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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G03F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03F
管理番号 1380518
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-10-14 
確定日 2021-12-08 
事件の表示 特願2018−562237「被覆された多孔質ポリマー膜」拒絶査定不服審判事件〔平成29年11月30日国際公開,WO2017/205722,令和1年8月29日国内公表,特表2019−523904〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 事案の概要
1 手続等の経緯
特願2018−562237号(以下「本件出願」という。)は,2017年(平成29年)5月26日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2016年5月27日 米国)を国際出願日とする出願であって,その後の手続等の経緯の概要は,以下のとおりである。
平成31年 2月 4日 :手続補正書
令和 元年12月10日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 3月17日 :意見書
令和 2年 3月17日 :手続補正書
令和 2年 6月 5日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和 2年10月14日付け:審判請求書

2 本願発明
本件出願の請求項1〜請求項13に係る発明は,令和2年3月17日にした手続補正後の特許請求の範囲の請求項1〜請求項13に記載された事項によって特定されるとおりのものであるところ,請求項8に係る発明(以下「本願発明」という。)は,次のものである。
「 多孔質膜が,架橋された重合性モノマーを有するコーティングを含み;前記重合性モノマーが,有機液体中で正電荷を含み,前記多孔質膜が有機液体から金属汚染物質を除去することができる,多孔質膜。」

3 原査定の拒絶の理由
本願発明に対する原査定の拒絶の理由は,(新規性進歩性)本願発明は,本件出願の優先権主張の日(以下「本件優先日」という。)前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから,特許法29条1項3号に該当し,特許を受けることができない,あるいは,本願発明は,本件優先日前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて,本件優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。
引用文献1:特開2015−203048号公報

第2 当合議体の判断
1 引用文献1の記載及び引用発明
(1) 引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由において引用された引用文献1(特開2015−203048号公報)は,本件優先日前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載されたものであるところ,そこには,以下の記載がある。
ア 「【請求項1】
下記化学式(1):
【化1】

で表される1−オキソトリメチレン繰り返し単位を含むポリケトンからなるポリケトン多孔膜であって,下記条件(1)〜(3):
(1)空隙率が5〜90%であること;
(2)pH=1〜3におけるゼータ電位が+5mV〜+80mVであること;
(3)pH=11〜14におけるゼータ電位が−80mV〜−5mVであること;
を満足するポリケトン多孔膜。
【請求項2】
下記条件(1)及び(2):
(1)スルホン酸基,スルホン酸エステル基,カルボン酸基,カルボン酸エステル基,リン酸基,リン酸エステル基,及び水酸基からなる群から選ばれる1つ以上の官能基を有し,かつ,陽イオン交換容量が0.01〜10ミリ当量/gであること;
(2)1級アミノ基,2級アミノ基,3級アミノ基,及び4級アンモニウム塩からなる群から選ばれる1つ以上の官能基を含み,かつ,陰イオン交換容量が0.01〜10ミリ当量/gであること;
を同時に満たす,請求項1に記載のポリケトン多孔膜。
【請求項3】
pH=4〜10に等電点を有する,請求項1又は2に記載のポリケトン多孔膜。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリケトン多孔膜を含む濾過用フィルター。
【請求項5】
イオン吸着用の,請求項4に記載の濾過用フィルター。
【請求項6】
粒子又はゲル吸着除去用の,請求項4に記載の濾過用フィルター。」

イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は,両性イオン性ポリケトン多孔膜及びその用途に関する。さらに詳しくは,本発明は,両性イオン性ポリケトン多孔膜を含む微粒子吸着性,ゲル吸着性,及びイオン吸着性に優れた液体ろ過フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
近年,半導体・電子部品製造,バイオ医薬品分野,ケミカル分野,食品工業分野の製造プロセスにおいて,微粒子,ゲル,ウイルス等の不純物を効率的に除去することができる濾材が求められている。
…省略…
【0004】
また,一部のフィルターでは,処理気液が有機溶媒である場合,腐食性を有する場合があり,また,高温環境下で使用される場合もある。このような場合,フィルターには耐薬品性,耐有機溶媒性,化学安定性,耐熱性が要求される場合が多い。
…省略…
【0005】
ところで,パラジウム又はニッケルを触媒として一酸化炭素とオレフィンとを重合させることにより得られる,一酸化炭素とオレフィンとが完全交互共重合した脂肪族ポリケトン(以下,ポリケトンともいう。)が知られている。ポリケトンは,その高い結晶性により,繊維又はフィルムとしたときに,高力学物性,高融点,耐有機溶媒性,耐薬品性等の特性を有する。…省略…従って,ポリケトンを加工して多孔膜とすることで得られるポリケトン多孔膜も,耐熱性,耐薬品性,耐有機溶媒性を持つ。更に,ポリケトンは水及び各種有機溶媒との親和性があること,また,原料の一酸化炭素及びエチレンは比較的安価であり,ポリケトンのポリマー価格が安くなる可能性があることから,孔径の小さいポリケトン多孔膜は濾材として産業上の活用が期待できる。」

