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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1380561 |
総通号数 | 1 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2022-01-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-11-10 |
確定日 | 2021-12-09 |
事件の表示 | 特願2018− 32848「ビデオゲーム処理装置、およびビデオゲーム処理プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 8月 2日出願公開、特開2018−118066〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成23年6月15日(以下「分割原出願日」という。)に出願した特願2011−133738号の一部を平成27年4月20日に新たに出願した特願2015−86249号の一部を平成30年2月27日に新たに出願したものであって、同年5月8日に手続補正書が提出され、平成31年2月27日付けで拒絶理由が通知され、令和1年6月28日に意見書及び手続補正書が提出され、同年11月25日付けで拒絶理由(最後)が通知され、令和2年3月31日に意見書及び手続補正書が提出され、同年7月29日付けで同年3月31日に提出された手続補正書でした補正が却下されるとともに、拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、これに対し、同年11月10日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出されたものである。 第2 令和2年11月10日に提出された手続補正書による補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 令和2年11月10日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲について、下記(1)に示す本件補正前の(すなわち、令和1年6月28日に提出された手続補正書により補正された)特許請求の範囲の請求項1を、下記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1へと補正することを含むものである。(下線は当審決で付した。以下同じ。) (1)本件補正前の特許請求の範囲 「【請求項1】 表示装置の表示画面にオブジェクトを表示してビデオゲームの進行を制御するビデオゲーム処理装置であって、 該ビデオゲーム処理装置の筐体における各面のうち複数の面にそれぞれ設けられた複数のタッチパネルと、 該複数のタッチパネルそれぞれのタッチ操作を受け付ける受付手段と、 該受付手段が受け付けたタッチ操作が前記筐体における何れの面に設けられたタッチパネルの操作であるかを判定する判定手段と、 該判定手段により判定された操作が、前記複数のタッチパネルのうち、前記表示画面に設けられた1のタッチパネルの操作の場合と、当該1のタッチパネルとは異なる面に設けられた他のタッチパネルの操作の場合とで、1のオブジェクトに関する異なる演出を実行する実行手段とを含み、 該実行手段は、前記他のタッチパネルに対するドラッグ操作に基づいて、前記1のオブジェクトに関する演出を実行する ことを特徴とするビデオゲーム処理装置。」 (2)本件補正後の特許請求の範囲 「【請求項1】 表示装置の表示画面にオブジェクトを表示してビデオゲームの進行を制御するビデオゲーム処理装置であって、 該ビデオゲーム処理装置の筐体における各面のうち複数の面にそれぞれ設けられた複数のタッチパネルと、 該複数のタッチパネルそれぞれのタッチ操作を受け付ける受付手段と、 該受付手段が受け付けたタッチ操作が前記筐体における何れの面に設けられたタッチパネルの操作であるかを判定する判定手段と、 該判定手段により判定された操作が、前記複数のタッチパネルのうち、前記表示画面に設けられた1のタッチパネルの操作の場合と、当該1のタッチパネルとは異なる面に設けられた他のタッチパネルの操作の場合とで、1のオブジェクトに関する異なる演出を実行する実行手段とを含み、 該実行手段は、前記他のタッチパネルに対するドラッグ操作に基づいて、前記1のタッチパネルに対するドラッグ操作の場合と異なる演出を前記1のオブジェクトに関する演出として実行し、 該実行手段は、仮想空間における前記オブジェクトの状態が、前記ドラッグ操作を受け付けたタッチパネルが設けられた面側からの影響を受けて変化することを表す演出を実行する ことを特徴とするビデオゲーム処理装置。」 