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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B25J
管理番号 1380861
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-04-27 
確定日 2021-12-14 
事件の表示 特願2017− 30276「ロボットシミュレータ、ロボットシステム及びシミュレーション方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 8月30日出願公開、特開2018−134703、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年2月21日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和元年11月28日付け:拒絶理由通知
令和2年 1月31日 :意見書、手続補正書の提出
令和2年 6月25日付け:拒絶理由通知
令和2年 8月27日 :意見書、手続補正書の提出
令和3年 1月28日付け:拒絶査定(原査定)
令和3年 4月27日 :審判請求書の提出

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
本願の請求項1−3、9に係る発明は、以下の引用文献1−2、6−7に基いて、本願の請求項4に係る発明は、以下の引用文献1−3、6−7に基いて、本源の請求項5に係る発明は、以下の引用文献1、3、6、8に基いて、本願の請求項6に係る発明は、以下の引用文献1−4、6−7に基いて、本願の請求項7−8に係る発明は、以下の引用文献1−7に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献
1.特開2015−160277号公報
2.特開2005−149016号公報
3.特開平8−166809号公報
4.特開2005−297097号公報
5.特開2003−91304号公報
6.特開2001−216015号公報
7.特開平9−85655号公報
8.国際公開第2014/122995号

第3 本願発明
本願の請求項1−9に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」−「本願発明9」という。)は、令和2年8月27日に提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1−9に記載された事項により特定される以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
ロボット及び当該ロボットの周辺の障害物に関するモデル情報を記憶したモデル記憶部と、
前記ロボットの動作の開始位置及び終了位置を定める第一入力情報を取得するように構成された情報取得部と、
前記ロボットの先端部を前記開始位置から前記終了位置まで移動させるパスを前記第一入力情報及び前記モデル情報に基づいて生成するように構成された情報処理部と、を備え、
前記情報処理部は、前記ロボットと前記障害物とが衝突しないように経由点を追加することと、前記経由点を通るように前記パスを変更することと、を前記パスの全体にわたって前記ロボットと前記障害物との衝突が回避されるまで繰り返し、前記障害物を示す図と前記経由点を示す指標とを含む画像データを生成するように構成され、
前記情報取得部は、前記経由点の位置を変更する第二入力情報を更に取得するように構成され、
前記情報処理部は、前記第二入力情報に基づく位置の変更後の前記経由点を通るように、前記パスを再生成することと、前記第二入力情報に基づいて前記指標の位置を変更した前記画像データを生成することと、を更に実行するように構成されているロボットシミュレータ。
【請求項2】
前記情報取得部は、前記パスの生成回数を規制する条件を定める第三入力情報を更に取得するように構成され、
前記情報処理部は、前記パスを生成する際に、前記第三入力情報により定まる条件を満たすまで前記パスの生成を繰り返すことと、生成された複数のパスから一つのパスを選択することとを実行するように構成されている、請求項1記載のロボットシミュレータ。
【請求項3】
前記情報取得部は、前記パスの評価基準を定める第四入力情報を更に取得するように構成され、
前記情報処理部は、前記生成された前記複数のパスから前記一つのパスを選択する際に、前記第四入力情報により定まる前記評価基準に従って前記一つのパスを選択するように構成されている、請求項2記載のロボットシミュレータ。
【請求項4】
前記情報取得部は、前記ロボットに対する接近可能距離を定める第五入力情報を更に取得するように構成され、
前記情報処理部は、前記第五入力情報に基づいて定まる前記接近可能距離を保ちつつ前記ロボットを覆う外殻モデルを生成することを更に実行し、前記パスを生成する際に、前記外殻モデルと前記障害物との衝突を回避しつつ、前記先端部を前記開始位置から前記終了位置まで移動させるパスを生成するように構成されている、請求項1〜3のいずれか一項記載のロボットシミュレータ。
【請求項5】
前記情報取得部は、前記外殻モデルの簡易化の程度を示す粒度を定める粒度情報と、を更に取得するように構成され、
前記情報処理部は、前記第五入力情報に基づいて定まる前記接近可能距離を保ちつつ前記外殻モデルを前記粒度に従って生成する、請求項4記載のロボットシミュレータ。
【請求項6】
前記情報取得部は、前記ロボットの先端部の姿勢条件を定める第六入力情報を更に取得するように構成され、
前記情報処理部は、前記パスを生成する際に、前記先端部の姿勢が、前記第六入力情報により定まる前記姿勢条件を満たすように前記パスを生成するように構成されている、請求項1〜5のいずれか一項記載のロボットシミュレータ。
【請求項7】
前記情報取得部は、前記ロボットの関節の可動範囲を定める第七入力情報を更に取得するように構成され、
前記情報処理部は、前記パスを生成する際に、前記関節の動作角度が、前記第七入力情報により定まる前記可動範囲内に収まるように前記パスを生成するように構成されている、請求項1〜6のいずれか一項記載のロボットシミュレータ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項記載のロボットシミュレータと、
前記ロボットと、
前記パスに沿って前記先端部を移動させるように前記ロボットを制御するロボットコントローラと、を備えるロボットシステム。
【請求項9】
ロボットシミュレータによるシミュレーション方法であって、
ロボット及び当該ロボットの周辺の障害物に関するモデル情報を記憶することと、
前記ロボットの動作の開始位置及び終了位置を定める第一入力情報を取得することと、
前記ロボットの先端部を前記開始位置から前記終了位置まで移動させるパスを前記第一入力情報に基づいて生成することと、
前記モデル情報に基づいて前記ロボットと前記障害物とが衝突しないように経由点を追加することと、前記経由点を通るように前記パスを変更することと、を前記パスの全体にわたって前記ロボットと前記障害物との衝突が回避されるまで繰り返すことと、
前記障害物を示す図と前記経由点を示す指標とを含む画像データを生成することと、
前記経由点の位置を変更する第二入力情報を取得することと、
前記第二入力情報に基づく位置の変更後の前記経由点を通るように、前記パスを再生成することと、
前記第二入力情報に基づいて前記指標の位置を変更した前記画像データを生成することと、を含むシミュレーション方法。」

