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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03H
管理番号 1380556
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-11-09 
確定日 2021-12-02 
事件の表示 特願2015−198876「ホログラム構造体」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 4月13日出願公開、特開2017− 72693〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 事案の概要
1 手続等の経緯
特願2015−198876号(以下「本件出願」という。)は、平成27年10月6日を出願日とする出願であって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。
令和 元年 7月 2日付け:拒絶理由通知書
令和 元年 9月 6日提出:意見書
令和 元年 9月 6日提出:手続補正書
令和 2年 2月10日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 4月17日提出:意見書
令和 2年 4月17日提出:手続補正書
令和 2年 7月31日付け:拒絶査定
令和 2年11月 9日提出:審判請求書
令和 2年11月 9日提出:手続補正書
令和 3年 6月10日付け:拒絶理由通知書(この拒絶理由通知書により通知した拒絶の理由を、以下「当審拒絶理由」という。)
令和 3年 8月16日提出:意見書

2 本願発明
本件出願の請求項1〜請求項8に係る発明は、令和2年11月9日にした手続補正後の特許請求の範囲の請求項1〜請求項8に記載された事項によって特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明は、次のものである(以下「本願発明」という。)。
「 反射型ホログラム形成領域および透過型ホログラム形成領域を有するホログラム層と、
前記ホログラム層の前記反射型ホログラム形成領域の凹凸表面に接するよう形成された蒸着層と、
を有し、
前記反射型ホログラム形成領域および前記透過型ホログラム形成領域には、点光源から入射した、放射状に拡散しながら直進する光を所望の光像へ変換する、位相型フーリエ変換ホログラムが記録されており、
前記反射型ホログラム形成領域の平面視サイズが、5mm角以上50mm角以下の範囲内であり、
前記反射型ホログラム形成領域は、前記点光源を観察面側に配置して、観察面側から前記ホログラム層を平面視した際に、前記反射型ホログラム形成領域内に前記光像を再生可能なものであり、前記透過型ホログラム形成領域は、前記点光源を観察面とは反対側に配置して、観察面側から前記ホログラム層を平面視した際に、前記透過型ホログラム形成領域内に前記光像を再生可能なものであることを特徴とするホログラム構造体。」

3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の理由1(進歩性)の概要は、本件出願の請求項1〜請求項8に係る発明(令和2年11月9日にした手続補正後のもの)は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:特開2002−90548号公報
引用文献2:米国特許出願公開第2009/0016208号明細書
(当合議体注:引用文献1は主引用例として引用したものであり、引用文献2は副引用例として引用したものである。)

第2 当合議体の判断
1 引用文献の記載及び引用発明等
(1)引用文献1の記載事項
当審拒絶理由において引用された特開2002−90548号公報(以下「引用文献1」という。)は、本件出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であるところ、そこには以下の記載事項がある。なお、当合議体が発明の認定等に用いた箇所に下線を付した。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、基板の表面に微細な回折格子(グレーティング)をセル(ドット)毎に配置することにより形成される回折格子パターンを用いた表示体に関する。特に、回折格子パターンにより構成される装飾画像内に、それとは異なる特定情報が混在され、その情報の再生を必要とする製品に適用するのに好適な表示体に関する。」

イ 「【0014】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、回折格子から成るセルを画素として、基板上に複数配置することにより、装飾画像が構成される表示体において、装飾画像と合わせて、それとは異なる機械読み取り用の特定情報を記録する際に、特定情報の記録箇所が目視で明確に把握されることがなく、特定情報による情報量を多くすることにより、特定情報の存在が把握されたとしても、その偽造・模造への対策が十分でありながら、装飾画像の表示品質を低下させることがなく、特定情報のみを読み取ることが容易であり、偽造・模造の困難な表示体を提供することを目的とする。」

