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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1380489
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-09-30 
確定日 2021-12-21 
事件の表示 特願2018−203778「複合締まりスクリューおよびドライバ」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 1月31日出願公開、特開2019− 13805〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)3月5日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2013年3月6日 米国(US))を国際出願日とする特願2015−561605号の一部を平成30年10月30日に新たな特許出願としたものであって、その主な手続は以下のとおりである。
平成30年11月26日 :手続補正書の提出
令和 1年12月23日付け:拒絶理由通知書(特許法第50条の2の通知を伴う拒絶理由通知)
令和 2年 3月26日 :手続補正書、意見書の提出
令和 2年 7月31日付け:補正の却下の決定、拒絶査定
令和 2年 9月30日 :審判請求書、同時に手続補正書の提出

第2 令和2年9月30日に提出された手続補正書による補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年9月30日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。
「【請求項1】
靭帯修復手術の際に、移植靭帯と骨トンネルの側壁との両方に係合するように前記骨トンネルと平行に延在しているスクリューにおいて、
前記スクリューが、基端部及び先端部を具備する少なくとも1つのランナーを備えており、
前記ランナーが、前記スクリューの長手方向に延在しており、
開放螺旋コイルの形態のスクリュースレッドが、前記ランナーに巻回されており、
前記ランナーが、前記ランナーの前記先端部が前記スクリューの先端部を形成するように、前記スクリュースレッドから突出していることを特徴とするスクリュー。」
(下線部は、補正箇所である。)

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成30年11月26日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
なお、令和2年3月26日に提出された手続補正書による補正は、令和2年7月31日付けの補正の却下の決定により却下されている。
「【請求項1】
靭帯修復手術の際に、移植靭帯と骨トンネルの側壁との両方に係合するように前記骨トンネルと平行に延在しているスクリューにおいて、
前記スクリューが、基端部及び先端部を具備する少なくとも1つのランナーを備えており、
前記ランナーが、前記スクリューの長手方向に延在しており、
開放螺旋コイルの形態のスクリュースレッドが、前記ランナーに巻回されていることを特徴とするスクリュー。」

2 補正の適否について
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「ランナー」について、「ランナーが、前記ランナーの前記先端部が前記スクリューの先端部を形成するように、前記スクリュースレッドから突出している」という限定を付加するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりものである。

(2)引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、米国特許出願公開第2012/0179163号明細書(2012年6月12日公開。以下「引用文献」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(日本語訳は、引用文献の関連出願の特表2013−521888号公報を参照。以下同様。)
ア 「[0003] The present disclosure relates to medical apparatuses and procedures in general, and more particularly to medical apparatuses and procedures for reconstructing a ligament.」
(本発明は、概して、医療器具および処置に関し、さらに詳しくは、靭帯を修復するための医療器具および処置に関する。)

イ 「[0061] as described above, during ligament reconstruction surgery, the end of the graft ligament is placed in the bone tunnel and then the interference screw 20,40,60 is advanced into the bone tunnel via the use of shafts 12,30,50 so that the interference screw 20,40,60 extends parallel to the bone tunnel and simultaneously engages both the graft ligament and the side wall of the bone tunnel. The screws 20,40,60 may be used in either the femoral or tibial tunnels. Methods of ligament reconstruction via use of the screws 20,40,60 is further shown in the '314 publication shown above.」
(上述したように、靭帯修復手術の間、移植靭帯の端部は骨トンネル内に配置され、続いて、締まりスクリュー20,40,60は、この締まりスクリュー20,40,60が骨トンネルと平行に延在しかつ同時に移植靭帯および骨トンネルの側壁の両方と係合するように、シャフト12,30,50を用いて、骨トンネル内へと前進させられる。スクリュー20,40,60は、大腿骨あるいは頸骨トンネル内で使用可能である。スクリュー20,40,60を用いた靭帯修復の方法は、先に挙げた文献'314において、さらに示されている。)

ウ 「[0062] FIGS.21-23 show yet another alternative embodiment of the screw 100 and the delivery device 200 of the present disclosure.The screw 100 includes a proximal end 101 and a distal end 102. A majority of the screw 100 includes screw threads 103 in the form of an open helical coil, i.e. a connected series of continuous regularly spaced turns extending in a helical or spiral form substantially from the proximal end 101 to the distal end 102 with apertures 104 being defined by the space between the turns of the coil. In other words, interference screw 100 may include an open helical coil defining an internal volume, with the internal volume communicating with the region exterior to the open helical coil through the spacing between the turns of the open helical coil.The distal end 102 also includes a suture bridge 105 that extends a partial length of the screw 100. The suture bridge 105 includes a proximal end 105a and a distal end 105b. The distal end 105b includes a concave shape.A flexible member 110, such as a suture, is housed within the screw 100, such that the suture 110 extends around the distal end 105b of the bridge 105.Additionally, longitudinally-extending runners 106 extend from the suture bridge 105 and along the interior of the screw threads 103.For the purposes of this disclosure, there are two longitudinally extending runners 106.However,more or less than two runners are within the scope of this disclosure.」
( 図21ないし図23は、本発明のスクリュー100および送り込みデバイス200のさらに別な代替実施形態を示している。スクリュー100は近位端部101および遠位端部102を含む。スクリュー100の大部分は、開放螺旋コイルの形態のスクリューネジ山103、すなわち、コイルのターン間のスペースによって画定される開口104を備えた、実質的に近位端部101から遠位端部102へと螺旋あるいはスパイラル形態で延在する連続した規則正しく離間したターンの連結された列を含む。言い換えれば、締りスクリュー100は、内部容積を画定する開放螺旋コイルを含んでいてもよく、この内部容積は、開放螺旋コイルのターン間のスペースを経て開放螺旋コイルに対して外部の領域とつながっている。遠位端部102はまた、スクリュー100の部分長にわたって延在する縫合糸ブリッジ105を含む。縫合糸ブリッジ105は近位端部105aおよび遠位端部105bを含む。遠位端部105bは凹形状を有する。フレキシブルな部材110、たとえば縫合糸は、スクリュー100内に収容され、縫合糸110はブリッジ105の遠位端部105bの周囲で延在している。さらに、長手方向に延在するランナー106が縫合糸ブリッジ105から、そしてスクリューネジ山103の内面に沿って延在している。この開示のために、二つの長手方向に延在するランナー106が存在する。だが、二つよりも多いかあるいは少ないランナーも本発明の範囲に含まれる。)