ウ 「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は,耐熱性,耐薬品性,耐有機溶剤性を有し,かつ,カチオン性及びアニオン性不純物の両方の除去が可能な濾過用フィルターとして有用な両性イオン性ポリケトン多孔膜,及び該ポリケトン多孔膜を濾材として用いたフィルターを提供することである。
…省略…
【発明の効果】
【0016】
本発明のポリケトン多孔膜を各種プロセス用のフィルターとして用いた場合,アニオン性及びカチオン性不純物の両方の除去が可能であるため,各種プロセス液の品質を大きく上げることが可能となる。
…省略…
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下,本発明を詳細に説明する。
本発明の一態様は,一酸化炭素とエチレン性不飽和化合物が交互に共重合した下記化学式(1):
【化2】

で表される1−オキソトリメチレン繰り返し単位を含むポリケトンからなるポリケトン多孔膜を含む。本発明のポリケトン多孔膜は実質的にポリケトンのみで構成されていてもよいし,また,ポリケトンと別の材料(例えば,一つ以上の不織布)とを複合化して構成してもよい。
【0018】
ポリケトン多孔膜中のポリケトンの含有率は,ポリケトンが本来持つ耐熱性及び耐有機溶剤性を反映させるという観点から,高いほど好ましい。
…省略…
【0019】
本発明のポリケトン多孔膜は,空隙率5〜90%を有することができる。
…省略…
【0020】
ポリケトン多孔膜は,平均貫通孔径10〜50000nmを有することができる。
…省略…
【0021】
本発明のポリケトン多孔膜は,pH=4〜10に等電点を有することが好ましい。ポリケトン多孔膜がpH=4〜10において等電点を有しない場合,アニオン性及びカチオン性の不純物の両方を同時に吸着することができない。多くのプロセス液が中性付近のpHを有することから,ポリケトン多孔膜はpH=5〜9に等電点を有することがより好ましい。
【0022】
本発明のポリケトン多孔膜は,pH=1〜3においてゼータ電位+5〜+80mVを有する。pH=1〜3においてゼータ電位が+5mVより低いポリケトン多孔膜では,濾過対象の流体がどのようなpHであろうとも,アニオン性粒子や陰イオンに対する吸着力が弱く,十分な除去性能を発揮できない。一方,pH=1〜3においてゼータ電位が+80mVより大きい場合は,ポリケトン多孔膜の強度低下が起こり使用できない。
…省略…
【0023】
本発明のポリケトン多孔膜は,pH=11〜14においてゼータ電位−80mV〜−5mVを有する。pH=11〜14においてゼータ電位が−5mVより高いポリケトン多孔膜では,濾過対象の流体がどのようなpHであろうとも,カチオン性微粒子や陽イオンに対する吸着力が弱く,十分な除去性能を発揮できない。一方,pH=11〜14においてゼータ電位が−80mVより低い場合は,ポリケトン多孔膜の強度低下が起こり使用できない。
…省略…
【0025】
本発明のポリケトン多孔膜は,無機フィラー,光安定剤,酸化防止剤,帯電防止剤,親水性高分子,タンパク吸着性物質等の機能性物質を含んでもよい。
…省略…
【0026】
本発明のポリケトン多孔膜の一態様は,1級アミノ基,2級アミノ基,3級アミノ基,及び4級アンモニウム塩からなる群から選ばれる1つ以上の官能基を有する。官能基を有する形態の例としては,化学結合や物理的に結合した状態が挙げられる。化学結合としては,共有結合のようなものであってもよい。共有結合としては,C−C結合,C=N結合,ピロール環を介する結合などが挙げられる。化学結合する物質としては,ポリマーであってもよいし,分子量の小さいモノマーのようなものであってもよい。一方,物理的に結合した状態としては,水素結合,ファンデルワールス力,静電引力,疎水相互作用のような分子間力によって化学結合を介さずに結合した吸着や付着の様な状態が挙げられる。物理的に結合した状態としては,ポリマーが付着された状態などが挙げられる。ポリマーの分子量が1000以上である場合,物理的な結合力が強く,該ポリマーは水溶液中でも安定してポリケトン多孔膜に保持される。pH=1〜3における正のゼータ電位を付与するためのポリマーとしては,ポリエチレンイミン,ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド,アミノ基含有カチオン性ポリ(メタ)アクリル酸エステル,アミノ基含有カチオン性ポリ(メタ)アクリルアミド,ポリアミンアミド−エピクロロヒドリン,ポリビニルアミン,ポリアリルアミン,ポリジシアンジアミド,キトサン,カチオン化キトサン,アミノ基含有カチオン化デンプン,アミノ基含有カチオン化セルロース,アミノ基含有カチオン化ポリビニルアルコール,又は上記ポリマーの塩が挙げられる。また,上記ポリマー又はポリマーの塩は,他のポリマーとの共重合体であってもよい。pH=1〜3において十分なゼータ電位を有するという点で,上記ポリマー又はポリマーの塩の割合は,0.1〜50重量%,好ましくは0.5〜50重量%,より好ましくは1〜50重量%である。
【0027】
また,ポリケトン多孔膜にpH=1〜3における正のゼータ電位を付与するという観点で,ポリケトンは下記化学式(2)〜(5):
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

