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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05K 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H05K 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H05K |
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管理番号 | 1380807 |
総通号数 | 1 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2022-01-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-03-22 |
確定日 | 2022-01-06 |
事件の表示 | 特願2019− 4591「プリント配線板の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 7月27日出願公開、特開2020−113681、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成31年1月15日の出願であって、令和元年10月8日付けで拒絶理由通知がされ、令和元年12月9日に手続補正がされ、令和2年6月4日付けで拒絶理由通知がされ、令和2年7月28日に手続補正がされ、令和2年12月21日付けで拒絶査定され、令和3年3月22日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がされ、令和3年9月8日付けで当審による拒絶理由通知がされ、令和3年11月8日に手続補正がされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1ないし4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明4」という。)は、令和3年11月8日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である(下線は補正箇所を示す。)。 「【請求項1】 絶縁材料からなるベース材と、パッドと、回路パターンと、回路パターンを被覆するソルダレジストとを有し、前記パッドの表面の一部または全部を、ソルダレジストのない非被覆領域に配置したプリント配線板であって、 前記ソルダレジストの前記非被覆領域側の縁部に、前記ベース材と接する第一層と当該第一層の上に重なった第二層とを設け、前記第一層および第二層が、前記各層の非被覆領域側の端部を含めて、それぞれスクリーン印刷して硬化させることで形成され、前記第一層が第一樹脂材を硬化させて形成されると共に、前記第二層が、前記第一樹脂材と異なる第二樹脂材を硬化させて形成され、 前記第二層の前記非被覆領域側の端部における第二層の厚さ方向全体が、前記第一層の前記非被覆領域側の端部よりも前記パッドから離れる方向に後退したプリント配線板を製造する際に、 前記第一樹脂材の粘度を、前記第二樹脂材の粘度よりも高くし、前記第二層の前記非被覆領域側の端部が、前記ベース材側ほど前記パッド側に張り出すように傾斜し、前記第一層の非被覆領域側の端部が、前記第二層の端部よりも垂直面に近くなる形状にしたことを特徴とするプリント配線板の製造方法。 【請求項2】 前記第一層を、前記非被覆領域の周囲のみに設けた請求項1に記載のプリント配線板の製造方法。 【請求項3】 前記第一層を、パッドから離隔させて設けた請求項1または2に記載のプリント配線板の製造方法。 【請求項4】 前記第一層を、パッドの縁部上に設けた請求項1または2に記載のプリント配線板の製造方法。」 第3 当審における拒絶の理由 令和3年9月8日付けで通知した、当審における拒絶理由の概要は、以下のとおりである。 「理由1 この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の引用文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 ・請求項1−4 ・引用文献1 ・請求項5 ・引用文献1、引用文献2−3 <引用文献等一覧> 1.特開昭61−110490号公報 2.特開平5−235522号公報(周知技術を示す文献) 3.