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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G03B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G03B
管理番号 1380851
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-04-15 
確定日 2022-01-04 
事件の表示 特願2017−563582号「カメラモジュール」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月15日国際公開、WO2016/200126号、平成30年 7月12日国内公表、特表2018−518712号、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)6月8日(パリ条約による優先権主張 2015年6月8日 韓国、2016年2月15日 韓国)の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年12月11日 :手続補正書の提出
令和 元年 5月29日 :手続補正書の提出
令和 2年 5月15日付け:拒絶理由通知書
令和 2年11月26日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年12月10日付け:拒絶査定(謄本発送日 同年同月15日 以下「原査定」という。)
令和 3年 4月15日 :審判請求書、手続補正書の提出

2 原査定の概要
原査定(令和2年12月10日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
理由1:本願請求項1ないし8に係る発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項の規定に該当し、特許を受けることができない。
理由2:本願請求項1ないし8に係る発明は引用文献1及び2に記載された発明に基づいて、最先の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開2009−290742号公報
2.特開2009−265473号公報

3 本願発明
本願請求項1ないし8に係る発明(以下「本願発明1」ないし「本願発明8」という。)は、令和3年4月15日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
少なくとも一つのレンズを備えるレンズバレルと、
前記レンズバレルが結合するホルダーと、
前記ホルダーの下部に前記レンズと対向するように結合するプリント基板と、
前記ホルダーと前記プリント基板を結合する接着部と、
前記プリント基板と前記ホルダーの結合によって形成される第1空間の一部を開放する開口部と、
前記ホルダーと結合するハウジングを含み、
前記ハウジングは前記プリント基板を収容し、
前記ホルダーと前記ハウジングの結合によって前記第1空間と区分される第2空間が形成され、
前記開口部は前記第1空間と前記第2空間を連通し、
前記ホルダーと前記ハウジングの結合部は前記接着部より光軸方向の第1方向に前記レンズに近く配置され、
前記接着部の一側面は前記第2空間に露出され、
前記接着部は前記第1方向に直角の方向に前記ハウジングと重畳し、
前記開口部は、前記ホルダーの下部に前記ホルダーを側方向に貫通するように形成される貫通ホールで構成され、
前記貫通ホールの開始部分及び終了部分は開口され、前記貫通ホールの中央部分は前記ホルダーに囲まれる、カメラモジュール。」

4 引用文献及び引用発明
(1)引用文献1及び引用発明
ア 本願の最先の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、特開2009−290742号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(下線は当審にて付した。以下同じ。)。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ装置に関し、特に、自動車の利便性や安全性を向上させるために、車両に取り付けられる車載カメラに用いて好適なカメラ装置に関する。」