ウ 「【0015】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の目的を達成するためになされたものであり、回折格子から成るセルを画素として、基板上に複数配置することにより、装飾画像が構成される表示体において、装飾画像の表示領域内に、装飾画像とは別な特定情報を記録した計算機ホログラムから成るセルを、少なくとも1つ有することを主な特徴とする。
【0016】計算機ホログラムとしては、情報をフーリエ変換して物体光成分としたフーリエ変換ホログラムが好適であり、例えば、情報を2次元パターンとし、物体光の断面上の光強度分布をこの2次元パターンに対応した物体光を採用すれば良い。
【0017】装飾画像を構成する回折格子セルは、計算機ホログラムに比べて単純な格子線から構成される回折格子により、セルを規定する領域内が覆われている。
【0018】<作用>回折格子から成るセルを画素として基板上に複数配置することにより構成される表示体は、回折格子の空間周波数,角度,回折効率により、観察時の色,観察可能な方向,明るさを画素毎に任意に変化させることができ、通常の観察条件下において、肉眼で観察可能な画像や文字などを表示することが可能である。このとき、主として回折格子からの1次回折光が観察に利用される。
【0019】このような表示体上に、装飾画像とは別な特定情報を記録した計算機ホログラムを配置することにより、予め決められた再生条件下において、記録された特定情報を、肉眼で認識もしくは専用機械で読み取ることが可能となる。(請求項1)
【0020】この場合にも、主として計算機ホログラムからの1次回折光が情報再生光となる。本発明の計算機ホログラムとしては、キノフォームなども含めた広い意味での計算機ホログラムが適用できる。計算機ホログラムからの再生光(主として1次回折光)は、予め設定した距離に配置したスクリーンなどに、像を投影もしくは結像することができ、肉眼での情報認識もしくは専用機械での情報読み取りを容易に確実に行うことができる。
【0021】さらに、計算機ホログラムからの再生光を前記スクリーン位置における2次元的な光強度などの分布とすることも容易であり、画像や文字情報,バーコードなどを含む多くの情報を一度に再生することができる。
【0022】特に、計算機ホログラムをフーリエ変換型ホログラムとすることにより、情報の記録が容易であり、かつ情報再生も容易かつ確実に行うことが可能となる(請求項2)。ただし、情報再生においては、波長の帯域幅の狭い光を用いて計算機ホログラムを照明し、スクリーンに再生像を投影するなど、若干の装置類が必要になる。」

