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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1380400
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-08-07 
確定日 2021-12-14 
事件の表示 特願2016−564066「感圧周辺機器及びその使用方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月29日国際公開、WO2015/164375、平成29年 6月 1日国内公表、特表2017−514237、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)4月21日(パリ条約による優先権主張 2014年4月21日 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は次のとおりである。

平成31年 1月17日付け:拒絶理由通知書
令和 元年 6月21日 :意見書、手続補正書の提出
令和 元年 6月28日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書
令和 元年12月25日 :意見書の提出
令和 2年 4月 1日付け:拒絶査定(原査定)
令和 2年 8月 7日 :審判請求書の提出
令和 3年 7月 6日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書
令和 3年10月26日 :意見書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和2年4月1日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

令和元年6月21日に提出された手続補正書に係る手続補正は、本願請求項1、16及び22に「前記グラフィカルユーザインターフェースによって表示されるインジケータが前記グラフィカルユーザインターフェースによって表示される曲線に沿って一定期間移動するように、」移動する、という事項を追加するものであるが、前記事項は、国際出願日における国際特許出願の明細書、特許請求の範囲又は図面の翻訳文(以下、「翻訳文等」という。)に記載したものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

第3 当審拒絶理由の概要
当審が令和3年7月6日付けで通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の概要は次のとおりである。

[理由1]明確性要件
この出願は、特許請求の範囲の請求項1ないし27の記載が以下の(1)ないし(8)の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
[理由2]サポート要件
この出願は、特許請求の範囲の請求項1ないし27の記載が以下の(1)及び(2)アの点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

(1)請求項1に記載の「前記グラフィカルユーザインターフェースによって表示されるインジケータが前記グラフィカルユーザインターフェースによって表示される曲線に沿って一定期間移動するように、前記感圧周辺機器の前記筐体を圧縮することによって前記インジケータを移動させる」は、
ア 「筐体」を「圧縮」することのみにより、「インジケータ」が「曲線」に沿って「移動」する、又は、
イ 「筐体」を「圧縮」することに加えて、所定の操作をすることにより、「インジケータ」が「曲線」に沿って「移動」する、
のいずれであるのか不明であり、上記イの態様は、発明の詳細な説明に記載したものではない。

(2)請求項16に記載の
「前記フィットネスエクササイズは、前記グラフィカルユーザインターフェースによって表示されるインジケータが前記グラフィカルユーザインターフェースによって表示される曲線に沿って一定期間移動するように、前記感圧周辺機器を圧迫及び/又は移動することによって、前記感圧周辺機器を介して実行されるアイソメトリック・エクササイズである」及び、
請求項22に記載の
「前記フィットネスエクササイズとのインタラクションは、前記グラフィカルユーザインターフェースによって表示されるインジケータが前記グラフィカルユーザインターフェースによって表示される曲線に沿って一定期間移動するように、前記感圧周辺機器を圧迫及び/又は移動することによって、前記感圧周辺機器を介して実行されるアイソメトリック・エクササイズである」
において、
ア 「圧迫」と「移動」が「又は」で接続される場合を含むため、「圧迫」のみの場合を含むから、前記(1)で述べた理由と同じ理由により、請求項16及び22に係る発明は、明確ではなく、発明の詳細な説明に記載したものではない。
また、「移動」のみの場合は、発明の詳細な説明に記載したものではない。
イ 「アイソメトリック・エクササイズ」は、関節を動かさずに一定時間筋肉を収縮させるような運動のことであることが本願優先日前の技術常識である(本願明細書の【0066】に「アイソメトリック・ルーチン(例えば、特定の持続時間の間、特定の圧縮力で感圧周辺機器102を圧迫すること)」と記載されているように、本願明細書及び図面において、「アイソメトリック・エクササイズ」が「圧迫」を伴う運動であることは記載されているが、「移動」を伴う運動であることは記載も示唆もない。移動を伴う運動は、通常「アイソトニック・エクササイズ」と称される。)から、「曲線に沿って一定期間移動するように、前記感圧周辺機器を…移動する」こととは矛盾する。
請求項5の記載「前記フィットネスエクササイズは、アイソメトリック・エクササイズである」についても同様である。

(3)請求項1に記載の「コンピュータプラットフォームへのユーザ入力の受け取りを提供する一の又は複数の圧力センサ」の「受け取り」がいかなるものであり、「受け取りを提供する」とはどのような処理であるのか、日本語として明確ではなく、また、当該「受け取り」と「圧力信号」との関係も明確ではない。

(4)請求項1に記載の「フィットネスプログラム」と、請求項1を引用する請求項2に記載の「第2の相反する力の第2セット」との関係が不明である。
また、請求項16及び22に記載の「フィットネスエクササイズ」と、請求項16又は22を引用する請求項17及び23に記載の「第2の相反する力の第2セット」との関係も不明である。
請求項10、21及び27に記載の「複数の同時圧力信号」についても同様である。

(5)請求項4に列挙された各事項と、請求項1に記載の「フィットネスエクササイズ」との関係が不明である。
同様に、請求項19及び25の記載と、請求項16又は請求項22に記載の「フィットネスエクササイズ」との関係が不明である。
請求項4を引用する請求項7及び8の記載、請求項19を引用する請求項20の記載、請求項25を引用する請求項26の記載についても同様である。

(6)請求項4に記載の「ポインタ」及び「仮想オブジェクト」と、請求項3が引用する請求項1に記載の「インジケータ」との関係が明確でない。

(7)請求項6に記載の「前記フィットネスエクササイズに応じて前記グラフィカルユーザインターフェースを制御することは、閾値時間及び/又は所定の繰り返し回数、閾値の力の大きさで、前記感圧周辺機器を圧迫することを含む」は、「グラフィカルユーザインターフェースを制御すること」が「圧迫すること」を「含む」との文脈であり、日本語としても技術的にも意味不明である。

