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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D
管理番号 1380856
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-04-22 
確定日 2021-12-06 
事件の表示 特願2018−153025「シール蓋、容器、及び容器詰め飲食品の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和2年2月20日出願公開、特開2020−26302〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成30年8月16日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和2年7月2日付け :拒絶理由通知書
令和2年8月4日 :意見書の提出
令和2年12月16日付け:拒絶理由通知書
令和2年12月24日 :意見書の提出
令和3年3月31日付け :拒絶査定
令和3年4月22日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和3年7月9日付け :拒絶理由通知書
令和3年7月26日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1〜3に係る発明は、令和3年7月26日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された事項により特定されるものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記令和3年7月9日付け拒絶理由の対象であった請求項3に係る発明と同じであり、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
容器であって、それを構成するのは、少なくとも、次のとおりである:
口天部:その形状は、円であり、及び、
シール蓋:それが接着されるのは、前記口天部であり、かつ、
その形状は、平行四辺形(但し、正方形を除く。)である。」

第3 当審が通知した拒絶の理由
当審が通知した上記令和3年7月9日付け拒絶理由の要旨は、次のとおりのものである。

進歩性)この出願の請求項1〜5に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1及び2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開2007−045443号公報
2.特開2001−171732号公報

第4 引用文献の記載事項
1 引用文献1の記載事項及び引用発明
引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、理解の便宜の為に当審が付した。以下同様。)。
「【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたものであり、容器口部をシール材で密封し、さらに蓋体を装着することによって、高い密封性を確保しながらも、開封時のシール材の剥離(開封剥離)を容易とした容器の密封構造において、落下時の衝撃を受けたり、容器内の圧力が上昇しても、容器口部の内周縁におけるシール材の剥離を防止することができる容器の密封構造、及びこれに用いる蓋体の提供を目的とする。」
「【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。
ここで、図1は、本発明に係る容器の密封構造をパウチ用スパウトに適用した実施形態を示す当該スパウトの一部切欠断面図である。また、図2は、図1において鎖線で囲む部分の要部拡大断面図である。
【0018】
図1に示すスパウト1は、舟形部11と、舟形部11から上方に延設された円筒形状の注出筒12とを備えたスパウト本体10を有し、注出筒12の開口部上端面には、シール部材13がヒートシールされている。また、注出筒12の外周面には、キャップ15を螺着するためのねじ山14が形成されており、このねじ山14には、水抜き用のスリット14aが周方向に複数設けられている。
【0019】
そして、注出筒12の開口部は、図示するように、シール部材13により密封され、さらに、注出筒12には、シール部材13を覆うようにしてキャップ15が螺着されている。このように、キャップ15を螺着することによって注出筒12に装着することとすれば、開封後もキャップ15による再封止が可能となるため好ましいが、キャップ15の装着手段は、これに限られるものではない。」
「【図1】


「【図2】


「【0024】
また、注出筒12の開口部上端面にヒートシールされるシール部材13は、図3に示すように、ほぼ円形状のフィルム材からなり、径方向に対向する位置には、二つの突片13aが突出形成されている。この突片13aは、シール部材13を開封剥離する際に、その剥離を容易とするためのつまみ片として設けられており、注出筒12にキャップ15を装着すると、キャップ15の内面形状にならって折れ曲がり、注出筒12からキャップ15を外すと、その弾力性によって起きあがるようになっているのが好ましい。
なお、図3は、注出筒12の開口部上端面にシール部材13をヒートシールした状態を示す上面図である。」
「【図3】



上記記載を総合すると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「注出筒12の円形状の開口部上端面にヒートシールされるシール部材13を有する容器であって、該シール部材13の形状は、ほぼ円形状であり、直径方向に対向する位置には、二つの突片13aからなるつまみ片が突出形成されるシール部材13を有する容器。」

