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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1380385
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-07-22 
確定日 2021-11-17 
事件の表示 特願2017−168498「半導体素子およびこれを含む半導体素子パッケージ」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 3月 8日出願公開、特開2018− 37660〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年9月1日(パリ条約による優先権主張2016年9月1日、韓国、2016年12月2日、韓国)の出願であって、平成31年3月11日に手続補正書が提出され、平成31年3月27日付けで拒絶理由が通知され、これに対して、令和元年7月1日に意見書及び手続補正書が提出され、令和元年8月26日付けで最後の拒絶理由が通知され、これに対して、令和2年1月31日に意見書及び手続補正書が提出され、その後、令和2年3月18日付けで補正の却下の決定及び拒絶査定がなされた。これに対して、令和2年7月22日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 令和2年7月22日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年7月22日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「【請求項1】
アルミニウムを有するn型半導体層と、
アルミニウムを有するp型半導体層と、
アルミニウムを有し、且つ、前記n型半導体層と前記p型半導体層の間に設けられている活性層とを含む発光構造物を含む半導体素子であって、
前記n型半導体層、前記活性層及び前記p型半導体層からアルミニウムの2次イオンをはじき出すために1次イオンが前記発光構造物に照射されるとき、前記アルミニウムの2次イオンは、前記n型半導体層、前記活性層及び前記p型半導体層のそれぞれの強度で生成され、
前記アルミニウムの2次イオンの強度は、
前記発光構造物における最低強度と、
前記最低強度から第1方向に離れた前記発光構造物における最も高いピーク強度である最高ピーク強度と、
前記最高ピーク強度から前記第1方向に離れた領域における最も高いピーク強度である第1ピーク強度と、
前記最高ピーク強度から前記第1方向に離れた領域における最も低い強度である第2強度とを含み、
前記第2強度は、前記最高ピーク強度と前記第1ピーク強度の間に配置される複数の強度の中で最も低い強度よりも低く、
前記第1方向は、前記p型半導体層から前記n型半導体層に向かう前記発光構造物の厚さ方向であり、
前記発光構造物は、アルミニウムの前記最低強度を有する第1部分と、アルミニウムの前記最高ピーク強度を有する第2部分と、アルミニウムの前記第1ピーク強度を有する第3部分と、アルミニウムの前記第2強度を有する第4部分とを含み、
前記p型半導体層は、前記第1部分と前記第2部分の間に配置される第1領域を含み、
前記活性層は、前記第2部分と前記第3部分の間に配置される第2領域を含み、
前記n型半導体層は、前記第3部分と前記第4部分の間に配置される第3領域を含み、
前記最高ピーク強度と前記第2強度の間の第1強度差(D1)と、前記最低強度と前記第2強度の間の第2強度差(D2)との比は、1:0.2〜1:2であり、
前記p型半導体層は、アルミニウムの組成が相対的に低い第1半導体層とアルミニウムの組成が高い第2半導体層を含み、
前記第2半導体層の厚さは10nmより大きく、かつ、200nmより小さい、
半導体素子。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和元年7月1日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
アルミニウムを有するn型半導体層と、
アルミニウムを有するp型半導体層と、
アルミニウムを有し、且つ、前記n型半導体層と前記p型半導体層の間に設けられている活性層とを含む発光構造物を含む半導体素子であって、
前記n型半導体層、前記活性層及び前記p型半導体層からアルミニウムの2次イオンをはじき出すために1次イオンが前記発光構造物に照射されるとき、前記アルミニウムの2次イオンは、前記n型半導体層、前記活性層及び前記p型半導体層のそれぞれの強度で生成され、
前記アルミニウムの2次イオンの強度は、
前記発光構造物における最低強度と、
前記最低強度から第1方向に離れた前記発光構造物における最も高いピーク強度である最高ピーク強度と、
前記最高ピーク強度から前記第1方向に離れた領域における最も高いピーク強度である第1ピーク強度と、
前記最高ピーク強度から前記第1方向に離れた領域における最も低い強度である第2強度とを含み、
前記第1方向は、前記p型半導体層から前記n型半導体層に向かう前記発光構造物の厚さ方向であり、
前記発光構造物は、アルミニウムの前記最低強度を有する第1部分と、アルミニウムの前記最高ピーク強度を有する第2部分と、アルミニウムの前記第1ピーク強度を有する第3部分と、アルミニウムの前記第2強度を有する第4部分とを含み、
前記p型半導体層は、前記第1部分と前記第2部分の間に配置される第1領域を含み、
前記活性層は、前記第2部分と前記第3部分の間に配置される第2領域を含み、
前記n型半導体層は、前記第3部分と前記第4部分の間に配置される第3領域を含み、
前記最高ピーク強度と前記第2強度の間の第1強度差(D1)と、前記最低強度と前記第2強度の間の第2強度差(D2)との比は、1:0.2〜1:2である、半導体素子。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「第2強度」及び「p型半導体層」について、上記のとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、国際公開第2014/123092号(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(下線は、当審で付した。)

a 「[0001] 本発明は、窒化物半導体を用いた発光波長が200〜300nm領域である新規な深紫外発光素子に関する。」

b 「[0008] ・・・発光波長300nm以下の窒化物半導体発光素子においては、単に電子ブロック層を設けるだけでは、十分に発光効率が改善されないことが判明した。本発明者はこの理由を、以下のように推定している。すなわち、発光波長が300nm以下の深紫外発光素子におけるp型層のバンドギャップは、近紫外および可視光の発光素子におけるp型層のバンドギャップより大きいことが求められる。その結果、深紫外発光素子のp型層における正孔の活性化率はより低下し、かつ有効質量も大きくなることから、電子のオーバーフローがより生じ易くなるものと考えられる。
[0009] したがって、本発明は、発光波長が200〜300nmの窒化物半導体発光素子において、上記のような問題点を解決し、発光効率の高い窒化物半導体深紫外発光素子を提供することを課題とする。」

