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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1380538
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-10-28 
確定日 2021-11-24 
事件の表示 特願2019− 82579「蛍光体装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 6月 4日出願公開、特開2020− 86428〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続等の経緯
特願2019−82579号(以下「本件出願」という。)は、平成31年4月24日(パリ条約による優先権主張 2019年3月25日、中国、2018年11月21日、米国(以下、2018年11月21日を、「本件優先日」という。))を出願日とする特許出願であって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。

令和2年 3月26日付け:拒絶理由通知書
令和2年 6月 3日付け:意見書
令和2年 6月 3日付け:手続補正書
令和2年 6月25日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和2年10月28日付け:審判請求書
令和2年10月28日付け:手続補正書

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年10月28日にした手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
(1)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の(令和2年6月3日にした手続補正後の)特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「 【請求項1】
蛍光体装置であって、光源システムに適用され、前記光源システムが第1波長光を発光し、前記蛍光体装置は、基板と蛍光層と反射層とを備え、
前記蛍光層が前記基板に形成され、前記第1波長光を第2波長光に変換し、
前記蛍光層は、第1蛍光体と第2蛍光体とを含有し、
前記第1蛍光体が前記第1波長光を第1色光に変換し、前記第1色光は第1ピーク波長を有し、
前記第2蛍光体が前記第1蛍光体の同士間に分布され、且つ前記第1蛍光体と混合し、前記第2蛍光体が前記第1波長光を第2色光に変換し、前記第2色光は第2ピーク波長を有し、
前記反射層は、前記基板と前記蛍光層との間に配置され、前記第2波長光を反射し、且つ前記反射層が無機金属酸化物粒子またはペーストで構成され、
前記第1色光と前記第2色光とを混光して前記第2波長光を形成し、且つ前記第1ピーク波長と前記第2ピーク波長との差が50nm以上100nm以下である、ことを特徴とする蛍光体装置。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
なお、下線は補正箇所を示す。
「【請求項1】
蛍光体装置であって、光源システムに適用され、前記光源システムが第1波長光を発光し、前記蛍光体装置は、基板と蛍光層と反射層とを備え、
前記蛍光層が前記基板に形成され、前記第1波長光を第2波長光に変換し、
前記蛍光層は、第1蛍光体と第2蛍光体とを含有し、
前記第1蛍光体が前記第1波長光を第1色光に変換し、前記第1色光は第1ピーク波長を有し、
前記第2蛍光体が前記第1蛍光体の同士間に分布され、且つ前記第1蛍光体と混合し、前記第2蛍光体が前記第1波長光を第2色光に変換し、前記第2色光は第2ピーク波長を有し、
前記反射層が前記基板と前記蛍光層との間に配置され、前記第2波長光を反射し、且つ前記反射層が無機金属酸化物粒子またはペーストで構成される拡散反射層であり、前記拡散反射層の厚さが20〜150μmであり、
前記第1色光と前記第2色光とを混光して前記第2波長光を形成し、且つ前記第1ピーク波長と前記第2ピーク波長との差が50nm以上100nm以下である、ことを特徴とする蛍光体装置。」

(3)本件補正の内容
本件補正は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「反射層」を、「拡散反射層であり、前記拡散反射層の厚さが20〜150μmであり」と限定して、本件補正後の請求項1に係る発明とすることを含む。
また、本件補正は、本件出願の明細書、特許請求の範囲及び図面とみなされた外国語書面の翻訳文(以下「翻訳文」という。)の【0020】の記載に基づくものである。そして、本件補正前の請求項1に係る発明と、本件補正後の請求項1に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は、同一である(翻訳文の【0001】、【0006】〜【0009】)。
そうしてみると、本件補正は、特許法17条の2第3項の規定に適合するものであり、また、同条5項2号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とするものといえる。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正後発明」という。)が、同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

2 独立特許要件についての判断
(1)引用文献及び引用発明等
ア 引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由において引用された引用文献1(特開2017−117773号公報)は、本件優先日前に日本国内又は外国において電気回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載された引用文献であるところ、そこには、以下の記載がある。
なお、下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す(以下、同様である。)。

(ア) 「【請求項15】
照明システムの蛍光デバイスであって、
前記照明システムは、前記蛍光デバイスに第一周波帯光を発して第二周波帯光に変換するようにするものであり、
前記蛍光デバイスは、
基板と、
前記基板上に形成される第一蛍光物質層と、を備え、
前記第一蛍光物質層は、第一成分と、第二成分と、を含み、
前記第一周波帯光は、前記第一成分によって第一色光及び第二色光に変換され、
前記第二成分は、前記第一周波帯光を第三色光に変換するために前記第一成分に分散され、
前記第二色光のスペクトル範囲と前記第三色光のスペクトル範囲は、少なくとも部分的に重複しており、
前記第一色光、前記第二色光及び前記第三色光は、前記第二周波帯光として一体化されている、蛍光デバイス。
【請求項16】
前記蛍光デバイスは、第二蛍光物質層を更に備え、
前記第二蛍光物質層は、前記第一周波帯光を前記第一色光及び前記第二色光に同時に変換し且つ前記第一周波帯光のエネルギーを減少させるための前記第一成分を含み、
前記第一周波帯光は、順番に、光路に沿って前記第二蛍光物質層を通過し、前記第一蛍光物質層に入る、請求項15に記載の蛍光デバイス。」