2 引用文献2の記載事項
「【0004】本発明は、このような問題を解決し、ピンホールや亀裂を発生させず、つまみ易く開封性に優れた開封片を提供することを目的とする。」
「【0009】次に開封片の平面形状が長手方向軸や幅方向軸で実質対称形である開封片は、外観の見映えが美しくなるのと、つかみ代が対称位にあるとどちらからもつかめるのでより好ましいのである。また平面形状が実質台形や実質平行四辺形の開封片は開封片をカットして溶着するときに使用するカット器具の製作が簡単で保全も容易なのでより好ましいのである。本発明の開封片の大きさは、包装体の大きさに応じて適宜決まるもので特に制限はないが、一般的には長さが15〜30mm程度、幅が約4〜8mm程度、厚みは30〜150μm程度のものが経済性や開封性の面でより好ましい。
【0010】本発明の開封片を包装フィルム(3)に連続して溶着する方法は、一般的に知られている方法が採用される。例えば図7のように一定幅にスリットしてリールに巻かれた長尺フィルムをローラー(7)で引き出して所望形状のカッター(8)で1個ずつ連続的に切断する方法がある。この場合のカッターは可動刃(8-1)と固定刃(8-2)とで形成され、固定刃は図8のように所望の開封片と同様の平面形状を有する20〜80°の傾斜を成し、可動刃が固定刃に沿うように切断される。このときのカット速度は、ソーセージ用練り肉等を充填する包装機の速度と連動して、包装体一個を生産するのと同じタイミングで、自動的に開封片(4)として形成され、図7のように開封片の溶着は包装前の包装フィルムに定間隔で所定形状の高周波電極(9)や熱刃等を圧接して溶着されるのである。」
「【0018】
【実施例4〜6、比較例3〜4】厚みが75μmで幅が8mmの塩化ビニリデン系樹脂の長尺フィルムを図5dに示した形状の開封片になるよう図7に示した溶着装置の付属カッターで切断して、これを図7に示す方法で厚み40μm幅215mmの帯状包装フィルムに高周波電極で加熱溶着してから該包装フィルムをハンバーグの練り肉充填包装機(旭化成工業製、商品名:自動充填式結紮包装機、包装速度100個/分)で筒状(筒の全周長:約200mm)に製袋して、筒袋内に練り肉68gずつ自動充填後に結紮して長さ約98mmの生ハンバーグ3000個を得た。これらを1つずつハンバーグ形のリテイナー(型容器)にはめ込んでから、リテイナーごと120℃で20分レトルト殺菌した後冷水層で20分冷却したのち風乾してハンバーグの包装体を得た。これを実施例4の試料として無作為に評価用試料を取り出して開封片の《つまみ易さ》と《開封性》の評価を行った結果を表1に表す。実施例4と同様に、開封片の形状が図5e、図5fであるものをそれぞれ実施例5、実施例6の試料とした。また同様に開封片の形状を図6a、図6bにの形状の開封片をそれぞれ比較例3、比較例4の試料とした。なお開封片の大きさは、いずれも長さ方向が最も長い片での寸法がレトルト殺菌前で22mmに調整した。また表1の各開封片の内角を示す記号は、図の右上から時計まわりでイ、ロ、ハ、ニ、の文字で表した。
【0019】表1から実施例4〜6の形状の開封片が《つまみ易さ》と《開封性》で優れているのに対し、比較例3,4の開封片はつまみにくくて開封が困難であり、本発明の形状の開封片が優れていることが明らかである。
【0020】
【表1】


「【図3】


「【図5】


「【図7】



上記の記載事項をまとめると、引用文献2には、以下の事項が記載されている。
ア 「開封片の平面形状が長手方向軸や幅方向軸で実質対称形である開封片は、外観の見映えが美しくなるのと、つかみ代が対称位にあるとどちらからもつかみやすく、平行四辺形の開封片が《つまみ易さ》と《開封性》で優れている。」

イ 「実質平行四辺形の開封片は、カット器具の製作が簡単で保全も容易であり、長尺フィルムを連続的に切断する方法で形成できる。」

第5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
構成及び作用からみて引用発明の「注出筒12の開口部」及び「シール部材13」は、本願発明の「口天部」及び「シール蓋」に相当する。
また、引用発明の「注出筒12の開口部」の開口部上端は「円形状」であり、本願発明の「口天部」の「形状」である「円」に相当する。
さらに、引用発明の「容器」は、本願発明の「容器」に相当する。また、本願発明の「平行四辺形」について、本願明細書を参照すると、「平行四辺形」の鋭角θは、つまみ部22である(【0015】及び図4)。してみると、引用発明の「シール部材13」の「ほぼ円形状であり、直径方向に対向する位置に」「突出形成されて」いる「二つの突片13aからなるつまみ片」を含む形状は、本願発明の「平行四辺形」の形状と、容器の円形状開口部の直径方向に対向する位置に、剥離の際の二つのつまみ部を有することで技術が共通し、その限りにおいて両者は一致する。
したがって、本願発明と引用発明は、以下の一致点及び相違点を有する。

