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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 B42B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B42B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B42B
管理番号 1380435
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-09-02 
確定日 2021-11-18 
事件の表示 特願2016−109564「歯部」拒絶査定不服審判事件〔平成29年12月 7日出願公開、特開2017−213787〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年5月31日に出願したものであって、令和2年1月9日付けで拒絶理由が通知され、同年3月23日に意見書及び手続補正書が提出され、同年5月19日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、これに対し、同年9月2日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出されたものである。


第2 令和2年9月2日に提出された手続補正書による補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
令和2年9月2日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲について、下記(1)に示す本件補正前の(すなわち、令和2年3月23日に提出された手続補正書により補正された)特許請求の範囲の請求項2を、下記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1へと補正することを含むものである。(下線は当審決で付した。以下同じ。)
(1)本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】
互いに近接させたときに噛み合うように配置された複数の凸部を有する一対の歯部であって、
前記一対の歯部のうちの一方の歯部の凸部は、前記一対の歯部を噛み合わせたとき、他方の歯部の凸部と対向する対向面を有し、
前記他方の歯部の凸部は、前記一対の歯部を噛み合わせたとき、前記一方の歯部の凸部と対向する対向面を有し、
前記一方の歯部の凸部の対向面は、前記一対の歯部を噛み合わせたとき、前記他方の歯部の凸部の対向面と当接する当接面と、前記他方の歯部の凸部の対向面と当接しない非当接面とを有する
ことを特徴とする歯部。
【請求項2】
前記一方の歯部の凸部は、前記対向面の一端側から屈曲し、凸方向に沿う面として構成される端面と、前記端面と前記対向面との境界部に設けられる第1の稜線部とを有し、
前記非当接面は、前記当接面と前記第1の稜線部との間に設けられる
ことを特徴とする請求項1に記載の歯部。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】
互いに近接させたときに噛み合うように配置された複数の凸部を有する一対の歯部であって、
前記一対の歯部のうちの一方の歯部の凸部と他方の歯部の凸部は、それぞれ、側面部と、前記側面部の一端側から屈曲し、凸方向に沿う面として構成される前面部と、前記側面部と前記前面部との境界部に設けられる第1の稜線部とを有し、
前記一方の歯部の凸部の前記側面部は、前記一対の歯部を用紙を挟んで噛み合わせたとき、前記用紙を介して前記他方の歯部の凸部の側面部と対向し、
前記一方の歯部の凸部の前記側面部は、前記一対の歯部を前記用紙が無い状態で噛み合わせたとき、前記他方の歯部の凸部の側面部と当接する当接面と、前記当接面と前記第1の稜線部との間に設けられ、前記他方の歯部の凸部の側面部と当接しない非当接面とを有する
ことを特徴とする歯部。」

