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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H02M
管理番号 1380748
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-02-16 
確定日 2022-01-11 
事件の表示 特願2017− 68990「電力変換システム、電力変換装置」拒絶査定不服審判事件〔平成30年11月 1日出願公開、特開2018−170929、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本件審判請求に係る出願(以下,「本願」という。)は,平成29年3月30日の出願であって,令和2年10月5日付けで拒絶理由が通知され,同年11月12日に手続補正がされ,令和3年1月18日付けで拒絶査定がされたが,これに対し,同年2月16日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ,同年3月17日に前置報告がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(令和3年1月18日付け拒絶査定)の概要は,次のとおりである。
請求項1−6に係る発明は,以下の引用文献1−3に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特開2016−195513号公報
2.特開2014−166114号公報
3.特開2016−178719号公報

第3 本願発明
本願請求項1−6に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」−「本願発明6」という。)は,令和3年2月16日にされた手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1−6に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1及び本願発明6は,それぞれ以下のとおりの発明である。なお,符号「1A」〜「1J」,「6A」〜「6J」は,当審において付与したものであり,それぞれの構成を,「構成1A」などという。
「【請求項1】
1A 再生可能エネルギーをもとに発電する発電装置の出力する直流電力の電圧を変換し,変換した直流電力を直流バスに出力する第1DC−DCコンバータと,
1B 前記直流バスを介して前記第1DC−DCコンバータと接続され,前記直流バスの直流電力を交流電力に変換し,変換した交流電力を電力系統に供給するインバータと,
1C 前記直流バスの電圧を目標電圧に維持するよう前記インバータを制御する第1制御回路と,
1D 蓄電池の充放電を制御する第2DC−DCコンバータと,
1E 前記第2DC−DCコンバータを制御する第2制御回路と,を備え,
1F 前記第1DC−DCコンバータ,前記インバータ,及び前記第1制御回路は,第1筐体内に設置され,
1G 前記第2DC−DCコンバータ,及び前記第2制御回路は,第2筐体内に設置され,
1H 前記第2DC−DCコンバータは前記直流バスに接続可能な構成であり,
1I 前記第2DC−DCコンバータが前記直流バスに接続されている状態において,前記第2制御回路は,前記インバータから前記電力系統への逆潮流が検出されると,前記第2DC−DCコンバータの出力電力を抑制するように制御することを特徴とする
1J 電力変換システム。」

「【請求項6】
6A 再生可能エネルギーをもとに発電する発電装置の出力する直流電力の電圧を変換し,変換した直流電力を直流バスに出力する第1DC−DCコンバータと,前記直流バスを介して前記第1DC−DCコンバータと接続され,前記直流バスの直流電力を交流電力に変換し,変換した交流電力を電力系統に供給するインバータと,前記直流バスの電圧を目標電圧に維持するよう前記インバータを制御する第1制御回路と,を備える第1電力変換装置に接続される第2電力変換装置であって,
6A 前記第2電力変換装置は,
6D 蓄電池の充放電を制御する第2DC−DCコンバータと,
6E 前記第2DC−DCコンバータを制御する第2制御回路と,を備え,
6F 前記第1DC−DCコンバータ,前記インバータ,及び前記第1制御回路は,第1筐体内に設置され,
6G 前記第2DC−DCコンバータ,及び前記第2制御回路は,第2筐体内に設置され,
6H 前記第2DC−DCコンバータは前記直流バスに接続されており,
6I 前記第2制御回路は,前記インバータから前記電力系統への逆潮流が検出されると,前記第2DC−DCコンバータの出力電力を抑制するように制御することを特徴とする
6J 電力変換装置。」

また,本願発明2−5は,本願発明1を減縮した発明である。

第4 引用文献,引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2016−195513号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審が付与した。「・・・」は,省略したことを示す。)。