(8)請求項16及び22の記載において、「前記グラフィカルユーザインターフェースによって表示されるインジケータ」は、「グラフィカルユーザインターフェースの一の又は複数の側面」(すなわち、「入力」によって制御されるもの)に含まれる要素であるのか、これとは無関係なものであるのか、明確ではない。

[理由3]進歩性
本願請求項1ないし27に係る発明は、以下の引用文献1ないし5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

[引用文献等一覧]
1 特開2008−206932号公報
(当審において新たに提示する文献)
2 特開平8−50531号公報(周知技術を示す文献)
3 特開2013−25664号公報(周知技術を示す文献)
4 特開平10−312241号公報(周知技術を示す文献)
5 特開2013−41487号公報(周知技術を示す文献)

なお、上記引用文献2は、平成31年1月17日付けで通知された拒絶理由の理由1(新規性)及び理由2(進歩性)において引用された「引用文献1」(主引用例)に相当する。

第4 本願発明
本願請求項1ないし11に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明11」という。)は、令和3年10月26日に提出された手続補正書に係る手続補正(以下、「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定される発明であり、このうち本願発明1は以下のとおりの発明である。なお、下線は、本件補正により補正された箇所を示す。

「 コンピュータプラットフォームへユーザ入力を提供する感圧周辺機器であって、
筐体と、
前記筐体内に設けられる一の又は複数の圧力センサと、
一の又は複数の加速度計と、を備え、
前記一の又は複数の圧力センサは、前記筐体に加えられた圧縮圧力に関連する情報を伝達する圧力信号を提供するように構成され、
前記一の又は複数の加速度計は、前記感圧周辺機器の位置及び/又は位置の変化を伝達する加速度計信号を提供するように構成され、
前記筐体に印加された2つの相反する力の第1セットが前記筐体に前記圧縮圧力として加えられたことに応答して、前記圧力信号が提供され、
前記2つの相反する力の第1セットは、クリック動作を行わず、
前記一の又は複数の圧力センサは更に、前記圧力信号を電子回路に送信するように構成され、
前記一の又は複数の加速度計は更に、前記加速度計信号を電子回路に送信するように構成され、
前記コンピュータプラットフォームと関連付けられたディスプレイ上のグラフィカルユーザインターフェースにより、前記ディスプレイにフィットネスエクササイズに対応する曲線が表示され、
前記グラフィカルユーザインターフェースは、前記ディスプレイにおいて仮想オブジェクトを前記曲線に沿って移動させるために、前記筐体に前記圧縮圧力を加えつつ前記感圧周辺機器を移動させるようにユーザに指示を行い、
前記ユーザが前記筐体に前記圧縮圧力を加えつつ前記感圧周辺機器を移動させたことに応じて、前記一の又は複数の圧力センサから提供される前記圧力信号及び前記一の又は複数の加速度計から提供される前記加速度計信号が前記電子回路を介して前記コンピュータプラットフォームに入力され、
前記グラフィカルユーザインターフェースは、前記コンピュータプラットフォームに入力された前記加速度計信号に応じて、前記ディスプレイにおいて前記仮想オブジェクトを移動させる、
感圧周辺機器。」

なお、本願発明8は、本願発明1を「システム」の発明として特定したものであり、本願発明10は、本願発明1を「方法」の発明として特定したものであり、本願発明2ないし7は、本願発明1を減縮した発明であり、本願発明9は、本願発明8を減縮した発明で有り、また、本願発明11は、本願発明10を減縮した発明である。
なお、本件補正により、本件補正前の請求項2、4ないし10、17、19ないし21、23及び25ないし27は削除され、その結果、本件発明1、2、3ないし8、9、10及び11はそれぞれ、本件補正前の請求項1、3、11ないし16、18、22及び24に係る発明に対応するものと認められる。

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1記載事項
当審拒絶理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は、強調のため当審が付与した。(以降においても同様。)

ア 「【請求項2】
日常の活動で必要となる、『手で掴む・握る・押す等の動作・運動』や、『足で踏む・押す・蹴る・足の指先を持ち上げる等の動作・運動』を、その『動作・運動』目的に応じてパソコン(PC)上から『動作・運動』の条件や方法を指定することにより、PCディスプレィ上に『動作・運動』に適したグラフや絵等を『表示波形又は図形』として表示させる。次に、手又は足の各『動作・運動』による筋力の動きを『歪みセンサー』を利用して電気信号として出力し、その電気信号をPCディスプレィ上に『筋出力波形』として表示させ、更に、この『表示波形又は図形』と『筋出力波形』との間に極力差違が生じないように『手・足の動きを調整しながら運動を行わせること』、乃至は『装置に搭載された表示灯装置や音声発生装置により、光や音、又は、その両方に合わせて手・足を動かさせること』等の比較運動や一連の『動作・運動』を反復させる繰り返し運動を行わせ、その『動作・運動』を被験者の運動能力として時系列的に測定・記録・表示できる機能を備えており、且つ、被験者のやる気を喚起させるために被験者の現状の手・足の運動能力に対応した目標値の設定も可能な装置で、それらのデータを処理するための処理装置を備えていることを特徴とした測定・記録・表示装置。本装置は、測定・記録・表示するソフトを機能させるためのデータ処理装置が、入出力部、記憶部(RAM)、演算装置及びシステムソフトの記憶部(ROM)の機能を備えている。」

イ 「【0019】
そこで、この発明の(図1)の装置では、U字型アングルに、5指の各部位が固定出来るようなサック状のもの又はU字型アングルを握った時に指がすべらないグリップ状のものを取り付ける。このU字型アングルに握る力を電気信号として検出出来る歪みセンサーを固定する。この歪みセンサーは、歪みゲージを応用したものであり、このサック状のもの、又は、グリップ状のものを指で動かすとき、歪みセンサーが動きを感知し、その力をアンプを通して出力する。この力の値を電気信号として、被験者の近傍に置かれたPCディスプレイに表示し、被験者に視覚を通して表示を認識させることにより、比較運動や繰り返し運動を行わせることで、被験者の感覚器官、神経系伝達機能を刺激、活性化させ被験者の現状の運動能力を維持・向上又は退化・劣化を抑制させる。」