2 本件補正の適否について 本件補正により、本件補正前の請求項1の発明特定事項である「1のオブジェクトに関する演出」について、「1のタッチパネルに対するドラッグ操作の場合と異なる演出」との限定を付加するとともに、「実行手段」について、「仮想空間における前記オブジェクトの状態が、前記ドラッグ操作を受け付けたタッチパネルが設けられた面側からの影響を受けて変化することを表す演出を実行する」との限定を付加するものである。 そして、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。 そうすると、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 また、本件補正は、本願の願書の最初に添付した明細書の 「【0018】 また、本例においては、前面タッチパネルFTのみゲーム画面を表示する表示部13(具体的には、表示部13の表示画面13A)に設けられている場合について説明するが、他の面においても、タッチパネルが各種画面を表示する表示装置に設けられた構成としてよい。すなわち、例えばビデオゲーム処理装置100の筐体100Aが、各面に、表示装置とタッチパネルとにより構成されるタッチスクリーンTSを備える構成としてもよい。」 「【0025】 本例では、記憶部12は、プレイヤ操作受付部15が受け付ける操作入力に応じて実行する演出(例えば、キャラクタに対する攻撃など)を示す操作情報記憶部12aを含む。 【0026】 図4は、操作情報記憶部12aに記憶される操作情報の格納状態の例を示す説明図である。図4に示すように、操作情報は、タッチパネルの位置と、操作内容と、演出の内容とが対応付けされた情報である。操作内容としては、例えば図4に示すように、タップ(タップ操作)やドラッグ(ドラッグ操作)などのタッチパネルに対する基本的な操作内容に加え、特定のリズムでタップすることや、特定の軌跡を描くようにドラッグすることなど、制御部11が識別可能な各種操作内容を含む。なお、本例においては、タッチパネル上の略同じ位置を複数回連続してドラッグする操作を「撫でる」と呼ぶ。また、演出の内容としては、例えば図4に示すように、所定方向からの攻撃、味方キャラクタへの攻撃指示、味方キャラクタの鼓舞、味方キャラクタの回復などが考えられる。その他、演出の内容として、ペットなどのキャラクタを所定方向から撫でる動作なども考えられる。なお、操作情報は、表示部13の表示画面に表示されたビデオゲームの状況に対応して複数種類記憶されているものとする。すなわち、例えば、敵キャラクタとの戦闘シーンと味方キャラクタとの会話シーンとでは、同じ操作入力でも違う演出を実行することとなる。」 「【0040】 図7は、特定された演出が実行されるときのゲーム画面の例を示す説明図である。ゲーム処理において、プレイヤAが、要求されたタッチ操作に従って右側タッチパネルRTに対するタップ操作を行った場合、制御部11は、敵キャラクタNPCに対して右側(右側タッチパネルRTが配置されている方向)から攻撃を加える演出を行うための処理を実行する。 【0041】 図8は、特定された演出が実行されるときのゲーム画面の他の例を示す説明図である。ゲーム処理において、プレイヤAが、要求されたタッチ操作に従って背面タッチパネルBTに対するタップ操作を行った場合、制御部11は、敵キャラクタNPCに対して背面側(背面タッチパネルBTが配置されている方向)から攻撃を加える演出を行うための処理を実行する。」 「【0062】 例えば、制御部11は、背面タッチパネルBTに対するドラッグ操作を受け付けると、ドラッグ操作に対応する表示画面13Aの範囲を特定し、特定した範囲内に表示されている敵キャラクタを、プレイヤキャラクタまたは味方キャラクタによる攻撃対象として指定したことを表す演出を実行する。このような構成とすることにより、プレイヤAが、例えば表示画面13A内の1つの領域をタッチ操作により指定することを望む場合に、自分の指やポインティングデバイス等により表示画面13Aを隠してしまうことを回避することができるようになる。」 の記載に基づいており、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。 3 独立特許要件について 本件補正の目的が、特許請求の範囲の減縮を目的としているので、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本願補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下検討する。 (1)本願補正発明 本願補正発明は、上記「1 (2)本件補正後の特許請求の範囲」の【請求項1】に記載したとおりのものと認める。 (2)引用例 原査定の拒絶の理由において引用された「背面タッチパネルをフルに使った「Little Deviants(仮称)」実機プレイ,YouTube[online][video],2011年1月27日,[2019年11月22日検索],インターネット<URL:https://www.youtube.com/watch?v=aCU7zBMRGgM>」(以下「引用例」という。)