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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 B66B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B66B
管理番号 1380575
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-11-18 
確定日 2022-01-07 
事件の表示 特願2018−148079「マンコンベヤ」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 2月13日出願公開、特開2020− 23376、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成30年8月7日の出願であって、令和2年7月13日付けで拒絶理由通知がされ、令和2年8月7日に意見書及び手続補正書が提出がされ、令和2年10月5日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、令和2年11月18日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、令和3年1月21日に上申書が提出され、令和3年6月23日付けで拒絶理由通知がされ、令和3年7月1日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1及び2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」及び「本願発明2」という。)は、令和3年7月1日提出の手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
人を搬送する搬送部と、
前記搬送部の幅方向の外側に配置される欄干部と、
インバータを内部に有する電装盤と、を備え、
前記欄干部は、内部に、前記搬送部が人を搬送する方向に沿って並べられる複数の柱を備え、
前記電装盤は、前記欄干部の内部に収容され、且つ、隣接される一対の前記柱間に配置され、
前記電装盤は、前記人を搬送する方向視にて、前記柱と重なり、
前記欄干部は、前記電装盤を固定する欄干本体部と、前記電装盤よりも前記幅方向の内側に配置され、前記欄干本体部に着脱される複数のパネルと、を備え、
前記電装盤の全体は、複数の前記パネルのうちの一つのパネルに、前記幅方向で覆われ、
前記一つのパネルの端部は、前記幅方向視にて、前記隣接される一対の前記柱とそれぞれ重なる、マンコンベヤ。」

なお、本願発明2の概要は、本願発明1を減縮した発明である。

第3 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開平4−32490号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同様。)。

(1) 「12.電力変換装置を介して駆動される駆動装置を備え、かつ内側パネルと外側パネルとを有する欄干を備えた乗客コンベアにおいて、前記内外パネルの間に前記電力変換装置を配置したことを特徴とする乗客コンベア。」(第2ページ右上欄第8ないし12行)

(2) 「本発明はエスカレーターや電動道路などの乗客コンベアに係り、特にインバータ装置を介して駆動される乗客コンベアに関する。」(第3ページ右上欄第10ないし12行)

(3) 「以下本発明の一実施例を第1〜5図に示すエスカレーターについて説明する。エスカレーターは上階FUと下階FLとの間に跨がつて設置された枠体1をベースに構成されている。この枠体1の上辺部には欄干を構成するために複数の支柱2が枠体の長手方向に間隔において立設され、これら支柱2の先端に枠体の長手方向に延在する手摺りフレーム3が固定されている。そして、この手摺りフレーム3には無端状に作られた移動手摺り4の往路側が移動できるように案内されている。前記移動手摺り4の帰路側は、図示を省略するが、前記支柱2の下方を通過するように案内されている。また、前記支柱2よりもエスカレーターの内側となる位置に、上端が前記手摺りフレーム3の下部に至り、下端が前記支柱2の下部近傍まで延在する内パネル5(当審注:「内側パネル5」の誤記。)が立設され、この内パネル5(当審注:「内側パネル5」の誤記。)の下部に内デツキ6が連なって固定されている。さらに、前記支柱2よりもエスカレーター外側となる位置に、上端が前記手摺りフレーム3の下部に至り、下端が前記支柱2の下部に至る外パネル7(当審注:「外側パネル7」の誤記。)が立設されている。尚、前記内パネル5(当審注:「内側パネル5」の誤記。)及び外パネル7(当審注:「外側パネル7」の誤記。)は、不透明アクリルに板やステンレス鋼板さらには石質材,木板などの不透明板材で形成されている。
以上のように構成された欄干の内側下方には、無端状に連結された複数の踏段8の往路側が配設され、この往路側の踏段8と前記内デツキ6との間にスカートガード9が位置している。」(第3ページ右下欄第6行ないし第4ページ左上欄第13行)

(4) 「以上のように構成されたエスカレーターの前記三相誘導電動機22を駆動すると、前記踏段8と前記移動手摺り4とは同期して移動し、乗客の運搬を可能にする。」(第4ページ左下欄第11ないし14行)