c 「[0022] <1.窒化物半導体発光素子>
先ずは、窒化物半導体発光素子の基本的な概要について説明する。
[0023] 本発明において、200〜300nmの発光波長を有する窒化物半導体発光素子(以下、単に「深紫外発光素子」と略記する場合もある)は、例えば、有機金属化学気相成長法(MOCVD法)によって製造することができる。・・・
[0024] 本発明において、窒化物半導体発光素子は、200〜300nmの発光波長を有するものであれば、特に制限されるものではい。具体的には、ホウ素、アルミニウム、インジウム、及びガリウムから選ばれる一種以上と、窒素とを含み、一般式:BXAlYInZGa1−x−y−zN(0≦x≦1、0<y≦1、0≦z<1、0<x+y+z≦1)で示される構成のものの中から、各層の組成を決定し、200〜300nmの発光波長を有する窒化物半導体発光素子とすればよい。より具体的な例を示せば、例えば、AlaGa1−aNで示される組成で活性層を構成する場合には、0.2≦a≦1の組成が必要になる。
[0025] また一般的に、B、Alの割合が増加するとバンドギャップが大きくなる傾向にあり、In、Gaの割合が増加するとバンドギャップが小さくなる傾向にある。そのため、これら構成元素の割合により、各層のバンドギャップを調整することができる。構成元素の割合は、製造した窒化物半導体発光素子をSIMS(Secondary Ion-microprobe Mass Spectrometer:二次イオン質量分析計)、TEM−EDX(Transmission Electron Microscope-Energy Dispersive X-ray spectrometry:透過型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分光法)、3次元アトムプローブ法(3DAP)等により測定して求めることができる。そして、バンドギャップは、各層の構成元素の割合から換算することができる。また、窒化物半導体発光素子をカソードルミネセンス法(CL法)、フォトルミネセンス法(PL法)により分析することにより、直接、各層のバンドギャップを求めることもできる。構成元素がAl、Ga、及びNである場合には、バンドギャップの値から換算式を用いてAl組成を特定できる。
・・・
[0027] 以下、本発明の第一の態様に係る窒化物半導体発光素子について図を用いて詳細に説明する。図1は、一の実施形態に係る本発明の窒化物半導体発光素子の模式断面図である。また図2は、図1の窒化物半導体発光素子のエネルギーバンド図の一例を説明する図である。図2においては、紙面上下方向がバンドギャップの大きさを表しており、紙面上方向に行くほど電子のエネルギーが高く(正孔のエネルギーは低く)なるようにエネルギーバンド図が描かれている。本出願の他のエネルギーバンド図においても同様である。図2は、例えば、n型層20のバンドギャップよりも、電子ブロック層40、及びp型第一層51のバンドギャップが大きくなっていることを示している。
[0028] 図1に示すように、窒化物半導体発光素子1は、基板10と、基板10の上に設けられたn型層20と、n型層20の上に設けられた活性層30と、活性層30の上に設けられた電子ブロック層40と、電子ブロック層40の上に設けられたp型層50とを備える。図1の窒化物半導体発光素子100においては、n型層が単一層である。この場合、n型層20がn型層内で最小のバンドギャップを有するn型第一層に該当する。また、図1の窒化物半導体発光素子100においては、p型層50がバンドギャップの異なる複数の層からなる。p型層50は、n型第一層20のバンドギャップよりも大きいバンドギャップを有するp型第一層(p型クラッド層)51と、p型第一層51とは異なるバンドギャップを有するp型第二層(p型コンタクト層)52とから形成されている。
[0029] 窒化物半導体発光素子1は、p型第二層52からn型層20の一部までがエッチング除去されることにより露出したn型層20の表面に設けられたn型用電極60と、p型第二層52上に設けられたp型用電極70とを更に備える。n型用電極60及びp型用電極70は、公知の方法で形成することができる。以下、各層について詳細に説明する。」

d 「[0031] (n型層20)
n型層20は、n型のドーパントがドープされている層である。図1の深紫外発光素子1においては、n型層20が単一層であり、したがってn型層20とn型層内で最小のバンドギャップを有するn型第一層とは同一の層である。
・・・
[0033] n型層20の好ましい組成としては、例えば組成式AldGa1−dNで表される場合、Al組成(d)が0.34〜1.00である組成を挙げることができる。n型層20の組成が組成式AldGa1−dNで表される場合、そのAl組成(d)はより好ましくは0.34〜0.90であり、さらに好ましくは0.34〜0.80であり、最も好ましくは0.45〜0.70である。またn型層20は単結晶によって形成されることが好ましい。
・・・
[0035] なお、図1の窒化物半導体発光素子100が有するn型層20は単一層であるが、バンドギャップの異なる複数の層からなるn型層を有する形態(後述)においても、n型層を構成する複数の層のいずれもが、上記した好ましい組成又は典型的な組成の範囲内であることが好ましい。
[0036] (活性層30)
活性層30は、一以上の井戸層と一以上の障壁層とを備える量子井戸構造(以下において単に「量子井戸構造」ということがある。)を有している。図2のエネルギーバンド図において、活性層30は井戸層30a、31a、32a、及び33a、並びに障壁層30b、31b、32b、33b、及び34bを備える量子井戸構造を有している。
・・・
[0039] (障壁層30b、31b、32b、33b、34b)
障壁層は組成式AlaGa1−aN(0.34≦a≦1.00)で表される組成を有する単結晶から形成されればよく、組成式AlaGa1−aN(0.34≦a≦0.89)で表される組成を有する単結晶から形成されることが好ましい。
・・・
[0041] (井戸層30a、31a、32a、33a)
井戸層は組成式AleGa1−eN(0.33≦e≦0.87)で表される組成を有する単結晶から形成されることが好ましい。井戸層は、障壁層よりも小さいバンドギャップを有するように形成される。そのため、井戸層及び障壁層の両方がAlGaNの単結晶から形成される場合には、井戸層は、障壁層のAl組成よりも低いAl組成を有するAlGaNの単結晶から形成される。
・・・
[0046] (活性層30の構造)
図2に示すように活性層30は、複数の障壁層を有し、且つ、該複数の障壁層が、n型層20に接する一の障壁層30bと、電子ブロック層40と接する他の障壁層34bとを含む構造を有している。活性層30がこのような構造を有することにより、n型層20およびp型層51、52からドーパントが井戸層30a、31a、32a、及び33aへ拡散することを防ぐことが可能になる。
・・・
[0048] (電子ブロック層40)
電子ブロック層40は、電界をかけたことによりn型層から活性層へと注入された電子の一部がp型層側に漏れることを抑制するための層である。そのため、電子ブロック層40は、活性層30および後述するp型層50を形成するいずれの層のバンドギャップよりも大きいバンドギャップを有する必要があり、また、活性層30と後述するp型第一層(p型クラッド層)51との間に形成される必要がある。
・・・
[0052] 電子ブロック層40は、AlGaN単結晶によって形成されることが好ましい。活性層30、p型層50、及び電子ブロック層40がAlGaN単結晶から形成される場合、電子ブロック層40は、活性層30及びp型層50を構成するいずれの層よりもAl組成比が高いAlGaN単結晶から形成されることが好ましい。またn型層20がAlGaN単結晶から形成される場合、電子ブロック層40は、n型層20のAl組成よりも低いAl組成を有するAlGaN単結晶から形成されてもよいが、n型層20のAl組成より高いAl組成を有するAlGaN単結晶から形成されることが好ましい。つまり、電子ブロック層40は、他の何れの層よりもAl組成が高いAlGaN単結晶から形成されることが好ましい。
・・・
[0057] (p型層50)
窒化物半導体発光素子100は、電子ブロック層40を有すると共に、p型層50内に、上記n型層20内で最小のバンドギャップを有するn型第一層(20)のバンドギャップよりも大きいバンドギャップを有するp型第一層(p型クラッド層)51を有する。
[0058] 図1の窒化物半導体発光素子100においては、p型層50が、p型第一層(p型クラッド層)51、及び、p型用電極70と接触するp型第二層(p型コンタクト層)52から構成されている。p型層50は、p型のドーパントをドープされており、p型の導電特性を示す。・・・
[0059] (p型第一層(p型クラッド層)51)
窒化物半導体発光素子100においては、n型層内で最小のバンドギャップを有するn型第一層(図1及び図2においてはn型層20)のバンドギャップよりも大きいバンドギャップを有するp型第一層(p型クラッド層)51が設けられており、p型第一層(p型クラッド層)と活性層30との間に電子ブロック層40が設けられている。電子ブロック層40は活性層30からp型層50へ流入しようとする電子に対してポテンシャル障壁として作用するところ、このp型第一層(p型クラッド層)51が存在することにより、活性層30から電子ブロック層40のp型層50側への電子の波動関数のしみ出しを低減できるので、活性層30からp型層50への電子の流出を一層効果的に低減できる。
・・・
[0064] (p型第二層(p型コンタクト層)52)
本発明においては、p型層50は単一層(この場合、p型層50がp型第一層(p型クラッド層)となる)であってもよいが、p型第二層(p型コンタクト層)52を形成することにより、p型用電極70とのオーミック接触を実現し易くするとともに、p型用電極70との接触抵抗を低減することが容易になる。
[0065] p型第二層(p型コンタクト層)52は、p型第一層(p型クラッド層)51のバンドギャップよりも小さいバンドギャップを有する。具体的には、p型第二層(p型コンタクト層)52のバンドギャップは、p型第一層(p型クラッド層)51のバンドギャップよりも小さい値であって、その絶対値が、0.70eV以上6.00eV以下であることが好ましく、3.00eV以上4.50eV以下であることがより好ましい。典型的な例としては、p型第二層(p型コンタクト層)52がGaN(バンドギャップ:3.4eV)から形成される形態を挙げることができる。
[0066] p型第二層(p型コンタクト層)52はAlGaN単結晶から形成されることが好ましい。p型第一層(p型クラッド層)51及びp型第二層(p型コンタクト層)52の両方がそれぞれAlGaN単結晶から形成される場合、p型第二層(p型コンタクト層)52のAl組成は、p型第一層(p型クラッド層)51のAl組成よりも小さいことが好ましい。p型第二層(p型コンタクト層)52が組成式AlfGa1−fNで表される単結晶から構成される場合、そのAl組成(f)は、0.00〜1.00であればよく、0.00〜0.70であることが好ましく、0.00〜0.40であることがより好ましい。上記の典型的な例のようにp型第二層(p型コンタクト層)52がGaNから形成される場合にはf=0.00である。なおp型第二層(p型コンタクト層)52は、本発明の効果を阻害しない範囲で、Inを含んでいてもよい。
[0067] また、p型第二層(p型コンタクト層)52の厚みは、1nm以上250nm以下であることが好ましい。」

