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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A63B 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 A63B |
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管理番号 | 1380415 |
総通号数 | 1 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2022-01-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-08-19 |
確定日 | 2021-12-24 |
事件の表示 | 特願2019− 8983「ダンス装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 5月23日出願公開、特開2019− 76757〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成27年3月18日に出願した特願2015−55183号の一部を平成31年1月23日に新たな特許出願としたものであって、平成31年1月23日に上申書が提出され、令和1年11月11日付けで拒絶の理由が通知され、令和2年1月17日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、令和2年5月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、令和2年8月19日に審判の請求がなされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1ないし5に係る発明は、令和2年1月17日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 プレイヤが同一区間をループをしてダンスプレイ可能なダンス装置であって、 プレイヤがダンスプレイする像であるプレイ像を映す位置に配置されたプレイ像観察鏡部と、 各ループの区間において、プレイヤがダンスプレイするプレイ動画を取得する撮像部と、 プレイヤが前記プレイ像観察鏡部に対向するように位置した状態の左右方向において前記プレイ像観察鏡部の左右の一方に配置され、このダンス装置でのプレイヤのプレイ動画を遅延させた動画である遅延動画をプレイヤが観察する遅延動画観察部と、 制御部とを備え、 前記制御部は、 各ループの区間における前記撮像部によるプレイ動画の取得開始時点と、遅延動画として前記撮像部が取得し前記遅延動画観察部による各ループの1つ前のループのプレイ動画の再生開始時点とを、同期させること、 を特徴とするダンス装置。」 第3 原査定の拒絶の理由 原査定の理由のうち、本願発明のサポート要件及び新規性に係る理由の概要は、次のとおりである。 1 理由1 (サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が以下の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 本願明細書[0002]〜[0004]段落等の記載からすると、プレイヤがダンスの上達の程度を確認できるダンス装置を提供することが、本願発明の課題と認められる。 そして、[0041]段落等の記載からわかるように、上記課題は、プレイヤが現在のプレイ像、手本動画、遅延動画を並べて観察できることにより、実現されるものである。 しかし、特許請求の範囲記載の発明は、プレイヤが現在のプレイ像、手本動画、遅延動画を並べて観察できるように構成されているものではなく、上記課題を解決するものとなっていない。 してみれば、本願発明は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。 