示し、
上記方法は、1つ又は複数のコンピュータシステムにおける1つ又は複数のプロセッサで実行され、コンピュータは、コンピュータ可読ストレージ媒体からのコンピュータプログラム製品を含み、コンピュータ可読ストレージ媒体の例には、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ(EPROM)、フラッシュ、MRAM、FeRAM、相変化メモリ、又はどのような上記の適切な組み合わせも含まれ得、コンピュータプログラム命令は、コンピュータ実行可能コードを含む、
コンピュータ実施方法。」

2.引用文献2の記載事項について
(1)引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(米国特許出願公開第2011/0029666号明細書)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「[0021] An embodiment of the invention passively monitors and records various user behaviors when a user/viewer interacts with a network video player, e.g. a web video player, while watching an online video clip. In one embodiment, a data collection agent (DCA) is loaded to the player and/or to a web page that displays the video clip. The DCA passively collects detailed viewing and behavior information without requiring any specific input or actions on the part of the user. Indications of user preferences are inferred by user actions leading up to viewing the video, while viewing the video, and just after and still related to viewing the video. The DCA periodically sends this information to a central server where it is stored in a central database and where it is used to determine preference similarities among different users. Recorded user preference information may also be used to rate a video itself.」
(当審対訳)
「[0021] 本発明の一実施形態は、ユーザ/視聴者が、オンラインビデオクリップを見ながら、ネットワークビデオプレーヤ、例えば、ウェブビデオプレーヤと相互作用するとき、様々なユーザ挙動を受動的に監視し、記録する。一実施形態では、データ収集エージェント(DCA)は、プレーヤおよび/またはビデオクリップを表示するウェブページにロードされる。DCAは、ユーザ側の特定の入力または動作を必要とすることなく、詳細な視聴および挙動情報を受動的に収集する。ユーザ選好の表示は、ユーザのアクションに基づいて、ビデオを視聴することに先立ち、ビデオを視聴している間に、およびビデオを視聴した直後であって依然として関連している間に、推論される。DCAは、この情報を中央サーバに定期的に送信し、中央サーバにおいて、この情報は中央データベースに格納され、異なるユーザ間の嗜好類似性を決定するために使用される。記録されたユーザ選好情報はまた、ビデオ自体を格付けするために使用され得る。」

「[0026] In accordance with the principles of the invention, a data collector agent (DCA) is loaded to video sharing websites that are hosted on servers 110 to capture information about the interactions of the viewers with web players. The DCA may be a script code, e.g. JavaScript, hosted by the VAS 120 and loaded to web pages hosted on servers 110. The DCA may be also in a form of a plug-in installed in the video players provided by video content providers.」
(当審対訳)
「[0026] 本発明の原理によれば、データ収集エージェント(DCA)は、ウェブプレーヤへの視聴者の相互作用についての情報を補足するため、サーバ110上でホストされるビデオ共有ウェブサイトにロードされる。DCAは、VAS120によってホストされ、サーバ110上でホストされるウェブページにロードされる、例えば、JavaScriptのようなスクリプトコードであってもよい。DCAは、ビデオコンテンツプロバイダによって提供されるビデオプレーヤにインストールされるプラグインの形態であってもよい。」

