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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 E04B
管理番号 1380793
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-03-15 
確定日 2022-01-11 
事件の表示 特願2018− 61549「耐火被覆構造及びその施工方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年10月10日出願公開、特開2019−173347、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成30年3月28日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和1年 6月20日付け:拒絶理由通知書
令和1年 8月 7日 :意見書、手続補正書の提出
令和2年 1月 9日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書
令和2年 3月17日 :意見書の提出
令和2年 7月14日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書
令和2年 9月17日 :意見書の提出
令和2年12月 7日付け:拒絶査定
令和3年 3月15日 :審判請求書の提出


第2 原査定の概要
原査定(令和2年12月7日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1ないし4に係る発明は、以下の引用文献1及び2に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2017−101387号公報
2.COMMERCIAL WALL 2017.4,ニチハ株式会社,2017年4月


第3 本願発明
本願の請求項1ないし4に係る発明は、令和1年8月7日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される、以下のとおりのものと認められる(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明4」という。)。

「 【請求項1】
面材と、
前記面材の一方側の面に一体に設けられた胴縁と、
前記胴縁の前記面材側とは反対側に間隔をおき且つ前記胴縁に沿って延びるように設けられた鉄骨構造材と、
前記面材の前記一方側の前記胴縁及び前記鉄骨構造材を覆うとともに、前記胴縁と前記鉄骨構造材との間を掛け渡すように設けられた耐火被覆層と、
を備え、
前記耐火被覆層における前記胴縁と前記鉄骨構造材との間の掛け渡し部分が、耐火被覆吹付材の固化物のみで形成されていることを特徴とする耐火被覆構造。
【請求項2】
請求項1に記載された耐火被覆構造において、
前記掛け渡し部分が構成される前記胴縁と前記鉄骨構造材との間の間隔が45mm未満であることを特徴とする耐火被覆構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された耐火被覆構造において、
前記耐火被覆層が掛け渡す前記胴縁の面及び前記鉄骨構造材の面が同一平面上にあることを特徴とする耐火被覆構造。
【請求項4】
面材と、前記面材の一方側の面に一体に設けられた胴縁と、前記胴縁の前記面材側とは反対側に間隔をおき且つ前記胴縁に沿って延びるように設けられた鉄骨構造材とを備えた耐火被覆構造の施工方法であって、
前記面材の前記一方側の前記胴縁及び前記鉄骨構造材を覆うとともに、前記胴縁と前記鉄骨構造材との間を掛け渡すように、耐火被覆吹付材の吹付により耐火被覆層を設け、且つ前記耐火被覆層における前記胴縁と前記鉄骨構造材との間の掛け渡し部分を、前記耐火被覆吹付材の固化物のみで形成することを特徴とする耐火被覆構造の施工方法。」


第4 引用発明等について
1 引用文献1について
(1)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、以下の記載がある(下線は当審で付した。以下同様。)。

ア 「【発明が解決しようとする課題】
【0026】
従来の鉄骨柱の合成被覆耐火構造においては、加熱によって壁材2が屋外面2b側に凸に変形するため、離隔部10側面の耐火被覆材3と壁材2に隙間が生じるおそれがあり、特に鋼管柱1の外形寸法が大きくなるほどALC板の屋外面側と屋内面側の温度差が大きくなるとともに、支点からの距離が大きくなることから、その程度が大きくなる。そして、ここから入り込んだ火炎や熱気による鋼材温度の上昇によって鉄骨柱の耐力が低下するおそれがあった。
【0027】
図10は、120分加熱後のALCパネル(壁材2)の横目地の屋外面側(加熱側)の状況を示した写真である。この写真に示すように、横目地はALC素材の熱収縮によって屋外面側から変形、開口していくため、所定の高さごとに配置される横目地部分でも耐火性能が低下するおそれがあった。このため、最も一般的でコストが低い吹付けロックールを用い、横張りの壁材が加熱側に凸に変形しても耐火被覆材の延長部と壁材との境界部に隙間が生じることがなく、横目地の耐火性能を向上した高性能な鉄骨柱の合成被覆耐火構造の開発が求められていた。
【0028】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、壁材が加熱側(屋外側)に凸に加熱変形することを拘束することにより、耐火被覆材の延長部と壁材との境界部に隙間が生じることがなく、さらに、横目地の耐火性能を向上させた鉄骨柱の合成被覆耐火構造およびその施工方法を提供することを目的とする。」