ウ 「【実施例1】
【0026】
神経及び感覚機能回復支援・評価・訓練装置について説明する。(図1)装置フレーム(1)は、(請求項2)、(請求項3)についての説明である。手の指で握る2本の棒状フレームを組み付けたものを示しており、金属又は強化プラスチック等の部材で頑丈に使った装置で、1本の他指フレーム(2)に人差し指から小指までの4本を添え、もう1本の親指フレーム(3)に親指を添わせるものとする。他指フレーム(2)と親指フレーム(3)とを、5本の指で握る動作を行うことにより、握力が測定出来る装置となっている。
【0027】…(中略)…
【0028】
他指フレーム(2)は、U字状構造物(5)を介して親指フレーム(3)に連結されている。他指フレーム(2)がU字状構造物(5)との結合部分近傍にセンサー(4)を組み付けてある。親指フレーム(3)のU字状構造物(5)との結合部分近傍にもセンサー(4)が組みつけられてある。この両者のセンサー(4)から撓み量が検出される。尚、このセンサー(4)は、片側だけでの設置でも、ほぼ同等の検出がなされるので、両者・片側の選択は、どちらを選んでも問題ではない。
【0029】
他指フレーム(2)と親指フレーム(3)を握力による出力を得るとき、この出力表示を時系列データとしてPCディスプレィに表示出来るようにしておく。PCディスプレィには、当初からモデル波形を表示しておき、このモデル波形に添わせるように、握力出力を被験者に調整させることとする。被験者は自分の出力波形が運動発生量によって変化することを知る。PCディスプレィ表示は、目の視神経を使って、神経伝達経路を経て、脳に情報が伝わる。脳は、情報を判断し、PCディスプレィに表示されているモデル波形に合致させるための運動指令を発する。運動指令は神経伝達経路を経て当該運動部位の運動機能に変化を与える。運動部位の運動機能の変化が、そのままにPCディスプレィに表示され、その差異を目視で確認出来れば、目〜視神経〜神経伝達経路〜脳〜神経伝達経路〜運動神経〜筋運動を行なわせることになる。ここに、神経伝達経路を活性化させる情報伝達の発生が行われ、脳神経機能回復支援評価装置の機能が発揮される。」

エ 「【実施例2】
【0030】
図2は、請求項3についての説明である。卵を半切の形状(6)にした金属または強化プラスチックとか木材からつくられたものを2個用意し、この片方の内部にくぼみ(7)を設け、ここに起歪部材(8)を取り付ける。もう片方の内部に突起部(8)を設ける。両方の半切の卵形状を片方の頂点部分(10)に固定する。両方の半切の卵形状の他の片方の頂点部分(11)は、僅かなギャップ部分を作っておく。この両方の半切の固定された一体化した卵状のものを、片手の掌に乗せてこれを掴み、掴みつぶす動作を行う。この掴む加圧力を測定する。
【0031】
この装置フレームには、ひずみゲージを応用して、掴力を感知するようにしてある。そしてこの装置フレームは、卵型の半切のものを二個用意し、この頂点部分(11)で固定し、片方の内部にくぼみ(7)に取り付けられた起歪部材(8)にセンサーが組みつけられている。もう片方の突起部(9)が、この起歪部材(8)を掌を掴む動作により圧迫されることにより、センサーが掴み量に比例した出力を発生し、この信号をPCに送ることにする。」

オ 「【図1】



カ 「【図2】



(2)引用発明
前記(1)のアないしウ及びオより、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。(なお、「PCディスプレィ」と「PCディスプレイ」との表記の揺れがあるので、後者の「PCディスプレイ」に統一した。)

「 日常の活動で必要となる、『手で掴む・握る・押す等の動作・運動』や、『足で踏む・押す・蹴る・足の指先を持ち上げる等の動作・運動』を、その『動作・運動』目的に応じてパソコン(PC)上から『動作・運動』の条件や方法を指定することにより、PCディスプレイ上に『動作・運動』に適したグラフや絵等を『表示波形又は図形』として表示させ、次に、手又は足の各『動作・運動』による筋力の動きを『歪みセンサー』を利用して電気信号として出力し、その電気信号をPCディスプレイ上に『筋出力波形』として表示させ、更に、この『表示波形又は図形』と『筋出力波形』との間に極力差違が生じないように『手・足の動きを調整しながら運動を行わせること』等の比較運動や一連の『動作・運動』を反復させる繰り返し運動を行わせ、その『動作・運動』を被験者の運動能力として時系列的に測定・記録・表示できる機能を備えていることを特徴とした測定・記録・表示装置において、
図1の装置では、U字型アングルに、5指の各部位が固定出来るようなサック状のもの又はU字型アングルを握った時に指がすべらないグリップ状のものを取り付け、このU字型アングルに握る力を電気信号として検出出来る歪みセンサーを固定し、この歪みセンサーは、歪みゲージを応用したものであり、このサック状のもの、又は、グリップ状のものを指で動かすとき、歪みセンサーが動きを感知し、その力をアンプを通して出力し、この力の値を電気信号として、被験者の近傍に置かれたPCディスプレイに表示し、被験者に視覚を通して表示を認識させ、比較運動や繰り返し運動を行わせることで、被験者の感覚器官、神経系伝達機能を刺激、活性化させ被験者の現状の運動能力を維持・向上又は退化・劣化を抑制させ、
図1の装置は、装置フレーム(1)に手の指で握る2本の棒状フレームを組み付けたものであり、
1本の他指フレーム(2)に人差し指から小指までの4本を添え、もう1本の親指フレーム(3)に親指を添わせるものとし、他指フレーム(2)と親指フレーム(3)とを、5本の指で握る動作を行うことにより、握力が測定出来る装置となっており、
他指フレーム(2)は、U字状構造物(5)を介して親指フレーム(3)に連結され、他指フレーム(2)がU字状構造物(5)との結合部分近傍にセンサー(4)を組み付けてあり、親指フレーム(3)のU字状構造物(5)との結合部分近傍にもセンサー(4)が組みつけられてあり、この両者のセンサー(4)から撓み量が検出され、
尚、このセンサー(4)は、片側だけでの設置でも、ほぼ同等の検出がなされるので、両者・片側の選択は、どちらを選んでも問題ではなく、
他指フレーム(2)と親指フレーム(3)を握力による出力を得るとき、この出力表示を時系列データとしてPCディスプレイに表示出来るようにしておき、PCディスプレイには、当初からモデル波形を表示しておき、このモデル波形に添わせるように、握力出力を被験者に調整させることとし、被験者は自分の出力波形が運動発生量によって変化することを知る、
装置。」