2 本件補正の適否について
本件補正により、補正前の請求項2の発明特定事項である「歯部」の構成要素である「対向面」及び「端面」について、それぞれ、「側面部」及び「前面部」と、位置を限定する補正を行うものである。
また、上記のとおり、「対向面」を「側面部」と限定した上で、補正前の請求項2の発明特定事項である「他方の歯部の凸部」について、「側面部と、前記側面部の一端側から屈曲し、凸方向に沿う面として構成される前面部と、前記側面部と前記前面部との境界部に設けられる第1の稜線部とを有し」との限定を付加し、また、「前記一方の歯部の凸部の前記側面部」について、「前記一対の歯部を『用紙を挟んで』噛み合わせたとき、『前記用紙を介して』前記他方の歯部の凸部の側面部と対向し」及び「前記一対の歯部を『前記用紙が無い状態で』噛み合わせたとき、前記他方の歯部の凸部の側面部と当接する当接面と、前記当接面と前記第1の稜線部との間に設けられ、前記他方の歯部の凸部の側面部と当接しない非当接面とを有する」との限定を付加するものである。
そして、補正前の請求項2に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
そうすると、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
また、本件補正は、本願の願書の最初に添付した明細書の
「【0060】
図16〜図18に示すように、下歯260は、細長の直方体形状からなる基台261と、基台261上に形成された複数の凸部の一例としての歯部262とを備えている。歯部262は、細長の凸条体であって、例えばSK材(炭素工具鋼)やSUS材等の金属材料からなる。歯部262は、他方の歯部の凸部と対向する対向面の一例としての側面部263と、凸方向に沿う面として構成される端面の一例としての端面部である前面部266Aと、頂面部268と、傾斜面部269とを有している。前面部266Aと側面部263との境界部には、第1の稜線部267aが設けられている。前面部266Aと傾斜面部269との境界部には、第2の稜線部267bが設けられている。傾斜面部269と側面部263との境界部には、第3の稜線部267cが設けられている。第1の稜線部267a、第2の稜線部267bおよび第3の稜線部267cのそれぞれは、例えば丸みを有する曲面である。
【0061】
側面部263は、対をなす上歯270が噛み合わされた際に上歯270の側面部に対向する面であって、上歯270との間に用紙Pを挟んで圧着することにより用紙同士を結合させる機能を有している。側面部263は、当接面部264と、非当接面部265とを有している。
【0062】
当接面部264は、頂面部268に連続する面であると共に、用紙Pがない状態で上歯270が噛み合わされた際に上歯270の対向する当接面部274と当接(接触)する面である。
【0063】
非当接面部265は、当接面部264に連続する面であって、当接面部264と第1の稜線部267aとの間に設けられている。非当接面部265は、用紙Pが無い状態で上歯270が噛み合わされた際に、上歯270の対向する側面部との間に隙間を有する(上歯270の側面部に当接しない)面である。なお、非当接面部265は、当接面部264よりも弱いが用紙束を圧着する機能を有している。また、下歯260の非当接面部265は、図18に示すように、上歯270が噛み合わされた際における上歯270の非当接面部275(側面部273)との距離が、端面部の一例としての前面部266A側(前方)に向かうに従って大きくなっている。この非当接面部265を設けることで、第1の稜線部267a、第2の稜線部267bおよび第3の稜線部267cでの用紙の局所的な伸びを緩和することができる。なお、本実施の形態では、非当接面部265を角度の異なる2面で構成しているが、1面で構成しても良いし、3面以上で構成しても良い。」
及び図面の
「【図15】



「【図18】



の記載に基づいており、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。

3 独立特許要件について
本件補正の目的が、特許請求の範囲の減縮を目的としているので、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本願補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記「1(2)本件補正後の特許請求の範囲」の【請求項1】に記載したとおりのものと認める。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由において引用された特開2014−121865号公報には、図面とともに、次の事項が記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙処理装置および画像形成システムに関し、さらに詳しくは、画像形成後の用紙を対象とした綴じ処理機構に関する。」
イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の綴じ処理構造においては、凹凸の歯型頂面の構造として、直線を交差させた稜線が角に形成されて、いわゆる、角がエッジ状をなしている。このため、綴じ処理の際に歯型同士を噛み合わせると、紙の繊維が破断されてしまい、綴じ力が低下するという問題があった。
【0005】
一方、特許文献2には、エンボス加工に用いる突出部頂面の構造として、角に丸みを付けた稜線を形成することが開示されている。
しかし、この構成は、丸みを1つ以上の直線または不規則切断線により取り去られた角部縁部により丸みが付いた弧状の角形状であり、この形状によりテッシュペーパーなどの製品湿潤破裂強度を向上させるためのものである。
【0006】
ところで、深絞りによる綴じ処理では、凹凸面の角部を折り曲げてその部分に永久歪みを生じさせることで形状復元性をなくすことが、綴じられた紙同士をばらけさせないようにさせる条件の一つとなるといえる。
この観点からすると、特許文献2の構成では、製品湿潤破裂強度がエンボス高さに影響される点に着目しているだけであり、綴じられた用紙同士が形状復元しないようにして綴じ強度を低下させないようにする点に関しての検討はなされていない。
【0007】
本発明の目的は、上記従来の用紙処理装置における問題に鑑み、凹凸状に深絞りすることにより用紙同士を綴じる際に用紙の繊維破断を生じさせないで綴じ処理が可能な構成を備えた用紙処理装置を提供することにある。