{式中,Rは,1級アミノ基,2級アミノ基,3級アミノ基,及び4級アンモニウム基からなる群から選ばれる1つ以上の官能基を含む置換基である。}で表される構造のいずれかを含む共重合体であってもよい。
【0028】
1級アミノ基としては−R1−NH2(R1は炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状アルキレン鎖である。)が挙げられる。また,2級アミノ基としては,−R1−NR2H(R1は炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状アルキレン鎖であり,そして,R2は炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状アルキル基である。)が挙げられる。さらに,3級アミノ基としては,−R1−NR2R3(R1は炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状アルキレン鎖であり,そしてR2とR3は炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状アルキル基である。)が挙げられる。そして,4級アンモニウム塩としては−R1−NR2R3R4X(R1は炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状アルキレン鎖であり,R2,R3及びR4は炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状アルキル基であり,そしてXはOH−,F−,Cl−,Br−,I−,CH3SO3−などのアニオンである。)が挙げられる。
…省略…
【0046】
官能基を含ませる方法については特に制限はないが,化学反応による方法,物理反応による方法,コーティングによる方法,さらにこれらを組み合わせた方法などが挙げられる。化学反応による方法は,パール・クノール反応などが挙げられる。また,物理反応による方法はプラズマ処理やコロナ処理などが挙げられる。コーティングによる方法はポリマーを含む水溶液などに含浸させる方法が挙げられる。その他の方法としては放射線グラフト反応などが挙げられる。
【0047】
ポリケトン多孔膜に好適なゼータ電位を付与するという観点で,ポリケトン多孔膜に正又は負のいずれか一方の電荷を有するポリマーなどを付着又はコーティングさせた後,前記ポリマーと反対の電荷を有するポリマーなどを付着又はコーティングさせてもよい。付着又はコーティングさせる方法としては,水や有機溶媒などにポリマーを溶解させた溶液にポリケトンを含浸させた後,取り出して乾燥させる方法などが挙げられる。乾燥の前後に加熱処理や水洗などを行ってもよい。正の電荷を有するポリマーとしては,ポリエチレンイミン,ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド,アミノ基含有カチオン性ポリ(メタ)アクリル酸エステル,アミノ基含有カチオン性ポリ(メタ)アクリルアミド,ポリアミンアミド−エピクロロヒドリン,ポリビニルアミン,ポリアリルアミン,ポリジシアンジアミド,キトサン,カチオン化キトサン,アミノ基含有カチオン化デンプン,アミノ基含有カチオン化セルロース,アミノ基含有カチオン化ポリビニルアルコール及び上記ポリマーの塩が挙げられる。また,負の電荷を有するポリマーとしては,ポリスチレンスルホン酸,ポリスチレンスルホン酸ナトリウム,ポリビニルスルホン酸,ポリビニルスルホン酸ナトリウム,ポリ(メタ)アクリル酸,ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム,アニオン性ポリアクリルアミド,ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル基プロパンスルホン酸),ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル基プロパンスルホン酸ナトリウム),カルボキシメチルセルロース,アニオン化ポリビニルアルコール,ポリビニルホスホン酸等が挙げられる。また,上記ポリマー又はポリマーの塩は,他のポリマーとの共重合体であってもよい。十分なゼータ電位を付与するという点で,上記ポリマー又はポリマーの塩の付着又はコーティング量は,0.2〜100重量%,好ましくは1〜100重量%,より好ましくは2〜100重量%である。
【0048】
ポリケトン多孔膜に適切なゼータ電位を付与するという観点で,ポリケトン多孔膜を構成するポリケトンの少なくとも1つの水素原子を他の基に置換する場合,置換方法としては,例えば,電子線,γ線,プラズマ等の照射によってポリケトンにラジカルを発生させた後,正の電荷を有する反応性モノマーと,負の電荷を有する反応性モノマーの両方を付加させる方法が挙げられる。この場合,正の反応性モノマーと負の反応性モノマーを段階的に付加させてもよく,正の反応性モノマーと負の反応性モノマーを混合して同時に付加させてもよい。正の電荷を有する反応性モノマーの例としては,1級アミン,2級アミン,3級アミン,4級アンモニウム塩を含むアクリル酸,メタクリル酸,ビニルスルホン酸の誘導体,アリルアミン,p−ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。より具体的な例としては,アクリル酸3−(ジメチルアミノ)プロピル,メタクリル酸3−(ジメチルアミノ)プロピル,N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド,N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド,(3−アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロライド,トリメチル[3−(メタクリロイルアミノ)プロピル]アンモニウムクロライドなどが挙げられる。また,負の電荷を有する反応性モノマーとしては,スルホン酸基,スルホン酸エステル基,カルボン酸基,カルボン酸エステル基,リン酸基,リン酸エステル基,水酸基を含むアクリル酸,メタクリル酸,ビニルスルホン酸,の誘導体等が挙げられる。より具体的な例としては,アクリル酸,メタクリル酸,ビニルスルホン酸,スチレンスルホン酸,2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸,2-メタクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸,2-アクリルアミド-2-メチルプロパンカルボン酸,2-メタクリルアミド-2-メチルプロパンカルボン酸及びそれらのナトリウム塩などが挙げられる。