e 「[0077] (他の実施形態(3−1):n型下地層及びn型クラッド層を有する形態)
図8は、他の実施形態に係る本発明の窒化物半導体発光素子300の模式断面図である。図9(A)及び(B)は、図8の窒化物半導体発光素子300におけるエネルギーバンド図の例を説明する図である。図8及び図9において、図1〜7に既に現れた要素と同一の要素については図1〜7における符号と同一の符号を付し、説明を省略する。図8に示すように、窒化物半導体発光素子300は、単一層のn型層20の代わりに、n型下地層20A及びn型クラッド層20Bの2層から構成されるn型層20’を有しており、この点において図1及び図6の窒化物半導体発光素子100及び200と異なっている。図8に示すように、n型クラッド層20Bは、n型下地層20Aと活性層30との間に設けられている。
[0078] n型下地層20Aは、基板10と成長層(図8においてn型クラッド層20B及びn型クラッド層20Bより紙面上側の層)との間の格子不整合や界面のラフニングなどを緩和するための層である。下地層はアンドープの層であってもよいが、このn型下地層20Aのようにn型の導電性を有する層であることが好ましい。下地層をn型にすることの利点としては、横方向からの電流注入が必要となるフリップチップ型の発光素子において、駆動電圧を下げることが可能になる点が挙げられる。
[0079] n型クラッド層20Bは、n型層が単一層である形態におけるn型層(例えば上記窒化物半導体発光素子100、200におけるn型層20)と同じ役割を果たす層であり、n型下地層20Aと共に、活性層30へ電子を供給するための層である。
・・・
[0081] 特に制限されるものではないが、例えば、基板10がサファイア基板またはAlN基板上である場合においては、図9(A)に示すように、n型下地層20Aのバンドギャップが、n型クラッド層20Bのバンドギャップよりも大きいことが好ましい。・・・また例えば、基板10がGaN基板である場合においては、図9(B)に示すように、n型下地層20Aのバンドギャップが、n型クラッド層20Bのバンドギャップよりも小さいことが好ましい。・・・
[0082] また、特に制限されるものではないが、n型下地層20Aのバンドギャップがn型クラッド層20Bのバンドギャップよりも大きい場合(図9(A)参照)においては、n型下地層20Aとn型クラッド層20Bとのバンドギャップの差は0.025eV以上2.00eV以下であることが好ましい。一方、n型下地層20Aのバンドギャップがn型クラッド層20Bのバンドギャップよりも小さい場合(図9(B)参照)においては、n型下地層20Aとn型クラッド層20Bとのバンドギャップの差は0.025eV以上2.00eV以下であることが好ましい。なお、n型下地層20Aのバンドギャップの絶対値は、3.4eV以上6.30eV以下であることが好ましく、n型クラッド層20Bのバンドギャップの絶対値は、4.15eV以上6.27eV以下であることが好ましい。これらn型下地層20A及びn型クラッド層20Bのバンドギャップの絶対値の好ましい範囲は、他のn型層がさらに形成される場合においても同様である。」

f 「[0085] (他の実施形態(3−2):n型クラッド層及びn型ホールブロック層を有する形態)
図10は、他の実施形態に係る本発明の窒化物半導体発光素子400の模式断面図である。図11は、図10の窒化物半導体発光素子400におけるエネルギーバンド図の一例を説明する図である。図10及び図11において、図1〜9に既に現れた要素と同一の要素については図1〜9における符号と同一の符号を付し、説明を省略する。図10に示すように、窒化物半導体発光素子400は、単一層のn型層20の代わりに、n型クラッド層20B及びn型ホールブロック層20Cの2層から構成されるn型層20''を有しており、この点において図1及び図6の窒化物半導体発光素子100及び200と異なっている。図10に示すように、n型ホールブロック層20Cは、n型クラッド層20Bと活性層30との間に設けられている。
[0086] n型ホールブロック層20Cは、電界をかけたことにより、p型層から活性層へと注入されたホールの一部がn型層側に漏れることを抑制するための層である。また、n型クラッド層20Bは、n型層が単一層である形態におけるn型層(例えば上記窒化物半導体発光素子100、200におけるn型層20)と同じ役割を果たす層であり、電子を活性層30に供給するための層である。・・・
[0087] 特に制限されるものではないが、図11に示すように、n型クラッド層20Bのバンドギャップよりも、n型ホールブロック層20Cのバンドギャップが大きいことが好ましい。そして、n型層20''において最小のバンドギャップを有する層、すなわち、n型第一層は、n型クラッド層20Bであることが好ましい。」

g 「[0098] (その他のn型層の組み合わせ)
複数の層から構成されたn型層を有する形態の本発明の窒化物半導体発光素子に関する上記説明では、2層の組み合わせから構成されるn型層を有する形態の窒化物半導体発光素子300、400、及び500を例示したが、本発明はこれらの形態に限定されない。複数の層の他の組み合わせから構成されるn型層を有する形態の窒化物半導体発光素子とすることも可能である。例えば、n型層を構成する複数の層は、n型下地層、n型クラッド層、n型ホールブロック層、およびn型電流拡散層から選ばれる2層以上の層であり得る。各層の厚みは上記説明の通りである。ただし、上記例示した、n型層を構成する複数の層が、基板の上に積層される順序としては、
基板/(n型下地層)/n型クラッド層/(n型ホールブロック層,n型電流拡散層)
の積層順序が好ましい(括弧内の層はその層が必須の層ではないことを表す。またn型ホールブロック層とn型電流拡散層との積層順序は特に限定されない。)。n型層を構成する複数の層がこのような組み合わせである場合、n型下地層、n型クラッド層、n型ホールブロック層、およびn型電流拡散層の中で最も小さいバンドギャップを有する層が、n型第一層に該当する。」

