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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A47C
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A47C
管理番号 1380603
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-12-01 
確定日 2021-12-15 
事件の表示 特願2015−219089「椅子の背もたれ」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 5月25日出願公開、特開2017− 86374、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
この出願(以下「本願」という。)は、平成27年11月9日の出願であって、その手続の主な経緯は以下のとおりである。
令和 1年11月27日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 4月 2日 :意見書、手続補正書の提出(以下、この手続補正書による補正を「本件補正1」という。)
令和 2年 8月31日付け:拒絶査定
令和 2年12月 1日 :審判請求書及び同時に補正書の提出
令和 3年 6月 3日付け:拒絶理由通知書
令和 3年 8月 3日 :意見書、手続補正書の提出(以下、この手続補正書による補正を「本件補正2」という。)
(令和2年1月27日に提出された期間延長請求書により、指定期間が2ヶ月延長された。)


第2 本願発明
本願の請求項1〜3に係る発明(以下「本願発明1」〜「本願発明3」という。)は、本件補正2により補正された特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「 【請求項1】
背アウターシェルとその手前に配置された背クッション材とを備え、前記背アウターシェルは相対回動可能な複数の樹脂製エレメントで構成されており、隣り合ったエレメントが当該各エレメントよりも軟質の樹脂材からなるヒンジによって連結されている構成であって、
前記背アウターシェルは、正面視で左右方向の中間部に位置したセンターエリアと、前記センターエリアの左右両側に配置されたサイドエリアとを有し、前記センターエリアとサイドエリアとを上下複数段に分割することによって、前記背アウターシェルが前記各エレメントに対応した多数の単位シェル体に分離されて、前記各単位シェル体の外周には、前向きに突出した壁状リブが隣り合った単位シェル体の境界に沿って延びるように形成されている一方、
前記ヒンジは、前記各単位シェル体における隣り合った前記壁状リブの前面に重なって長く延びる帯状の形態であって前記各壁状リブに一体成形されており、
かつ、前記背クッション材は全体として1枚の構造であり、正面視で前記軟質の樹脂材より成るヒンジと重なる前向き開口の溝を形成することによって多数のエレメントに区画されており、前記溝の個所が屈曲自在なヒンジ部になっている、
椅子の背もたれ。
【請求項2】
前記隣り合った単位シェル体間には隙間があいており、前記ヒンジによって前記隙間が塞がれた状態になっている、
請求項1に記載した椅子の背もたれ。
【請求項3】
前記ヒンジを形成する軟質の樹脂材はエラストマーである、
請求項1又は2に記載した椅子の背もたれ。」


第3 当審による拒絶理由について
令和3年6月3日付け拒絶理由通知に記載された拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)は、本願はその特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号に適合するものではなく特許法36条6項に規定する要件を満たしていないというものであった。
しかし、上記第2の1のとおり、当該特許請求の範囲の記載は本件補正2により補正されたことで明確となったので、当審拒絶理由は解消された。


第4 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本件補正1により補正された特許請求の範囲の請求項1〜7に係る発明は、その出願前に日本国内で頒布された刊行物1〜4に記載された発明及び周知の技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないというものである。
刊行物一覧
1.特開2007−289779号公報
2.特開2007−1257号公報
3.米国特許第4856846号明細書
4.特表2015−519111号公報
5.特開平7−88878号公報(周知の技術を示す文献)
6.特開2010−215070号公報(周知の技術を示す文献)


