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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04L
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04L
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 H04L
管理番号 1380481
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-09-25 
確定日 2022-01-04 
事件の表示 特願2019−500254「フォワーディングエントリアクセス」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 1月11日国際公開、WO2018/006786、令和 1年 8月 8日国内公表、特表2019−522427、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2017年(平成29年)7月4日(パリ条約による優先権主張 2016年7月4日 中国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は次のとおりである。

令和元年11月 1日付け:拒絶理由通知書
令和2年 3月13日 :意見書の提出
令和2年 5月14日付け:拒絶査定(原査定)
令和2年 9月25日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和3年 8月10日付け:令和2年9月25日付け手続補正についての
補正の却下の決定、
拒絶理由(当審拒絶理由)通知書
令和3年11月 4日 :意見書、手続補正書の提出
令和3年11月12日 :手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和2年5月14日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

[理由1]明確性要件
本願は、特許請求の範囲の記載が以下の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
[理由2]実施可能要件
本願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

本願請求項1ないし15(特に、請求項1、8及び15)に係る発明において、「フォワーディングコンポーネント」は、「ストレージコンポーネントにおける読み取られるべき第1フォワーディングエントリの記憶アドレス」を、どのように認識又は取得するのか、特許請求の範囲にも、発明の詳細な説明にも記載されていない。

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

本願請求項1ないし15に係る発明は、以下の引用文献1ないし3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2004−23450号公報
引用文献2:特開2007−221514号公報
引用文献3:国際公開第2015/133448号

第4 本願発明
令和2年9月25日に審判請求時に提出された手続補正書に係る手続補正(以下、「審判請求時補正」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9のうち、請求項1に係る発明は、次のとおりの発明である。なお、下線は、審判請求時補正により補正された箇所を示す。)

「 フォワーディングエントリアクセス方法であって、
キャッシュコンポーネントは、フォワーディングコンポーネントから送信された、ストレージコンポーネントにおける読み取られるべき第1フォワーディングエントリの記憶アドレスをキャリーするエントリ読み取りコマンドを受信するステップと、
前記キャッシュコンポーネントは、前記第1フォワーディングエントリの記憶アドレスに基づいて、ローカルで有効状態にあり且つ含む記憶アドレスが前記第1フォワーディングエントリの記憶アドレスと同一である第1Hashバケットを検索するステップと、
前記キャッシュコンポーネントは、前記第1Hashバケットを見つけた時、前記第1Hashバケットに対応するキャッシュスペースにキャッシュされた前記第1フォワーディングエントリを前記フォワーディングコンポーネントに送信するステップと、
前記キャッシュコンポーネントは、前記第1Hashバケットを見つけられなかった時、前記ストレージコンポーネントから前記第1フォワーディングエントリを読み取り、読み取った前記第1フォワーディングエントリを前記フォワーディングコンポーネントに送信するステップと、
ストレージコンポーネントから前記第1フォワーディングエントリを読み取った後、
前記キャッシュコンポーネントは、前記第1フォワーディングエントリの記憶アドレスに基づいて、ローカルで無効状態にある第2Hashバケットを検索するステップと、
前記キャッシュコンポーネントは、前記第2Hashバケットを見つけた時、前記第1フォワーディングエントリを前記第2Hashバケットに対応するキャッシュスペースに書き込み、前記第2Hashバケットの状態を有効にアップデートし、前記第2Hashバケットに含まれる記憶アドレスを前記第1フォワーディングエントリの記憶アドレスにアップデートするステップと、
前記キャッシュコンポーネントは、前記第1Hashバケットに含まれるタイムスタンプを、前記第1Hashバケットに対応するキャッシュスペースにキャッシュされた前記第1フォワーディングエントリを前記フォワーディングコンポーネントに送信する時の時間にアップデートするステップと、
前記キャッシュコンポーネントは、前記第2Hashバケットに含まれるタイムスタンプを、前記第1フォワーディングエントリが前記第2Hashバケットに対応するキャッシュスペースに書き込まれる時の時間にアップデートするステップと、を含み、
前記第2Hashバケットが見つからなかった時、前記キャッシュコンポーネントは、前記第1フォワーディングエントリの記憶アドレスに基づいて、ローカルで含むタイムスタンプと現在時間の差分値が予め設定されたタイムアウト時間より大きい第3Hashバケットを検索するステップと、
前記第3Hashバケットが見つかった時、前記キャッシュコンポーネントは、前記第1フォワーディングエントリを前記第3Hashバケットに対応するキャッシュスペースに書き込み、前記第3Hashバケットに含まれるタイムスタンプを、前記第1フォワーディングエントリを前記第3Hashバケットに対応するキャッシュスペースに書き込む時間にアップデートし、前記第3Hashバケットに含まれる記憶アドレスを前記第1フォワーディングエントリの記憶アドレスにアップデートするステップと、
含むことを特徴とする方法。」

本願請求項1ないし9に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明9」という。)は、令和3年11月12日に提出された手続補正書に係る手続補正(以下、「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定される発明であり、このうち本願発明1は以下のとおりの発明である。なお、下線は、本件補正により審判請求時補正後の請求項1から補正された箇所を示す。

「 フォワーディングエントリアクセス方法であって、
キャッシュコンポーネントは、フォワーディングコンポーネントから送信された、ストレージコンポーネントにおける読み取られるべき第1フォワーディングエントリの記憶アドレスをキャリーするエントリ読み取りコマンドを受信するステップと、
前記キャッシュコンポーネントは、前記第1フォワーディングエントリの記憶アドレスに基づいて、ローカルで有効状態にあり且つ含む記憶アドレスが前記第1フォワーディングエントリの記憶アドレスと同一である第1Hashバケットを検索するステップと、
前記キャッシュコンポーネントは、前記第1Hashバケットを見つけた時、前記第1Hashバケットに対応するキャッシュスペースにキャッシュされた前記第1フォワーディングエントリを前記フォワーディングコンポーネントに送信するステップと、
前記キャッシュコンポーネントは、前記第1Hashバケットに含まれるタイムスタンプを、前記第1Hashバケットに対応するキャッシュスペースにキャッシュされた前記第1フォワーディングエントリを前記フォワーディングコンポーネントに送信する時の時間にアップデートするステップと、
前記キャッシュコンポーネントは、前記第1Hashバケットを見つけられなかった時、前記ストレージコンポーネントから前記第1フォワーディングエントリを読み取り、読み取った前記第1フォワーディングエントリを前記フォワーディングコンポーネントに送信するステップと、
ストレージコンポーネントから前記第1フォワーディングエントリを読み取った後、
前記キャッシュコンポーネントは、前記第1フォワーディングエントリの記憶アドレスに基づいて、ローカルで無効状態にある第2Hashバケットを検索するステップと、
前記キャッシュコンポーネントは、前記第2Hashバケットを見つけた時、前記第1フォワーディングエントリを前記第2Hashバケットに対応するキャッシュスペースに書き込み、前記第2Hashバケットの状態を有効にアップデートし、前記第2Hashバケットに含まれる記憶アドレスを前記第1フォワーディングエントリの記憶アドレスにアップデートするステップと、
前記キャッシュコンポーネントは、前記第2Hashバケットに含まれるタイムスタンプを、前記第1フォワーディングエントリが前記第2Hashバケットに対応するキャッシュスペースに書き込まれる時の時間にアップデートするステップと、を含み、
前記第2Hashバケットが見つからなかった時、前記キャッシュコンポーネントは、前記第1フォワーディングエントリの記憶アドレスに基づいて、ローカルで含むタイムスタンプと現在時間の差分値が予め設定されたタイムアウト時間より大きい第3Hashバケットを検索するステップと、
前記第3Hashバケットが見つかった時、前記キャッシュコンポーネントは、前記第1フォワーディングエントリを前記第3Hashバケットに対応するキャッシュスペースに書き込み、前記第3Hashバケットに含まれるタイムスタンプを、前記第1フォワーディングエントリを前記第3Hashバケットに対応するキャッシュスペースに書き込む時間にアップデートし、前記第3Hashバケットに含まれる記憶アドレスを前記第1フォワーディングエントリの記憶アドレスにアップデートするステップと、
含むことを特徴とする方法。」