イ 「【発明の効果】
【0033】
本発明に係る鉄骨柱の合成被覆耐火構造は、鉄骨柱に近接する壁材と、その壁材と鉄骨柱の対抗範囲外の部分に吹付け材からなる耐火被覆材を配し、かつ、当該耐火被覆材を、鉄骨柱から壁材まで延長配置した鉄骨柱の合成被覆耐火構造において、鉄骨柱から壁材に向けて延長配置する耐火被覆材の壁材側の端部には、壁材を固定する壁下地材を高さ方向に延在して備え、当該部分で壁材を固定した。このため、加熱時に生じる壁材の反りを拘束し、耐火被覆材との境界部分に開口は発生せず、火炎や熱の流入を防止する。また、壁下地材と鉄骨柱とを連結するために双方間に架設される連結材と、壁下地材と鉄骨柱で構成される空間部を被覆して配される網状体からなる耐火被覆下地材を備え、耐火被覆下地材および、壁材の鉄骨柱の対向面の少なくとも目地部に、吹付け材からなる耐火被覆材を備えた。このため、壁材の鉄骨柱の対向範囲内に吹付けにより配置される耐火被覆材によって横目地部分が保護される。以上により、鉄骨柱の合成被覆耐火構造における耐火性能をより確実に担保することができるという効果を奏する。」

ウ 「【0036】
[実施の形態1]
次に、本発明の実施の形態1について説明する。
図1は、本実施の形態1の鉄骨柱の合成被覆耐火構造の部分透視斜視図であり、図2は、水平断面図である。これらの図に示すように、この合成被覆耐火構造は、鋼管柱1と壁材2と耐火被覆材3と定規アングル4を備える。離隔部10における鋼管柱1と壁材2の離隔距離は100mmとしている。
【0037】
連結材としての下地鋼材5は、L形鋼(例えばL−50×50×6(単位:mm))からなるアングルピース51とブラケット52とからなる。アングルピース51は、鋼管柱1のコーナー部に所定の高さ間隔(例えば900mm)を標準間隔として複数配置される。ブラケット52は、アングルピース51と定規アングル4とを接合するために双方間に架設される。定規アングル4は、鋼管柱1の側面1bの延長線上の壁材2の屋内面2aに沿って横目地94を跨ぐ態様で上下に延在している。壁材2はファスナー6で定規アングル4に固定される。図1、図2では、ファスナー6としてフックボルトを用いた例を示している。フックボルトは締結後に定規アングル4に溶接して固定するが、このようにする代わりに、従来例の図8および図9に示すように、イナズマプレートを用いてもよい。なお、壁材2の縦目地91内部には耐火バックアップ材93が配置されるが、横目地94内部には耐火バックアップ材は配置していない。
【0038】
耐火被覆材3は、鋼管柱1の前面1aを除く外周面と離隔部10の側面に力骨7を介して配置されたラス8に吹付け施工される。ここで、ラス8への吹付けに際しては、その網目を通して横目地94を含む壁材2の屋内面2aにも吹付ける(図示せず)。ラス8の網目は小さいほうが耐火性能上(被覆材の非損傷性上)有利であるが、本実施の形態においては、網目を通した壁材2の屋内面2aへの吹付けのため、所定の強度を有する範囲で大きいほうがよい。壁材2の屋内面2aに吹付ける耐火被覆材3の被覆厚さは特に規定しないが、吹付けロックウールは、袋入りの粒状ロックウールをほぐしてセメントスラリーとともに吹き付けるため、菱形状の網目の対角線の長さがそれぞれ32±3mm以上および16±3mm以上とすると、通常施工においても一定量のロックウールを通過させることができる。例えば、図3に示す検証試験では、壁材2の屋内面2aに吹付けロックウールを10mm程度以上積層することができた。
【0039】
このように、本実施の形態によれば、定規アングル4が鋼管柱1の側面1bの延長線上、すなわち、ラス8を下地とした耐火被覆材3と一体となり、かつ、当該部分で壁材2をファスナー6によって固定しているので、加熱時に壁材2が屋外面2b側に凸に変形しようとする力が作用しても、当該部分で開きを生じることがない。したがって、別途バックアップ材を壁材2に配置しなくても、離隔部10内部に火炎および熱気が直接侵入してくることはない。」