(3)引用文献1実施例2
前記(1)のエ及びカより、引用文献1には、「実施例2」として、次の事項(以下、「引用文献1実施例2」という。)が記載されているといえる。

「 図2の装置フレームには、ひずみゲージを応用して、掴力を感知するようにし、そしてこの装置フレームは、卵型の半切のものを二個用意し、この頂点部分(11)で固定し、片方の内部にくぼみ(7)に取り付けられた起歪部材(8)にセンサーが組みつけられ、もう片方の突起部(9)が、この起歪部材(8)を掌を掴む動作により圧迫されることにより、センサーが掴み量に比例した出力を発生し、この信号をPCに送ること。」

2 引用文献2について
当審拒絶理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は制御用入力機器の分野に関するものである。本発明による入力機器は、ユーザーが接触により与える力を検出する複数の表面センサーより構成されており、6つの自由度を持つ制御入力を生み出すことが可能な装置である。この自由度6の制御入力信号は入力機器を物理的に移動させることなく発生させることができるため、対話型のコンピュータグラフィックス上におけるカーソルや表示物体の操作に適した入力機器である。さらにこの入力機器は音響や電磁場の外乱に対して影響を受けないため、クレーン、フォークリスト等の産業機械の制御用入力機器としても適している。」

「【0038】図1の制御入力機器における3次元座標の制御入力信号処理に関する電子回路のブロックダイヤグラムを図2に示してある。力検出器110、115、120、125、130および135は制御接続部145によって統合されアナログ−デジタル(A/D)変換器205に接続される。A/D変換器205はそれぞれ力検出器が独立して発生するアナログ信号をデジタル信号に変換する。6つの独立したディジタル信号は積分器210に入力される。積分器210は入力機器の左右に付いている力検出器125と115のディジタル信号の差を積分し、X軸方向の位置制御信号(X=∫(X125−x115)dt)を出力する。同様にして入力機器の上部、底部に付いている力検出器120、135からのディジタル信号の差を積分して、Y軸方向の位置制御信号(Y=∫(Y135−Y120)dt)を出力し、さらに入力機器の前面と裏面に付いている力検出器110、130からのディジタル信号の差を積分してZ軸方向の位置制御信号(Z=∫(Z110−Z130)dt)を出力する。このようにして処理された位置制御指令信号X、Y、Zはコンピュータ220に接続され、コンピュータ画面上のカーソルやコンピュータグラフィックス上の表示物体の操作信号として使用される。またクレーン用サーボモータ230等に接続して、重機械の制御信号としても利用できる。
【0039】第1番目の制御入力機器の設計概念105は接触圧力の有無に敏感であり、A/D変換器は力検出器から送られてくる信号を変換後バイナリー出力信号として積分器210へ転送する。この方式は単一速度を持った制御入力信号を発生させるためにコンピュータ上のカーソルやグラフィックス上の表示物体はあらかじめ決められた速度で望ましい方向へ移動する。しかし力検出器110、115、120、125、130および135に接触圧力の定量値を測定できる機能を付加すればA/D変換器205はマルチビットのディジタル信号を出力することが可能であり、その結果積分器210の最終出力もマルチビットの値となる。このマルチビットの値を制御指令信号として利用すると制御速度を変化させることが可能となりユーザーの与える接触圧力の増減に対して制御対象の移動速度の増減を操作できることになる。」

よって、引用文献2には、次の技術的事項が記載されているといえる。

「 対話型のコンピュータグラフィックス上におけるカーソルや表示物体の操作に適した入力機器において、
力検出器110、115、120、125、130および135は制御接続部145によって統合されアナログ−デジタル(A/D)変換器205に接続され、
A/D変換器205はそれぞれ力検出器が独立して発生するアナログ信号をデジタル信号に変換し、
6つの独立したディジタル信号は積分器210に入力され、
積分器210は入力機器の左右に付いている力検出器125と115のディジタル信号の差を積分し、X軸方向の位置制御信号(X=∫(X125−x115)dt)を出力し、同様にして入力機器の上部、底部に付いている力検出器120、135からのディジタル信号の差を積分して、Y軸方向の位置制御信号(Y=∫(Y135−Y120)dt)を出力し、さらに入力機器の前面と裏面に付いている力検出器110、130からのディジタル信号の差を積分してZ軸方向の位置制御信号(Z=∫(Z110−Z130)dt)を出力し、
このようにして処理された位置制御指令信号X、Y、Zはコンピュータ220に接続され、コンピュータ画面上のカーソルやコンピュータグラフィックス上の表示物体の操作信号として使用されること、及び、
力検出器110、115、120、125、130および135に接触圧力の定量値を測定できる機能を付加すればA/D変換器205はマルチビットのディジタル信号を出力することが可能であること。」

3 引用文献3について
当審拒絶理由に引用された引用文献3には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

「【0008】
例えば、ユーザが操作対象物の操作を開始しようとして、テーブル上に置かれた入力装置を把持して持ち上げる場合、この動作に連動して、ユーザの意図に反して操作対象物が動いてしまうことがある。
【0009】
よって、ユーザが操作対象物を心地よく、かつ思い通りに操作できる入力装置、入力方法及び制御システムが求められていた。」