(イ)「【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、蛍光デバイスに関する。より詳しくは、本発明は、蛍光デバイス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
近年、様々なプロジェクターが、様々なビデオ用途として広く利用されている。例えば、プロジェクターは、教室、立会場、会議室又はホームシアターにおいてプレゼンテーション、議論又は講義に用いることができる。画像信号源からの影像信号は、プロジェクターによってディスプレイスクリーンに拡大表示することができる。電力消費量及び全体の体積を小さくするために、現在のプロジェクターの照明システムは、高輝度放電(HID)ランプに代えて、固体発光素子(例えばLED又はLD)を使用している。
【0003】
一般に、プロジェクターの照明システムは、三原色光(即ち、赤色光(R)、緑色光(G)及び青色光(B))を発することができる。赤色固体発光素子、緑色固体発光素子及び青色固体発光素子を備える三原色固体発光素子の中で、青色固体発光素子は、発光効率が最も高い。赤色固体発光素子及び緑色固体発光素子は発光効率が低いので、赤色又は緑色は、青色固体発光素子と波長変換デバイス(例えば蛍光体ホイール)を用いて発生させることができる。即ち、青色固体発光素子及び蛍光体ホイールの使用によって、赤色固体発光素子又は緑色固体発光素子に代えて、赤色光又は緑色光を直接的に発することができる。その結果として、全照明システムの発光効率が向上し、照明システムの製造原価が低下する。
【0004】
しかしながら、励起光を発する固体発光素子とその励起光の波長を変換する蛍光体ホイールの使用には、いくつかの欠点が未だに存在する。投影のための色光として分離される励起光を発する蛍光薬剤を塗布した蛍光体ホイール及び固体発光素子を使用すると、色光の飽和レベル又は光度は充分でない可能性がある。
【0005】
従って、上記欠点を排除するために、改良された照明システム及び改良された投影装置を提供する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0006】
発明の開示
本発明の目的は、先行技術が直面する前述の欠点のうちの少なくとも1つを解決する蛍光デバイス及びその製造方法を提供することである。
【0007】
本発明は、蛍光デバイス及びその製造方法を提供する。第一蛍光薬剤及び第二蛍光薬剤を含む蛍光物質層を利用することによって、第一蛍光薬剤によって変換される第二周波帯光に含まれる色光の光度は、第二蛍光薬剤の変換によって増加させることができる。
【0008】
本発明は、蛍光デバイス及びその製造方法も提供する。第一蛍光薬剤及び第二蛍光薬剤を含む第二蛍光物質層は、光路に沿って、第一蛍光薬剤だけを含む第一蛍光物質層の後に形成されるため、大部分の第一周波帯光エネルギーは、第一蛍光物質層の第一蛍光薬剤によって減少して、第二蛍光薬剤の変換効率が向上する。
【0009】
本発明の態様によって、第一周波帯光を発する照明システムの蛍光デバイスが提供される。この蛍光デバイスは、基板と、第一蛍光物質層と、を備える。第一蛍光物質層は、第一蛍光薬剤と、第二蛍光薬剤と、を含む。第一蛍光薬剤は、第一周波帯光を第二周波帯光に変換するために基板上に形成される。第二周波帯光は、第一色光と、第二色光と、を含む。第二蛍光薬剤は、第二色光の光度を増加させるように第一周波帯光を第二色光に変換するために、第一蛍光薬剤に分散される。
【0010】
本発明の別の態様によって、照明システムの蛍光デバイスが提供される。この照明システムは、光学通路に沿って第一周波帯光を発するものである。蛍光デバイスは、基板と、第一蛍光物質層と、第二蛍光物質層と、を備える。基板は、光路上に配置される。第一蛍光物質層は、基板の片面に形成される。第二蛍光物質層は、光路に沿って、第一蛍光物質層の後に形成される。第一蛍光物質層は、第一蛍光薬剤と、x質量パーセントの第二蛍光薬剤と、を含む。第二蛍光物質層は、第一蛍光薬剤と、y質量パーセントの第二蛍光薬剤と、を含み、yはxよりも大きい。第一周波帯光は、第一蛍光薬剤によって第二周波帯光に変換される。第二周波帯光は、第一色光と、第二色光と、を含む。第一周波帯光が、第二蛍光薬剤によって第二色光に変換されることによって、第二色光の光度が増加する。」

(ウ)「【0021】
【図5】図5は、本発明の黄色蛍光薬剤及び赤色蛍光薬剤を含む蛍光デバイス、並びに、先行技術の黄色蛍光薬剤を利用した蛍光デバイス及び赤色蛍光薬剤を利用した蛍光デバイスの可視光の強度-波長線図を概略的に図示している。」