なお、本願発明5は、本願発明1を「ネットワーク機器」として特定した発明であり、本願発明9は、本願発明5の構成をより具体化した「ネットワーク機器」の発明である。
また、本願発明2ないし4は、本願発明1を減縮した発明であり、本願発明6ないし8は、本願発明5を減縮した発明である。
また、審判請求時補正により、審判請求時補正前(拒絶査定時)の請求項2ないし4及び9ないし11は削除され、また、本件補正は、請求項を追加又は削除する補正を含まないから、本願発明1、2、3、4、5、6、7、8及び9はそれぞれ、審判請求時前(拒絶査定時)の請求項1、5、6、7、8、12、13、14及び15に対応したものと認められる。

第5 当審拒絶理由についての判断
1 引用文献、引用発明等
(1)引用文献1について
ア 引用文献1記載事項
当審拒絶理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(なお、下線は、強調のため当審が付与した。これ以降も同様。)

「【0017】
[構成の説明]
図1は、本発明の実施形態のルータ装置の模式的な内部構成を示すブロック図である。図1には、キャッシュメモリを使った探索を行う第1検索部である高速検索部1と、キャッシュメモリで探索できなかったルーティングテーブルを探索する第2検索部である通常検索部2と、キャッシュメモリの状態を管理するキャッシュ管理部3とを示している。
【0018】
高速検索部1は、ルーティングテーブル中の一部のルーティングエントリを記憶しているキャッシュ用ルーティングエントリ格納メモリ(キャッシュメモリ)12と、入力されたパケットの宛先IPアドレスの検索要求に対してキャッシュ用ルーティングエントリ格納メモリ12に対して検索処理を実行し、その結果によって検索結果を出力するか、通常検索部2への検索要求を行うキャッシュ検索処理部11とを備えている。
【0019】
キャッシュ検索処理部11は、入力されたパケットの宛先IPアドレスなどの宛先アドレスを取り出す取出部と、キャッシュ用ルーティングエントリ格納メモリ12中のネットワークアドレスマスク長を抽出する抽出部と、取出部で取り出した宛先アドレスを抽出部で抽出した最短のネットワークアドレスマスク長でマスクしたアドレスを作成する作成部と、作成部によって作成したアドレスを仮想的なネットワークアドレスとみなしてキャッシュ用ルーティングエントリ格納メモリ12内のキャッシュエントリを探索する探索部と、探索部の探索の結果、キャッシュ用ルーティングエントリ格納メモリ12にキャッシュエントリがあった場合に当該キャッシュエントリが関連するエントリ群からなるリンクエントリであるかを判定する判定部と、判定部の判定の結果、キャッシュエントリがリンクエントリの場合に、判定部で前記キャッシュエントリがリンクエントリでないと判定されるまで抽出部に対して先に抽出しているネットワークアドレスマスク長よりも長いネットワークアドレスマスク長の取り出しを促す促進部とを備えている。
【0020】
通常検索部2は、ルーティングテーブルを記憶しているルーティングテーブル格納メモリ22と、高速検索部1より要求された検索要求に対してルーティングテーブル格納メモリ22を検索し検索結果を出力するルーティングテーブル検索処理部21と、ルーティングテーブル検索処理部21からの検索結果をキャッシュ用ルーティングエントリ格納メモリ12へ格納するキャッシュ書き込み処理部23とを備えている。」

「【0022】
キャッシュ管理部3は、ルーティングプロトコルなどからのルーティングテーブル更新要求を処理し、ルーティングテーブル格納メモリ22を更新したり、その更新結果を以下のキャッシュ管理処理部32に通知するルーティングテーブル管理処理部31と、ルーティングテーブル管理処理部31からの通知を元にキャッシュ用ルーティングエントリ格納メモリ12の状態を管理し必要に応じてキャッシュ用ルーティングエントリ格納メモリ12の内容を更新するキャッシュ管理処理部32と、キャッシュ用ルーティングエントリ格納メモリ12の各キャッシュエントリを監視して使用頻度の低いキャッシュエントリの削除を行うためのキャッシュ監視タイマ処理部33とを備えている。」

「【0024】
[動作の説明]
つぎに、図1のルータの動作について説明する。
【0025】
図2は、図1の高速検索部1の動作を示すフローチャートである。
【0026】
まず、キャッシュ検索処理部11は、装置に入力されたパケットの宛先IPアドレスDを取り出す(ステップS1)。
【0027】
そして、キャッシュ検索処理部11は、装置に備えるルーティングテーブル中の最短のネットワークアドレスマスク長Mmを取り出し、ネットワークアドレスマスク長Mcとして記憶する(ステップS2)。
【0028】
そして、キャッシュ検索処理部11は、宛先IPアドレスDをネットワークアドレスマスク長McでマスクしたIPアドレスNcを作成する(ステップS3)。
【0029】
それから、キャッシュ検索処理部11は、IPアドレスNcを仮想的なネットワークアドレスと見て、キャッシュ用ルーティングエントリ格納メモリ12内のエントリを探索する(ステップS4)。
【0030】
キャッシュ検索処理部11は、キャッシュ用ルーティングエントリ格納メモリ12内のキャッシュエントリを探索した結果、キャッシュエントリが見つかったかどうか判定する(ステップS5)。
【0031】
判定の結果、キャッシュエントリが見つからなかった場合は、キャッシュ検索処理を終了し、通常検索部2へ処理を引き継ぐ。
【0032】
逆に、判定の結果、キャッシュエントリが見つかった場合は、キャッシュ検索処理部11は、さらにそのキャッシュエントリがリンクエントリであるかを判定する(ステップS6)。
【0033】
判定の結果、リンクエントリでなかった場合は、キャッシュ検索処理部11は、キャッシュ用ルーティングエントリ格納メモリ12に目的のキャッシュエントリがあったと判断し、検索処理を終了し、検索結果としてキャッシュエントリの内容を出力する。
【0034】
逆に、判定の結果、見つかったキャッシュエントリがリンクエントリであった場合は、キャッシュ検索処理部11は、現在のネットワークアドレスのマスク長Mcより長いマスク長のネットワークがルーティングテーブル上に存在することを意味するので、そのリンクエントリから新しいネットワークアドレスマスク長を取り出してMcを更新する(ステップS7)。
【0035】
その後、ステップS3に戻る。」
[当審注]【0034】の「現在のネットワークアドレスのマスク長Mcより長いマスク長のネットワーク」は、「現在のネットワークアドレスのマスク長Mcより長いマスク長のネットワークアドレス」の誤記と認められる。

