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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1380764
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-02-26 
確定日 2022-01-04 
事件の表示 特願2016−154958「演出処理プログラム及び情報処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 2月 8日出願公開、特開2018− 22442、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年8月5日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 2年 1月28日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 3月11日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 5月28日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 7月16日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年11月27日付け:拒絶査定
令和 3年 2月26日 :拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提


第2 原査定の概要
原査定(令和2年11月27日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1,3〜5に係る発明は、以下の引用文献1,2に基いて、本願請求項2に係る発明は、以下の引用文献1〜3に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1: 特開2009−294740号公報
引用文献2: 特開2013−77013号公報
引用文献3: 特開2016−71835号公報

第3 本願発明
本願請求項1〜5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」〜「本願発明5」という。)は、令和3年2月26日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜5に記載された事項により特定される発明であり、それらのうちの本願発明1,5は、以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
ユーザが装着する装着型の表示装置にて実行している所定のゲーム処理のゲーム画像を表示させ、
検出された前記ユーザの目の状態情報を取得し、
ユーザ毎の目の第1の状態の範囲を示す数値を記憶した記憶部を参照して、取得した前記目の状態情報に基づき、前記ユーザの目の状態が前記第1の状態の範囲から外れていると判定した場合、取得した前記ユーザの目の状態に対応する演出であって、実行している前記ゲーム処理に新たな演出を与える新たなゲーム処理を、実行している前記ゲーム処理に付加するための情報を生成し、
前記生成した情報に基づき、前記新たなゲーム処理を、実行している前記ゲーム処理に付加して表示する、
処理をコンピュータに実行させるための演出処理プログラム。」

「【請求項5】
ユーザが装着する装着型の表示装置にて実行している所定のゲーム処理のゲーム画像を表示させ、前記ゲーム処理を実行する処理実行部と、
検出された前記ユーザの目の状態情報を取得する通信部と、
ユーザ毎の目の第1の状態の範囲を示す数値を記憶した記憶部を参照して、取得した前記目の状態情報に基づき、前記ユーザの目の状態が前記第1の状態の範囲から外れていると判定した場合、取得した前記ユーザの目の状態に対応する演出であって、実行している前記ゲーム処理に新たな演出を与える新たなゲーム処理を、実行している前記ゲーム処理に付加するための情報を生成する生成部と、
前記生成した情報に基づき、前記新たなゲーム処理を、実行している前記ゲーム処理に付加して表示する出力部と、
を有する情報処理装置。」

なお、本願発明2〜4は、本願発明1を減縮した発明である。

第4 引用文献、引用発明
1 引用文献1、引用発明
(1)原査定の拒絶の理由にて引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審による。以下同様。)。
「【0009】
図1は、本実施の形態に係るシステム構成を示す図である。
図1において、表示変更装置100は、ディスプレイ装置200及びカメラ300に接続され、カメラ300から取得した顔画像からその顔画像に合った表示形式(文字サイズやレイアウト)を決定し、決定した表示形式に従った表示データをディスプレイ装置200に出力する手段である。
表示変更装置100は、データ処理装置の例である。」

「【0015】
図2は、本実施の形態に係る表示変更装置100の内部構成例を示すブロック図である。」

「【0020】
また、図2において、画像格納領域111は、複数の画像111_1を保存するための手段である。
顔画像解析結果格納領域112は、複数の画像から抽出した目や眉の特徴点幅を画像ごとに保存した顔画像解析結果112_1を保存するための手段である。
ユーザ状態判断テーブル格納領域113は、特徴点幅の変化条件とその条件を満たす状態情報との関連付けを行うユーザ状態判断テーブル113_1を保存するための手段である。
ユーザ状態情報格納領域114は、ユーザ状態判断部103によって判断されたユーザの状態情報114_1を保存するための手段である。
スタイル変更テーブル格納領域115は、スタイル変更テーブル115_1を保存するための手段である。
コンテンツ格納領域116は、複数のHTML情報などのコンテンツ情報116_1を保存するための手段である。
コンテンツ解析結果格納領域117は、複数のDOM情報などのコンテンツ解析結果情報117_1を保存するための手段である。
レイアウト情報格納領域118は、複数の配置情報などのレイアウト情報118_1を保存するための手段である。」