エ 図21




オ 図22




カ 図23




キ 図22の記載から、開放螺旋コイルの形態のスクリューネジ山103が基端部(図22の上方の端部)及び先端部(同下方の端部)を具備する二つのランナー106を備えており、ランナー106がスクリューの長手方向に延在していること、スクリューネジ山103がランナー106に巻回していること、及び、ランナー106の先端部がスクリュー100の先端部である遠位端部102を形成するように、スクリューネジ山103の先端部よりも突出していることが看取できる。

ク 上記ア〜カの記載事項及び上記キの認定事項を踏まえると、引用文献には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「靭帯修復手術の間、移植靭帯および骨トンネルの側壁の両方に係合するように前記骨トンネルと平行に延在するスクリューにおいて、
前記スクリューが、基端部および先端部を具備する二つのランナーを備えており、
前記ランナーが、前記スクリューの長手方向に延在しており、
開放螺旋コイルの形態のスクリューネジ山が、前記ランナーに巻回されており、
前記ランナーが、前記ランナーの先端部が前記スクリューの遠位端部を形成するように、前記スクリューネジ山から突出しているスクリュー。」

(3) 対比・判断
本件補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「靭帯修復手術の間、移植靭帯および骨トンネルの側壁の両方に係合するように前記骨トンネルと平行に延在するスクリュー」は、その構造及び機能からみて、本件補正発明の「靭帯修復手術の際に、移植靭帯と骨トンネルの側壁との両方に係合するように前記骨トンネルと平行に延在しているスクリュー」に相当し、以下同様に、「基端部および先端部を具備する二つのランナー」は「基端部及び先端部を具備する少なくとも1つのランナー」に、「開放螺旋コイルの形態のスクリューネジ山」は「開放螺旋コイルの形態のスクリュースレッド」にそれぞれ相当する。
また、引用発明の「前記ランナーが、前記スクリューの長手方向に延在して」いる態様は、本件補正発明の「前記ランナーが、前記スクリューの長手方向に延在して」いる態様に相当し、以下同様に「開放螺旋コイルの形態のスクリューネジ山が、前記ランナーに巻回されて」いる態様は「開放螺旋コイルの形態のスクリュースレッドが、前記ランナーに巻回されて」いる態様に、「前記ランナーが、前記ランナーの先端部が前記スクリューの遠位端部を形成するように、前記スクリューネジ山から突出している」態様は「前記ランナーが、前記ランナーの前記先端部が前記スクリューの先端部を形成するように、前記スクリュースレッドから突出している」態様にそれぞれ相当する。

以上のことから、本件補正発明と引用発明とは、
「靭帯修復手術の際に、移植靭帯と骨トンネルの側壁との両方に係合するように前記骨トンネルと平行に延在しているスクリューにおいて、
前記スクリューが、基端部及び先端部を具備する少なくとも1つのランナーを備えており、
前記ランナーが、前記スクリューの長手方向に延在しており、
開放螺旋コイルの形態のスクリュースレッドが、前記ランナーに巻回されており、
前記ランナーが、前記ランナーの前記先端部が前記スクリューの先端部を形成するように、前記スクリュースレッドから突出しているスクリュー。」
である点で一致し、相違点はない。

したがって、本件補正発明と引用発明の相違点はないことから、本件補正発明は、引用発明であり、特許法29条1項3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の各請求項に係る発明は、平成30年11月26日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1〜11に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、引用発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない、という理由を含むものである。

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)で記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明の「ランナー」から、「ランナーが、前記ランナーの前記先端部が前記スクリューの先端部を形成するように、前記スクリュースレッドから突出している」という限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)で説示したとおり、引用発明であることから、本願発明も、引用発明である。

第4 請求人の主張について
請求人は、令和3年1月27日に上申書を提出し、補正案を提示し、引用文献との差異を主張するが、その内容は、引用文献の[0062]及び図22に記載されていることにすぎず、依然として拒絶の理由を解消するものではないため、採用することはできない。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条1項3号に該当し特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

審判長 芦原 康裕
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2021-07-13 
結審通知日 2021-07-19 
審決日 2021-08-03 
出願番号 P2018-203778
審決分類 P 1 8・ 113- Z (A61B)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 芦原 康裕
特許庁審判官 莊司 英史
平瀬 知明
発明の名称 複合締まりスクリューおよびドライバ  
代理人 実広 信哉  
代理人 村山 靖彦  
代理人 阿部 達彦  

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