【図面の簡単な説明】
【0010】

【図24】歯型の別例である第1の変形例を説明するための斜視図である。

【図26】本発明に係る用紙処理装置に用いる綴じ具の凹凸形状の圧着歯の第1の変形例を示す図である。

【図29】図26に示した構成の歯を有する上圧着歯と下圧着歯を噛み合わせた状態を示す図である。」
ウ 「【0051】
次に、歯型部の変形例について説明する。
以下に挙げる変形例では、上述したように歯型部の端部の一部を丸み形状とすることに加えて、面取りすることにより用紙の皺あるいは破れを防止できるダメージ軽減部として用いられることを前置きしておく。
【0052】
図24は下圧着歯311の構成を拡大して示す斜視図である。なお以下の実施形態の説明では、主に圧着歯として下凹凸歯311について示し、説明するが、上凹凸歯310についても同様である。
図中、符号301は歯面、符号302は側面、符号303は符号306で示す土台から歯10a(当審決注:「歯310a」の誤記と認める。)、11a(当審決注:「歯311a」の誤記と認める。)先端を結ぶ辺、符号4(当審決注:「304」の誤記と認める。以下同様。)は歯310a、311aの歯先の端部、符号305は歯先の歯面の底部に相当する歯元部である。土台306は、歯元部305が一体化されている部分である。
【0053】
上凹凸歯10、下凹凸歯11を用いて用紙束PBを挟みこむときには、歯310a、311aの歯先の端部4が用紙束PBに触れ、さらに挟み込んだときには歯面301が用紙束PBの表面に当接する。」
エ 「【0055】
<圧着歯の第1の変形例>
図26は、圧着歯の第1変形例を示す図である。
この例の下凹凸歯311は、土台306から歯311aの歯先の端部304を結ぶ辺3(当審決注:「辺303」の誤記と認める。)と歯先の端部304にダメージ軽減部として図示のように丸みがつけてある。これにより、歯先の端部304に当接する用紙束PBに傷や破れが生じるのを防止し、また、上凹凸歯310と下凹凸歯311に挟んだ用紙束PBに撓みシワが発生することも防止できる。すなわち用紙束PBの綴じ力を安定させることができることがわかる。
これは下凹凸歯311の土台306から歯先の端部304を結ぶ辺303に用紙へのダメージを軽減するために丸みをつけることが理由である。
つまり、用紙束PBが上凹凸歯310や下凹凸歯311の歯310a、311aに接触している力が大きな箇所から、用紙が接していない箇所への急激な圧力変化が緩和される。そして、歯310a、311aの歯先の端部304が当接する用紙に傷や破れ、シワの発生を防止し、また圧着歯10、11で挟んだ用紙束PBが撓んでシワが発生するのを防止することができる。
なお、所定の部位に丸み付けをすることに代えて、ダメージ軽減部として面取りを施した部位を設けてもよい。またダメージ軽減部は、辺303の少なくとも1箇所に、綴じる対象となる用紙または用紙束PBへのダメージを軽減させるために設ければよく、本実施形態並びに以下に説明する実施形態の配置態様、設置態様には限定されない。」
オ 「【0058】
<圧着歯の噛み合わせ状態>
図29は図26に示した構成の歯を有する上凹凸歯310と下凹凸歯311を噛み合わせた状態を示す図である。土台306から歯310a、311aの歯先の端部304を結ぶ辺303が用紙束PBを押す力は歯先の端部304側で大きく、土台306に近い側では小さい。」
カ 「【図24】


キ 「【図26】


ク 「【図29】


ケ 上記イ及びウより、図24は歯形の変形例を示し、上記エより、図26は圧着歯の第1変形例を示しているところ、図24及び図26から辺303が稜線をなしていることが看取できるから、両者は、稜線をなす辺303、端部304を有する下凹凸歯311を有する点で共通し、下凹凸歯311を構成する面に301及び302の符番が図示されている点でも共通するところからすると、第1変形例の圧着歯の下凹凸歯311は、変形例の下凹凸歯311と同様に、歯面301、側面302、歯面301と側面302との境界であって土台306から歯310a、311a先端を結ぶ辺303、複数の歯310a、311aの歯先の端部304とを有するものと認める。
コ 上記ウより、図24に示される変形例が、同様の構成である上凹凸歯310及び下凹凸歯311からなる歯形であること、上記オの記載、及び図29に照らせば、図26に示された第1変形例である圧着歯は、互いに近接させたときに噛み合うように配置された複数の歯310a、311aを有し、一対の上凹凸歯310と下凹凸歯311からなる圧着歯であって、上凹凸歯310は下凹凸歯311と同じ構成のものであると認める。
サ 上記ウより、図24に示される変形例の歯形が、上凹凸歯310及び下凹凸歯311を用いて用紙束PBを挟みこむものであることからすると、図26に示される第1変形例である圧着歯も同様に、用紙束PBを挟みこむときには、上凹凸歯310の歯310aの歯先の端部304、及び下凹凸歯311の歯311aの歯先の端部304が、用紙束PBに触れ、さらに挟み込んだときには歯面301が用紙束PBの表面に当接するものと認められ、図29からすれば、噛み合わせたときには側面302同士は当接しないものと認められる。
シ 図26及び図29より、側面302は、土台306から端部304に亘る面であることが看取できる。
ス 上記エより、稜線をなす辺303は丸みがつけられていることからすると、稜線をなす辺303は、側面302との境界である第1稜線部、歯面301との境界である第2稜線部、及び丸みがついた面からなるものと認められる。