「【0035】
実施の形態1における表示変更装置100の全体処理フローを図21を用いて説明する。
表示変更装置100では、顔画像取得部101が、接続されたカメラ300からカメラ画像の取得処理を行い、取得した画像111_1を画像格納領域111に格納する(S1)。
次に、顔画像解析部102が、取得した複数の連続画像を顔画像解析処理A2により顔画像から特徴点を抽出し、目幅、目高、目間隔、眉高などを算出し、顔画像解析結果112_1を顔画像解析結果格納領域112に格納する(S2)。
次に、ユーザ状態判断部103が、顔画像解析結果112_1と、ユーザ状態判断テーブル格納領域113に格納されたユーザ状態判断テーブル113_1からそれぞれの幅値が条件を満たすか比較し、条件を満たす状態をそのユーザの状態情報114_1としてユーザ状態情報格納領域114に格納する。ここで、「見難い」、「通常」、「見やすい」などの判断を行う(S3)。
そして、ユーザ状態が直前の状態から変化している場合(「通常」から「見難い」への変化等)は、S4に処理を進め、状態に変化がない場合には、S1に処理を戻す。
例えば、図9に示す連続した取得画像Image1からImage2への変化において、目高が大幅に小さくなっており、図10のユーザ状態判断テーブルとの照合に基づき、ユーザが目を細めていて「見難い」状態にあると判断することができ、ユーザの状態が「通常」から「見難い」に変化したと判断することができる。
【0036】
次に、スタイル変更部104が、スタイル変更テーブル格納領域115に格納されたスタイル変更テーブルを参照し、スタイルの取得を行う。
例えば、スタイル変更テーブルが図12の115_1であり、ユーザの状態が「見難い」の場合、<H6>タグを通常の文字サイズ8pxlから「見難い」文字サイズ16pxlへと変更する。また、図13の115_2のように要素を変換する場合はこのタイミングでコンテンツの変換を行う(S4)。
次に、コンテンツ解析部105により、コンテンツ格納領域116に格納されたコンテンツ116_1を取り出し、コンテンツの解析を行う。
解析した結果は例えばDOM(Document Object Model)など、コンテンツレイアウト部106が解釈できるデータ構造に変換する。このコンテンツ解析結果117_1をコンテンツ解析結果格納領域117に格納する(S5)。
次に、コンテンツレイアウト部106が、コンテンツ解析結果117_1とスタイル変更テーブル115_1(115_2)を利用して、コンテンツレイアウト処理を行う。コンテンツレイアウト処理とはコンテンツ116_1に記述された要素の配置や幅、高さや色、要素の数の設定を行う処理である。本処理によりレイアウト情報118_1を生成し、レイアウト情報格納領域118に格納する。なお、レイアウト情報は実装システムに依存した情報である(S6)。
最後に、レイアウト情報描画部107が、レイアウト情報格納領域118に格納されたレイアウト情報を元に描画処理を行い、ディスプレイ装置200に表示する(S7)。
【0037】
このように、本実施の形態では、カメラ300がディスプレイ装置200に表示されている表示データを見るユーザの顔を撮影し、表示変更装置100がユーザの顔画像の目領域の画像データを解析し、ユーザが通常の目の状態である(顔画像A400)のか、目を細めた状態である(顔画像B500)のかを判断し、目を細めた状態である場合には、ユーザは表示データが見難いと判断し、表示データの表示レイアウトをより見やすい形式(対応レイアウト表示B700)に変更し、より見やすい表示レイアウトに沿った表示データをディスプレイ装置200に出力する。
このため、コンテンツやプログラムの変更、文字サイズの調整等の負担をユーザに強いることなく、また、ユーザの手が塞がっていて調整作業等ができない場合においても、ユーザにとって見やすい表示形式で表示データを生成することができる。」