(イ)「【0011】
カメラ装置1は、図3〜図5に示すように、略矩形状のハウジング10と、ハウジング10に組み込まれた撮像レンズ11と、撮像レンズ11を介して入射した映像を取り込むCCDやCMOS等の撮像素子12と、撮像素子12が実装されるとともにハウジング10内に固定される基板13とを有する。
【0012】
ハウジング10は、上下一対のハーフ15,16が突き合わせ結合されることにより形成される。上下ハーフ15,16は、エンジニアプラスチック等を用いて略矩形状に成型加工されている。上ハーフ15は、主面15aの略中央に、円形のレンズ開口部17が形成され、撮像レンズ11が嵌合されている。下ハーフ16は、下面にコネクタケーブル4がビス止めされるジャック部18が形成されている。これら上下ハーフ15,16は、相対向するコーナ部にビス孔19が形成され、突き合わされることにより、これらビス孔19が連続され、ビスが挿通されることにより結合される。
【0013】
図5に示すように、上ハーフ15の内面には、対向する一対の側壁20,21に沿って基板13を固定する複数のピラー22が一体に立設されている。各ピラー22は、略等間隔で例えば各側壁20,21に6本ずつ立設されている。また、各ピラー22は、同じ高さに形成され、上面が略平坦に形成されている。かかるピラー22は、後述する基板13の相対向する一対の側縁に設けた接着剤塗布領域25,26に接着される。
【0014】
このような上ハーフ15は、図6に示すように、例えば一辺が21mmの正方形をなし、また側壁20,21を含む四方の側壁の厚みが略1.5mmとされている。また、各ピラー22は、正方形状の上面の一辺が0.9mm〜1.0mmの直方体に形成されている。このように、上ハーフ15は、ピラー22の幅(0.9mm〜1.0mm)が、側壁20,21の厚さ(1.5mm)の約60%程度とされているため、成型時に側壁20,21にヒケが発生するのを防止することができる。すなわち、側壁20,21に隣接して、側壁20,21に平行な立壁を形成した場合、側壁20,21には、肉厚な部分が生じ、成型時にヒケが発生しやすくなる。この点、本発明が適用されたカメラ装置1では、側壁20,21に沿って複数のピラー22を併設させているため、側壁20,21に対するヒケの発生を防止することができる。
【0015】
次いで、ピラー22に固定される基板13について説明する。図7に示すように、基板13は、一辺が略17mm程度の矩形状をなすリジット基板であり、表面にCCDやCMOS等の撮像素子12が実装され、裏面に信号や電源等のケーブルを備えたハーネスが接続されたコネクタ等が実装されている。そして、基板13は、撮像素子12を上ハーフ15の内側に向け、上ハーフ15に嵌合された撮像レンズと対向するように接着される。
【0016】
基板13は、表面に、上ハーフ15の側壁に沿って立設されている一対のピラー22に対応して、対向する基板側縁部に左右一対の接着剤30の塗布領域25,26が設けられている。塗布領域25,26は、部品の実装ができない基板13の側縁部に沿って設けられている。このため、基板13は、撮像素子12の実装領域を確保しつつ、限られたスペースを有効に活用して塗布領域25,26を設けることができ、大型化を抑制することができる。
【0017】
所定の配線パターンが形成されるとともに撮像素子12が実装された基板13は、塗布領域25,26に接着剤30が塗布され、上ハーフ15に立設されたピラー22の上面が塗布領域25,26に載置される。塗布領域25,26に塗布される接着剤30としては、例えば紫外線硬化性の接着剤が用いられる。
【0018】
基板13は、接着剤30が塗布された後、塗布領域25,26にピラー22が載置される。そして、基板13は、上ハーフ15に嵌合されている撮像レンズ11と基板13の表面に実装された撮像素子12との位置合わせが行われ、紫外線照射等により接着剤30が硬化されてピラー22に接着される。そして、上ハーフ15は、ピラー22に基板13が接着された後、下ハーフ16と結合されることにより、ハウジング10が形成される。
【0019】
このとき、上ハーフ15は、基板13の塗布領域25,26に塗布された接着剤30がピラー22間に回り込むことで、図8に示すように、ピラー22の上面22a及び側面22bにも充填される。したがって、基板13とピラー22とは、図8中矢印P方向に示す剥離方向に対する強度に加え、同図中矢印D方向に示す引き抜き方向に対する強度を備える。これにより、基板13とピラー22とは、基板13の全周囲に亘って接着剤の塗布領域を形成した場合と比べて同等以上の接着強度を有する。」

