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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F25D |
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管理番号 | 1380707 |
総通号数 | 1 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2022-01-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-01-25 |
確定日 | 2021-12-24 |
事件の表示 | 特願2019−161993「冷蔵庫」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 1月 9日出願公開、特開2020− 3205〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成23年12月 6日に出願された特願2011−267122号の一部を平成27年 9月17日に新たな特許出願とした特願2015−184357号の一部を平成29年 8月 4日に新たな特許出願とした特願2017−151417号について、さらにその一部を令和 元年 9月 5日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。 令和 2年 7月 6日付け:拒絶理由通知書 令和 2年 9月10日 :意見書、手続補正書の提出 令和 2年10月14日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) 令和 3年 1月25日 :審判請求書、同時に手続補正書の提出 第2 令和 3年 1月25日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和 3年 1月25日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1) 本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。 「内箱と外箱との間に板状の真空断熱材を備えた断熱箱体として構成される冷蔵庫本体を有する冷蔵庫であって、 前記外箱を構成する複数の外箱用板部材のうち互いに隣接する2枚の外箱用板部材の端部を、前記断熱箱体の外方から内方へ貫通して固定する固定部材を有し、 前記固定部材は、前記断熱箱体の前記内方へ突出する突起部を有し、 前記突起部は、前記板状の真空断熱材の端部と離間するように設けられており、 前記突起部と前記板状の真空断熱材の前記端部との間の離間した部分には、介在物が設けられている 冷蔵庫。」 (2) 本件補正前の特許請求の範囲の記載 本件補正前の、令和 2年 9月10日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「内箱と外箱との間に板状の真空断熱材を備えた断熱箱体として構成される冷蔵庫本体を有する冷蔵庫であって、 前記外箱を構成する複数の外箱用板部材のうち互いに隣接する2枚の外箱用板部材を固定する固定部を有し、 前記固定部の前記断熱箱体内方へ突出する突起部は、前記板状の真空断熱材の端部と離間するように設けられており、 前記突起部と前記板状の真空断熱材の前記端部との間の離間した部分には、介在物が設けられている 冷蔵庫。」 2 補正の適否 本件補正は、本件補正前の請求項1における、 「前記外箱を構成する複数の外箱用板部材のうち互いに隣接する2枚の外箱用板部材を固定する固定部を有し、 前記固定部の前記断熱箱体内方へ突出する突起部は、前記板状の真空断熱材の端部と離間するように設けられており、」 という記載を、 「前記外箱を構成する複数の外箱用板部材のうち互いに隣接する2枚の外箱用板部材の端部を、前記断熱箱体の外方から内方へ貫通して固定する固定部材を有し、 前記固定部材は、前記断熱箱体の前記内方へ突出する突起部を有し、 前記突起部は、前記板状の真空断熱材の端部と離間するように設けられており、」 として補正したものである。 すなわち、本件補正は、本件補正前の請求項1における「固定部」を「固定部材」として、固定部が部材であることを明瞭にし、前記「固定部材」による固定が、「断熱箱体の外方から内方へ貫通して」行われることを限定し、さらに、「互いに隣接する2枚の外箱用板部材」における前記「固定部材」によって固定される位置を、その「端部」に限定したものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1) 本件補正発明 本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2) 引用文献の記載事項 ア 引用文献1 (ア) 原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願(原出願日平成23年12月 6日)前に頒布された刊行物である、特開2011−117664号公報(平成23年 6月16日出願公開。