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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 B25J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B25J
管理番号 1380455
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-09-14 
確定日 2021-11-17 
事件の表示 特願2018−567744「間隔を置いて配置された上腕部と交互に配置されたリストとを含むデュアルロボット、及びこれらを含むシステム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年1月4日国際公開、WO2018/005046、令和1年8月8日国内公表、特表2019−521869〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2017年(平成29年)6月9日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2016年6月28日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和2年1月14日付け:拒絶理由通知書
令和2年4月20日 :意見書、誤訳訂正書の提出
令和2年4月28日付け:拒絶査定
令和2年9月14日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和3年1月29日 :上申書の提出

第2 令和2年9月14日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年9月14日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「【請求項1】
ロボットであって、
肩軸の周りで回転可能な第1の上腕部と、
前記第1の上腕部から垂直に間隔を置いて配置され、前記肩軸の周りで回転可能な第2の上腕部と、
前記第1の上腕部と前記第2の上腕部との間に垂直に位置する第1の前腕部であって、前記肩軸からオフセットされた位置にある第2の軸の周りで前記第1の上腕部に対して回転するように適合された第1の前腕部と、
前記第1の上腕部と前記第2の上腕部との間に垂直に位置する第2の前腕部であって、前記肩軸からオフセットされた位置にある第3の軸の周りで前記第2の上腕部に対して回転するように適合された第2の前腕部と、
前記第1の上腕部と前記第2の上腕部との間に垂直に位置する第1のリスト部材であって、前記第2の軸からオフセットされた位置にある第4の軸の周りで前記第1の前腕部に対して回転するように適合された第1のリスト部材と、
前記第1の上腕部と前記第2の上腕部との間に垂直に位置する第2のリスト部材であって、前記第3の軸からオフセットされた位置にある第5の軸の周りで前記第2の前腕部に対して回転するように適合された第2のリスト部材と、
前記第1の上腕部に、また第1のカム面に剛連結された第1の前腕部シャフトと、
前記第1のリスト部材に結合された第2のカム面であって、前記第1と前記第2のカム面は楕円形であり、前記第1のカム面の第1の最大半径が前記第2のカム面の第2の最大半径に垂直になるように配向される、第2のカム面と、
前記第1のカム面と前記第2のカム面との間に連結された第1のベルトと、
を備え、
前記第1と前記第2のカム面が、前記第1のリスト部材が、前記第1の前腕部に対して非線形の回転速度で回転するのを可能にする、ロボット。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和2年4月20日にされた誤訳訂正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
ロボットであって、
肩軸の周りで回転可能な第1の上腕部と、
前記第1の上腕部から垂直に間隔を置いて配置され、前記肩軸の周りで回転可能な第2の上腕部と、
前記第1の上腕部と前記第2の上腕部との間に垂直に位置する第1の前腕部であって、前記肩軸からオフセットされた位置にある第2の軸の周りで前記第1の上腕部に対して回転するように適合された第1の前腕部と、
前記第1の上腕部と前記第2の上腕部との間に垂直に位置する第2の前腕部であって、前記肩軸からオフセットされた位置にある第3の軸の周りで前記第2の上腕部に対して回転するように適合された第2の前腕部と、
前記第1の上腕部と前記第2の上腕部との間に垂直に位置する第1のリスト部材であって、前記第2の軸からオフセットされた位置にある第4の軸の周りで前記第1の前腕部に対して回転するように適合された第1のリスト部材と、
前記第1の上腕部と前記第2の上腕部との間に垂直に位置する第2のリスト部材であって、前記第3の軸からオフセットされた位置にある第5の軸の周りで前記第2の前腕部に対して回転するように適合された第2のリスト部材と
を備え、
前記第1のリスト部材が、前記第1の前腕部に対して非線形の回転速度で回転するように構成されている、ロボット。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「前記第1のリスト部材が、前記第1の前腕部に対して非線形の回転速度で回転するように構成されている」の内容について、上記のとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特表2016−505219号公報(平成28年2月18日国内公表。以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(下線は、当審で付した。)

「【技術分野】
【0001】
開示される実施形態は、不等リンク長を有するアームを有するロボットに関し、より詳細には、1枚以上の基板を各々支持する、不等リンク長を有する1本以上のアームを有するロボットに関する。」

「【背景技術】
【0002】
半導体、LED、太陽光、MEMSまたはその他のデバイスの製造に関連付けられるものなどの用途のための真空、大気および制御環境処理は、基板、および基板に関連付けられる運搬台を保管場所、処理場所またはその他の場所へ、またはそこから搬送するために、ロボット技術および他の形態のオートメーションを利用する。基板のこのような搬送は、1枚以上の基板を搬送する単一のアームを用いて、または1枚以上の基板を各々搬送する複数のアームを用いて、個々の基板、基板の集団を動かしてもよい。製造の多くは、例えば、半導体製造に関連付けられるもののように、設置面積および容積が重要である清浄または真空環境内で行われる。さらに、自動搬送の多くは、搬送時間の最小化によってサイクル時間の短縮ならびに関連設備のスループットおよび利用率の増大がもたらされる場合に実施される。したがって、所与の範囲の搬送用途のために必要な設置面積および作業空間容積が最小限に抑えられ、搬送時間が最小限に抑えられる基板搬送オートメーションを提供することが望まれている。」