第5 刊行物の記載及び引用発明
1 刊行物1
刊行物1には、図面とともに、以下の記載がある。(下線は、当審が付与したものである。)
(1)明細書
「【0013】
図1は、本発明の第1の実施形態の椅子の要部である背もたれ部分の構造を示す分解斜視図である。同図に示すように、この実施形態の椅子の背もたれ部分は、背もたれフレーム(10)と、左右1対の補強材(12)(12)と、背もたれ板(14)と、背クッション材(16)等とから構成されている。
【0014】
背もたれフレーム(10)は、左右1対のパイプ材からなり、その下端部である横杆部(10a)は、前方へ延出し、その先端は、図示しない座板に取り付けられ、後述する支基を支点として、後方へ傾動可能になっている。
【0015】
一方、縦杆部(10b)は、上下2箇所で、側面視において、それぞれ後方に凸のくの字状および前方に凸のくの字状に屈曲して形成されている。すなわち、縦杆部(10b)の上部には、受入れ部をなす、側面視において後方に凸のくの字状の屈曲部分が形成され、縦杆部(10b)におけるその下方には、側面視において前方に凸のくの字状の屈曲部分が形成されている。
左右の縦杆部(10b)(10b)の上部間及び下部間は、平行な上下2本の水平杆(18)(18)によって連結されている。
【0016】
背もたれフレーム(10)の縦杆部(10b)の上部と下部との間には、左右に1対ずつ、弾性体の帯状の補強材(12)(12)が取り付けられている。このうち、縦杆部(10b)の上部には、それぞれ、後向U字状をなすブラケット(20)が、角度を変化しうるようにして、かつ縦杆部(10b)を両側から挟み込むようにして、左右方向を向く軸(20a)をもって枢支されている。
【0017】
ブラケット(20)の前部には、前端に鍔部を有するガイドピン(20b)が突設されている。ガイドピン(20b)には、補強材(12)の上部に穿設された上下方向に長いガイド孔(12a)が嵌合されており、補強材(12)の上端部を、一定範囲で上下にスライド自在に案内している。
【0018】
補強材(12)は、弾性を有する材料、例えば樹脂等で形成されており、一定の張力をもって、背もたれフレーム(10)の上部及び下部間を連結している。補強材(12)の上下方向のほぼ中央部には、後方に凸のくの字状の屈曲部(12b)が形成されており、背もたれ板(14)の取付時に、後述するその両側の折れ曲がり部(14c)(14c)が、それぞれ嵌合して、背もたれ板(14)と等高位置で屈撓可能になっている。
【0019】
背もたれ板(14)は、折れ曲がり部(14c)(14c)を境とする上部シェル(14a)と下部シェル(14b)とを備え、上下部のシェル(14a)(14b)は、前後方向に屈撓可能に連結されている。下部シェル(14b)の下端は、補強材(12)の下面に、上部シェル(14a)の上端は、補強材(12)の上部にそれぞれ止めねじ(22)によって取り付けられ、補強材(12)は、背もたれ板(14)と、背もたれフレーム(10)との間に、介在状態となっている。
【0020】
上部シェル(14a)の両側上端には、縦長のスライド孔(24)が穿設され、このスライド孔(24)は、前述したガイドピン(20b)と嵌合して上下動可能に案内されている。これにより、背もたれ板(14)は、補強材(12)が上下動すると、一体となって上下方向に移動するようになっている。
【0021】
背もたれ板(14)は、通常、図1および図2に示すように、後述する背クッション材(16)の裏面のカーブと同一の、側面視において中間部が後方に凹入する円弧状の曲面とされているが、下部シェル(14b)に後ろ向きの力が加わると、折れ曲がり部(14c)を境に、上部シェル(14a)が前方に傾動する弾性を有している。
【0022】
背もたれ板(14)の表面には、背クッション材(16)が適宜の手段によって取り付けられ、椅子の背部を形成している。
【0023】
図2は、図1の椅子の背部を含む椅子全体を示す側面図である。図2に示すように、背もたれフレーム(10)の横杆部(10a)は、取付片(26)を介して、椅子の座板(28)に設けられた支基(30)に傾動可能に取り付けられている。座板(28)には、座クッション材(32)が取り付けられている。
【0024】
次に、この実施形態の椅子の作用について説明する。
【0025】
図3は、椅子の背もたれを後方に傾動させた状態を示している。背もたれ全体を後傾させると、背もたれ板(14)の下部シェル(14b)に力が加わり、支基(30)を支点として、下部シェル(14a)が後傾する。下部シェル(14b)の後方への移動に伴って、図1で示したガイド孔(12a)をガイドピン(20b)が案内して、補強材(12)を下方へスライドさせ、さらに荷重がかかると、ガイド孔(12a)の内側上部にガイドピン(20b)が当接して、補強材(12)は、屈曲部(12b)で屈曲する。
【0026】
すると、背もたれ板(14)は、補強材(12)の屈曲部(12b)が屈曲するのに伴って、折れ曲がり部(14c)を境に、上部シェル(14a)が下部シェル(14b)に対して前傾し、背クッション材(16)の上部を前方に押し出す。即ち、図4に示すように、着席者が、通常の直立した姿勢から、図5に示す姿勢に移行した場合には、背中の上部を背クッション材(16)によって前方へ押して支持する。」
「【0039】
背もたれ板(14)は、例えば弾性を有する硬質の合成樹脂材料の成型品であって、上部シェル(14a)と下部シェル(14b)とからなり、上部シェル(14a)と下部シェル(14b)との境目は、上述の縦杆部(10b)の後方に凸の上部の屈曲部と等高の位置とされている。この位置は、着座者の胸椎と腰椎との境目に当たる。
【0040】
上部シェル(14a)の下端部と下部シェル(14b)の上端部とは、側面視で波形に形成して、前後方向に弾性撓曲可能とした左右1対の折れ曲がり部(14c)により、互いに連結されている。
【0041】
この実施形態では、折れ曲がり部(14c)は、上下部シェル(14a)(14b)と一体成型されたものとして示されている。しかし、折れ曲がり部(14c)は、上下部シェル(14a)(14b)と別体であってもよい。また、折れ曲がり部(14c)は、左右両端の2列に限らず、複数設けることができる。」
(2)図面
ア 図1