(ウ)図4ないし8は次のものである。



(エ)上記(イ)の「上ハーフ15の内面には、対向する一対の側壁20,21に沿って基板13を固定する複数のピラー22が一体に立設されている。各ピラー22は、略等間隔で例えば各側壁20,21に6本ずつ立設されている。また、各ピラー22は、同じ高さに形成され、上面が略平坦に形成されている。かかるピラー22は、後述する基板13の相対向する一対の側縁に設けた接着剤塗布領域25,26に接着される。」(【0013】)及び「基板13は、接着剤30が塗布された後、塗布領域25,26にピラー22が載置される。」(【0018】)との記載を踏まえて、上記(ウ)の図8を見ると、ピラー22が形成されている辺側において、基板13と上ハーフ15に一体に立設されている各ピラー22との接着によって、基板13と上ハーフ15に囲まれる空間が形成されること、及び、略等間隔で立設されている各ピラー22の間の空間が当該基板13と上ハーフ15に囲まれる空間の一部を開放することが見てとれる。
また、ピラー22が形成されていない辺側において、前記基板13と前記上ハーフ15との間の空間が当該基板13と上ハーフ15に囲まれる空間の一部を開放することも見てとれる。

(オ)上記(イ)の「ハウジング10内に固定される基板13とを有する」(【0011】)及び「ハウジング10は、上下一対のハーフ15,16が突き合わせ結合されることにより形成される。」(【0012】)との記載を踏まえて、上記(ウ)の図4、5及び8を見ると、下ハーフ16は基板13を収容していることが見てとれる。

(カ)上記(イ)の「カメラ装置1は、図3〜図5に示すように、略矩形状のハウジング10と、ハウジング10に組み込まれた撮像レンズ11と、撮像レンズ11を介して入射した映像を取り込むCCDやCMOS等の撮像素子12と、撮像素子12が実装されるとともにハウジング10内に固定される基板13とを有する。」(【0011】)及び「ハウジング10は、上下一対のハーフ15,16が突き合わせ結合されることにより形成される。」(【0012】)との記載を踏まえて、上記(ウ)の図4及び5を見ると、上下一対のハーフ15,16が突き合わせ結合されることによって、上記(エ)における、基板13と上ハーフ15に囲まれる空間と区分される、基板13と下ハーフ16に囲まれる空間が形成されることが見てとれる。
また、上記(エ)における、略等間隔で立設されている各ピラー22の間が、基板13と上ハーフ15に囲まれる空間と、基板13と下ハーフ16に囲まれる空間を連通することが見てとれる。

(キ)上記(イ)の「図5に示すように、上ハーフ15の内面には、対向する一対の側壁20,21に沿って基板13を固定する複数のピラー22が一体に立設されている。」(【0013】)、「ハウジング10は、上下一対のハーフ15,16が突き合わせ結合されることにより形成される。」(【0012】)及び「基板13は、塗布領域25,26に接着剤30が塗布され、上ハーフ15に立設されたピラー22の上面が塗布領域25,26に載置される。」(【0017】)との記載を踏まえて、上記(ウ)の図4、5及び8を見ると、上下一対のハーフ15,16が突き合わせ結合される箇所は、塗布領域25,26に塗布される接着剤30より光軸方向に関して撮像レンズ11の側に配置されていることが見てとれる。
また、塗布領域25,26に塗布される接着剤30の一側面は、上記(カ)における、基板13と下ハーフ16に囲まれる空間に露出するとともに、光軸方向に直角の方向において、下ハーフ16に対向していることが見てとれる。