「[0027] The DCA collects and sends metadata and detailed viewing information to the VAS 120. The metadata comprises at least a video identification (ID), a publisher ID, a website ID that is derived from the uniform resource locator (URL), a length of the video clip being viewed, and the current time. The detailed viewing information includes the actions performed on the player and a timestamp. The recorded actions may be, for example, playing, pausing, rewinding, forwarding, and so on. The timestamp start and end times are expressed, for example, in seconds from the beginning of the video clip. For instance, the pair means that a user viewed the clip for only for 15 seconds starting at the 20.sup.th (当審注:「20th」の誤記と認める。)second from the beginning. The pair means that the user paused 30 seconds after the beginning of the clip. The data gathered by the DCA is used by the VAS 120. In one embodiment, these requests are sent to the VAS 120 in the form of a hypertext transfer protocol (HTTP) request. An HTTP request that includes the metadata is sent to the VAS 120 once a web page, including the DCA, has completely uploaded to a client's 150 browser. The detailed viewing information, including the pairs of actions and timestamps, is periodically sent to the VAS 120. The VAS 120 extracts the data encapsulated in the received requests and saves the data in the database 140.」
(当審対訳)
「[0027] DCAは、メタデータおよび詳細な視聴情報を収集し、VAS120に送信する。メタデータは、少なくとも、ビデオ識別(ID)、発行者ID、ユニフォームリソースロケータ(URL)から導出されるウェブサイトID、視聴されているビデオクリップの長さ、および現在時刻を含む。詳細な視聴情報は、プレーヤに対して実行されたアクションおよびタイムスタンプを含む。記録されたアクションは、例えば、再生、一時停止、巻き戻し、早送りなどであってもよい。タイムスタンプの開始時刻及び終了時刻は、例えば、ビデオクリップの先頭からの秒数で表される。例えば、ペア<再生、20-35>は、ユーザが20秒目から開始して15秒間だけクリップを視聴したことを意味する。ペア<一時停止、30>は、ユーザがクリップの開始から30秒後に一時停止したことを意味する。DCAによって収集されたデータは、VAS120によって使用される。一実施形態では、これらの要求は、ハイパーテキスト転送プロトコル(HTTP)要求の形でVAS120に送信される。DCAを含むウェブページがクライアント150のブラウザに完全にアップロードされると、メタデータを含むHTTP要求がVAS120に送信される。アクションおよびタイムスタンプのペアを含む詳細な視聴情報は、VAS120に定期的に送信される。VAS120は、受信したリクエストにカプセル化されているデータを抽出し、データベース140に保存する。」

(2)引用文献2技術的事項
したがって、上記引用文献2には次の技術的事項が記載されていると認められる。

「ユーザ/視聴者が、オンラインビデオクリップを見ながら、ウェブビデオプレーヤと相互作用するとき、様々なユーザ挙動を受動的に監視し、記録する実施形態におけるデータ収集エージェント(DCA)であって、
DCAは、プレーヤおよび/またはビデオクリップを表示するウェブページにロードされ、ユーザ側の特定の入力または動作を必要とすることなく、詳細な視聴および挙動情報を受動的に収集し、DCAは、この情報を中央サーバに定期的に送信し、中央サーバにおいて、この情報は中央データベースに格納され、
DCAは、ウェブプレーヤへの視聴者の相互作用についての情報を補足するため、サーバ110上でホストされるビデオ共有ウェブサイトにロードされ、DCAは、VAS120によってホストされ、サーバ110上でホストされるウェブページにロードされる、例えば、JavaScriptのようなスクリプトコードであってもよく、
DCAは、メタデータおよび詳細な視聴情報を収集し、VAS120に送信し、メタデータは、少なくとも、ビデオ識別(ID)、発行者ID、ユニフォームリソースロケータ(URL)から導出されるウェブサイトID、視聴されているビデオクリップの長さ、および現在時刻を含み、詳細な視聴情報は、プレーヤに対して実行されたアクションおよびタイムスタンプを含み、記録されたアクションは、例えば、再生、一時停止、巻き戻し、早送りなどであってもよい、データ収集エージェント(DCA)。」

3.引用文献3の記載事項について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2006−12171号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0036】
本発明の実施例として、以下を提供することができる:
・観衆のフィードバックを取得する自動メカニズム
・感情認識のため複数のバイオメトリクスを組み合わせる感情反応集積装置
・ユーザが製品評価を決定するのを支援するメトリック
・マーケティング・データ回収の効率的なメカニズム
・現在の評価メカニズムより正確なメカニズム
図1は、本発明の実施例による感情反応認識装置100を示すブロック図である。感情反応認識装置100は、顔面/虹彩表現認識装置110経由で決定メカニズム及び反応解釈装置115へ接続してあるカメラ105を含む。認識装置100は更に、音声表現認識装置125経由で決定メカニズム及び反応解釈装置115へ接続されたマイクロホン120を含む。図示したように、カメラ105とマイクロホン120は、人135からバイオメトリック情報を捕捉する。
【0037】
カメラ105は、人135から画像情報を捕捉するものであり、デジタル式カメラが便利である。しかし、アナログ式カメラを代用することも可能である。カメラ105は、人135の頭部だけに焦点を合わせて顔の表情及び/又は目の表情(例えば虹彩情報)を捕捉するが、他の実施例において、カメラ105は、人135の体に焦点を合わせボディランゲージを捕捉する。当業者には容易に認識されるように、カメラ105がボディランゲージを捕捉している場合には、ボディランゲージ認識装置(図示略)をカメラ105と決定メカニズム及び反応解釈装置115との間に接続できる。
【0038】
マイクロホン120は人135から音声表現を捕捉するものであり、デジタル式マイクロホンが望ましい。マイクロホン120は、指向性マイクロホンとして各人の発話を個別に捕捉したり、あるいは無指向性マイクロホンとして聴衆全体の発話を捕捉できることが理解されよう。更に、マイクロホン120は、狭い周波数帯域だけを捕捉する(例えば、声によって作られる音だけを捕捉しようとする)又は広い周波数帯域を捕捉する(例えば舌打ちや口笛等を含む全ての音を捕捉しようとする)ことができる。」