…省略…
【実施例】
【0050】
…省略…
【0057】
8.アニオン性及びカチオン性成分除去率(%)
平膜状のポリケトン多孔膜を濾材として,アニオン性成分として1ppmのオレンジII(関東化学社製),カチオン性成分として1ppmのメチレンブルー(関東化学社製)を含む水溶液3mlを,差圧100kPa,有効濾過面積3.5cm2で全量濾過した。濾液の各成分の濃度C(ppm)を測定し,下記式よりアニオン性及びカチオン性成分除去率(%)を算出した。
アニオン性及びカチオン性成分除去率(%)=(1−C)×100
尚,濾液のオレンジII及びメチレンブルーの濃度C(ppm)は,紫外可視分光光度計(日本分光:V−650)を用い,濃度既知のオレンジII(波長485nm)及びメチレンブルー(波長665nm)の検量線を作成して測定した。
…省略…
【0061】
[実施例1]
エチレンと一酸化炭素が完全交互共重合した極限粘度3.4dl/gのポリケトンを,ポリマー濃度10.7wt%で63wt%レゾルシン水溶液に添加し,80℃で2時間攪拌したところ,ポリケトンは溶解して均一透明なドープが得られた。
得られたドープをアプリケータでガラス板に塗布した。これを50wt%のメタノール水溶液中に10分間浸漬して凝固させた後,水で洗浄し,さらに80℃の温水中に30分間浸漬した。これを2−プロパノールで溶媒置換した後,枠固定して80℃で乾燥を行った。
このポリケトン多孔膜を,1重量%の酢酸,1重量%のアミノメタンスルホン酸,1重量%のN,N−ジメチルプロパンジアミンの混合水溶液に80℃で30分間浸漬させた。次いで,ポリケトン多孔膜を取り出して,水,メタノール,アセトンの順で良く洗浄した後60℃で乾燥した。
このようにして得られたポリケトン多孔膜の平均貫通孔径は98nmであり,厚みは105μm,空隙率は79%,透気抵抗度は45秒/100ml,引張強度は3.6MPa,伸度は18.0%であった。また,pH=3におけるゼータ電位は+12mV,pH=11におけるゼータ電位は−24mV,等電点は5.7,陰イオン交換容量は0.01ミリ当量/g,陽イオン交換容量は0.01ミリ当量/gであった。圧力損失は44kPa,アニオン性成分の除去率は93%,カチオン性成分の除去率は98%であり,圧力損失が小さく,アニオン性成分とカチオン性成分の両方を除去する性能を有していた。
【0062】
[実施例2]
実施例1で得られた化学処理前のポリケトン多孔膜を,ドライアイスで冷やしながら200kGyの電子線を数秒間照射して,ラジカル化ポリケトン多孔膜を作製した。窒素バブリングによって溶存酸素を除去した1重量%の2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及び1重量%のp-ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライドの混合水溶液に,上記ラジカル化ポリケトン多孔膜を窒素雰囲気下,40℃で1時間浸漬させた。次いで,水,メタノール,アセトンの順でよく洗浄した後60℃で乾燥した。
…省略…
【0063】
[実施例3]
実施例1で得られた化学処理前のポリケトン多孔膜を,1.0重量%のポリエチレンイミンに1分間浸漬させた後,更に1.0重量%のポリスチレンスルホン酸水溶液に1分間浸漬させた後,取り出して,100℃で2分間加熱した。これを15分間流水で洗浄した後,100℃で乾燥させた。
…省略…
【0068】
[実施例8]
ポリエチレンイミンの代わりにポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドを用いた以外は,実施例3と同じ条件でポリケトン多孔膜を作製した。
このようにして得られたポリケトン多孔膜の平均孔径は98nmであり,厚みは98μm,空隙率は82%,透気抵抗度は40秒/100ml,引張強度は3.8MPa,伸度は18.0%であった。また,pH=3におけるゼータ電位は+35mV,pH=11におけるゼータ電位は−38mV,等電点は6.8,陰イオン交換容量は0.50ミリ当量/g,陽イオン交換容量は0.47ミリ当量/gであった。圧力損失は43kPa/μm,アニオン性成分の除去率は99%,カチオン性成分の除去率は99%であり,圧力損失が小さく,アニオン性成分とカチオン性成分の両方を除去する性能を有していた。
…省略…
【0074】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明のポリケトン多孔膜は,ポリケトン由来の高い耐熱性と耐薬品性を有し,かつ,酸性領域で正のゼータ電位を有し,かつ塩基性領域で負のゼータ電位を有するために,アニオン性の物質及びカチオン性の物質両方に対する吸着性能を発揮し,各種プロセス液の清浄化が可能なフィルター濾材として有用である。更に,本発明のポリケトン多孔膜を用いたフィルターは,1本のフィルターで両方のイオン性の不純物を除去できるため,従来であれば2本必要なフィルターの本数を減らし,省スペース化及びフィルターの維持・管理のコストと労力の低減が可能である。該フィルターは,水処理用,工業用液体濾過用,気体除塵用,ケミカルフィルター用,及び医療用の濾過フィルターとして好適に利用可能である。」