2 理由2 (新規性)この出願は、原出願を適法に分割したものとはいえないので、出願日の遡及が認められず、この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内において、頒布された特開2016−174637号公報に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 第4 当審の判断 1 理由1(サポート要件)について (1)本願発明に係る特許請求の範囲の請求項1の記載と本願明細書の記載について ア 本願発明に係る特許請求の範囲の請求項1の記載について 本願発明に係る特許請求の範囲の請求項1の記載は、上記第2のとおりのものである。 イ 本願明細書及び図面の記載について 本願明細書及び図面の記載は、以下のとおりである(下線は当審で付した)。 (ア)「【背景技術】 【0002】 従来、ダンスの教習映像を見ながら演習者がダンスを練習するシステムがあった(例えば特許文献1)。 しかし、従来のシステムは、プレイヤがダンスの上達の程度を確認できるものではなかった。」 (イ)「【発明が解決しようとする課題】 【0004】 本発明の課題は、プレイヤがダンスの上達の程度を確認できるダンス装置を提供することである。」 (ウ)「【課題を解決するための手段】 ・・・ 【0006】 ・第1の発明は、プレイヤに対向配置され、ダンスプレイする像であるプレイ像をプレイヤが観察するプレイ像観察鏡部(10C,210)と、前記プレイ像観察鏡部の左右の一方に配置され、手本動画をプレイヤが観察する手本動画観察部(10R,210R)と、前記プレイ像観察鏡部の左右の他方に配置され、プレイヤのプレイ動画を遅延させた動画である遅延動画(80a)をプレイヤが観察する遅延動画観察部(10L,210L)と、制御部(90)とを備え、前記制御部は、前記手本動画観察部に、手本動画(70a)をループで再生し、前記遅延動画観察部に、遅延動画として1つ前のループのプレイ動画(80b)を、前記手本動画観察部の各ループの再生に同期して順次再生すること、を特徴とするダンス装置である。」 (エ)「【発明を実施するための形態】 【0009】 以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。 (第1実施形態) 図1は、第1実施形態のダンス装置1を右側X2から見た斜視図である。 図2は、第1実施形態のダンス装置1を上側Z2から見た図である。 なお、実施形態及び図面では、便宜上、プレイヤPが鏡部10に対向した状態を基準として、鉛直方向Z、前後方向Y、左右方向Xを定義する。 また、実施形態では、ダンスする人をプレイヤPといい、プレイヤPがダンスすることを適宜プレイという。 【0010】 ダンス装置1は、プレイヤPが自分の姿と、ループで再生される(つまり、繰り返して再生される)手本動画70a、自分の1ループ前の遅延動画80aとを、比較しながらダンスを練習する装置である。ダンス装置1は、十分に大きな部屋に配置されている。 実施形態では、鏡部10及びスクリーン20の間の長さが4mである。また、プレイヤPのプレイの基準位置PCは、鏡部10及びスクリーン20の中央部(つまり、鏡部10及びスクリーン20から2mの位置)である。なお、この形態は、一例であり、鏡部10及びスクリーン20の間の長さ、基準位置PC等は、適宜変更できる。ダンス装置1は、例えば、フィットネスクラブ、学校、アミューズメント施設等に配置されている。 【0011】 ダンス装置1は、操作部2、鏡部10、スクリーン20(後側表示部)、プロジェクタ25(手本動画表示部、遅延動画表示部)、撮像部40、位置検出部30C,30R,30Lを備える。 操作部2は、プレイヤPがプレイ開始前、プレイ中、終了後等に操作する入力装置である。操作部2は、複数のボタン等を備える。なお、操作部2は、実施形態ではプレイ中においてプレイヤPが足で操作できるように設置面に配置されているが、これに限定されず、支柱等に配置してもよい。 【0012】 鏡部10は、プレイヤPの前側Y1に配置されている。鏡部10は、プレイヤPがプレイヤPの全身、スクリーン20の動画を観察できる程度の大きさ(1辺が例えば2m以上)の長方形である。 鏡部10は、中央観察領域10C(プレイ像観察鏡部)、右観察領域10R(手本動画観察鏡部)、左観察領域10L(遅延動画観察鏡部)を備える。 鏡部10は、一枚の大型の鏡である。中央観察領域10C、右観察領域10R、左観察領域10Lは、一体の鏡のなかのうちのプレイヤPが観察する各領域である。 【0013】 中央観察領域10Cは、鏡部10の中央の領域である。