エ 図1及び図2




オ 上記ウの記載に照らして、上記エの図1及び2から、下記事項が看取される。
(ア)鋼管柱1は、定規アングル4の壁材2とは反対側に離隔部10を介して位置し、鋼管柱1及び定規アングル4はともに上下方向に延びていること。
(イ)耐火被覆材3は、鋼管柱1及び定規アングル4並びに両者の間にあるラス8を連続して被覆していること。
(ウ)鋼管柱1と定規アングル4との間には、耐火被覆材3、アングルピース51とブラケット52とからなる下地鋼材5、力骨7及びラス8が設けられること。

(2)引用文献1記載の発明
上記(1)の記載を踏まえると、引用文献1には、以下の2の発明(以下、それぞれ「引用発明1」及び「引用方法発明1」という。)が記載されていると認められる。
引用発明1
「鋼管柱1と壁材2と耐火被覆材3と定規アングル4を備え、
鋼管柱1は、定規アングル4の壁材2とは反対側に離隔部10を介して位置し、鋼管柱1及び定規アングル4はともに上下方向に延びており、
連結材としての下地鋼材5は、アングルピース51とブラケット52とからなり、
アングルピース51は、鋼管柱1のコーナー部に所定の高さ間隔で複数配置され、
ブラケット52は、アングルピース51と定規アングル4とを接合するために双方間に架設され、
壁材2がファスナー6で定規アングル4に固定され、
耐火被覆材3は、鋼管柱1の前面1aを除く外周面と離隔部10の側面に力骨7を介して配置されたラス8に吹付け施工され、
耐火被覆材3は、鋼管柱1及び定規アングル4並びに両者の間にあるラス8を連続して被覆し、
鋼管柱1と定規アングル4との間には、耐火被覆材3、アングルピース51とブラケット52とからなる下地鋼材5、力骨7及びラス8が設けられる、
合成被覆耐火構造。」

引用方法発明1
「鋼管柱1と壁材2と耐火被覆材3と定規アングル4を備え、
鋼管柱1は、定規アングル4の壁材2とは反対側に離隔部10を介して位置し、鋼管柱1及び定規アングル4はともに上下方向に延びており、
連結材としての下地鋼材5は、アングルピース51とブラケット52とからなり、
アングルピース51は、鋼管柱1のコーナー部に所定の高さ間隔で複数配置され、
ブラケット52は、アングルピース51と定規アングル4とを接合するために双方間に架設され、
壁材2がファスナー6で定規アングル4に固定され、
耐火被覆材3は、鋼管柱1の前面1aを除く外周面と離隔部10の側面に力骨7を介して配置されたラス8に吹付け施工され、
耐火被覆材3は、鋼管柱1及び定規アングル4並びに両者の間にあるラス8を連続して被覆し、
鋼管柱1と定規アングル4との間には、耐火被覆材3、アングルピース51とブラケット52とからなる下地鋼材5、力骨7及びラス8が設けられる、
合成被覆耐火構造の施工方法。」

