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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04L
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04L
管理番号 1380483
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-09-28 
確定日 2022-01-04 
事件の表示 特願2018−511213「受動光ネットワーク通信方法及び装置並びにシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 3月16日国際公開、WO2017/041210、平成30年 9月13日国内公表、特表2018−526918、請求項の数(25)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)9月7日を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は次のとおりである。

平成30年 4月 3日 :手続補正書の提出
平成31年 2月 8日付け:拒絶理由通知書
令和 元年 5月16日 :意見書、手続補正書の提出
令和 元年10月31日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 1月27日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 6月 4日付け:拒絶査定(原査定)
令和 2年 9月28日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 3年 8月10日付け:拒絶理由(当審拒絶理由)通知書
令和 3年10月28日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明
本願請求項1ないし25に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明25」という。)は、令和3年10月28日に提出された手続補正書に係る手続補正(以下、「本件補正」という。)で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし25に記載された事項により特定される発明であり、このうち本願発明1、11、16及び22は、以下のとおりの発明である。(下線は、補正された箇所を示す。)

[本願発明1]
「 受動光ネットワークPON通信方法であって、
光回線終端装置OLTが、光ネットワークユニットONUに、現在利用可能な波長チャネルに関する情報を含む応答メッセージを送信するよう要求する要求メッセージを送信する段階と、
前記光ネットワークユニットONUが前記要求メッセージを受信して、現在サポートされている前記波長チャネルの最大数および現在利用可能な前記波長チャネルの数を含む前記応答メッセージを前記光回線終端装置OLTに送信する段階と、
前記光回線終端装置OLTが光ネットワークユニットONUの波長チャネルグループ、及び前記波長チャネルグループ内の波長チャネルを決定する段階と、
前記光回線終端装置OLTが第1のメッセージを前記光ネットワークユニットONUへ送信する段階と
を備え、
前記第1のメッセージは、前記光回線終端装置OLTが前記波長チャネルグループを確立するよう前記光ネットワークユニットONUに命令するために用いられ、前記波長チャネルグループの識別情報、及び前記波長チャネルグループ内の前記波長チャネルの識別情報を搬送する方法であって、
それぞれの前記波長チャネルグループは複数の波長チャネルを含み、
それぞれの前記波長チャネルは1組の上り波長及び下り波長を用い、
前記方法はさらに、前記光ネットワークユニットONUの前記波長チャネルグループと、前記波長チャネルグループ内の前記波長チャネルとの間のマッピング関係を格納するために、波長チャネルグループマッピングテーブルを前記光回線終端装置OLTによってローカルに確立する段階を備え、
前記波長チャネルグループマッピングテーブルは、前記現在サポートされている波長チャネルの最大数、前記現在利用可能な波長チャネルの数、前記波長チャネルグループの識別情報および前記波長チャネルの識別情報を含む、方法。」

[本願発明11]
「 受動光ネットワークPON通信装置であって、
光ネットワークユニットONUの波長チャネルグループ、及び前記波長チャネルグループ内の波長チャネルを決定する処理ユニットと、
現在利用可能な波長チャネルに関する情報を含む応答メッセージを送信するよう要求する要求メッセージと、第1のメッセージを前記光ネットワークユニットONUへ送信する送信ユニットと、
現在サポートされている前記波長チャネルの最大数および現在利用可能な前記波長チャネルの数を含む前記応答メッセージを受信する受信ユニットと
を備え、
前記第1のメッセージは、前記処理ユニットが前記波長チャネルグループを確立するよう前記光ネットワークユニットONUに命令するために用いられ、前記波長チャネルグループの識別情報、及び前記波長チャネルグループ内の前記波長チャネルの識別情報を搬送する装置であって、
それぞれの前記波長チャネルグループは複数の波長チャネルを含み、
それぞれの前記波長チャネルは1組の上り波長及び下り波長を用い、
前記処理ユニットはさらに、前記光ネットワークユニットONUの前記波長チャネルグループと、前記波長チャネルグループ内の前記波長チャネルとの間のマッピング関係を格納するために、波長チャネルグループマッピングテーブルを確立し、
前記波長チャネルグループマッピングテーブルは、前記現在サポートされている波長チャネルの最大数、前記現在利用可能な波長チャネルの数、前記波長チャネルグループの識別情報および波長チャネルの識別情報を含む、装置。」