「【0011】
図2Aおよび図2Bを同様に参照すると、図1Aおよび図1Bに示されるアーム14の個々のリンクを駆動するために用いられる内部機構を示すシステム10の部分概略上面図および側面図がそれぞれ示されている。駆動装置12は、ハウジング60に結合され、第1および第2のシャフト62、64をそれぞれ駆動する、対応する第1および第2のエンコーダ56、58を有する第1および第2のモータ52、54を有する。ここで、シャフト62はプーリ66に結合されてもよく、シャフト64は上腕16に結合されてもよく、シャフト62、64は同心状であるか、または別様に配設されてもよい。代替的な態様では、任意の好適な駆動装置が提供されてもよい。ハウジング60はチャンバ68と連通していてもよく、蛇腹70、チャンバ68、およびハウジング60の内部部分は真空環境72を大気環境74から隔離する。ハウジング60は可動台としてスライド76上をz方向にスライドしてもよく、ハウジング60、およびそこに結合されたアーム14をz(80)方向に選択的に動かすために、親ねじまたはその他の好適な垂直もしくは線形z駆動装置78が提供されてもよい。図示されている実施形態では、上腕16はモータ54によって中心回転軸18の周りに駆動される。同様に、前腕は、モータ52によって、従来の円形プーリおよびバンド等のプーリ66、82およびバンド84、86を有するバンド駆動装置を通じて駆動される。代替的な態様では、前腕20を上腕16に対して駆動するための任意の好適な構造が提供されてもよい。プーリ66および82の間の比は1:1、2:1または任意の好適な比であってもよい。エンドエフェクタを有する第3のリンク24は、リンク16に対して接地されるプーリ88、エンドエフェクタもしくは第3のリンク24に対して接地されるプーリ90、ならびにプーリ88およびプーリ90を束縛するバンド92、94を有するバンド駆動装置によって束縛されてもよい。説明されるように、第3のリンク24が、アーム14の伸長および収縮の間に回転を伴うことなく半径方向経路をたどるために、プーリ88、90の間の比は一定でなくてもよい。これは、プーリ88、90は、2つの非円形プーリ等の、1つ以上の非円形プーリであってもよい場合、またはプーリ88、90の一方は円形であり、他方は非円形であってもよい場合に達成されてもよい。代替的に、第3のリンクまたはエンドエフェクタ24の経路を説明されているように束縛するために、任意の好適な連結装置またはリンケージが提供されてもよい。図示されている実施形態では、少なくとも1つの非円形プーリが上腕16および前腕20の不等長の影響を相殺し、それにより、エンドエフェクタ24は最初の2本のリンク16、20の位置にかかわりなく半径方向30に向くようにしている。実施形態は、非円形であるプーリ90および円形であるプーリ88に関して説明されることになる。代替的に、プーリ88が非円形であってもよく、プーリ90が円形であってもよい。代替的に、プーリ88および92が非円形であってもよく、あるいはアーム14のリンクを説明されているように束縛するための任意の好適な連結装置が提供されてもよい。例として、1989年9月12日に発行され、非円形駆動装置(Noncircular Drive)と題する米国特許第4,865,577号に、非円形プーリまたはスプロケットが説明されている。同特許はその全体が本明細書において参照により組み込まれている。代替的に、アーム14のリンクを説明されているように束縛するための任意の好適な連結装置が提供されてもよく、例えば、任意の好適な可変比駆動装置あるいは連結装置、連結歯車もしくはスプロケット、カムまたはその他のものが、単独で、または好適なリンケージもしくはその他の連結装置と組み合わせて用いられてもよい。図示されている実施形態では、肘プーリ88は上腕16に結合され、丸形または円形に示され、手首または第3のリンク24に結合された手首プーリ90は、非円形に示されている。手首プーリの形状は非円形であり、半径方向軌道30に対して直角な線96の周りに対称性を有してもよい。線96は同様に、例えば、図3Bに見られるように、手首軸26が肩軸18に最も接近した状態で前腕20および上腕16が互いの真上に並ぶと、2つのプーリ88、90の間の線と一致するかまたはそれと平行になってもよい。プーリ90の形状は、アーム14が伸長および収縮する際にバンド92、94がぴんと張ったままになり、手首回転軸26からの変化する半径方向距離102、104を有するプーリ90の反対側に接点98、100を確立するようなものになっている。例えば、図3Bに示される配向においては、プーリ上の2つのバンドの接点98、100の各々は、手首回転軸26から等しい半径方向距離102、104にある。これは、それぞれの比を示す図4に関してさらに説明されることになる。アーム14が回転するために、ロボットの駆動シャフト62、64は両方ともアームの回転方向に同じ量だけ動く必要がある。エンドエフェクタ24が直線経路に沿って半径方向に伸長および収縮するために、2本の駆動シャフト62、64は、例えば、本セクションにおいて後に提示される例示的な逆運動学方程式に従って、協調して動く必要がある。ここで、基板搬送装置10は、基板28を搬送するようになっている。前腕20は上腕16に回転可能に結合され、中心軸18から上腕リンク長だけオフセットされた肘軸22の周りに回転可能である。エンドエフェクタ24は前腕20に回転可能に結合され、肘軸22から前腕リンク長だけオフセットされた手首軸26の周りに回転可能である。手首プーリ90はエンドエフェクタ24に固定され、バンド92、94を用いて肘プーリ88に結合される。ここで、前腕リンク長は上腕リンク長と異なり、エンドエフェクタは肘プーリ、手首プーリおよびバンドによって上腕に対して束縛され、それにより、基板は中心軸18に対する線形半径方向経路30に沿って動く。ここで、基板支持体24は、基板支持体連結装置92を用いて上腕16に結合され、肘回転軸22の周りの前腕20と上腕16との間の相対運動によって手首回転軸26の周りに駆動される。図3A、3Bおよび3Cは図1および2のロボットの伸長運動を示す。図3Aは、アーム14がその収縮位置にある状態におけるロボット10の上面図を示す。図3Bは、前腕20が上腕16の上に整列された状態における部分的に伸長したアーム14を示し、エンドエフェクタの横方向オフセット38は前腕20および上腕16の関節間長さの差に相当することを図解している。図3Cは、完全な伸長ではないが、伸長位置にあるアーム14を示す。」