(5) 「三相誘導電動機22は電力変換装置であるインバータ装置25を介して三相交流電源R,S,Tに接続されている。インバータ装置25は、電力線L2を介して前記三相交流電源R,S,Tに接続されたコンバータ26、このコンバータ26に接続され電力線L1を介して前記三相誘導電動機22に接続したインバータ27、前記コンバータ26とインバータ27の間に接続された回生抵抗器28及び前記インバータ27を制御するインバータ制御装置29よりなる。このうち、前記回生抵抗器28は、インバータ装置25を介しての下降運転における三相誘導電動機22からの回生電力を熱消費させるもので、冷却フアン(図示せず)によつて冷却されている。また、前記コンバータ26,インバータ27も1つの枠内に収納されており、枠内に内蔵した冷却フアン(図示せず)により冷却されている。尚、前記回生電力を熱消費させずに、前記三相交流電源R,S,Tに戻す方式の場合には前記回生抵抗器28は不要となり、前記コンバータ26を回生コンバータとすればよいが、本実施例では回生抵抗器28を用いた例を説明する。」(第4ページ左下欄第16行ないし右下欄第17行)

(6) 「そこで、本発明の実施例では、インバータ装置25を下部機械室15の外側機械室15Bに設置し、前記トランス31を欄干を構成する内側パネル5と外側パネル7との間の支柱2に取付け、それ以外の機器を上部機械室14内に設置して上部機械室14内の温度上昇を運転制御装置30の使用許容温度以下としたのである。」(第5ページ右上欄第19行ないし左下欄第5行)

(7) 「また、欄干の内側パネル5と外側パネル7との間に設置したトランス31の場合には、内デツキ6及び内側パネル5を二点鎖線で示すように取外すことにより、踏段8側から保守点検作業を行うことができる。」(第5ページ右下欄第17行ないし第6ページ左上欄第1行)

(8) 「また、上記実施例は下部機械室15にインバータ装置25を設置したものであるが、下部機械室15に設置スペースがない場合には、不透明の欄干の内側空間を利用して設置すればよい。即ち、第4図に示すトランス31の設置と同じように、内側パネル5と外側パネル7とで囲まれた空間内の支柱2を利用し、あるいは取付ブラケツト等を増設して二点鎖線で示すようにインバータ装置25を設置するのである。この内側パネル5と外側パネル7で囲まれた空間は、欄干の全長に亘つて存在するので、インバータ装置25は前記トランス31の設置位置を避けた位置に自由に設置できる。しかし、騒音発生源及び熱発生源を含むインバータ装置25は、上部機械室14から離れた位置の欄干内に設置して騒音及び熱の集中がないようにすることが望ましい。」(第6ページ右下欄第5ないし20行)

(9) 「

」(第1図)

(10) 「

」(第4図)

(11) 第1図から、「内側パネル5」は複数あることが看てとれる。

(12) 第4図から、「インバータ装置25」は、筐体状と呼べる形態であって、乗客コンベアの「枠体1」の長手方向視にて、「支柱2」と重ならないことが看てとれる。

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「乗客を運搬する踏段8と、
前記踏段8の外側に備える欄干を構成する支柱2、内側パネル5、及び外側パネル7と、
コンバータ26、インバータ27及びインバータ制御装置29よりなるインバータ装置25と、を備え、
前記欄干は、内側空間に、前記踏段8が乗客を運搬する乗客コンベアの枠体1の長手方向に間隔をおいて立設される複数の支柱2を備え、
前記インバータ装置25は、前記欄干の内側空間に設置され、
前記インバータ装置25は、前記乗客を運搬する乗客コンベアの枠体1の長手方向視にて、前記支柱2と重ならず、
前記欄干は、前記インバータ装置25を取り付ける支柱2と、前記インバータ装置25よりも乗客コンベアの内側となる位置に立設され、前記欄干から取外せる複数の内側パネル5と、を備える、
乗客コンベア。」