[本願発明16]
「 受動光ネットワーク通信方法であって、
光ネットワークユニットONUが、現在利用可能な波長チャネルに関する情報を含む応答メッセージを送信するよう要求する要求メッセージを光回線終端装置OLTから受信する段階と、
光ネットワークユニットONUが、現在サポートされている前記波長チャネルの最大数および現在利用可能な前記波長チャネルの数を含む前記応答メッセージを前記光回線終端装置OLTに送信する段階と、
光ネットワークユニットONUが、第1のメッセージを光回線終端装置OLTから受信する段階であって、前記第1のメッセージは、波長チャネルグループを確立するよう光ネットワークユニットONUに命令するために用いられ、前記波長チャネルグループの識別情報、及び前記波長チャネルグループ内の波長チャネルの識別情報を搬送する、段階と、
前記第1のメッセージに従って、前記光ネットワークユニットONUが前記波長チャネルグループを確立する段階と
を備える方法であって、
それぞれの前記波長チャネルグループは複数の波長チャネルを含み、
それぞれの前記波長チャネルは1組の上り波長及び下り波長を用い、
前記方法はさらに、前記光ネットワークユニットONUの前記波長チャネルグループと、前記波長チャネルグループ内の前記波長チャネルとの間のマッピング関係を格納するために、波長チャネルグループマッピングテーブルを前記光ネットワークユニットONUによって確立する段階を備え、
前記波長チャネルグループマッピングテーブルは、前記現在サポートされている波長チャネルの最大数、前記現在利用可能な波長チャネルの数、波長チャネルグループの識別情報および波長チャネルの識別情報を含む、方法。」

[本願発明22]
「 受動光ネットワークPON通信装置であって、
現在利用可能な波長チャネルに関する情報を含む応答メッセージを送信するよう要求する要求メッセージおよび第1のメッセージを光回線終端装置OLTから受信する受信ユニットであって、前記第1のメッセージは、前記光回線終端装置OLTが波長チャネルグループを確立するよう光ネットワークユニットONUに命令するために用いられ、
前記波長チャネルグループの識別情報、及び前記波長チャネルグループ内の波長チャネルの識別情報を搬送する、受信ユニットと、
現在サポートされている前記波長チャネルの最大数および現在利用可能な前記波長チャネルの数を含む前記応答メッセージを前記光回線終端装置OLTに送信する送信ユニットと、
前記第1のメッセージに従って、前記波長チャネルグループを確立する処理ユニットと
を備える装置であって、
それぞれの前記波長チャネルグループは複数の波長チャネルを含み、
それぞれの前記波長チャネルは1組の上り波長及び下り波長を用い、
前記処理ユニットはさらに、波長チャネルグループと波長チャネルとの間のマッピング関係に関する情報を格納するために、波長チャネルグループマッピングテーブルを確立し、
前記波長チャネルグループマッピングテーブルは、前記現在サポートされている波長チャネルの最大数、前記現在利用可能な波長チャネルの数、前記波長チャネルグループの識別情報および前記波長チャネルの機別情報を含む、装置。」

なお、本願発明2ないし10は、本願発明1を減縮した発明であり、本願発明12ないし15は、本願発明11を減縮した発明であり、本願発明17ないし21は、本願発明16を減縮した発明であり、本願発明23ないし25は、本願発明22を減縮した発明である。

第3 原査定の概要
令和2年6月4日付けの拒絶査定(以下、「原査定」という。)の概要は次のとおりである。

本願の請求項1ないし29に係る発明は、特開2011−82908号公報(以下、単に「引用文献」という。)に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 当審拒絶理由の概要
令和3年8月10日付けで通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の概要は次のとおりである。

本願は、特許請求の範囲の記載が以下の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

(1)「第1のメッセージ」に含まれる「波長チャネルグループの識別情報」及び「前記波長チャネルグループ内の波長チャネルの識別情報」(請求項1及び11)、及び「波長チャネルグループの識別子」及び「前記波長チャネルグループ内の波長チャネルの識別子」(請求項16及び22)が、何に基づいて決定されるのか明確ではない。
(2)請求項1及び11の記載において、「前記波長チャネルグループマッピングテーブル」に含まれる、「現在サポートされているチャネルの最大数」及び「現在利用可能なチャネルの数」を、どのように取得ないし生成するのか明確ではない。
(3)請求項2に記載の「前記波長チャネルの識別子」における「前記波長チャネル」は、どの「波長チャネル」を指すのか明確ではない。
(4)「第1のメッセージ」について請求項16の記載と請求項17の記載とが整合せず、請求項17に係る「第1のメッセージ」の機能が不明確である。