エ 「【0036】
【発明の実施の形態】図2は、本発明の表示体の一例を示す説明図である。本発明の表示体では、図の左(上)に示しているような回折格子から成るセルを画素として画像を表示している。このような表示体に適当な白色光を入射し、観察者が適当な位置から観察するとき、本発明の表示体上の回折格子からの1次回折光が観察者の眼に入射し、1次回折光により任意の像を観察できる。
【0037】このとき、セル毎に、主として回折格子の空間周波数によって観察される色が決められる。また、セル毎の回折格子の方向は、そのセルが光って見える方向(観察者の視点)を決定する。さらにセル毎の回折格子の回折効率やセルの大きさは、そのセルが光って見える際の明るさに関係する。従って、表示体上にある全てのセルの回折格子の空間周波数と方向と回折効率などを適切に設定することにより、表示される像がデザインできる。
【0038】このような表示像を観察するように設計された空間的範囲(1次回折光が分布する範囲)が、本発明の表示体に対する視域である。一方、本発明の表示体においては、計算機ホログラムも単純な回折格子セルと一緒に配置されている。この計算機ホログラムは情報を記録したものであるが、表示体上の表示像を観察している際には、計算機ホログラムからの1次回折光が観察者の邪魔にならないようにすることで、表示像の品質が保てる。
【0039】このためには、上述の表示像の視域と、計算機ホログラムからの1次回折光が重ならないようにすれば良い。例えば、回折格子セルを構成する回折格子の空間周波数や方向と、計算機ホログラムの搬送波成分のそれらとが十分に差があれば、この条件は満たされる。なお、本発明の計算機ホログラムとしては、キノフォームなども含めた広い意味での計算機ホログラムが適用できる。
【0040】また、回折格子セルや計算機ホログラムが十分に小さければ(望ましくは観察者の眼の解像度以下の大きさ)、周囲の回折格子セルのみが観察され、計算機ホログラムを気付かせないようにすることもでき、見た目の表示像の解像度も十分にできる。これを実現するためには、多くの場合、セルの大きさ及び計算機ホログラムの大きさを300μm以下とすれば良い。
【0041】また、表示体が比較的小さく、観察距離も小さくなる場合(例えば、300mm前後)、100μm以下の大きさのセルおよび計算機ホログラムを用いるのが望ましい。セルおよび計算機ホログラムを市松状に配置する場合などには、それぞれのサイズが50μm以下となるようにすると、肉眼での観察において計算機ホログラムを隠蔽する効果、セルによる表示像の解像度共に十分である。
【0042】図3は、通常の観察条件下における本発明の表示体の観察の一例を示す説明図である。図3では、本発明の表示体がxy平面に平行に配置され、yz面内にある光源からの照明光で照明されている様子を示している。
【0043】表示体上の個々の回折格子セルはそれぞれ1次回折光を射出し、観察者はz軸近辺に分布する1次回折光を瞳に入射させて、表示像を観察している。ここでの本発明の表示体は、個々のセルを構成する回折格子の格子ベクトルがx方向に近くないように設計したものである。
【0044】一方、計算機ホログラムの搬送波成分の格子ベクトルはx方向となるようにしている。このため、図3のような表示体の観察において、計算機ホログラムからの1次回折光は、0次回折光に対してx方向に存在しているので、通常の観察では認識されない。従って、計算機ホログラムの存在に依存しない望ましい像の表示が可能となる。
【0045】図4は、図3と同じ本発明の表示体上の計算機ホログラムからの情報再生の一例を示す説明図である。図では、xz面内に置いたレーザーダイオードなどのような波長帯域の狭い光源からの光を平行光状にして本発明の表示体に入射し、表示体上の計算機ホログラムからの1次回折光をスクリーンで受けることにより情報を再生している。
【0046】このスクリーン上のパターンを肉眼で観察、もしくはスクリーンを置かずにCCDなどで直接受光することにより記録情報を容易に読み取ることが可能である。例えば、予め再生時のスクリーン位置に2次元パターン(記録情報)の物体を配置して物体光として計算機ホログラムを生成しておけば、再生時のスクリーン上には2次元パターンが結像し、コントラストの高い、正確な情報再生が可能となる。
【0047】また、このときには、スクリーンの位置などを知らないと、情報の再生が行えないため、情報隠蔽や偽造防止に一層の効果がある。なお、図4のような再生方法に対応する計算機ホログラムは、再生情報の品質(明るさやコントラスト、解像度など)の面で、複数個の計算機ホログラムが全体として1つの再生情報を形成するようにし、これらを平行光状の光で一度に再生するのが望ましい。
【0048】このとき、図4において、像表示のための回折格子セルからの1次回折光は、0次回折光に対してy方向に存在しているので、再生情報の読み取り方向(スクリーン方向)には伝播しない。以上により、計算機ホログラムは表示像の観察時のノイズなどの原因にはならず、高品質な像表示が可能であり、さらに計算機ホログラムからの情報読み取り時には、他の回折格子セルは情報読み取り時のノイズなどの原因にはならず、高精度な情報読み取りなどが実現できる。
【0049】また、記録情報を2次元の光強度パターンとし、これをフーリエ変換したものを物体光として得られたフーリエ変換型の計算機ホログラムを本発明の表示体における計算機ホログラムとして用いることにより、容易な情報記録・再生が可能となる。
【0050】図5は、本発明の表示体上の計算機ホログラム(フーリエ変換ホログラム)からの情報再生の一例を示す説明図である。図では、xz面内にあるレーザーダイオードなどのような波長帯域の狭い光源からのビーム状の光を本発明の表示体に入射し、表示体上の計算機ホログラムからの1次回折光をレンズにより光学的にフーリエ変換してスクリーンに投影して情報を再生している。
【0051】図4と同様に、このスクリーン上のパターンを肉眼で観察、もしくはスクリーンを置かずにCCDなどで直接受光することにより、情報の読み取りが可能である。このとき、本発明の表示体とレンズ間の距離、及びレンズとスクリーン間の距離を、レンズの焦点距離と等しく配置することにより、再生時に光学的な「フーリエ変換」が実現できる。
【0052】一方、レンズがない場合でも、ある程度以上離れた位置に置いたスクリーンにはフーリエ変換像と等価であるフラウンホーファ回折像が投影されるので、同様の情報読み取りが簡便に実現できる。図6は、図5と同様の場合にレンズ無しで、本発明の表示体上の計算機ホログラム(フーリエ変換ホログラム)からの情報再生の一例を示す説明図である。
【0053】図6のようなフラウンホーファ回折像としての像の観察・読み取りは、本発明の表示体とスクリーンとの距離によって投影サイズが変わるという特徴があり、投影サイズを読み取りなどに適したサイズに変更することが容易である。
・・省略・・
【0056】・・省略・・また、以上の図では、主に反射型の回折格子および計算機ホログラムの場合について説明してきたが、透過型の場合も全く同様の取り扱いが可能である。
【0057】図8は、本発明の表示体において、計算機ホログラムを等間隔に配置した場合の一例を示している。表示体上の一部を図の左側に拡大して表示しているが、このように横方向に1セル置きに配置しても良く、また図とは異なるが縦横共に等間隔に並べても良い。さらには、市松状に配置しても良く、一方、ランダムに配置しても良い。
【0058】これらの場合に、計算機ホログラムは全て同一のものでも、個々に異なるものでもよい。また、複数種類の計算機ホログラムをそれぞれ複数配置しても良い。例えば、図9は、本発明の表示体において、計算機ホログラムを等間隔に配置した場合の別の例を示している。表示体上の一部を図の左側に拡大して表示しているが、このように回折格子セルと計算機ホログラムをペアにして並べると、回折格子セルを画素として表現された表示像の最大輝度を均一にすることができ、また計算機ホログラムも均一かつ等間隔に多くの数を配置することができる。
・・省略・・
【0063】なお、本発明の表示体を構成する回折格子セルおよび計算機ホログラムは、表面レリーフに代表される位相型、濃度表現による振幅型など、どのような種類の回折素子形態でも適用される。」