「【0085】
図69Aを参照すると、基板搬送ロボット1300の一例の概略上面平面図が示されている。ロボット1300は、以下においてより詳細に説明されるように、駆動部分1310、および駆動部分1310に結合されるアーム部分1312を有する、真空対応の、または任意の好適なロボットであってもよい。全体にわたって示されている実施形態では、上腕リンク長および前腕リンク長は異なり、円形または非円形プーリによって駆動されてもよい。代替的な態様では、同じリンク長を有するアーム、または不等リンク長を有し、円形プーリもしくはその他の好適な駆動機構を有するアームが提供されてもよい。図69Aおよび69Bは、アーム1312を有するロボット1300の上面図および側面図をそれぞれ示す。駆動ユニット1310は4本の同軸駆動シャフトを提供してもよく、それにより、アーム1312の第1の部分1314および第2の部分1316は独立して駆動されてもよい。ここでは、アーム1312は、2つの独立したリンケージ、上部1314および下部1316、を特徴とする。上部リンケージ1314は駆動装置1310の2本の最も内側の駆動シャフトによって駆動されてもよく、下部リンケージ1316は駆動装置1310の2本の最も外側の駆動シャフトによって駆動されてもよい。図69Aでは、リンケージはそれらの収縮位置で示されている。2つのリンケージ1314、1316の各々は、第1のリンク(上腕1318、1320)、第2のリンク(前腕1322、1324)および第3のリンク(エンドエフェクタ1326、1328)からなる。第2のリンクの関節間長さは第1のリンクの関節間長さよりも小さい。第3のリンクの横方向オフセット1330、1332は前腕および上腕の関節間長さの差に相当する。第3のリンクは、2本の最も内側の駆動シャフト1334のための空間を提供する形状に作られている。」

「【0086】
図70Aおよび70Bを同様に参照すると、各リンケージの個々のリンクを駆動するために用いられる内部機構の一例が示されている。機構は上部リンケージについて説明されることになる。同等の機構が下部リンケージ内で用いられてもよい。上部リンケージ1314の上腕1318は1つのモータ1350によって駆動されてもよい。上部リンケージ1314の前腕1322は別のモータ1352によって、従来のプーリを有するバンド駆動装置1354を通じて駆動されてもよい。エンドエフェクタ1326を有する第3のリンクは、上腕および前腕の不等長の影響を相殺する、少なくとも1つの非円形プーリを有するバンド駆動装置1356によって、エンドエフェクタが最初の2本のリンクの位置にかかわりなく半径方向に向くように束縛されてもよい。バンド駆動装置の設計は、図1〜4に示されたものに従ってもよい。上部リンケージが回転するために、リンケージに関連付けられた両方の駆動シャフトはリンケージの回転方向に同じ量だけ動く必要がある。エンドエフェクタが直線経路に沿って半径方向に伸長および収縮するために、2本の駆動シャフトは、例えば、式(1.8)〜(1.16)に提示されたとおりの、逆運動学方程式に従って協調して動く必要がある。代替的な態様では、例えば、オフセットされたエンドエフェクタを有する図66〜68に関して開示されたとおりの、または別様の、任意の好適なアーム機構が用いられてもよい。」

「【0087】
図71Aおよび71Bを同様に参照すると、各リンケージの個々のリンクを駆動するために用いられる内部機構の別の例が示されている。この場合も先と同様に、機構は上部リンケージ1314'について説明されることになる。同等の機構が下部リンケージ内で用いられてもよい。ここで、上部リンケージ1314'の上腕1318は1つのモータ1350によって駆動される。上部リンケージ1314'の前腕1322は、少なくとも1つの非円形プーリを有するバンド機構1354'を介して別のモータ1352に結合される。バンド駆動装置1354'は、上腕の回転が手首関節をエンドエフェクタの所望の半径方向経路と平行な直線に沿って伸長および収縮させるように設計される。エンドエフェクタ1326を有する第3のリンクは、少なくとも1つの非円形プーリを有するバンド駆動装置1356'によって、エンドエフェクタが最初の2本のリンクの位置にかかわりなく半径方向に向くように束縛される。バンド駆動装置は図5〜8に従って設計されてもよい。上部リンケージ1314'が回転するために、リンケージに関連付けられた両方の駆動シャフトはリンケージの回転方向に同じ量だけ動いてもよい。エンドエフェクタ1326が直線経路に沿って半径方向に伸長および収縮するために、上部リンケージの上腕に結合された駆動シャフトは、上部リンケージに関連付けられた他方のモータが静止した状態に保持されている間に、式(2.8)〜(2.15)に提示された逆運動学方程式に従って動く必要がある。代替的な態様では、任意の好適な駆動機構が提供されてもよい。」