中央観察領域10Cは、基準位置PCに位置するプレイヤPに対向配置されている。プレイヤPは、中央観察領域10Cにおいて、ダンスプレイする像であるプレイ像Paを観察する。 右観察領域10Rは、中央観察領域10Cの右側X2に配置されている。プレイヤPは、右観察領域10Rにおいて、手本動画70aを観察する。 左観察領域10Lは、中央観察領域10Cの左側X1に配置されている。プレイヤPは、左観察領域10Lにおいて、ダンスプレイの動画を遅延させた動画である遅延動画80aを観察する。」 (オ)「【0025】 図4は、第1実施形態のダンス装置1の処理のフローチャートである。 図5は、第1実施形態の1つ目の区間の処理開始時におけるダンスのプレイを説明する図である。 図6は、第1実施形態のダンスのプレイを説明する図である。 図5(A)、図6(A)は、スクリーン20及びプレイヤPを前側Y1から見た図ある。 図5(B)、図6(B)は、プレイヤPによる鏡部10で観察画像を説明する図である。 図7は、第1実施形態の手本動画70aの再生、プレイ動画80bの作成、遅延動画80aの再生を説明する図である。 【0026】 最初にステップS(以下「S」という)1において、プレイヤPが操作部2を操作することにより、制御部90が一連の処理を開始する。 S2において、制御部90は、手本動画記憶部70から1つの区間手本動画71,72,・・・を読み出す。制御部90は、例えば、プレイ開始時には、1つ目の区間手本動画71を読み出す。また、制御部90は、ダンス音楽をスピーカ45から出力する。 図5(A)に示すように、制御部90は、手本動画70aとして、読み出した区間手本動画71をプロジェクタ25からスクリーン20に投影する。この場合、制御部90は、右観察領域10Rで観察される手本動画70aのダンサがプレイ像Paよりも小さくなるように、手本動画70aを投影する。 図5(B)に示すように、この処理により、1つの区間手本動画71,72,・・・の開始時には、プレイヤPは、自分のプレイ像Paを鏡部10の中央観察領域10Cにおいて観察できる。また、プレイヤPは、スクリーン20に投影された1つ目の手本動画70aを、プレイ像Paよりも小さい態様で右観察領域10Rにおいて観察できる。 【0027】 また、制御部90は、撮像部40を制御して、動画の取得を開始する。制御部90は、撮像部40の撮像情報に基づいて、プレイヤPの正面からのプレイ動画80bを作成する。制御部90は、作成したプレイ動画80bを、プレイ動画記憶部80に記憶する。この場合、制御部90は、プレイ動画80bを、区間手本動画71,72,・・・に対応した区間プレイ動画81,82,・・・に記憶する。制御部90は、例えば、プレイ開始時には、プレイ動画81aを、1つ目の区間手本動画71に対応した区間プレイ動画81に記憶する。 【0028】 S3において、制御部90は、位置検出部30C,30R,30Lの出力に基づいて、プレイヤPが移動したか否かを判定する。制御部90は、プレイヤPが移動したと判定した場合には(S3:YES)、S20に進み、一方、プレイヤPが移動していないと判定した場合には(S3:NO)、S4に進む。 なお、S20に進む場合には、制御部90は、表示位置変更処理を行う。表示位置変更処理の詳細は、後述する。 【0029】 S4において、図6(A)に示すように、制御部90は、1つの区間の手本動画70aを再度再生する。つまり、制御部90は、S2で読み出した手本動画70aを再度再生する。 また、制御部90は、プレイ動画記憶部80から遅延動画80aを読み出して、手本動画70aと同期して再生する。遅延動画80aは、1回前の手本動画70aの再生時に取得して、プレイ動画記憶部80に記憶したプレイ動画80bである(図7参照)。 【0030】 図7に示すように、例えば、制御部90は、手本動画70aとして1つ目の区間手本動画71を2回目に再生するときには、この区間手本動画71を再度再生する。また、制御部90は、遅延動画80aとして、最初に取得したプレイ動画81aを再生する。そして、制御部90は、手本動画70a(つまり区間手本動画71)と、遅延動画80a(つまりプレイ動画81a)とを、同期して再生する。 この場合にも、制御部90は、右観察領域10Rの手本動画70a及び左観察領域10Lの遅延動画80aを、プレイ像Paよりも小さくする。 