第5 当審拒絶理由についての判断
本件補正により、
(1)本件補正後の請求項1及び11の記載においては、「第1のメッセージ」を送信する「光回線終端装置OLT」又は「受動光ネットワークPON通信装置」が、「現在サポートされている前記波長チャネルの最大数および現在利用可能な前記波長チャネルの数」を含む「応答メッセージ」を受信する構成を含むことによって、当該「現在サポートされている前記波長チャネルの最大数および現在利用可能な前記波長チャネルの数」を、前記「応答メッセージ」に応じて決定することが明確となった。
同様に、本件補正後の請求項16及び22の記載においては、「第1のメッセージ」を受信する「光ネットワークユニットONU」又は「受動光ネットワークPON通信装置」が、「現在サポートされている前記波長チャネルの最大数および現在利用可能な前記波長チャネルの数」を含む「応答メッセージ」を「光回線終端装置OLT」に送信する構成を含むことによって、当該「光回線終端装置OLT」が、当該「現在サポートされている前記波長チャネルの最大数および現在利用可能な前記波長チャネルの数」を、「応答メッセージ」に応じて決定することが明確となった。
(2)本件補正後の請求項1及び11の記載においては、送信又は受信した「応答メッセージ」に含まれる「現在サポートされているチャネルの最大数」及び「現在利用可能なチャネルの数」を「波長チャネルマッピングテーブル」に含めることが明確となった。
(3)本件補正前の請求項2に記載されていた「前記波長チャネルの識別子」は、「前記現在利用可能な波長チャネルの前記識別情報」に補正され、明確となった。
(4)本件補正前の請求項17に記載されていた「前記第1のメッセージは、前記波長チャネルの前記識別子を報告するよう前記光ネットワークONUに要求するために用いられる」は、「前記要求メッセージは、前記現在利用可能な波長チャネルの前記識別情報を報告するよう前記光ネットワークONUに要求するために用いられる」に補正され、本件補正後の請求項16の記載と整合がとれ、明確となった。

以上より、当審拒絶理由は、解消した。

第6 原査定についての判断
1 引用文献について
(1)引用文献記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばPON(Passive Optical Network)システムなど、局内装置(OLT;Optical Line Terminator)に、複数の加入者装置(ONT;Optical Network Terminal/ONU;Optical Network Unit、以下、ONUと呼ぶ)が接続されて構成されるポイントツーマルチポイントの光通信システムに用いられる局内装置、光通信システム、帯域割当方法、および装置のプログラムに関する。」

「【0026】
図1〜図3に本実施形態の構成例を示す。
図1に示すPONシステムの構成例では、下り信号(OLT→ONU方向)に波長λ1、λ3を割り当て、上り信号(ONU→OLT方向)に波長λ2、λ4を割当てた状態を示している。
【0027】
ONU1〜3は下り信号として波長λ1、上り信号として波長λ2が割当てられておりひとつの波長グループ(波長グループ1)を形成している。ONU1〜3とOLTの間の通信にはこの波長を用いてTDM多重が適用される。
ONU4〜6は下り信号として波長λ3、上り信号として波長λ4が割当てられておりこれもひとつの波長グループ(波長グループ2)を形成している。ONU4〜6とOLTの間の通信にはこの波長を用いてTDM多重が適用される。」