「【0023】
また、入力装置10は、入力装置10が所定の力以上の力で握られたことを検出するとともに、クリック感(第1の応答)を発生させるタクトスイッチ12(スイッチ部)を備える。また、入力装置10は、ユーザが入力装置10を握った力の大きさを検出する感圧センサ13(圧力センサ:握り力を検出する)を備える。」

「【0038】
まず、入力装置10の電気的な構成について説明する。図6Aの上図に示すように、入力装置10は、前記したタクトスイッチ12、感圧センサ13のほか、CPU(Central Processing Unit)11、3軸加速度センサ14、3軸角速度センサ15、ROM16a、RAM16b、送受信回路17、バッテリー18を備える。また、入力装置10は、LED19(Light Emitting Diode)を有していてもよい。」

「【0046】
次に、図6Bの上図を用いて入力装置10の機能構成について説明する。入力装置10は、検出部43、第1処理部41、記憶部46、第1送受信部47及び電源部48を有している。検出部43は、第1操作検出部44及び第2操作検出部45を有している。第1処理部41は、第1応答部42、第1演算部40及び第2応答部49を有している。
【0047】
検出部43は、入力装置本体がユーザに所定の力以上の力で握られたことを検出する。例えば、検出部43は、入力装置本体が握られた力の大きさを検出し、握られた力の大きさに応じた握り力検出値を出力する。第1操作検出部44は、入力装置本体への第1の操作を検出する。第1の操作としては、例えば、図18に示したように、入力装置10を握る、入力装置10をテーブルから持ち上げる、入力装置10をたたく等が挙げられ、入力装置10を握る場合のみに限られない。第1操作検出部44は、例えば、入力装置本体が所定の圧力(例えば第1の閾値)以上で握られたことを検出してもよい。また、第1操作検出部44は、その検出結果に基づき握られた力の大きさに応じた握り力検出値を出力してもよい。」

よって、引用文献3には、次の技術的事項(以下、「引用文献3記載事項」という。)が記載されているといえる。

「 ユーザが操作対象物を心地よく、かつ思い通りに操作できる入力装置において、
入力装置10は、ユーザが入力装置10を握った力の大きさを検出する感圧センサ13(圧力センサ:握り力を検出する)を備え、感圧センサ13のほか、CPU11、3軸加速度センサ14、3軸角速度センサ15、ROM16a、RAM16b、送受信回路17、バッテリー18を備え、
機能構成として、入力装置10は、検出部43、第1処理部41、記憶部46、第1送受信部47及び電源部48を有し、検出部43は、第1操作検出部44及び第2操作検出部45を有し、
第1操作検出部44は、例えば、入力装置本体が所定の圧力(例えば第1の閾値)以上で握られたことを検出し、その検出結果に基づき握られた力の大きさに応じた握り力検出値を出力してもよいこと。」

4 引用文献4について
当審拒絶理由に引用された引用文献4には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、コンピュータシステムに関し、特に、操作者の健康を自動的に管理できるコンピュータシステム及びこれに用いるポインティングデバイスに関する。」

「【0089】図8は、本発明に係るマウスの第2の実施の形態であるインテリジェントマウス21の平面図であり、図9は、該インテリジェントマウス21の斜視図である。
…(中略)…
【0093】このように、本実施形態の係るインテリジェントマウス21は、心電波検出手段200、脈拍検出手段210、体温検出手段220及び発汗量検出手段230を備え、さらに、操作者の指先が当接されるクリックボタンの表面に心電波検出電極を配設し、また、操作者の掌が当接される上面中央部に光学素子部と温度センサを配設し、上面手前側に発汗量検出電極対を設けているので、コンピュータシステムの操作中に操作者の心電波、脈拍、体温及び発汗量を的確に検出することができる。」

よって、引用文献4には、次の技術的事項が記載されているといえる。

「 操作者の健康を自動的に管理できるポインティングデバイスであるインテリジェントマウス21が、心電波検出手段200、脈拍検出手段210を備えること。」

5 引用文献5について
当審拒絶理由に引用された引用文献5には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

「【0001】
本技術は、動きセンサ等を有する操作デバイスが、ユーザーにより3次元空間内で操作される時に、その動きセンサ等から得られる情報に基づき、操作デバイスの動きに応じた操作対象物の動きを実現するための演算を実行する情報処理装置、情報処理システム、情報処理方法、また操作デバイスに関する。」

「【0091】
図9の下中央に示した図では、ユーザーが筺体11の上部側領域を叩くことにより、加速度センサ5が、操作デバイス10に発生する加振力を検出する例を示している。このようにユーザーが筺体11を「叩く」行為は、力学的には「押す(力を加える)」行為と等価である。この場合、圧力センサ8に代えて、加速度センサによりその振動を検出してもよい。その場合、振動の有無を検出する振動センサとして機能する。」

よって、引用文献5には、次の技術的事項が記載されているといえる。

「 動きセンサ等を有する操作デバイスが、加速度センサによりその振動を検出してもよく、その場合、振動の有無を検出する振動センサとして機能すること。」

第6 当審拒絶理由についての判断
1 理由1(明確性要件)及び理由2(サポート要件)について
本件補正により、
(1)本件補正後の請求項1の記載は、
「前記ユーザが前記筐体に前記圧縮圧力を加えつつ前記感圧周辺機器を移動させたことに応じて、前記一の又は複数の圧力センサから提供される前記圧力信号及び前記一の又は複数の加速度計から提供される前記加速度計信号が前記電子回路を介して前記コンピュータプラットフォームに入力され、
前記グラフィカルユーザインターフェースは、前記コンピュータプラットフォームに入力された前記加速度計信号に応じて、前記ディスプレイにおいて前記仮想オブジェクトを移動させる」
との事項を含むように補正され、「筐体」に「圧縮圧力」を加え、感圧周辺機器を「移動」させたことに応じて、「仮想オブジェクト」を「移動」させることが明確となり、また、そのことによって、発明の詳細な説明に記載したものとなった。
(2)本件補正前の請求項16に記載されていた「アイソメトリック・エクササイズ」という語は、本件補正後の請求項8においては削除され、本件補正前の請求項5は削除され、その結果、請求項8に係る発明は明確となり、発明の詳細な説明に記載したものとなった。
(3)本件補正前の請求項1に記載されていた「ユーザ入力の受け取りを提供する」は、本件補正後の請求項1の記載においては「ユーザ入力を提供する」となり、明確となった。
(4)〜(8)本件補正前の請求項2、4ないし10、17、19ないし21、23及び25ないし27は削除され、これら請求項について指摘していた不明確な点はいずれも解消した。