国際公開第2009/104506号(周知技術を示す文献) 理由2 この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第4号に規定する要件を満たしていない。 (請求項3ないし5について) 請求項3の末尾には「・・・請求項1〜3の何れか1項に記載のプリント配線板」と記載されているため、請求項3は、請求項3自身を引用している。 したがって、請求項3及びこの請求項を引用する請求項4、5の記載は、経済産業省令で定めるところにより記載されたものではない。」 なお、令和3年11月8日に手続補正により、上記理由2は解消している。 第4 引用文献、引用発明等について 1 引用文献1について (1)引用文献1に記載された事項について 引用文献1(特開昭61−110490号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている(なお、下線は当審で付与した。)。 ア 「産業上の利用分野 本発明は高密度実装に適したプリント基板へのレジスト膜形成方法に関するものである。」(第1頁左下欄第11ないし13行) イ 「発明の目的 本発明はこのような問題点を解決するもので、高い精度でレジスト膜を形成できるようにすることを目的とするものである。」(第1頁右下欄第13ないし16行) ウ 「実施例の説明 本発明の実施例を第5図〜第8図に示しており、積層板上の銅箔を所定の回路になるようにエッチングすることにより配線パターンを形成したプリント基板1において、そのプリント基板1上のランド3の周囲に1次ソルダーレジスト膜5をスクリーン印刷により形成し、その後導体引廻し部分7のランド3を除いた全面に2次ソルダーレジスト膜6をスクリーン印刷により形成するものである。 この時、2次ソルダーレジスト膜6は1次ソルダーレジスト膜5上に若干乗った形で形成し、1次ソルダーレジスト膜5のランド側端面よりランド3側へ入らないように構成している。」(第2頁左上欄第3ないし16行) エ 「発明の効果 一般に、ランドを除いた全面にソルダーレジスト膜を印刷形成する構成において、ソルダーレジスト印刷用スクリーンはメツシュの目詰めをほとんど取除いた形となり、スクリーンの強度(伸びに対して)は全面目詰めされたものに対して低下してくる。更にソルダーレジストインキをプリント基板の全面に近い形で印刷する場合、スキージ圧を上げていく必要がある。 上記2点を見た場合、ランドに対してソルダーレジスト印刷時のスクリーンの伸びにズレやソルダーレジストインキのニジミ等が発生しやすくなる。 この点本発明によれば、ソルダーレジストのズレやインキのニジミが出てはならないランドに近接した周囲に対しては、スクリーンの伸びやスキージ圧を低くできるように、インキの出る部分を少なくし、ランドから離れたソルダーレジストのズレやインキのニジミが発生しても問題とならない所は、全面にソルダーレジスト膜を形成するように1次と2次に分けてスクリーン印刷を行なうことによりランドへのソルダーレジストの付着を防止しており、高密度実装を図れるプリント基板を提供することができる。」(第2頁右上欄第1行から同頁左下欄第4行) オ 図面第7図及び第8図には、「1次ソルダーレジスト膜5」が「導体引き回し部分7」の一部を覆っていることが記載されている。 (2)引用文献1に記載された技術事項について ア 上記(1)アより、引用文献1は「プリント基板へのレジスト膜形成方法」についてのものである。 イ 上記(1)ウより、「積層板上」「に」「配線パターンを形成したプリント基板1に」、「そのプリント基板1上のランド3の周囲に1次ソルダーレジスト膜5をスクリーン印刷により形成し、その後導体引廻し部分7のランド3を除いた全面に2次ソルダーレジスト膜6をスクリーン印刷により形成する」との技術事項を読み取ることができる。 ウ 上記(1)オより、「1次ソルダーレジスト膜5」が「導体引き回し部分7の一部を覆」うとの技術事項を読み取ることができる。 エ 上記(1)ウより、「この時、2次ソルダーレジスト膜6は1次ソルダーレジスト膜5上に若干乗った形で形成し、1次ソルダーレジスト膜5のランド側端面よりランド3側へ入らないように構成」するとの技術事項を読み取ることができる。 オ 上記(1)イ、エより、「ソルダーレジストのズレやインキのニジミが出てはならないランドに近接した周囲に対しては、スクリーンの伸びやスキージ圧を低くできるように、インキの出る部分を少なくし、ランドから離れたソルダーレジストのズレやインキのニジミが発生しても問題とならない所は、全面にソルダーレジスト膜を形成するように1次と2次に分けてスクリーン印刷を行なうことによりランドへのソルダーレジストの付着を防止し」、「高い精度でレジスト膜を形成でき」、「高密度実装を図れる」との技術事項を読み取ることができる。 (3)引用文献1に記載された発明について 上記(2)アないしオから、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「プリント基板へのレジスト膜形成方法であって、 積層板上に配線パターンを形成したプリント基板1に、そのプリント基板1上のランド3の周囲に1次ソルダーレジスト膜5をスクリーン印刷により形成し、その後導体引廻し部分7のランド3を除いた全面に2次ソルダーレジスト膜6をスクリーン印刷により形成し、 1次ソルダーレジスト膜5が導体引き回し部分7の一部を覆い、 この時、2次ソルダーレジスト膜6は1次ソルダーレジスト膜5上に若干乗った形で形成し、1次ソルダーレジスト膜5のランド側端面よりランド3側へ入らないように構成し、 ソルダーレジストのズレやインキのニジミが出てはならないランドに近接した周囲に対しては、スクリーンの伸びやスキージ圧を低くできるように、インキの出る部分を少なくし、ランドから離れたソルダーレジストのズレやインキのニジミが発生しても問題とならない所は、全面にソルダーレジスト膜を形成するように1次と2次に分けてスクリーン印刷を行なうことによりランドへのソルダーレジストの付着を防止し、高い精度でレジスト膜を形成でき、高密度実装を図れる、 レジスト膜形成方法。」 2 引用文献2について 周知技術を示す文献として引用した引用文献2(特開平5−235522号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている(なお、下線は当審で付与した。)。 「【0012】 【実施例】以下図面を参照し本発明をさらに詳細に説明をする。図1に本発明のポリイミド膜からなるソルダーレジスト層の形成方法の一実施例を示す。ポリイミドフイルム上に銅箔を積層形成した基板1上の銅箔面上にノボラック系ポジ型フォトレジスト等のフォトレジストを塗布した後、SMD搭載用パッド2を有する回路のパターンを形成した。 【0013】得られたレジストの回路パターンを用いて塩化第2鉄、塩化第2銅等のエッチング液によって銅箔面をエッチングして回路の形成を行った(図1(a))。」 「【0017】しかる後、ポリアミド酸膜上に形成されたポリアミド酸膜エッチング用レジスト4を剥離液を用いて剥離した後、熱風炉においてポリアミド酸の熱重合反応を促進させ、所定の部分にポリイミド膜からなるソルダーレジスト7を形成した(図1(e))。 【0018】次いで、SMD搭載用パッド上には、パラジウム薄膜7を無電解めっきによって析出させた(図1(e))。」(当審注:「ソルダーレジスト7」とある記載は「ソルダーレジスト6」の誤記である。) 図1 また、図1(e)、(f)には「基板1上のSMD搭載用パッド2の縁部上を含むように、ソルダーレジスト6を形成する」ことが記載されている。 よって、引用文献2には、次の技術(以下「引用文献2に記載された技術」という。)が記載されているものと認められる。 「銅箔を積層形成した基板1上にSMD搭載用パッド2を有する回路の形成を行い、SMD搭載用パッド2の縁部上を含むように、ソルダーレジスト6を形成する」技術。 3 引用文献3について 周知技術を示す文献として引用した引用文献3(国際公開第2009/104506号)には、図面とともに、次の事項が記載されている(なお、下線は当審で付与した。)。 「[0036] まず、本発明の第1実施形態に係るプリント配線板について説明する。図1に本発明の第1実施形態に係るプリント配線板の概略断面図を示す。また、図2に、図1に示すプリント配線板の接続開口部の概略部分平面図を示し、図3に、図2のIII−III線におけるプリント配線板の接続開口部の概略部分断面図を示す。プリント配線板1は、少なくとも1つの配線層(不図示)及び少なくとも1つの絶縁層(不図示)を有する基板4と、電子素子と電気的接続するために、基板4表面に形成されたパッド5と、パッド5が形成された基板4面上を被覆するように形成された絶縁被覆層6と、を備える。絶縁被覆層6には、パッド5の表面の少なくとも一部を露出するように、接続開口部7が形成されている。」 よって、引用文献3には、次の技術(以下「引用文献3に記載された技術」という。)が記載されているものと認められる。 