には、次の事項が示されている。 なお、引用例に表示される映像には、画面の中央下部に話をする人物(以下「説明者」という。)が、該説明者の背後にカメラを携えた人物が、さらに、該カメラを携えた人物の背後にスクリーンが表示されているとともに、説明者の話した言葉が聴取できること、並びに、説明者の動作及びスクリーンに表示される映像が看取できることから、以下の各事項には、映像のタイムスタンプと、説明者が話した言葉を『』書きで、さらに、説明者の動作及びスクリーンに表示される映像から看取できる事項を記す。 ア 「0:00/3:12〜0:09/3:12 『今回の裏側のバックタッチパッドを操作しますので、 バックタッチの私の指の動きとゲーム画面を併せてご覧下さい。』 中央に表示画面を備え、左上に「Sony」、中央下部に「PlayStation」と表示された装置(前記表示からゲーム装置が映されているものと推認できることから、以下「ゲーム装置」という。)が両手で把持されていること。 該ゲーム装置の表示画面には、緑色のフィールドと水色の川と頭部がオレンジ色の複数のキャラクタが表示されていること。」 イ 「0:11/3:12〜0:29/3:12 『さて、ゲーム画面にはフィールドの中にオレンジ色の変わったキャラクターがいます。 これはデヴィアンツといって、この世界で色々悪さをするイタズラ好きです。 このデヴィアンツを懲らしめるために、プレイヤーはバックタッチを使って操作します。』」 ウ 「0:30/3:12〜0:44/3:12 『まず、1本の指で本体の後ろを触ってみましょう。 触ったところのフィールドが迫り上がり、まるで山のようになって、デヴィアンツをコロコロと転がすことが可能になります。』 説明者が、右手の人差し指でゲーム装置の背面をなぞること。 スクリーンに表示されたゲーム装置の表示画面には、フィールドが迫り上がり、迫り上がったフィールドの斜面からキャラクターが転がること。」 エ 「0:50/3:12〜1:18/3:12 『NGTには、バックタッチには、5インチの有機ELディスプレイと同じ幅、非常に大きなサイズのタッチバッドが搭載されていますので、ユーザがその指の場所と、ゲームの世界を一対一で対応させて、まるで、ゲーム世界の触りたいところをユーザが思うがままに触るような操作が可能です。』 説明者が、右手の人差し指でゲーム装置の前面をタップすること。 スクリーンには、ゲーム装置の表示画面に表示されたフィールドの一点を右手の人差し指がタップすること、及びゲーム装置の表示画面には、タップされたフィールドの一点がゲーム画面の左下に移動するとともに、表示範囲が移動すること。」 オ 「1:19/3:12〜1:32/3:12 『さらに、後ろを、こうやってタップしますと、その衝撃波が伝わって、キャラクターをジャンプさせて、障害物を越えたりと、そういった操作も可能になります。』 説明者が、右手の人差し指でゲーム装置の背面を複数回タップする。 スクリーンには、右手の人差し指がゲーム装置の背面を複数回タップすること、及び、ゲーム装置の表示画面には、フィールド及び川の一点を中心に白いリングが現れ、白いリングの衝撃波によりキャラクターが飛び跳ねること。」 カ 「2:12/3:12〜3:11/3:12 『さらに、フロントタッチとバックタッチを両方使った操作をします。親指と人差し指を使います。画面を二つの指を使って、挟み込む形で、デヴィアンツを摘まんで引っ張って放すと、パチンコのように飛ばすことが可能です。 こうやって、こうやって、パチン。 このようにバックタッチを使ってキャラクターや世界を触る、なぞる、転がす、それから、摘まむ、引っ張る、思いのままに、この世界、キャラクターと戯れることが可能になっているのが、ご覧いただけたかと思います。 まさに、ゲーム世界だけの中にあって、それを直接触ると、そういった感覚、それはこれまでになかった、全く新しいゲーム感覚が実現できていると思います。』 説明者が、右手の親指と人差し指とで、ゲーム装置の表面と背面とを挟むこと。 スクリーンには、右手の親指と人差し指とで、ゲーム装置の表面と背面とを挟み、挟んだ右手の親指がキャラクター上に置かれた状態で右方向に動かし、右手をゲーム装置から放すと、キャラクターは左方向に転がること。」 上記事項ア〜カより、以下の事項が認定できる。 キ 上記エの説明者の話した言葉、エにおいて、表示画面に表示されたフィールドの一点がタップされると、ゲーム画面が移動すること、及び「バックタッチ」を使うことからすれば、ゲーム装置が背面にタッチパネルを備えることは明らかであることより、ゲーム装置は、タッチパネルを備えた5インチの有機ELディスプレイと、背面のタッチパネルとを有するものであること。 ク 上記アのスクリーンの表示及びイの説明者の話した言葉より、ゲーム装置で進行されるゲームは、緑色のフィールドと水色の川と頭部がオレンジ色の複数のキャラクター・デヴィアンツが表示され、デヴィアンツを懲らしめるゲームであって、ゲームの進行がゲーム装置の5インチの有機ELディスプレイに表示されること。 