<一致点>
「容器であって、それを構成するのは、少なくとも、次のとおりである:
口天部:その形状は、円であり、及び、
シール蓋:それが接着されるのは、前記口天部であり、かつ、
その形状は、直径方向に対向する位置に二つのつまみ部を有する。」

<相違点>
直径方向に対向する位置に二つのつまみ部を有する形状について、本願発明は「平行四辺形(但し、正方形を除く)」であるのに対し、引用発明は「ほぼ円形状であり、直径方向に対向する位置には、二つの突片13aからなるつまみ片が突出形成され」た形状である点。

第6 判断
1 相違点について
上記相違点について検討する。
引用文献2には、開封片の平面形状が長手方向軸や幅方向軸で実質対称形である開封片は、外観の見映えが美しくなるのと、つかみ代が対称位にあるとどちらからもつかみやすく、平行四辺形の開封片が《つまみ易さ》と《開封性》で優れていることも記載されており、図3c及び図5dを参照するに、正方形でない平行四辺形であることも明らかである。
そうすると、引用発明のシール部材13と、引用文献2に記載された開封片とは、平面形状が長手方向軸又は幅方向軸で対称形であり、つかみ部が対称位にあることに加えて、開封剥離の容易性(つまみ易さ)についても共通することで動機付けを有するものであって、引用発明において、シール部材13の形状として、正方形を除いた平行四辺形を採用することは、当業者であれば容易に想到し得たものである。

さらに、引用文献2の図7は、長尺フィルムを図5dに示した形状(平行四辺形)の開封片になるよう切断する溶断装置であって、「例えば図7のように一定幅にスリットしてリールに巻かれた長尺フィルムをローラー(7)で引き出して所望形状のカッター(8)で1個ずつ連続的に切断する」(【0010】)ことが記載されており、効率的且つ経済的な製造の観点からみても、平行四辺形の開封片とすることの動機付けはあるといえる。

2 本願発明の効果について
本願発明の、「本発明が可能にするのは、シール蓋を剥し易くすることである。すなわち、シール蓋の角部は、立ち上げ易く、つまみ易い。」(本願明細書の段落【0009】)との作用効果は、引用文献1の「この突片13aは、シール部材13を開封剥離する際に、その剥離を容易とするためのつまみ片として設けられており、注出筒12にキャップ15を装着すると、キャップ15の内面形状にならって折れ曲がり、注出筒12からキャップ15を外すと、その弾力性によって起きあがるようになっているのが好ましい。」(段落【0024】)との記載、引用文献2の「開封片の平面形状が長手方向軸や幅方向軸で実質対称形である開封片は、外観の見映えが美しくなるのと、つかみ代が対称位にあるとどちらからもつかめるのでより好ましいのである。」(段落【0009】)の記載から、いずれも予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

3 請求人の主張について
請求人は令和3年7月26日提出の意見書において、再考賜りたいご認定は、「引用発明のシール部材13と、引用文献2に記載された開封片とは、平面形状が長手方向軸又は幅方向軸で対称形であり」です。すなわち、開封時における「開封片」(引用文献2)の形状は、必ずしも「平行四辺形」ではありません。なぜなら、溶着前の「開封片」は、平行四辺形ですが、溶着後は、「熱収縮」(引用文献2の段落0003)する旨の主張をしている。

しかしながら、技術文献に記載されている事項を用いて、引用発明ないし引用技術等を認定することに誤りはないし、引用文献2において、平行四辺形の開封片が熱収縮により歪むとしても、「外観の見映えが美しくなるのと、つかみ代が対称位にあるとどちらからもつかめる」(【0009】)という記載からみて、熱収縮後も平行四辺形として認識できる形状の開封片を開示するものであることは明らかである。
したがって、請求人の主張は採用できない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2021-10-01 
結審通知日 2021-10-04 
審決日 2021-10-19 
出願番号 P2018-153025
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B65D)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 井上 茂夫
特許庁審判官 藤原 直欣
平野 崇
発明の名称 シール蓋、容器、及び容器詰め飲食品の製造方法  
代理人 宮下 洋明  

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