ア「【0001】
本発明は交流電源装置の出力電力制御方法及び交流電源装置に関し,特に商用系統電源との連系運転が可能な交流電源装置の出力電力制御方法及び交流電源装置に関する。
・・・
【0007】
本発明にかかる交流電源装置の一態様は,系統配線に商用交流信号を供給する商用交流電源と連系動作する交流電源装置であって,第1の直流電圧信号が出力される直流バス配線のバス電圧を予め設定されるバス電圧指令値に近づけるように,前記第1の直流電圧信号の電圧を制御しながら,蓄電部から供給される放電電力の電圧を変換して第1の直流電力信号を出力する第1の直流電圧コンバータと,前記第1の直流電力信号と再生可能エネルギー源から供給される第2の直流電力信号とを合成する直流バス配線と,前記系統配線に接続される負荷回路で消費される負荷電力と前記放電電力との差分に基づき前記放電電力と前記第2の直流電力信号の電力とを加算した出力電力を算出し,前記系統配線に出力する交流電力信号の電力が前記出力電力となるように交流電力信号の電力を指定するインバータ電力指令値を出力する制御部と,前記インバータ電力指令値に基づき前記交流電力信号の電力を制御しながら,前記直流バス配線を介して伝達された直流電力を前記交流電力信号に変換するインバータと,を有する。
・・・
【0012】
図1に実施の形態1にかかる交流電源装置10のブロック図を示す。図1では,交流電源装置10の利用態様をより具体的に説明するために,交流電源装置10が連系動作する対象となる商用交流電源SPS,交流電源装置10の電力供給対象となる負荷回路PL,交流電源装置10が出力する交流電力信号の電力源となる太陽電池パネルPV及び蓄電池BATを含む交流電源システム1を示した。
【0013】
なお,太陽電池パネルPVは,再生可能エネルギー源の一態様であり,太陽電池パネルPVの他に風力発電用装置,水力発電装置等の電力源を利用することができる。以下の説明では,太陽電池パネルPVが出力する電力を発電電力Ppvと称す。また,蓄電池BATは,蓄電部の一態様であり,蓄電池以外にも大容量キャパシタ,フライホイール等の蓄電装置を利用することができる。以下の説明では,蓄電池BATが出力する電力を放電電力Pbatと称す。
【0014】
また,図1に示すように,交流電源装置10は,商用交流電源SPSから商用交流信号が供給される系統配線に対して交流電力信号を出力する。そして,この系統配線に電力の供給先である負荷回路PLが接続される。以下の説明では,系統配線と負荷回路との接続点を負荷接続点と称す。また,交流電源装置10が系統配線に出力する交流電力信号の電力をPinv,負荷回路PLが消費する負荷電力をPpl,商用交流電源SPSへの逆潮流される逆潮流電力をPrと称す。
【0015】
図1に示すように,交流電源装置10は,第2の直流電圧コンバータ(例えば,DC/DCコンバータ11),第1の直流電圧コンバータ(例えば,DC/DCコンバータ12),インバータ(例えば,DC/ACインバータ13),制御部(例えば,インバータ制御部14),直流バス配線15を有する。
【0016】
DC/DCコンバータ11は,太陽電池パネルPVから供給される発電電力の電圧を変換して第2の直流電力信号を出力する。以下の説明では,説明を簡略化するため,DC/DCコンバータ11で発生する損失を省略して,太陽電池パネルPVから供給される発電電力と第2の直流電力信号の電力は,同じものとして考える。DC/DCコンバータ11は,太陽電池パネルPVの仕様によっては省略することも可能である。
【0017】
DC/DCコンバータ12は,第1の直流電圧信号が出力される直流バス配線15のバス電圧Vdcを予め設定されるバス電圧指令値に近づけるように,第1の直流電圧信号の電圧を制御しながら,蓄電池BATから供給される放電電力の電圧を変換して第1の直流電力信号を出力する。なお,バス電圧Vdcの制御は,DC/DCコンバータ12のバス電圧制御部により行われる。以下の説明では,説明を簡略化するため,DC/DCコンバータ12で発生する損失を省略して,蓄電池BATから供給される放電電力と第1の直流電力信号の電力は,同じものとして考える。
【0018】
DC/DCコンバータ11が出力する第2の直流電力信号と,DC/DCコンバータ12が出力する第1の直流電力信号は,直流バス配線15で合成され,DC/ACインバータ13に供給される。
【0019】
DC/ACインバータ13は,インバータ制御部14が出力するインバータ電力指令値に基づき交流電力信号の電力を制御しながら,直流バス配線を介して伝達された直流電力を交流電力信号に変換する。DC/ACインバータ13は生成した交流電力信号を系統配線に出力する。
【0020】
インバータ制御部14は,系統配線に接続される負荷回路PLで消費される負荷電力Pplと放電電力Pbatとの差分に基づき放電電力Pbatと第2の直流電力信号の電力(例えば,発電電力Ppv)とを加算した出力電力を算出し,系統配線に出力する交流電力信号の電力が出力電力となるように交流電力信号の電力を指定するインバータ電力指令値を出力する。ここで,放電電力Pbatは,放電電力モニタ部CS_BATにより取得される。負荷電力は,負荷電力モニタ部CS_PLにより取得される。ここで,インバータ制御部14は,蓄電池BATから出力される放電電力の電力量が負荷電力の電力量を超えないようにDC/ACインバータ13の出力能力を制御する。」