イ 以上アによれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「略矩形状のハウジング10と、ハウジング10に組み込まれた撮像レンズ11と、撮像レンズ11を介して入射した映像を取り込むCCDやCMOS等の撮像素子12と、撮像素子12が実装されるとともにハウジング10内に固定される基板13とを有するカメラ装置1であって(【0011】)、
前記ハウジング10は、上下一対のハーフ15,16が突き合わせ結合されることにより形成され、前記上ハーフ15は、主面15aの略中央に、円形のレンズ開口部17が形成され、撮像レンズ11が嵌合され(【0012】)、
前記上ハーフ15の内面には、対向する一対の側壁20,21に沿って基板13を固定する複数のピラー22が一体に、略等間隔で各側壁20,21に6本ずつ立設され、各ピラー22は、同じ高さに形成され、上面が略平坦に形成され、前記ピラー22は、基板13の相対向する一対の側縁に設けた接着剤塗布領域25,26に接着され(【0013】)、
前記基板13は、表面にCCDやCMOS等の撮像素子12が実装され、前記撮像素子12を上ハーフ15の内側に向け、上ハーフ15に嵌合された撮像レンズと対向するように接着され(【0015】)、
前記基板13は、表面に、上ハーフ15の側壁に沿って立設されている一対のピラー22に対応して、対向する基板側縁部に左右一対の接着剤30の塗布領域25,26が設けられ(【0016】)、
前記塗布領域25,26に塗布される接着剤30としては、紫外線硬化性の接着剤が用いら(【0017】)、
前記基板13は、接着剤30が塗布された後、塗布領域25,26にピラー22が載置され、上ハーフ15に嵌合されている撮像レンズ11と基板13の表面に実装された撮像素子12との位置合わせが行われ、紫外線照射等により接着剤30が硬化されてピラー22に接着され、そして、上ハーフ15は、ピラー22に基板13が接着された後、下ハーフ16と結合されることにより、ハウジング10が形成され(【0018】)、
このとき、上ハーフ15は、基板13の塗布領域25,26に塗布された接着剤30がピラー22間に回り込むことで、ピラー22の上面22a及び側面22bにも充填されることで、基板13とピラー22とは、剥離方向に対する強度に加え、引き抜き方向に対する強度を備え、基板13とピラー22とは、基板13の全周囲に亘って接着剤の塗布領域を形成した場合と比べて同等以上の接着強度を有し(【0019】)、
前記基板13と前記上ハーフ15に一体に立設されている各ピラー22との接着によって、前記基板13と前記上ハーフ15に囲まれる空間が形成され(上記ア(エ))、
ピラー22が形成されている辺側において、略等間隔で立設されている各ピラー22の間の空間が前記基板13と前記上ハーフ15に囲まれる空間の一部を開放し、また、ピラー22が形成されていない辺側において、前記基板13と前記上ハーフ15との間の空間が当該基板13と上ハーフ15に囲まれる空間の一部を開放し上記ア(エ))、
前記下ハーフ16は前記基板13を収容し(上記ア(オ))、
上下一対のハーフ15,16が突き合わせ結合されることによって、前記基板13と前記上ハーフ15に囲まれる空間と区分される、前記基板13と前記下ハーフ16に囲まれる空間が形成され(上記ア(カ))、
略等間隔で立設されている各ピラー22の間が、前記基板13と前記上ハーフ15に囲まれる空間と、前記基板13と前記下ハーフ16に囲まれる空間を連通し(上記ア(カ))、
上下一対のハーフ15,16が突き合わせ結合される箇所は、塗布領域25,26に塗布される接着剤30より光軸方向に関して撮像レンズ11の側に配置され(上記ア(キ))、
前記塗布領域25,26に塗布される接着剤30の一側面は、前記基板13と前記下ハーフ16に囲まれる空間に露出するとともに、光軸方向に直角の方向において前記下ハーフ16に対向している(上記ア(キ))、
カメラ装置(【0019】)。」

(2)引用文献2
ア 本願の最先の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、特開2009−265473号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、雨に晒されてレンズ面に雨滴が付着する可能性があるレンズ、撮像レンズ及び撮像装置に関し、例えば車載用カメラや監視用カメラに用いられるものである。」
「【0029】
先ず、後カバー42の後部中央に空いた貫通孔にゴムから成るブッシュ43を挿入し、内面にゴムから成るリング状の弾性部材44を貼り付ける。この後カバー42を撮像ユニットの後方から挿入して、ケーブル13をブッシュ43に設けた貫通孔から引き出し、外鏡枠31の後端部を弾性部材44に当接させる。続いて、後カバー42の先端部に円周状に形成した長溝にOリング45を挿入する。この状態で、内鏡枠21の前部外周面にOリング46を挿着し、前カバー41を前方から挿入して、不図示の接着剤で前カバー41と後カバー42とを接合する。
【0030】
このように撮像ユニット1を前カバー41と後カバー42とで水密状態に被覆することにより、撮像ユニット1まで雨水が浸入することがない。即ち、撮像ユニット1の前部においては、雨水が内鏡枠21と前カバー41との間隙から浸入してもOリング46によって、それ以上浸入することが阻止される。また、撮像ユニットの側部における前カバー41と後カバー42との接合部においては、Oリング45により雨水が浸入すること阻止される。更に、撮像ユニットの後部においては、ブッシュ43がケーブル13に圧着しているので、互いの間隙から雨水が浸入することがない。」