そうすると、上記ア乃至クの記載事項及び上記ケ乃至スの認定事項より、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「一対の上凹凸歯310と下凹凸歯311からなる圧着歯であって、
一対の上凹凸歯310と下凹凸歯311は、歯面301、土台306から端部304に亘る面である側面302、歯面301と側面302との境界であって土台306から歯310a、311a先端を結ぶ稜線をなす辺303、互いに近接させたときに噛み合うように配置された複数の歯310a、311aの歯先の端部304とを有し、
下凹凸歯311の土台306から歯先の端部304を結ぶ稜線をなす辺303には、用紙へのダメージを軽減するために丸みがつけられ、側面302との境界である第1稜線部、歯面301との境界である第2稜線部、及び丸みがついた面からなり、
用紙束PBを挟みこむときには、上凹凸歯310の歯310aの歯先の端部304、及び下凹凸歯311の歯311aの歯先の端部304が、用紙束PBに触れ、さらに挟み込んだときには歯面301が用紙束PBの表面に当接し、噛み合わせたときには側面302同士は当接しない、
圧着歯。」

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、
ア 後者の「複数の歯310a、311a」、「一対の上凹凸歯310と下凹凸歯311からなる圧着歯」、「側面302」は、それぞれ前者の「凸部」、「一対の歯部」、「前面部」に相当する。
イ 後者の「複数の歯310a、311a」は、互いに近接させたときに噛み合うように配置されたものであるから、前者の「複数の凸部」と後者の「複数の歯310a、311a」とは、互いに近接させたときに噛み合うように配置されたものである点で一致する。
ウ 後者の「側面302」は、土台306から端部304に亘る面であるから、前者の「前面部」と後者の「側面302」とは、凸方向に沿う面として構成されるとの概念で一致する。
エ 後者の「辺303」は、側面302との境界である第1稜線部、歯面301との境界である第2稜線部、及び丸みがついた面からなり、歯面301側から見れば、第2稜線部及び丸みがついた面も見えることは明らかであるから、後者の「歯面301」、及び「辺303」における「第2稜線部」及び「丸みがついた面」は、前者の「側面部」に相当する。
オ 後者の「辺303」における「第1稜線部」は、側面302と丸みがついた面との境界であるから、
前者の「第1の稜線部」に相当する。
カ 後者の「一対の上凹凸歯310と下凹凸歯311からなる圧着歯」は、用紙束PBを挟みこむときには、歯面301が用紙束PBの表面に当接するのであるから、一対の上凹凸歯310の歯面301と下凹凸歯311の歯面301とが用紙が無い状態で噛み合わせたとき、当接することは明らかである。
キ 後者の「辺303」における「丸みがついた面」は、側面302と歯面301との間にあって、噛み合わせたときには側面302同士は当接しないものからすると、「丸みがついた面」も、噛み合わせたときには、他方の歯部の丸みがついた面と当接しないことは明らかであるから、後者の「辺303」における「丸みがついた面」は、前者の「当接面と第1の稜線部との間に設けられ、他方の歯部の凸部の側面部と当接しない非当接面」に相当する。

したがって、両者は、
「互いに近接させたときに噛み合うように配置された複数の凸部を有する一対の歯部であって、
前記一対の歯部のうちの一方の歯部の凸部と他方の歯部の凸部は、それぞれ、側面部と、前記側面部の一端側から屈曲し、凸方向に沿う面として構成される前面部と、前記側面部と前記前面部との境界部に設けられる第1の稜線部とを有し、
前記一方の歯部の凸部の前記側面部は、前記一対の歯部を用紙を挟んで噛み合わせたとき、前記用紙を介して前記他方の歯部の凸部の側面部と対向し、
前記一方の歯部の凸部の前記側面部は、前記一対の歯部を前記用紙が無い状態で噛み合わせたとき、前記他方の歯部の凸部の側面部と当接する当接面と、前記当接面と前記第1の稜線部との間に設けられ、前記他方の歯部の凸部の側面部と当接しない非当接面とを有する
歯部。」
の点で一致し、本願補正発明の発明特定事項は、すべて引用発明が備えているから、本願補正発明と、引用発明とに差異はない。

