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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02J
管理番号 1380783
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-03-08 
確定日 2021-11-25 
事件の表示 特願2017− 69769「充電装置及び充電ユニット」拒絶査定不服審判事件〔平成30年11月 8日出願公開、特開2018−174621〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年3月31日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 2年11月13日付け:拒絶理由通知
令和 3年 1月13日 :意見書、手続補正書の提出
令和 3年 2月 3日付け:拒絶査定(以下、「原査定」という。)
令和 3年 3月 8日 :審判請求書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1ないし6に係る発明は、令和3年1月13日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。

「【請求項1】
端末装置用の充電装置であって、
前記端末装置が載置されるベース部と、
前記ベース部から上方向に延伸し、前記ベース部に載置された前記端末装置と対向する背もたれ部と、
前記背もたれ部の、前記端末装置と対向する第1の面と表裏の関係にある第2の面側に設けられる第1の磁石と、
を有し、
前記ベース部の底面側に設けられる第2の磁石をさらに有する充電装置。」

第3 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち本願発明については次のとおりである。
この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1、6ないし8に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特開2014−158320号公報
6.特開2003−101626号公報(周知技術を示す文献)
7.実願昭56−045005号(実開昭57−159339号)のマイクロフィルム(周知技術を示す文献)
8.特開2015−023614号公報(周知技術を示す文献)

第4 引用文献、引用発明
1 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2014−158320号公報)には、図面とともに、次の記載がある。

「【0014】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した充電用クレードルの実施形態を図1〜図3を参照して説明する。
【0015】
無線式のティーチペンダントを充電するためのクレードル(以下、単にクレードルという)は、図1に示すようにクレードルの筐体10と、AC/DCアダプタ30を有する。なお、図1では説明の便宜上、AC/DCアダプタ30の大きさは、筐体10の大きさよりも誇張して大きく図示されている。無線式のティーチペンダントは無線通信装置に相当する。
【0016】
図1に示すように筐体10は、上下方向に延びる背側側壁11と、背側側壁11の下部前面に設けられて上面を開放した受け凹部12を有する受台13を備えている。なお、図1では、説明の便宜上、筐体10及びティーチペンダントTPを断面視した上で、回路及び機能ブロックを合わせて簡略化して図示している。
【0017】
受け凹部12は、ティーチペンダントTPの下部を収納可能に設けられるとともに、ティーチペンダントTPの下部を受け凹部12に収納した際に、背側側壁11は、ティーチペンダントTPの背面を支持する。」

「【0019】
図1及び図2に示すようにAC/DCアダプタ30は、ケース32内に設けられて交流を所定電圧の直流に変換処理を行なう変換回路34を備えている。前記変換回路34は、公知のトランス方式またはスイッチング方式のいずれであってもよい。変換回路34の入力側は、前記ケース32から延出された入力用コード35を介して図示しない電源コンセントに差し込まれるプラグ36を有する。また、変換回路34の図示しない二次側出力端子は出力用コード38を介して前記電力線L1,L2に接続されている。なお、出力用コード38及び入力用コード35は、説明の便宜上、短くして図示されている。
【0020】
前記ケース32は金属製であって、例えば四角箱状をなし、前記変換回路34とは絶縁して設けられている。なお、ケース32の形状は四角箱状に限定されるものではなく、他の形状であってもよい。ケース32の一つの側壁33、たとえば下部の側壁は平板状に形成されているが、側壁33は、下部側壁に限定されるものではないが、平板状に形成されているところが好ましい。この側壁33の内面には、前記変換回路34がケース32の他の側面よりも近接して配置されている。この結果、前記変換回路34から側壁33に熱伝達をし易くされている。この側壁33は、図3(a)、(b)に示すようにAC/DCアダプタ30を工場に設けられた鉄製の支持板50、或いは鉄製の支持壁60に対して相対して取付けする際に使用される。側壁33において、変換回路34に近接した領域33aは放熱部に相当する。
【0021】(省略)
【0022】
前記側壁33の外面には、単数または複数の収納凹部40が凹設され、収納凹部40にはマグネット42が収納状態で固定されている。本実施形態では、収納凹部40は複数、たとえば一対設けられている。マグネット42の収納凹部40に対する固定方法は、適宜の方法でよく、限定するものではない。例えば、固定方法としては接着剤による固定等がある。マグネット42は、収納凹部40に対して収納された状態では、マグネット42が外方に露出した面は側壁33と面一となるように平面に形成されている。前記側壁33の外面は、共通側面に相当する。」