イ「【0036】
上述した交流電源装置10の動作をさらに説明するために,比較例となる交流電源装置101の動作を交流電源装置10の動作と比較して説明する。そこで,実施の形態1にかかる交流電源システム1の比較例となる交流電源システム100のブロック図を図5に示す。
【0037】
図5に示すように,比較例にかかる交流電源システム100は,図1に示した交流電源システム1の交流電源装置10を交流電源装置101に置き換えたものである。そして,この交流電源装置101は,交流電源装置10のDC/DCコンバータ12,DC/ACインバータ13,インバータ制御部14を,DC/DCコンバータ112,DC/ACインバータ113,コンバータ制御部114に置き換えたものである。
【0038】
そして,交流電源装置101では,コンバータ制御部114により,逆潮流電力Prができるだけ小さくなるように,DC/ACインバータ113が出力する交流電力信号の電力(例えば,出力電力Pinv)のうちDC/DCコンバータ11が出力する発電電力Ppvでまかなえない電力を蓄電池BATから出力される放電電力Pbatで補うものである。この交流電源装置101では,バス電圧VdcはDC/ACインバータ113により維持される。
【0039】
続いて,図5に示した比較例にかかる交流電源装置101の動作を説明する。そこで,図6に比較例にかかる交流電源装置101の動作を説明するタイミングチャートを示す。図6に示すように,交流電源システム100は,負荷電力Pplが発電電力Ppvよりも小さな期間(例えば,期間TM1,TM3)では,交流電源装置101は放電電力Pbatの出力を抑制して,発電電力Ppvに相当する電力を交流電力信号として出力する。そして,交流電源システム100は,負荷回路PLが消費できない余剰電力を商用交流電源SPS側に逆潮流させる。
【0040】
また,交流電源システム100は,発電電力Ppvが負荷電力Pplを下回る期間(例えば,期間TM2,TM4)では,負荷電力Pplから発電電力Ppvを引いた不足電力を蓄電池BATから出力される放電電力Pbatで補う。この期間は,商用交流電源SPS側に逆潮流させる電力がないため,逆潮流電力Prはゼロになる。」

ウ「【図1】



エ「【図5】



オ「【図6】



(2)引用発明の認定
上記ア〜オによれば,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明>
「a 太陽電池パネルPVの出力する直流電力Ppvの電圧を変換し,変換した直流電力を直流バスに出力するDC/DCコンバータ11と,
b 直流バスを介してDC/DCコンバータ11と接続され,直流バスの直流電力を交流電力に変換し,変換した交流電力を電力系統に供給するDC/ACインバータ113と,
c DC/ACインバータ113のバス電圧制御部と,
d 蓄電池BATの出力する放電電力Pbatを変換するDC/DCコンバータ112,
e DC/DCコンバータ112を制御するコンバータ制御部114と,を備え,
f DC/DCコンバータ112は,直流バスに接続されており,
g コンバータ制御部114は,逆潮流電力Prができるだけ小さくなるように,負荷電力Pplが発電電力Ppvよりも小さな期間では,放電電力Pbatの出力を抑制して,発電電力Ppvに相当する電力を交流電力信号として出力し,負荷回路PLが消費できない余剰電力を商用交流電源SPS側に逆潮流させる,
h 交流電源システム100。」