請求人は、「引用文献1に記載の「歯面301」は本願発明の「側面部」に相当し、引用文献1に記載の「側面302」は本願発明の「前面部」に相当し、引用文献1に記載の「辺303」は本願発明の「第1の稜線部」に相当します。」
と主張する。
しかし、上記のとおり、稜線をなす辺303が丸みがつけられたものであることからすると、辺303は、側面302との境界である第1稜線部、歯面301との境界である第2稜線部、及び丸みがついた面からなるものと、当然、解さざるを得ない。
よって、請求人の主張は採用できない。

したがって、本願補正発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない発明であって、特許出願の際、独立して特許を受けることが出来ないものであるから、本件補正は,特許法第17条の2第6項の規定に違反してされたものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項2に係る発明は、令和2年3月23日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項2に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
互いに近接させたときに噛み合うように配置された複数の凸部を有する一対の歯部であって、
前記一対の歯部のうちの一方の歯部の凸部は、前記一対の歯部を噛み合わせたとき、他方の歯部の凸部と対向する対向面を有し、
前記他方の歯部の凸部は、前記一対の歯部を噛み合わせたとき、前記一方の歯部の凸部と対向する対向面を有し、
前記一方の歯部の凸部の対向面は、前記一対の歯部を噛み合わせたとき、前記他方の歯部の凸部の対向面と当接する当接面と、前記他方の歯部の凸部の対向面と当接しない非当接面とを有する
ことを特徴とする歯部。
【請求項2】
前記一方の歯部の凸部は、前記対向面の一端側から屈曲し、凸方向に沿う面として構成される端面と、前記端面と前記対向面との境界部に設けられる第1の稜線部とを有し、
前記非当接面は、前記当接面と前記第1の稜線部との間に設けられる
ことを特徴とする請求項1に記載の歯部。」(以下「本願発明」という。)

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物(特開2014−121865号公報)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、という理由を含むものである。

3 引用例
原査定の拒絶の理由である令和2年1月9日付けの拒絶理由通知に引用された引用例(特開2014−121865号公報)、及び、その記載内容は上記「第2 3(2)引用例」に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、実質的に、本願補正発明の「側面部」及び「前面部」を、それぞれ、「対向面」及び「端面」とし、「用紙を挟んで」、「前記用紙を介して」及び「前記用紙が無い状態で」との限定を省くものである。

そうすると、本願発明と引用発明とを対比すると、上記「第2 3(3)対比」での検討を勘案すると、両者は、
「互いに近接させたときに噛み合うように配置された複数の凸部を有する一対の歯部であって、
前記一対の歯部のうちの一方の歯部の凸部は、前記一対の歯部を噛み合わせたとき、他方の歯部の凸部と対向する対向面を有し、
前記他方の歯部の凸部は、前記一対の歯部を噛み合わせたとき、前記一方の歯部の凸部と対向する対向面を有し、
前記一方の歯部の凸部の対向面は、前記一対の歯部を噛み合わせたとき、前記他方の歯部の凸部の対向面と当接する当接面と、前記他方の歯部の凸部の対向面と当接しない非当接面とを有し、
前記一方の歯部の凸部は、前記対向面の一端側から屈曲し、凸方向に沿う面として構成される端面と、前記端面と前記対向面との境界部に設けられる第1の稜線部とを有し、
前記非当接面は、前記当接面と前記第1の稜線部との間に設けられる
歯部。」
の点で一致し、本願発明の発明特定事項は、すべて引用発明が備えていから、本願発明と、引用発明とに差異はない。

したがって、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。


5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。

したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2021-09-01 
結審通知日 2021-09-07 
審決日 2021-09-28 
出願番号 P2016-109564
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B42B)
P 1 8・ 113- Z (B42B)
P 1 8・ 575- Z (B42B)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 吉村 尚
特許庁審判官 藤本 義仁
古川 直樹
発明の名称 歯部  
代理人 特許業務法人山口国際特許事務所  

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