「少なくとも1つの絶縁層を有する基板4と、電子素子と電気的接続するために、基板4表面に形成されたパッド5と、パッド5が形成された基板4面上を被覆するように形成された絶縁被覆層6と、を備え、絶縁被覆層6には、パッド5の表面の少なくとも一部を露出するように、接続開口部7が形成され」る技術。 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明1とを対比する。 ア 引用発明1における「積層板」は、配線パターンを形成してプリント基板1を構成するものであるから、絶縁材料からなることは明らかである。 よって、引用発明1における「積層板」は、本願発明1における「絶縁材料からなるベース材」に相当する。 イ 引用発明1における「ランド3」、「導体引廻し部分7」が、それぞれ、本願発明1における「パッド」、「回路パターン」に相当する。 ウ 引用発明1における「1次ソルダーレジスト膜5」は導体引き回し部分7一部を覆い、「2次ソルダーレジスト膜6」は、導体引廻し部分7のランドを除いた全面にスクリーン印刷により形成している。 よって、引用発明1における「1次ソルダーレジスト膜5」及び「2次ソルダーレジスト膜6」は、どちらも「導体引き回し部分7」を被覆しているから、本願発明1における「回路パターンを被覆するソルダレジスト」に相当する。 エ 引用発明1における「1次ソルダーレジスト膜5」は、「ランド3の周囲」に形成され、「2次ソルダーレジスト膜6」は、「導体引廻し部分7のランド3を除いた全面」に形成されていることから、引用発明1における「ランド3」の表面は、「1次ソルダーレジスト膜5」及び「2次ソルダーレジスト膜6」の何れにも被覆されていないことは明らかである。 よって、本願発明1と引用発明1とは、「前記パッドの表面の一部または全部を、ソルダレジストのない非被覆領域に配置した」点で一致する。 オ 上記「ア」ないし「エ」より、引用発明1における「プリント基板1」が、本願発明1における「絶縁材料からなるベース材と、パッドと、回路パターンと、回路パターンを被覆するソルダレジストとを有し、前記パッドの表面の一部または全部を、ソルダレジストのない非被覆領域に配置したプリント配線板」に相当する。 カ 引用発明1において「プリント基板1上のランド3の周囲に1次ソルダーレジスト膜5をスクリーン印刷により形成し」、「2次ソルダーレジスト膜6は1次ソルダーレジスト膜5上に若干乗った形で形成し、1次ソルダーレジスト膜5のランド側端面よりランド3側へ入らないように構成」することは、「1次ソルダーレジスト膜5」の「ランド側端面」側の縁部に、「1次ソルダーレジスト膜5上に若干乗った形で」、「2次ソルダーレジスト5膜」を備えることを意味している。 したがって、上記エを踏まえれば、引用発明1における「1次ソルダーレジスト膜5」、「2次ソルダーレジスト膜6」が、それぞれ本願発明1の「ソルダレジスト」における「第一層」、「第二層」に相当し、本願発明1と引用発明1とは、「前記ソルダレジストの前記非被覆領域側の縁部に、前記ベース材と接する第一層と当該第一層の上に重なった第二層とを設け」る点で一致する。 キ 引用発明1の「1次ソルダーレジスト膜5」及び「2次ソルダーレジスト膜6」は、「スクリーン印刷により形成」されている。 そして、一般に、スクリーン印刷により形成されるソルダーレジスト膜は、スクリーン印刷後に硬化して形成されるものであるから、引用発明1における「1次ソルダーレジスト膜5」及び「2次ソルダーレジスト膜6」は、「ランド側端面」側の縁部を含めて、それぞれ「スクリーン印刷によって形成」されるものといえる。 よって、引用発明1における「1次ソルダーレジスト膜5」及び「2次ソルダーレジスト膜6」を「スクリーン印刷により形成」することが、本願発明1おける「前記第一層および第二層が、前記各層の非被覆領域側の端部を含めて、それぞれスクリーン印刷して硬化させることで形成され」ることに相当する。 ク 上記「キ」で述べたとおり、引用発明1の「1次ソルダーレジスト膜5」及び「2次ソルダーレジスト膜6」は、スクリーン印刷後に硬化して形成されるものである。 よって、引用発明1における「1次ソルダーレジスト膜5をスクリーン印刷により形成し」、「2次ソルダーレジスト膜6をスクリーン印刷により形成」することと、本願発明1における「前記第一層が第一樹脂材を硬化させて形成されると共に、前記第二層が、前記第一樹脂材と異なる第二樹脂材を硬化させて形成され」ることとは、「前記第一層が第一樹脂材を硬化させて形成されると共に、前記第二層が、第二樹脂材を硬化させて形成され」る点で一致する。 