(エ)「【0029】
この実施形態及び以下の実施形態において、第一蛍光薬剤Yは、例えば、黄色蛍光薬剤であるが、これに限定されるものではない。一方、第二蛍光薬剤Rは、例えば赤色蛍光薬剤であるが、これに限定されるものではない。ある状態において、第二蛍光薬剤Rは、緑色蛍光薬剤であってもよい。第二蛍光薬剤Rの主な趣旨は、第一蛍光薬剤Yによって励起される励起光(第二周波帯光L2)に含まれる色光の少なくとも1つの強度を高め、その色飽和レベルを調整することである。更に、シンボル(文字)「Y」及び「R」は、第一蛍光薬剤及び第二蛍光薬剤を指すために示しているが、第一蛍光薬剤及び第二蛍光薬剤の色を限定するために示しているものではない。
【0030】
図2Aは、本発明の一実施形態による、蛍光デバイスを備える透過性基板及びその蛍光デバイスを備える照明システムを概略的に図示している。図2Bは、図2Aに示す蛍光デバイスの構造を概略的に図示している。図2A及び図2Bに示すように、照明システム2の蛍光デバイス1は、基板10と、第一蛍光物質層11と、を備える。第一蛍光物質層11は、前述の実施形態に記載されている第一蛍光物質層11と類似しており、本願明細書においては重複して記載していない。本実施形態において、基板10は、透過性基板である。
【0031】
本発明の蛍光デバイス1が他の方法で検討又は実現することができる点に留意する必要がある。一実施形態において、第一蛍光物質層11は、基板上に形成され、第一成分と、第二成分と、を含んでいる。第一成分を第一蛍光薬剤とすることができ、第二成分を第一蛍光薬剤とすることもできる。更に、第一周波帯光L1は、第一成分によって第一色光C1及び第二色光C2に変換される。第二成分は、第一周波帯光L1を第三色光に変換するために第一成分に分散され、第二色光C2のスペクトル範囲と第三色光のスペクトル範囲は、少なくとも部分的に重複しており、第一色光C1、第二色光C2及び第三色光は、第二周波帯光L2として一体化される。第二色光C2のスペクトル範囲と第三色光のスペクトル範囲は、少なくとも部分的に重複するため、第二色光C2の少なくとも一部の強度は増加する。
【0032】
一方では、第二成分によって変換された第三色光が第一成分によって変換された第二色光C2と類似すると、第二色光C2のスペクトル範囲と第三色光のスペクトル範囲は、完全に重複し、蛍光デバイス1は、前述の実施形態を満たす。即ち、第二成分によって変換される色光のスペクトル範囲は、実用的な要求を満たすように選択又は調整することができるが、本発明の実施形態に限定されるものではない。
【0033】
図3は、本発明の一実施形態による反射基板を備える蛍光デバイスの構造を概略的に図示している。図1B及び図3に示すように、蛍光デバイス1は、第二蛍光物質層12を更に含む。いくつかの実施形態において、基板10は、反射基板であり、第二蛍光物質層12は、第一蛍光物質層11上に配置される。第二蛍光物質層12は、第一周波帯光L1を第二周波帯光L2に変換し且つ第一周波帯光L1のエネルギーを減少させるための第一蛍光薬剤Yを含む。即ち、入射光(即ち、第一周波帯光L1)が第二蛍光体層12を透過すると、大部分の入射光エネルギーは変換される。例えば、蛍光物質層11に入力された第一周波帯光L1の残存パワーは、40ワット未満であるが、それに限定されるものではない。
【0034】
第一蛍光物質層11及び第二蛍光物質層12の各々の厚さは、10マイクロメートル以上(即ち≧ 10μm)及び500マイクロメートル以下(即ち≦ 500μm)である。好ましい実施形態において、第一蛍光物質層11及び第二蛍光物質層12の各々の厚さは、50マイクロメートル以上(即ち≧ 50μm)及び200マイクロメートル以下(即ち≦ 200μm)である。第一蛍光物質層11の厚さは、第二蛍光物質層12の厚さと同一であってもよく、異なっていてもよい点に留意する必要がある。加えて、第二蛍光薬剤Rの質量パーセントは、第一蛍光薬剤Yの85%未満である。
【0035】
本実施形態において、本発明の蛍光デバイス1は、反射コーティング13を更に含む。反射コーティング13は、基板10と第一蛍光物質層11との間に、少なくとも第二周波帯光L2を反射させるために配置される。反射コーティング13の例として、全反射コーティング又はダイクロイックコーティングが挙げられるが、これらに限定されるものではない。反射コーティング13としてダイクロイックコーティングを利用すると、第二周波帯光L2と同程度の波長範囲を有する色光は、反射コーティング13によって反射させることができる。当然、第一色光C1及び第二色光C2は、反射コーティング13によって両方とも反射することができる。反射コーティングを利用すると、可視光線のほぼ全ては、反射コーティング13によって反射される。
【0036】
反射基板を備える蛍光デバイス1の製造方法において、反射基板の提供の後、第一蛍光薬剤Yと、第二蛍光薬剤Rと、を含む第一蛍光物質層11は、反射基板上に形成される。第二蛍光薬剤Rが、上記の通り、第一周波帯光L1を第三色光に変換するために利用されることによって、蛍光デバイス1によって出力される第二色光C2の光度が増加する。次に、第二蛍光物質層12は、第一蛍光物質層11上に形成される。第二蛍光物質層12は、第一周波帯光L1を第二周波帯光L2に変換し且つ第一周波帯光L1のエネルギーを減少させるための第一蛍光薬剤Yを含む。更に、反射コーティング13は、基板10にプレコートしてもよく、製造しながら基板上に形成してもよい。
・・・中略・・・
【0041】
図1、図3及び図5を参照する。図5は、本発明の、第二蛍光物質層12としての黄色蛍光薬剤と、第二蛍光物質層11としての、赤色蛍光薬剤を混合した黄色蛍光薬剤と、を含む蛍光デバイスの可視光の強度-波長線図を概略的に図示している。これは、先行技術である、黄色蛍光薬剤を利用した蛍光デバイスと、赤色蛍光薬剤を利用した蛍光デバイスと、の比較である。図5は、(R-色領域における)図3に示される本発明の蛍光デバイス1の赤色光の強度(即ち曲線Y on Y+R)、先行技術の黄色蛍光薬剤を利用した蛍光デバイスの赤色光の強度(即ち曲線Y)及び先行技術の赤色蛍光薬剤を利用した蛍光デバイスの赤色光の強度(即ち曲線R)を示す。明らかに、本発明の蛍光デバイス1の赤色光の強度は、先行技術のものよりも大きい。更に、以下の表1は、比較データを示すものである。第二蛍光薬剤Rの質量パーセントは、第一蛍光薬剤Yの25%である。先行技術の黄色蛍光薬剤を利用した蛍光デバイスの赤色光の強度は、比較の基礎とするために、100%とする。
【0042】