h 「[0114] <実施例2〜5>
(実施例2)
図1に示した積層構造の窒化物半導体発光素子を複数有するウェーハを製造し、そのウェーハから窒化物半導体発光素子を切り出した。ただし活性層中の量子井戸の数は3つとした。
[0115] 先ず、MOCVD法により、一辺7mm角、厚さ500μmのC面AlN基板(10)上に、n型層(20)として、SiをドープしたAl0.75Ga0.25N層(バンドギャップ5.23eV、Si濃度1×1019cm−3)を層厚み1.0μmで形成した。
[0116] n型層(20)上に、障壁層と井戸層とが交互に積層されるように、Siをドープした障壁層(組成Al0.75Ga0.25N、バンドギャップ5.23eV、Si濃度1×1018cm−3、層厚み7nm)を4層、及び井戸層(組成Al0.5Ga0.5N、バンドギャップ4.55eV、アンドープ、層厚み2nm)を3層形成することにより、3つの量子井戸を備える量子井戸構造を有する活性層(30)を形成した。一の障壁層はn型層(20)に接して形成され、他の一の障壁層は最外層として形成された。
[0117] 活性層(30)上(すなわち活性層の最外層である障壁層上)に、電子ブロック層(40)として、MgをドープしたAlN層(バンドギャップ6.00eV、Mg濃度5×1019cm−3、層厚み15nm)を形成した。
[0118] 電子ブロック層(40)上に、p型第一層(p型クラッド層)(51)として、MgをドープしたAl0.80Ga0.20N層(バンドギャップ5.38eV、Mg濃度5×1019cm−3、層厚み50nm)を形成した。そしてp型第一層(p型クラッド層)(51)上に、p型第二層(p型コンタクト層)(52)として、MgをドープしたGaN層(バンドギャップ3.40eV、Mg濃度2×1019cm−3、層厚み100nm)を形成した。
[0119] 次いで、窒素雰囲気中、20分間、900℃の条件で熱処理を行った。その後、p型第二層(p型コンタクト層)(52)の表面にフォトリソグラフィーにより所定のレジストパターンを形成し、レジストパターンの形成されていない窓部を反応性イオンエッチングによりn型層(20)の表面が露出するまでエッチングした。その後、n型層(20)の表面に真空蒸着法によりTi(20nm)/Al(200nm)/Au(5nm)電極(負電極)を形成し、窒素雰囲気中、1分間、810℃の条件で熱処理を行った。次いで、p型第二層(p型コンタクト層)(52)の表面に、真空蒸着法によりNi(20nm)/Au(50nm)電極(正電極)を形成した後、酸素雰囲気中、3分間、550℃の条件で熱処理を行い、上記の積層構造を有する窒化物半導体ウェーハを製造した。得られた窒化物半導体ウェーハを700μm角に切り出すことにより、窒化物半導体発光素子を作製した。」

i 図1は以下のとおりである。


j 図2は以下のとおりである。


k 図8は以下のとおりである。

l 図9(B)は以下のとおりである。

m 図10は以下のとおりである。

n 図11は以下のとおりである。

(イ)上記記載及び図面から、引用文献1には、実施例2に関する次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。(なお、引用発明の各構成の根拠箇所を参考として当審で付した。)

引用発明
「窒化物半導体発光素子は、
C面AlN基板(10)上に、n型層(20)として、SiをドープしたAl0.75Ga0.25N層を形成し([0115])、
n型層(20)上に、障壁層と井戸層とが交互に積層されるように、Siをドープした障壁層(組成Al0.75Ga0.25N)を4層、及び井戸層(組成Al0.5Ga0.5N)を3層形成することにより、3つの量子井戸を備える量子井戸構造を有する活性層(30)を形成し([0116])、
活性層(30)上に、電子ブロック層(40)として、MgをドープしたAlN層を形成し([0117])、
電子ブロック層(40)上に、p型第一層(p型クラッド層)(51)として、MgをドープしたAl0.80Ga0.20N層(層厚み50nm)を形成し、p型第一層(p型クラッド層)(51)上に、p型第二層(p型コンタクト層)(52)として、MgをドープしたGaN層を形成したものである([0118])、
窒化物半導体発光素子。」

(ウ)また、上記記載及び図面から、引用文献1には、他の実施形態(3−1)([0077]〜[0079]、[0081])に関する次の技術事項(以下「技術事項1」という。)が記載されていると認められる。

技術事項1
「単一層のn型層20の代わりに、n型下地層20A及びn型クラッド層20Bの2層から構成されるn型層20’とすることができ、
n型下地層20Aは、基板10と成長層との間の格子不整合や界面のラフニングなどを緩和するための層であり、
n型クラッド層20Bは、n型下地層20Aと活性層30との間に設けられ、n型層が単一層である形態におけるn型層20と同じ役割を果たす層であり、
例えば、基板10がサファイア基板またはAlN基板である場合においては、n型下地層20Aのバンドギャップが、n型クラッド層20Bのバンドギャップよりも大きいことが好ましく、
例えば、基板10がGaN基板である場合においては、n型下地層20Aのバンドギャップが、n型クラッド層20Bのバンドギャップよりも小さいことが好ましいこと。」

(エ)上記記載及び図面から、引用文献1には、他の実施形態(3−2)([0085]〜[0087])に関する次の技術事項(以下「技術事項2」という。)が記載されていると認められる。

技術事項2
「n型クラッド層20Bと活性層30との間に、n型ホールブロック層20Cを設けることができ、
前記n型ホールブロック層20Cは、電界をかけたことにより、p型層から活性層へと注入されたホールの一部がn型層側に漏れることを抑制するための層であり、
n型クラッド層20Bのバンドギャップよりも、n型ホールブロック層20Cのバンドギャップが大きいことが好ましいこと。」

イ 引用文献2
(ア)同じく原査定に引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2013−105917号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。

(イ)「【0007】
半導体発光素子では、例えばp型半導体層に直接p側電極を形成すると、両者の接触抵抗が高く、良好なオーミック接触を得ることができない。そのため、p型半導体層とp側電極との間に、p側電極との接触抵抗が小さく、かつ、低抵抗であるp型コンタクト層を設けるのが通常である。紫外光領域や青色領域の波長の光を発するLEDの例としてIII族窒化物半導体であるAlGaN系薄膜を半導体積層体とした場合、AlGaN薄膜はAl組成比が高くなるほどp型伝導は高抵抗となる。このように現状では、実用的な高Al組成のp型コンタクト層が得られ難いため、順方向電圧を低くするためには、p型コンタクト層としてAl組成比の小さいAlGaN層またはAlを含まないGaN層を使用せざるを得ない。
【0008】
しかし、本発明者らが高Al組成でバンドギャップが広い発光層を有する発光素子を開発するにあたり、発光層のAlGaN層よりもp型コンタクト層が低Al組成であるほど、p型コンタクト層のバンドギャップが小さくなることから、発光層が発光した光をp型コンタクト層が吸収しやすくなることが判明した。そのため、p型半導体層の全面にGaNのようなp型コンタクト層を設けた場合、p型半導体層とp側電極とのオーミック接触を良好にして低い順方向電圧を得ることはできるものの、p型コンタクト層が光を吸収する結果、高い発光出力を得ることができないことがわかった。このため、発光層の低い順方向電圧と高い発光出力とを両立させて発光効率を向上させることが非常に困難であるという問題があった。」

ウ 引用文献3
(ア)同じく原査定に引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2012−216603号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。

(イ)「【実施例2】
【0140】
実施例2では、異種基板としてサファイア基板を用い、このサファイア基板にスクライブ法によって溝状の凹部を形成した。その際、サファイア基板の加工前に、保護膜として、AlN膜をマグネトロンスパッタ法により70nm程度の厚みで成膜した。その後、加重圧力0.4N程度でスクライブを行うことで、上記第1実施形態と同様の断面形状を有する凹部を形成した。凹部は、実施例1と同様、ストライプ状に複数形成した。このときの凹部の間隔(溝間隔)は約20μmである。凹部の深さは0.50μm程度であり、凹部の幅は2.360μmであった。また、傾斜面の角度θ1は約70度、角度θ2も約70度であった。凹部(溝)の形成後、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液により保護膜としてのAlN膜を除去した。
【0141】
次に、凹部(溝)を形成したサファイア基板に、再度、AlN膜をマグネトロンスパッタ法により40nm程度成膜した。そして、凹部とAlNスパッタ膜とを有するサファイア基板上に、MOCVD法により、AlNバッファ層(バッファ層)を成長させた。
【0142】
続いて、AlNバッファ層(バッファ層)上に、MOCVD法により、約2.0μmの厚みを有するn型Al0.65Ga0.35N層(n型AlInGaN層)、活性層、約15nmの厚みを有するp型Al0.80Ga0.20Nからなるキャリアブロック層、約10nmの厚みを有するp型Al0.65Ga0.35N層(p型AlGaN層)、約50nmの厚みを有するp型Al0.10Ga0.90Nからなるp型コンタクト層を順次成長させた。
【0143】
また、活性層は、障壁層と量子井戸層とを交互に積層することによって量子井戸構造に構成した。量子井戸層の層数は5層とした。なお、実施例2では、量子井戸層をAl0.45Ga0.55Nとし、障壁層をAl0.65Ga0.35Nとした。」