イ 図2



ウ 図3



エ 図7



オ 図8



カ 図9



キ 図10




(3)認定事項
ア 上記【0022】に記載の「背もたれ板(14)の表面には、背クッション材(16)が適宜の手段によって取り付けられ、椅子の背部を形成している。」から、椅子の背部は背もたれ板(14)とその表面に取り付けられた背クッション材(16)とから形成されていることがわかる。
イ 上記【0039】に記載の「背もたれ板(14)は、例えば弾性を有する硬質の合成樹脂材料の成型品であって、上部シェル(14a)と下部シェル(14b)とからなり」から、背もたれ板(14)は、弾性を有する硬質な合成樹脂材料の成型品である上部シェル(14a)と下部シェル(14b)からなることがわかる。
ウ 上記【0019】に記載の「背もたれ板(14)は、折れ曲がり部(14c)(14c)を境とする上部シェル(14a)と下部シェル(14b)とを備え、上下部のシェル(14a)(14b)は、前後方向に屈撓可能に連結されている。」から、背もたれ板(14)は、上部シェル(14a)と下部シェル(14b)を備えており、上部シェル(14a)と下部シェル(14b)が折れ曲がり部(14c)を境として前後方向に屈撓可能に連結されていることがわかる。
エ 上記【0040】に記載の「上部シェル(14a)の下端部と下部シェル(14b)の上端部とは、側面視で波形に形成して、前後方向に弾性撓曲可能とした左右1対の折れ曲がり部(14c)により、互いに連結されている。」及び上記【0041】に記載の「折れ曲がり部(14c)は、上下部シェル(14a)(14b)と別体であってもよい。」から、上部シェル(14a)と下部シェル(14b)とが折れ曲がり部(14c)により互いに連結されており、かつ、折れ曲がり部(14c)は弾性撓曲可能で上下部シェル(14a、14b)とは別体であること、さらに、図7における上下部シェル(14a、14b)と折れ曲がり部(14c)の位置関係を踏まえると、前記背もたれ板(14)は、上部シェル(14a)と下部シェル(14b)の2つのシェルに分離されていることがわかる。
オ 図1には、背クッション材16が1枚からなり、正面視で弾性折れ曲がり部(14c)と重なる前向き開口の溝を形成することによって上下2つのエレメントに区画されて点が記載されている。
カ 上記オの認定事項を踏まえると、上記【0026】に記載の「背もたれ板(14)は、補強材(12)の屈曲部(12b)が屈曲するのに伴って、折れ曲がり部(14c)を境に、上部シェル(14a)が下部シェル(14b)に対して前傾し、背クッション材(16)の上部を前方に押し出す。即ち、図4に示すように、着席者が、通常の直立した姿勢から、図5に示す姿勢に移行した場合には、背中の上部を背クッション材(16)によって前方へ押して支持する。」から、背クッション材(16)の溝の個所は屈曲自在なヒンジ部になっているといえる。