(オ)「【図3】



(カ)「【図5】



イ 引用発明
引用文献1には、請求項15を引用する請求項16に係る発明として、次の「蛍光デバイス」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「照明システムの蛍光デバイスであって、前記照明システムは、前記蛍光デバイスに第一周波帯光を発して第二周波帯光に変換するようにするものであり、前記蛍光デバイスは、基板と、前記基板上に形成される第一蛍光物質層と、を備え、前記第一蛍光物質層は、第一成分と、第二成分と、を含み、前記第一周波帯光は、前記第一成分によって第一色光及び第二色光に変換され、前記第二成分は、前記第一周波帯光を第三色光に変換するために前記第一成分に分散され、前記第二色光のスペクトル範囲と前記第三色光のスペクトル範囲は、少なくとも部分的に重複しており、前記第一色光、前記第二色光及び前記第三色光は、前記第二周波帯光として一体化されており、
前記蛍光デバイスは、第二蛍光物質層を更に備え、前記第二蛍光物質層は、前記第一周波帯光を前記第一色光及び前記第二色光に同時に変換し且つ前記第一周波帯光のエネルギーを減少させるための前記第一成分を含み、前記第一周波帯光は、順番に、光路に沿って前記第二蛍光物質層を通過し、前記第一蛍光物質層に入る、
蛍光デバイス。」

ウ 引用文献4の記載
原査定で引用された、本件優先日前に日本国内又は外国において電気回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載された引用文献である、特開2017−216244号公報(以下「引用文献4」という。)には、以下の記載がある。

(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は照明及び表示技術分野に関し、特に波長変換装置及びその作製方法、関連する発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
予定の単色光若しくは多色光を得るために、レーザーやLEDなどの光源を利用して蛍光粉を励起することは、照明光源、投影表示などの分野に広く応用されている技術方案である。一般的に、この技術方案は、レーザー若しくはLEDの出射光を利用して高速回転の蛍光粉カラーホイール上に入射させることにより良好な放熱を実現するものである。」
・・・中略・・・
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明において、蛍光粉を備える蛍光粉層と、入射光を散乱するための、粒径が0.2〜0.5μmである白色の散乱粒子を備える乱反射層と、熱伝導係数が80W/mK以上である高熱伝導基板とを含み、前記蛍光粉層、前記乱反射層、前記高熱伝導基板は、順次に積層設置されて固定されていることを特徴とする波長変換装置が提供される。」

(イ)「【0037】
乱反射層120は、入射光を反射するためのものであり、白色の散乱粒子を備える。白色の散乱粒子は、一般的に塩類や酸化物類の粉末であり、例えば硫酸バリウム粉末、酸化アルミニウム粉末、酸化マグネシウム粉末、酸化チタン粉末、酸化ジルコニウム粉末等が挙げられ、基本的に光を吸収せず、且つ白色の散乱材料は性質が安定で、高温下で酸化しない。乱反射層は良好な放熱効果が要求されることを考慮し、熱伝導率が高い酸化アルミニウム粉末が好ましい。勿論、乱反射層120による入射光に対する反射機能を実現するために、乱反射層120において、白色の散乱材料は一定の緻密度および厚みを有する必要がある。この緻密度および厚みは、実験によって確定することができる。
・・・中略・・・
【0040】
例えば、窒化アルミニウムセラミックスが基板であり、表面に乱反射層として一層の厚さが0.2mmの酸化アルミニウム粉末が設置されている場合、その酸化アルミニウム粉末の粒径は、0.2μm〜0.5μmの範囲に分布され、それと接着剤との質量比は6:1である。このとき、測定された鏡面アルミニウム基板に対する乱反射層の反射率が99.5%、鏡面アルミニウム基板とほぼ同じである。勿論、乱反射粒子の粒径、乱反射層の厚さ及び緻密度は、その他の数値であってもよく、これらの数値は、当業者が従来技術に基づき、複数回の実験によって得ることができる。」

(ウ)「【0087】
S34であって、散乱粒子スラリーが高熱伝導セラミック基板に塗布される。
【0088】
高熱伝導セラミック基板は、散乱粒子スラリーのキャリアである。散乱粒子スラリーは、ナイフ塗布などで高熱伝導セラミック基板に塗布されることができる。好ましくは、散乱粒子スラリーは、スクリーン印刷方式で塗布されることもでき、スクリーン印刷によって高熱伝導セラミック基板の表面に塗布されている散乱粒子スラリーの厚みをより均一にし、焼結成形後の熱応力をより小さくすることができる。
【0089】
S35であって、散乱粒子スラリーが塗布された高熱伝導セラミック基板が焼結成形される。
【0090】
散乱粒子スラリーを焼結成形するために、焼結温度は散乱粒子スラリーにおける第一のガラス粉の軟化温度以上であることが必要となり、このように、ガラス粉は液相が形成され、散乱粒子と繊密な乱反射層に焼結されることに有利である。ただし、温度が高すぎてはいけない。温度が高すぎると、一定の量の白色の散乱粒子がガラス粉と化学反応し、乱反射率に影響する。実験から分かるように、焼結温度T2はTf<T2≦Tf+400℃の範囲内であれば、相対的により容易に成形することができ、ここで、Tfは第一のガラス粉の軟化温度である。
【0091】
実験から分かるように、直接的に散乱粒子スラリーが塗布された基板に対して焼結成形を行うと、散乱粒子スラリーによって焼結された乱反射層には、多くの気孔が生じる。これは、シリコーンオイルの引火点が、一般的にガラス粉の軟化温度より相当程度低く、直接的にガラス粉の軟化温度付近で加熱すると、シリコーンオイルの揮発の速度が速すぎることによって、乱反射層において気孔が形成されるからである。このため、本発明の実施例によれば、少なくとも一部のシリコーンオイルが低速度で揮発するように、焼結成形前に散乱粒子スラリーに対して低温加熱を行うことが必要である。」