2 引用文献2について
(1)引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、以下の記載がある。
ア 「2−7 柱1時間耐火構造 FP060CN−0610 主要構成部材
外装材:モエンエクセラード(アドヴァンスは除く)縦張り[通気留付金具]
防水紙:透湿防水シート・遮熱シート
屋外側被覆材:センチュリー耐火野地板(CPN1800・CPN2500)
胴縁材:鉄骨胴縁(C形鋼または角形鋼管)
断熱材:グラスウール10K厚さ50mm以上 または ロックウール20K50mm以上、またはなし
屋内側被覆材:強化せっこうボード(厚さ12.5mm以上)/2重張り
鉄骨柱と外壁の間:力骨φ9mm @455mm以下 メタルラス
鋼管柱:角形鋼管 □−300×300×9mm以上」(第124頁)

イ 第124頁の図面(枠囲みは刊行物提出人が付した。)






ウ 上記アの記載及び技術常識を踏まえると、上記イの図面から、下記事項が看取される。
(ア)「鋼管柱」、径9mmであって455mm以下の間隔で配置された「力骨」及び「メタルラス」は、厚さ25mm以上の「吹付ロックウール」で被覆されていること。
(イ)「鋼管柱」側の面が厚さ12.5mm以上の「強化せっこうボード」である壁部材と「鋼管柱」との間の間隔は、「175以下(45以下の場合、吹付下地は省略できる)」であること。

(2)引用文献2記載の技術事項
上記(1)アの記載及び上記(1)イの図面に照らして、上記(1)アの「鉄骨柱」と「鋼管柱」とが同じ柱部材を意味し、上記(1)イの図面における「鋼管柱」に対応することは明らかである(以下、「鋼管柱」として表記を統一する。)。
また、上記(1)イ及びウの「鋼管柱」側の面が厚さ12.5mm以上の「強化せっこうボード」である壁部材、径9mmであって455mm以下の間隔で配置された「力骨」、「メタルラス」は、それぞれ上記(1)アの「外壁」、「力骨」、「メタルラス」に対応したものであることは明らかである。
さらに、上記(1)ア及びイの「mm」との記載及び建築図面上の単位表記は「mm」が一般であることに照らして、上記(1)ウ(イ)の「175以下(45以下の場合、吹付下地は省略できる)」との記載は、「175mm以下であって、45mm以下の場合、吹付下地は省略できる」ことを意味することは明らかである。
よって、上記(1)の記載を踏まえると、引用文献2には、以下の技術事項(以下「引用技術事項2」という。)が記載されていると認められる。
引用技術事項2
「柱の耐火構造において、
主要構成部材として、鋼管柱、外壁、並びに、鋼管柱と外壁との間の力骨及びメタルラスを備え、
鋼管柱、力骨及びメタルラスは、吹付ロックウールで被覆され、
外壁と鋼管柱との間の間隔は、175mm以下であって、45mm以下の場合、吹付下地は省略できる点。」


第5 対比・判断
1 請求項1
(1)対比
本願発明1と引用発明1を対比する。
ア 引用発明1の「壁材2」は、本願発明1の「面材」に相当する。

イ 引用発明1の「壁材2がファスナー6で」「固定され」る「定規アングル4」は、本願発明1の「前記面材の一方側の面に一体に設けられた胴縁」に相当する。

ウ 引用発明1の「鋼管柱1」は、本願発明1の「鉄骨構造材」に相当する。
また、引用発明1の「鋼管柱1」について「定規アングル4の壁材2とは反対側に離隔部10を介して位置し、鋼管柱1及び定規アングル4はともに上下方向に延びて」いることは、本願発明1の「鉄骨構造材」について「前記胴縁の前記面材側とは反対側に間隔をおき且つ前記胴縁に沿って延びるように設けられた」ことに相当する。

エ 引用発明1の「鋼管柱1と定規アングル4との間には、耐火被覆材3、アングルピース51とブラケット52とからなる下地鋼材5、力骨7及びラス8が設けられる」点について検討する。

(ア)引用発明1の「耐火被覆材3」が「鋼管柱1及び定規アングル4並びに両者の間にあるラス8を連続して被覆し」ていることは、耐火被覆材3が鋼管柱1及び定規アングル4を被覆するとともに両者の間に架設されることを意味するから、引用発明1の「耐火被覆材3」は、鋼管柱1と定規アングル4との間に架設されるものであるといえる。