(4)引用発明
上記(1)〜(3)を踏まえると、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「背もたれ板(14)とその表面に取り付けられた背クッション材(16)とから形成され、前記背もたれ板(14)は屈撓可能な弾性を有する硬質な合成樹脂材料の成型品である上部シェル(14a)と下部シェル(14b)からなり、上部シェル(14a)と下部シェル(14b)が前後方向に弾性撓曲可能で上下部シェル(14a、14b)とは別体である弾性折れ曲がり部(14c)を境として連結されている構成であって、
前記背もたれ板(14)は、上部シェル(14a)と下部シェル(14b)の2つのシェルに分離されており、
背クッション材16は1枚からなり、正面視で前記弾性折れ曲がり部(14c)と重なる前向き開口の溝を形成することによって上下2つのエレメントに区画されており、前記溝の個所が屈曲自在なヒンジ部になっている、椅子の背もたれ。」

2 刊行物2
刊行物2には、図面とともに、以下の記載がある。
(1)明細書
「【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質合成樹脂の一次射出成形により成形した一次射出成形部の外面の一部に、軟質合成樹脂の二次射出成形により成形した二次射出成形部を重複一体化した合成樹脂射出成形品に関するものである。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、一次射出成形部が硬質合成樹脂により成形してあって滑り易いといえども軟質合成樹脂よりなる二次射出成形部により滑り止め効果を発揮でき、しかも、他の物が軟質合成樹脂よりなる二次射出成形部の端縁部に衝突して軟質合成樹脂よりなる二次射出成形部が端縁部から捲れたり、引き千切れたりするのを防止できる合成樹脂射出成形品を提供することを課題とするものである。」
「【0016】
また、一次射出成形部1の外面の一部に重複一体化した軟質合成樹脂よりなる二次射出成形部2は図1、図3に示すように、滑り止めとしての機能を発揮したり、あるいは、図2、図4に示すように、滑り止め機能に加え、距離を隔てて隣合う硬質合成樹脂よりなる一次射出成形部1同士を回動自在(折り畳み自在)に一体に接続するためのヒンジ機能を発揮したりする。したがって、本発明の合成樹脂射出成形品3としては、硬質合成樹脂よりなる一次射出成形部1で製品としての形を保形できるもので且つ、軟質合成樹脂よりなる二次射出成形部2で滑り止めとしての機能を有したデッキ材、パレット、台車等の合成樹脂製品、あるいは滑り止めとしての機能とヒンジとしての機能を有する折り畳み箱等の合成樹脂製品を実施例として挙げることができるが、上記実施例だけに限定されるものではないのは勿論である。」
(2)図面
ア 図1



イ 図2



ウ 図3



エ 図4




3 刊行物3
刊行物3には、図面とともに、以下の記載がある。
(1)明細書6欄37〜45行
「FIG. 10 shows a rear view of the back rest 5 with the seat 3, sectioned along the line III--III from FIG. 9. The back rest 5 is shown here in the unloaded position. A stabilization of the back rest 5 is seen in FIG. 10, by the reinforcments 52, 53, 54, and 55 running across and the reinforcements 56 running longitudinally, which run in the edge reinforcement 44. Naturally, corresponding reinforcements run in the edge reinforcement 45, not shown in FIG. 10.」(訳:図10は、図9のIII-III線に沿った断面を有する座席3を備えた背もたれ5の背面図を示す。背もたれ5は、ここでは無負荷の位置で示されている。図10に示すように、背もたれは、横断方向に延びる補強材52、53、54、55と、周縁補強部44内に延在し、長手方向に延びる補強部56とによって、安定化される。図10には示されていないが、当然、周縁補強部45内には、これらに対応する補強材が延在する。)(訳は、当審が付与したものである。)
(2)図面
ア 図9