エ 引用文献6の記載
本件優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である、特開2012−140479号公報(以下「引用文献6」という。)には、以下の記載がある。

(ア)「【要約】
【課題】反射性に優れた反射膜を形成するのに有用な組成物を提供する。
【解決手段】組成物を、白色顔料(例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウムなど)、ホウケイ酸亜鉛ガラスを少なくとも含むガラス、および樹脂を含む組成物で構成する。このような組成物において、白色顔料とガラスとの割合は、前者/後者(重量比)=95/5〜5/95程度であり、樹脂の割合は、白色顔料及びガラスの総量100重量部に対して3〜70重量部程度であってもよい。」

(イ)「【技術分野】
【0001】
本発明は、反射膜などを形成するのに有用な組成物、この組成物を用いて反射性基板を製造する方法およびこの方法により得られる反射性基板に関する。」

(ウ)「【0012】
このような状況の中、本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、白色顔料とガラスと樹脂とを組み合わせた組成物において、さらに、ガラスにホウケイ酸亜鉛ガラスを含有させ、このような組成物を焼結処理(高温加熱処理)することで、非酸化性雰囲気中であっても、ガラスの溶融とともに樹脂(さらにはペースト状組成物における溶媒)の分解が促進されるためか、反射性に優れるとともに、焼結により高強度の膜が得られること、さらには、このような方法により得られる膜は、白色顔料とガラスとの焼結体により形成されており、高温条件下に曝されても反射性を損なわない耐熱性に優れた膜であることを見出し、本発明を完成した。」

(エ)「【0017】
代表的な本発明の組成物には、白色顔料が、酸化チタン、酸化ジルコニウム、および酸化アルミニウムから選択された少なくとも1種を含む平均粒径(D50)0.1〜10μmの粒子であり、ガラスが亜鉛をZnO換算で15〜75重量%含むホウケイ酸亜鉛ガラスを含み、白色顔料とガラスとの割合が前者/後者(重量比)=80/20〜20/80であり、樹脂の割合が、白色顔料及びガラスの総量100重量部に対して、10〜50重量部である組成物などが含まれる。」

(オ)「【0064】
得られた反射膜(又は焼結膜、焼成後の塗膜、焼成パターン)の厚みは、用途に応じて0.01〜10000μm程度の範囲から適宜選択でき、例えば、0.01〜5000μm(例えば、0.1〜500μm)、好ましくは1〜400μm(例えば、2〜300μm)、さらに好ましくは3〜150μm(例えば、5〜100μm) 程度であってもよい。」

(カ)「【0071】
(実施例および参考例)
60℃に加熱した有機溶媒(ターピネオール)に、樹脂(ポリイソブチルメタクリレート)をプロペラ撹拌しながら溶かし、有機ビヒクルとした。そして、表に示す組成(重量比)となるように、各成分(白色顔料、ガラスフリット、有機ビヒクル)をポリ容器に量り取った。ポリ容器の蓋をし、自転公転式撹拌機を用いて1000rpmで10分間撹拌混合してペースト状の試料[粘度120Pa・s(温度25℃ 測定法:E型粘度計使用)]を得た。窒化アルミニウム基板(反射率30%)の表面に、作製したペーストをスクリーン印刷した後、窒素中で昇温降温過程を含めて1時間焼成した。焼成は、昇温速度36℃/分、降温速度36℃/分の条件で行い、ピーク温度900℃において10分間保持した。得られた反射膜の膜厚は30μmであった。」

オ 引用文献8の記載
本件優先日前に日本国内又は外国において電気回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載された引用文献である、国際公開第2011/142097号(以下「引用文献8」という。)には、以下の記載がある。

(ア)「要約: 本発明は、LEDランプの発光効率を十分に向上させることが可能な実装用基板及びその製造方法、発光モジュール並びに照明装置を提供することを目的とする。本発明の実装用基板(101)は、基板(108)と、基板(108)の表面に形成され、表面にLEDチップ(102)が実装される反射膜(106)とを備え、反射膜(106)は、酸化金属微粒子と、ガラスフリットとから構成され、反射膜(106)は、LEDチップ(102)からの光を反射させる。」

(イ)「[0001] 本発明は、半導体発光素子を実装するための実装用基板及びその製造方法、半導体発光素子を用いた発光モジュール、並びに、発光モジュールを備えた照明装置に関する。」

(ウ)「[0020] また、反射膜として酸化金属微粒子及びガラスフリットから構成される膜が用いられるため、金属膜及び樹脂を反射膜として用いるときのように、反射膜が経時変化により変色して反射率が劣化するのを抑えることができる。また、経時変化により反射膜に反りが発生し、反射膜が基板から剥離するのを抑えることができる。さらに、LEDランプのコスト及び重量を低減することができる。
・・・中略・・・
[0025] また、前記反射膜の膜厚は、10μm以上100μm以下であってもよい。」