2 引用文献2,3について
(1)引用文献2に記載された技術事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2014−166114号公報)には,以下のとおりの記載がある。
ア「【0023】
図1は本発明の第1の実施形態に係る貯湯機能付き太陽光発電システムを示し,該発電システムは,太陽光発電パネルによって主構成される発電部1と,該発電部1から供給される直流電力を単相三線式商用系統電力に系統連系する交流電力に変換して商用電力系統Sに接続された3線単相の構内電力配線に出力するパワーコンディショナ2と,貯湯装置3とから主構成されている。なお,家庭内負荷(図示せず)は系統Sとパワーコンディショナ2との間に接続されて,パワーコンディショナ2の出力電力は家庭内負荷で消費されるとともに,その余剰電力が系統Sに逆潮流(売電)するようになっている。また,商用電力系統Sから潮流乃至逆潮流する電流値を検出するためのカレントトランス(図示せず)と,系統電圧を検出するための電圧計とが適宜の箇所に設けられており,これらの検出信号はパワーコンディショナ2の制御部7に出力されるようになっている。
【0024】
発電部1は,従来公知の適宜の構成であってよく,一般的には,建物の屋根などに設置された複数の太陽光発電パネルを備え,パワーコンディショナ2の電力入力端子に接続されている。
【0025】
パワーコンディショナ2は,発電部1から供給される直流電力を系統電圧の最大値(例えば200V交流電力の場合は280V)に対応する所定電圧(例えば350V)に昇圧して出力するDC/DCコンバータ4と,該コンバータ4の出力を系統電力に連系する交流電力に変換して系統側に出力するDC/ACインバータ5とを備え,これらコンバータ4とインバータ5とは,DCリンクコンデンサにより構成されるDCリンク部を介して接続されている。これらの回路構成は従来公知であるので詳細説明を省略するが,一般的には,コンバータ4は昇圧チョッパ回路によって構成でき,インバータ5は電圧形ブリッジインバータによって構成できる。さらに,インバータ5の出力側には解列用保護リレー6が設けられている。
【0026】
また,パワーコンディショナ2は,上記コンバータ4・インバータ5及び保護リレー6を制御するための制御部7を備えている。また,制御部7は,購入電力演算手段並びに逆潮流判定手段として機能するものでもあり,上記カレントトランスの検出値と,系統電圧検出値とに基づいて,単位時間あたりの平均購入電力を演算して,この平均購入電力値が正の値であれば逆潮流が生じていないと判定し,一方,平均購入電力値が負の値であれば逆潮流が生じていると判定する。
【0027】
さらに,制御部7は,MPPT制御(最大電力点追従制御)によるコンバータ4の入出力電力制御機能と,PWM制御若しくはPAM制御によるインバータ5の制御機能とを具備し,通常時には入力電力に応じた最大出力が得られるように動作する。また,制御部7は,主としてコンバータ4の出力制御を行うことによってインバータ5から出力される交流電力の有効電力の抑制を行う出力抑制制御機能,インバータ5を制御することによりインバータ5から出力される交流電力の力率制御を行う無効電力制御機能,及び,所定の解列条件が成立したときに解列用保護リレー6を動作させることによりパワーコンディショナー2を系統から解列させる解列制御機能を具備している。かかる制御部7はマイコンによって主構成され,上記各制御機能は制御プログラムとして実装されているが,各制御機能に対応する専用回路によって構成されていてもよい。」

