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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06K
管理番号 1380615
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-12-07 
確定日 2021-12-14 
事件の表示 特願2016−157118「RFIDリーダライタ、RFIDタグシステムおよびRFIDリーダライタの設置方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 2月15日出願公開、特開2018− 25959、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続きの経緯

本願は,平成28年8月10日の出願であって,令和2年3月11日付けで拒絶理由通知がされ,令和2年5月11日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ,令和2年9月7日付けで拒絶査定(以下,「原査定」という。)がなされたが,これに対し,令和2年12月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 令和2年9月7日付けの原査定の概要

1.令和2年9月7日付けの原査定の概要は以下のとおりである。

本願請求項1−7に係る発明は,以下の引用文献1−2に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2001−184466号公報
2.特開2007−005999号公報

第3 本願発明

本願請求項1−7に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」−「本願発明7」という。)は,令和2年5月11日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1−7に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1は以下のとおりの発明である。
なお,符号A−Dは,説明のために当審で付与したものであり,以下「構成A」−「構成D」という。

「【請求項1】
A RFIDタグに対して情報の読み書きを実行するRFIDリーダライタであって,
B アンテナで,前記RFIDタグから受信した受信信号の受信強度を検出する受信強度検出部と,
C 前記RFIDタグと前記RFIDリーダライタとが交信するときに前記RFIDタグ側に向けられる交信面に平行であり,かつ,同一平面上で交差する第1軸,および第2軸を基準にし,前記第1軸に沿う一方の方向,または他方の方向に前記RFIDタグまたは前記RFIDリーダライタを移動させることを案内する移動案内表示を行い,この第1軸に沿う方向への移動の案内を終了すると,前記第2軸に沿う一方の方向,または他方の方向に前記RFIDタグまたは前記RFIDリーダライタを移動させることを案内する前記移動案内表示を行う出力制御部と,を備え,
D 前記出力制御部は,
前記第1軸に沿う方向への移動の案内を行っているとき,および前記第2軸に沿う方向への移動の案内を行っているとき,前記受信強度が前記受信強度の極大値から所定の第2閾値を超えて減少すると,その軸に沿う方向への移動の案内を終了する,
A RFIDリーダライタ。」

なお,本願発明2−7の概要は以下のとおりである。

本願発明2−6は,本願発明1をさらに減縮した発明である。

本願発明7は,本願発明1に対応する方法の発明であり,本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。

第4 引用文献,引用発明等

1.引用文献1

(1)原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1(特開2001−184466号公報)には,以下の事項が記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。以下同様。)

「【0015】図1〜図6に,本発明の一実施形態を示す。本発明のICカードリーダは,非接触式通信用コイル3を備えたICカード2を取りこみ,このICカード2を搬送するカード搬送機構4を有し,カードリーダ内に設けられたカードリーダ側通信用コイル5によりICカード2とのデータ通信を行うものである。」

「【0017】以下、ICカードリーダの構成について説明する。ゲート部12は、図1に示すように、ICカード2を搬送するカード搬送機構4を有する装置本体16に取り付けられている。このゲート部12はICカード2を挿入可能なカード挿入口19を備える。また、カード挿入口19と装置本体16との間には、ICカード2の取り込みを規制する公知のシャッタ14を有する機構が設けられている。さらに装置本体16内にはカードリーダ側通信用コイル5が設けられ、このカードリーダ側通信用コイル5とICカード2側の非接触式通信用コイル3との電磁的結合によりデータ通信をすることが可能となっている。」

「【0025】位置調整用制御手段8は、位置調整用駆動手段7及び位置調整手段6を制御するとともに両者からの出力信号に基づき通信品質が高い位置を判別するよう設けたものである。図4にこの位置調整用制御手段8の一例を示す。この位置調整用制御手段8は、図示するように論理回路23、送信回路24及び受信回路28を備え、かつ共振回路33を含むカードリーダ側通信用コイル5に接続されていて、カードリーダ側通信用コイル5を介してICカード2を呼び出し、データを送受信する。送信回路24は変調回路25、ローパスフィルタ26、マッチング回路27を備え、受信回路28はバンドパスフィルタ29、復調回路30を備える。また、送信回路24、受信回路28はともに論理回路23を介して制御部9に接続されている。また、この位置調整用制御手段8にAD変換器32を設けることもできる。このAD変換器は、復調回路30から出力された受信レベル信号31をAD変換して制御部9へ送信する。」