(エ)「[0153] 最初に、基板108の表面の所定の領域に例えば配線ペーストがスクリーン印刷された後、基板108の乾燥及び焼成が行われて電極104及び端子105が形成される。
[0154] 次に、反射膜106の構成材料が準備される。具体的には、溶剤、バインダー、粉末ガラス、酸化金属微粒子の粉末材料、及び分散剤が準備される(ステップS10)。
[0155] 次に、準備された材料が例えば3本ロール混練機によって混練(混合)されてペースト状とされ、反射材ペーストが作成される(ステップS11)。
[0156] 次に、基板108の表面の電極104及び端子105が形成された部分以外に反射材ペーストがスクリーン印刷(塗布)される(ステップS12)。
[0157] 次に、スクリーン印刷がされた基板108が、例えば150℃の温度で30分にわたって乾燥されて反射材ペーストの溶剤が気化される(ステップS13)。
[0158] 次に、乾燥された基板108に対して加熱炉で焼成が行われることで、粉末ガラスが軟化して酸化金属微粒子の粉末同士と、酸化金属微粒子の粉末及び基板108とがガラスフリットにより結着(接合)され、ガラスフリット及び酸化金属微粒子つまり反射膜106が基板108に焼き付けられる(ステップS14)。例えば、乾燥された基板108が、最高温度700℃で15分間保持されることが設定されたベルト炉内で1時間加熱される。
[0159] ステップS10〜S14により、基板108の表面に反射膜106が形成され、実装用基板101が形成される。」

(オ)「[0326] 反射膜812は、主に光反射微粒子とガラスフリットとで構成され、図27Cに示すように、基板108の裏面108bに被覆形成される。反射膜812は、基板108を透過して基板108の裏面108bに到達したLEDチップ102の光を基板108の表面108aに向けて反射させる高反射膜である。
[0327] 反射膜812に含有される光反射微粒子(酸化金属微粒子)は、LEDチップの光を反射する材料で構成されており、可視光に対する反射率が高い材料で構成されている。光反射微粒子としては、例えば、ルチル型又はアナターゼ型等の酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニア、酸化アルミニウム並びに酸化亜鉛等からなる酸化金属微粒子を用いることができる。なお、光反射微粒子における微粒子とは、数μm以下の粒径を有する粒子をいう。本実施形態では、光反射微粒子として、粒径が0.20μmのルチル型の酸化チタン(TiO2)を用いた。
[0328] また、ガラスフリットは、光反射微粒子を基板108に結着させる結着材であり、可視光に対する透過率が高い材料で構成されている。また、ガラスフリットは、酸化シリコン(SiO2)を主成分とする材料で構成されている。ガラスフリットは、ガラス粉末を加熱して溶解することによって形成することができる。本実施形態において、ガラスフリットのガラス粉末は、SiO2−B2O3−R2O(但し、R2Oは、Li2O、Na2O、又は、K2Oである)を用いることができる。
・・・中略・・・
[0337] 次に、封止部材103に含まれる蛍光体粒子としては、LEDチップ102の発光光によって黄色の光を励起する黄色蛍光体粒子を用いる。黄色蛍光体粒子としては、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)系蛍光体材料を用いることができる。
[0338] このように、本実施形態に係るLEDモジュール4cでは、LEDチップ102として青色の光を発光する青色LEDを用い、封止部材103の蛍光体粒子として黄色蛍光体粒子を用いる。これにより、黄色蛍光体は青色LEDの青色発光光によって励起されて黄色光を放出する。そして、黄色蛍光体による黄色光と青色LEDによる青色光とによって白色光が生成され、当該白色光がLEDモジュール4cから放出される。
[0339] なお、LEDチップ102の材料又は蛍光体の材料、あるいは、LEDチップ102と蛍光体との組み合わせは、上記のものに限定されるものではない。
・・・中略・・・
[0351] ここで、上述のように、反射膜812の反射率として必要な反射率は90%以上であることが好ましい。同様に、反射光に含まれる波長としては700nm程度までであれば十分であることを考慮すると、図32に示すように、反射膜812の膜厚は20μm以上であることが好ましい。なお、反射膜812の膜厚が30μmを超えると、反射率は飽和してそれほど向上しないことも分かる。つまり、反射膜812の膜厚としては30μm以下で十分である。」

(2)対比
本件補正後発明と引用発明を対比する。
ア 光源システム、第1波長光
引用発明の「照明システムは」「蛍光デバイスに第一周波帯光を発して第二周波帯光に変換するようにするものであ」る。そうしてみると、引用発明の「照明システム」は、「第二周波帯光」を発する光源として機能するものといえる。
また、引用発明の「照明システム」が発する「第一周波帯光」は、技術的にみて、本件補正後発明の「第1波長光」に相当する。
以上によれば、引用発明の「照明システム」は、本件補正後発明の「光源システム」に相当し、本件補正後発明の「前記光源システムが第1波長光を発光し」との要件を満たす。