「【0088】
図72A〜72Cおよび73A−73Cは図69のロボットの2つのリンケージの独立した動作を示す。具体的には、図72A〜72Cおよび図73A〜73Cは2つのリンケージ1314、1316の独立した回転運動および伸長運動をそれぞれ示す。図72A〜72Cは、図69のロボット1300の上部リンケージ1314の回転運動を示す。図72Aは、リンケージが両方ともそれらの収縮位置にある状態におけるロボットの上面図を示す。図72Bは、上部リンケージ1314が時計方向に90度だけ回転された状態におけるロボットの上面図を示す。図72Cは、上部リンケージ1314が180度だけ回転された状態におけるロボットの上面図を示す。図73A〜73Cは図69のロボット1300の伸長運動を示す。図73Aは、リンケージが両方ともそれらの収縮位置にある状態におけるロボットの上面図を示す。図73Bは、上部リンケージ1314が部分的に伸長された状態におけるロボットの上面図を示す。図73Cは、上部リンケージ1314が伸長位置にある状態におけるロボットの上面図を示す。」














































(イ)上記(ア)の記載及び図面から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。

a 【図1A】及び【図1B】は、単一のアーム14を有するロボット10の上面図及び側面図であり、【図2A】及び【図2B】は、アーム14のリンクを駆動するための内部機構を示すものであり、【図3A−C】は、アーム14の動作を示すものであることを理解できる。
同様に、【図69A】及び【図69B】は、2つのリンケージ(アーム)1314及び1316を有する基板搬送ロボット1300の上面図及び側面図であり、【図71A】及び【図71B】は、基板搬送ロボット1300のリンクを駆動するための内部機構の別の例を示すものであり、【図72A−C】及び【図73A−C】は、基板搬送ロボット1300の動作を示すものであることを理解できる。そして、【0085】の「基板搬送ロボット1300の一例の概略上面平面図が図示されている」、【0087】の「図71Aおよび71Bを同様に参照すると、各リンケージの個々のリンクを駆動するために用いられる内部機構の別の例が示されている。」及び「上部リンケージ1314’の上腕1318は1つのモータ1350によって駆動される。」、【図71A】、【図71B】、【図72A−C】並びに【図73A−C】の記載からみて、「上腕1318」は「駆動シャフト1334」の周りで1つのモーター1350によって「回転可能」であると認められ、【図69A】及び【図69B】に係る基板搬送ロボット1300は、そのような「駆動シャフト1334の周りで回転可能な上腕1318」を備えていると認められる。

b aに加え、【0087】の「機構は上部リンケージ1314’について説明されることになる。同等の機構が下部リンケージ内で用いられていてもよい。」という記載及び【図71A】の記載からみて、下部リンケージ1316’も上部リンケージ1314’と同等の動作が可能であると認められ、【図71B】の記載からみて、下部リンケージ内にも同等の機構が用いられているものが記載されていると認められることから、下部リンケージ1316’についても、上部リンケージ1314’と同様に、「駆動シャフト1334の周りで回転可能な上腕1320」を備えていると認められ、【図69B】や【図71B】の記載からみて、【図69A】及び【図69B】に係る基板搬送ロボット1300において、「上腕1318」は「上腕1320から垂直に間隔を置いて配置され」ていると認められる。

c 【図69B】の記載からみて、「前腕1324」及び「前腕1322」について、前記上腕1320と前記上腕1318との間に「前腕1324」が「垂直に位置」していると認められ、そうすると、【図69A】及び【図69B】に係る基板搬送ロボット1300は、「上腕1320と上腕1318との間に垂直に位置する前腕1324」を備えていると認められる。同様に、「上腕1320と上腕1318との間に垂直に位置する前腕1322」を備えていると認められる。

d 【図72A−C】及び【図73A−C】と【図69A】及び【図69B】の記載から、「前腕1324」及び「前腕1322」に関する各種配置を参照し、また、【0011】及び【図1A】−【図3A−C】の記載から、「前腕1324」及び「前腕1322」に関する基本的な機構と各部位の名称を参照すると、【図69A】の点線で描かれた円の中心部分に【図69B】に記載された「駆動シャフト1334」の回転中心が配されていると認められる。また、当該「駆動シャフト1334」の回転中心から左右斜め外下方に延在するのが【図69B】の「上腕1318、1320」であり、【図69A】において同「上腕1318、1320」の他端側に描かれた十字で示された位置に、【図1A】の「肘回転軸22」と同様の回転軸が配されていると認められ、そこからさらに左右斜め内下方に延在する「前腕1322、1324」(【図69B】)がその周りで回転すると認められる(以下、前腕1324の肘回転軸を「第1の肘回転軸」といい、前腕1322の肘回転軸を「第2の肘回転軸」という)。そして、第1及び第2の肘回転軸の回転中心は、「駆動シャフト1334」からオフセットされた位置にあると認められる。
そうすると、【図69A】及び【図69B】に係る基板搬送ロボット1300は、「駆動シャフト1334からオフセットされた位置にある第1の肘回転軸の周りで前記上腕1320に対して回転するように適合された前腕1324」を備えていると認められる。また、同様に、「駆動シャフト1334からオフセットされた位置にある第2の肘回転軸の周りで前記上腕1318に対して回転するように適合された前腕1322」を備えていると認められる。