4.引用文献4の記載事項について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(国際公開第2012/177866号)には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、引用文献4に記載された、○印の中に「R」が記載された文字は、以下に示すとおり「(R)」として表した。

「[0048] The content presentation device 120 of the illustrated example is a computing device that is capable of presenting streaming media content provided by the content streamer 145 via the network 150. The content presentation device 120 may be, for example, a desktop computer, a laptop computer, a mobile computing device, a television, a smart phone, a mobile phone, an Apple(R) iPad(R), an Apple(R) iPhone(R), an Apple(R) iPod(R), an AndroidTM powered computing device, a Palm(R) webOS(R) computing device, etc. In some examples, the content presentation device 120 includes one or more executable media players to present the streaming media content provided by the content streamer 145. For examples, the media player(s) available to the content presentation device 120 may be implemented in Adobe(R) Flash(R) (e.g., provided in a SWF file), may be implemented in hypertext markup language (HTML) version 5 (HTML5), may be implemented in Google(R) Chromium(R), may be implemented according to the Open Source Media Framework (OSMF), may be implemented according to a device or operating system provider's media player application programming interface (API), may be implemented on a device or operating system provider's media player framework (e.g., the Apple(R) iOS(R) MPMoviePlayer software), etc., or any combination thereof. While a single content presentation device 120 is illustrated, any number and/or type(s) of content presentation devices may be included in the system 100.」
(当審対訳)
「[0048] 図示された例のコンテンツ提示デバイス120は、ネットワーク150を介してコンテンツストリーマ145によって提供されるストリーミングメディアコンテンツを提示することが可能な、コンピューティングデバイスである。コンテンツ提示デバイス120は、例えば、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、モバイルコンピューティングデバイス、テレビジョン、スマートフォン、モバイルフォン、アップル(登録商標)iPad(登録商標)、アップル(登録商標)iPhone(登録商標)、アップル(登録商標)iPod(登録商標)、アンドロイド(商標)装備のコンピューティングデバイス、パーム(登録商標)webOS(登録商標)コンピューティングデバイスなどとすることができる。いくつかの例では、コンテンツ提示デバイス120は、コンテンツストリーマ145によって提供されるストリーミングメディアコンテンツを提示するための、1つ又は複数の実行可能なメディアプレーヤを含む。例えば、コンテンツ提示デバイス120において利用可能なメディアプレーヤ(複数可)は、(例えば、SWFファイルで提供される)アドビ(登録商標)フラッシュ(登録商標)で実施することができ、ハイパーテキストマークアップ言語(HTML)バージョン5(HTML5)で実施することができ、グーグル(登録商標)クロミウム(Chromium)(登録商標)で実施することができ、オープンソースメディアフレームワーク(OSMF:Open Source Media Framework)に従って実施することができ、デバイス若しくはオペレーティングシステムプロバイダのメディアプレーヤアプリケーションプログラミングインタフェース(API)に従って実施することができ、デバイス若しくはオペレーティングシステムプロバイダのメディアプレーヤフレームワーク(例えば、アップル(登録商標)iOS(登録商標)MPMoviePlayerソフトウェア)上などで実施することができ、又はそれらの任意の組合せとすることができる。単一のコンテンツ提示デバイス120が示されているが、システム100には、任意の数及び/又はタイプのコンテンツ提示デバイスを含むことができる。」