しかしながら、本願発明1は「第二層」の「第二樹脂材」が「第一層」の「第一樹脂材と異な」るのに対し、引用発明1では、材料の特定がされていない点で相違する。 ケ 引用発明1における「2次ソルダーレジスト膜6」は、「1次ソルダーレジスト膜5上に若干乗った形で形成し、1次ソルダーレジスト膜5のランド側端面よりランド3側へ入らないように構成し」ていることから、「2次ソルダーレジスト膜6」は、その「全面」が「1次ソルダーレジスト膜5のランド側端面」よりも「ランド3」から離れる方向に後退していることは明らかである。 してみれば、本願発明1と引用発明1とは、「前記第二層の前記非被覆領域側の端部における第二層の厚さ方向全体が、前記第一層の前記非被覆領域側の端部よりも前記パッドから離れる方向に後退したプリント配線板を製造」するものである点で一致する。 しかしながら、本願発明1では「プリント配線板を製造する際に、前記第一樹脂材の粘度を、前記第二樹脂材の粘度よりも高くし」ているのに対し、引用発明1では、その点が不明な点で相違する。 コ 本願発明1は「前記第二層の前記非被覆領域側の端部が、前記ベース材側ほど前記パッド側に張り出すように傾斜し、前記第一層の非被覆領域側の端部が、前記第二層の端部よりも垂直面に近くなる形状にした」のに対して、引用発明1では、その点が不明な点で相違する。 サ 引用発明1における「プリント基板へのレジスト膜形成方法」は、プリント基板の製造過程の一部を構成するものであるから、本願発明1における「プリント配線板の製造方法」に相当する。 (2)一致点及び相違点 以上のことから、本願発明1と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。 (一致点) 「絶縁材料からなるベース材と、パッドと、回路パターンと、回路パターンを被覆するソルダレジストとを有し、前記パッドの表面の一部または全部を、ソルダレジストのない非被覆領域に配置したプリント配線板であって、 前記ソルダレジストの前記非被覆領域側の縁部に、前記ベース材と接する第一層と当該第一層の上に重なった第二層とを設け、前記第一層および第二層が、前記各層の非被覆領域側の端部を含めて、それぞれスクリーン印刷して硬化させることで形成され、前記第一層が第一樹脂材を硬化させて形成されると共に、前記第二層が、第二樹脂材を硬化させて形成され、 前記第二層の前記非被覆領域側の端部における第二層の厚さ方向全体が、前記第一層の前記非被覆領域側の端部よりも前記パッドから離れる方向に後退したプリント配線板を製造するものである、 プリント配線板の製造方法。」 (相違点1) 本願発明1は「第二層」の「第二樹脂材」が「第一層」の「第一樹脂材と異なる」のに対して、引用発明1では、材料の特定がされていない点。 (相違点2) 本願発明1では「プリント配線板を製造する際に、前記第一樹脂材の粘度を、前記第二樹脂材の粘度よりも高くし」ているのに対し、引用発明1では、その点が不明な点。 (相違点3) 本願発明1は「前記第二層の前記非被覆領域側の端部が、前記ベース材側ほど前記パッド側に張り出すように傾斜し、前記第一層の非被覆領域側の端部が、前記第二層の端部よりも垂直面に近くなる形状である」のに対して、引用発明1では、その点が不明な点。 (3)判断 事案に鑑みて、相違点1及び相違点2について併せて検討する。 ア スクリーン印刷の技術分野において、インキの粘度が高い程、印刷後のニジミが少ないことは、周知の事項である。 イ しかしながら、引用発明1は、「ソルダーレジストのズレやインキのニジミが出てはならないランドに近接した周囲に対しては、スクリーンの伸びやスキージ圧を低くできるように、インキの出る部分を少なくし、ランドから離れたソルダーレジストのズレやインキのニジミが発生しても問題とならない所は、全面にソルダーレジスト膜を形成するように1次と2次に分けてスクリーン印刷を行なう」ものであることからみて、「1次ソルダーレジスト膜5」と「2次ソルダーレジスト膜6」の組成(粘度)は同じであることを前提としたものであるといえる。 ウ よって、引用発明1において、上記「イ」のとおり「1次と2次に分けてスクリーン印刷を行なう」際、「インキの粘度が高い程、印刷後のニジミが少ない」との周知の事項を踏まえても、敢えて「1次ソルダーレジスト膜5」と「2次ソルダーレジスト膜6」の組成(粘度)を異ならせ、「1次ソルダーレジスト膜5」のインキの粘度を「2次ソルダーレジスト膜6」のインキより高いものとする構成を採用する動機を見出すことはできない。 エ また、引用文献2、3にも、上記相違点1、2に係る本願発明1の構成は記載も示唆もされていない。 