イ「【0032】
本実施形態の貯湯装置3の構成をまず説明すると,該貯湯装置3は,上水路31から注水される水を貯水する貯湯タンク32と,該貯湯タンク32の内部若しくは周囲に設けられて貯湯タンク32内の水を加熱することによって蓄熱動作を行うための電気ヒータ33とを備えており,貯湯タンク32に貯湯された湯は出湯路36を介して出湯される。電気ヒータ33は,上記パワーコンディショナ2のDCリンク部からの電力供給によって動作するものであり,パワーコンディショナ2内には,電気ヒータ33への電力供給を入切するためのリレーや半導体スイッチング素子などからなるスイッチ8が設けられ,該スイッチ8は制御部7によって制御される。なお,スイッチ8をPWM制御し,オン時間のデューティー比を徐々に増加させることによって,電気ヒータ33による蓄熱動作の消費電力を漸次増加させていくことも可能である。また,電気ヒータ33の性能に合わせて電圧調整するためにDCリンク部と電気ヒータ33との間にDC/DCコンバータ34を設けているが,電圧調整が不要の場合にはコンバータ34を省略することができる。一方,電気ヒータ33として交流電力動作するものを用いる場合にはDC/ACインバータを追加する必要がある。なお,本実施形態ではDCリンク部から蓄熱動作用の電力を取り出しているが,発電部1の出力を貯湯装置3に電源として直接供給してもよく,また,パワーコンディショナ2の出力を貯湯装置3に電源として供給することもできる。
【0033】
また,貯湯装置3は,貯湯タンク32の貯湯量を監視するための制御部35を備えており,貯湯タンク32に設けた温度センサ(図示せず)からの検出信号に基づいて制御部35はタンク32内の湯温や貯湯量を求め,これら湯温や貯湯量に基づいて蓄熱動作を行えるか否か(広義には消費電力の増加を行えるか否か)を判定する。」

ウ「【図1】



上記ア〜ウによれば,引用文献2には,以下の技術事項が記載されていると認められる。
「太陽電池1から供給される直流電力を昇圧して出力するDC/DCコンバータ4と,該コンバータ4の出力を交流電力に変換して系統側に出力するDC/ACインバータ5と,これらを制御する制御部7とを備えたパワーコンディショナ2と,DC/ACインバータ5とスイッチ8を介して接続され,貯湯タンク32に設けた電気ヒータ33に電力を供給するるDC/DCコンバータ34と,貯湯タンク32の貯湯量を監視する制御部35を備える貯湯装置3とを具備する貯湯機能付き発電システム。」

(2)引用文献3に記載された技術事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2016−178719号公報)には,以下のとおりの記載がある。
ア「【0016】
図2は,パワーコンディショナ2の構成を示すブロック図である。パワーコンディショナ2は,直流電力を交流電力に変換する電力変換部20と,電力変換部20を制御するための制御信号を出力する制御部21と,外部と通信をする通信部22と,故障または障害が発生したことを報知可能な報知部である出力部23とを備えている。電力変換部20は,DC/DC変換機能を有するコンバータ20a,コンバータ20aの後段に配置され,DC/AC変換機能を有するインバータ20b,およびインバータ20bの後段に配置され,ノイズを抑制するフィルタ処理を施すフィルタ回路20cを備えている。制御部21は,コンバータ20aを制御するために制御信号をコンバータ20aに出力すると共に,インバータ20bを制御するために制御信号をインバータ20bに出力する。制御部21は,コンバータ20aおよびインバータ20bの通常の制御の他,後述する電力抑制制御も含めてパワーコンディショナ2の全体の制御を司る。図3は,制御部21のハードウェア構成を示す図である。制御部21は,プロセッサ30およびメモリ31を備える。プロセッサ30は,メモリ31に記憶された制御プログラムに従って動作する。通信部22は,送受信装置である。出力部23は,例えば,表示装置,鳴動装置,またはこれらの双方で実現される。」