よって、理由1(明確性要件)及び理由2(サポート要件)はいずれも解消した。

2 理由3(進歩性)について
(1)本願発明1について
ア 対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明の「その『動作・運動』目的に応じてパソコン(PC)上から『動作・運動』の条件や方法を指定することにより、PCディスプレイ上に『動作・運動』に適したグラフや絵等を『表示波形又は図形』として表示させ」との構成によると、「PCディスプレイ」は、「PC」(パソコン)に備えられた「ディスプレイ」であり、「PC」からの制御により表示を行うものといえる。
そうすると、引用発明の「PC」は、本願発明1の「コンピュータプラットフォーム」に相当する。
引用発明は、「手又は足の各『動作・運動』による筋力の動きを『歪みセンサー』を利用して電気信号として出力し、その電気信号をPCディスプレイ上に『筋出力波形』として表示させ」る機能を備え、また、具体的には「他指フレーム(2)と親指フレーム(3)を握力による出力を得るとき、この出力表示を時系列データとしてPCディスプレイに表示出来る」ように構成されているから、「センサー(4)」の出力である「握る力」を示す「電気信号」は、「PC」に提供されているといえる。
そして、当該「握る力」を示す「電気信号」は、「図1の装置」の「他指フレーム(2)」及び「親指フレーム(3)」を握るユーザの入力、すなわち「ユーザ入力」といい得るものであり、前記「センサー(4)」を備え、「ユーザ入力」を「PC」に提供する「図1の装置」は、「感圧周辺機器」といい得るものである。
以上より、引用発明の「図1の装置」は、本願発明1の「コンピュータプラットフォームへユーザ入力を提供する感圧周辺機器」に相当する。

(イ)引用発明の「装置フレーム(1)」は、本願発明1の「筐体」に相当する。

(ウ)引用発明の「図1の装置」は、「他指フレーム(2)」及び「親指フレーム(3)」のそれぞれの「U字状構造物(5)」との「結合部分近傍」に、「U字型アングルに握る力を電気信号として検出出来る歪みセンサー」である「センサー(4)」が組み付けられたものである。また、この「センサー(4)」は、「片側だけでの設置」でも問題ないとされているから、1つ又は2つ(複数)が備えられているといえる。
また、「握る力」を検出する「歪みセンサー」である「センサー(4)」は、「圧力センサ」といい得るものである。
また、引用文献1の【図1】を参酌すれば、引用発明の1つ又は2つの「センサー(4)」は「装置フレーム(1)」の内部に設けられているといえる。
よって、前記(ア)を参酌すれば、引用発明の1つ又は2つの「センサー(4)」は、本願発明1の「前記筐体内に設けられる一の又は複数の圧力センサ」に相当する。

(エ)前記(ア)より、引用発明の1つ又は2つの「センサー(4)」は、ユーザが「他指フレーム(2)」及び「親指フレーム(3)」を「握る力」を示す「電気信号」を提供するよう構成されているといえる。ここで、「握る力」は、「他指フレーム(2)」及び「親指フレーム(3)」に加えられた「圧縮圧力」ともいい得るものであって、「圧縮圧力」を示す「電気信号」は、「圧縮圧力」に関連する情報を伝達する「圧力信号」といい得るものである。
よって、引用発明と、本願発明1の「前記一の又は複数の圧力センサは、前記筐体に加えられた圧縮圧力に関連する情報を伝達する圧力信号を提供するように構成され」とは、「前記一の又は複数の圧力センサは、加えられた圧縮圧力に関連する情報を伝達する圧力信号を提供するように構成され」との構成を備える点において共通する。

(オ)引用発明において、「他指フレーム(2)」及び「親指フレーム(3)」を握るときに、他指によって「他指フレーム(2)」に印加される力と、親指によって「親指フレーム(3)」に印加される力との2つの力は、互いに相反する力となり、この2つの互いに相反する力を「2つの相反する力の第1セット」と称することは任意である。また、前記(エ)を参酌すれば、引用発明においては、「2つの相反する力の第1セット」が「圧縮圧力」として加えられたことに応答して、前記「電気信号」(「圧力信号」)を提供するように構成されているといえる。
よって、引用発明と、本願発明1の「前記筐体に印加された2つの相反する力の第1セットが前記筐体に前記圧縮圧力として加えられたことに応答して、前記圧力信号が提供され」とは、「印加された2つの相反する力の第1セットが前記圧縮圧力として加えられたことに応答して、前記圧力信号が提供され」との構成を備える点で共通する。

(カ)引用発明において、「他指フレーム(2)」及び「親指フレーム(3)」を握るときに、「クリック動作」を伴うものではない。
よって、前記(オ)を参酌すれば、引用発明は、本願発明1の「前記2つの相反する力の第1セットは、クリック動作を行わず」との構成を備える。