「【0029】
図2は、本実施形態としてのOLTの構成例を示す。
下り信号に関しては、分離部と、クロスコネクト部と、振分け多重部と、複数の可変波長レーザ(LD;Laser Diode)と、波長多重部と、下りトラフィック計測部と、下り波長・タイムスロット割当て部とを備えて構成され、図2に示すように結線される。上り信号に関しては、波長分離部と、複数のフォトダイオード(PD)と、分離部と、クロスコネクト部と、多重部と、上り帯域要求抽出・分析部と、のぼり波長・タイムスロット割当て部とを備えて構成され、図2に示すように結線される。
このほか光伝送路とのインタフェース部分には波長多重分離部を備え、下り信号処理部分と上り信号部分とを結んでいる。
【0030】
図3は、本実施形態としてのONUの構成例を示す。
次段機器とのインタフェース部と、上り信号処理部と、可変波長レーザ(LD)と、フォトダイオード(PD)と、下り信号処理部と、上り波長・タイムスロット割当て情報抽出・分析部とを備えて構成され、図3に示すように結線される。また、光伝送路とのインタフェース部分に波長多重分離部を備える。
【0031】
次に、本実施形態による動作について説明する。
図2の構成例により説明すると、前段の機器からOLTに入力された下り信号は、分離部でONU毎の信号(パケットやフレーム等)に分解される。それぞれの信号のトラフィック量は下りトラフィック計測部でモニターされ、その結果は下り波長・タイムスロット割当て部に通知される。下り波長・タイムスロット割当て部は予め定められた規則に従って各ONUに向かう信号に割当てる波長・タイムスロットを決定し、制御信号によってクロスコネクト部と振分け多重部の動作を制御する。
図2の例ではONU2とONU3に向かうトラフィックが比較的多く、ONU1,ONU4〜6に向かうトラフィックが比較的少ない場合の動作を例示している。」

「【0034】
各ONUの上り信号は上り帯域要求の情報を含んでおり、これは上り帯域要求抽出・分析部でモニターされる。上り波長・タイムスロット割当て部において帯域要求と予め定められた規則にしたがって上り波長とタイムスロットの割り当てが決定され、この情報は下り信号の振分け多重部に通知される。振分け多重部は割り当て情報をONUの制御情報として下り信号の中に挿入する。
【0035】
また、割当て情報は上りクロスコネクト部の制御信号として使用され信号の入れ替え制御に使用される。図2の例ではONU2とONU3からのトラフィックが比較的多く、ONU1,ONU4〜6からのトラフィックが比較的少ない場合の動作を例示している。これは上りのトラフィック状態と同じであるが、実際には、上りと下りのトラフィックは独立に変化し得るので上りの波長グループと下りの波長グループは無関係で互いに独立のグループ構成をとり得る。
【0036】
図2の例のように波長割り当てが行われている場合のPONシステムにおける波長グループ分けの例を図4に示す。また、図4の波長割り当てにおける上り下りのフレームの例を図5に示す。
図5中、右向きの矢印が下り方向、左向きの矢印が上り方向を示している。OHはフレームのオーバーヘッドを示す。また、ONU1〜ONU6と表示された部分はそれぞれのONUに割当てられたタイムスロットを示している。」

「【0047】
また、上述した実施形態では、1つのONUに上り信号、下り信号それぞれ1つずつの波長を割り当てることとして説明したが、この構成に限定されず、1つのONUにおける上り信号、下り信号それぞれに複数の波長を割り当ててそれを動的に変化させる構成および方法も可能である。その場合のONUの構成例を図7に示す。
この場合、OLTの下り波長・タイムスロット割当て部および上り波長・タイムスロット割当て部が、上述のように予め格納した割り当て規則情報に基づいて、各ONUにおける上り信号および下り信号それぞれに1つ以上の波長を割り当てるよう割り当てを行う。」