以下「引用文献1」という。)には、以下の記載がある(下線は理解の一助のために当審が付与したものである。以下「(2)引用文献の記載事項」において同様。)。 「【0001】 本発明は、真空断熱パネルを冷蔵庫本体の断熱壁として使用するように構成された冷蔵庫に関する。」 「【0009】 以下、本発明の第1実施形態について、図1ないし図16を参照して説明する。まず、図1は本実施形態の冷蔵庫本体1の全体構成を概略的に示す斜視図、図2は冷蔵庫本体1の部分縦断面図である。冷蔵庫本体1は、金属板(鋼板やSUS板等)製の外箱2と、樹脂製の内箱3と、これら内箱3と外箱2との間に挟むように配置された箱状断熱壁体4とから構成されている。 【0010】 図3は、箱状断熱壁体4単体の全体構成を示す斜視図である。この箱状断熱壁体4は、図4にも示すように、2枚以上である例えば5枚の真空断熱パネル5、6、7、8、9を組み合わせて構成されている。各真空断熱パネル5〜9は、ほぼ矩形板状に形成されており、その厚み寸法は例えば10〜20mm程度である。尚、真空断熱パネル5、6の形状は下端部後部が斜めにカットされたほぼ台形状になっており、真空断熱パネル9の形状は中間部でほぼ『く』字状に折れ曲がった形状になっている。」 「【0012】 例えば、図2に示すように、2枚の真空断熱パネル5、7を連結する際には、真空断熱パネル5の外箱2の上端部の連結片部2aと真空断熱パネル5の外箱2の左端部の連結片部2bとをねじや溶接等により連結すると共に、真空断熱パネル5の内箱3の上端部の連結片部3aと、真空断熱パネル5の内箱3の左端部の連結片部3bとをねじや溶接等により連結する。そして、5枚の真空断熱パネル5〜9を、ほぼ同様にして、連結することにより、図1に示す冷蔵庫本体1を製造する。尚、図2において、2枚の真空断熱パネル5、7の合せ部(即ち、接合部分)に生ずる空間部10については、この空間部10の体積ができるだけ小さくなるように、即ち、真空断熱パネル5、7ができるだけ近接するように、両パネル5、7の大きさ及び配置を設計することが好ましい。また、上記空間部10には、ウレタンフォーム等の断熱材(図示しない)を充填することが好ましい。」 「【図1】 」 「【図2】 」 「【図3】 」 「【図4】 」 (イ) 上記(ア)の各記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。 a 引用文献1に記載された冷蔵庫は、内箱3と外箱2との間に、ほぼ矩形板状に形成された真空断熱パネル5〜9を備えた冷蔵庫本体1を有している(段落【0001】、【0009】、【0010】、【0012】、【図1】、【図2】、【図3】、【図4】を参照。)。 b 真空断熱パネル5の外箱2の上端部の連結片部2aと真空断熱パネル5の外箱2の左端部の連結片部2bとをねじにより連結している(段落【0012】、【図2】を参照。但し、ねじは段落【0012】に記載があるのみで、【図2】に図示されていない。)。 c 2枚の真空断熱パネル5、7の合せ部(即ち、接合部分)に生ずる空間部10には、ウレタンフォーム等の断熱材(図示しない)を充填する(段落【0012】を参照。)。 (ウ) 引用発明 上記(ア)及び(イ)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「内箱3と外箱2との間にほぼ矩形板状に形成された真空断熱パネル5〜9を備えた冷蔵庫本体1を有する冷蔵庫であって、 真空断熱パネル5の外箱2の上端部の連結片部2aと真空断熱パネル5の外箱2の左端部の連結片部2bとをねじにより連結し、 2枚の真空断熱パネル5、7の合せ部(即ち、接合部分)に生ずる空間部10には、ウレタンフォーム等の断熱材を充填する、 冷蔵庫。」 イ 引用文献2 (ア)引用文献2の記載 原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願(原出願日平成23年12月 6日)前に頒布された刊行物である、特開2003−121064号公報(平成15年 4月23日出願公開。以下「引用文献2」という。)には、以下の記載がある。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、冷蔵庫開口周縁部の構成に関するものである。」 「【0059】そして、第2フランジ延出部12eの端面と真空断熱材20との最短距離gは5mm以上としているので、真空断熱材20の貼付時、あるいは組み込み後、製造工法の安全と真空断熱材による吸熱量低減の効果を最大限発揮しながら、真空断熱材21の破損防止ができる。つまり、第2フランジ延出部12eが真空断熱材20と接触、破損することを防止でき、信頼性を高めることができる。さらに、真空断熱材20の投影面と第2フランジ延出部12eの端面とは重なり合わないようにしているので、第2フランジ延出部12eが真空断熱材20と接触、破損することを更に防止でき、真空断熱材20の信頼性をいっそう高めることができる。