「【0036】
図3は、図1の通常検索部2の動作を示すフローチャートである。
【0037】
まず、ルーティングテーブル検索処理部21は、キャッシュ検索処理部11でキャッシュにマッチしなかった宛先IPアドレスDを受け取り、一般的なルーティングテーブル検索アルゴリズムを用いて、ルーティングテーブル格納メモリ22のルーティングエントリを検索する。
【0038】
検索の結果、見つかったルーティングエントリは、宛先IPアドレスDと共に、キャッシュ書き込み処理部23に渡される。
【0039】
キャッシュ書き込み処理部23は、ルーティングテーブル検索処理部21から宛先IPアドレスDを取得する(ステップW1)。」

「【0054】
図4,図5は、図1のキャッシュ管理部3の動作を示すフローチャートである。
【0055】
ルーティングテーブル管理処理部31は、一般的なルーティングプロトコルを使用するか、装置に対する設定の変更により、ルーティングテーブルの変化を検出し、キャッシュ管理処理部32へ、ルーティングテーブルへのルーティングエントリの追加・削除の情報を出力する。
【0056】
キャッシュ管理処理部32は、ルーティングテーブル管理処理部31から出力された情報に基づき、キャッシュ用ルーティングエントリ格納メモリ12内のキャッシュエントリを変更・削除する。」

「【0075】
キャッシュ監視タイマ処理部33は、キャッシュ用ルーティングエントリ格納メモリ12を監視し、一定時間以上使用されていないキャッシュエントリを削除する。」

「【図1】



イ 引用発明
引用文献1の【図1】において、「キャッシュ書き込み処理部23」からの出力線(117、118)のうちの1つ(118)は、「キャッシュ検索処理部11」からの出力線103と合流して「高速検索部1」を介して外部に出力されていること、及び、「キャッシュ検索処理部11」の出力は「キャッシュエントリの内容」であること(【0033】)からすれば、「キャッシュ書き込み処理部23」に渡された「ルーティングテーブル検索処理部21」の検索結果(見つかったルーティングエントリ)(【0038】)は、「キャッシュ用ルーティングエントリ格納メモリ12」に書き込まれる(【0020】)とともに「高速検索部1」を介して出力されるものと認められる。
また、引用文献1の特に【0024】ないし【0075】の記載を参酌すれば、引用文献1には、「ルータ装置の動作方法」が記載されているといえる。
これらを考慮すると、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 ルータ装置の動作方法であって、
ルータ装置の内部構成は、キャッシュメモリを使った探索を行う高速検索部1と、キャッシュメモリで探索できなかったルーティングテーブルを探索する通常検索部2と、キャッシュメモリの状態を管理するキャッシュ管理部3とを含み、
高速検索部1は、ルーティングテーブル中の一部のルーティングエントリを記憶しているキャッシュ用ルーティングエントリ格納メモリ(キャッシュメモリ)12と、入力されたパケットの宛先IPアドレスの検索要求に対してキャッシュ用ルーティグエントリ格納メモリ12に対して検索処理を実行し、その結果によって検索結果を出力するか、通常検索部2への検索要求を行うキャッシュ検索処理部11とを備え、
通常検索部2は、ルーティングテーブルを記憶しているルーティングテーブル格納メモリ22と、高速検索部1より要求された検索要求に対してルーティングテーブル格納メモリ22を検索し検索結果を出力するルーティングテーブル検索処理部21と、ルーティングテーブル検索処理部21からの検索結果をキャッシュ用ルーティングエントリ格納メモリ12へ格納するキャッシュ書き込み処理部23とを備え、
キャッシュ管理部3は、ルーティングプロトコルなどからのルーティングテーブル更新要求を処理し、ルーティングテーブル格納メモリ22を更新したり、その更新結果を以下のキャッシュ管理処理部32に通知するルーティングテーブル管理処理部31と、ルーティングテーブル管理処理部31からの通知を元にキャッシュ用ルーティングエントリ格納メモリ12の状態を管理し必要に応じてキャッシュ用ルーティングエントリ格納メモリ12の内容を更新するキャッシュ管理処理部32と、キャッシュ用ルーティングエントリ格納メモリ12の各キャッシュエントリを監視して使用頻度の低いキャッシュエントリの削除を行うためのキャッシュ監視タイマ処理部33とを備え、
高速検索部1の動作は、
まず、キャッシュ検索処理部11は、装置に入力されたパケットの宛先IPアドレスDを取り出し、
装置に備えるルーティングテーブル中の最短のネットワークアドレスマスク長Mmを取り出し、ネットワークアドレスマスク長Mcとして記憶し、
宛先IPアドレスDをネットワークアドレスマスク長McでマスクしたIPアドレスNcを作成し(ステップS3)、
IPアドレスNcを仮想的なネットワークアドレスと見て、キャッシュ用ルーティングエントリ格納メモリ12内のエントリを探索し、
キャッシュ用ルーティングエントリ格納メモリ12内のキャッシュエントリを探索した結果、キャッシュエントリが見つかったかどうか判定し、
判定の結果、キャッシュエントリが見つからなかった場合は、キャッシュ検索処理を終了し、通常検索部2へ処理を引き継ぎ、
逆に、判定の結果、キャッシュエントリが見つかった場合は、さらにそのキャッシュエントリがリンクエントリであるかを判定し、
判定の結果、リンクエントリでなかった場合は、キャッシュ検索処理部11は、キャッシュ用ルーティングエントリ格納メモリ12に目的のキャッシュエントリがあったと判断し、検索処理を終了し、検索結果としてキャッシュエントリの内容を出力し、
逆に、判定の結果、見つかったキャッシュエントリがリンクエントリであった場合は、現在のネットワークアドレスのマスク長Mcより長いマスク長のネットワークアドレスがルーティングテーブル上に存在することを意味するので、そのリンクエントリから新しいネットワークアドレスマスク長を取り出してMcを更新し、ステップS3に戻り、
通常検索部2の動作は、
まず、ルーティングテーブル検索処理部21は、キャッシュ検索処理部11でキャッシュにマッチしなかった宛先IPアドレスDを受け取り、一般的なルーティングテーブル検索アルゴリズムを用いて、ルーティングテーブル格納メモリ22のルーティングエントリを検索し、
検索の結果、見つかったルーティングエントリは、宛先IPアドレスDと共に、キャッシュ書き込み処理部23に渡され、
キャッシュ書き込み処理部23は、ルーティングテーブル検索処理部21から宛先IPアドレスDを取得し、高速検索部1を介して出力し、
キャッシュ管理部3の動作は、
ルーティングテーブル管理処理部31は、一般的なルーティングプロトコルを使用するか、装置に対する設定の変更により、ルーティングテーブルの変化を検出し、キャッシュ管理処理部32へ、ルーティングテーブルへのルーティングエントリの追加・削除の情報を出力し、
キャッシュ管理処理部32は、ルーティングテーブル管理処理部31から出力された情報に基づき、キャッシュ用ルーティングエントリ格納メモリ12内のキャッシュエントリを変更・削除し、
キャッシュ監視タイマ処理部33は、キャッシュ用ルーティングエントリ格納メモリ12を監視し、一定時間以上使用されていないキャッシュエントリを削除する、
動作方法。」