5 対比・判断
(1)本願発明について
ア 本願発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「ハウジング10に組み込まれた撮像レンズ11」は、本願発明1の「少なくとも一つのレンズを備えるレンズバレル」に相当する。

(イ)引用発明の「主面15aの略中央に、円形のレンズ開口部17が形成され、撮像レンズ11が嵌合され」る「上ハーフ15」は、本願発明1の「前記レンズバレルが結合するホルダー」に相当する。

(ウ)引用発明の「表面にCCDやCMOS等の撮像素子12が実装され、前記撮像素子12を上ハーフ15の内側に向け、上ハーフ15に嵌合された撮像レンズと対向するように接着され」る「基板13」は、本願発明1の「前記ホルダーの下部に前記レンズと対向するように結合するプリント基板」に相当する。

(エ)引用発明の「表面にCCDやCMOS等の撮像素子12が実装され、前記撮像素子12を上ハーフ15の内側に向け、上ハーフ15に嵌合された撮像レンズと対向するように接着され」、「表面に、上ハーフ15の側壁に沿って立設されている一対のピラー22に対応して、対向する基板側縁部に左右一対の接着剤30の塗布領域25,26が設けられ」る「基板13」における「前記塗布領域25,26に塗布される接着剤30」は、「上ハーフ15の側壁に沿って立設されている一対のピラー22」と「基板13」を接着する「接着剤30」であるから、本願発明1の「前記ホルダーと前記プリント基板を結合する接着部」に相当する。

(オ)引用発明の「前記基板13と前記上ハーフ15に一体に立設されている各ピラー22との接着によって」形成される「前記基板13と前記上ハーフ15に囲まれる空間」は、本願発明1の「前記プリント基板と前記ホルダーの結合によって形成される」「第1空間」に相当する。
したがって、ピラー22が形成されている辺側において「略等間隔で立設されている各ピラー22の間が前記基板13と前記上ハーフ15に囲まれる空間の一部を開放」する「略等間隔で立設されている各ピラー22の間」の空間、及び、ピラー22が形成されていない辺側において「前記基板13と前記上ハーフ15に囲まれる空間の一部を開放」する前記基板13と前記上ハーフ15との間の空間は、本願発明1の「前記プリント基板と前記ホルダーの結合によって形成される第1空間の一部を開放する」「開口部」に相当する。

(カ)引用発明の「上ハーフ15は、ピラー22に基板13が接着された後、下ハーフ16と結合されることにより、ハウジング10が形成され」る「下ハーフ16」は、本願発明1の「前記ホルダーと結合するハウジング」に相当する。

(キ)引用発明の「前記下ハーフ16は前記基板13を収容し」ていることは、本願発明1の「前記ハウジングは前記プリント基板を収容し」ていることに相当する。

(ク)引用発明の「上下一対のハーフ15,16が突き合わせ結合されることによって、前記基板13と前記上ハーフ15に囲まれる空間と区分される、前記基板13と前記下ハーフ16に囲まれる空間が形成され」ることは、本願発明1の「前記ホルダーと前記ハウジングの結合によって前記第1空間と区分される第2空間が形成され」ることに相当する。