エ 引用文献4
(ア)同じく原査定に引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2012−49337号公報(以下「引用文献4」という。)には、次の記載がある。

(イ)「【0146】
図16は、実施例2による窒化物半導体発光素子を示した断面図である。図17は、実施例2による窒化物半導体発光素子の活性層の構成を示した断面図である。図16および図17を参照して、実施例2による窒化物半導体発光素子860について説明する。
【0147】
この実施例2では、図16に示すように、窒化物半導体基板10の成長面10a上に、約0.1μmの厚みを有するn型Al0.50Ga0.50N層110を形成した。また、n型Al0.50Ga0.50N層110上には、活性層120、約15nmの厚みを有するp型Al0.80Ga0.20Nからなるキャリアブロック層130、約10nmの厚みを有するp型Al0.50Ga0.50N層140、約50nmの厚みを有するp型Al0.10Ga0.90Nからなるp型コンタクト層150を順次形成した。
【0148】
また、活性層120は、図17に示すように、障壁層120bと量子井戸層120aとを交互に積層することによって、量子井戸構造に構成した。量子井戸層120aの層数は5層とした。なお、実施例2では、量子井戸層120aをAl0.4Ga0.6Nとし、障壁層120bをAl0.50Ga0.50Nとした。また、実施例2では、窒化物半導体基板10にGaN基板を用いた。
【0149】
また、実施例2では、実施例1と同様、窒化物半導体基板10の上面側に2つの電極(p側電極160、n側電極170)を形成することにより、窒化物半導体発光素子860を横型構造に構成した。p側電極160およびn側電極170は、上記した実施形態と同様である。ただし、実施例2でも、窒化物半導体基板10の上面側および下面側に電極を形成することにより、窒化物半導体発光素子860を縦型構造に構成することが可能である。」

(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「窒化物半導体発光素子」は、本件補正発明の「発光構造物を含む半導体素子」に相当する。

(イ)引用発明の「n型層(20)」は、「SiをドープしたAl0.75Ga0.25N層」であるから、本件補正発明の「アルミニウムを有するn型半導体層」に相当する。

(ウ)引用発明の「p型第一層(p型クラッド層)(51)」、「p型第二層(p型コンタクト層)(52)」は、それぞれ「MgをドープしたAl0.80Ga0.20N層(層厚み50nm)」、「MgをドープしたGaN層」であるから、本件補正発明の「第2半導体層」、「第1半導体層」に相当し、本件補正発明の「p型半導体層は、・・・第1半導体層と・・・第2半導体層を含み」、「前記第2半導体層の厚さは10nmより大きく、かつ、200nmより小さい」との構成を有する。

(エ)引用発明の「活性層(30)」は、「n型層(20)上に、障壁層と井戸層とが交互に積層されるように、Siをドープした障壁層(組成Al0.75Ga0.25N)を4層、及び井戸層(組成Al0.5Ga0.5N)を3層形成」したものであるから、引用発明の「活性層(30)」は、本件補正発明の「活性層」に相当し、本件補正発明の「アルミニウムを有し」との構成を有する。
また、引用発明の「活性層」は、「n型層(20)」と「p型第一層(p型クラッド層)(51)」との間に位置するから、本件補正発明の「前記n型半導体層と前記p型半導体層の間に設けられている」との構成を有する。

イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

【一致点】
「アルミニウムを有するn型半導体層と、
p型半導体層と、
アルミニウムを有し、且つ、前記n型半導体層と前記p型半導体層の間に設けられている活性層とを含む発光構造物を含む半導体素子であって、
前記p型半導体層は、第1半導体層と第2半導体層を含み、
前記第2半導体層の厚さは10nmより大きく、かつ、200nmより小さい、
半導体素子。」

【相違点1】
「p型半導体層」につき、本件補正発明は「アルミニウムを有」し、「p型半導体層」に含まれる「第1半導体層」は「アルミニウムの組成が相対的に低」く、「第2半導体層」は「アルミニウムの組成が高い」のに対し、引用発明は、「p型第一層(p型クラッド層)(51)」にアルミニウムを有するものの、「p型第二層(p型コンタクト層)(52)」にはアルミニウムを有しない点。

【相違点2】
本件補正発明では、「前記n型半導体層、前記活性層及び前記p型半導体層からアルミニウムの2次イオンをはじき出すために1次イオンが前記発光構造物に照射されるとき、前記アルミニウムの2次イオンは、前記n型半導体層、前記活性層及び前記p型半導体層のそれぞれの強度で生成され、
前記アルミニウムの2次イオンの強度は、
前記発光構造物における最低強度と、
前記最低強度から第1方向に離れた前記発光構造物における最も高いピーク強度である最高ピーク強度と、
前記最高ピーク強度から前記第1方向に離れた領域における最も高いピーク強度である第1ピーク強度と、
前記最高ピーク強度から前記第1方向に離れた領域における最も低い強度である第2強度とを含み、
前記第2強度は、前記最高ピーク強度と前記第1ピーク強度の間に配置される複数の強度の中で最も低い強度よりも低く、
前記第1方向は、前記p型半導体層から前記n型半導体層に向かう前記発光構造物の厚さ方向であり、
前記発光構造物は、アルミニウムの前記最低強度を有する第1部分と、アルミニウムの前記最高ピーク強度を有する第2部分と、アルミニウムの前記第1ピーク強度を有する第3部分と、アルミニウムの前記第2強度を有する第4部分とを含み、
前記p型半導体層は、前記第1部分と前記第2部分の間に配置される第1領域を含み、
前記活性層は、前記第2部分と前記第3部分の間に配置される第2領域を含み、
前記n型半導体層は、前記第3部分と前記第4部分の間に配置される第3領域を含み」との構成を有するのに対し、引用発明は、その点が特定されていない点。

【相違点3】
本件補正発明では、「前記最高ピーク強度と前記第2強度の間の第1強度差(D1)と、前記最低強度と前記第2強度の間の第2強度差(D2)との比は、1:0.2〜1:2であ」るのに対し、引用発明は、その点が特定されていない点。

(4)判断
以下、相違点について検討する。

ア 相違点1について
引用文献1には、「p型第二層(p型コンタクト層)(52)」に関して、段落[0066]に「p型第一層(p型クラッド層)51及びp型第二層(p型コンタクト層)52の両方がそれぞれAlGaN単結晶から形成される場合、p型第二層(p型コンタクト層)52のAl組成は、p型第一層(p型クラッド層)51のAl組成よりも小さいことが好ましい。p型第二層(p型コンタクト層)52が組成式AlfGa1−fNで表される単結晶から構成される場合、そのAl組成(f)は、0.00〜1.00であればよく、0.00〜0.70であることが好ましく、0.00〜0.40であることがより好ましい。」と記載されていることから、「p型第二層(p型コンタクト層)52」として、「p型第一層(p型クラッド層)51」よりも組成が小さくなるようにアルミニウムを含有させることについて示唆されているといえる。
また、引用文献2には、窒化物半導体発光素子におけるp型コンタクト層のAlGaN薄膜はAl組成比が高くなるほどp型伝導は高抵抗となり、Al組成比が低くなるほど、発光層が発光した光をp型コンタクト層が吸収しやすくなる点が記載されており(段落【0007】〜【0008】)、引用文献3〜4には、窒化物半導体発光素子におけるp型コンタクト層の具体例としてAl0.10Ga0.90Nとしたものが記載されていることから、引用発明において、p型コンタクト層の電気伝導の効率と発光層の光吸収とのバランスを考慮して、p型コンタクト層にアルミニウムを含有させ、上記相違点1に係る本件補正発明の構成となすことは、当業者が適宜なし得たことである。