「【0031】図6に示すように,非接触式ICカード2の処理を開始するにあたり(ステップ11),まず応答レベル測定開始位置へICカード2を移動させ(ステップ12),ICカード2の呼出及び応答レベルの記録を行う(ステップ13)。本実施形態では,カードリーダコマンドに対するICカード2からの応答波形を検波・抽出・AD変換することによって上述の呼出及び応答レベルの記録・定量化を行っている。応答レベルの出力頻度は特に限定されないが,多くの点で出力を得ればその分だけ連続的な応答レベルを得ることが可能となる。
【0032】記録したら,ICカード2の位置が測定範囲内にあるかどうか確認し(ステップ14),測定範囲内であればICカード2を移動量を自動検出して移動させ(ステップ15),再びICカード2の検出・抽出・AD変換を行う(ステップ13)。」

「【0034】そして,ステップ14においてICカード2が測定範囲内にないことが確認されたら,これまで連続して記憶された応答レベルのうちもっとも高い値を記録した位置へICカード2を移動し(ステップ16),ICカード2に対する一連の処理を行い(ステップ17),処理を終了する(ステップ18)。」

「【0036】なお,上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば,上述の実施形態ではICカード2をカード走行方向に移動させ微調整する場合について説明したが,これとは逆に,ICカード2を固定したままカードリーダ側通信用コイル5を移動させて微調整するようにしてもよい。つまり,非接触方式でデータ通信を行う両コイル3,5の少なくとも一方を移動させることで相対位置を変え,これによって高い通信品質が得られる好適な位置を確保すればよい。
【0037】また,ここまでは非接触式通信用コイル3とカードリーダ側通信用コイル5のカード走行方向に関する相対位置についてのみ説明したが,これと直交するカード幅方向に関しても相対位置を変えるようにしてもよい。幅方向の相対位置は,特に詳しくは説明しないが,例えばカードリーダ側通信用コイル5を公知のアクチュエータなどによりカード幅方向に移動可能とすることで実現することができる。なお,このようにカードリーダ側通信用コイル5を移動させる場合において,カードリーダ側通信用コイル5が複数のコイルで形成されていれば,複数のコイルすべてを動かすこともできるが特定コイルのみ動かすことによっても好適な通信位置を確保することができる。」

「【図3】


段落0037及び図3からは,“カード走行方向,およびカード幅方向は,ICカードとICカードリーダとがデータ通信するときに前記ICカード側に向けられる通信面に平行であり,かつ,同一平面上で交差するものであ”ることが読み取れる。

(2)上記引用文献1の記載(特に下線部の記載)より,上記引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「非接触式通信用コイルを備えたICカードとのデータ通信を行うICカードリーダであって,
電磁的結合によりデータ通信するカードリーダ側通信用コイルと,
ICカードからの応答波形を検波・抽出・AD変換することによって応答レベルの記録・定量化を行い,
カード走行方向,およびカード幅方向は,ICカードとICカードリーダとがデータ通信するときに前記ICカード側に向けられる通信面に平行であり,かつ,同一平面上で交差するものであり,
カード走行方向に関する位置,およびこれと直交するカード幅方向に関する位置について,ICカードまたはカードリーダ側通信用コイルを移動させ,
ICカードが測定範囲内にないことが確認されたら,記憶された応答レベルのうちもっとも高い値を記録した位置へICカードを移動させる位置調整用制御手段及び制御部と,を備える,
ICカードリーダ。」

2.引用文献2

(1)原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2(特開2007−005999号公報)には,以下の事項が記載されている。