イ「【図2】



上記ア,イによれば,引用文献3には,以下の技術事項が記載されていると認められる。
「DC/DC変換機能を有するコンバータ20a,コンバータ20aの後段に配置され,DC/AC変換機能を有するインバータ20b,およびインバータ20bの後段に配置され,ノイズを抑制するフィルタ処理を施すフィルタ回路20cを備えた電力変換部20と,電力変換部20を制御するための制御信号を出力する制御部21とを備えたパワーコンディショナ2。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると,引用発明の「太陽電池パネルPV」,「蓄電池BAT」は,それぞれ,本願発明1の「再生可能エネルギーをもとに発電する発電装置」,「蓄電池」に相当し,引用発明の「DC/DCコンバータ11」,「DC/ACインバータ113」,「DC/ACインバータ113のバス電圧制御部」は,それぞれ,本願発明1の「第1DC−DCコンバータ」,「インバータ」,「第1制御部」に相当する。
また,引用発明の「DC/DCコンバータ112」は,蓄電池BATの充電制御を行うかどうかは明らかでないが,蓄電池BATの出力する放電電力Pbatを変換するものであり,少なくとも,放電電力Pbatを制御するために用いられるものであるから,本願発明1の「第2DC−DCコンバータ」とは,充電池の出力制御を行う点では共通する。なお,引用発明の「DC/DCコンバータ112」は,直流バスに接続されているから,「直流バスに接続可能」であり,また,「直流バスに接続されている状態において」用いられることは自明である。
そして,引用発明の「コンバータ制御部114」は,負荷電力Pplが発電電力Ppvよりも小さな期間において,放電電力Pbatの出力を抑制するのに対して,本願発明の「第2制御部」は,「前記インバータから前記電力系統への逆潮流が検出されると,前記第2DC−DCコンバータの出力電力を抑制するように制御する」ものであるから,両者は,蓄電池の出力電力を抑制するための条件が相違するものの,いずれも,所定の条件の下で蓄電池から出力される放電電力を抑制するよう制御する点では共通する。
そして,引用発明の「交流電源システム」は,太陽電池パネルと蓄電池とから得られる直流電力を変換するものであるから,「電力変換システム」を構成しているといえる。
したがって,本願発明1と引用発明1との間には,次の一致点,相違点があるといえる。
(一致点)
「再生可能エネルギーをもとに発電する発電装置の出力する直流電力の電圧を変換し,変換した直流電力を直流バスに出力する第1DC−DCコンバータと,
前記直流バスを介して前記第1DC−DCコンバータと接続され,前記直流バスの直流電力を交流電力に変換し,変換した交流電力を電力系統に供給するインバータと,
前記直流バスの電圧を目標電圧に維持するよう前記インバータを制御する第1制御回路と,
蓄電池の出力を制御する第2DC−DCコンバータと,
前記第2DC−DCコンバータを制御する第2制御回路と,を備え,
前記第2DC−DCコンバータは前記直流バスに接続可能な構成であり,
前記第2DC−DCコンバータが前記直流バスに接続されている状態において,前記第2制御回路は,所定の条件の下で,前記第2DC−DCコンバータの出力電力を抑制するように制御する
電力変換システム。」

(相違点1)
本願発明1の「第2DC−DCコンバータ」は,蓄電池の充放電を制御するのに対し,引用発明のDC/DCコンバータ112は,BATの充電制御を行うことが特定されない点。

(相違点2)
本願発明1では,第1DC−DCコンバータと,インバータと,第1制御回路とが,「第1筐体内」に設置され,第2DC−DCコンバータと第2制御回路とが,「第2筐体内」に設置されているのに対し,引用発明では,そのようになっていない点。

(相違点3)
本願発明1の「第2制御回路」は,前記インバータから前記電力系統への逆潮流が検出されると,前記第2DC−DCコンバータの出力電力を抑制するように制御するのに対し,引用発明は,インバータから前記電力系統への逆潮流を検出しておらず,コンバータ制御部114は,逆潮流の検出に応じた動作は行わない点。

(2)相違点についての判断
ア 相違点1について
本願出願前に公知となった特開平10−31525号公報,特開2002−354677号公報,特開2012−161189号公報には,それぞれ以下のとおりの記載がある。
(ア)特開平10−31525号公報
「【0014】先ず、図1において、1は太陽電池、10は商用電源等の外部交流電源、2は前記太陽電池の直流出力を受けてこれを所定の交流に変換するインバータ、3は蓄電池、4はインバータ2の出力母線と外部交流電源10による給電母線との間の母線連絡用コンタクタ、7はインバータ2と外部交流電源10との並列運転が解除された場合にインバータ2により給電される特定負荷、同様に8は前記並列運転解除の場合に外部電源10により給電される一般負荷である。
【0015】また、9は双方向性のDC/DCコンバータであり、例えば、太陽電池1による蓄電池3の充電時に動作する降圧チョッパ回路と、蓄電池3がインバータ2の直流電源となるその放電時に動作する昇圧チョッパ回路とを対をなして回路構成し、前記蓄電池に対する充放電制御動作に従ってその出力電流方向を反転させる双方向性の電力変換手段として機能するものである。」
「【図1】