「【図1】



(2)上記(1)の記載において、「表示変更装置100の全体処理フロー」(【0035】)が、その処理を「表示変更装置100」に実行させるための処理プログラムによって実行されることは、明らかである。

(3)上記(1)、(2)から、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ディスプレイ装置200及びカメラ300に接続された表示変更装置100に、
接続されたカメラ300からカメラ画像の取得処理を行い、取得した画像111_1を格納し、
次に、取得した複数の連続画像を顔画像解析処理A2により顔画像から特徴点を抽出し、目幅、目高、目間隔、眉高などを算出し、複数の画像から抽出した目や眉の特徴点幅を画像ごとに保存した顔画像解析結果112_1を格納し、
次に、顔画像解析結果112_1と、特徴点幅の変化条件とその条件を満たす状態情報との関連付けを行うユーザ状態判断テーブル113_1からそれぞれの幅値が条件を満たすか比較し、条件を満たす状態をそのユーザの状態情報114_1として格納し、ここで、「見難い」、「通常」、「見やすい」などの判断を行い、
ユーザ状態が「通常」から「見難い」へ変化している場合、表示データの表示レイアウトをより見やすい形式に変更し、より見やすい表示レイアウトに沿った表示データをディスプレイ装置200に出力する、
処理を実行させるための処理プログラム。」

2 引用文献2
原査定の拒絶の理由にて引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0013】
[1.表示装置の外観例及び外部機器との関連]

実施の形態として、図1に眼鏡型ディスプレイとした表示装置1の外観例を示す。表示装置1は、例えば両側頭部から後頭部にかけて半周回するようなフレームの構造の装着ユニットを持ち、図のように両耳殻にかけられることでユーザに装着される。
そしてこの表示装置1は、図1のような装着状態において、ユーザの両眼の直前、即ち通常の眼鏡におけるレンズが位置する場所に、左眼用途右眼用の一対の表示部2、2が配置される構成とされている。この表示部2には、例えば液晶パネルが用いられ、透過率を制御することで、図のようなスルー状態、即ち透明又は半透明の状態とできる。表示部2がスルー状態とされることで、眼鏡のようにユーザが常時装着していても、通常の生活には支障がない。」

「【0051】
[4.ユーザ状況の判定]

上述したように本例の表示装置1は、使用者情報を取得するための構成として、視覚センサ19、加速度センサ20、ジャイロ21、生体センサ22を有する。
【0052】
視覚センサ19は、ユーザの視覚に関する情報を検出するものとするが、この視覚センサ19は、一例としては、例えば表示部2の近辺に配置されてユーザの眼部を撮像するようにされた撮像部により形成できる。そして該撮像部が撮像したユーザの眼部の画像をシステムコントローラ10が取り込み、ユーザ状況判定機能10aが画像解析を行うことで、視線方向、焦点距離、瞳孔の開き具合、眼底パターン、まぶたの開閉などを検出でき、これた基づいてユーザの状況や意志を判定できる。
或いは視覚センサ19は、表示部2の近辺に配置されてユーザの眼部に光を照射する発光部と、眼部からの反射光を受光する受光部により形成できる。例えば受光信号からユーザの水晶体の厚みを検知することでユーザの眼の焦点距離を検出することも可能である。
【0053】
ユーザの視線方向を検出することで、システムコントローラ10は例えば表示部2に表示された画像においてユーザが注目している部分を判定できる。
またシステムコントローラ10は、ユーザの視線方向を、操作入力として認識することも可能である。例えばユーザが視線を左右に動かすことを、表示装置1に要求する所定の操作入力とするなどである。
ユーザの焦点距離を検出することで、ユーザが注目している光景が遠方か近傍かを判別でき、それに応じてズーム制御、拡大/縮小制御などを行うことも可能である。例えばユーザが遠くを見たときに望遠表示を行うなどである。
ユーザの瞳孔の開き具合を検出すれば、スルー状態であれば周囲の明るさの状態、またモニタ表示状態であれば表示している画像に対してユーザが感じているまぶしさ等を判定でき、それに応じて輝度調整、撮像感度調整などを行うことができる。
ユーザの眼底パターンの検出は、例えばユーザの個人認証に用いることができる。眼底パターンは各人に固有のパターンであるため、眼底パターンによって装着したユーザを判定し、そのユーザに適した制御を行うこと、或いは特定のユーザにのみモニタ表示の動作を実行できるようにすることなどの制御が可能である。
ユーザのまぶたの開閉動作を検出することで、ユーザが感じているまぶしさや眼の疲れを判定できる。また、まぶたの開閉を、ユーザの意識的な操作入力として認識することも可能である。例えばユーザが3回まばたきをすることを、所定の操作入力と判定するなどである。」