そして、「5インチの有機ELディスプレイ」、「表示画面」及び「表面」とは、いずれも、ゲーム装置の表面のタッチパネルが配された画面であることから、以下「表示画面」という。 また、ゲーム装置の「背面」とは、説明者のいう「バックタッチ」を使う(行う)上述の背面のタッチパネルを指していることは明らかであるから、以下「バックタッチパネル」という。 ケ 上記エより、表示画面をタップすると、タップされたフィールドの一点がゲーム画面の左下に移動するとともに、表示範囲が移動すること。 コ 上記オより、ゲーム装置のバックタッチパネルをタップすると、フィールド及び川の一点を中心に白いリングが現れ、白いリングの衝撃波によりキャラクターが飛び跳ねること。 サ 上記ウより、ゲーム装置のバックタッチパネルをなぞると、フィールドが迫り上がり、迫り上がったフィールドの斜面からキャラクターが転がること。 シ 上記カの、右手の親指と人差し指とで、ゲーム装置の表示画面とバックタッチパネルとを挟み、右手の親指がキャラクター上に置かれ状態で右方向に動かす動作は、挟んだ右手の親指と人差し指で、ゲーム装置の表示画面とバックタッチパネルとを同時になぞる動作(以下「ドラッグする」という。)といえるから、挟んだ右手の親指と人差し指とで、表示画面とバックタッチパネルとを同時にドラッグし、手をゲーム装置から放すと、キャラクターは左方向に転がること。 ス 以上、イ〜シの表示画面に表示される映像の内容は、いずれもゲームの進行が表示されたものであることは、ゲーム装置に表示されたものであることからして明らかである。 そうすると、上記事項ア〜カ及びキ〜スより、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が示されているものと認められる。 「タッチパネルを備えた表示画面と、バックタッチパネルとを有するゲーム装置であって、 ゲーム装置で進行されるゲームは、緑色のフィールドと水色の川と頭部がオレンジ色の複数のキャラクター・デヴィアンツが表示され、デヴィアンツを懲らしめるゲームであって、 ゲームの進行がゲーム装置の表示画面に表示され、 表示画面をタップすると、タップされたフィールドの一点がゲーム画面の左下に移動するとともに、表示範囲が移動し、 バックタッチパネルをタップすると、フィールド及び川の一点を中心に白いリングが現れ、白いリングの衝撃波によりキャラクターが飛び跳ね、 バックタッチパネルをドラッグすると、フィールドが迫り上がり、迫り上がったフィールドの斜面からキャラクターが転がり、 右手の親指と人差し指とで、表示画面とバックタッチパネルとを挟み、挟んだ右手の親指と人差し指とで、表示画面とバックタッチパネルとを同時にドラッグし、手をゲーム装置から放すと、キャラクターは左方向に転がる、 というゲームの進行が表示画面に表示される、ゲーム装置。」 (3)対比 そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、 ア 後者の「表示画面」、「緑色のフィールドと水色の川と頭部がオレンジ色の複数のキャラクター・デヴィアンツ」、「ゲーム」、「ゲーム装置」は、それぞれ、前者の「表示装置の表示画面」、「オブジェクト」、「ビデオゲーム」、「ビデオゲーム処理装置」に相当する。 イ 後者の「ゲーム装置」の「表示画面」には「ゲームの進行」が表示されているとともに、「ゲーム装置」が「ゲームの進行」を制御していることは、ゲーム装置の技術常識といえる事項である。 ウ 後者の「タッチパネルを備えた表示画面と、バックタッチパネル」は、「ゲーム装置」のそれぞれ、「表面」と「背面」に設けられたものであるから、前者の「ビデオゲーム処理装置の筐体における各面のうち複数の面にそれぞれ設けられた複数のタッチパネル」に相当する。 また、後者の「タッチパネルを備えた表示画面と、バックタッチパネル」が、「タッチ操作を受け付ける受付手段」及び「受付手段が受け付けたタッチ操作が筐体における何れの面に設けられたタッチパネルの操作であるかを判定する判定手段」を備えていることは明らかといえる。 エ 後者の「ゲーム装置」の「表示画面」をタップすると、タップされたフィールドの一点がゲーム画面の左下に移動するとともに、表示範囲が移動し、後者の「ゲーム装置」の「バックタッチパネル」をタップすると、フィールド及び川の一点を中心に白いリングが現れ、白いリングの衝撃波によりキャラクターが飛び跳ねる、というゲームの進行が表示画面に表示されるのであるから、前者の「ビデオゲーム処理装置」と後者の「ゲーム装置」とは、「判定手段により判定された操作が、複数のタッチパネルのうち、表示画面に設けられた1のタッチパネルの操作の場合と、当該1のタッチパネルとは異なる面に設けられた他のタッチパネルの操作の場合とで、1のオブジェクトに関する異なる演出を実行する実行手段」を備える点で一致する。 