「【0025】
(実施形態の作用)
さて、上記のように構成されたクレードルの作用を説明する。
クレードルの筐体10は、図示はしないが、図3(a)に示す支持壁60の近傍の壁等に公知の手段で取付けておく。また、AC/DCアダプタ30を壁掛けのようにして図3(a)の鉄製の支持壁60に対して、側壁33を支持壁60に相対させた状態でマグネット42にて吸着させて支持する。或いは、図3(b)に示すように、例えば、卓上置きのように鉄製の支持板50上に、側壁33を支持板50に相対させた状態でマグネット42にて吸着させて載置(支持)する。本実施形態では、マグネット42が収納凹部40に対して収納された状態では、マグネット42が外方に露出した面は側壁33と面一となるように平面に形成されているため、マグネット42が支持壁60または支持板50を吸着すると、前記側壁33の領域33aは、支持壁60または支持板50に当接する。なお、支持壁60にAC/DCアダプタ30をマグネット42にて取り付ける場合、マグネット42の吸着力は、AC/DCアダプタ30の重量によっても支持壁60から落ちない吸着力を有するものとする。」

「【0035】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を図4及び図5を参照して説明する。なお、第1実施形態と同一構成または相当する構成ついては同一符号を付して、第1実施形態と異なる構成を中心に説明する。本実施形態では、AC/DCアダプタ30が、筐体10に一体に組み付けられているところが前記実施形態と異なっている。
【0036】
図4に示すように、本実施形態では、筐体10の背側側壁11において受台13とは反対側面にアダプタ収納凹部18が形成されている。AC/DCアダプタ30のケース32はアダプタ収納凹部18に全体が収納可能に形成されている。側壁33の上下の両縁部にはフランジ37が上下方向にそれぞれ延出されている。
【0037】
アダプタ収納凹部18の上下両端には、雌ねじ孔18cを有する段部18bが設けられている。AC/DCアダプタ30は、前記段部18bに対し前記フランジ37を当接させた状態で雌ねじ孔18cに螺退可能に螺合する複数の六角穴付きボルト39にて締め付け固定されている。
【0038】
筐体10の背側側壁11の外面は平面に形成されている。そして、背側側壁11の外面、側壁33の領域33aの外面、フランジ37の外面、及びマグネット42の外面は面一となっている。
【0039】(省略)
【0040】(省略)
【0041】
(第2実施形態の作用)
上記のように構成されたクレードルは、図4に示すようにAC/DCアダプタ30が筐体10の背側側壁11に対して一体に組み付けられている。また、背側側壁11の外面、側壁33の領域33aの外面、フランジ37の外面、及びマグネット42の外面は面一となっている。このため、第1実施形態の支持板50また支持壁60に対してマグネット42で吸着することにより筐体10自体を支持板50また支持壁60に取付けすることができる。
【0042】
なお、支持壁60に筐体10をマグネット42にて取り付ける場合、マグネット42の吸着力は、ティーチペンダントTP、筐体10、及びAC/DCアダプタ30の合計重量によっても支持壁60から落ちない吸着力を有するものとする。
【0043】
このよう構成しても、本実施形態では、充電中において、変換回路34の熱は、側壁33の領域33aから、支持壁60または支持板50に伝えられて急速に他の領域に移動して放熱される。この結果、良好にAC/DCアダプタ30の変換回路34の熱を放熱することができる。
【0044】
本実施形態のクレードルによれば、第1実施形態の(1)、(2)、(4)の効果の他に下記の特徴がある。
(1) 本実施形態のクレードルは、AC/DCアダプタ30は、筐体10とは一体に配置されている。この結果、AC/DCアダプタを筐体10と分離した場合に比して、AC/DCアダプタと筐体を個別に支持板または支持壁に取り付ける必要なく、簡便にクレードルを支持板または支持壁に取り付けることができる。」

「図1



「図3



「図4



2 上記記載から、引用文献1には次の技術的事項が記載されているものと認められる。
(1)段落【0015】には、「無線式のティーチペンダントを充電するためのクレードル」が「筐体10とAC/DCアダプタ30を有する」ことが記載されている。
(2)段落【0016】【0017】によれば、「筐体10は、上下方向に延びる背側側壁11と、背側側壁11の下部前面に設けられて上面を開放した受け凹部12を有する受台13を備え」、「ティーチペンダント」「の下部を受け凹部12に収納した際に、背側側壁11」により「ティーチペンダント」「の背面を支持する。」ことを読み取ることができる。
(3)段落【0019】【0020】【0022】及び図1によれば、「AC/DCアダプタ30」の「ケース32」の「側壁33の外面」に「マグネット42が」「固定されている。」から、「AC/DCアダプタ30」に「マグネット42」が「固定されている」ことを読み取ることができる。
(4)段落【0035】によれば、第2実施形態のクレードルは、「AC/DCアダプタ30が筐体10に一体に組み付けられている。」ことを読み取ることができる。
そして、段落【0038】【0041】によれば、AC/DCアダプタ30に固定される「マグネット42」は、その「外面」が「筐体10の背側側壁11の外面」と「面一」となるように設けられることがわかる。また、図4からは、マグネット42が設けられる位置が、背側側壁11のティーチペンダントと対向する面と表裏の関係にある面側であることを見て取ることができる。