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1(特開2015−160277号公報)について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

ア「【0019】
図1は、本発明の好適な実施形態に係るロボットシミュレーション装置(以降、単にシミュレーション装置とも称する)10の機能ブロック図である。シミュレーション装置10は、ロボット12及び該ロボットの周辺に配置された外部機器等の周辺物14の3次元モデルを同一の仮想空間内に配置して、ロボット12のシミュレーションを(通常はオフラインで)行うものであり、ロボット12の所定の動作プログラムのシミュレーションを実行して、ロボット12の第1の動作経路を取得する動作経路取得部16と、ロボット12を第1の動作経路に沿って移動させたときの、ロボット12と周辺物14との干渉を検出して、該干渉が発生する直前の教示点である第1の教示点(以降、始点とも称する)、及び干渉が発生した直後の教示点である第2の教示点(以降、終点とも称する)を特定する教示点特定部18と、第1の教示点と第2の教示点との間に、第1の教示点又は第2の教示点から、乱数で定めた探索方向に乱数で定めた探索距離だけ離れた少なくとも1つの第3の教示点を自動的に追加・挿入し、ロボット12と周辺物14との干渉が発生しない第2の動作経路を生成する動作経路生成部20と、動作経路生成部20が生成した複数の異なる第2の動作経路の各々について、予め定めた少なくとも1つのパラメータに基づく評価を行う評価部22と、評価部22が行った評価に基づいて、複数の第2の動作経路から、ロボット12の最適動作経路を選択する動作経路選択部24と、を備える。」

イ「【0020】
またシミュレーション装置10は任意に、ロボット12及び周辺物14の3次元モデルが配置された仮想空間等を表示する表示部26と、第3の教示点のうち余剰な教示点を削除する教示点削除部28と、第3の教示点の位置姿勢を調整する教示点調整部30と、を備えてもよい。削除部28及び調整部30の機能については後述する。」