(2)引用文献2
当審拒絶理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0001】
本発明は、パケットのルートを決定するルータ装置、ルータ装置におけるルート決定方法に関する。」

「【0047】
図1を参照すると、本発明の一実施形態のルータ装置は、フォワーディング処理部10a〜10cと、スイッチ部20と、ルーティングテーブル30と、第1の制御部40とを有している。なお、フォワーディング処理部10a〜10cの数は、図1に示したように3つに限定されるものではなく、いくつであっても良い。」

「【0055】
図2を参照すると、フォワーディング処理部10a〜10cのそれぞれは、物理回線終端部11と、ルーティングテーブル12と、キャッシュテーブル13と、第2の制御部14とを有している。」

「【0062】
(ルーティングテーブルの内容)
表4を参照すると、第1の制御部40は、ルーティングテーブル30に、ルーティングエントリごとに、宛先ネットワークアドレス、プレフィックス長、アップデートカウント値、ネクストホップアドレス、送信IF等を登録する。
【0063】
ルーティングテーブル30が従来のルーティングテーブルと大きく異なる点は、ルーティングエントリにアップデートカウント値を設定している点にある。ルーティングエントリが登録/削除された時に、第1の制御部40内のアップデートカウンタのアップデートカウント値がインクリメントされ、そのアップデートカウント値がルーティングエントリに設定される。アップデートカウント値は、フォワーディング処理部10a〜10c内のキャッシュテーブル13のキャッシュエントリの有効/無効の判定に用いられる。」

「【0080】
第1の制御部40は、ルーティングテーブル30を変更すると、フォワーディング処理部10a〜10c内のルーティングテーブル12を変更する制御を行う。これにより、ルーティングテーブル30とフォワーディング処理部10a〜10c内のルーティングテーブル12とは、同じ内容になる。」

「【0084】
(パケット受信時)
次に、フォワーディング処理部10a〜10cにおけるパケット受信時の動作について説明する。
【0085】
図4を参照すると、ステップ401で、物理回線終端部11が物理回線からインタフェースを介してパケットを受信すると、ステップ402で、第2の制御部14は、パケットのヘッダに付加された宛先ホストアドレスが、キャッシュテーブル13のキャッシュエントリのいずれかにヒットするか否かを検索する。
【0086】
ここで、キャッシュテーブル13は、図5に示すように構成されている。キャッシュエントリは、パケットプロファイルとルーティングエントリへのポインタからなる。第2の制御部14は、キャッシュエントリの登録時には、宛先ホストアドレスのハッシュ値を計算し、キャッシュテーブル13のハッシュ値に相当するエントリに登録する。なお、図5に示したキャッシュテーブル13は、同じハッシュ値に最大4つまで登録可能としている。また、第2の制御部14は、キャッシュエントリの検索時には、宛先ホストアドレスのハッシュ値を計算して、計算したハッシュ値に相当するエントリにキャッシュエントリが存在するかを検索する。ハッシュ値の計算は、宛先ホストアドレスおよびその他の情報を含むパケットプロファイルから計算しても良い。
【0087】
ステップ402でキャッシュエントリが検索された場合には、ステップ403を実行する。ステップ403では、第2の制御部14は、ステップ402で検索されたキャッシュエントリのアップデートカウント値と、そのキャッシュエントリのルートの決定に用いられたルーティングエントリのアップデートカウント値とが一致するか判定する。ステップ403でアップデートカウント値が一致する場合は、ステップ407を実行する。ステップ407では、第2の制御部14は、キャッシュエントリの情報を基に決定されたルートにパケットをフォワーディングする。
【0088】
また、ステップ403でアップデートカウント値が一致しない場合は、ステップ404を実行する。ステップ404では、第2の制御部14は、ステップ402で検索されたキャッシュエントリを無効と判定し、キャッシュテーブル13から削除した上でステップ405を実行する。また、ステップ402でキャッシュエントリが検索されない場合も、ステップ405を実行する。
【0089】
ステップ405では、第2の制御部14は、パケットのヘッダに付加された宛先ホストアドレスが、ルーティングテーブル12のルーティングエントリのいずれかにヒットするか否かを検索する。」

「【0093】
ステップ405でルーティングエントリが検索された場合には、ステップ406を実行する。ステップ406では、第2の制御部14は、ルーティングエントリを用いてルートが検索されたパケットの宛先ホストアドレスとそのルーティングエントリへのポインタを表すキャッシュエントリをキャッシュテーブル13に登録する。その際、そのルーティングエントリのカウント値をキャッシュエントリに設定する。また、ステップ407では、第2の制御部14は、ステップ405で検索されたルーティングエントリの情報を基に決定されたルートにパケットをフォワーディングする。」

「【図1】



「【図2】



「【図4】



以上より、引用文献2には、次の技術的事項が記載されていると認められる。

「 パケットのルートを決定するルータ装置におけるルート決定方法であって、
ルータ装置は、フォワーディング処理部10a〜10cと、スイッチ部20と、ルーティングテーブル30と、第1の制御部40とを有し、
フォワーディング処理部10a〜10cのそれぞれは、物理回線終端部11と、ルーティングテーブル12と、キャッシュテーブル13と、第2の制御部14とを有し、
第1の制御部40は、ルーティングテーブル30に、ルーティングエントリごとに、宛先ネットワークアドレス、プレフィックス長、アップデートカウント値、ネクストホップアドレス、送信IF等を登録し、
ルーティングエントリが登録/削除された時に、第1の制御部40内のアップデートカウンタのアップデートカウント値がインクリメントされ、そのアップデートカウント値がルーティングエントリに設定され、アップデートカウント値は、フォワーディング処理部10a〜10c内のキャッシュテーブル13のキャッシュエントリの有効/無効の判定に用いられ、
第1の制御部40は、ルーティングテーブル30を変更すると、フォワーディング処理部10a〜10c内のルーティングテーブル12を変更する制御を行い、これにより、ルーティングテーブル30とフォワーディング処理部10a〜10c内のルーティングテーブル12とは、同じ内容になり、
パケットを受信すると、第2の制御部14は、パケットのヘッダに付加された宛先ホストアドレスが、キャッシュテーブル13のキャッシュエントリのいずれかにヒットするか否かを検索し、
ここで、キャッシュテーブル13のキャッシュエントリは、パケットプロファイルとルーティングエントリへのポインタから構成され、
第2の制御部14は、キャッシュエントリの登録時には、宛先ホストアドレスのハッシュ値を計算し、キャッシュテーブル13のハッシュ値に相当するエントリに登録し、なお、キャッシュテーブル13は、同じハッシュ値に最大4つまで登録可能としており、
また、第2の制御部14は、キャッシュエントリの検索時には、宛先ホストアドレスのハッシュ値を計算して、計算したハッシュ値に相当するエントリにキャッシュエントリが存在するかを検索し、
キャッシュエントリが検索された場合には、第2の制御部14は、検索されたキャッシュエントリのアップデートカウント値と、そのキャッシュエントリのルートの決定に用いられたルーティングエントリのアップデートカウント値とが一致するか判定し、アップデートカウント値が一致する場合は、キャッシュエントリの情報を基に決定されたルートにパケットをフォワーディングし、
アップデートカウント値が一致しない場合、第2の制御部14は、検索されたキャッシュエントリを無効と判定し、キャッシュテーブル13から削除した上でステップ405を実行し、また、キャッシュエントリが検索されない場合も、ステップ405を実行し、
ステップ405では、第2の制御部14は、パケットのヘッダに付加された宛先ホストアドレスが、ルーティングテーブル12のルーティングエントリのいずれかにヒットするか否かを検索し、
ルーティングエントリが検索された場合には、第2の制御部14は、ルーティングエントリを用いてルートが検索されたパケットの宛先ホストアドレスとそのルーティングエントリへのポインタを表すキャッシュエントリをキャッシュテーブル13に登録し、その際、そのルーティングエントリのカウント値をキャッシュエントリに設定し、検索されたルーティングエントリの情報を基に決定されたルートにパケットをフォワーディングする、
ルート決定方法。」