e 【図69B】の記載からみて、前記上腕1320と前記上腕1318との間に「エンドエフェクタ1328」が「垂直に位置」していると認められ、【図69A】及び【図69B】に係る基板搬送ロボット1300は、「上腕1320と上腕1318との間に垂直に位置するエンドエフェクタ1328」を備えていると認められる。同様に、「上腕1320と上腕1318との間に垂直に位置するエンドエフェクタ1326」を備えていると認められる。

f 【図72A−C】及び【図73A−C】と【図69A】及び【図69B】の記載から、「エンドエフェクタ1328」及び「エンドエフェクタ1326」に関する各種配置を参照し、また、【0011】及び【図1A】−【図3A−C】の記載から、「エンドエフェクタ1328」及び「エンドエフェクタ1326」に関する基本的な機構と各部位の名称を参照すると、【図69A】において「前腕1322、1324」の他端側(第1及び第2の肘回転軸とは反対側)に描かれた十字で示された位置に、【図1A】の「手首回転軸26」と同様の回転軸が配されていると認められ、そこからさらに上方に延在する「エンドエフェクタ1328」及び「エンドエフェクタ1326」がその周りで回転すると認められる(以下、エンドエフェクタ1328の手首回転軸を「第1の手首回転軸」といい、エンドエフェクタ1326の手首回転軸を「第2の手首回転軸」という。)。そして、第1及び第2の手首回転軸の回転中心は、第1及び第2の肘回転軸からオフセットされた位置にあると認められる。
そうすると、【図69A】及び【図69B】に係る基板搬送ロボット1300は、「第1の肘回転軸からオフセットされた位置にある第1の手首回転軸の周りで前記前腕1324に対して回転するように適合されたエンドエフェクタ1328」を備えていると認められる。また、同様に、「第2の肘回転軸からオフセットされた位置にある第2の手首回転軸の周りで前記前腕1322に対して回転するように適合されたエンドエフェクタ1326」を備えていると認められる。

g 【0011】の「リンク16に対して接地されるプーリ88」及び「肘プーリ88は上腕16に結合され」並びに【図1A】−【図3A−C】の記載から「肘プーリ88」に関する基本的な機構を参照しつつ(なお、「リンク16」と「上腕16」、「接地」と「結合」及び「プーリ88」と「肘プーリ88」は実質的に同じものを指し示していると解される。)、【図69A】及び【図69B】の記載を参照すると、【0011】及び【図1A】−【図3A−C】に記載の「上腕16」は【図69A】及び【図69B】に記載の「上腕1320」に対応するものといえるから、上腕1320には肘プーリが結合されているといえる。また、肘プーリの回転中心となるシャフトが、上腕1320及び肘プーリに結合されていることは明らかである。そうすると、【図69A】及び【図69B】に係る基板搬送ロボット1300は、「上腕1320に、また肘プーリに結合されたシャフト」を備えていると認められる。

h 【0011】の「エンドエフェクタもしくは第3のリンク24に対して接地されるプーリ90」、「手首または第3のリンク24に結合された手首プーリ90は、非円形に示されている。」及び「手首プーリ90はエンドエフェクタ24に固定され」並びに【図1A】−【図3A−C】の記載から「手首プーリ90」に関する基本的な機構を参照しつつ(なお、「第3のリンク24」と「エンドエフェクタ24」、「接地」と「結合」及び「プーリ90」と「手首プーリ90」は実質的に同じものを指し示していると解される。)、【図69A】及び【図69B】の記載を参照すると、【0011】及び【図1A】−【図3A−C】に記載の「第3のリンク24」は【図69A】及び【図69B】に記載の「エンドエフェクタ1328」に対応するものといえ、そうすると、【図69A】及び【図69B】に係る基板搬送ロボット1300は、「エンドエフェクタ1328に結合された手首プーリ」を備えていると認められる。

i 【0011】の「プーリ88、90は、2つの非円形プーリ」、「代替的に、プーリ88および92は非円形であってもよく」及び「手首または第3のリンク24に結合された手首プーリ90は、非円形に示されている。」並びに【図1A】−【図3A−C】の記載から「肘プーリ88」及び「手首プーリ90」に関する基本的な機構を参照しつつ、【図69A】及び【図69B】の記載を参照すると、【図69A】及び【図69B】に係る基板搬送ロボット1300の「肘プーリと手首プーリは非円形」であると認められる。

j 【0011】の「プーリ88およびプーリ90を束縛するバンド92、94を有するバンド駆動装置」及び「手首プーリ90はエンドエフェクタ24に固定され、バンド92、94を用いて肘プーリ88に結合される。」並びに【図1A】−【図3A−C】の記載から「肘プーリ88」及び「手首プーリ90」に関する基本的な機構を参照しつつ、【図69A】及び【図69B】の記載を参照すると、【図69A】及び【図69B】に係る基板搬送ロボット1300は、「肘プーリと手首プーリとの間に連結されたバンド」を備えていると認められる。