図6(B)に示すように、この処理により、プレイヤPは、鏡部10の中央観察領域10Cのプレイ像Pa、右観察領域10Rの手本動画70aに加えて、遅延動画80aをプレイ像Paよりも小さい態様で右観察領域10Rにおいて観察できる。 【0031】 S5において、制御部90は、プレイヤPによる操作部2の操作に基づいて、1つの区間のプレイを終了するかを判定する。なお、プレイヤPは、例えば、その区間のダンスを満足できる程度上達できたと判定した場合に、操作部2を操作すればよい。 制御部90は、1つの区間のプレイを終了すると判定した場合には(S5:YES)、S6に進み、一方、1つの区間のプレイを終了しないと判定した場合には(S5:NO)、S3からの処理を繰り返す。 【0032】 図7に示すように、繰り返されるS3からの処理によって、制御部90は、右観察領域10Rに、手本動画70aをループで再生する(矢印A70参照)。また、制御部90は、左観察領域10Lに、遅延動画80aとして1つ前のループのダンスプレイの動画を、右観察領域10Rの各ループの再生に同期して順次再生する(矢印A80参照)。 【0033】 これまでの処理により、プレイヤPは、自分がプレイするプレイ像Paを、鏡部10の中央観察領域10Cで観察でき、また、スクリーン20に投影された手本動画70aを、鏡部10の右観察領域10Rで観察できる。さらに、プレイヤPは、スクリーン20に投影された遅延動画80aを、鏡部10の左観察領域10Lで観察できる。 このため、プレイヤPは、現在のプレイ像Paと手本動画70aとを並べて見ることができるので、手本を見習いながら練習できる。また、プレイヤPは、現在のループでのプレイ像Paと遅延動画80aとを並べて見ることができるので、現在のループでのプレイが1つ前のループよりもどの程度上達したかを、確認しながら練習できる。 また、ダンス装置1では、遅延動画80a、現在のプレイ像Pa、手本動画70aを順に並べて観察できる。このため、ダンス装置1は、技量が低い形態から技量が高い順に変化するように観察できる。これにより、ダンス装置1は、これら3つの動画等を見やすく、かつ、分かりやすく、プレイヤPに観察させることができる。」 (カ)「【0041】 以上説明したように、本実施形態のダンス装置1は、プレイヤPが現在のプレイ像Pa、手本動画70a、遅延動画80aを並べて観察できる。このため、プレイヤPは、自分のダンスが、どの程度上達したかを、逐次確認しながらプレイすることができる。」 (2)検討 発明の詳細な説明には、従来のダンスの教習映像を見ながら演習者がダンスを練習するシステムは、プレイヤがダンスの上達の程度を確認できるものではなかったのに対し、プレイヤがダンスの上達の程度を確認できるダンス装置を提供するという課題(上記(2)の段落【0002】及び【0004】の記載を参照。)を解決するために、ダンス装置において、プレイヤがダンスプレイする像であるプレイ像をプレイヤが観察するプレイ像観察鏡部と、手本動画をプレイヤが観察する手本動画観察鏡部と、プレイヤのダンスプレイの動画を遅延させた動画である遅延動画を観察する遅延動画観察鏡部と、制御部とを備え、制御部が、手本動画観察部に、手本動画をループで再生し、遅延動画観察部に、遅延動画として1つ前のループのプレイ動画を、手本動画観察部の各ループの再生に同期して順次再生することで、プレイヤが現在のプレイ像、手本動画、遅延動画を並べて観察できるため、プレイヤは、自分のダンスが、どの程度上達したかを、逐次確認しながらプレイすることができることが発明として記載されている(上記(2)の段落【0006】、【0010】、【0012】、【0013】、【0026】、【0029】、【0030】、【0032】、【0033】及び【0041】の記載を参照。)。 他方、本願発明に係る請求項1に係る発明は、手本動画観察鏡部を備えないダンス装置が包含されるが、発明の詳細な説明に記載された本願発明の課題を解決するための手段を備えた実施例は、手本動画観察部を備えるものであり、手本動画観察部を備えないダンス装置が本願発明の課題を解決することは、記載も示唆もされていない。 