「【図1】



「【図2】



「【図3】



「【図4】



「【図7】



(2)引用発明
前記(1)より、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 局内装置(OLT)に複数の加入者装置(ONU)が接続されて構成されるPONシステムにおける帯域割当方法であって、
PONシステムの構成例では、下り信号(OLT→ONU方向)に波長λ1、λ3を割り当て、上り信号(ONU→OLT方向)に波長λ2、λ4を割当てた状態を示し、
ONU1〜3は下り信号として波長λ1、上り信号として波長λ2が割当てられておりひとつの波長グループ(波長グループ1)を形成し、ONU4〜6は下り信号として波長λ3、上り信号として波長λ4が割当てられておりこれもひとつの波長グループ(波長グループ2)を形成し、
OLTは、下り信号に関しては、分離部と、クロスコネクト部と、振分け多重部と、複数の可変波長レーザと、波長多重部と、下りトラフィック計測部と、下り波長・タイムスロット割当て部とを備え、上り信号に関しては、波長分離部と、複数のフォトダイオード(PD)と、分離部と、クロスコネクト部と、多重部と、上り帯域要求抽出・分析部と、のぼり波長・タイムスロット割当て部とを備え、
ONUは、次段機器とのインタフェース部と、上り信号処理部と、可変波長レーザ(LD)と、フォトダイオード(PD)と、下り信号処理部と、上り波長・タイムスロット割当て情報抽出・分析部とを備え、また、光伝送路とのインタフェース部分に波長多重分離部を備え、
前段の機器からOLTに入力された下り信号は、分離部でONU毎の信号(パケットやフレーム等)に分解され、それぞれの信号のトラフィック量は下りトラフィック計測部でモニターされ、その結果は下り波長・タイムスロット割当て部に通知され、下り波長・タイムスロット割当て部は予め定められた規則に従って各ONUに向かう信号に割当てる波長・タイムスロットを決定し、制御信号によってクロスコネクト部と振分け多重部の動作を制御し、
各ONUの上り信号は上り帯域要求の情報を含んでおり、これは上り帯域要求抽出・分析部でモニターされ、上り波長・タイムスロット割当て部において帯域要求と予め定められた規則にしたがって上り波長とタイムスロットの割り当てが決定され、この情報は下り信号の振分け多重部に通知され、振分け多重部は割り当て情報をONUの制御情報として下り信号の中に挿入し、割当て情報は上りクロスコネクト部の制御信号として使用され信号の入れ替え制御に使用され、
上りと下りのトラフィックは独立に変化し得るので上りの波長グループと下りの波長グループは無関係で互いに独立のグループ構成をとり得、
1つのONUにおける上り信号、下り信号それぞれに複数の波長を割り当ててそれを動的に変化させる構成および方法も可能であり、この場合、OLTの下り波長・タイムスロット割当て部および上り波長・タイムスロット割当て部が、予め格納した割り当て規則情報に基づいて、各ONUにおける上り信号および下り信号それぞれに1つ以上の波長を割り当てるよう割り当てを行う、
帯域割当方法。」

2 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「帯域割当て」は、通信のために行われる処理であるから、引用発明の「PONシステムにおける帯域割当方法」は、本願発明1の「受動光ネットワークPON通信方法」に相当する。

イ 引用発明の「局内装置(OLT)」、「加入者装置(ONU)」及び「波長」はそれぞれ、本願発明1の「光回線終端装置OLT」、「光ネットワークユニットONU」及び「波長チャネル」に相当する。
引用発明において、「上り帯域要求の情報」を含む「各ONUの上り信号」は、「ONU」が「上り信号」に使用する「波長」(λ2、λ4)の割当てを、「OLT」に要求する「メッセージ」といい得るものである。
よって、引用発明において、「ONU」が「上り帯域要求の情報」を含む「各ONUの上り信号」を「OLT」に送信することと、本願発明1の「前記光ネットワークユニットONUが前記要求メッセージを受信して、現在サポートされている前記波長チャネルの最大数および現在利用可能な前記波長チャネルの数を含む前記応答メッセージを前記光回線終端装置OLTに送信する段階」とは、「光ネットワークユニットONUが、メッセージを前記光回線終端装置OLTに送信する段階」である点において共通する。

ウ 引用発明の「波長グループ」は、本願発明1の「波長チャネルグループ」に相当する。
また、引用発明において、「OLT」の「上り波長・タイムスロット割当て部」は、「ONU」から「上り帯域要求の情報」を含む「各ONUの上り信号」を受信すると、「帯域要求」と「予め定められた規則」にしたがって「上り波長」と「タイムスロット」の割り当てを決定する処理を行うものである。
ここで、引用発明の「ONU1〜3は下り信号として波長λ1、上り信号として波長λ2が割当てられておりひとつの波長グループ(波長グループ1)を形成し、ONU4〜6は下り信号として波長λ3、上り信号として波長λ4が割当てられておりこれもひとつの波長グループ(波長グループ2)を形成し」との構成、「上りと下りのトラフィックは独立に変化し得るので上りの波長グループと下りの波長グループは無関係で互いに独立のグループ構成をとり得」との構成、並びに、引用文献の【図1】及び【図4】の記載を参酌すると、「上り波長・タイムスロット割当て部」が「上り波長」の割り当てを決定する際には、当該「上り波長」の「波長グループ」を決定するとともに、当該「波長グループ」内の「波長」を「ONU」に割り当てるものと認められる。
よって、引用発明は、本願発明1の「前記光回線終端装置OLTが光ネットワークユニットONUの波長チャネルグループ、及び前記波長チャネルグループ内の波長チャネルを決定する段階」を備えているといえる。