(2) 引用発明
ア 実施例3の発明
引用文献1の【0063】には,実施例3として,次の「ポリケトン多孔膜」の発明が記載されている。
「 化学処理前のポリケトン多孔膜を,1.0重量%のポリエチレンイミンに1分間浸漬させ,更に1.0重量%のポリスチレンスルホン酸水溶液に1分間浸漬させた後,取り出して,100℃で2分間加熱し,15分間流水で洗浄した後,100℃で乾燥させて得られたポリケトン多孔膜。」

イ 引用発明
引用文献1の【0068】には,「ポリエチレンイミンの代わりにポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドを用いた以外は,実施例3と同じ条件でポリケトン多孔膜を作製した。」との記載がある(実施例8)。また,【0074】【表1】及び【0075】の記載からみて,この「ポリケトン多孔膜」は,「ポリケトン由来の高い耐熱性と耐薬品性を有し,かつ,酸性領域で正のゼータ電位を有し,かつ塩基性領域で負のゼータ電位を有するために,アニオン性の物質及びカチオン性の物質両方に対する吸着性能を発揮し,各種プロセス液の清浄化が可能なフィルター濾材として有用である」と理解される。
そうしてみると,引用文献1には,実施例8として,次の「ポリケトン多孔膜」の発明が記載されている(以下「引用発明」という。)。
「 化学処理前のポリケトン多孔膜を,1.0重量%のポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドに1分間浸漬させ,更に1.0重量%のポリスチレンスルホン酸水溶液に1分間浸漬させた後,取り出して,100℃で2分間加熱し,15分間流水で洗浄した後,100℃で乾燥させて得られたポリケトン多孔膜であって,
平均孔径は98nmであり,厚みは98μm,空隙率は82%,透気抵抗度は40秒/100ml,引張強度は3.8MPa,伸度は18.0%であり,
pH=3におけるゼータ電位は+35mV,pH=11におけるゼータ電位は−38mV,等電点は6.8,陰イオン交換容量は0.50ミリ当量/g,陽イオン交換容量は0.47ミリ当量/gであり,
圧力損失は43kPa/μm,アニオン性成分の除去率は99%,カチオン性成分の除去率は99%であり,圧力損失が小さく,アニオン性成分とカチオン性成分の両方を除去する性能を有し,
ポリケトン由来の高い耐熱性と耐薬品性を有し,かつ,酸性領域で正のゼータ電位を有し,かつ塩基性領域で負のゼータ電位を有するために,アニオン性の物質及びカチオン性の物質両方に対する吸着性能を発揮し,各種プロセス液の清浄化が可能なフィルター濾材として有用である,
ポリケトン多孔膜。」