なお、審判請求人は、審判請求書において、本願発明は、段落【0002】ないし【0004】等のように、プレイヤがダンスの上達の程度を確認できるダンス装置を提供することを、課題とし、このため、請求項1の発明は、プレイ像観察鏡部による各ループの現時点でのプレイ像と、遅延動画観察部による各ループの1つ前のループにおいて現時点に対応するプレイ動画とを並べて観察可能にすることにより、プレイヤが両者を比較可能にしており、ここで、ダンスの分野においては、表現者(プレイヤ)がダンスする場合には、手本にならうことに限定されず、手本をアレンジしたり、独自の表現をすることが、多くあり、また、表現者は、手本をほぼ覚えていたり、また、自分のイメージ通りに表現できているかを確認したいこともあることから、このため、現ループのプレイ像と、丁度1ループ前のプレイ画像とを比較可能とすることは、両者間におけるダンスの表現の良し悪しを判断したりするためには、十分に有効なことであり、『手本動画を要するプレイヤが、現在のプレイ像と遅延動画を並べて観察しても、いずれが、上手くプレイできているのか把握できないこと』にはならず、請求項1の発明は、上記課題に合致したものであり、さらに、請求項1の発明は、各ループの現時点において、1つ前のループにおいて現時点に対応するプレイ動画を出力できるような構成を特別に備えている旨主張する。 しかしながら、上述したように、発明の詳細な説明に記載された本願発明の課題を解決するための手段を備えた実施例は、手本動画観察部を備えるものであり、手本動画観察部を備えないダンス装置が本願発明の課題を解決することは、記載も示唆もされておらず、手本をアレンジしたり、独自の表現をしたり、表現者が手本をほぼ覚えていたり、自分のイメージ通りに表現できているかを確認したりする際に、現ループのプレイ像と、丁度1ループ前のプレイ画像とを比較可能とすることが、両者間におけるダンスの表現の良し悪しを判断するために十分に有効なことであるという主張は、明細書の記載に基づくものではないから、上記請求人の主張を採用することはできない。 したがって、本願発明は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。 2 理由2(新規性)について (1)分割要件について ア 原出願である特願2015−55183号の出願当初の明細書、特許請求の範囲及び図面の記載 原出願の出願当初の明細書及び図面の記載は、上記1(1)イの本願明細書及び図面の記載と同一である。また、原出願の出願当初の特許請求の範囲の記載は、以下のとおりである(下線は当審で付した。)。 「【請求項1】 プレイヤに対向配置され、ダンスプレイする像であるプレイ像をプレイヤが観察するプレイ像観察鏡部と、 前記プレイ像観察鏡部の左右の一方に配置され、手本動画をプレイヤが観察する手本動画観察部と、 前記プレイ像観察鏡部の左右の他方に配置され、プレイヤのプレイ動画を遅延させた動画である遅延動画をプレイヤが観察する遅延動画観察部と、 制御部とを備え、 前記制御部は、 前記手本動画観察部に、手本動画をループで再生し、 前記遅延動画観察部に、遅延動画として1つ前のループのプレイ動画を、前記手本動画観察部の各ループの再生に同期して順次再生すること、 を特徴とするダンス装置。 【請求項2】 請求項1に記載のダンス装置において、 前記プレイ像観察鏡部、前記手本動画観察部、前記遅延動画観察部は、一体の鏡部であり、 プレイヤの後側に配置された後側表示部と、 前記後側表示部のうち前記手本動画観察部に対向する領域に、手本動画を表示する手本動画表示部と、 前記後側表示部のうち前記遅延動画観察部に対向する領域に、遅延動画を表示する遅延動画表示部とを備えること、 を特徴とするダンス装置。 【請求項3】 請求項2に記載のダンス装置において、 プレイヤの位置を検出する位置検出部を備え、 前記制御部は、 前記位置検出部の出力に基づいて、プレイヤが基準位置よりも左右の一方側に移動したと判断した場合には、前記鏡部での中央に手本動画が観察されるように前記手本動画表示部を制御し、前記鏡部での中央よりも左右の他方側に遅延動画が観察されるように前記遅延動画表示部を制御すること、 を特徴とするダンス装置。 【請求項4】 請求項1から請求項3のいずれかに記載のダンス装置において、 前記制御部は、前記手本動画観察部の手本動画及び前記遅延動画観察部の遅延動画を、プレイ像よりも小さくすること、 を特徴とするダンス装置。」 イ 分割出願である本願の特許請求の範囲の記載 本願発明に係る特許請求の範囲の請求項1の記載は、上記第2のとおりのものである。 