ウ「【0021】
次に図2及び図3を参照して、シミュレーション装置10における処理の流れについて説明する。先ずステップS1において、ロボット12について予め用意された動作プログラムのシミュレーションを実行し、ロボット12の第1の動作経路32を取得する。第1の動作経路には、動作プログラムに基づきロボット12の代表点(例えばツール先端点)の位置及び姿勢を規定する複数の教示点が含まれており、第1の動作経路では、周辺物14との干渉は考慮していない。」

エ「【0022】
次のステップS2では、第1の動作経路に沿ってロボット12を移動させたときのロボット12と周辺物14との干渉の有無を検出し、干渉がある場合は、干渉が発生する直前の教示点である第1の教示点(始点)と、干渉が発生した直後の教示点である第2の教示点(終点)とを特定する。図3の例では、第1の動作経路32に含まれる教示点PmとPnとの間で干渉が発生しているので、教示点Pmが始点、教示点Pnが終点として特定される。
【0023】
次のステップS3では、始点Pmと終点Pnとの間に、Pm又はPnから乱数で定めた探索方向に、乱数で定めた探索距離だけ離れた少なくとも1つの第3の教示点を自動的に追加し、ロボット12と周辺物14との干渉が発生しない第2の動作経路34を生成する。図3の例では、始点Pmから、始点Pmから乱数で定めた探索方向に乱数で定めた探索距離だけ離れた1つの中間教示点P1に至る動作経路34に沿ってロボットを移動させたときの周辺物14との干渉の有無を検出する。動作経路34では干渉が発生しないので、中間教示点P1が始点Pmと終点Pnとの間に挿入される。逆に動作経路34にて干渉がある場合は、中間教示点P1は破棄して新たな中間教示点を探索する。
【0024】
次に、最後に挿入された中間教示点(ここではP1)から終点Pnに至る動作経路36に沿ってロボットを移動させたときの周辺物14との干渉の有無を検出する。図示例では、動作経路36では干渉が発生するので、中間教示点P1からさらに、P1から乱数で定めた探索方向に乱数で定めた探索距離だけ離れた1つの新たな中間教示点P2を求め、中間教示点P1とP2との間の動作経路38において干渉の有無を検出する。動作経路38では干渉が発生しないので、中間教示点P2が中間教示点P1と終点Pnとの間に挿入される。逆に動作経路38にて干渉がある場合は、中間教示点P2は破棄して新たな中間教示点を探索する。なお、P2の探索を所定回数繰り返しても干渉が発生しない経路が得られない場合は、P1も破棄してP1の探索をやり直す。
【0025】
このような処理を、干渉が発生しなくなるまで繰り返す。図示例では、最後に挿入された中間教示点(P2)から終点Pnに至る動作経路40では干渉が発生しないので、始点Pmから中間教示点P1及びP2を経由して終点Pnに至る動作経路(すなわち動作経路34、38及び40を含む経路)が、干渉回避可能な第2の動作経路として生成される。なお乱数により決定された探索方向及び探索距離に基づくロボットの移動は、並進移動に限られず、回転移動を含むものでもよい。」

オ 上記アより、シミュレーション装置10は、ロボット12及び該ロボットのロボット12及び該ロボットの周辺に配置された外部機器等の周辺物14の3次元モデルを用いてシミュレーションを行っているため、3次元モデルを記憶しておくモデル記憶部を有していることは明らかである。

カ 上記アより、シミュレーション装置10は、第2の動作経路の生成の際にロボット12を第1の動作経路に沿って移動させたときの、ロボット12と周辺物14との干渉の有無を検出しており、該干渉の有無検出は、ロボット12及び該ロボットの周辺に配置された外部機器等の周辺物14の3次元モデルを用いて行われることは明らかである。