オ 後者の「ゲーム装置」の「バックタッチパネル」をドラッグすると、フィールドが迫り上がり、迫り上がったフィールドの斜面からキャラクターが転がるものであるから、前者の「ビデオゲーム処理装置」と後者の「ゲーム装置」とは、「他のタッチパネルに対するドラッグ操作に基づいて、1のオブジェクトに関する演出として実行」する「実行手段」を備える点で一致する。 カ 後者の「ゲーム装置」の「バックタッチパネル」をドラッグすると、フィールドが迫り上がるところ、フィールドの迫り上がりは、背面から前面に向けた方向の迫り上がりといえるから、後者の「バックタッチパネルをドラッグすると、フィールドが迫り上が」る「というゲームの進行」は、前者の「ドラッグ操作を受け付けたタッチパネルが設けられた面側からの影響を受けて変化することを表す演出」に相当する。 したがって、両者は、 「表示装置の表示画面にオブジェクトを表示してビデオゲームの進行を制御するビデオゲーム処理装置であって、 該ビデオゲーム処理装置の筐体における各面のうち複数の面にそれぞれ設けられた複数のタッチパネルと、 該複数のタッチパネルそれぞれのタッチ操作を受け付ける受付手段と、 該受付手段が受け付けたタッチ操作が前記筐体における何れの面に設けられたタッチパネルの操作であるかを判定する判定手段と、 該判定手段により判定された操作が、前記複数のタッチパネルのうち、前記表示画面に設けられた1のタッチパネルの操作の場合と、当該1のタッチパネルとは異なる面に設けられた他のタッチパネルの操作の場合とで、1のオブジェクトに関する異なる演出を実行する実行手段とを含み、 該実行手段は、前記他のタッチパネルに対するドラッグ操作に基づいて、前記1のオブジェクトに関する演出として実行し、 該実行手段は、仮想空間における前記オブジェクトの状態が、前記ドラッグ操作を受け付けたタッチパネルが設けられた面側からの影響を受けて変化することを表す演出を実行する ことを特徴とするビデオゲーム処理装置。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点] 他のタッチパネルに対するドラッグ操作に基づいた演出が、本願補正発明は、「1のタッチパネルに対するドラッグ操作の場合と異なる演出」であるのに対し、引用発明は、どのような演出がなされるのかが明らかでない点。 (4)判断 上記相違点について、以下検討する。 引用発明は、「『表示画面』をタップすると、タップされたフィールドの一点がゲーム画面の左下に移動するとともに、表示範囲が移動し」、「『バックタッチパネル』をタップすると、フィールド及び川の一点を中心に白いリングが現れ、白いリングの衝撃波によりキャラクターが飛び跳ね」るという演出がなされることから、引用発明には、画面(パネル)毎に、同じ操作に基づいて、異なる演出が実行されるという技術事項が示唆されていると認められる。 そうすると、引用発明が、「『バックタッチパネル』をドラッグすると、フィールドが迫り上がり、迫り上がったフィールドの斜面からキャラクターが転が」るという演出がなされているところ、「表示画面」をドラッグした際に、「フィールドが迫り上がり、迫り上がったフィールドの斜面からキャラクターが転が」るとは異なる演出を実行するようにすることは、当業者が容易になし得るものである。 してみると、引用発明において、上記相違点の構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。 (5)請求人の主張について 請求人は、 ア 引用文献1には、背面のタッチパネルをなぞる(ドラッグ操作する)と、地面が盛り上がるように表示される点が開示されているだけで、表示画面をドラッグ操作した場合に地面の状態がどのように変化するのか、開示されていない。 イ 引用文献1に、「表示画面をタッチ(タップ操作)すると、タッチした位置が画面の中心に来るように表示範囲が移動する点(0:55〜0:56付近)」が開示されているとしても、タッチした位置が画面の中心に来るように表示範囲が移動することは、仮想空間における地面の状態を変化させるものではない。 と主張する。 そこで、前記各主張について以下、検討する。 上記主張アについて、上記(4)で検討したとおり、引用例には開示されていないものの、引用発明から、当業者が容易に想到し得るものである。 上記主張(イ)について、引用発明は、「表示画面」を「タップ」すると、フィールドの一点がゲーム画面の左下に移動するとともに、表示範囲が移動し、「バックタッチパネル」を「タップ」すると、フィールド及び川の一点を中心に白いリングが現れるのであるから、フィールドが移動することと、フィールドに白いリングが現れることとは、「1のオブジェクトに関する異なる演出」といえる。 よって、請求人の主張は採用できない。 