ウ 分割要件についての判断 特許法44条2項本文の規定により、新たな特許出願(以下「分割出願」という。)がもとの特許出願(以下「原出願」という。)の時にしたものとみなされる(以下「出願日の遡及」等と表現することがある。)ためには、分割出願の明細書、特許請求の範囲及び図面に記載された事項が、原出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲及び図面に記載された事項の範囲内であることが必要である。 そこで、分割出願である本願発明に係る請求項1に記載された事項が、原出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲及び図面に記載された事項の範囲内であるか否かについて検討するに、本願発明に係る請求項1は、手本動画観察鏡部を備えないダンス装置が包含されるが、原出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲及び図面には、手本動画観察鏡部を備えるダンス装置が記載されているのみであり、手本動画観察部を備えないダンス装置は記載も示唆もされておらず、また、原出願の出願時における技術常識を考慮しても、原出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲及び図面の記載から自明な事項ということもできない。 したがって、本願は、分割要件が満たされていないので、適法に分割出願されたものではなく、本願についての出願日の遡及は認められないから、本願の出願日は、現実に出願がなされた平成31年1月23日であると認められる。 (2)引用文献の記載 原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に日本国内において頒布された特開2016−174637号公報(以下「引用文献」という。)は、原出願の公開特許公報であって、上記1(1)イの本願明細書及び図面の記載と同一である。 (認定事項) 引用文献において、制御部が、遅延動画として1つ前のループのダンスプレイの動画を、各ループの区間手本動画の再生に同期して順次再生する(【0030】及び【0032】参照。)ためには、制御部が、撮像部を制御して動画の取得を開始する(【0027】参照。)際に、各ループの区間における撮像部によるプレイヤのダンスプレイする動画の取得開始時点と、遅延動画として撮像部が取得し遅延動画観察部による各ループの1つ前のループのプレイヤのダンスプレイする動画の再生開始時点とを、同期させる必要があることは技術的にみて明らかであり、このことは、図7において、撮像部により取得されるプレイヤのダンスプレイする動画であるプレイ動画80bの欄の各ループのプレイ動画81b、81c、81d及び81eのそれぞれの取得開始時点を示す各左側端部と、遅延動画80aの欄の各ループの遅延動画81a、81b、81c及び81dのそれぞれの再生開始時点を示す各左側端部とが、時間軸において一致していることからも明らかである。 そうすると、これらの記載事項及び認定事項から、引用文献には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「プレイヤに対向配置され、ダンスプレイする像であるプレイ像をプレイヤが観察するプレイ像観察鏡部と、 前記プレイ像観察鏡部の左右の一方に配置され、手本動画をプレイヤが観察する手本動画観察部と、 各区間で、1つの区間手本動画がループして、繰り返し再生され、各ループにおいてプレイヤがダンスプレイする動画を取得する撮像部と、 前記プレイ像観察鏡部の左右の他方に配置され、プレイヤのダンスプレイする動画を遅延させた動画である遅延動画をプレイヤが観察する遅延動画観察部と、 制御部とを備え、 前記制御部は、前記手本動画観察部に、手本動画をループで再生し、前記遅延動画観察部に、遅延動画として1つ前のループのプレイヤのダンスプレイする動画を、前記手本動画観察部の各ループの再生に同期して順次再生するとともに、各ループの区間における前記撮像部によるプレイヤのダンスプレイする動画の取得開始時点と、遅延動画として前記撮像部が取得し前記遅延動画観察部による各ループの1つ前のループのプレイヤのダンスプレイする動画の再生開始時点とを、同期させるダンス装置。」 (3)対比・判断 本願発明と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「ダンス装置」は、「各区間で、1つの区間手本動画がループして、繰り返し再生され、各ループにおいてプレイヤがダンスプレイする」ものであることから、「プレイヤ」が同一の「区間」を「ループ」をして「ダンスプレイ」可能なものといえるから、本願発明の「プレイヤが同一区間をループをしてダンスプレイ可能なダンス装置」に相当する。 イ 引用発明の「プレイ像観察鏡部」は、「プレイヤに対向配置され、ダンスプレイする像であるプレイ像をプレイヤが観察する」ものであることから、「プレイヤ」が「ダンスプレイする像であるプレイ像」を移す位置に配置されたものであることは明らかであることから、本願発明の「プレイヤがダンスプレイする像であるプレイ像を映す位置に配置されたプレイ像観察鏡部」に相当する。 ウ 引用発明の「撮像部」は、「各区間で、1つの区間手本動画がループして、繰り返し再生され、各ループにおいてプレイヤがダンスプレイする動画を取得する」ものであることから、「各ループ」の「区間」において「プレイヤがダンスプレイする動画を取得する」ものといえ、本願発明の「各ループの区間において、プレイヤがダンスプレイするプレイ動画を取得する撮像部」に相当する。 エ 引用発明の「遅延動画観察部」は、「プレイヤに対向配置され」た「プレイ像観察鏡部の左右の他方に配置され、プレイヤのダンスプレイする動画を遅延させた動画である遅延動画をプレイヤが観察する」ものであることから、本願発明の「プレイヤが前記プレイ像観察鏡部に対向するように位置した状態の左右方向において前記プレイ像観察鏡部の左右の一方に配置され、このダンス装置でのプレイヤのプレイ動画を遅延させた動画である遅延動画をプレイヤが観察する遅延動画観察部」に相当する。 オ 引用発明の「制御部」は、本願発明の「制御部」に相当する。 カ 引用発明の「前記制御部」が「各ループの区間における前記撮像部によるプレイヤのダンスプレイする動画の取得開始時点と、遅延動画として前記撮像部が取得し前記遅延動画観察部による各ループの1つ前のループのプレイヤのダンスプレイする動画の再生開始時点とを、同期させる」ことは、本願発明の「前記制御部」が「各ループの区間における前記撮像部によるプレイ動画の取得開始時点と、遅延動画として前記撮像部が取得し前記遅延動画観察部による各ループの1つ前のループのプレイ動画の再生開始時点とを、同期させる」ことに相当する。 してみると、本願発明と引用発明との間に相違点はない。 請求人は、審判請求書において、本願発明は、サポート要件を満たすので、本願は、原出願を適法に分割したものであるから出願日が遡及し、引用文献は、本願の引用文献の対象にはならず、本願発明は、新規性を有する旨、主張する。 しかしながら、上記(1)で述べたように、本願は、分割要件が満たされていないので、適法に分割出願されたものではなく、本願についての出願日の遡及は認めらず、本願の出願日は、現実に出願がなされた平成31年1月23日であると認められるから、請求人の主張は採用できない。 したがって、本願は、原出願を適法に分割したものとはいえないので、出願日の遡及が認められず、本願発明は、引用文献に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができないものであり、また、本願は、原出願を適法に分割したものとはいえないので、出願日の遡及が認められず、本願発明は、引用文献に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。 したがって、その余の請求項については検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。 |
審理終結日 | 2021-10-13 |
結審通知日 | 2021-10-19 |
審決日 | 2021-11-02 |
出願番号 | P2019-008983 |
審決分類 |
P
1
8・
537-
Z
(A63B)
P 1 8・ 113- Z (A63B) |
最終処分 | 02 不成立 |
特許庁審判長 |
藤本 義仁 |
特許庁審判官 |
藤田 年彦 吉村 尚 |
発明の名称 | ダンス装置 |
代理人 | 特許業務法人平和国際特許事務所 |