第4 対比・判断

1.本願発明1について

(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア(ア)引用発明の「コンピュータ実施方法」は、「人々が映像を視聴する際の人々の精神状態を分析するための方法」であることから、引用発明の「コンピュータシステム」の「電子ディスプレイ220上に示された映像222」を「視聴する」「人」は、本願発明1の「コンピュータユーザ」に相当する。

(イ)引用発明の「コンピュータシステムにおける1つ又は複数のプロセッサ」は、本願発明1の「プロセッサ」に相当する。また、引用発明の「コンピュータ実行可能コード」は、本願発明1の「プログラムコード」に相当し、引用発明の「コンピュータ実行可能コードを含む」「コンピュータ可読ストレージ媒体」は、本願発明1の「プログラムコードを格納するメモリ」に相当する。
また、引用発明の「ウェブカメラ230」は、本願発明1の「ウェブカメラ」に相当し、本願発明1では「データ記録コンポーネントは、ウェブカメラであり、」と記載されるように、「ウェブカメラ」と「データ記録コンポーネント」は同じ対象を指すことから、引用発明の「ウェブカメラ230」は、本願発明1の「データ記録コンポーネント」にも相当する。
そして、引用発明の「コンピュータシステム」は、「1つ又は複数のプロセッサ」と「コンピュータ可読ストレージ媒体」と「電子ディスプレイ220及びウェブカメラ230」を含むものであって、当該「コンピュータシステム」は、「フロー100」にしたがい、「ウェブカメラ230」により、「人210の映像を補足」し、「精神状態データ」を「収集」し、「精神状態データの分析」をすることから、引用発明の「ウェブカメラ230」は、「1つ又は複数のプロセッサ」および「コンピュータ可読ストレージ媒体」と「通信する」と言い得るものである。したがって、引用発明の「コンピュータシステム」は、本願発明1の「プロセッサおよびプログラムコードを格納するためのメモリと通信するデータ記録コンポーネントを有するコンピューティングデバイス」に相当するといえる。

(ウ)引用発明の「顔データ」は、「ディスプレイ220上に表示された映像222に対する人210の顔面反応」として「補足」されるものであるから、本願発明1の「コンピュータユーザ挙動データ」に相当する。

(エ)したがって、上記の(ア)〜(ウ)を踏まえると、引用発明の「コンピュータ実施方法」は、「人」が「コンピュータシステム」の「電子ディスプレイ220上に示された映像」を「視聴する際」に、「ウェブカメラ230」により前記「人」の「顔データ」を含む「精神状態データ」を「収集」する方法といえることから、本願発明1の「コンピュータユーザと、プロセッサおよびプログラムコードを格納するためのメモリと通信するデータ記録コンポーネントを有するコンピューティングデバイスとの対話中に、コンピュータユーザ挙動データを収集するコンピュータ実装方法」に相当するといえる。

イ 引用発明の「映像」は、「精神状態データの収集を起動させ」るための「ウェブページ又はウェブアプリケーション等を含」む「ウェブ対応インタフェース内へ」「埋め込み」されるものであるから、本願発明1の「前記ウェブページまたはメディアプレーヤに関連付けられた追跡可能要素」に相当する。