また、第2フランジ延出部12eの端面と真空断熱材20との最短距離gは30mm以下としているので、真空断熱材20を2重フランジ12gの近傍まで配置でき、断熱性能の向上を図ることができる。」 「【図9】 」 ウ 引用文献3 (ア) 引用文献3の記載 原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願(原出願日平成23年12月 6日)前に頒布された刊行物である、特開2007−188480号公報(平成19年 7月26日出願公開。以下「引用文献3」という。)には、以下の記載がある。 「【0001】 本発明は、自動販売機内の商品収納庫を複数の収納室に仕切る庫内仕切板およびその製造方法に関し、特に商品収納庫を冷却室と加温室とに仕切るのに好適な自動販売機の庫内仕切板およびその製造方法、ならびに、自動販売機に関する。」 「【0059】 そして、前枠部6にパッキン8を取り付けて、庫内仕切板1が完成する。このとき、充填シール部材7は前枠部6にパッキン8を取り付けるねじの首下寸法よりも大きくして真空断熱板3の損傷を防ぐようにする。」 「【図1】 」 「【図2】 」 エ 引用文献4 (ア) 引用文献4の記載 原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願(原出願日平成23年12月 6日)前に頒布された刊行物である、特開2002−264717号公報(平成14年 9月18日出願公開。以下「引用文献4」という。)には、以下の記載がある。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、冷蔵車両、冷凍車両等の保冷車両のボディ構造に関する。」 「【0015】 照明部材40はその取り付け部41をリベットなどの止め具45で天井板13に固定している。この場合、リベットなどの止め具45で真空断熱材50を破損しないように、止め具41は断熱機構のスラブ材71が存在する部分に取付ける。予め照明取り付け位置には照明器具の取り付けに必要とする大きさのスラブ材71を配設している。エバポレータ30もその取り付け部31をリベットなどの取付け具45で天井板13に固着しているが、エバポレータ30はその外形寸法が大きいので、取り付け個所毎に異なったスラブ材71に取付けている。 【0016】 天井板は車両走行時の振動、横揺れ等の影響を受けることが少ないので、内板、外板の表面材に直接真空断熱材を接着して板厚を薄く構成している。しかし、照明器具やエバポレータなどの器具を取付ける個所にはスラブ材を配設して、止め具による真空断熱材のフイルムの破損を防止し真空状態を維持させることにより断熱効果を長期保持させている。」 「【図1】 」 「【図5】 」 (3) 引用発明との対比 本件補正発明と引用発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。 引用発明における「内箱3」は、本件補正発明における「内箱」に相当し、以下同様に、「外箱2」は「外箱」に、「冷蔵庫本体1」は「冷蔵庫本体」に、「ねじ」は「固定部材」に、それぞれ相当する。 引用発明の「真空断熱パネル5〜9」は、「ほぼ矩形板状に形成され」たものであるため、本件補正発明の「板状の真空断熱材」に相当する。 引用発明の「冷蔵庫本体1」が「内箱3と外箱2との間にほぼ矩形板状に形成された真空断熱パネル5〜9を備えた」態様は、その形態からみて、断熱箱体をなしているといえ、本件補正発明の「冷蔵庫本体」が「断熱箱体として構成される」態様に相当する。 引用発明の「真空断熱パネル5の外箱2の上端部」及び「真空断熱パネル5の外箱2の左端部」は、外箱をなす板部材であることは明らかであり、引用発明の「上端部」と「左端部」とは、外箱を構成する複数の外箱の板部材のうち、互いに隣接する2枚の外箱の板部材といえる。また、引用発明の「上端部」と「左端部」とを固定するに際して、それぞれの端部を固定していることは、引用文献1の図2の態様からみてとれる。 そうすると、引用発明の「真空断熱パネル5の外箱2の上端部の連結片部2aと真空断熱パネル5の外箱2の左端部の連結片部2bとをねじにより連結」することと、本件補正発明の「前記外箱を構成する複数の外箱用板部材のうち互いに隣接する2枚の外箱用板部材の端部を、前記断熱箱体の外方から内方へ貫通して固定する固定部材を有」することとは、「前記外箱を構成する複数の外箱用板部材のうち互いに隣接する2枚の外箱用板部材の端部を、固定する固定部材を有」する限りで一致する。 引用発明の「ねじ」は、ねじの頭部からみて、ねじ部が突出する突起部をなしていることが技術常識であるから、本件補正発明の「前記固定部材は、前記断熱箱体の前記内方へ突出する突起部を有し」ていることと、「前記固定部材は、突出する突起部を有し」ている限りで一致する。 