イ 相違点2について
(ア)本件補正発明の「前記n型半導体層、前記活性層及び前記p型半導体層からアルミニウムの2次イオンをはじき出すために1次イオンが前記発光構造物に照射されるとき、前記アルミニウムの2次イオンは、・・・生成され」との特定事項は、本願の明細書の【0159】〜【0162】にも記載があるように、一般にSIMS(2次イオン質量分析法)として知られる測定手法により「n型半導体層」、「活性層」、「p型半導体層」の各層をターゲットとして1次イオンを照射したとき、当該各層に含まれるアルミニウムの2次イオンがはじき出される(生成される)ことをいうものと解される。
また、本件補正発明の「前記n型半導体層、前記活性層及び前記p型半導体層のそれぞれの強度で生成され」との特定事項に関して、「強度」という用語の定義が特許請求の範囲の記載のみからは必ずしも明確でないが、本願の明細書の段落【0158】には、「図13は本発明の第3実施例に係る半導体構造物のアルミニウム強度変化を示すSIMSグラフであり、図14は図13の一部拡大図である。」と記載され、同段落【0159】には、「図13と図14を参照すれば、半導体構造物は第1導電型半導体層124から第2導電型半導体層127に行くほどアルミニウムのイオン強度が変化され得る。」と記載され、同段落【0161】には、「シムス(SIMS)データは1次イオンをターゲットの表面に照射して放出される2次イオンの個数をカウンティングして分析することができる」と記載されており、本願の図13のグラフの縦軸に「2次イオン強度(カウント/秒)」と示されていることに鑑みれば、「強度」とは、ターゲットに1次イオンを照射した際にはじき出される単位時間当たりの2次イオンの数を指しているものと解される。
そして、当該2次イオンの数は、ターゲットに含まれるアルミニウムの量が増加するにつれて大きくなるから、当該ターゲットのAl組成(組成式がAlxGa1−xNと表される場合のxの値)との間に正の相関を有することは、その測定原理からみて明らかである。
したがって、上記相違点2に係る本件補正発明の構成における「前記n型半導体層、前記活性層及び前記p型半導体層からアルミニウムの2次イオンをはじき出すために1次イオンが前記発光構造物に照射されるとき、前記アルミニウムの2次イオンは、前記n型半導体層、前記活性層及び前記p型半導体層のそれぞれの強度で生成され」る点は、「発光構造物」の構造・特性上、「n型半導体層」、「活性層」及び「p型半導体層」がそれぞれアルミニウムを有することを表しており、「アルミニウムの2次イオンの強度」の大小関係は、Al組成の大小関係と一致するものと解される。
以上を踏まえると、相違点2に係る本件補正発明の構成である「前記n型半導体層、前記活性層及び前記p型半導体層からアルミニウムの2次イオンをはじき出すために1次イオンが前記発光構造物に照射されるとき、前記アルミニウムの2次イオンは、前記n型半導体層、前記活性層及び前記p型半導体層のそれぞれの強度で生成され、
前記アルミニウムの2次イオンの強度は、
前記発光構造物における最低強度と、
前記最低強度から第1方向に離れた前記発光構造物における最も高いピーク強度である最高ピーク強度と、
前記最高ピーク強度から前記第1方向に離れた領域における最も高いピーク強度である第1ピーク強度と、
前記最高ピーク強度から前記第1方向に離れた領域における最も低い強度である第2強度とを含み、
前記第2強度は、前記最高ピーク強度と前記第1ピーク強度の間に配置される複数の強度の中で最も低い強度よりも低く、
前記第1方向は、前記p型半導体層から前記n型半導体層に向かう前記発光構造物の厚さ方向であり、
前記発光構造物は、アルミニウムの前記最低強度を有する第1部分と、アルミニウムの前記最高ピーク強度を有する第2部分と、アルミニウムの前記第1ピーク強度を有する第3部分と、アルミニウムの前記第2強度を有する第4部分とを含み、
前記p型半導体層は、前記第1部分と前記第2部分の間に配置される第1領域を含み、
前記活性層は、前記第2部分と前記第3部分の間に配置される第2領域を含み、
前記n型半導体層は、前記第3部分と前記第4部分の間に配置される第3領域を含み」について、「前記n型半導体層、前記活性層及び前記p型半導体層からアルミニウムの2次イオンをはじき出すために1次イオンが前記発光構造物に照射されるとき、前記アルミニウムの2次イオンは、前記n型半導体層、前記活性層及び前記p型半導体層のそれぞれの強度で生成され」は、「前記n型半導体層、前記活性層及び前記p型半導体層がそれぞれアルミニウムを有し」に、「アルミニウムの2次イオンの強度」は「Al組成」などと、それぞれ読み替えることができるので、結果として、
「前記n型半導体層、前記活性層及び前記p型半導体層がそれぞれアルミニウムを有し、
Al組成は、
前記発光構造物における最低値と、
前記最低値から第1方向に離れた前記発光構造物における最も高いピーク値である最高ピーク値と、
前記最高ピーク値から前記第1方向に離れた領域における最も高いピーク値である第1ピーク値と、
前記最高ピーク値から前記第1方向に離れた領域における最も低い値である第2値とを含み、
前記第2値は、前記最高ピーク値と前記第1ピーク値の間に配置される複数の値の中で最も低い値よりも低く、
前記第1方向は、前記p型半導体層から前記n型半導体層に向かう前記発光構造物の厚さ方向であり、
前記発光構造物は、前記最低値を有する第1部分と、前記最高ピーク値を有する第2部分と、前記第1ピーク値を有する第3部分と、前記第2値を有する第4部分とを含み、
前記p型半導体層は、前記第1部分と前記第2部分の間に配置される第1領域を含み、
前記活性層は、前記第2部分と前記第3部分の間に配置される第2領域を含み、
前記n型半導体層は、前記第3部分と前記第4部分の間に配置される第3領域を含み」との構成を意味する。
そして、引用発明は、少なくとも、「n型層(20)」、「活性層(30)」にアルミニウムを有しており、引用発明の「窒化物半導体発光素子」の各層のAl組成から見て、最低値0(「p型第二層(p型コンタクト層)(52)」のAl組成)と、前記最低値から第1方向(p型層からn型層に向かう厚さ方向)に離れた領域における最も高い値である最高ピーク値1(「電子ブロック層(40)」のAl組成)と、前記最高ピーク値から前記第1方向に離れた領域における最も高い値である第1ピーク値0.75(「活性層(30)」中の「障壁層」又は「n型層(20)」におけるAl組成)と、前記最高ピーク値から第1方向に離れた領域における最も低い値である第2値0.5(「活性層(30)」中の「井戸層」におけるAl組成)と、を含み、前記「窒化物半導体発光素子」は、Al組成の前記最低値を有する第1部分(「p型第二層(p型コンタクト層)(52)」)と、前記最高ピーク値を有する第2部分(「電子ブロック層(40)」)と、前記第1ピーク値を有する第3部分(「活性層(30)」中の「障壁層」又は「n型層(20)」)と、前記第2値を有する第4部分(「活性層(30)」中の「井戸層」)とを含み、前記第1部分(「p型第二層(p型コンタクト層)(52)」)と前記第2部分(「電子ブロック層(40)」)の間に挟まれた領域として「p型第一層(p型クラッド層)(51)」を有するのであるから、
「前記n型半導体層、前記活性層がそれぞれアルミニウムを有し、
Al組成は、
前記発光構造物における最低値と、
前記最低値から第1方向に離れた前記発光構造物における最も高いピーク値である最高ピーク値と、
前記最高ピーク値から前記第1方向に離れた領域における最も高いピーク値である第1ピーク値と、
前記最高ピーク値から前記第1方向に離れた領域における最も低い値である第2値とを含み、
前記第1方向は、前記p型半導体層から前記n型半導体層に向かう前記発光構造物の厚さ方向であり、
前記発光構造物は、前記最低値を有する第1部分と、前記最高ピーク値を有する第2部分と、前記第1ピーク値を有する第3部分と、前記第2値を有する第4部分とを含み、
前記p型半導体層は、前記第1部分と前記第2部分の間に配置される第1領域を含み」との構成を有するといえる。
したがって、上記相違点2に係る本件補正発明の構成のうち、
「前記n型半導体層、前記活性層からアルミニウムの2次イオンをはじき出すために1次イオンが前記発光構造物に照射されるとき、前記アルミニウムの2次イオンは、前記n型半導体層、前記活性層のそれぞれの強度で生成され、
前記アルミニウムの2次イオンの強度は、
前記発光構造物における最低強度と、
前記最低強度から第1方向に離れた前記発光構造物における最も高いピーク強度である最高ピーク強度と、
前記最高ピーク強度から前記第1方向に離れた領域における最も高いピーク強度である第1ピーク強度と、
前記最高ピーク強度から前記第1方向に離れた領域における最も低い強度である第2強度とを含み、
前記第1方向は、前記p型半導体層から前記n型半導体層に向かう前記発光構造物の厚さ方向であり、
前記発光構造物は、アルミニウムの前記最低強度を有する第1部分と、アルミニウムの前記最高ピーク強度を有する第2部分と、アルミニウムの前記第1ピーク強度を有する第3部分と、アルミニウムの前記第2強度を有する第4部分とを含み、
前記p型半導体層は、前記第1部分と前記第2部分の間に配置される第1領域を含み」との点は、引用発明が有しているといえる。