イ 基板
引用発明の「蛍光体デバイス」が「備え」る、「基板」は、その文言が意味するとおり、本件補正後発明の「基板」に相当する。

ウ 蛍光層、第1蛍光体、第2蛍光体、第1色光、第2色光、第2波長光
引用発明の「蛍光デバイス」は、「照明システムの」ものであり、「基板と、前記基板上に形成される第一蛍光物質層と、を備え、」「第二蛍光物質層を更に備え、」「前記第一周波帯光は、順番に、光路に沿って前記第二蛍光物質層を通過し、前記第一蛍光物質層に入る」ものである。さらに、引用発明の「第一蛍光物質層は、第一成分と、第二成分と、を含み」、「第二蛍光物質層は、」「第一成分を含」む。また、引用発明においては、「前記第一成分によって」「前記第一周波帯光は、」「第一色光及び第二色光に変換され」、「前記第二成分は、前記第一周波帯光を第三色光に変換するために前記第一成分に分散され」る。
上記各層の位置関係、組成及び機能からみて、引用発明の「第一蛍光物質層」及び「第二蛍光物質層」は、本件補正後発明の「蛍光層」に相当し、また、引用発明の「第一色光及び第二色光」、「第三色光」、「第一成分」及び「第二成分」は、それぞれ、本件補正後発明の「第1色光」、「第2色光」、「第1蛍光体」及び「第2蛍光体」に相当する。
さらに、「第一周波帯光を」「第二周波帯光に変換する」、引用発明の「蛍光デバイス」においては、「前記第一色光、前記第二色光及び前記第三色光は、前記第二周波帯光として一体化され」る。そうすると、引用発明の「第二周波帯光」は、波長変換後の光という意味において、本件補正後発明の「第2波長光」に相当するといえる。
以上の点及び上記アの対比結果から、引用発明の「第一蛍光物質層」及び「第二蛍光物質層」は、本件補正後発明の「蛍光層」における、「前記基板に形成され、前記第1波長光を第2波長光に変換し、」「第1蛍光体と第2蛍光体とを含有し」との要件を満たす。また、引用発明の「第一成分」は、本件補正後発明の「第1蛍光体」における、「前記第1波長光を第1色光に変換し」との要件を満たす。さらに、引用発明の「第二成分」は、本件補正後発明の「第2蛍光体」における、「前記第1蛍光体の同士間に分布され、且つ前記第1蛍光体と混合し、」「前記第1波長光を第2色光に変換し」との要件を満たす。

エ 蛍光体装置
引用発明の「蛍光デバイス」は、上記ウで述べた構成を具備する。当該構成からみて、引用発明の「蛍光デバイス」は、本件補正後発明の「蛍光体装置」に相当する。

以上の対比結果を総合すると、引用発明の「蛍光体デバイス」と、本件補正後発明の「蛍光体装置」とは、「光源システムに適用され、前記光源システムが第1波長光を発光し、」「基板と蛍光層と」「を備え、」「前記第1色光と前記第2色光とを混光して前記第2波長光を形成し」という点で共通する。

(3)一致点及び相違点
ア 一致点
本件補正後発明と引用発明は、次の構成で一致する。
「蛍光体装置であって、光源システムに適用され、前記光源システムが第1波長光を発光し、前記蛍光体装置は、基板と蛍光層とを備え、
前記蛍光層が前記基板に形成され、前記第1波長光を第2波長光に変換し、
前記蛍光層は、第1蛍光体と第2蛍光体とを含有し、
前記第1蛍光体が前記第1波長光を第1色光に変換し、
前記第2蛍光体が前記第1蛍光体の同士間に分布され、且つ前記第1蛍光体と混合し、前記第2蛍光体が前記第1波長光を第2色光に変換し、
前記第1色光と前記第2色光とを混光して前記第2波長光を形成する、蛍光体装置。」

イ 相違点
本件補正後発明と引用発明は、以下の点で相違する。
(相違点1)
「前記第1色光と前記第2色光」に関し、本件補正後発明においては、「前記第1色光は第1ピーク波長を有し」、「前記第2色光は第2ピーク波長を有し」、「前記第1ピーク波長と前記第2ピーク波長との差が50nm以上100nm以下である」のに対し、引用発明はこのように特定されたものではない点。

(相違点2)
本件補正後発明においては、「反射層」「を備え」、「前記反射層が前記基板と前記蛍光層との間に配置され、前記第2波長光を反射し、且つ前記反射層が無機金属酸化物粒子またはペーストで構成される拡散反射層であり、前記拡散反射層の厚さが20〜150μmであ」るのに対し、引用発明は「反射層」を備えていない点。

(4)判断
以下、「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者」のことを「当業者」という。
ア 相違点1について
引用文献1の【0031】には、「本発明の蛍光デバイス」において、「第一蛍光物質層11は、基板上に形成され、第一成分と、第二成分と、を含んでいる。第一成分を第一蛍光薬剤とすることができ、第二成分を第一蛍光薬剤とすることもできる。更に、第一周波帯光L1は、第一成分によって第一色光C1及び第二色光C2に変換される。第二成分は、第一周波帯光L1を第三色光に変換するために第一成分に分散され、第二色光C2のスペクトル範囲と第三色光のスペクトル範囲は、少なくとも部分的に重複しており、第一色光C1、第二色光C2及び第三色光は、第二周波帯光L2として一体化される。」と記載されている。
また、同文献の【0033】には、【図3】に記載された「蛍光デバイス」について、「第二蛍光物質層12を更に含み」「第二蛍光物質層12は、第一周波帯光L1を第二周波帯光L2に変換し且つ第一周波帯光L1のエネルギーを減少させるための第一蛍光薬剤Yを含む」ことが記載され、【0036】には、「第二蛍光薬剤Rが」、「第一周波帯光L1を第三色光に変換するために利用されること」が記載されている。
上記記載からみて、当業者は、【図3】に記載される上記「蛍光デバイス」は、【請求項15】を引用する【請求項16】に係る蛍光デバイス、すなわち、引用発明の「蛍光デバイス」を具体化したものに相当すると理解する。
ここで、【図3】に記載される実施形態である「黄色蛍光薬剤及び赤色蛍光薬剤を含む蛍光デバイス、並びに、先行技術の黄色蛍光薬剤を利用した蛍光デバイス及び赤色蛍光薬剤を利用した蛍光デバイスの可視光の強度-波長線図」を示す【図5】によれば、「黄色蛍光薬剤を利用した蛍光デバイス」及び「赤色蛍光薬剤を利用した蛍光デバイス」は強度が最大となるピーク波長を有しており、前者のピーク波長が550nm付近であり、後者のピーク波長が少なくとも600nmより大きく、650nmより小さいことが見て取れる。
そうしてみると、引用発明を具体化するに際して、【図3】に記載された上記実施形態を参考とし、「第一成分(第一蛍光薬剤)」及び「第二成分(第二蛍光薬剤)」として、【図5】に開示された、互いのピーク波長の差が50nm以上100nm以下のものを採用することは、引用文献1の上記記載(図3、図5及びその関連箇所)に接した当業者が、まず試してみる選択枝といえる。
したがって、相違点1に係る本件補正後発明の構成は、引用文献1の上記記載に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。