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 [一致点] 「内箱と外箱との間に板状の真空断熱材を備えた断熱箱体として構成される冷蔵庫本体を有する冷蔵庫であって、 前記外箱を構成する複数の外箱用板部材のうち互いに隣接する2枚の外箱用板部材の端部を固定する固定部材を有し、 前記固定部材は、突出する突起部を有している、 冷蔵庫。」 [相違点1] 「前記外箱を構成する複数の外箱用板部材のうち互いに隣接する2枚の外箱用板部材の端部を固定する固定部材」について、本件補正発明では、「断熱箱体の外方から内方へ貫通して」固定するともに、「前記断熱箱体の前記内方へ突出する突起部を有し」ているのに対し、引用発明では、「ねじ」を、どのようにして固定しているかは特定していない点。 [相違点2] 「固定部材」の「突起部」について、本件補正発明では、「前記突起部は、前記板状の真空断熱材の端部と離間するように設けられており、前記突起部と前記板状の真空断熱材の前記端部との間の離間した部分には、介在物が設けられている」としているのに対し、引用発明では、「ねじ」の「突起部」と他の部材との関係は特定されていない点。 (4) 判断 ア 相違点1について ねじの先端が製品外部に突出することによる人や物への引っかかることによる安全性の観点や、外観を損なうことを防止する観点から、製品の組み立てを行う際に、ねじを製品の外方から内方へ貫通して固定することは、一般的に行われている事項といえる。また、内方へ貫通した態様は、ねじの突起部が内方へ突出した態様でもある。 よって、引用発明においても、ねじの固定に際して安全性や外観は当業者において当然に考慮されることであり、「外箱2の上端部の連結片部2aと前記外箱2の左端部の連結片部2b」とを「ねじ」によって固定する際に、「ねじ」を「外箱2」の外方から内方へ貫通して、「外箱2」の内方へ突出するように固定することは、当業者にとって困難なことではない。 そして、「ねじ」を「外箱2」の外方から内方へ貫通して、「外箱2」の内方へ突出するように固定することは、「冷蔵庫本体1」が「断熱箱体として構成される」ことを踏まえると(上記(3)を参照。)、「ねじ」を「断熱箱体」の外方から内方へ貫通して、「断熱箱体」の内方へ突出するように固定することとなる。 以上のとおりであるから、引用発明において、相違点1に係る本件補正発明の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。 イ 相違点2について 冷蔵庫等の収納庫において、固定部の断熱箱体内方へ突出する突起部と真空断熱材の端部とを離間させることにより、真空断熱材の損傷を防止することは、例えば原査定で引用された引用文献2〜4(上記(2)イ〜エを参照。)に記載されているように、本願の出願(原出願日平成23年12月 6日)前に周知技術であり、また、引用発明においても、ねじの突起部と真空断熱材が接触すると真空断熱材が損傷することは当業者において当然考慮されることであるから、上記周知技術を適用して、ねじの突起部と、真空断熱パネル5〜9の端部とを、離間するように設けることは、当業者にとって困難なことではない。 また、引用発明において真空断熱パネル5〜9の端部には、ウレタンフォーム等の断熱材が充填されているため(上記(2)アを参照。)、ねじの突起部と、真空断熱パネル5〜9の端部との間の離間した部分に充填されるウレタンフォーム等の断熱材は、ねじの突起部と真空断熱材の端部との間の離間した部分に位置する介在物といえる。 以上のとおりであるから、引用発明において、相違点2に係る本件補正発明の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。 ウ 請求人の主張について 請求人は、審判請求書において、以下の主張をしている。 (ア) 「この冷蔵庫によれば、外箱を構成する複数の外箱用板部材のうち互いに隣接する2枚の外箱用板部材の端部を固定する箇所には、互いに隣接する2枚の外箱用板部材の端部を断熱箱体の外方から内方へ貫通して固定する固定部材の突起部が断熱箱体内方へ突出しているが、『互いに隣接する2枚の外箱用板部材の端部を外方から内方へ貫通して固定する固定する固定部材の突起部と板状の真空断熱材の端部とが離間しているとともに、互いに隣接する2枚の外箱用板部材の端部を外方から内方へ貫通して固定する固定部材の突起部と板状の真空断熱材の端部との間の離間した部分に介在物が設けられている』(構成A)ことで、互いに隣接する2枚の外箱用板部材の端部を固定する固定部材の突起部により、板状の真空断熱材を傷つけたり、損傷したりすることを抑制することができる、という格別な効果を得ることができます。」(「3.本願発明が特許されるべき理由」の項参照。なお、下線は当審が付与したものである。以下同様。) (イ) 「上記補正後の請求項1に係る構成Aは、引用文献1には開示も示唆もされておりません。」(同上) (ウ) 「引用文献2には、外箱12の開放前面を囲むように形成された前面フランジ12aが、真空断熱材20と離間するように設けられていることが記載されていますが、『互いに隣接する2枚の外箱用板部材の端部を外方から内方へ貫通して固定する固定部材』に相当する構成が開示されていないため、当然に、構成Aに相当する構成についても、引用文献2には開示も示唆もされておりません。」