(イ)上記(ア)から、上記相違点2のうち実質的な相違点は、以下のとおりである。

【相違点2−1】
「アルミニウムの2次イオンの強度」につき、本件補正発明では、「1次イオンが前記発光構造物に照射されるとき、・・・アルミニウムの2次イオンは、前記n型半導体層、前記活性層及び前記p型半導体層のそれぞれの強度で生成され」ることから、「最低強度」は0でないと解されるのに対し、引用発明は、「最低強度」が0(Al組成の最低値が0)である点。

【相違点2−2】
「第1ピーク強度」及び「第2強度」につき、本件補正発明では、「前記第2強度は、前記最高ピーク強度と前記第1ピーク強度の間に配置される複数の強度の中で最も低い強度よりも低く」、「前記活性層は、前記第2部分と前記第3部分の間に配置される第2領域を含み、前記n型半導体層は、前記第3部分と前記第4部分の間に配置される第3領域を含」むのに対し、引用発明では、そのような構成を有しない点。

(ウ)上記相違点2−1について検討する。
上記アにおいて示したように、引用発明の「p型第二層(p型コンタクト層)52」にアルミニウムを含有させることは、当業者が適宜なし得たことであり、その際、「p型第二層(p型コンタクト層)52」のAl組成を「窒化物半導体発光素子」における最低値とすること、すなわち、アルミニウムの2次イオンの強度が「最低強度」を有するようにすることも、引用文献1に示唆されたAl組成の範囲や引用文献3、4に記載された事項に照らして、当業者が適宜なし得たことである。

(エ)上記相違点2−2について検討する。
引用文献1に記載された技術事項1(上記(2)ア(ウ)を参照。)から、引用発明の「AlN基板」をGaN基板に変更することは、当業者が適宜なし得たことである。そして、GaN基板への変更に伴い、技術事項1に基づけば、自然に、「n型クラッド層20B」と、「n型クラッド層20B」よりもバンドギャップが小さい「n型下地層20A」を採用することになる。
また、引用文献1に記載された技術事項2(上記(2)ア(エ)を参照。)から、「n型クラッド層20B」と「活性層(30)」との間に「n型ホールブロック層20C」を追加的に設けることも、当業者にとって容易に想到できたことである。
ここで、引用発明の「n型層(20)」はAl、Ga、Nを構成元素とする層であるところ、バンドギャップの大きさとAl組成の大きさとの間には正の相関がある(引用文献1の段落[0025]等を参照。)ことから、単一層の「n型層(20)」(Al組成:0.75)を形成する場合と同じ役割を果たす「n型クラッド層20B」のAl組成を0.75とし、「n型下地層20A」のAl組成を0.75よりも小さくし、「n型ホールブロック層20C」のAl組成を0.75よりも大きくすることは、技術の具体的適用に伴う設計事項といえる。
また、上記「n型下地層20A」は、「基板10と成長層・・・との間の格子不整合や界面のラフニングなどを緩和するための層」([0078])であるから、「n型下地層20A」のAl組成は、GaN基板と、成長層として近接するn型クラッド層20Bとの間の格子定数の差異を緩和すべく、GaN基板(Al組成:0)とn型クラッド層20B(Al組成:0.75)との間のAl組成を達するように、適宜設定し得るものである。そして、引用文献1の[0033]及び[0035]の記載から、n型層を複数層で構成した場合の各層のAl組成を0.34〜1.00の範囲とすることが好ましい点が把握されることも踏まえると、「n型下地層20A」のAl組成として0.34付近の値の範囲、例えば0.34以上0.5未満の範囲を選ぶことは、当業者が適宜なし得たことである。
その場合、「電子ブロック層(40)」よりもn型層側に離れた領域で最も高いAl組成を有するのは「n型ホールブロック層20C」(Al組成>0.75)であり、同領域で最も低いAl組成を有するのは「n型下地層20A」(Al組成:0.34以上0.50未満)であり、当該「n型下地層20A」のAl組成は、「電子ブロック層(40)」と「n型ホールブロック層20C」との間の領域における最も低いAl組成を有する「井戸層」(Al組成:0.5)よりも低いから、上記「n型ホールブロック層20C」、「n型下地層20A」は、それぞれ本件補正発明の「第3部分」、「第4部分」に相当し、引用発明は、本件補正発明の「前記第2強度は、前記最高ピーク強度と前記第1ピーク強度の間に配置される複数の強度の中で最も低い強度よりも低く」、「前記活性層は、前記第2部分と前記第3部分の間に配置される第2領域を含み、前記n型半導体層は、前記第3部分と前記第4部分の間に配置される第3領域を含み」との構成を有する。
ところで、本件補正発明の「前記第2強度は、前記最高ピーク強度と前記第1ピーク強度の間に配置される複数の強度の中で最も低い強度よりも低く」との構成は、本願の明細書における第3実施例のAl強度を示す図13のグラフから看取されるものと対応するが、本願の明細書には上記構成の技術的意義について実質的な説明がなされておらず、同じく第3実施例のAl組成を示すとされている図12のグラフは、本来、Al強度と同様の増減を示すはずであるものの、本件補正発明の上記構成を満たさない(中間層124bのAl組成と井戸層126aのAl組成の大小関係が、図13とは逆になっている。)ことを踏まえると、上記構成の技術的意義は不明であり、顕著な作用効果を奏するものということもできない。