「【図1】



第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
ア 本願発明1と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明は、「表示変更装置100に」、「ユーザ状態が「通常」から「見難い」へ変化している場合、表示データの表示レイアウトをより見やすい形式に変更し、より見やすい表示レイアウトに沿った表示データをディスプレイ装置200に出力する処理を実行させる」ものである。
ここで、「表示変更装置100」は、「ディスプレイ装置200」に画像を「表示させ」るといえ、当該画像は、本願発明1の「ゲーム画像」と、「画像」である点で共通している。また、「ディスプレイ装置200」は、「ユーザ状態」が「変化」し得る「ユーザ」が見る表示装置であって、本願発明1の「ユーザが装着する装着型の表示装置」と、「ユーザの表示装置」である点で共通している。
したがって、本願発明1の
「ユーザが装着する装着型の表示装置にて実行している所定のゲーム処理のゲーム画像を表示させ」る「処理」
に関して、引用発明と本願発明1とは、
「ユーザの表示装置にて画像を表示させ」る「処理」
を実行する点で共通している。

(イ)引用発明は、
「接続されたカメラ300からカメラ画像の取得処理を行い、取得した画像111_1を格納し、
次に、取得した複数の連続画像を顔画像解析処理A2により顔画像から特徴点を抽出し、目幅、目高、目間隔、眉高などを算出し、複数の画像から抽出した目や眉の特徴点幅を画像ごとに保存した顔画像解析結果112_1を格納し、
次に、顔画像解析結果112_1と、特徴点幅の変化条件とその条件を満たす状態情報との関連付けを行うユーザ状態判断テーブル113_1からそれぞれの幅値が条件を満たすか比較し、条件を満たす状態をそのユーザの状態情報114_1として格納し、ここで、「見難い」、「通常」、「見やすい」などの判断を行い、
ユーザ状態が「通常」から「見難い」へ変化している場合、表示データの表示レイアウトをより見やすい形式に変更し、より見やすい表示レイアウトに沿った表示データをディスプレイ装置200に出力する」
ものである。
ここで、「取得した複数の連続画像を顔画像解析処理A2により顔画像から特徴点を抽出し、目幅、目高、目間隔、眉高などを算出し、複数の画像から抽出した目や眉の特徴点幅」を得ることが、上記(ア)の「ユーザ」について行われることは明らかであり、「特徴点幅」は、当該「ユーザ」の「目の状態」を表す情報であるといえ、それが得られることは、本願発明1の「ユーザの目の状態情報」が「検出され」ることに相当する。
また、「特徴点幅を画像ごとに保存した顔画像解析結果112_1を格納し」、「次に、顔画像解析結果112_1と、特徴点幅の変化条件とその条件を満たす状態情報との関連付けを行うユーザ状態判断テーブル113_1からそれぞれの幅値が条件を満たすか比較」する等の処理を実行する際に、「格納」された「顔画像解析結果112_1」から、「特徴点幅」を「取得」することは明らかである。
したがって、引用発明と本願発明1とは、
「検出された前記ユーザの目の状態情報を取得」する「処理」
を実行する点で一致している。