(キ)引用発明は、「この歪みセンサーは、歪みゲージを応用したものであり、このサック状のもの、又は、グリップ状のものを指で動かすとき、歪みセンサーが動きを感知し、その力をアンプを通して出力し、この力の値を電気信号として、被験者の近傍に置かれたPCディスプレイに表示し、被験者に視覚を通して表示を認識させ」との構成を備えることから、前記(ア)及び(エ)を参酌すれば、1つ又は2つの「センサー(4)」は、「電気信号」(圧力信号)を「アンプ」に送信するように構成されているといえる。また、当該「アンプ」が「電子回路」として実現されることは本願優先日前の技術常識である。
よって、引用発明は、本願発明1の「前記一の又は複数の圧力センサは更に、前記圧力信号を電子回路に送信するように構成され」との構成を備える。

(ク)引用発明は、「他指フレーム(2)」と「親指フレーム(3)」を握る運動をユーザに行わせるものであって、かつ、「被験者の現状の運動能力を維持・向上又は退化・劣化を抑制させ」るとの作用効果を奏するものである。
よって、引用発明において、「他指フレーム(2)」と「親指フレーム(3)」とを圧縮する運動(エクササイズ)は、本願発明1の「フィットネスエクササイズ」に相当する。

(ケ)前記(ア)を参酌すれば、引用発明の「PCディスプレイ」は、本願発明1の「前記コンピュータプラットフォームと関連付けられたディスプレイ」に相当する。
引用発明は、「『動作・運動』目的に応じてパソコン(PC)上から『動作・運動』の条件や方法を指定することにより、PCディスプレイ上に『動作・運動』に適したグラフや絵等を『表示波形又は図形』として表示させ」るものであるから、「PCディスプレイ」は、「動作・運動」に適した「グラフや絵等」を表示するための「グラフィカルユーザインターフェース」の機能を備えるものといえる。
そして、引用発明の「PCディスプレイには、当初からモデル波形を表示しておき、このモデル波形に添わせるように、握力出力を被験者に調整させる」において、「PCディスプレイ」に当初から表示される「モデル波形」は、ユーザが実施すべき「動作・運動」の条件や方法を指定する「グラフや絵等」の一種といえ、また、「モデル波形」と本願発明1の「曲線」とは、「線」である点において共通する。
よって、引用発明において、「PCディスプレイ」に「モデル波形」が表示されることと、本願発明1の「前記コンピュータプラットフォームと関連付けられたディスプレイ上のグラフィカルユーザインターフェースにより、前記ディスプレイにフィットネスエクササイズに対応する曲線が表示され」ることとは、「前記コンピュータプラットフォームと関連付けられたディスプレイ上のグラフィカルユーザインターフェースにより、前記ディスプレイにフィットネスエクササイズに対応する線が表示され」ことである点において共通する。

(コ)引用発明の「PCディスプレイには、当初からモデル波形を表示しておき、このモデル波形に添わせるように、握力出力を被験者に調整させる」ことは、「握力出力」が「モデル波形」に沿って移動させるために、「他指フレーム(2)」及び「親指フレーム(3)」を握るように「被験者」(ユーザ)に指示していることに等しく、また、「握力出力」は、「モデル波形」とは区別して表示される「仮想オブジェクト」といい得るものである。
よって、引用発明の「PCディスプレイには、当初からモデル波形を表示しておき、このモデル波形に添わせるように、握力出力を被験者に調整させる」ことと、本願発明1の「前記グラフィカルユーザインターフェースは、前記ディスプレイにおいて仮想オブジェクトを前記曲線に沿って移動させるために、前記筐体に前記圧縮圧力を加えつつ前記感圧周辺機器を移動させるようにユーザに指示を行」うこととは、「前記グラフィカルユーザインターフェースは、前記ディスプレイにおいて仮想オブジェクトを前記線に沿って移動させるために、前記圧縮圧力を加えるようにユーザに指示を行」うことにおいて共通する。

(サ)前記(ア)、(キ)及び(コ)を参酌すれば、引用発明において、「被験者」(ユーザ)が、「他指フレーム(2)」及び「親指フレーム(3)」を握ることに応じて、1つ又は2つの「センサー(4)」から提供される「電気信号」(圧力信号)が、「アンプ」を介して出力されて「PCディスプレイ」に表示されており、ここで、「アンプ」の出力は、「PC」に入力されているといえる。
よって、引用発明と、本願発明1の「前記ユーザが前記筐体に前記圧縮圧力を加えつつ前記感圧周辺機器を移動させたことに応じて、前記一の又は複数の圧力センサから提供される前記圧力信号及び前記一の又は複数の加速度計から提供される前記加速度計信号が前記電子回路を介して前記コンピュータプラットフォームに入力され」とは、「前記ユーザが前記圧縮圧力を加えたことに応じて、前記一の又は複数の圧力センサから提供される前記圧力信号が前記電子回路を介して前記コンピュータプラットフォームに入力され」との構成を備える点において共通する。

(シ)前記(ケ)、(コ)及び(サ)を参酌すれば、引用発明において、「PCディスプレイ」(グラフィカルユーザインターフェース)は、「PC」に入力された「電気信号」(「他指フレーム(2)」及び「親指フレーム(3)」を握ることに応じて出力されるもの)に応じて、「PCディスプレイ」において「握力出力」を移動させるものといえ、また、「電気信号」と本願発明1の「加速度計信号」とは、「所定の信号」である点において共通する。
よって、引用発明と、本願発明1の「前記グラフィカルユーザインターフェースは、前記コンピュータプラットフォームに入力された前記加速度計信号に応じて、前記ディスプレイにおいて前記仮想オブジェクトを移動させる」とは、「前記グラフィカルユーザインターフェースは、前記コンピュータプラットフォームに入力された所定の信号に応じて、前記ディスプレイにおいて前記仮想オブジェクトを移動させる」との構成を備える点において共通する。