(ケ)引用発明の「略等間隔で立設されている各ピラー22の間が、前記基板13と前記上ハーフ15に囲まれる空間と、前記基板13と前記下ハーフ16に囲まれる空間を連通」していることは、本願発明1の「前記開口部は前記第1空間と前記第2空間を連通し」ていることに相当する。

(コ)引用発明の「上下一対のハーフ15,16が突き合わせ結合される箇所」が「塗布領域25,26に塗布される接着剤30より光軸方向に関して撮像レンズ11の側に配置され」ていることは、本願発明1の「前記ホルダーと前記ハウジングの結合部」は「前記接着部より光軸方向の第1方向に前記レンズに近く配置され」ていることに相当する。

(サ)引用発明の「前記塗布領域25,26に塗布される接着剤30の一側面」が「前記基板13と前記下ハーフ16に囲まれる空間に露出する」ことは、本願発明1の「前記接着部の一側面は前記第2空間に露出され」ていることに相当する。

(シ)引用発明の「前記塗布領域25,26に塗布される接着剤30の一側面」が「光軸方向に直角の方向において前記下ハーフ16に対向している」ことは、本願発明1の「前記接着部は前記第1方向に直角の方向に前記ハウジングと重畳し」ていることに相当する。

(ス)引用発明の「カメラ装置」は、本願発明1の「カメラモジュール」に相当する。

(セ)以上(ア)ないし(ス)によれば、引用発明と本願発明1は、
「少なくとも一つのレンズを備えるレンズバレルと、
前記レンズバレルが結合するホルダーと、
前記ホルダーの下部に前記レンズと対向するように結合するプリント基板と、
前記ホルダーと前記プリント基板を結合する接着部と、
前記プリント基板と前記ホルダーの結合によって形成される第1空間の一部を開放する開口部と、
前記ホルダーと結合するハウジングを含み、
前記ハウジングは前記プリント基板を収容し、
前記ホルダーと前記ハウジングの結合によって前記第1空間と区分される第2空間が形成され、
前記開口部は前記第1空間と前記第2空間を連通し、
前記ホルダーと前記ハウジングの結合部は前記接着部より光軸方向の第1方向に前記レンズに近く配置され、
前記接着部の一側面は前記第2空間に露出され、
前記接着部は前記第1方向に直角の方向に前記ハウジングと重畳している、
カメラモジュール。」
である点で一致し、下記相違点で相違する。

(相違点)
開口部が、本願発明1は「前記ホルダーの下部に前記ホルダーを側方向に貫通するように形成される貫通ホールで構成され、前記貫通ホールの開始部分及び終了部分は開口され、前記貫通ホールの中央部分は前記ホルダーに囲まれる」と特定されるものであるに対して、引用発明は、ピラー22が形成されている辺側における略等間隔で立設されている各ピラー22の間の空間、及び、ピラー22が形成されていない辺側における前記基板13と前記上ハーフ15との間の空間である点。

イ 上記相違点について検討する。
(ア)引用発明のピラー22は、「側壁20,21に隣接して、側壁20,21に平行な立壁を形成した場合、側壁20,21には、肉厚な部分が生じ、成型時にヒケが発生しやすくなる。」という課題を解消するために、「側壁20,21に沿って複数のピラー22を併設させている」(段落【0014】)構成となすものである。
また、引用発明のピラー22は、「略等間隔で例えば各側壁20,21に6本ずつ立設され」、「同じ高さに形成され、上面が略平坦に形成されている」(段落【0013】)ことで、「接着剤30がピラー22間に回り込」み、「ピラー22の上面22a及び側面22bにも充填され」から、「基板13とピラー22とは」、「剥離方向に対する強度に加え」、「引き抜き方向に対する強度を備え」、「基板13の全周囲に亘って接着剤の塗布領域を形成した場合と比べて同等以上の接着強度を有する」(段落【0019】)という効果を奏するものであるとされる。
したがって、引用発明の「略等間隔で立設されている各ピラー22の間」を、ピラー22を側壁20,21に平行な立壁とした上で、当該立壁の下部に前記立壁を側方向に貫通するように形成される貫通ホールで構成し、前記貫通ホールの開始部分及び終了部分を開口し、前記貫通ホールの中央部分を前記立壁に囲まれる構成となすことは単なる設計変更ではなく、また、このように構成することには阻害要因がある。