(ウ)上記(ア)及び(イ)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「基板搬送ロボット1300であって、
駆動シャフト1334の周りで回転可能な上腕1320と、
前記上腕1320から垂直に間隔を置いて配置され、前記駆動シャフト1334の周りで回転可能な上腕1318と、
前記上腕1320と前記上腕1318との間に垂直に位置する前腕1324であって、前記駆動シャフト1334からオフセットされた位置にある第1の肘回転軸の周りで前記上腕1320に対して回転するように適合された前腕1324と、
前記上腕1320と前記上腕1318との間に垂直に位置する前腕1322であって、前記駆動シャフト1334からオフセットされた位置にある第2の肘回転軸の周りで前記上腕1318に対して回転するように適合された前腕1322と、
前記上腕1320と前記上腕1318との間に垂直に位置するエンドエフェクタ1328であって、前記第1の肘回転軸からオフセットされた位置にある第1の手首回転軸の周りで前記前腕1324に対して回転するように適合されたエンドエフェクタ1328と、
前記上腕1320と前記上腕1318との間に垂直に位置するエンドエフェクタ1326であって、前記第2の肘回転軸からオフセットされた位置にある第2の手首回転軸の周りで前記前腕1322に対して回転するように適合されたエンドエフェクタ1326と、
前記上腕1320に、また肘プーリに結合されたシャフトと、
前記エンドエフェクタ1328に結合された手首プーリであって、前記肘プーリと手首プーリは非円形である、手首プーリと、
前記肘プーリと前記手首プーリとの間に連結されたバンドと、
を備えた、
基板搬送ロボット1300。」

イ 引用文献2
(ア)引用文献1の段落【0011】で例示され、この審決で新たに引用する、本願の優先日前に外国において頒布された文献である、米国特許第4865577号明細書(1989年(平成元年)9月12日外国公開。以下「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(括弧内に当審における翻訳文を付記する。)

a 「FIGS. 8,a,b,c,d illustrate the results for a noncircular chain drive 80 with sprockets 81 and 82 based on second-order ellipses as shown in FIG. 8a. The difference between the angular velocity ratio is too small to be appreciable in a plot the scale of FIG. 8b. Slack variation of little more than ? taut chain length fluctuation out of an overall chain length of slightly over 46 inches is apparent from FIG. 8c. And the considerable reduction in angular displacement error achieved with just one iteration of the design procedure(one revised set of noncircular gears) is illustrated in FIG. 8d.」(第14欄第32行−第42行)(図8a,b,c,dは、図8aに示すような2次の楕円に基づいて、スプロケット81及び82と非円形チェーン駆動装置80についての結果を示す。加速度比の差があまりに小さい緊張鎖長変動1、4より少し多くの全鎖長46インチの図8bでスラック変動の規模は、図8cに見られるプロットに相当する。そして、この設計手順(1つの改訂されたセットの非円形歯車の)の1回の反復だけで達成される角変位誤差が大幅に減少すると、図8(d)に示されている。)

b 「

」(図8a)

(イ)上記記載から、引用文献2には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。

a 上記(ア)aの「図8aに示すような2次の楕円」及び図8aの記載からみて、「スプロケット81及び82」は「楕円」であると認められる。

b 図8aの記載からみて、「スプロケット81の最大半径がスプロケット82の最大半径に直角になるように配向され」ていると認められる。

(ウ)上記(ア)及び(イ)から、引用文献2には、次の技術的事項(以下「引用文献2に記載された技術的事項」という。)が記載されていると認められる。

「スプロケット81及び82が楕円であり、スプロケット81の最大半径がスプロケット82の最大半径に直角になるように配向される、
非円形チェーン駆動装置80。」

(3)本件補正発明と引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。(下線は、当審で付した。)

(ア)引用発明における「基板搬送ロボット1300」は本件補正発明における「ロボット」に相当する。

(イ)引用発明における「駆動シャフト1334」は本件補正発明における「肩軸」に相当し、同様に、「上腕1320」は「第1の上腕部」に相当し、「上腕1318」は「第2の上腕部」に相当する。

(ウ)引用発明における「第1の肘回転軸」は本件補正発明における「第2の軸」に相当し、同様に、「前腕1324」は「第1の前腕部」に相当する。

(エ)引用発明における「第2の肘回転軸」は本件補正発明における「第3の軸」に相当し、同様に、「前腕1322」は「第2の前腕部」に相当する。

(オ)引用発明における「第1の手首回転軸」は本件補正発明における「第4の軸」に相当し、同様に、「エンドエフェクタ1328」は「第1のリスト部材」に相当する。

(カ)引用発明における「第2の手首回転軸」は本件補正発明における「第5の軸」に相当し、同様に、「エンドエフェクタ1326」は「第2のリスト部材」に相当する。

(キ)引用発明における「前記上腕1320に、また肘プーリに結合されたシャフト」は、本件補正発明における「前記第1の上腕部に、また第1のカム面に剛連結された第1の前腕部シャフト」と、「前記第1の上腕部に、また第1のベルト伝達要素に剛連結された第1の前腕部シャフト」という点において共通する。