(イ)特開2002−354677号公報
「【0013】
【発明の実施の形態】本発明の一実施形態を図1によって説明する。図1は、本実施形態に係るパワーコンディショナ11を含めた太陽光発電システムの構成図である。パワーコンディショナ11は、第1のDC/DCのコンバータに相当する昇圧チョッパ12と、インバータ13と、第2のDC/DCのコンバータに相当する双方向チョッパ14と、停電検出回路15とを備える。」
「【図1】


(ウ)特開2012−161189号公報
「【0014】
図1に上記充放電制御方法が実施される太陽光発電システムの概略構成を示す。図1を参照して、実施形態の太陽光発電システムは、太陽電池1と、パワーコンディショナ3と、負荷5と、双方向DC/DCコンバータ7と、蓄電池9と、を含む電力システムである。」
「【図1】



上記(ア)〜(ウ)に記載のように,蓄電池とともに用いるDC/DCコンバータとして,双方向コンバータを採用し,蓄電池の充放電の制御を行うことは,本願出願前における当業者の周知技術であって,引用発明において,DC/DCコンバータ112として,このような周知の双方向コンバータを採用することに,当業者が困難を要するものとは認められない。

イ 相違点2について
相違点2に係る構成に関し,令和3年3月17日に前置報告において,新たな引用文献4(特開2015−53854号公報)が引用されている。
そこで,引用文献4に記載された事項について検討すると,引用文献4には,以下のとおりの記載がある。
(ア)「【0026】
(第1実施の形態)
図1は、本発明の第1実施の形態に係るパワーコンディショナシステムの概略構成を示すブロック図である。本実施の形態に係るパワーコンディショナシステムは、発電設備11を商用電源系統12に接続する発電パワーコンディショナ30と、蓄電設備13を商用電源系統12に接続する蓄電パワーコンディショナ50とを備える。なお、本実施の形態において、発電設備11は太陽光パネルからなり、発電パワーコンディショナ30は太陽光パワーコンディショナからなるものとする。また、蓄電設備13は、リチウムイオン電池やニッケル水素電池等の蓄電池からなるものとする。
【0027】
発電パワーコンディショナ30は、単方向コンバータ31、単方向インバータ32、系統連系スイッチ33、自立出力スイッチ34、通信部35、および、発電制御部36を有する。単方向コンバータ31は、発電設備11から発生される直流出力電圧を昇圧して、その昇圧された直流電圧を単方向インバータ32に供給する。この単方向コンバータ31の出力電圧は、発電設備11の発電に基づく電力の情報(中間リンク情報)として、発電制御部36で検出する。」

(イ)「【0056】
(第2実施の形態)
図9は、本発明の第2実施の形態に係るパワーコンディショナシステムの要部の概略構成を示すブロック図である。以下、図1?図8に示した構成要素と同一作用を成す構成要素には、同一参照符号を付して説明する。本実施の形態に係るパワーコンディショナシステムは、図1に示した構成において、発電パワーコンディショナ30の単方向コンバータ31から単方向インバータ32に供給される直流電力を、DCリンク出力として、自立発電出力部を構成する自立出力スイッチ81から蓄電パワーコンディショナ50に選択的に出力する。なお、この自立出力スイッチ81は、DCリンクスイッチとしても機能する。また、自立出力スイッチ81は、後述する単方向コンバータ82に電力が供給される部分に含まれるスイッチで代替しても良い。
【0057】
蓄電パワーコンディショナ50は、発電パワーコンディショナ30からのDCリンク出力を所定の直流電圧に変換して、双方向コンバータ51および双方向インバータ52に供給する単方向コンバータ82を備える。なお、単方向コンバータ82は、発電パワーコンディショナ30において自立出力スイッチ81の後に含まれてもよい。したがって、自立発電入力部は、単方向コンバータ82の入力部または出力部により構成される。また、双方向インバータ52の交流出力電力をオン/オフする自立出力スイッチ54と、系統電力をオン/オフするスイッチ72(負荷電力出力部56を構成する)とを、自立出力系62に対して並列に接続する。その他の構成は、図1と同様であるが、図9には、図1の自立出力スイッチ34、ACリンクスイッチ55、同期検出部57、電圧検出部58、電流検出部59等が省略されている。」