オ 「【0064】
【発明の効果】本発明の如く、回折格子から成るセルを画素として基板上に複数配置することにより成る表示体において、表示体の表示領域内に情報を記録した計算機ホログラムを少なくとも1つ有することによって、回折格子セルによって表現された像は高品質に保ちつつ、容易に再生可能な情報を記録できるようにしている。」

カ 「【図2】


【図3】


【図4】


【図5】


【図6】


【図8】


【図9】



(2)引用文献1に記載された発明
ア 引用文献1には、【0014】に記載された目的を達成するためになされたものとして、【0015】、【0016】に記載のような「計算機ホログラムとしては、情報をフーリエ変換して物体光成分としたフーリエ変換ホログラム」である「表示体」が記載されている。

イ 引用文献1の【0056】の記載からは「回折格子」及び「計算機ホログラム」が「反射型」である「表示体」を把握することができる。

ウ そうすると、引用文献1には、以下の「表示体」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「回折格子から成るセルを画素として、基板上に複数配置することにより、装飾画像が構成される表示体において、装飾画像の表示領域内に、装飾画像とは別な特定情報を記録した計算機ホログラムから成るセルを、少なくとも1つ有し、
計算機ホログラムとしては、情報をフーリエ変換して物体光成分としたフーリエ変換ホログラムであり、
回折格子及び計算機ホログラムが反射型である
表示体。」