(3)引用文献3
当審拒絶理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。

「[0001] [関連出願についての記載]
本発明は、日本国特許出願:特願2014−041624号(2014年3月4日出願)に基づくものであり、同出願の全記載内容は引用をもって本書に組み込み記載されているものとする。
本発明は、パケット処理装置、パケット処理方法およびプログラムに関し、特に、集中制御型のネットワークにおけるパケット処理装置、パケット処理方法およびプログラムに関する。」

「[0020] 図1は、一実施形態に係るパケット処理装置の構成を例示するブロック図である。図1を参照すると、パケット処理装置10は、パケットの処理内容を規定するアクションを含むアクションテーブル26と、パケットに適用するアクションを検索するためのルールを含むルールテーブル24を保持する記憶部13と、ルールテーブル24に含まれるルールを更新するルール制御部12と、受信したパケットに適用するアクションを、ルールテーブル24を用いてアクションテーブル26から検索し、検索したアクションに従って当該パケットを処理するとともに、検索したアクションに対するポインターを蓄積するパケット処理部16と、を備えている。パケット処理部16は、ポインターを蓄積した後、ルール制御部12によりルールテーブル24が更新されたか否かを判定し、更新されていない場合、受信したパケットに適用するアクションを、蓄積したポインターに従ってアクションテーブル26から抽出する。」

「[0033] ルール制御部12は、ルールテーブル24に対して、更新(例えば、追加・変更・削除など)を行う際、アクションテーブル26内にシーケンス番号を登録する。ここで、シーケンス番号とは、アクションテーブルを更新した際に、アクションテーブルの情報が書き換えられたことを示す情報をいう。一例として、シーケンス番号として、オーバフローしないような値(例えば、タイムスタンプ値等)を用いることができる。なお、本発明において、シーケンス番号は、タイムスタンプ値に限定されない。
[0034] パケット処理部16は、フローキャッシュテーブル28の作成時に、アクションテーブル26内のシーケンス番号をクッキー情報としてキャッシュし、フローキャッシュテーブル28内に登録する。
[0035] パケット処理部16は、フローキャッシュテーブル28を検索し、アクションテーブル26を参照する際に、フローキャッシュテーブル28内のシーケンス番号のクッキー情報と、アクションテーブル26内の現在のシーケンス番号とを比較する。両者が一致した場合、パケット処理部26は、ルールテーブル24が前回から更新されておらず、フローキャッシュテーブル28は有効であるものと判定して、処理を継続する。
[0036] 一方、両者が一致しない場合、パケット処理部16はルールテーブル24が前回参照してフローキャッシュエントリーを作成した時点からルール制御部12によって更新されたものと判定し、フローキャッシュテーブル28の該当エントリーは無効であると判定する。この場合、パケット処理部16は、フローキャッシュテーブル28の該当エントリーに対する無効フラグを0Nにする。また、パケット処理部16は、無効フラグをONに設定後、新規のフローキャッシュエントリーを作成するためにルールテーブル24を検索し、アクションテーブル26を参照する。このとき、検索がヒットすれば、パケット処理部16はヒットしたエントリーに従ってパケットを処理する。また、パケット処理部16は、パケット処理後、フローキャッシュテーブル28に新しいエントリーを登録する。
[0037] ただし、この方法だけでは、フローキャッシュテーブル28内の無効エントリーが残存し、メモリリソースが枯渇するおそれがある。そこで、パケット処理部16は、フローキャッシュテーブル28を周期的に検索し、無効フラグがONのエントリーを特定する。パケット処理部16は、無効フラグがONのエントリーを特定すると、該当エントリーの削除を行う。なお、フローキャッシュテーブル28から該当エントリーを削除した際にテーブルの構成に変更が生じる場合には、併せて、テーブルの構成の変更(例えば、ハッシュテーブルをチェーン法で形成しているときには、チェーンの組み換え操作)を行う。」

「[0054] 他の実施形態として、パケット処理部16は、フローキャッシュテーブル28が無効であると判定した際、該当エントリーを逐次削除処理するようにしてもよい。」

「[図1]



「[図2]



以上より、引用文献3には、次の技術的事項が記載されていると認められる。

「 パケット処理方法であって、
パケット処理装置10は、パケットの処理内容を規定するアクションを含むアクションテーブル26と、パケットに適用するアクションを検索するためのルールを含むルールテーブル24を保持する記憶部13と、ルールテーブル24に含まれるルールを更新するルール制御部12と、受信したパケットに適用するアクションを、ルールテーブル24を用いてアクションテーブル26から検索し、検索したアクションに従って当該パケットを処理するとともに、検索したアクションに対するポインターを蓄積するパケット処理部16と、を備え、
ルール制御部12は、ルールテーブル24に対して、更新(例えば、追加・変更・削除など)を行う際、アクションテーブル26内にシーケンス番号を登録し、シーケンス番号として、オーバフローしないような値(例えば、タイムスタンプ値等)を用いることができ、
パケット処理部16は、フローキャッシュテーブル28を検索し、アクションテーブル26を参照する際に、フローキャッシュテーブル28内のシーケンス番号のクッキー情報と、アクションテーブル26内の現在のシーケンス番号とを比較し、両者が一致した場合、ルールテーブル24が前回から更新されておらず、フローキャッシュテーブル28は有効であるものと判定して、処理を継続し、一方、両者が一致しない場合、ルールテーブル24が前回参照してフローキャッシュエントリーを作成した時点からルール制御部12によって更新されたものと判定し、フローキャッシュテーブル28の該当エントリーは無効であると判定し、フローキャッシュテーブル28の該当エントリーに対する無効フラグを0Nにし、
パケット処理部16は、フローキャッシュテーブル28を周期的に検索し、無効フラグがONのエントリーを特定し、無効フラグがONのエントリーを特定すると、該当エントリーの削除を行い、
他の実施形態として、パケット処理部16は、フローキャッシュテーブル28が無効であると判定した際、該当エントリーを逐次削除処理する、
パケット処理方法。」