(イ)また、引用発明1の「アングルピース51とブラケット52とからな」る「連結材としての下地鋼材5」は、「アングルピース51は、鋼管柱1のコーナー部に所定の高さ間隔で複数配置され、ブラケット52は、アングルピース51と定規アングル4とを接合するために双方間に架設され」るものであるから、鋼管柱1及び定規アングル4を連結するものであって、両者の間に架設されるものであるといえる。

(ウ)さらに、引用発明1の「力骨7」及び「離隔部10の側面に力骨7を介して配置され」る「ラス8」は、耐火被覆材3が「吹付け施工され」る下地材といえるものであって、上記(ア)の耐火被覆材3と同様、鋼管柱1と定規アングル4との間に架設されるものであるといえる。

(エ)上記(ア)ないし(ウ)のとおり、引用発明1の「耐火被覆材3、アングルピース51とブラケット52とからなる下地鋼材5、力骨7及びラス8」は、いずれも鋼管柱1と定規アングル4との間に架設されるものであって、耐火被覆材3を有する層構造を一体的に成しているといえ、本願発明1の「前記面材の前記一方側の前記胴縁及び前記鉄骨構造材を覆うとともに、前記胴縁と前記鉄骨構造材との間を掛け渡すように設けられた耐火被覆層」及び「前記耐火被覆層における前記胴縁と前記鉄骨構造材との間の掛け渡し部分」に相当する。

オ 引用発明1の「耐火被覆材3」は、「離隔部10の側面に力骨7を介して配置されたラス8に吹付け施工され」るものであって、技術常識に照らして、吹付け施工されて固化したものであることは明らかである。

カ 上記エ(エ)及びオを踏まえると、引用発明1の「鋼管柱1と定規アングル4との間には、耐火被覆材3、アングルピース51とブラケット52とからなる下地鋼材5、力骨7及びラス8が設けられる」ことと、本願発明1の「前記耐火被覆層における前記胴縁と前記鉄骨構造材との間の掛け渡し部分が、耐火被覆吹付材の固化物のみで形成されている」こととは、「耐火被覆層における胴縁と鉄骨構造材との間の掛け渡し部分が、耐火被覆吹付材の固化物を有している」点で共通する。

キ 以上のことから、本願発明1と引用発明1とは、次の一致点で一致し、相違点1で相違する。

(一致点)
「面材と、
前記面材の一方側の面に一体に設けられた胴縁と、
前記胴縁の前記面材側とは反対側に間隔をおき且つ前記胴縁に沿って延びるように設けられた鉄骨構造材と、
前記面材の前記一方側の前記胴縁及び前記鉄骨構造材を覆うとともに、前記胴縁と前記鉄骨構造材との間を掛け渡すように設けられた耐火被覆層と、
を備え、
前記耐火被覆層における前記胴縁と前記鉄骨構造材との間の掛け渡し部分が、耐火被覆吹付材の固化物を有している耐火被覆構造。」

(相違点1)
耐火被覆層における胴縁と鉄骨構造材との間の掛け渡し部分について、本願発明1では、耐火被覆吹付材の固化物「のみで形成されている」のに対し、引用発明1では、吹付け施工されて固化したものである耐火被覆材3を有するものの、アングルピース51とブラケット52とからなる下地鋼材5、力骨7及びラス8も有する点。

(2)判断
上記相違点1について検討する。
ア 引用技術事項2には、「外壁と鋼管柱との間の間隔」が「45mm以下の場合、吹付下地は省略」する点が記載されているところ、引用発明1のように、外壁よりも鋼管柱側に、外壁と一体となっている部材が存在する場合、すなわち、引用発明1の「壁材2」が「定規アングル4」に固定されている場合に、当該「定規アングル4」と「鋼管柱1」との間に、引用技術事項2の上記構成を適用する動機付けがあるかについて検討する。