(3)引用文献2の記載事項
当審拒絶理由において引用された米国特許出願公開第2009/0016208号明細書(以下「引用文献2」という。)は、本件出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であるところ、そこには以下の記載事項がある。なお、当合議体が発明の認定等に用いた箇所に下線を付した。
「[0009] The invention is based on the technical problem of specifying a method for producing a storage medium comprising a security feature and a storage medium comprising a security feature having a larger variety of combinations of different security features is made possible.
(参考訳:本発明は、セキュリティ機能を備えた記録媒体を製造する方法を特定するという技術的問題に基づいており、異なるセキュリティ機能のより多様な組み合わせを有するセキュリティ機能を備えた記録媒体が可能になる。)
[0010] The technical problem is solved by means of a storage medium comprising a security feature, comprising a substrate, comprising at least one functional layer, comprising at least one feature which is written in the functional layer and can be observed in reflection, and comprising at least one feature which is written in the functional layer and can be observed in transmission, wherein at least one feature is individualized and wherein at least one feature has a diffractive structure.
(参考訳:技術的な問題は、セキュリティ機能を含み、基板を含み、少なくとも1つの機能層を含み、機能層に書き込まれ、反射時に観察することができる少なくとも1つの特徴を含み、機能層に書き込まれ、透過時に観察することができる少なくとも1つの特徴を含み、少なくとも1つの特徴は個別化されており、少なくとも1つの特徴は回折構造を有する、記録媒体によって解決される。)
[0011] The technical problem presented above is also solved by means of a method for producing a storage medium comprising a security feature,
in which, in at least one functional layer of the storage medium, at least one feature which can be observed in reflection, that is to say a reflectively diffractive structure and/or information content or structure and/or information content that can be observed reflectively by means of brightness modulations, is written in the storage medium,
in which at least one feature which can be observed in transmission, that is to say a transmissively diffractive structure and/or information content or structure and/or information content that can be observed transmissively by means of brightness modulations, is written in the at least one functional layer of the storage medium,
wherein at least one feature is individualized, and wherein at least one feature is written as a diffractive structure.
(参考訳:上記の技術的問題は、セキュリティ機能を備えた記録媒体を製造する方法によっても解決される。ここで、記録媒体の少なくとも1つの機能層において、反射時に観察することができる少なくとも1つの特徴、つまり、輝度変調によって反射的に観察することができる反射回折構造および/または情報コンテンツまたは構造および/または情報コンテンツは、記録媒体に書き込まれ、透過時に観察できる少なくとも1つの特徴、つまり、輝度変調によって透過的に観察することができる透過回折構造および/または情報コンテンツまたは構造および/または情報コンテンツは、記録媒体の少なくとも1つの機能層に書き込まれ、少なくとも1つの特徴が個別化され、少なくとも1つの特徴が回折構造として書き込まれる。)
[0012] In this case, it is preferred for the features to be written as microstructurings into the storage medium. Consequently, it is specified for the first time that different microstructurings which can be observed in reflection and transmission are contained in a functional layer of a storage medium or can be written by the same production method.
(参考訳:この場合、特徴は微細構造として記録媒体に書き込まれることが好ましい。その結果、反射および透過時に観察できる異なる微細構造が記録媒体の機能層に含まれるか、同じ製造方法で書き込むことができることが初めて特定された。)
[0013] Diffractive structures may in this case be simple grating arrangements, complex grating arrangements or holograms. The method according to the invention thus enables a plurality of different ways of storing and reading items of information in one and the same material. In this case, a separate individual information item can be stored by each individual way of storage. In this case, individual information is understood to mean for example any information which relates to one or more properties of the object on which the storage medium is to be applied as a security feature. Examples of such properties are serial numbers or production data.
(参考訳:回折構造は、この場合、単純な格子配置、複雑な格子配置、またはホログラムであり得る。したがって、本発明による方法は、情報の項目を同一の材料に記録および読み取る複数の異なる方法を可能にする。この場合、別個の個別情報項目を個別の記録方法ごとに記録することができる。この場合、個別情報は、例えば、記録媒体がセキュリティ機能として適用される対象物の1つまたは複数の特性に関連する任意の情報を意味すると理解される。このような特性の例は、シリアル番号または製造データである。)
・・省略・・
[0022] The method according to the invention makes it possible to produce objects which can serve as a security feature and afford increased security against counterfeiting relative to known diffractive security features since different ways of storage are realized in one and the same storage medium and can even be situated at one and the same location, which represents a major technical hurdle for counterfeiting attempts owing to the increased complexity of the production of such objects.」
(参考訳:異なる記録方法が同一の記録媒体で実現され、同一の場所に配置することもできるため、本発明による方法は、セキュリティ機能として機能し、既知の回折セキュリティ機能と比較して偽造に対するセキュリティを向上させることができる対象物を生成することを可能にし、これは、そのような対象物の作成がますます複雑になるため、偽造の試みに対する主要な技術的ハードルを表している。)