2 引用文献2について
また、原査定において参照された引用文献2(特開昭62−31688号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(1) 「一般にエスカレータは、第1図及び第2図に示す如く乗客を運ぶステップ1と、その両外側に立設された欄干2と、その欄干2に取付けられて上記ステップ1と同期して移動せしめられるハンドレール(移動手摺り)3などを有し、その静止体であるところの欄干2はハンドレールフレーム4と外側袖デッキ5とレッジ6とスカートガード7及び欄干パネル8等から構成されている。またその欄干2は一般に安全性向上や意匠向上のためにハンドレールフレーム4内にランプ9をカバー10で保護するようにして設けたり、柱11を設けてハンドレールフレーム4を支える構造成いは透明感を与えて意匠効果を向上するために柱11を設けずに欄干パネル8の剛性を増してハンドレールフレーム4を支える構造としたりして構成されている。」(第1ページ右欄第6行ないし第2ページ左上欄第1行)

(2) 「

」(第1図)

(3) 「

」(第2図)

(4) 第1図の記載からして、一つの「欄干パネル8」の端部は、エスカレータの幅方向視にて、隣接される一対の「柱11」とそれぞれ重なることが看てとれる。

(5) 第2図の記載からして、「欄干パネル8」はエスカレータの内側にのみ存在し、「欄干2」に「内側空間」と呼べるものが存在しないことが看てとれる。

したがって、引用文献2には、一つの「欄干パネル8」の端部は、幅方向視にて、隣接される一対の「柱11」とそれぞれ重なるものとしたエスカレータに係る技術的事項が記載されていると認められる。また、「欄干パネル8」はエスカレータの内側にのみ存在し、「欄干2」に「内側空間」と呼べるものが存在しないものとしたエスカレータに係る技術的事項、及び、「欄干2は柱11を設けずに欄干パネル8の剛性を増してハンドレールフレーム4を支える構造」としたエスカレータに係る技術的事項も記載されていると認められる。

第4 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

引用発明における「乗客」は本願発明1における「人」に相当する。
同様に、「運搬する」は「搬送する」に、
「踏段8」は「搬送部」に、
「外側に備える」は「幅方向の外側に配置される」に、
「欄干を構成する支柱2、内側パネル5、及び外側パネル7」及び「欄干」は「欄干部」に、
「コンバータ26、インバータ27及びインバータ制御装置29よりなるインバータ装置25」及び「インバータ装置25」は、筐体状と呼べる形態であるから、それぞれ「インバータを内部に有する電装盤」及び「電装盤」に、
「内側空間」は「内部」に、
「踏段8が乗客を運搬する乗客コンベアの枠体1の長手方向に間隔をおいて立設される」は「搬送部が人を搬送する方向に沿って並べられる」に、
「支柱2」は「柱」に、
「内側空間に設置され」は「内部に収容され」に、
「インバータ装置25を取り付ける支柱2」は「電装盤を固定する欄干本体部」に、
「インバータ装置25よりも乗客コンベアの内側となる位置に立設され」は「電装盤よりも前記幅方向の内側に配置され」に、
「欄干から取外せる」は「欄干本体部に着脱される」に、
「内側パネル5」は「パネル」に、
「乗客コンベア」は「マンコンベヤ」に、
それぞれ相当する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「人を搬送する搬送部と、
前記搬送部の幅方向の外側に配置される欄干部と、
インバータを内部に有する電装盤と、を備え、
前記欄干部は、内部に、前記搬送部が人を搬送する方向に沿って並べられる複数の柱を備え、
前記電装盤は、前記欄干部の内部に収容され、
前記欄干部は、前記電装盤を固定する欄干本体部と、前記電装盤よりも前記幅方向の内側に配置され、前記欄干本体部に着脱される複数のパネルと、を備える、
マンコンベヤ。」