ウ 請求項5発明
引用文献1には,請求項5に係る発明(請求項1〜請求項4に記載された構成を全て具備するもの)として,次の発明も記載されている(以下「請求項5発明」という。また,混同を避けるため,条件の番号を整理した。)。
「 下記化学式(1):
【化1】

で表される1−オキソトリメチレン繰り返し単位を含むポリケトンからなるポリケトン多孔膜であって,下記条件(1)〜(3):
(1)空隙率が5〜90%であること;
(2)pH=1〜3におけるゼータ電位が+5mV〜+80mVであること;
(3)pH=11〜14におけるゼータ電位が−80mV〜−5mVであること;
を満足し,かつ,
下記条件(4)及び(5):
(4)スルホン酸基,スルホン酸エステル基,カルボン酸基,カルボン酸エステル基,リン酸基,リン酸エステル基,及び水酸基からなる群から選ばれる1つ以上の官能基を有し,かつ,陽イオン交換容量が0.01〜10ミリ当量/gであること;
(5)1級アミノ基,2級アミノ基,3級アミノ基,及び4級アンモニウム塩からなる群から選ばれる1つ以上の官能基を含み,かつ,陰イオン交換容量が0.01〜10ミリ当量/gであること;
を同時に満たし,さらに,
pH=4〜10に等電点を有するポリケトン多孔膜を含む,
イオン吸着用の,濾過用フィルター。」

2 引用発明についての新規性進歩性の判断
(1) 対比
本願発明と引用発明を対比すると,以下のとおりである。
ア 多孔質膜
引用発明の「ポリケトン多孔膜」は,「平均孔径は98nmであり」,「空隙率は82%,透気抵抗度は40秒/100ml」である。
上記の特性からみて,引用発明の「ポリケトン多孔膜」は,本願発明の「多孔質膜」に相当する。

イ コーティング
引用発明の「ポリケトン多孔膜」は,「化学処理前のポリケトン多孔膜を,1.0重量%のポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドに1分間浸漬させ,更に1.0重量%のポリスチレンスルホン酸水溶液に1分間浸漬させた後,取り出して,100℃で2分間加熱し,15分間流水で洗浄した後,100℃で乾燥させて得られた」ものである。
上記製造工程からみて,引用発明の「ポリケトン多孔膜」は,その表面に,重合性モノマーの重合物(カチオン性ポリマー)である「ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド」がコーティングされ,さらに重合性モノマーの重合物(アニオン性ポリマー)である「ポリスチレンスルホン酸」がコーティングされたものであるから,両者が架橋されて「ポリケトン多孔膜」にコーティングされてなるものである。
そうしてみると,引用発明の「ポリケトン多孔膜」は,本願発明の「多孔質膜」における,「架橋された重合性モノマーを有するコーティングを含み」という要件を満たす。

ウ 正電荷
引用発明の「ポリケトン多孔膜」は,「pH=3におけるゼータ電位は+35mV,pH=11におけるゼータ電位は−38mV,等電点は6.8,陰イオン交換容量は0.50ミリ当量/g,陽イオン交換容量は0.47ミリ当量/gであり」,「ポリケトン由来の高い耐熱性と耐薬品性を有し,かつ,酸性領域で正のゼータ電位を有し,かつ塩基性領域で負のゼータ電位を有するために,アニオン性の物質及びカチオン性の物質両方に対する吸着性能を発揮」するものである。
上記構成からみて,引用発明の「ポリケトン多孔膜」は,有機液体に耐えることができ,正電荷を含むものと理解される(当合議体注:引用文献1の【0008】及び【0047】の記載からも確認できる事項である。)。
そうしてみると,引用発明の「ポリケトン多孔膜」は,本願発明の「多孔質膜」における,「有機液体中で正電荷を含み」という要件を満たす。

(2) 一致点及び相違点
ア 一致点
本願発明と引用発明は,次の構成で一致する。
「多孔質膜が,架橋された重合性モノマーを有するコーティングを含み;前記重合性モノマーが,有機液体中で正電荷を含む,多孔質膜。」

イ 相違点
本願発明と引用発明は,次の点で相違する。
(相違点)
「多孔質膜」が,本願発明は「有機液体から金属汚染物質を除去することができる」ものであるのに対して,引用発明は,一応,これが判らない点。