エ 引用発明において、「OLT」の「上り波長・タイムスロット割当て部」により決定された「上り波長とタイムスロットの割り当て」を示す「割り当て情報」は、「OLT」の「下り信号の振分け多重部」により「下り信号」に挿入されて「ONU」の「制御情報」として、「ONU」に送信されているといえ、当該「制御情報」を「第1のメッセージ」と称することは任意である。
よって、引用発明は、本願発明1の「前記光回線終端装置OLTが第1のメッセージを前記光ネットワークユニットONUへ送信する段階」を備える。

オ 前記エを参酌すれば、引用発明の「制御信号」は、「波長グループ」内の「波長」を識別する情報(識別情報)を搬送するものといえる。
よって、引用発明において、「OLT」が「制御情報」を「ONU」に送信することと、本願発明1の「前記第1のメッセージは、前記光回線終端装置OLTが前記波長チャネルグループを確立するよう前記光ネットワークユニットONUに命令するために用いられ、前記波長チャネルグループの識別情報、及び前記波長チャネルグループ内の前記波長チャネルの識別情報を搬送する」こととは、「前記第1のメッセージは、前記波長チャネルグループ内の前記波長チャネルの識別情報を搬送する」ことである点において共通する。

カ 前記ウ及び引用発明の「1つのONUにおける上り信号、下り信号それぞれに複数の波長を割り当ててそれを動的に変化させる構成および方法も可能」との構成を参酌すれば、引用発明は、本願発明1の「それぞれの前記波長チャネルグループは複数の波長チャネルを含み」に相当する構成を備える。

キ 引用発明の「上りと下りのトラフィックは独立に変化し得るので上りの波長グループと下りの波長グループは無関係で互いに独立のグループ構成をとり得」との構成からすると、引用発明の「波長グループ」は、上りと下りとで独立した構成を取り得るから、各「波長」は、必ずしも「1組の上り波長及び下り波長」を用いるものとはいえない。

(2)一致点、相違点
前記(1)より、本願発明1と引用発明は、次の点において一致ないし相違する。

[一致点]
「 受動光ネットワークPON通信方法であって、
光ネットワークユニットONUが、メッセージを前記光回線終端装置OLTに送信する段階と、
前記光回線終端装置OLTが光ネットワークユニットONUの波長チャネルグループ、及び前記波長チャネルグループ内の波長チャネルを決定する段階と、
前記光回線終端装置OLTが第1のメッセージを前記光ネットワークユニットONUへ送信する段階と、
を備え、
前記第1のメッセージは、前記波長チャネルグループ内の前記波長チャネルの識別情報を搬送する方法であって、
それぞれの前記波長チャネルグループは複数の波長チャネルを含む、
方法。」

[相違点]
<相違点1>
本願発明1は「光回線終端装置OLTが、光ネットワークユニットONUに、現在利用可能な波長チャネルに関する情報を含む応答メッセージを送信するよう要求する要求メッセージを送信する段階」との構成を備えるのに対し、引用発明はそのような構成を備えない点。

<相違点2>
「光ネットワークユニットONU」が「光回線終端装置OLT」に送信する「メッセージ」が、本願発明1では、「前記要求メッセージを受信して」送信される「応答メッセージ」であって、「現在サポートされている前記波長チャネルの最大数および現在利用可能な前記波長チャネルの数を含む」ものであるのに対し、引用発明の「上り帯域要求の情報」を含む「各ONUの上り信号」は、「要求メッセージ」を受信することにより送信される「応答メッセージ」ではなく、また、どのような情報で構成されるのかを具体的に特定していない点。

<相違点3>
「光回線終端装置OLT」が「光ネットワークユニットONU」に送信する「第1のメッセージ」が、本願発明1では「前記光回線終端装置OLTが前記波長チャネルグループを確立するよう前記光ネットワークユニットONUに命令するために用いられ」るとともに、前記波長チャネルグループの識別情報」を含むのに対し、引用発明の「制御情報」は、そのような命令のために用いられるものとも、そのような識別情報を含むものとも具体的に特定されていない点。