ウ 上記ア(ウ)に示すように、引用発明の「コンピュータ実施方法」は、「人」が「コンピュータシステム」の「電子ディスプレイ220上に示された映像」を「視聴する際」に、「ウェブ対応インタフェースは、精神状態データの収集を起動させ」、そして、「ウェブカメラ230」により前記「人」の「顔データ」を含む「精神状態データ」を「収集」することから、当該「精神状態データの収集を起動」する「ウェブ対応インタフェース」は、「ウェブカメラ230にアクセスする」といえる。したがって、引用発明の上記「ウェブ対応インタフェース」は、本願発明1の「ブラウザベースアプリケーションプログラムインターフェース」とは、「前記コンピュータユーザと前記コンピューティングデバイスとの間の前記対話中に、前記ウェブカメラによって記録された挙動データを収集するために、前記プロセッサで実行するプログラムコードを使用して、前記ウェブカメラにアクセスする」「ブラウザベースインターフェース」である点で共通する。
また、引用発明の「コンピュータ実施方法」において、「コンピュータシステム」における「プロセッサ」が実行する「コンピュータ実行可能コード」を含む「コンピュータプログラム命令」は、「ウェブカメラ230」により前記「人」の「顔データ」を含む「精神状態データ」を「収集」する「命令」を含むものといえるから、本願発明1の「挙動データ収集アプリケーション」を含んでいるといえる。
以上のことから、引用発明の「コンピュータ実施方法」と、本願発明1の「前記コンピュータユーザと前記コンピューティングデバイスとの間の前記対話中に、前記ウェブカメラによって記録された挙動データを収集するために、前記プロセッサで実行するプログラムコードを使用して、前記ウェブカメラにアクセスするために前記ブラウザベースアプリケーションプログラムインターフェースを前記挙動データ収集アプリケーションによって呼び出すこととを備える、コンピュータ実装方法」とは、「前記コンピュータユーザと前記コンピューティングデバイスとの間の前記対話中に、前記ウェブカメラによって記録された挙動データを収集するために、前記プロセッサで実行するプログラムコードを使用して、前記ウェブカメラにアクセスするために前記ブラウザベースインターフェースを前記挙動データ収集アプリケーションによって呼び出す」点で共通する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

<一致点>
「コンピュータユーザと、プロセッサおよびプログラムコードを格納するためのメモリと通信するデータ記録コンポーネントを有するコンピューティングデバイスとの対話中に、コンピュータユーザ挙動データを収集するコンピュータ実装方法であって、前記データ記録コンポーネントは、ウェブカメラであり、前記方法は、
前記コンピュータユーザと前記コンピューティングデバイスとの間の前記対話中に、前記ウェブカメラによって記録された挙動データを収集するために、前記プロセッサで実行するプログラムコードを使用して、前記ウェブカメラにアクセスするためにブラウザベースインターフェースを挙動データ収集アプリケーションによって呼び出すこととを備える、コンピュータ実装方法。」

<相違点>
(相違点1)
コンピュータ実装方法において、本願発明1では、「前記プロセッサで実行するプログラムコードを使用して、ウェブページまたはメディアプレーヤに利用可能なデータ収集起動スクリプトを動作させる」のに対し、引用発明1には、そのような「データ収集起動スクリプト」について特定されていない点。

(相違点2)
本願発明1では、「データ収集起動スクリプトを動作させること」は、
「前記プロセッサで実行するプログラムコードを使用して、前記ウェブページまたはメディアプレーヤに関連付けられた追跡可能要素を検出することを備え、前記追跡可能要素は、記録可能なトレースを残すように前記コンピュータユーザが対話できる前記ウェブページまたはメディアプレーヤの任意の部分を含む、
追跡可能要素を検出した際に、前記ウェブカメラの起動をトリガするために、ブラウザベースアプリケーションプログラムインターフェース(API)を呼び出すことと、
前記プロセッサで実行するプログラムコードを使用して、前記コンピューティングデバイス上の挙動データ収集アプリケーションの開始をトリガすることとを備え」ることであるのに対し、引用発明では、「データ収集起動スクリプト」について特定されていないため、本願発明1の「追跡可能要素」(引用発明の「映像」に相当する。)を検出することを備えるような「データ収集スクリプトを動作させること」としての一連の構成が特定されていない点。