(3) 判断
引用発明の「ポリケトン多孔膜」は,「ポリケトン由来の高い耐熱性と耐薬品性を有し,かつ,酸性領域で正のゼータ電位を有し,かつ塩基性領域で負のゼータ電位を有するために,アニオン性の物質及びカチオン性の物質両方に対する吸着性能を発揮し,各種プロセス液の清浄化が可能なフィルター濾材として有用である」。
そうしてみると,引用発明の「ポリケトン多孔膜」は,有機液体に耐えることができ,かつ,有機液体中に含まれる金属イオンを吸着することにより,有機液体から金属イオンを除去する機能を有する物といえる。また,本願発明でいう「金属汚染物質」とは,本件出願の明細書の【0023】に記載のとおり,正または負に帯電した金属種,すなわち,金属イオンを含む概念であり,また,これを「金属汚染物質」(望ましくない金属)というか否かは,「多孔質膜」である物としての構成を左右しない。
したがって,上記相違点は,実質的な相違点ではない。

念のために,用途も含めて検討する。
引用文献1の【0002】には,「近年,半導体・電子部品製造,バイオ医薬品分野,ケミカル分野,食品工業分野の製造プロセスにおいて,微粒子,ゲル,ウイルス等の不純物を効率的に除去することができる濾材が求められている。」と記載されている。また,【0004】には,「一部のフィルターでは,処理気液が有機溶媒である場合,腐食性を有する場合があり,また,高温環境下で使用される場合もある。このような場合,フィルターには耐薬品性,耐有機溶媒性,化学安定性,耐熱性が要求される場合が多い。」と記載されている。さらに,【0016】には,「本発明のポリケトン多孔膜を各種プロセス用のフィルターとして用いた場合,アニオン性及びカチオン性不純物の両方の除去が可能であるため,各種プロセス液の品質を大きく上げることが可能となる。」と記載されている。
これら記載に接した当業者ならば,引用発明の「ポリケトン多孔膜」は,半導体製造プロセスにおいて使用される有機液体から,金属汚染物質を除去することに用いることができることに,直ちに気付くといえる。
したがって,本願発明は,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4) 発明の効果について
本件出願の明細書には,発明の効果に関する明示的な記載がない。
ただし,本件出願の明細書の【0007】には,「本明細書に開示される実施態様は,金属汚染物質を有機液体,具体的には水不混和性有機液体から除去する材料及び方法を提供することによって,これら及びその他の必要性を満たす。」という,発明の効果として理解可能な記載がある。
しかしながら,このような効果は,引用発明も具備するものである。

(5) 備考
本件出願の明細書には,実施例2(【0076】及び【0077】)及び実施例4(【0080】及び【0081】)に記載のような「多孔質膜」の製造方法が記載されている。また,本件出願の明細書の【0064】には,「試薬浴は,(1)エチレン性不飽和であり,少なくとも1個の荷電モノマー基を有する,少なくとも1つの重合可能なモノマー,(2)必要な場合,重合開始剤,及び(3)水溶性溶媒などの極性溶媒中の架橋剤を含んだ。これらの3つの構成要素に対して,モノマーの重合及び架橋並びに結果として得られる多孔質ポリマー膜基材への架橋ポリマーの堆積をもたらす条件下で多孔質ポリマー膜基材を接触させる。たとえ溶媒が極性溶媒であっても,必要な程度の膜表面の改質であり得,それが得られる。モノマーが二官能性であるかそれよりも高い官能性を有する場合,さらなる架橋剤は必要ではないが,使用してもよい。」と記載されている。
ここで,本願発明は,「多孔質膜」の発明であって,「多孔質膜の製造方法」の発明ではないものの,例えば,上記(3)の構成要素を含むような製造方法で得られる「多孔質膜」を,その発明の範囲に含むと理解される。そうしてみると,本願発明の「多孔質膜」の範囲には,引用発明のように,「化学処理前のポリケトン多孔膜」を「ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド」(ジアリルジメチルアンモニウムクロライドの重合体)でコーティングし,これをさらに「ポリスチレンスルホン酸」(p−ジビニルベンゼン等の構造単位を含む共重合体)をコーティングすることにより製造されてなるものも含まれるといえる。

(6) 小括
本願発明は,引用文献1に記載された発明である。
あるいは,本願発明は,引用文献1に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 請求項5発明についての進歩性の判断
(1) 対比
本願発明と請求項5発明を対比すると,請求項5発明の「濾過用フィルター」は,「ポリケトン多孔膜を含む」。
ここで,上記「ポリケトン多孔膜」は,その用語から理解されるとおり,多孔質膜として機能するものである。
そうしてみると,請求項5発明の「ポリケトン多孔膜」は,本願発明の「多孔質膜」に相当する。