2 対比及び判断
(1)対比
本願発明と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。
引用発明の「表示体」は、「装飾画像の表示領域内に、装飾画像とは別な特定情報を記録した計算機ホログラムから成るセルを、少なくとも1つ有し」ている。また、引用発明の「計算機ホログラム」は、「情報をフーリエ変換して物体光成分としたフーリエ変換ホログラムであ」り、「反射型」である。
上記構成及び技術常識を勘案すると、引用発明の「装飾画像の表示領域」には、「計算機ホログラムから成るセル」として、光源から入射した光を所望の光像へ変換する、「フーリエ変換ホログラム」が記録されており、引用発明の「計算機ホログラム」は「反射型」であるので、「装飾画像の表示領域」は、再生時に光源を観察面側に配置して光像が再生可能なものといえる。また、この「装飾画像の表示領域内」に有する「計算機ホログラムから成るセル」は、その機能及び配置からみて、ホログラムが形成された層状のものといえる。
以上勘案すると、引用発明の「装飾画像の表示領域」、「計算機ホログラムから成るセル」及び「表示体」は、それぞれ本願発明の「反射型ホログラム形成領域」、「ホログラム層」及び「ホログラム構造体」に相当する。また、引用発明の「装飾画像の表示領域」と本願発明の「反射型ホログラム形成領域」とは、「光源から入射した、」「光を所望の光像へ変換する」「フーリエ変換ホログラムが記録されて」おり、「光源を観察面側に配置して、」「光像を再生可能なものであ」る点で共通する。さらに、引用発明の「表示体」は、本願発明の「ホログラム構造体」と「反射型ホログラム形成領域を有するホログラム層」「を有し」という点で共通する。

(2)一致点及び相違点
以上より、本願発明と引用発明とは、
「反射型ホログラム形成領域を有するホログラム層、
を有し、
前記反射型ホログラム形成領域には、光源から入射した光を所望の光像へ変換する、フーリエ変換ホログラムが記録されており、
前記反射型ホログラム形成領域は、前記光源を観察面側に配置して、前記光像を再生可能なものである、
ホログラム構造体。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
本願発明の「ホログラム層」は、「透過型ホログラム形成領域」を有しており、当該「透過型ホログラム形成領域」には「点光源から入射した、放射状に拡散しながら直進する光を所望の光像へ変換する、位相型フーリエ変換ホログラムが記録されており」、また、「透過型ホログラム形成領域は、前記点光源を観察面とは反対側に配置して、観察面側から前記ホログラム層を平面視した際に、前記透過型ホログラム形成領域内に前記光像を再生可能なものである」という要件を満たすのに対して、引用発明は、このような要件を満たす「透過型ホログラム形成領域」についての特定がない点。

(相違点2)
本願発明は、「前記ホログラム層の前記反射型ホログラム形成領域の凹凸表面に接するよう形成された蒸着層」を有するのに対して、引用発明にはそのような特定がない点。

(相違点3)
本願発明の「反射型ホログラム形成領域」には、「点光源から入射した、放射状に拡散しながら直進する光を所望の光像へ変換する、位相型フーリエ変換ホログラムが記録されて」いるのに対して、引用発明の「装飾画像の表示領域」の「計算機ホログラム」は、再生する際の光源が「点」光源であるか及び光源から入射する光が「放射状に拡散しながら直進する」か特定されておらず、また「フーリエ変換ホログラム」が「位相型」であるかどうか特定されていない点。