(相違点3)
挙動データ収集アプリケーションによって呼び出される「インターフェース」は、本願発明1では、「アプリケーションプログラムインターフェース」であるのに対し、引用発明にはそのような特定はされていない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点2について先に検討すると、相違点2に係る本願発明1の「データ収集起動スクリプトを動作させること」は、
「前記プロセッサで実行するプログラムコードを使用して、前記ウェブページまたはメディアプレーヤに関連付けられた追跡可能要素を検出することを備え、前記追跡可能要素は、記録可能なトレースを残すように前記コンピュータユーザが対話できる前記ウェブページまたはメディアプレーヤの任意の部分を含む、
追跡可能要素を検出した際に、前記ウェブカメラの起動をトリガするために、ブラウザベースアプリケーションプログラムインターフェース(API)を呼び出すことと、
前記プロセッサで実行するプログラムコードを使用して、前記コンピューティングデバイス上の挙動データ収集アプリケーションの開始をトリガすることとを備え」ることであるという構成は、上記引用文献2〜4のいずれにも記載も示唆もされておらず、また、本願優先日前に周知技術であるともいえない。
特に引用文献2には、「ウェブページにロードされる、例えば、JavaScriptのようなスクリプトコード」である「データ収集エージェント(DCA)」が、「ウェブプレーヤへの視聴者の相互作用についての情報を補足するため、」「メタデータおよび詳細な視聴情報を収集し、」「詳細な視聴情報は、プレーヤに対して実行されたアクションおよびタイムスタンプを含み、記録されたアクションは、例えば、再生、一時停止、巻き戻し、早送りなど」であることが特定されているものの、引用文献2には、本願発明1のような「挙動データを収集」するための「ウェブカメラ」を備えておらず、そのため、引用文献2の「データ収集エージェント(DCA)」は、本願発明1のように「追跡可能要素を検出した際に、前記ウェブカメラの起動をトリガするために、ブラウザベースアプリケーションプログラムインターフェース(API)を呼び出す」ことについて、記載も示唆もされていない。

したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び引用文献2〜4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2〜19について

本願発明2〜19は、本願発明1の上記相違点2に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても引用発明及び引用文献2〜4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断

原査定は、請求項1〜19について、上記引用文献1〜4に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら、令和3年7月21日に提出された手続補正により補正された請求項1〜19は、上記相違点2に対応する構成を有するものとなっており、上記のとおり、本願発明1〜19は、上記引用文献1に記載された発明及び上記引用文献2〜4に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について

1.特許法第36条第6項第1号及び第2号について

(1)当審では、請求項1には、「追跡可能要素を検出」とあるが、当該「追跡可能要素」とは何であるのか、請求項1の記載に基づいて把握することができず、また、本願明細書を参照しても、1つの技術的思想としてサポートされているとは言えず、明確に捉えることができないとの拒絶の理由を通知しているが、令和3年7月21日に提出された手続補正書において、「前記追跡可能要素は、記録可能なトレースを残すように前記コンピュータユーザが対話できる前記ウェブページまたはメディアプレーヤの任意の部分を含む、」との記載が請求項1に追加される補正がなされた結果、この拒絶の理由は解消した。
また、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2〜19についても、同様の理由により、この拒絶の理由は解消した。

(2)当審では、請求項1の「ブラウザベースアプリケーションプログラムインターフェース」は、本願明細書において、どの構成に対応するものとしてサポートされているのか、把握できず、特に、段落【0059】及び【0060】に記載される「許可取得ルーチン154」によりユーザに提示される「ダイアログボックス」を指すものであるのか否か、或いは、段落【0011】、【0072】に記載される「ウェブRTC」などの「API」を指すものであるのか否か、が明確ではないとの拒絶の理由を通知しているが、令和3年7月21日に提出された手続補正書において、「ブラウザベースアプリケーションプログラムインターフェース(API)」との補正がされた結果、この拒絶の理由は解消した。
また、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2〜19についても、同様の理由により、この拒絶の理由は解消した。

(3)当審では、請求項5には、「前記データ収集起動スクリプトを動作させることは、前記追跡可能要素に関連付けられたアプリケーションプログラムインターフェースを購読することと、」と記載されているが、
上記下線部の「アプリケーションプログラムインターフェースを購読する」とは、どのような意味か、日本語として明確に捉えられないとの拒絶の理由を通知しているが、令和3年7月21日に提出された手続補正書において、「前記データ収集起動スクリプトを動作させることは、前記追跡可能要素に関連付けられたアプリケーションプログラムインターフェース内で発生するイベントをサブスクライブすることと、」との補正がされた結果、この拒絶の理由は解消した。
また、請求項5を直接又は間接的に引用する請求項6〜19についても、同様の理由により、この拒絶の理由は解消した。

第7 むすび

以上のとおり、本願発明1〜19は、当業者が引用発明及び引用文献2〜4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-12-14 
出願番号 P2017-519980
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
P 1 8・ 537- WY (G06F)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 稲葉 和生
特許庁審判官 角田 慎治
▲高▼瀬 健太郎
発明の名称 ウェブベースのコンテンツとの対話中におけるコンピュータユーザデータの収集および処理方法  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  

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