(2) 一致点及び相違点
本願発明と請求項5発明は,「多孔質膜」の構成において一致し,以下の点で相違する,又は,一応相違する。
(相違点1)
「多孔質膜」が,本願発明は,「架橋された重合性モノマーを有するコーティングを含み;前記重合性モノマーが,有機液体中で正電荷を含み」という要件を満たすものであるのに対して,請求項5発明は,「条件(1)〜(3)」及び「条件(4)及び(5)」を満たす具体的手段が特定されていない点。

(相違点2)
「多孔質膜」が,本願発明は,「有機液体から金属汚染物質を除去することができる」という要件を満たすものであるのに対して,請求項5発明は,一応,これが明らかではない点。

(3) 判断
ア 相違点1について
請求項5発明の「条件(1)〜(3)」及び「条件(4)及び(5)」のうち,「(5)」に関して,引用文献1の【0026】〜【0028】及び【0046】〜【0048】には,その具体的な手段が記載されている。そして,当業者ならば,これら記載事項を参考にすることができるところ,そこには,重合性モノマーを重合してなるポリマーや,ポリエチレンイミンのように架橋作用のあるもの,ポリアミンアミド−エピクロロヒドリン等が開示され,また,ポリケトン多孔膜に化学結合する物質としてポリマーが挙げられ,結合方法も開示されている。
したがって,ポリマーがポリケトン多孔膜に安定して保持されることを重視した当業者ならば,相違点1に係る本願発明の構成のうち,「架橋された重合性モノマーを有するコーティングを含み」という構成に到るものであり,また,このようにしてなるものは,必然的に,「前記重合性モノマーが,有機液体中で正電荷を含み」という構成をも具備したものとなる。

イ 相違点2について
請求項5発明の「濾過用フィルター」は,「イオン吸着用」であり,その「ポリケトン多孔膜」は,「条件(1)〜(3)」及び「条件(4)及び(5)」を満たすとともに「pH=4〜10に等電点を有する」ものである。また,請求項5発明の「ポリケトン多孔膜」が,有機溶媒に耐性を有することは,技術的にみて明らかである(当合議体注:引用文献1の【0008】や【0018】においても明記されている。)。
そうしてみると,請求項5発明の「濾過用フィルター」は,有機溶媒から,正または負に帯電した金属種,すなわち,金属イオンを除去することができるものであり,また,有機溶媒中の金属イオンを「金属汚染物質」(望ましくない金属)というか否かは,「多孔質膜」である物としての構成を左右しないから,相違点2は,相違点ではない。
あるいは,用途も含めて検討しても,前記2(3)で述べたとおりである。

(4) 発明の効果について
発明の効果については,前記2(4)で述べたとおりである。

(5) 小括
本願発明は,引用文献1に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 請求人の主張について
請求人は,審判請求書の3.(2)において,「引用文献1の実施例に開示されていることは,アニオン性成分として1ppmのオレンジII及びカチオン性成分として1ppmのメチレンブルーを含む水溶液を,ポリケトン多孔膜に通したことのみであって,金属汚染物質を含む有機液体をポリケトン多孔膜に通したことは記載されていない,即ち,引用文献1には,有機液体から金属汚染物質を除去する方法は実質的に開示されていない。」と主張する。
しかしながら,請求人が主張する事項は,アニオン性成分及びカチオン性成分の試薬として,オレンジII及びメチレンブルーを用いることの技術的意義(当合議体注:本件出願の明細書の【0047】及び【0048】に記載の評価方法と同様に,正イオン及び負イオンに対する濾過用フィルターの性能を評価したものと理解される。)を考慮すると,採用することができない。そして,相違点(前記2(2)イ)及び相違点2(前記3(2))の判断については,前記2(3)及び3(3)で述べたとおりである。

第3 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用文献1に記載された発明であるから,特許法29条1項3号に該当し,特許を受けることができない。あるいは,本願発明は,引用文献1に記載された発明に基づいて,本件優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許受けることができない。
したがって,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

審判長 里村 利光
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2021-06-21 
結審通知日 2021-06-29 
審決日 2021-07-20 
出願番号 P2018-562237
審決分類 P 1 8・ 113- Z (G03F)
P 1 8・ 121- Z (G03F)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 里村 利光
特許庁審判官 河原 正
早川 貴之
発明の名称 被覆された多孔質ポリマー膜  
代理人 園田・小林特許業務法人  
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