(相違点4)
本願発明は「前記反射型ホログラム形成領域の平面視サイズが、5mm角以上50mm角以下の範囲内であ」るのに対して、引用発明にはそのような特定がない点。

(相違点5)
本願発明の「反射型ホログラム形成領域」は、「前記点光源を観察面側に配置して、観察面側から前記ホログラム層を平面視した際に、前記反射型ホログラム形成領域内に前記光像を再生可能なものであ」るのに対して、引用発明の「装飾画像の表示領域」は、再生時の光源が「点」光源であるか、また、「観察面側から前記ホログラム層を平面視した際に、前記反射型ホログラム形成領域内に」光像が再生可能となっているか特定されていない点。

(3)判断
これらの相違点について検討する。
ア 相違点1について
引用文献1の【0056】には「また、以上の図では、主に反射型の回折格子および計算機ホログラムの場合について説明してきたが、透過型の場合も全く同様の取り扱いが可能である。」との記載があり、【0058】には「これらの場合に、計算機ホログラムは全て同一のものでも、個々に異なるものでもよい。また、複数種類の計算機ホログラムをそれぞれ複数配置しても良い。」との記載がある。
また、引用文献2には、異なる記録方法が同一の記録媒体で実現され、同一の場所に配置することにより、偽造に対するセキュリティを向上させることができる記録媒体として、反射時に観察することができる少なくとも1つの回折構造及び透過時に観察することができる少なくとも1つの回折構造を有し、回折構造はホログラムでありうるという技術的事項が記載されていると認められる([0009]〜[0013]、[0022])。
そして、引用文献1及び引用文献2におけるこれらの記載に触れた当業者にとって、引用発明において、セキュリティ向上のために、反射型のフーリエ変換ホログラムに加えて、異なる種類の計算機ホログラムである透過型のフーリエ変換ホログラムを設けることは通常の創意工夫の範囲内の事項にすぎない。
また、透過型のフーリエ変換ホログラムとして上記相違点1に係る要件を満たすものについては周知技術である(例えば、特開2015−60113号公報を参照。なお、特開2015−60113号公報においては、点光源としてLEDを使用しており、LEDからの光は「放射状に拡散しながら直進する光」であると認められる。さらに、計算機ホログラムにおける再生光として、ビーム状の光だけでなく拡散光も用いられることは特開2003−295744号公報【0016】を参照。)。
審判請求人は、令和3年8月16日提出の意見書において、「上記引用文献1に記載された発明の課題は『装飾画像と合わせて、それとは異なる機械読み取り用の特定情報を記録する際に、特定情報の記録箇所が目視で明確に把握されることがないようにする』点にあります。このような課題を有する発明におきまして、反射型位相型フーリエ変換ホログラムに加えて、透過型位相型フーリエ変換ホログラムを配置することは、透明な部分を加えることになることから、むしろ特定情報の記録箇所が目視で把握しやすくなる方向に働くものと思われます。したがって、引用文献1に記載された発明に接した当業者が、回折格子および計算機ホログラムを反射型もしくは透過型でそろえて配置することにより、上記課題を解決しようとしている状態で、これとは異なる、透過型もしくは反射型の計算機ホログラムを併せて設けることは、決して容易では無いものと考えます。」と主張している。
当該主張について検討する。
引用文献1の【0040】には「回折格子セルや計算機ホログラムが十分に小さければ(望ましくは観察者の眼の解像度以下の大きさ)、周囲の回折格子セルのみが観察され、計算機ホログラムを気付かせないようにすることもでき」と記載されている。すなわち、「特定情報の記録箇所が目視で明確に把握されることがなく」という効果は、回折格子や計算機ホログラムのセルを十分小さくすることで発揮されるものとして説明されている。また、このような構成と効果の関係については、本件の出願当時に周知であり(他に、国際公開第2014/199296号の第2頁第21行〜第3頁第7行(対応する日本語公報として特表2016−530118号公報の【0016】〜【0018】))、光が透過する透過型であっても透過部分が十分小さければ、目視で明確に把握されることがなくなることが知られていた。したがって、引用文献1について「回折格子および計算機ホログラムを反射型もしくは透過型でそろえて配置することにより、上記課題を解決しようとしている状態」と解する審判請求人の主張は採用することができない。
よって、上記【0056】の記載についても、回折格子および計算機ホログラムについて、反射型もしくは透過型が適宜に採用し得る旨を示すものとして、本件の出願当時の当業者であれば理解できたことである。そして、上記【0058】の記載のとおり、引用文献1には、複数種類の計算機ホログラムを配置してもよいとも記載されていることから、引用発明において、透過型の計算機ホログラムをさらに用いることに、格別の阻害要因があるとは認められない。