「【0009】
(第1実施例)
以下,本発明をデータキャリアたる非接触式ICカードに適用した場合の第1実施例について,図1乃至図5を参照して説明する。図1は,リーダライタ1の電気的構成を示す機能ブロック図である。リーダライタ(通信装置)1は,CPU(マイクロコンピュータ,制御手段)2によって制御される。符号化部3は,CPU2より出力される送信データを符号化して変調部4に出力する。
変調部4は,キャリア発振器5より出力される例えば周波数13.56MHzのキャリア(搬送波)と,符号化部3より出力される符号化された送信信号(変調信号)とを乗算することでASK(Amplitude Shift Keying)変調した被変調信号を増幅器6に出力する。また,キャリア発振器5の発振動作はCPU2によって制御される。増幅器6は,所定のゲインで入力信号を増幅すると,送信部フィルタ8に出力する。送信部フィルタ8は,フィルタリングした送信信号を,整合回路10を介してアンテナ(受信手段)11に出力する。すると,送信信号が電磁波としてアンテナ11より外部に送信される。」

「【0030】
図12(b)の場合は,表示領域中央のドットに対して上下左右方向から中央に向う4つの矢印表示を用いて,図12(a)の場合と同様に,ICカード18の原位置に最も近いと想定される矢印を点灯させる。2つの矢印が略等距離にあるような場合は,それらを同時に点灯させても良い。
図12(c)の場合は,表示領域中央にマーカを示すと共に,ICカード18の原位置に最も近いと想定される位置もマーカ表示する。そして,そのマーカ表示を(a)の場合と同様に,消灯,青色点灯,赤色点灯させて,「適正」,「近付ける」,「遠ざける」を示すように通知する。
尚,以上のような表示形態は,ドットマトリクスでカラー表示可能なLCDパネルで実現しても良いし,各形態に対応した表示部を備えた表示器を構成しても良い。」

「【図12】(b)



第5 対比・判断

1.本願発明1

(1)対比

本願発明1と引用発明とを対比する。

ア.構成Aについて

本願発明1の「RFIDタグ」と,引用発明の「ICカード」とは,下記の点(相違点1)で相違するものの,“非接触で情報の読みを実行する情報媒体”である点で共通する。
そして,本願発明1の「RFIDリーダライタ」と,引用発明の「ICカードリーダ」とは,下記の点(相違点1)で相違するものの,“非接触で情報の読みを実行する情報媒体に対して情報の読みを実行するリーダ”である点で共通する。

イ.構成Bについて

本願発明1の「アンテナ」と,引用発明の「カードリーダ側通信用コイル」とは,下記の点(相違点2)で相違するものの,“非接触で通信を行うもの”である点で共通する。
引用発明の「位置調整用制御手段及び制御部」は,「ICカードからの応答波形を検波・抽出・AD変換」しているから,“受信信号”を“受信”し,それらの処理を行っていることは明らかであり,また,“受信”は,「カードリーダ側通信用コイル」でされていることも明らかである。
引用発明の「応答レベル」は,本願発明1の「受信強度」に相当する。
また,引用発明の「位置調整用制御手段及び制御部」が,「応答レベル」を「記録」するために,「応答レベル」を“検出”していることは明らかである。
そうすると,引用発明の「位置調整用制御手段及び制御部」は,「カードリーダ側通信用コイルで,ICカードからの応答波形を検波・抽出・AD変換することによって応答レベル」を“検出”しているから,本願発明1の「受信強度検出部」と,引用発明の「位置調整用制御手段及び制御部」とは,下記の点(相違点1,相違点2)で相違するものの,“非接触で通信を行うもので,前記非接触で情報の読みを実行する情報媒体から受信した受信信号の受信強度を検出する受信強度検出部”である点で共通する。

ウ.構成Cについて

本願発明1の「第1軸,および第2軸」と,引用発明の「カード走行方向,およびカード幅方向」とは,下記の点(相違点1)で相違するものの,“前記非接触で情報の読みを実行する情報媒体と前記リーダとが交信するときに前記非接触で情報の読みを実行する情報媒体側に向けられる交信面に平行であり,かつ,同一平面上で交差する”ものである点で共通する。
また,引用発明は,「カード走行方向,およびカード幅方向」を基準にし,「ICカードまたはカードリーダ側通信用コイルを移動させ」ている。
したがって,本願発明1の「制御部」と,引用発明の「位置調整用制御手段及び制御部」とは,下記の点(相違点1,相違点3)で相違するものの,“前記非接触で情報の読みを実行する情報媒体と前記リーダとが交信するときに前記非接触で情報の読みを実行する情報媒体側に向けられる交信面に平行であり,かつ,同一平面上で交差する第1軸,および第2軸を基準にし,前記非接触で情報の読みを実行する情報媒体または前記リーダを移動させることに関する制御を行う制御部”である点で共通する。