イ 引用発明1の合成被覆耐火構造は、上記(1)エのとおり、耐火被覆層としての耐火被覆材3の他に下地鋼材5、力骨7及びラス8が設けられるものであって、下地鋼材5は、上記(1)エ(イ)のとおり、鋼管柱1及び定規アングル4の間に架設され両者を連結する下地材であるし、力骨7及びラス8は、上記(1)エ(ウ)のとおり、耐火被覆材3が吹付け施工される下地材である。
以上のような引用発明1の合成被覆耐火構造の構造に照らすと、引用発明1の合成被覆耐火構造において、下地鋼材5は、定規アングル4及び鋼管柱1を含む合成被覆耐火構造としての構造耐力に寄与しているとともに、力骨7及びラス8は、耐火被覆材3の強度付与に寄与していると認められ、引用文献1には、壁材が加熱側(屋外側)に凸に加熱変形することを拘束することを課題とし、効果とすることが記載されていることに照らすと(上記第4の1(1)ア及びイを参照。)、引用発明1の合成被覆耐火構造において、引用技術事項2を適用し、定規アングル4と鋼管柱1との間の間隔を45mm以下とするとともに、構造耐力や強度付与に寄与する下地鋼材5、力骨7及びラス8を省略する動機付けがあるとはただちにはいえない。

ウ そして、上記イのとおり、引用発明1の下地鋼材5は、鋼管柱1及び定規アングル4の間に架設され両者を連結するものであって、合成被覆耐火構造としての構造耐力を担うものであるから、下地鋼材5、力骨7及びラス8のうち少なくとも下地鋼材5を省略することには阻害要因があるといえる。
よって、仮に、引用発明1において、引用技術事項2の「吹付下地は省略できる」点を適用したとしても、耐火被覆層は、依然として耐火被覆材3の他に少なくとも下地鋼材5を含み、耐火被覆層における胴縁と鉄骨構造材との間の掛け渡し部分が、耐火被覆吹付材の固化物「のみで形成されている」という相違点1に係る本願発明1の構成には至らない。

エ したがって、引用発明1に、引用技術事項2の構成を適用して、相違点1に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。

(3)小括
以上検討したように、本願発明1は、当業者であっても引用発明1及び引用技術事項2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 請求項2及び3
(1)対比及び判断
本願発明2及び3は、本願発明1の構成を全て含み、さらに付加的構成を加えた発明であるから、上記1の本願発明1に係る検討と同様に、引用発明1及び引用技術事項2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)小括
以上検討したように、本願発明2及び3は、当業者であっても引用発明1及び引用技術事項2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

3 請求項4
(1)対比及び判断
本願発明4は、耐火被覆構造の施工方法であって、本願発明1の構成を全て含み、さらに胴縁と鉄骨構造材との間を掛け渡すように設ける耐火被覆層について「耐火被覆吹付材の吹付によ」るという限定を付加した発明である。
引用方法発明1の耐火被覆材3は、「吹付け施工され」るものであって、耐火被覆吹付材の吹付によるものといえるから、本願発明4と引用方法発明1とは、上記1(1)キの相違点1と同様の相違点1’で相違し、その余の点で一致する。
上記相違点について検討すると、相違点1については、上記1(2)において検討したとおりであって、相違点1’についても同様である。
よって、本願発明4は、引用方法発明1及び引用技術事項2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)小括
以上検討したように、本願発明4は、当業者であっても引用方法発明1及び引用技術事項2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。


第6 原査定について
1 理由(特許法第29条第2項)について
本願発明1ないし4は、上記第5で示した対比及び判断のとおり、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1及び2に記載された事項に基いて、容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。


第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-12-20 
出願番号 P2018-061549
審決分類 P 1 8・ 121- WY (E04B)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 長井 真一
特許庁審判官 西田 秀彦
田中 洋行
発明の名称 耐火被覆構造及びその施工方法  
代理人 特許業務法人前田特許事務所  
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