(ク)引用発明における「前記エンドエフェクタ1328に結合された手首プーリであって、前記肘プーリと手首プーリは非円形である、手首プーリ」は、本件補正発明における「前記第1のリスト部材に結合された第2のカム面であって、前記第1と前記第2のカム面は楕円形であり、前記第1のカム面の第1の最大半径が前記第2のカム面の第2の最大半径に垂直になるように配向される、第2のカム面」と、「前記第1のリスト部材に結合された第2のベルト伝達要素であって、前記第1と前記第2のベルト伝達要素は非円形である、第2のベルト伝達要素」という点において共通する。

(ケ)引用発明における「バンド」は本件補正発明における「第1のベルト」に相当する。

イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

【一致点】
「ロボットであって、
肩軸の周りで回転可能な第1の上腕部と、
前記第1の上腕部から垂直に間隔を置いて配置され、前記肩軸の周りで回転可能な第2の上腕部と、
前記第1の上腕部と前記第2の上腕部との間に垂直に位置する第1の前腕部であって、前記肩軸からオフセットされた位置にある第2の軸の周りで前記第1の上腕部に対して回転するように適合された第1の前腕部と、
前記第1の上腕部と前記第2の上腕部との間に垂直に位置する第2の前腕部であって、前記肩軸からオフセットされた位置にある第3の軸の周りで前記第2の上腕部に対して回転するように適合された第2の前腕部と、
前記第1の上腕部と前記第2の上腕部との間に垂直に位置する第1のリスト部材であって、前記第2の軸からオフセットされた位置にある第4の軸の周りで前記第1の前腕部に対して回転するように適合された第1のリスト部材と、
前記第1の上腕部と前記第2の上腕部との間に垂直に位置する第2のリスト部材であって、前記第3の軸からオフセットされた位置にある第5の軸の周りで前記第2の前腕部に対して回転するように適合された第2のリスト部材と、
前記第1の上腕部に、また第1のベルト伝達要素に剛連結された第1の前腕部シャフトと、
前記第1のリスト部材に結合された第2のベルト伝達要素であって、前記第1と前記第2のベルト伝達要素は非円形である、第2のベルト伝達要素と、
前記第1のベルト伝達要素と前記第2のベルト伝達要素との間に連結された第1のベルトと、
を備えた、
ロボット。」

【相違点】
第1及び第2のベルト伝達要素が、本件補正発明は、「楕円形」の「第1のカム面」及び「第2のカム面」であり、「第1のカム面の第1の最大半径が第2のカム面の第2の最大半径に垂直になるように配向され」、「第1と第2のカム面が、第1のリスト部材が、第1の前腕部に対して非線形の回転速度で回転するのを可能にする」のに対し、引用発明は、「非円形」の「肘プーリ」及び「手首プーリ」ではあるものの、本件補正発明のように「楕円形」の「カム面」や「配向」、カム面により可能にする第1のリスト部材の「非線形の回転速度」について特定されていない点。

(4)判断
以下、相違点について検討する。
引用文献1には、段落【0011】に「代替的に、アーム14のリンクを説明されているように束縛するための任意の好適な連結装置が提供されてもよく、例えば、任意の好適な可変比駆動装置あるいは連結装置、連結歯車もしくはスプロケット、カムまたはその他のものが、単独で、または好適なリンケージもしくはその他の連結装置と組み合わせて用いられてもよい。」と記載されているように、プーリに代えて、カムを用いることが代替的な態様として意図されていると認められる。
また、引用文献1には、段落【0011】において「代替的に、プーリ88および92が非円形であってもよく、あるいはアーム14のリンクを説明されているように束縛するための任意の好適な連結装置が提供されてもよい。例として、1989年9月12日に発行され、非円形駆動装置(Noncircular Drive)と題する米国特許第4,865,577号に、非円形プーリまたはスプロケットが説明されている。同特許はその全体が本明細書において参照により組み込まれている。」と記載され、非円形のプーリを含む非円形駆動装置の例として、かかる米国特許(すなわち、引用文献2)が引用文献1において組み込まれているものとしている。
そして、この引用文献2には、上記(2)イのとおりの引用文献2に記載された技術的事項が記載されている。
そうすると、引用発明において、非円形のプーリを含む非円形駆動装置の例として引用文献1において組み込まれているものとしている引用文献2に記載された技術的事項のような非円形チェーン駆動装置の構成を、上腕1320(第1の上腕部)からエンドエフェクタ1328(第1のリスト部材)への非円形駆動装置の構成として採用することは、引用文献1に触れた当業者であれば当然に試行し得るものである。そして、その具体的な採用にあたっては、引用文献1に記載された非円形駆動装置における肘プーリと手首プーリのそれぞれの径の大きさ、すなわち、【図2A】と同様と認められる【図71A】及び【図71B】において肘プーリより手首プーリが大径にて形成されている態様などは維持しつつ採用を試みるのが自然である。また、肘プーリと手首プーリは引用文献1において代替的な態様として意図されているもののうち適宜カムにて構成し、かかる各プーリの径の大小関係とあわせて引用文献2に記載された技術的事項のスプロケット81とスプロケット82の形状及び配向関係は相違点に係る本件補正発明の楕円形の第1のカム面と楕円形の第2のカム面の形状及び配向関係と同様である以上、当然に相違点に係る「第1と第2のカム面が、第1のリスト部材が、第1の前腕部に対して非線形の回転速度で回転するのを可能にする」ものといえるから、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて相違点に係る本件補正発明の特定事項に想到することは当業者が容易になし得るものである。