(ウ)上記(イ)で述べた引用発明の構成において、「顔画像解析結果112_1と、特徴点幅の変化条件とその条件を満たす状態情報との関連付けを行うユーザ状態判断テーブル113_1からそれぞれの幅値が条件を満たすか比較し、条件を満たす状態をそのユーザの状態情報114_1として格納し、ここで、「見難い」、「通常」、「見やすい」などの判断を行い、ユーザ状態が「通常」から「見難い」へ変化している場合」とは、ある「特徴点幅」の数値が、「通常」の「条件」を「満た」さないことから「ユーザ状態」が「見難い」状態になったと「判定」した場合であり、ここで、当該「判定」が、「通常」の「範囲を示す数値を記憶した」、「特徴点幅の変化条件とその条件を満たす状態情報との関連付けを行うユーザ状態判断テーブル113_1」を「参照して」、「特徴点幅」に基づき、「ユーザ状態」が「通常」の「範囲から外れていると判定」する、というものであることは明らかである。
そして、「通常」の「範囲を示す数値を記憶した」、「特徴点幅の変化条件とその条件を満たす状態情報との関連付けを行うユーザ状態判断テーブル113_1」と、本願発明1の「ユーザ毎の目の第1の状態の範囲を示す数値を記憶した記憶部」とは、「目の第1の状態の範囲を示す数値を記憶した記憶部」である点で共通している。
また、引用発明の「ユーザ状態」は、本願発明1の「ユーザの目の状態」に相当する。

(エ)上記(イ)で述べた引用発明の構成は、上記(ウ)のように「判定」した場合、「表示データの表示レイアウトをより見やすい形式に変更し、より見やすい表示レイアウトに沿った表示データをディスプレイ装置200に出力する」ものである。
ここで、「より見やすい表示レイアウト」は、「見難い」状態の「ユーザ状態」に対応する表示を行うための情報であって、当該情報を生成して、当該生成した情報に基づき、「ディスプレイ装置200」において「より見やすい」表示を行うことは明らかである。
そして、「より見やすい表示レイアウト」と、本願発明1の「取得した前記ユーザの目の状態に対応する演出であって、実行している前記ゲーム処理に新たな演出を与える新たなゲーム処理を、実行している前記ゲーム処理に付加するための情報」とは、「取得した前記ユーザの目の状態に対応する表示を行うための情報」である点で共通しており、「より見やすい表示レイアウトに沿った表示データをディスプレイ装置200に出力する」ことと、本願発明1の「前記生成した情報に基づき、前記新たなゲーム処理を、実行している前記ゲーム処理に付加して表示する」こととは、「前記生成した情報に基づき、表示する」ことである点で共通している。

(オ)上記(ウ)、(エ)について上記(イ)で検討した点も踏まえると、本願発明1の
「ユーザ毎の目の第1の状態の範囲を示す数値を記憶した記憶部を参照して、取得した前記目の状態情報に基づき、前記ユーザの目の状態が前記第1の状態の範囲から外れていると判定した場合、取得した前記ユーザの目の状態に対応する演出であって、実行している前記ゲーム処理に新たな演出を与える新たなゲーム処理を、実行している前記ゲーム処理に付加するための情報を生成し、
前記生成した情報に基づき、前記新たなゲーム処理を、実行している前記ゲーム処理に付加して表示する」、「処理」
に関して、引用発明と本願発明1とは、
「目の第1の状態の範囲を示す数値を記憶した記憶部を参照して、取得した前記目の状態情報に基づき、前記ユーザの目の状態が前記第1の状態の範囲から外れていると判定した場合、取得した前記ユーザの目の状態に対応する表示を行うための情報を生成し、
前記生成した情報に基づき、表示する」、「処理」
を実行する点で共通している。

(カ)引用発明の「表示変更装置100」は、本願発明1の「コンピュータ」に相当する。
また、引用発明の「処理プログラム」と本願発明1の「演出処理プログラム」とは、「処理プログラム」である点で一致している。