<相違点4>
本願発明1は、「それぞれの前記波長チャネルは1組の上り波長及び下り波長を用い」るのに対し、引用発明の「波長」は、上りと下りで独立した構成を取り得るため、必ずしも「1組」の上り波長及び下り波長を用いるものとはいえない点。

<相違点5>
本願発明1は、「前記光ネットワークユニットONUの前記波長チャネルグループと、前記波長チャネルグループ内の前記波長チャネルとの間のマッピング関係を格納するために、波長チャネルグループマッピングテーブルを前記光回線終端装置OLTによってローカルに確立する段階」及び「前記波長チャネルグループマッピングテーブルは、前記現在サポートされている波長チャネルの最大数、前記現在利用可能な波長チャネルの数、前記波長チャネルグループの識別情報および前記波長チャネルの識別情報を含む」との構成を備えるのに対し、引用発明は、「波長チャネルグループマッピングテーブル」についての構成を備えない点。

(3)相違点についての判断
事案に鑑みて、まず、「現在サポートされている波長チャネルの最大数」及び「現在利用可能な波長チャネルの数」の利用に関して互いに関連する相違点2及び5についてまとめて判断する。
相違点2及び5に着目すると、本願発明1は、「光回線終端装置OLT」が、「現在サポートされている波長チャネルの最大数」及び「現在利用可能な波長チャネルの数」を含む「応答メッセージ」を「光ネットワークユニットONU」から受信し、受信した「現在サポートされている波長チャネルの最大数」及び「現在利用可能な波長チャネルの数」を、「マッピング関係」を示す「波長チャネルグループの識別情報」及び「波長チャネルの識別情報」とともに「波長チャネルグループマッピングテーブル」に含めるという技術事項を含むものといえる。
当該技術事項は、本願出願時における周知技術又は技術常識であったとはいえないから、当業者といえども相違点2及び5に係る本願発明1の構成を想到することが容易であったということはできない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 本願発明2ないし10について
本願発明2ないし10は、本願発明1の構成をすべて備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

4 本願発明11について
本願発明11は、本願発明1に係る「光回線終端装置OLT」を「受動光ネットワークPON通信装置」として特定した発明であり、相違点2及び5に係る本願発明1の構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

5 本願発明12ないし15について
本願発明12ないし15は、本願発明11の構成をすべて備えるものであるから、本願発明11と同じ理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

6 本願発明16について
本願発明16は、「光回線終端装置OLT」ではなく、「光ネットワークユニットONU」によって「波長チャネルグループマッピングテーブル」を確立する点において、本願発明1とは相違するものの、それ以外は、本願発明1と同等である。
すなわち、本願発明16は、上記相違点2及び5に係る本願発明1の構成に対応する技術事項として、「光ネットワークユニットONU」が、「現在サポートされている波長チャネルの最大数」及び「現在利用可能な波長チャネルの数」を含む「応答メッセージ」を「光回線終端装置OLT」に送信し、送信した「現在サポートされている波長チャネルの最大数」及び「現在利用可能な波長チャネルの数」を、「マッピング関係」を示す「波長チャネルグループの識別情報」及び「波長チャネルの識別情報」とともに含む「波長チャネルグループマッピングテーブル」を確立するという技術事項を含み、一方、引用発明は、当該技術事項に相当する構成を備えない。
そして、当該技術事項は、本願出願時における周知技術又は技術常識であったとはいえないから、当業者といえども本願発明16に係る前記技術事項を想到することが容易であったということはできない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明16は、当業者であっても引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

7 本願発明17ないし21について
本願発明17ないし21は、本願発明16の構成をすべて備えるものであるから、本願発明12と同じ理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

8 本願発明22について
本願発明22は、本願発明16に係る「光ネットワークユニットONU」を「受動光ネットワークPON通信装置」として特定した発明であり、本願発明16に係る前記技術事項を備えるものであるから、本願発明16と同様の理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

9 本願発明23ないし25について
本願発明23ないし25は、本願発明22の構成をすべて備えるものであるから、本願発明22と同じ理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

以上のとおりであるから、原査定を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし25は、当業者が引用発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-12-07 
出願番号 P2018-511213
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04L)
P 1 8・ 537- WY (H04L)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 稲葉 和生
特許庁審判官 富澤 哲生
林 毅
発明の名称 受動光ネットワーク通信方法及び装置並びにシステム  
代理人 龍華国際特許業務法人  

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