(5)小括
したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
令和2年9月14日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和2年4月20日にされた誤訳訂正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、
●理由A(新規性)この出願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。
●理由B(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
というものである。

引用文献1:特表2016−505219号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項は、前記第2の[理由]2(2)アに記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「前記第1のリスト部材が、前記第1の前腕部に対して非線形の回転速度で回転する」ことについて「前記第1の上腕部に、また第1のカム面に剛連結された第1の前腕部シャフトと、前記第1のリスト部材に結合された第2のカム面であって、前記第1と前記第2のカム面は楕円形であり、前記第1のカム面の第1の最大半径が前記第2のカム面の第2の最大半径に垂直になるように配向される、第2のカム面と、前記第1のカム面と前記第2のカム面との間に連結された第1のベルトと、を備え、前記第1と前記第2のカム面が」、前記第1のリスト部材が、前記第1の前腕部に対して非線形の回転速度で回転するのを「可能にする」という限定事項を削除したものである。

●理由A(新規性)について
本願発明と引用発明を対比すると、前記第2の[理由]2(3)と同様に対比できるから、両発明は、以下の点で一致するとともに、一応相違する。

【一致点】
「ロボットであって、
肩軸の周りで回転可能な第1の上腕部と、
前記第1の上腕部から垂直に間隔を置いて配置され、前記肩軸の周りで回転可能な第2の上腕部と、
前記第1の上腕部と前記第2の上腕部との間に垂直に位置する第1の前腕部であって、前記肩軸からオフセットされた位置にある第2の軸の周りで前記第1の上腕部に対して回転するように適合された第1の前腕部と、
前記第1の上腕部と前記第2の上腕部との間に垂直に位置する第2の前腕部であって、前記肩軸からオフセットされた位置にある第3の軸の周りで前記第2の上腕部に対して回転するように適合された第2の前腕部と、
前記第1の上腕部と前記第2の上腕部との間に垂直に位置する第1のリスト部材であって、前記第2の軸からオフセットされた位置にある第4の軸の周りで前記第1の前腕部に対して回転するように適合された第1のリスト部材と、
前記第1の上腕部と前記第2の上腕部との間に垂直に位置する第2のリスト部材であって、前記第3の軸からオフセットされた位置にある第5の軸の周りで前記第2の前腕部に対して回転するように適合された第2のリスト部材と、
を備えたロボット。」

【一応相違する点】
本願発明のロボットは、「前記第1のリスト部材が、前記第1の前腕部に対して非線形の回転速度で回転するように構成されている」のに対して、引用発明の基板搬送ロボット1300は、エンドエフェクタ1328(第1のリスト部材)が非線形の回転速度で回転するかどうか不明な点。

そして、上記一応相違する点を検討すると、引用発明における「肘プーリと手首プーリは非円形」であって、前記第2の[理由]2(4)に記載したとおり、「引用文献1に記載された非円形駆動装置における肘プーリと手首プーリのそれぞれの径の大きさ」については、「【図2A】と同様と認められる【図71A】及び【図71B】において肘プーリより手首プーリが大径にて形成されている」ことから、本願発明が引用発明と一応相違している上記点のように、引用発明は、当然に「第1のリスト部材が、第1の前腕部に対して非線形の回転速度で回転するように構成されている」ものといえるから、かかる点は実質的に相違するものではなく、そうすると、本願発明は、引用発明は全ての発明特定事項において一致するものである。

●理由B(進歩性)について
本願発明と引用発明は、前記「●理由A(新規性)について」に記載したとおりの点で一致し、一応相違する。
そして、上記一応相違する点について検討するにあたり、引用文献1に記載された非円形駆動装置において、肘プーリより手首プーリが大径にて形成されるものと限定的に解されないとしても、引用文献1の段落【0011】に記載された種々の選択可能な態様のうち、同段落【0011】の「肘プーリ88は上腕16に結合され、丸形または円形に示され、手首または第3のリンク24に結合された手首プーリ90は、非円形にされている。」のように、引用発明の肘プーリと手首プーリの一方を「円形」他方を「非円形」とすることにより、「第1のリスト部材が、第1の前腕部に対して非線形の回転速度で回転するように構成」することは当業者であれば容易になし得るものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条1項3号に該当し、また、特許法29条2項の規定により、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

審判長 刈間 宏信
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2021-06-10 
結審通知日 2021-06-15 
審決日 2021-06-30 
出願番号 P2018-567744
審決分類 P 1 8・ 113- Z (B25J)
P 1 8・ 121- Z (B25J)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 刈間 宏信
特許庁審判官 河端 賢
大山 健
発明の名称 間隔を置いて配置された上腕部と交互に配置されたリストとを含むデュアルロボット、及びこれらを含むシステム及び方法  
代理人 園田・小林特許業務法人  

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