ウ 相違点3について
(ア)上記イ(ア)のとおり、アルミニウムの2次イオンの強度とAl組成との間には正の相関があるところ、引用発明の「p型第二層(p型コンタクト層)52」において上記ア及びイ(ウ)のようにアルミニウムを含有させ、上記イ(エ)のように「n型下地層20A」(Al組成:0.34以上0.5未満)を設ける場合、「p型第二層(p型コンタクト層)52」、「電子ブロック層(40)」、「n型下地層20A」は、それぞれ本件補正発明の「最低強度」、「最高ピーク強度」、「第2強度」を有する部分に相当し、上記「p型第二層(p型コンタクト層)52」、「電子ブロック層(40)」、「n型下地層20A」のAl組成は、それぞれ、本件補正発明の「最低強度」、「最高ピーク強度」、「第2強度」を有する部分のAl組成として本願明細書(第3実施例)に例示された範囲(「最低強度」を有する部分(第2−1導電型半導体層127a)のAl組成について1〜50%(【0149】)、「最高ピーク強度」を有する部分(遮断層129の第1−1区間129b)のAl組成について80〜100%(【0140】)、「第2強度」を有する部分(中間層124b)のAl組成について30〜60%(【0132】)と例示されている。)を満たしており、Al組成をアルミニウムの2次イオンの強度に読み替えても同様の関係が満たされると考えられる。
このように、上記「p型第二層(p型コンタクト層)52」、「電子ブロック層(40)」、「n型下地層20A」のアルミニウムの2次イオンの強度は、それぞれ本件補正発明の「最低強度」、「最高ピーク強度」、「第2強度」と同等の強度を有すると解されるから、「最高ピーク強度」と「第2強度」との間の差である「第1強度差(D1)」と、「最低強度」と「第2強度」との間の差である「第2強度差(D2)」との比についても、本件補正発明が特定する範囲を満たしているものと解される。また、仮にそうでないとしても、本件補正発明が特定する「第1強度差(D1)」と「第2強度差(D2)」との比の値「1:0.2〜1:2」が広い数値範囲にわたっていることも踏まえれば、引用発明において上記ア及びイ(ウ)〜(エ)のように構成することで、本件補正発明の上記比の値の範囲を満たすことは、当業者が適宜なし得る範囲内のことといえる。

(イ)また、本件補正発明の「第1強度差(D1)」と「第2強度差(D2)」との比の値を「1:0.2〜1:2」との範囲とすることの意義に関して、本願の明細書には、「強度差が1:0.2以上である場合、第2アルミニウムの強度差(D2)を十分に確保することができるので、第2導電型半導体層と第2電極の間の接触抵抗を改善することができる。」(【0167】)、「強度差が1:2以下である場合、第2アルミニウムの強度差(D2)が相対的に大きくなることを防止して第2−1導電型半導体層127aの厚さに対するアルミニウム強度変化率が過度に大きくならないように調節することができる。したがって、半導体構造物の結晶性を改善でき、活性層126で発光する光に対する第2−1導電型半導体層127aの透過率を改善して半導体素子の光学的特性を向上させることができる。」(【0168】)、「これに反して、第2導電型半導体層と電極のオーミックコンタクトのために薄いGaN層(表面層)を挿入する場合、電極と接触するGaN層はアルミニウムを含まないので第2アルミニウムの強度差(D2)が急激に大きくなり得る。したがって、第1アルミニウムの強度差(D1)と第2アルミニウムの強度差(D2)の比(D1:D2)は1:0.2〜1:2から外れ得る。」(【0169】)との記載があるが、D1:D2の値は、第2電極と接触する第2導電型半導体層(「p型半導体層」)のアルミニウム強度だけでなく、第1導電型半導体層(「n型半導体層」)における最も低いアルミニウム強度(「第2強度」)の値や「発光構造物」における「最高ピーク強度」の値にも左右されるところ、本願明細書中の上記議論は、第2導電型半導体層(「p型半導体層」)のアルミニウム強度の大小のみに基づくものであって、「第2強度」や「最高ピーク強度」の値によらず一般化できるものではない。したがって、本件補正発明の「1:0.2〜1:2」という数値限定に臨界的意義を見出すことはできない。

ウ そして、相違点1〜3を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明、引用文献1に記載された技術事項1〜2及び引用文献2〜4に記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

エ したがって、本件補正発明は、引用発明、引用文献1に記載された技術事項1〜2及び引用文献2〜4に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)請求人の主張について
請求人は審判請求書において、
「当業者は、引用文献2の一部の記載に過ぎない段落[0035]に基づいて、仮に「p型コンタクト層による吸収」の問題を認識し得たとしても、引用文献2自体が開示する基本的思想である、発光出力や順方向電圧という特性をバランスよく向上する([発明が解決しようとする課題]段落[0006])との課題を踏まえれば、p型コンタクト層の材質は、一義的に解決できるものではないと理解するものと考えられることから、引用文献1に対し、引用文献2を適用する動機づけはないものと思料します。・・・別の表現を致しますと、引用文献2には、段落[0007]及び[0008]の記載によるp型コンタクト層の材質の選択による解決は困難であることを実質的に示す記載があることから、引用文献1と引用文献2とを組み合わせることには阻害要因があるものと思料します。」(審判請求書の3の2.(2))、
「引用文献1には、「p型第2層(p型コンタクト層)52の厚みは、1nm以上250nm以下であることが好ましい」(段落[0067])との記載があり、相違点2に係る新請求項1に係る構成が、形式的に含まれうるものです。
しかしながら、新請求項1に係る「前記第2半導体層の厚さは10nmより大きく、かつ、200nmより小さい」との構成は、本願明細書の段落[0035]に記載の通り、「第2−2導電型半導体層127bの厚さが10nmより小さい場合、第2−2導電型半導体層127b内に電流が均一に広がることが困難であり得、半導体素子上面の面積に電流が均一に注入されることが困難であり得る。また、第2−2導電型半導体層127bの厚さが200nmより大きい場合、抵抗が増加して活性層126に注入される電流注入効率が低下され得る。」と数値を限定することによる、質的に異なる、具体的な技術的意義のある構成です。
この点、上述の引用文献1は、「1nm以上250nm以下である」との広範囲について単に、「好ましい」と何ら具体的な技術的意義理由を述べることなく記載するにとどまり、かかる数値の示す技術的意義が、開示及び示唆されておりません。」(審判請求書の3の2.(3))
と主張する。
しかしながら、上記主張については、上記(3)及び(4)で説示したとおりである。
したがって、請求人の主張は採用できない。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
令和2年7月22日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成元年7月1日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1〜18に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2〜4に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:国際公開第2014/123092号
引用文献2:特開2013−105917号公報
引用文献3:特開2012−216603号公報
引用文献4:特開2012−49337号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1〜4及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「第2強度」及び「p型半導体層」に係る限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明、引用文献1に記載された技術事項1〜2及び引用文献2〜4に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明、引用文献1に記載された技術事項1〜2及び引用文献2〜4に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

審判長 井上 博之
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2021-06-11 
結審通知日 2021-06-15 
審決日 2021-06-30 
出願番号 P2017-168498
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 井上 博之
特許庁審判官 清水 督史
瀬川 勝久
発明の名称 半導体素子およびこれを含む半導体素子パッケージ  
代理人 飯野 陽一  
代理人 安藤 健司  
代理人 金山 賢教  
代理人 小野 誠  
代理人 岩瀬 吉和  
代理人 森山 正浩  
代理人 重森 一輝  
代理人 川嵜 洋祐  
代理人 市川 英彦  
代理人 五味渕 琢也  
代理人 市川 祐輔  
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