オ よって、引用発明1において、上記相違点1、2に係る構成とすることは、当業者であっても、容易になし得たことではない。 (4)まとめ よって、上記相違点3について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用文献1に記載された発明、引用文献2、引用文献3に記載された技術及び周知の事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2 本願発明2ないし4について 請求項2ないし4は請求項1を引用するものであるから、本願発明2ないし4も、本願発明1における「第二層の第二樹脂材が第一層の第一樹脂材と異なる」点、及び「プリント配線板を製造する際に、前記第一樹脂材の粘度を、前記第二樹脂材の粘度よりも高くし」ている点を構成として備えるものである。 よって、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1に記載された発明、引用文献2、引用文献3に記載された技術及び周知の事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 第7 原査定について 1 原査定の概要 原査定(令和2年12月21日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 「本願の請求項1ないし5に係る発明は、以下の引用文献1、2に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 1.特開平11−191670号公報 2.特開平5−235522号公報」 2 原査定において引用された上記引用文献1及び引用文献2について (1)原査定において引用された上記引用文献1(特開平11−191670号公報)には、次の技術事項が記載されている。 「プリント配線基板15」「の導体パターン5を含むコア材4の表面を覆うようにして保護層6が形成され」、「上記保護層6は、コア材表面と直接接触する第1の保護層6Aとこの上に積層される第2の保護層6Bとよりなり、これらの両保護層6A、6Bは例えば光照射によって硬化されるフォトソルダーレジストにより構成され」、「第1の保護層6Aの開口部10の開口端16は下層のコア材4の表面に対して略垂直の角度となるように設定され、これに続く第2の保護層6Aの開口部10の開口端17は、外側」「に対して拡開するように上向き傾斜されている」(段落【0013】、【0014】)、「プリント配線基板及びその製造方法」(段落【0001】)。 (2)原査定において引用された上記引用文献2(特開平5−235522号公報)について 原査定において引用された上記引用文献2は、当審における拒絶理由通知で引用した引用文献2であって、その記載事項は上記「第3」2に記載したとおりである。 3 対比・判断 審判請求時の補正により、本願発明1ないし4は「プリント配線板の製造方法」となっているところ、原査定において引用された上記引用文献1には、「ソルダーレジスト」を光照射(つまり、露光)によって硬化して作成することが示されているに過ぎず、本願発明1ないし4のように「スクリーン印刷」の手法により作成することは記載も示唆もされていない。 また、引用文献2には、前記「第5」1(2)に記載した相違点1及び相違点2に係る(審判請求時の補正後の)本願発明1ないし4の構成については記載も示唆もされていない。 よって、本願発明1ないし4は、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1、2に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。 4 まとめ したがって、原査定の理由を維持することはできない。 第8 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-12-16 |
出願番号 | P2019-004591 |
審決分類 |
P
1
8・
113-
WY
(H05K)
P 1 8・ 537- WY (H05K) P 1 8・ 121- WY (H05K) |
最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
山田 正文 |
特許庁審判官 |
清水 稔 井上 信一 |
発明の名称 | プリント配線板の製造方法 |
代理人 | 城村 邦彦 |
代理人 | 熊野 剛 |