3 したがって、第2実施形態のクレードルに着目すると、上記(1)ないし(4)から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「無線式のティーチペンダントを充電するためのクレードルであって、
筐体10と、筐体10に一体に組み付けられマグネット42が固定されるAC/DCアダプタ30とを有し、
筐体10は、上下方向に延びる背側側壁11と、背側側壁11の下部前面に設けられて上面を開放した受け凹部12を有する受台13を備え、ティーチペンダントの下部を受け凹部12に収納した際に、背側側壁11によりティーチペンダントの背面を支持し、
マグネット42は、外面が筐体10の背側側壁11の外面と面一となるように、背側側壁11のティーチペンダントと対向する面と表裏の関係にある面側に設けられている、
クレードル。」

第5 対比
1 本願発明と引用発明とを対比すると次のことがいえる。
(1)引用文献1の段落【0015】には、「無線式のティーチペンダントは無線通信装置に相当する」と記載されている。また、本願発明の「端末装置」は、本願明細書の段落【0014】に「端末装置は、タブレット端末、スマートフォン、携帯電話、POS(point of sale)端末等が例示される」と記載されているから、無線通信装置を含むものである。よって、引用発明の「無線式のティーチペンダント」は、本願発明の「端末装置」に相当する。また、引用発明の「無線式のティーチペンダントを充電するためのクレードル」は、本願発明の「端末装置用の充電装置」に相当する。

(2)引用発明の「受台13」は「上面を開放した受け凹部12」を有するものであり、この「受け凹部12」は「ティーチペンダントの下部を」「収納」するから、「受台13」の「受け凹部12」にはティーチペンダントが載置されるといえる。
よって、引用発明の「受台13」は、本願発明の「前記端末装置が載置されるベース部」に相当する。

(3)引用発明の「背側側壁11」は、「上下方向に延びる」ものであり、その「下部前面に」「受け凹部12を有する受台13」が設けられるから、「受台13」に対して上方向に延伸しているといえる。
よって、引用発明の「背側側壁11」は、本願発明の「前記ベース部から上方向に延伸」する「背もたれ部」に相当する。
また、引用発明の「背側側壁11」が「ティーチペンダントの下部を受け凹部12に収納した際に」「ティーチペンダントの背面を支持」することは、本願発明の「背もたれ部」が「前記ベース部に載置された前記端末装置と対向する」ことに相当する。

(4)引用発明の「マグネット42」は、「外面が筐体10の背側側壁11の外面と面一となるように、背側側壁11のティーチペンダントと対向する面と表裏の関係にある面側に設けられている」から、本願発明の「前記背もたれ部の、前記端末装置と対向する第1の面と表裏の関係にある第2の面側に設けられる第1の磁石」に相当する。

(5)本願発明では、「前記ベース部の底面側に設けられる第2の磁石をさらに有する」のに対して、引用発明にはその旨の特定がない点で相違する。

2 したがって、上記(1)ないし(5)によれば、本願発明と引用発明とは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「端末装置用の充電装置であって、
前記端末装置が載置されるベース部と、
前記ベース部から上方向に延伸し、前記ベース部に載置された前記端末装置と対向する背もたれ部と、
前記背もたれ部の、前記端末装置と対向する第1の面と表裏の関係にある第2の面側に設けられる第1の磁石と、
を有する充電装置。」

(相違点)
本願発明では、「前記ベース部の底面側に設けられる第2の磁石をさらに有する」のに対して、引用発明にはその旨の特定がない点。

第6 判断
上記相違点について検討する。
「充電装置を安定して載置面に載置するために、充電装置の底面に磁石を設ける」技術は、例えば、引用文献6(特開2003−101626号公報、段落【0004】【0011】及び図1−2を参照)、引用文献7(実願昭56−045005号(実開昭57−159339号)のマイクロフィルム、第1頁第16行ないし第2頁第6行及び図面を参照)に記載されているとおり周知の技術である。
ここで、引用発明のクレードルは、段落【0025】【0041】、図3によれば、壁掛けのようにして支持壁60に取り付けるだけでなく、卓上置きのように支持板50にも取り付けられるものであるから、受台13の底面を支持板50などの他の物体上に載置することも普通に想定されるものである。
そして、引用発明のクレードルにおいても、支持板50などの他の物体上に載置する際、安定して載置することが望まれることは当然のことであるから、引用発明に上記周知技術を採用して、受台13の底面に磁石を設けて上記相違点に係る構成とすることは当業者が容易になし得たことである。
また、本願発明の効果も、引用発明と周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願の請求項1に係る発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

第7 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2021-09-14 
結審通知日 2021-09-21 
審決日 2021-10-05 
出願番号 P2017-069769
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H02J)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 永井 啓司
山本 章裕
発明の名称 充電装置及び充電ユニット  
代理人 速水 進治  

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