イ 上記ア(ア)、(イ)、(オ)、(カ)から、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「ユーザの表示装置にて画像を表示させ、
検出された前記ユーザの目の状態情報を取得し、
目の第1の状態の範囲を示す数値を記憶した記憶部を参照して、取得した前記目の状態情報に基づき、前記ユーザの目の状態が前記第1の状態の範囲から外れていると判定した場合、取得した前記ユーザの目の状態に対応する表示を行うための情報を生成し、
前記生成した情報に基づき、表示する、
処理をコンピュータに実行させるための処理プログラム。」

(相違点1)
本願発明1では、「表示装置」が、「ユーザが装着する装着型の表示装置」であるのに対し、引用発明では、「ディスプレイ装置200」は、「ユーザが装着する装着型の」ものではない点。

(相違点2)
本願発明1では、「表示装置」の表示対象が「実行している所定のゲーム処理のゲーム画像」であるのに対し、引用発明では、「ディスプレイ装置200」の表示対象が何の画像か特定されない点。

(相違点3)
本願発明1では、「記憶部」が「記憶」する「目の第1の状態の範囲を示す数値」が、「ユーザ毎」のものであるのに対し、引用発明では、「ユーザ状態判断テーブル113_1」において「関連付け」られた「特徴点幅の変化条件とその条件を満たす状態情報」に関して、「ユーザ毎」のものであるとは特定されない点。

(相違点4)
本願発明1では、「処理プログラム」が「演出処理プログラム」であるとともに、「前記ユーザの目の状態が前記第1の状態の範囲から外れていると判定した場合」に「取得した前記ユーザの目の状態に対応する」ように「生成」する「情報」が、「取得した前記ユーザの目の状態に対応する演出であって、実行している前記ゲーム処理に新たな演出を与える新たなゲーム処理を、実行している前記ゲーム処理に付加するための情報」であって、「前記生成した情報に基づ」いて「表示」する内容が、「前記新たなゲーム処理を、実行している前記ゲーム処理に付加して表示する」というものであるのに対し、引用発明では、「処理プログラム」が「演出処理プログラム」であるとは特定されず、「ユーザ状態が「通常」から「見難い」へ変化している場合」に生成する情報が「より見やすい表示レイアウト」であって、当該情報に基づいて「ディスプレイ装置200」で表示する内容が、「表示データの表示レイアウトをより見やすい形式に変更」するものである点。

(2)判断
事案に鑑みて、「ゲーム画像」の「表示」に関するものである点で関連している相違点2,4について、先に、まとめて検討する。
ゲーム画像を表示する表示装置において、ユーザの目の状態を検出し、当該検出された状態に対応する新たな演出をゲーム処理に与える新たなゲーム処理を元のゲーム処理に付加して表示することは、引用文献1〜3には記載されておらず、本願出願日前において周知技術であったともいえない。
ゲーム装置に対するユーザの入力を検出し、当該検出された入力に対応する新たな演出をゲーム処理に与える新たなゲーム処理を元のゲーム処理に付加して表示することは、本願出願日前において公知又は周知の技術的事項であるとしても、本願発明1の相違点2,4に係る構成は、引用発明に当該事項を有機的に組み合わせたものであって、当業者が容易に想到することができたとはいえない。
また、引用発明は、「ユーザ状態」に応じて「より見やすい表示レイアウト」の表示を行うことを目的とするものであり、このことから、当業者において、ゲーム処理に新たな演出を与えることに関する上記技術的事項を引用発明に適用する動機付けは見出せない。
よって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用文献1〜3に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2〜5について
本願発明2〜4は、本願発明1を減縮した発明である。また、本願発明5は、実質的に本願発明1と発明のカテゴリが相違するのみである。
したがって、本願発明2〜5は、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても引用文献1〜3に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1〜5は、当業者が引用文献1〜3に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-12-07 
出願番号 P2016-154958
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 稲葉 和生
特許庁審判官 小田 浩
富澤 哲生
発明の名称 演出処理プログラム及び情報処理装置  
代理人 伊東 忠重  
代理人 伊東 忠彦  

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