したがって、本願補正発明は、特許法第29条第2項に該当し、特許を受けることができない発明であって、特許出願の際、独立して特許を受けることが出来ないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反してされたものである。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、令和1年6月28日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 表示装置の表示画面にオブジェクトを表示してビデオゲームの進行を制御するビデオゲーム処理装置であって、 該ビデオゲーム処理装置の筐体における各面のうち複数の面にそれぞれ設けられた複数のタッチパネルと、 該複数のタッチパネルそれぞれのタッチ操作を受け付ける受付手段と、 該受付手段が受け付けたタッチ操作が前記筐体における何れの面に設けられたタッチパネルの操作であるかを判定する判定手段と、 該判定手段により判定された操作が、前記複数のタッチパネルのうち、前記表示画面に設けられた1のタッチパネルの操作の場合と、当該1のタッチパネルとは異なる面に設けられた他のタッチパネルの操作の場合とで、1のオブジェクトに関する異なる演出を実行する実行手段とを含み、 該実行手段は、前記他のタッチパネルに対するドラッグ操作に基づいて、前記1のオブジェクトに関する演出を実行する ことを特徴とするビデオゲーム処理装置。」(以下「本願発明」という。) 2 原査定の拒絶の理由 原査定の理由は、 (新規性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記引用例に示された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、 引用例:背面タッチパネルをフルに使った「Little Deviants(仮称)」実機プレイ,YouTube[online][video],2011年 1月27日,[2019年11月22日検索],インターネット<URL:https://www.youtube.com/watch?v=aCU7zBMRGgM> という理由を含むものである。 3 引用例 令和1年11月25日付けの拒絶理由通知に引用された引用例、及び、その記載内容は上記「第2 3 (2)引用例」に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、実質的に、本願補正発明の「1のタッチパネルに対するドラッグ操作の場合と異なる演出」及び「仮想空間における前記オブジェクトの状態が、前記ドラッグ操作を受け付けたタッチパネルが設けられた面側からの影響を受けて変化することを表す演出を実行する」との限定を省くものである。 そうすると、本願発明と引用発明とを対比すると、上記「第2 3 (3)対比」での検討を勘案すると、両者は、 「表示装置の表示画面にオブジェクトを表示してビデオゲームの進行を制御するビデオゲーム処理装置であって、 該ビデオゲーム処理装置の筐体における各面のうち複数の面にそれぞれ設けられた複数のタッチパネルと、 該複数のタッチパネルそれぞれのタッチ操作を受け付ける受付手段と、 該受付手段が受け付けたタッチ操作が前記筐体における何れの面に設けられたタッチパネルの操作であるかを判定する判定手段と、 該判定手段により判定された操作が、前記複数のタッチパネルのうち、前記表示画面に設けられた1のタッチパネルの操作の場合と、当該1のタッチパネルとは異なる面に設けられた他のタッチパネルの操作の場合とで、1のオブジェクトに関する異なる演出を実行する実行手段とを含み、 該実行手段は、前記他のタッチパネルに対するドラッグ操作に基づいて、前記1のオブジェクトに関する演出を実行する ビデオゲーム処理装置。」 の点で一致し、本願発明の発明特定事項は、すべて引用発明が備えているから、本願発明と、引用発明とに差異はない。 5 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、引用例に示された発明(引用発明)であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。 したがって、その余の請求項については検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。 |
審理終結日 | 2021-09-29 |
結審通知日 | 2021-10-05 |
審決日 | 2021-10-19 |
出願番号 | P2018-032848 |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F) P 1 8・ 575- Z (A63F) |
最終処分 | 02 不成立 |
特許庁審判長 |
藤田 年彦 |
特許庁審判官 |
古川 直樹 藤本 義仁 |
発明の名称 | ビデオゲーム処理装置、およびビデオゲーム処理プログラム |
代理人 | 上田 侑士 |
代理人 | 山田 一範 |
代理人 | 浅見 浩二 |