イ 相違点2について
反射型ホログラムにおいて、ホログラム形成領域の凹凸表面に接するよう形成された蒸着層を設ける構成とすることは周知な構成であり(例えば、特開平6−282216号公報【0040】(なお、同文献における反射型ホログラムの例としてフーリエ変換型の記載もある(【0010】))、特開2001−138558号公報【0061】−【0062】を参照。)、引用発明の「フーリエ変換ホログラム」として当該周知な構成を採用することに格別の困難性はない。

ウ 相違点3及び相違点5について
相違点3及び相違点5はいずれも「反射型ホログラム形成領域」に関することなので併せて検討する。
計算機ホログラムにおける再生光として、ビーム状の光だけでなく拡散光も用いられることは周知技術であり(特開2003−295744号公報【0016】)、引用発明の「反射型ホログラム形成領域」として、点光源からの拡散光を用いて再生されるようにホログラムを記録することは当業者が適宜設計する事項にすぎない。
また、引用文献1の【0063】には「本発明の表示体を構成する回折格子セルおよび計算機ホログラムは、表面レリーフに代表される位相型、濃度表現による振幅型など、どのような種類の回折素子形態でも適用される。」との記載がある。そして、当該記載に基づいて、引用発明の「フーリエ変換ホログラム」として「位相型」のものとすることは当業者が適宜選択する事項にすぎない。
さらに、再生する光像の位置及び大きさとして「観察面側から前記ホログラム層を平面視した際に、前記反射型ホログラム形成領域内」に再生するように計算機ホログラムを記録することについても、当業者が適宜設計する事項にすぎない。

エ 相違点4について
ホログラムが形成される領域の大きさは当業者が適宜設計する事項にすぎない。

(4)発明の効果について
本願発明は、本件出願の明細書【0015】に記載のように「偽造防止性および意匠性に優れたホログラム構造体を提供できる」という効果を奏するものである。しかしながら、このような効果は、引用発明に、引用文献1、2に記載の事項及び周知技術を採用することにより、当業者が予測できる、あるいは期待される範囲内のものにすぎない。

(5)審判請求人の令和3年8月16日提出の意見書の主張について
審判請求人は、同意見書において、上記(3)アに示した主張のほか、
引用文献1、2について「本発明の発明特定事項CおよびEに示すような、点光源から入射した、放射状に拡散しながら直進する光を所望の光像へ変換し、上記光像が目視で観察できるように設計された位相型フーリエ変換ホログラムは示されていないものと考えます。」と主張する。
しかしながら、上記(3)ア及びウに示したように、再生時の光源を点光源からの拡散光としてホログラムを記録することは周知技術であり、当該周知技術に基づいて当業者が適宜設計する事項にすぎない。
したがって、審判請求人の上記主張は、採用することができない。

(6)小括
上記(1)〜(5)より、本願発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献1、2に記載された事項及び周知技術に基づいて、本願出願前に当業者が容易に発明をすることができたものである。

第3 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献1、2に記載された事項及び周知技術に基づいて、本願出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2021-09-30 
結審通知日 2021-10-05 
審決日 2021-10-18 
出願番号 P2015-198876
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G03H)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 榎本 吉孝
特許庁審判官 関根 洋之
早川 貴之
発明の名称 ホログラム構造体  
代理人 山下 昭彦  
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