イ 図10




4 刊行物4
刊行物4には、図面とともに、以下の記載がある。
(1)明細書
「【0014】
シート後部が旋回自在に支持されていることは、同時に、背もたれ全体が傾斜軸を中心として傾斜するとき、つまり、背面サポートがベースサポート側の傾斜軸を中心として後方に傾斜するときも、快適性を高める働きをする。この運動の時も、シート後部域の効果的な強制ガイドが行われる。ここで、両方のシート部分は通常、プレート又はシェル、つまり機械的剛性に優れたシートサポートユニットから作られ、その上にシートクッションが載せられている。」
「【0030】
あるいは代わりに、複数の背面エレメント、特に背もたれ全体が、ワンピース形のプラスチック部品(例えば射出成形品)により形作られている。個々の背面エレメントは、マテリアルブリッジを介して互いに連結されている。すなわち、ワンピース部品に付けられた切欠き又はマテリアルテーパにより互いに仕切られている。この切欠きが同時に、フィルムヒンジ方式で形作られたヒンジ継手を限定する。このワンピース形のプラスチック背もたれは、通常、更にクッションカバーで覆われている。」
「【0041】
図1〜4に描かれた実施形態において、背もたれ8は、複数の、プレート形又はシェル形の背面エレメント、すなわち、肩部域10の中心部域を形成する主背面エレメント28と、背面下部域12の中央部を形成する下背面エレメント30と、背面上部域14の中央部を形成する上背面エレメント32を形成する。これら3つの背面エレメント28、30、32はそれぞれ、水平に走るヒンジ継手を介して互いに連結されている。主背面エレメント28と下背面エレメント30は、腰椎軸A2を介して互いにヒンジ式に連結されている。上背面エレメント32は、主背面エレメント28と共にヘッド軸A6を中心として傾斜できるように、主背面エレメント28と連結されている。
【0042】
これらの背面エレメント28〜32の各々に、サイドの側部エレメント34が続いている。これが隣接する側部エレメント34とそれぞれヒンジ式に連結されている。特に図3及び4の側面図から明らかな通り、側部エレメント34はサイドから前方へシート4の方に延び、そこで、角度を付けて中心部域16の背面エレメント28〜32の方に向けられている。
【0043】
個々の背面エレメント28〜34は、それぞれ台形ないしは楔形又は三角形の基礎面を持ち、これで、長手側から短手側に向かって細幅ないしは先細に延びている。個々の背面エレメント28〜34はそれぞれ支え合う形で配置されているので、―垂直方向で見て―、隣接し合う背面エレメント28〜34はそれぞれ長手側ないしは短手側で互いに接している。これにより、腰椎部域20にウエストが形作られている。同時に、側部エレメント34はここでサイドから前方へ引っ張られている。」
(2)図面
ア 図1