エ.構成Dについて

本願発明1と,引用発明とは,下記の点(相違点4)で相違する。

オ.
したがって,上記ア.−エ.の検討内容を踏まえると,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「非接触で情報の読みを実行する情報媒体に対して情報の読みを実行するリーダであって,
非接触で通信を行うもので,前記非接触で情報の読みを実行する情報媒体から受信した受信信号の受信強度を検出する受信強度検出部と,
前記非接触で情報の読みを実行する情報媒体と前記リーダとが交信するときに前記非接触で情報の読みを実行する情報媒体側に向けられる交信面に平行であり,かつ,同一平面上で交差する第1軸,および第2軸を基準にし,前記非接触で情報の読みを実行する情報媒体または前記リーダを移動させることに関する制御を行う制御部と,を備える,
リーダ。」

(相違点)
(相違点1)
本願発明1は,「RFIDタグ」に対して「読み書き」を実行するものであるのに対して,引用発明は,「非接触式通信用コイルを備えたICカード」に対して「リード」を実行するものである点。

(相違点2)
本願発明1は,「アンテナ」で,受信信号を受信しているものであるのに対して,引用発明は,「コイル」で,受信信号を受信しているものである点。

(相違点3)
本願発明1は,「前記第1軸に沿う一方の方向,または他方の方向に前記RFIDタグまたは前記RFIDリーダライタを移動させることを案内する移動案内表示を行い,この第1軸に沿う方向への移動の案内を終了すると,前記第2軸に沿う一方の方向,または他方の方向に前記RFIDタグまたは前記RFIDリーダライタを移動させることを案内する前記移動案内表示を行う」ものであるのに対して,引用発明は,「記憶された応答レベルのうちもっとも高い値を記録した位置へICカードを移動させる」ものである点。

(相違点4)
本願発明1は,「前記第1軸に沿う方向への移動の案内を行っているとき,および前記第2軸に沿う方向への移動の案内を行っているとき,前記受信強度が前記受信強度の極大値から所定の第2閾値を超えて減少すると,その軸に沿う方向への移動の案内を終了する」ものであるのに対して,引用発明は,「記憶された応答レベルのうちもっとも高い値を記録した位置へICカードを移動させる」ものである点。

(2)相違点についての判断

事案に鑑み,上記相違点3及び4について先に検討する。

引用文献2には,“前記第1軸に沿う一方の方向,または他方の方向に非接触で情報の読み書きを実行する情報媒体のリーダライタを移動させることを案内する移動案内表示を行”うこと,及び,“前記第2軸に沿う一方の方向,または他方の方向に非接触で情報の読み書きを実行する情報媒体のリーダライタを移動させることを案内する前記移動案内表示を行”うことは記載されている。
しかしながら,上記相違点3及び4に係る構成は,上記引用文献2には記載も示唆もされておらず,また,本願の出願日前において周知であったともいえない。

したがって,他の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても引用発明,及び,引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2−6について

本願発明2−6は,本願発明1をさらに減縮した発明であり,本願発明1の上記相違点3及び4に係る構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明,及び,引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明7について

本願発明7は,本願発明1に対応する方法の発明であり,本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明であるから,本願発明1と同様の理由により,当業者であっても,引用発明,及び,引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 原査定について

1.理由1(特許法第29条第2項)について

審判請求時の補正により,本願発明1−7は上記第3に示したとおりのものとなっており,当業者であっても,拒絶査定において引用された引用文献1−2に基づいて,容易に発明できたものとはいえない。したがって,原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび

以上のとおり,本願発明1−7は,当業者が引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。


 
審決日 2021-11-25 
出願番号 P2016-157118
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06K)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 田中 秀人
特許庁審判官 金子 秀彦
山澤 宏
発明の名称 RFIDリーダライタ、RFIDタグシステムおよびRFIDリーダライタの設置方法  
代理人 特許業務法人 楓国際特許事務所  

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