2 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

ア 引用発明は、「ルータ装置の動作方法」に係るものであって、「ルータ装置」が、受信したパケットを他のネットワーク装置に転送(フォワーディング)する機能を備えることは本願優先日前の技術常識である。
これを踏まえると、引用発明は、「高速検索部1」が「キャッシュ用ルーティングエントリ格納メモリ(キャッシュメモリ)12」の「キャッシュエントリ」又は「通常検索部2」が「ルーティングテーブル格納メモリ22」の「ルーティングエントリ」を検索(アクセス)し、検索(アクセス)した「キャッシュエントリ」又は「ルーティングエントリ」を使用して前記転送(フォワーディング)を行うものといえる。また、「キャッシュエントリ」は「ルーティングエントリ」を「キャッシュ用ルーティングエントリ格納メモリ(キャッシュメモリ)12」にキャッシュしたものであるから、「キャッシュエントリ」を検索(アクセス)することは、「ルーティングエントリ」を検索(アクセス)することに等しい。
よって、引用発明の「キャッシュエントリ」及び「ルーティングエントリ」は、「フォワーディングエントリ」といい得るものであるから、引用発明の「ルータ装置の動作方法」は、「フォワーディングエントリ」を「検索」すなわち「アクセス」する方法といえる。
そうすると、引用発明の「ルータ装置の動作方法」は、本願発明1の「フォワーディングエントリアクセス方法」に相当する。

イ 引用発明の「高速検索部1」と「通常検索部2」の「キャッシュ書き込み処理部」と「キャッシュ管理部3」は、「キャッシュ用ルーティングエントリ格納メモリ(キャッシュメモリ)12」の読み書き及び管理を行うものであるから、本願発明1の「キャッシュコンポーネント」に相当し、また、引用発明の「通常検索部2」(「キャッシュ書き込み処理部」を除く。)は、「ルーティングテーブル格納メモリ22」を含み、当該「ルーティングテーブル格納メモリ22」の読み書きを行うものであるから、本願発明1の「ストレージコンポーネント」に相当する。
引用発明において、「高速検索部1」は、入力された「パケットの宛先IPアドレスの検索要求」に対して、当該「パケットの宛先IPアドレス」を示す最もネットワークアドレスマスク長が大きい「キャッシュエントリ」を検索し、見つからなかった場合には、「通常検索部2」へ処理を引き継ぎ、「通常検索部2」は、前記「パケットの宛先IPアドレス」を示す最もネットワークアドレスマスク長が大きい「ルーティングエントリ」を検索するものである。
また、「検索」は、「読み取る」ことを含む処理であるから、「高速検索部1」は、パケットの宛先IPアドレスの検索要求」を「受信」しているといえる。
そうすると、前記アを参酌すれば、引用発明の「高速検索部1」は、「通常検索部2」における読み取られるべき「フォワーディングエントリ」を読み取るための「パケットの宛先IPアドレスの検索要求」を受信する処理(ステップ)を行うものといえる。ここで、読み取られるべき「フォワーディングエントリ」を「第1フォワーディングエントリ」と称することは任意である。
また、引用発明の「パケットの宛先IPアドレスの検索要求」は、「パケットの宛先IPアドレス」を含む(キャリーする)ものであって、当該「パケットの宛先IPアドレス」は、読み取られるべき「第1フォワーディングエントリ」に含まれることが想定されている。
よって、引用発明の「パケットの宛先IPアドレス」と、本願発明1において、「エントリ読み取りコマンド」にキャリーされる「ストレージコンポーネントにおける読み取られるべき第1フォワーディングエントリの記憶アドレス」とは、「ストレージコンポーネントにおける読み取られるべき第1フォワーディングエントリに関連する情報」である点において共通する。
以上より、引用発明において、「高速検索部1」が「パケットの宛先IPアドレスの検索要求」を受信する処理(ステップ)を行うことと、本願発明1の「キャッシュコンポーネントは、フォワーディングコンポーネントから送信された、ストレージコンポーネントにおける読み取られるべき第1フォワーディングエントリの記憶アドレスをキャリーするエントリ読み取りコマンドを受信するステップ」とは、「キャッシュコンポーネントは、送信された、ストレージコンポーネントにおける読み取られるべき第1フォワーディングエントリに関連する情報をキャリーするエントリ読み取りコマンドを受信するステップ」である点において共通する。

ウ 引用発明において、「高速検索部1」が検索の対象とする「キャッシュエントリ」と、本願発明1において「キャッシュコンポーネント」が検索の対象とする「第1Hashバケット」とは、「検索対象情報」である点において共通する。
また、引用発明において、「パケットの宛先IPアドレス」を示す最もネットワークアドレスマスク長が大きい「キャッシュエントリ」を検索することは、「パケットの宛先IPアドレス」と、含む情報とが同一である「キャッシュエントリ」を検索することに等しい。
よって、引用発明において、「高速検索部1」が「パケットの宛先IPアドレス」を示す最もネットワークアドレスマスク長が大きい「キャッシュエントリ」を検索することと、本願発明1の「前記キャッシュコンポーネントは、前記第1フォワーディングエントリの記憶アドレスに基づいて、ローカルで有効状態にあり且つ含む記憶アドレスが前記第1フォワーディングエントリの記憶アドレスと同一である第1Hashバケットを検索するステップ」とは、前記イを参酌すれば、「前記キャッシュコンポーネントは、前記第1フォワーディングエントリに関連する情報に基づいて、含む情報が前記第1フォワーディングエントリに関連する情報と同一である検索対象情報を検索するステップ」である点において共通する。

エ 引用発明の「キャッシュ用ルーティングエントリ格納メモリ(キャッシュメモリ)12」は、本願発明1の「キャッシュスペース」に相当する。
また、引用発明において、「高速検索部1」が「パケットの宛先IPアドレス」を示す最もネットワークアドレスマスク長が大きい「キャッシュエントリ」を検索することができた場合、検索結果として出力(送信)される「キャッシュエントリ」の内容は、前記イ及びウを参酌すれば、「検索対象情報」に対応した「第1フォワーディングエントリ」といえる。
よって、引用発明において、「高速検索部1」が「パケットの宛先IPアドレス」を示す最もネットワークアドレスマスク長が大きい「キャッシュエントリ」を検索することができた場合、検索結果として「キャッシュエントリ」の内容を出力(送信)することと、本願発明1の「前記キャッシュコンポーネントは、前記第1Hashバケットを見つけた時、前記第1Hashバケットに対応するキャッシュスペースにキャッシュされた前記第1フォワーディングエントリを前記フォワーディングコンポーネントに送信するステップ」とは、前記イないしエを参酌すれば、「前記キャッシュコンポーネントは、前記検索対象情報を見つけた時、前記検索対象情報に対応するキャッシュスペースにキャッシュされた前記第1フォワーディングエントリを送信するステップ」である点において共通する。