イ 一致点、相違点
したがって、本願発明1と引用発明とは、次の点において一致ないし相違する。

[一致点]
「 コンピュータプラットフォームへユーザ入力を提供する感圧周辺機器であって、
筐体と、
前記筐体内に設けられる一の又は複数の圧力センサと、
を備え、
前記一の又は複数の圧力センサは、加えられた圧縮圧力に関連する情報を伝達する圧力信号を提供するように構成され、
印加された2つの相反する力の第1セットが前記圧縮圧力として加えられたことに応答して、前記圧力信号が提供され、
前記2つの相反する力の第1セットは、クリック動作を行わず、
前記一の又は複数の圧力センサは更に、前記圧力信号を電子回路に送信するように構成され、
前記コンピュータプラットフォームと関連付けられたディスプレイ上のグラフィカルユーザインターフェースにより、前記ディスプレイにフィットネスエクササイズに対応する線が表示され、
前記グラフィカルユーザインターフェースは、前記ディスプレイにおいて仮想オブジェクトを前記線に沿って移動させるために、前記圧縮圧力を加えるようにユーザに指示を行い、
前記ユーザが前記圧縮圧力を加えたことに応じて、前記一の又は複数の圧力センサから提供される前記圧力信号が前記電子回路を介して前記コンピュータプラットフォームに入力され、
前記グラフィカルユーザインターフェースは、前記コンピュータプラットフォームに入力された所定の信号に応じて、前記ディスプレイにおいて前記仮想オブジェクトを移動させる、
感圧周辺機器。」

[相違点]
<相違点1>
本願発明1は、「一の又は複数の加速度計」を備えると共に、「前記一の又は複数の加速度計は、前記感圧周辺機器の位置及び/又は位置の変化を伝達する加速度計信号を提供するように構成され」、及び、「前記一の又は複数の加速度計は更に、前記加速度計信号を電子回路に送信するように構成され」るのに対し、引用発明は、「加速度計」及び「加速度計信号」に係る構成を備えない点。

<相違点2>
「圧縮圧力」及び「2つの相反する力の第1セット」が、本願発明1においては、「筐体」に加えられる又は印加されるのに対し、引用発明において、「他指フレーム(2)」及び「親指フレーム(3)」に加えられる「握る力」は、「装置フレーム(1)」に対するものとはいえない点。

<相違点3>
「フィットネスエクササイズに対応する線」が、本願発明1においては「曲線」であるのに対し、引用発明の「グラフ波形」は、どのような線であるのかを具体的に特定していない点。

<相違点4>
本願発明1は、「仮想オブジェクト」を「曲線」に沿って移動させるために、「感圧周辺機器(の筐体)に「圧縮圧力」を加えつつ「感圧周辺機器」を「移動」させることをユーザに指示するのに対し、引用発明は、「握力出力」が「モデル波形」に沿うように、「他指フレーム(2)」及び「親指フレーム(3)」を握ることを被験者(ユーザ)に対し指示する点。

<相違点5>
「仮想オブジェクト」の移動が、本願発明1においては「加速度計信号」に応じてなされるのに対し、引用発明において、「握力出力」は、「他指フレーム(2)」及び「親指フレーム(3)」を握ることに応じて出力される「電気信号」に応じて移動する点。

ウ 相違点についての判断
事案に鑑みて、先に、「加速度計」に連関する上記相違点1及び3ないし5についてまとめて検討する。
相違点1及び3ないし5に係る本願発明1の構成は、「フィットネスエクササイズ」が、「感圧周辺機器」に圧縮圧力を加えつつ、これを所定の「曲線」に沿って移動させるものであること、及び、「感圧周辺機器」が「加速度計」を備え、「感圧周辺機器」の移動に応じて「加速度計」から出力される「加速度計信号」に応じて、表示される「仮想オブジェクト」が移動することを前提に、前記「フィットネスエクササイズ」に応じた所定の「曲線」を表示し、当該「曲線」に沿うように「仮想オブジェクト」が移動するように、「感圧周辺機器」に圧縮圧力を加えつつ移動させるようにユーザに指示するという構成を備えている。
ここで、引用文献3記載事項にあるように、感圧センサと加速度センサを備えた入力装置は、本願優先日前の周知技術であるといえる。しかしながら、当該入力装置は、「フィットネスエクササイズ」に使用されるものではないため、引用発明と前記周知技術とは技術分野が異なり、当業者であっても、引用発明に当該周知技術を適用する動機付けが希薄である。仮に、適用すること自体が容易であるとしても、相違点1及び3ないし5に係る本願発明1の構成には至らない。
相違点1及び3ないし5に係る本願発明1の構成は、引用文献2、4及び5には記載されておらず、本願優先日前において周知技術であるともいえない。
したがって、相違点2について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用文献1ないし5に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)本願発明2ないし7について
本願発明2ないし7は、相違点1及び3ないし5に係る本願発明1の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1ないし5に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)本願発明8及び9について
本願発明8は、本願発明1を「システム」の発明として特定したものであり、本願発明9は、本願発明9を減縮したものであるから、いずれも相違点1及び3ないし5に係る本願発明1に対応する構成を備えている。
よって、本願発明8及び9は、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1ないし5に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(4)本願発明10及び11について
本願発明10は、本願発明1を「方法」の発明として特定したものであり、本願発明11は、本願発明10を減縮したものであるから、いずれも相違点1及び3ないし5に係る本願発明1に対応する構成を備えている。
よって、本願発明10及び11は、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1ないし5に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

以上のとおりであるから、理由3(進歩性)は解消した。

第7 原査定についての判断
本件補正により、補正後の請求項1ないし11に係る発明(本願発明1ないし11)は、原査定においていわゆる新規事項であると指摘があった、「前記グラフィカルユーザインターフェースによって表示されるインジケータが前記グラフィカルユーザインターフェースによって表示される曲線に沿って一定期間移動するように、」移動する、という事項が削除されている。
また、本件補正は、翻訳文等(特に、明細書の翻訳文の【0004】、【0008】、【0012】、【0013】、【0029】、【0063】〜【0065】)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-11-24 
出願番号 P2016-564066
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
P 1 8・ 55- WY (G06F)
P 1 8・ 537- WY (G06F)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 角田 慎治
特許庁審判官 林 毅
野崎 大進
発明の名称 感圧周辺機器及びその使用方法  
代理人 村越 智史  

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