(2)上記(1)より、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているといえる。
「ロボット12及び該ロボットの周辺に配置された外部機器等の周辺物14の3次元モデルを記憶したモデル記憶部と、(上記ア、オ参照。)
動作プログラムに基づきロボット12の代表点(例えばツール先端点)の位置及び姿勢を規定する複数の教示点が含まれた第1の動作経路を取得する動作経路取得部16と、(上記ア、ウ参照。)
ロボット12と周辺物14との干渉が発生しない第2の動作経路を第一の動作経路及びロボットの周辺に配置された外部機器等の周辺物14の3次元モデルに基づいて生成するように構成された動作経路生成部20を備え、(上記ア、カ参照。)
前記動作経路生成部20は、前記ロボット12と前記周辺物14の干渉が発生しないように中間教示点を追加することと、最後に挿入された中間教示点から終点に至る動作経路に沿ってロボットを移動させたときの周辺物14との干渉の有無を検出し、干渉が検出された場合は新たな中間教示点を追加し、そしてこのような処理を干渉が発生しなくなるまで繰り返すように構成され、(上記エ参照。)
ロボット12及び周辺物14の3次元モデルが配置された仮想空間等を表示する表示部26を備える、(上記イ参照。)
シミュレーション装置10」

第5 当審の判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。
ア 引用発明1の「外部機器等の周辺物14」、「3次元モデル」は、それぞれ、本願発明1の「障害物」、「モデル情報」に相当するから、引用発明1の「ロボット12及び該ロボットの周辺に配置された外部機器等の周辺物14の3次元モデルを記憶したモデル記憶部」は、本願発明1の「ロボット及び当該ロボットの周辺の障害物に関するモデル情報を記憶したモデル記憶部」に相当する。

イ 引用発明1の「動作プログラムに基づきロボット12の代表点(例えばツール先端点)の位置及び姿勢を規定する複数の教示点が含まれた第1の動作経路を取得する動作経路取得部16」は、第1の動作経路がその動作の開始位置及び終了位置を含んでいることが明らかであり、動作経路を生成する際に最初(第1)に入力される情報であるため、本願発明1の「前記ロボットの動作の開始位置及び終了位置を定める第一入力情報を取得するように構成された情報取得部」に相当する。

ウ 引用発明1の「ロボット12と周辺物14との干渉が発生しない第2の動作経路を第1の動作経路及びロボットの周辺に配置された外部機器等の周辺物14の3次元モデルに基づいて生成するように構成された動作経路生成部20」は、動作経路はロボットのツールの先端点を示しているため、本願発明1の「前記ロボットの先端部を前記開始位置から前記終了位置まで移動させるパスを前記第一入力情報及び前記モデル情報に基づいて生成するように構成された情報処理部」に相当し、引用発明1が「動作経路生成部20は、前記ロボット12と前記周辺物14の干渉が発生しないように中間教示点を追加することと、最後に挿入された中間教示点から終点Pnに至る動作経路36に沿ってロボットを移動させたときの周辺物14との干渉の有無を検出し、干渉が検出された場合は新たな中間教示点を追加する、そしてこのような処理を干渉が発生しなくなるまで繰り返すように構成」されていることは、本願発明1の「情報処理部は、前記ロボットと前記障害物とが衝突しないように経由点を追加することと、前記経由点を通るように前記パスを変更することと、を前記パスの全体にわたって前記ロボットと前記障害物との衝突が回避されるまで繰り返」すように構成されていることに相当する。

エ 引用発明1の「シミュレーション装置10」は、本願発明1の「ロボットシミュレータ」に相当する。

オ 上記ア−エより、本願発明1と引用発明1との一致点及び相違点は以下のとおりである。

[一致点]
ロボット及び当該ロボットの周辺の障害物に関するモデル情報を記憶したモデル記憶部と、
前記ロボットの動作の開始位置及び終了位置を定める第一入力情報を取得するように構成された情報取得部と、
前記ロボットの先端部を前記開始位置から前記終了位置まで移動させるパスを前記第一入力情報及び前記モデル情報に基づいて生成するように構成された情報処理部と、を備え、
前記情報処理部は、前記ロボットと前記障害物とが衝突しないように経由点を追加することと、前記経由点を通るように前記パスを変更することと、を前記パスの全体にわたって前記ロボットと前記障害物との衝突が回避されるまで繰り返するように構成された、
ロボットシミュレータ。