オ 引用発明は、「キャッシュ監視タイマ処理部33は、キャッシュ用ルーティングエントリ格納メモリ12を監視し、一定時間以上使用されていないキャッシュエントリを削除する」ものであるが、ここで、「キャッシュエントリ」が使用されることには、「キャッシュエントリ」の内容を出力(送信)することが含まれる。
よって、引用発明において、「キャッシュ管理部3」が備える「キャッシュ監視タイマ処理部33」は、「キャッシュエントリ」の内容を出力(送信)した時間を「タイムスタンプ」として管理しており、また、「キャッシュエントリ」の内容を出力(送信)した時に「タイムスタンプ」を更新(アップデート)しているといえる。
よって、前記ウ及びエを参酌すれば、引用発明と本願発明1の「前記キャッシュコンポーネントは、前記第1Hashバケットに含まれるタイムスタンプを、前記第1Hashバケットに対応するキャッシュスペースにキャッシュされた前記第1フォワーディングエントリを前記フォワーディングコンポーネントに送信する時の時間にアップデートするステップ」とは、「前記キャッシュコンポーネントは、タイムスタンプを、前記検索対象情報に対応するキャッシュスペースにキャッシュされた前記第1フォワーディングエントリを前記送信する時の時間にアップデートするステップ」との共通の構成を備える。

カ 引用発明において、「高速検索部2」のキャッシュ検索処理において、「キャッシュエントリ」が見つからなかった場合に、「通常検索部2」が、「宛先IPアドレスD」を受け取り、「ルーティングテーブル格納メモリ22」の「ルーティングエントリ」を検索し、検索の結果、見つかった「ルーティングエントリ」を「キャッシュ書き込み処理部23」に渡し、「キャッシュ書き込み処理部23」が、取得した「宛先IPアドレスD」を「高速検索部1」を介して出力することと、本願発明1の「前記キャッシュコンポーネントは、前記第1Hashバケットを見つけられなかった時、前記ストレージコンポーネントから前記第1フォワーディングエントリを読み取り、読み取った前記第1フォワーディングエントリを前記フォワーディングコンポーネントに送信するステップ」とは、前記イ及びウを参酌すれば、「前記キャッシュコンポーネントは、前記検索対象情報を見つけられなかった時、前記ストレージコンポーネントから前記第1フォワーディングエントリを読み取り、読み取った前記第1フォワーディングエントリを送信するステップ」である点において共通する。

キ 引用発明は、
「ルーティングテーブル検索処理部21からの検索結果をキャッシュ用ルーティングエントリ格納メモリ12へ格納するキャッシュ書き込み処理部23」及び
「検索の結果、見つかったルーティングエントリは、宛先IPアドレスDと共に、キャッシュ書き込み処理部23に渡され、
キャッシュ書き込み処理部23は、ルーティングテーブル検索処理部21から宛先IPアドレスDを取得し、高速検索部1を介して出力し、」
との構成を備えることから、引用発明においては、「通常検索部2」の「ルーティングテーブル検索処理部21」が「ルーティングテーブル格納メモリ22」から「ルーティングエントリ」を読み取った後、「通常検索部2」の「キャッシュ書き込み処理部23」は、「高速検索部1」を介して、読み取った「ルーティングエントリ」を「宛先IPアドレスD」とともに、「キャッシュ用ルーティングエントリ格納メモリ(キャッシュメモリ)12」の所定の「キャッシュエントリ」に書き込む処理を行っているといえる。
ここで、引用発明において、読み取った「ルーティングエントリ」と「宛先IPアドレスD」が書き込まれる所定の「キャッシュエントリ」が存在する「キャッシュ用ルーティングエントリ格納メモリ(キャッシュメモリ)12」上の場所と、本願発明1の「前記第2Hashバケットに対応するキャッシュスペース」とは、「所定のキャッシュスペース」である点において共通する。
よって、引用発明において、「通常検索部2」の「キャッシュ書き込み処理部23」が「高速検索部1」を介して、読み取った「ルーティングエントリ」を「宛先IPアドレスD」とともに、「キャッシュ用ルーティングエントリ格納メモリ(キャッシュメモリ)12」の所定の「キャッシュエントリ」に書き込む処理を行うことと、
本願発明1の
「 ストレージコンポーネントから前記第1フォワーディングエントリを読み取った後、
前記キャッシュコンポーネントは、前記第1フォワーディングエントリの記憶アドレスに基づいて、ローカルで無効状態にある第2Hashバケットを検索するステップと、
前記キャッシュコンポーネントは、前記第2Hashバケットを見つけた時、前記第1フォワーディングエントリを前記第2Hashバケットに対応するキャッシュスペースに書き込み、前記第2Hashバケットの状態を有効にアップデートし、前記第2Hashバケットに含まれる記憶アドレスを前記第1フォワーディングエントリの記憶アドレスにアップデートするステップ」
とは、
「 ストレージコンポーネントから前記第1フォワーディングエントリを読み取った後、
前記キャッシュコンポーネントは、前記第1フォワーディングエントリを所定のキャッシュスペースに書き込み、前記所定のキャッシュスペースに含まれる情報を前記第1フォワーディングエントリに関連する情報にアップデートするステップ」
である点において共通する。

(2)一致点、相違点
したがって、本願発明1と引用発明とは、次の点において一致ないし相違する。

[一致点]
「 フォワーディングエントリアクセス方法であって、
キャッシュコンポーネントは、送信された、ストレージコンポーネントにおける読み取られるべき第1フォワーディングエントリに関連する情報をキャリーするエントリ読み取りコマンドを受信するステップと、
前記キャッシュコンポーネントは、前記第1フォワーディングエントリに関連する情報に基づいて、含む情報が前記第1フォワーディングエントリに関連する情報と同一である検索対象情報を検索するステップと、
前記キャッシュコンポーネントは、前記検索対象情報を見つけた時、前記検索対象情報に対応するキャッシュスペースにキャッシュされた前記第1フォワーディングエントリを送信するステップと、
前記キャッシュコンポーネントは、タイムスタンプを、前記検索対象情報に対応するキャッシュスペースにキャッシュされた前記第1フォワーディングエントリを前記送信する時の時間にアップデートするステップと、
前記キャッシュコンポーネントは、前記検索対象情報を見つけられなかった時、前記ストレージコンポーネントから前記第1フォワーディングエントリを読み取り、読み取った前記第1フォワーディングエントリを送信するステップと、
ストレージコンポーネントから前記第1フォワーディングエントリを読み取った後、
前記キャッシュコンポーネントは、前記第1フォワーディングエントリを所定のキャッシュスペースに書き込むステップと、
を含むことを特徴とする方法。」

[相違点]
<相違点1>
本願発明1においては、「キャッシュコンポーネント」は、「エントリ読み取りコマンド」を「フォワーディングコンポーネント」から受信し、キャッシュされた又は読み取った「第1フォワーディングエントリ」を「フォワーディングコンポーネント」に送信するのに対し、引用発明において、「高速検索部1」は、「パケットの宛先IPアドレスの検索要求」をどこから入力(受信)し、また、検索結果である「キャッシュエントリ」及び「ルーティングエントリ」をどこに出力(送信)するのか具体的に特定していない点。