(イ)さらに、引用発明の接着剤30としては、「紫外線硬化性の接着剤が用いられ」(【0017】)、「基板13は、上ハーフ15に嵌合されている撮像レンズ11と基板13の表面に実装された撮像素子12との位置合わせが行われ、紫外線照射等により接着剤30が硬化されてピラー22に接着される」(【0018】)ものであるから、引用発明において、接着剤を硬化させるに際して加熱する必要性はない。
したがって、引用発明は、接着剤30を硬化するために加熱する必要がないため、基板13と上ハーフ15に囲まれる空間に充填された空気が加熱によって膨脹することはなく、当該空間に充填された空気の膨脹によって、基板13が膨出するとか変形されるとか又は位置が変更されるとか、さらには、設計範囲に合うように調節された撮像レンズ11とCCDやCMOS等の撮像素子120間の焦点距離が設計範囲を逸脱するという本願発明1のような課題が生じることはない。

(ウ)上記(ア)によれば、引用発明は本願発明1ではない。
また、上記(イ)のとおり、引用発明には、本願発明1のような課題は生じない。また、上記(ア)のとおり、ピラー22を側壁20,21に平行な立壁とした上で、当該立壁の下部に前記立壁を側方向に貫通するように形成される貫通ホールで構成し、前記貫通ホールの開始部分及び終了部分を開口し、前記貫通ホールの中央部分を前記立壁に囲まれる構成となす動機はなく、このような構成とすることが容易に想到し得たことであるとはいえない。
また、引用発明2にも、上記(イ)で検討した課題は記載されておらず、また、上記(ア)で検討した構成となすことが容易であるとする記載もない。

(エ)以上(ア)ないし(ウ)での検討によれば、引用発明は本願発明1ではない。また、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

(2)本願発明2ないし8について
本願発明2ないし8は本願発明1を直接的または間接的に引用し、本願発明1を減縮する発明であるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明は本願発明2ないし8ではない。また、本願発明2ないし8は、当業者であっても引用発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

6 原査定についての判断
上記2のとおり、原査定は、(令和2年11月26日付けの手続補正により補正された)本願請求項1ないし8に係る発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項の規定に該当し、特許を受けることができない、及び、同本願請求項1ないし8に係る発明は引用文献1及び2に記載された発明に基づいて、最先の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
これに対して、上記5で検討した本願発明1ないし8は、上記(令和2年11月26日付けの手続補正により補正された)請求項1ないし8に係る発明に、「貫通ホール」に関して「前記貫通ホールの開始部分及び終了部分は開口され、前記貫通ホールの中央部分は前記ホルダーに囲まれる」との発明特定事項を付加して限縮したものである。
そうすると、上記発明特定事項を付加する補正をした本願発明1ないし8は、上記5で検討したとおり、引用文献1に記載された発明ではなく、また、当業者であっても引用発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえないものであるから、同様の理由により原査定を維持することはできない。

7 むすび
以上のとおり、引用発明は本願発明1ないし8ではない。また、本願発明1ないし8は、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて容易に発明できたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-12-13 
出願番号 P2017-563582
審決分類 P 1 8・ 113- WY (G03B)
P 1 8・ 121- WY (G03B)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 瀬川 勝久
特許庁審判官 吉野 三寛
松川 直樹
発明の名称 カメラモジュール  
代理人 鶴田 準一  
代理人 渡辺 陽一  
代理人 三橋 真二  
代理人 河合 章  
代理人 青木 篤  
代理人 南山 知広  
代理人 胡田 尚則  

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