[相違点1]
本願発明1では、情報処理部が障害物を示す図と前記経由点を示す指標とを含む画像データを生成するように構成されているのに対して、引用発明1では、ロボット12及び周辺物14の3次元モデルが配置された仮想空間等を表示する表示部26を有するが、該表示部26は、障害物を示す図と前記経由点を示す指標とを含む画像データを表示するものではない点。

[相違点2]
本願発明1では、「前記情報取得部は、前記経由点の位置を変更する第二入力情報を更に取得するように構成され、前記情報処理部は、前記第二入力情報に基づく位置の変更後の前記経由点を通るように、前記パスを再生成することと、前記第二入力情報に基づいて前記指標の位置を変更した前記画像データを生成することと、を更に実行するように構成されている」のに対して、引用発明1では、動作経路生成部20が、ロボット12と周辺物14の干渉が発生しないように中間教示点を追加するものであって、経由点の位置を変更する第二入力情報を更に取得する構成を有さない点。

(2)判断
事案に鑑みて、上記相違点2について先に検討する。
本願発明1の「第二入力情報」について、本願発明1の特定事項及び本願明細書の段落【0043】「修正入力取得部123は、上記第二入力情報の一例として、モニタ192の画像上において経由点の指標(後述)を移動させる入力情報を入力装置191から取得する。」との記載から、該「第二入力情報」は作業者が、ロボットの動作経路を修正する(経由点を移動する)ために、入力する情報であることが理解されるところ、拒絶査定時に引用された引用文献1−8のいずれにも、シミュレーターにより、ロボットと障害物との干渉が発生しないように自動的に作成されたロボットの動作経路に対して、経由点の位置を変更する(作業者による)入力情報を取得して修正を加えるように構成することが記載も示唆もされていない。
また、仮にロボットの経路生成装置において、作業者により動作経路を調整する機能が周知であったとしても、引用発明1のロボットシミュレーション装置は、作業者の熟練度を要する面倒な作業を解消し(段落【0006】参照)、作業者の熟練度によらず、現実的なロボットの干渉回避経路を自動的に生成すること(段落【0007】参照)を発明の目的としており、作業者の介入を排除することを目的としているから、引用発明1のシミュレーション装置に、作業者により動作経路を調整するための機能を追加する動機付けが存在しないというべきである。また、引用発明1はシミュレーション装置により生成された動作経路を評価し、その評価が高いものを、ロボットの最適動作経路として選択するものであるから(段落【0041】)、最適動作経路をさらに作業者が修正する動機付けも認められない。
したがって、シミュレーターにより、ロボットと障害物との干渉が発生しないように自動的に作成されたロボットの動作経路に対して、作業者が経由点の位置を変更する(作業者による)入力情報を取得して修正を加えるように構成することを開示する証拠はないし、仮にそのような技術が周知といえたとしても、引用発明1に、経由点の位置を変更する第二入力情報を更に取得するように構成すること、すなわち、作業者により動作経路を調整する機能を付加して、上記相違点2の構成とすることが当業者にとって容易になし得たということはできない。

(4)小括
以上のとおりであるから、相違点1について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明1及び引用文献2、6−7に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたということができない。

2 本願発明2−8について
本願発明2−8は、請求項1を引用するものであるから、上記相違点2を含むものであり、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1及び引用文献2−8のいずれに記載された事項に基いて容易に発明をすることができたということができない。

3 本願発明9について
本願発明9は、物の発明である本願発明1のカテゴリーを変更して方法の発明としたものであるが、その特定事項は実質的に同一であるから、上記相違点2と同様の相違点を含むものであり、本願発明1と同じ理由により、引用発明1及び引用文献2、6−7に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-11-24 
出願番号 P2017-030276
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B25J)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 見目 省二
特許庁審判官 大山 健
松原 陽介
発明の名称 ロボットシミュレータ、ロボットシステム及びシミュレーション方法  
代理人 松尾 茂樹  
代理人 黒木 義樹  
代理人 阿部 寛  
代理人 長谷川 芳樹  

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