(同上) (エ) 「引用文献3には、前枠部6にパッキン8を取り付けるねじが、真空断熱板3と離間するように設けられていることが記載されていますが、『互いに隣接する2枚の外箱用板部材の端部を外方から内方へ貫通して固定する固定部材』に相当する構成が開示されていないため、当然に、構成Aに相当する構成についても、引用文献3には開示も示唆もされておりません。」(同上) (オ) 「引用文献4には、照明部材40を天井板13に固定する止め具45が、真空断熱材50と離間するように設けられていることが記載されていますが、『互いに隣接する2枚の外箱用板部材の端部を外方から内方へ貫通して固定する固定部材』に相当する構成が開示されていないため、当然に、構成Aに相当する構成についても、引用文献4には開示も示唆もされておりません。」(同上) (カ) 「以上の通り、引用文献1−4には、少なくとも補正後の請求項1にかかる発明の構成Aは記載されておらず、その示唆もありません。また、補正後の請求項1に係る発明によれば、上記の格別な効果を奏することができます。」(同上) (キ) 「従って、補正後の請求項1に係る発明は、当業者が引用文献1−4に記載された発明に基づいて容易に発明することができたものではありません。」(同上) しかしながら、請求人の上記各主張は、引用発明に、引用文献2〜4にあるような周知技術を適用することを当業者が容易になし得たものでないことをいうのでなく、上記(4)で判断したように、引用発明に周知技術を適用することで、上記構成Aは当業者であれば容易に想到できたものであるから、請求人の上記各主張は、採用できない。 エ 効果について 本件補正発明の奏する作用効果(上記ウ(ア)を参照。)は、引用発明及び周知技術から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 オ まとめ したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 本件補正についてのむすび したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和 2年 9月10日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、上記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1〜3に係る発明は、本願出願(原出願日平成23年12月 6日)前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2〜4に示される周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献1:特開2011−117664号公報 引用文献2:特開2003−121064号公報(周知技術を示す文献) 引用文献3:特開2007−188480号公報(周知技術を示す文献) 引用文献4:特開2002−264717号公報(周知技術を示す文献) 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項は、上記第2[理由]2(2)に記載したとおりである。 また、原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2〜4に示される周知技術は、上記第2[理由]2(4)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、上記第2[理由]2で検討した本件補正発明から、「固定部材」による固定が、「断熱箱体の外方から内方へ貫通して」行われることの限定を削除し、「互いに隣接する2枚の外箱用板部材」における前記「固定部材」によって固定される位置が、その「端部」であることの限定を削除し、さらに「固定部材」を「固定部」としたものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、上記第2[理由]2(3)及び(4)に記載したとおり、引用発明及び引用文献2〜4に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に引用発明及び引用文献2〜4に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。 |
審理終結日 | 2021-10-14 |
結審通知日 | 2021-10-19 |
審決日 | 2021-11-02 |
出願番号 | P2019-161993 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F25D)
|
最終処分 | 02 不成立 |
特許庁審判長 |
林 茂樹 |
特許庁審判官 |
後藤 健志 山崎 勝司 |
発明の名称 | 冷蔵庫 |
代理人 | 伊藤 正和 |
代理人 | 高松 俊雄 |
代理人 | 三好 秀和 |
代理人 | 高橋 俊一 |