<相違点2>
共通点である「第1フォワーディングエントリに関連する情報」が、本願発明1では、「第1フォワーディングエントリの記憶アドレス」であるのに対し、引用発明は、「パケットの宛先IPアドレスD」である点。

<相違点3>
共通点である「検索対象情報」が、本願発明1においては「ローカルで有効状態」にある「第1Hashバケット」であるのに対し、引用発明は、「パケットの宛先IPアドレスD」である点。

<相違点4>
本願発明1においては、「タイムスタンプ」が「(「第1」「第2」又は「第3」)Hashバケット」に含まれるのに対し、引用発明において、「キャッシュエントリ」の内容を出力(送信)した時間(タイムスタンプ)をどのように管理するのか具体的に特定していない点。

<相違点5>
「ストレージコンポーネントから前記第1フォワーディングエントリを読み取った後」の処理として、
本願発明1は、
「 前記キャッシュコンポーネントは、前記第1フォワーディングエントリの記憶アドレスに基づいて、ローカルで無効状態にある第2Hashバケットを検索するステップと、
前記キャッシュコンポーネントは、前記第2Hashバケットを見つけた時、前記第1フォワーディングエントリを前記第2Hashバケットに対応するキャッシュスペースに書き込み、前記第2Hashバケットの状態を有効にアップデートし、前記第2Hashバケットに含まれる記憶アドレスを前記第1フォワーディングエントリの記憶アドレスにアップデートするステップと、
前記キャッシュコンポーネントは、前記第2Hashバケットに含まれるタイムスタンプを、前記第1フォワーディングエントリが前記第2Hashバケットに対応するキャッシュスペースに書き込まれる時の時間にアップデートするステップと、を含み、
前記第2Hashバケットが見つからなかった時、前記キャッシュコンポーネントは、前記第1フォワーディングエントリの記憶アドレスに基づいて、ローカルで含むタイムスタンプと現在時間の差分値が予め設定されたタイムアウト時間より大きい第3Hashバケットを検索するステップと、
前記第3Hashバケットが見つかった時、前記キャッシュコンポーネントは、前記第1フォワーディングエントリを前記第3Hashバケットに対応するキャッシュスペースに書き込み、前記第3Hashバケットに含まれるタイムスタンプを、前記第1フォワーディングエントリを前記第3Hashバケットに対応するキャッシュスペースに書き込む時間にアップデートし、前記第3Hashバケットに含まれる記憶アドレスを前記第1フォワーディングエントリの記憶アドレスにアップデートするステップ」という一点の処理を含むのに対し、
引用発明は、「通常検索部2」の「キャッシュ書き込み処理部23」は、「高速検索部1」を介して、読み取った「ルーティングエントリ」を「宛先IPアドレスD」とともに、「キャッシュ用ルーティングエントリ格納メモリ(キャッシュメモリ)12」の所定の「キャッシュエントリ」に書き込む処理を行う点。

(3)相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点5について先に検討する。
相違点5に係る本願発明1の構成は、要するに、「ストレージコンポーネント」から読み取った「第1フォワーディングエントリ」を「キャッシュスペース」に書き込むにあたり、まず、「無効」な状態の「第2Hashバケット」を検索し、見つからなかった場合に、その「タイムスタンプ」と「現在の時間」との差分が「タイムアウト時間」よりも大きい「第3Hashバケット」を検索し、検索により見つかった「第2Hashバケット」又は「第3Hashバケット」に対応する「キャッシュスペース」に「第1フォワーディングエントリ」を書き込むとともに、前記「第2Hashバケット」又は「第3Hashバケット」の「タイムスタンプ」を、前記書き込みをした時間にアップデートするという一連の処理を含むものといえる。
一方、引用文献1ないし3には、「時間」、「タイムカウント値」又は「有効/無効」の状態をキャッシュエントリの管理に使用することについて記載があるものの、上記相違点5に係る本願発明1の構成に係る一連の処理については記載されておらず、また、当該一連の処理を行うことがキャッシュエントリの管理に係る本願優先日前の周知技術又は技術常識であったとは認められない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用文献1ないし3に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2ないし4について
本願発明2ないし4も、上記相違点5に係る本願発明1の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1ないし3に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

3 本願発明5ないし8について
本願発明5は、本願発明1を「ネットワーク機器」として特定した発明であり、本願発明6ないし8は、本願発明5を減縮したものであり、本願発明5ないし8は、上記相違点5に係る本願発明1の構成に対応する技術事項を備えているから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1ないし3に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

4 本願発明9について
本願発明9は、本願発明9は、本願発明5の構成をより具体化した「ネットワーク機器」の発明であり、上記相違点5に係る本願発明1の構成に対応する技術事項を備えているから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1ないし3に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第7 原査定についての判断
本願発明1ないし9は、「フォワーディングコンポーネント」が、「ストレージコンポーネントにおける読み取られるべき第1フォワーディングエントリの記憶アドレス」を予め認識又は取得することができることを前提に、当該「記憶アドレス」をキャリーする「エントリ読み取りコマンド」を送信することを明確に理解することができるから、その前提となる構成として、「フォワーディングコンポーネント」が「第1フォワーディングエントリの記憶アドレス」を認識又は取得するための具体的な手法が特許請求の範囲の記載に特定されていないことのみをもって本願発明1ないし9が明確ではないとはいえない。
また、本願発明1ないし9において、「第1フォワーディングエントリの記憶アドレス」を認識又は取得する方法は任意であるが、処理に必要な情報を所定のタイミングで設定することは本願優先日前の周知技術であるから、例えば、「第1フォワーディングエントリの記憶アドレス」を事前に又は任意のタイミングで自動もしくは手動で「フォワーディングコンポーネント」に設定することは当業者であれば想起可能なことである。また、本願明細書の【0034】、引用文献2の【0086】に記載されているように、所定の情報にハッシュ演算をすることより当該所定の情報又はこれに関連する情報を記憶するアドレスを一意に算出する手法は本願優先日前の周知技術といえるから、例えば、「フォワーディングコンポーネント」が、フォワーディングすべき通信パケットにハッシュ演算を行って算出したものを、当該通信パケットをフォワーディングするために必要な情報を記憶する「第1フォワーディングエントリの記憶アドレス」として認識又は取得することも、当業者であれば想起可能なことである。
よって、「第1フォワーディングエントリの記憶アドレス」を認識又は取得するための具体的な手法が明細書又は図面に明示的に記載されていないことのみをもって本願発明1ないし9を当業者が実施することができないということにはならず、本願優先日前の周知技術を参酌すれば、発明の詳細な説明は、当業者が本願発明1ないし9を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。
したがって、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-12-08 
出願番号 P2019-500254
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04L)
P 1 8・ 536- WY (H04L)
P 1 8・ 537- WY (H04L)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 角田 慎治
特許庁審判官 林 毅
小田 浩
発明の名称 フォワーディングエントリアクセス  
代理人 特許業務法人後藤特許事務所  

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