(相違点)
「電装盤」と「柱」と「パネル」との配置関係に関し、本願発明1は、
「電装盤」が「隣接される一対の柱間に配置され」、「搬送部が人を搬送する方向視にて、柱と重なり」、「電装盤の全体は、複数のパネルのうちの一つのパネルに、幅方向で覆われ、前記一つのパネルの端部は、前記幅方向視にて、前記隣接される一対の前記柱とそれぞれ重なる」
という構成を備えるのに対し、引用発明は、
「インバータ装置25」が「乗客を運搬する乗客コンベアの枠体1の長手方向視にて、支柱2と重ならず」、また、「隣接される一対の支柱2間に配置され」るか不明であり、「インバータ装置25の全体は、複数の内側パネル5のうちの一つの内側パネル5に、幅方向で覆われ、前記一つの内側パネル5の端部は、前記幅方向視にて、前記隣接される一対の前記支柱2とそれぞれ重なる」か不明である点。

(2)相違点についての判断
上記相違点について検討すると、上記のとおり、引用文献2には一つの「欄干パネル8」の端部が、幅方向視にて、隣接される一対の「柱11」とそれぞれ重なるものとしたエスカレータに係る技術的事項が記載されているものの、その他の上記相違点に係る本願発明1の構成、すなわち、「電装盤」が「隣接される一対の柱間に配置され」、「搬送部が人を搬送する方向視にて、柱と重なり」、「電装盤の全体は、複数のパネルのうちの一つのパネルに、幅方向で覆われ」るという構成が記載されているとはいえない。そして、引用文献2には、「欄干パネル8」はエスカレータの内側にのみ存在し、「欄干2」に「内側空間」と呼べるものが存在しない旨のエスカレータに係る技術的事項が記載されているのであって、引用発明が「内側パネル5」と「外側パネル7」からなり内側空間を設けるものであることと相違する。さらに、引用文献2には「欄干パネル8」が「取り外し可能」である旨の記載も示唆もされていないところ、「欄干2は柱11を設けずに欄干パネル8の剛性を増してハンドレールフレーム4を支える構造」とする旨の技術的事項の記載からすると、むしろ取り外す「欄干パネル8」ではない旨の示唆があるといえる。そうすると、内側空間を設けるような欄干構造の引用発明における「内側パネル5」の形態として引用文献2の記載事項を適用する動機づけがあるとはいえない。
そして、本願の明細書の段落【0037】に「また、パネル7eが欄干本体部7dに取り付けられている際に、パネル7eの端部は、柱7fと位置合わせされている。即ち、パネル7eの端部は、幅方向D1で柱7fと重なっている。これにより、第2電装盤8の全体は、一つのパネル7eに、幅方向D1で覆われている。したがって、一つのパネル7eが欄干本体部7dから取り外されることによって、図4に示すように、第2電装盤8が開放される。その結果、第2電装盤8に対する作業を容易に行うことができる。」と記載されているように、上記相違点に係る本願発明1の構成により、本願発明1は所定の効果を奏するものであって、当該構成を単なる設計的事項ということはできない。
そうすると、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2について
本願発明2も、上記相違点に係る本願発明1の構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、請求項1及び3に係る発明について上記引用文献1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら、令和3年7月1日提出の手続補正書により補正された請求項1及び2に係る発明、すなわち本願発明1及び2は、上記第4の1(2)のとおり、上記引用文献1に記載された発明及び上記引用文献2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
当審では、請求項1の「前記電装盤を覆ったり解放したりするため」の「パネル」が、「複数のパネル」である旨と「一つのパネル」である旨との両方が特定されており、当該記載の意味が不明確であるとの拒絶の理由を通知しているが、令和3年7月1日提出の手続補正書による補正において、「パネル」に関し、「前記電装盤を覆ったり開放したりするために」という発明特定事項を削除する補正をした結果、この拒絶の理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1及び2は、当業者が引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、当審より通知した拒絶の理由によっても、本願を拒絶することはできない。
そして、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-12-22 
出願番号 P2018-148079
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B66B)
P 1 8・ 537- WY (B66B)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 平田 信勝
特許庁審判官 中村 大輔
田村 嘉章
発明の名称 マンコンベヤ  
代理人 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所  

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