イ 相違点2について
引用文献1の【0035】には、図3に記載された上記「蛍光デバイス」について、「反射コーティング13を更に含」み、「反射コーティング13は、基板10と第一蛍光物質層11との間に、少なくとも第二周波帯光L2を反射させるために配置される」と記載され、この記載に引き続き、「反射コーティング13の例として、全反射コーティング又はダイクロイックコーティングが挙げられるが、これらに限定されるものではない。」と記載されている。
上記記載に接した当業者は、図3に記載された「蛍光デバイス」を参考にして、引用発明の具体化を行うに際し、「反射コーティング」については、「少なくとも第二周波数帯光L2を反射させる」、周知の反射コーティングを採用する余地があることを理解する。他方、引用文献4、6及び8の記載(上記(2)ウ〜オ)からみて、無機金属酸化物粒子またはペーストで拡散反射層を形成する技術は、本件優先日前において周知技術であると認められる(当合議体注:例えば、引用文献4、6及び8に記載される「酸化アルミニウム」、「酸化チタン」は無機金属酸化物粒子である。)。ここで、ペースト状の無機金属酸化物粒子を含有してなる反射層が、拡散反射層として機能することは技術常識である。なお、引用文献4及び8に記載される技術は、本件補正後発明と同様に、蛍光体(又は蛍光粉)を備える装置(波長変換装置、光源装置、照明装置)に用いられるものである。
そうしてみると、引用発明において、「反射コーティング」として、上記周知の無機金属酸化物粒子またはペーストで構成される拡散反射層を採用することは、上記周知技術を心得た当業者が、容易に想到し得たことである。
そして、「拡散反射層の厚さ」に関しては、引用文献4の「勿論、乱反射粒子の粒径、乱反射層の厚さ及び緻密度は、その他の数値であってもよく、これらの数値は、当業者が従来技術に基づき、複数回の実験によって得ることができる。」(【0040】)及び引用文献6の「得られた反射膜(又は焼結膜、焼成後の塗膜、焼成パターン)の厚みは、用途に応じて0.01〜10000μm程度の範囲から適宜選択でき、例えば、0.01〜5000μm(例えば、0.1〜500μm)、好ましくは1〜400μm(例えば、2〜300μm)、さらに好ましくは3〜150μm(例えば、5〜100μm)程度であってもよい。」(【0064】)との記載からみて、反射層の厚みをどの程度とするかは、当業者の設計的事項であるといえる。さらに、反射コーティングの厚さが、20〜150μmの範囲にあるものは周知であり(例えば、引用文献6の【0071】、引用文献8の【0351】参照。)、厚さを上記範囲とすることが格別であるともいえない。
以上のことから、相違点2に係る本件補正後発明の構成は、当業者が容易に想到し得たことである。

(5)発明の効果について
本願補正後発明は、「前記蛍光体装置の前記蛍光層には、混合した第1蛍光体と第2蛍光体とを含有し、第1波長光を特定のピーク波長を有する第1色光と第2色光とを混光して第2波長光を係止することで、特定色光の純度、輝度及び発光強度を向上させる」(【0007】)という効果を奏するものである。しかしながら、当該効果は引用発明及び周知技術等に基づき容易に推考し得る発明も奏する効果である。

(6)請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書の3.において、
「(本願発明と引用発明との対比)
補正後の請求項に規定する特定事項によって、本願発明では、「反射層12は、第2色光C2に対するアルミニウムの反射率よりも大きい第2色光C2に対する反射率を有するものであり、第2色光C2の光抽出効率を向上させる」ことという効果を奏しています。
当該効果は、引用文献1〜5の何れか一つにおいても、教示・示唆されていません。したがって、補正後の請求項1、12、13及び14に係る発明は、引用文献1〜5の記載に対して、有利な効果を有すると考えられ、進歩性を有すると思料いたします。また、請求項1、12、13及び14が進歩性を有する場合、従属請求項も進歩性を有すると思料いたします。」と主張している。
しかしながら、上記効果は、引用発明及び周知技術等に基づき容易に推考し得る発明も奏する効果である。または、上記効果は、上記容易に推考し得る発明の構成から、当業者が、本件優先日当時に予測することができた範囲の効果を超える顕著なものであるということができない。

(7)小括
本件補正後発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、本件優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3 補正の却下の決定のむすび
本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明
以上のとおり、本件補正は却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記「第2」[理由]1(1)に記載された事項によって特定されるとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、本件優先日前に日本国内又は外国において電気回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載された、引用文献1(特開2017−117773号公報)に記載された発明及び周知技術に基づいて、本件優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。

3 引用文献の記載及び引用発明
引用文献1の記載及び引用発明は、前記「第2」[理由]2(1)及び(2)に記載したとおりである。

4 対比及び判断
本願発明は、前記「第2」[理由]2で検討した本件補正後発明から、「反射層」が「拡散反射層であり、前記拡散反射層の厚さが20〜150μmであり、」との限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正後発明が、前記「第2」[理由]2に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

審判長 里村 利光
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2021-06-15 
結審通知日 2021-06-22 
審決日 2021-07-06 
出願番号 P2019-082579
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 里村 利光
特許庁審判官 下村 一石
関根 洋之
発明の名称 蛍光体装置  
代理人 SK特許業務法人  
代理人 伊藤 寛之  
代理人 奥野 彰彦  
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