イ 図2



ウ 図3



エ 図4





第6 対比・判断
1 本願発明1
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、後者の「背もたれ板(14)」は、その機能及び構造からみて、前者の「背アウターシェル」に相当し、以下同様に、「表面」は「手前」に、「取り付けられ」は「配置され」に、「背クッション材(16)」は「背クッション材」に、「形成され」は「備え」に、「屈撓可能な」は「相対回転可能な」に、「弾性を有する硬質な合成樹脂材料の成型品である上部シェル(14a)と下部シェル(14b)」は「複数の樹脂製エレメント」に、「上部シェル(14a)と下部シェル(14b)」は「隣り合ったエレメント」に、「弾性折れ曲がり部(14c)」は「ヒンジ」に、「境として連結され」は「連結され」に、「1枚からなり」は「1枚の構造であり」に、それぞれ相当する。
本願発明1の「多数の単位シェル体」と引用発明の「2つのシェル」とは、「複数の単位シェル体」である点で共通する。
本願発明1の「当該各エレメントよりも軟質の樹脂材からなるヒンジ」と引用発明の「前後方向に弾性撓曲可能で上下部シェル(14a、14b)とは別体である弾性折れ曲がり部(14c)」とは、各エレメントとは別の部材からなるヒンジである点で共通する。
本願発明1の「前記背アウターシェルは、正面視で左右方向の中間部に位置したセンターエリアと、前記センターエリアの左右両側に配置されたサイドエリアとを有し、前記センターエリアとサイドエリアとを上下複数段に分割することによって、前記背アウターシェルが前記各エレメントに対応した多数の単位シェル体に分離され」と引用発明の「前記背もたれ板(14)は、上部シェル(14a)と下部シェル(14b)の2つのシェルに分離され」とは、背アウターシェルは、前記背アウターシェルが前記各エレメントに対応した複数の単位シェル体に分離されている点で共通する。
してみると、本願発明1と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりとなる。
<一致点>
「背アウターシェルとその手前に配置された背クッション材とを備え、前記背アウターシェルは相対回動可能な複数の樹脂製エレメントで構成されており、隣り合ったエレメントが当該各エレメントとは別の部材からなるヒンジによって連結されている構成であって、
前記背アウターシェルは、前記背アウターシェルが前記各エレメントに対応した複数の単位シェル体に分離されて、
かつ、前記背クッション材は全体として1枚の構造であり、正面視でヒンジと重なる前向き開口の溝を形成することによって多数のエレメントに区画されており、前記溝の個所が屈曲自在なヒンジ部になっている、
椅子の背もたれ。」
<相違点1>
複数の単位シェル体について、本願発明では、多数であるのに対して、引用発明では、2つである点。
<相違点2>
別の部材について、本願発明1では、当該各エレメントよりも軟質の樹脂材であるのに対して、引用発明では、前後方向に弾性撓曲可能である点。
<相違点3>
背アウターシェルが各エレメントに対応した多数の単位シェル体に分離されていることについて、本願発明1では、正面視で左右方向の中間部に位置したセンターエリアと、前記センターエリアの左右両側に配置されたサイドエリアとを有し、前記センターエリアとサイドエリアとを上下複数段に分割することによるのに対して、引用発明では、そのように特定されていない点。
<相違点4>
単位シェル体及びヒンジについて、本願発明1では、各単位シェル体の外周には、前向きに突出した壁状リブが隣り合った単位シェル体の境界に沿って延びるように形成されている一方、前記ヒンジは、前記各単位シェル体における隣り合った前記壁状リブの前面に重なって長く延びる帯状の形態であって前記各壁状リブに一体成形されているのに対して、引用発明では、そのように特定されていない点。
(2)判断
事案に鑑み、まず、上記相違点4について検討すると、刊行物1には、上記相違点4に係る本願発明の構成(以下「上記構成」という。)について記載も示唆もないことから、引用発明において上記構成を採用することの動機付けがあるとはいえず、また、刊行物2〜6にも上記構成に関する記載はない。
そして、本願発明1は、上記構成を有することにより、背アウターシェルの各エレメントの剛性を高めつつ、ヒンジを容易に形成することができるという格別の作用効果を奏する(例えば、本願明細書の【0065】を参照。)ものである。
してみると、上記構成は、引用発明及び刊行物2〜6に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
したがって、上記相違点1〜3について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明及び刊行物2〜6に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

2 本願発明2及び3
本願発明2及び3は、本願発明1に請求項2及び3に記載された事項でさらに特定することにより限定を付加したものであるから、上記1(2)で説示したのと同じ理由により、引用発明及び刊行物2〜6に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

3 小括
上記1及び2より、本願発明1〜3は、引用発明及び刊行物2〜6に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-11-26 
出願番号 P2015-219089
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A47C)
P 1 8・ 537- WY (A47C)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 藤井 昇
特許庁審判官 芦原 康裕
島田 信一
発明の名称 椅子の背もたれ  
代理人 渡辺 隆一  
代理人 西 博幸  
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