(ウ)「【図1】



(エ)「【図9】



上記(ア)〜(エ)によれば,引用文献4には,以下の技術事項が記載されていると認められる。
「太陽光パネルからなる発電設備11から発生される直流出力電圧を昇圧して,その昇圧された直流電圧を単方向インバータ32に供給する単方向コンバータ31と,単方向インバータ32と,発電制御部36を有し,発電設備11を商用電源系統12に接続する発電パワーコンディショナ30と,蓄電池からなる蓄電設備13を商用電源系統12に接続する蓄電パワーコンディショナ50とを備えるパワーコンディショナシステム。」

以上を踏まえて,相違点2について検討すると,「再生可能エネルギーをもとに発電する発電装置の出力する直流電力の電圧を変換し,変換した直流電力を直流バスに出力する第1DC−DCコンバータと,前記直流バスを介して前記第1DC−DCコンバータと接続され,前記直流バスの直流電力を交流電力に変換し,変換した交流電力を電力系統に供給するインバータと,前記直流バスの電圧を目標電圧に維持するよう前記インバータを制御する第1制御回路と,蓄電池の充放電を制御する第2DC−DCコンバータと,前記第2DC−DCコンバータを制御する第2制御回路とを備える電力変換システム」において,「第1DC−DCコンバータと,インバータと,第1制御回路とを第1筐体内に設置する」とともに,「第2DC−DCコンバータと,第2制御回路とを第2筐体内に設置する」ことは,原審において引用された引用文献2,3,ならびに,前置報告にて引用された引用文献4のいずれにも記載されておらず,相違点2に係る構成が周知技術であると解すべき根拠はない。また,引用文献1には,引用発明において,相違点2に係る第1筐体と第2筐体とからなる筐体の構成を採用する動機付けとなり得る記載も見当たらない。そして,本願発明1は,相違点2に係る構成を備えることにより,「第1筐体だけで運用することが可能であるとともに,第1筐体単体で運用する場合には必要ない機能を第1筐体に搭載する必要がなく,第1筐体のコストを削減することができる」という,引用文献1の記載からは,当業者が予測できない顕著な効果を奏するものといえるから,本願発明1の相違点2に係る構成は,当業者であっても,引用文献1の記載から容易に想到し得るものではない。

ウ 相違点3について
引用発明は,太陽電池パネルの出力電力により生じた,負荷で消費できない余剰電力を逆潮流させる構成であるから,逆潮流が生じる場合には,太陽電池パネルの発電電力Ppvが負荷電力Pplを上回っていることは,上記第4の1(1)イの【0040】や同オの図6の記載からも明らかである。そうすると,引用発明において,蓄電池の出力電力を抑制する,負荷電力Pplが発電電力Ppvよりも小さな期間を,逆潮流の検出により特定する構成として,相違点3の構成を得ることに,当業者が困難を要するものとは認められない。

エ まとめ
以上のとおり,本願発明1の上記相違点2に係る構成は,引用発明及び引用文献2−4に記載の技術事項に基づいて,当業者が容易に想到し得るものではないから,本願発明1は,当業者であっても,引用発明及び周知技術に基づいて,容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2−5について
請求項1を引用する本願発明2−5も,引用発明1との相違点2に係る,本願発明1の構成1F及び1Gを備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献2−4に記載の技術事項に基づいて,容易に発明できたものであるとはいえない。

3 本願発明6について
本願発明6は,引用発明との相違点2に係る,本願発明1の構成1Fに相当する構成6F「前記第1DC−DCコンバータ,前記インバータ,及び前記第1制御回路は,第1筐体内に設置され,」及び,同1Gに相当する構成6G「前記第2DC−DCコンバータ,及び前記第2制御回路は,第2筐体内に設置され,」を備えるものであるから,本願発明1と同様の理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献2−4に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第6 原査定について
原査定は,請求項1−6に係る発明について,引用文献1−3に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないというものであるが,上記のとおり,本願発明1−6は,拒絶査定において引用された引用文献1に記載された発明及び引用文献2,3に記載された技術事項ならびに引用文献4に記載された技術事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものではない。したがって,原査定を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-12-15 
出願番号 P2017-068990
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H02M)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 田中 秀人
特許庁審判官 篠原 功一
山澤 宏
発明の名称 電力変換システム、電力変換装置  
代理人 宗田 悟志  

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