• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B24D
管理番号 1380866
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-05-07 
確定日 2021-12-21 
事件の表示 特願2017− 24402「ハブ型ブレード」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 8月23日出願公開、特開2018−130778、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年2月13日を出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和2年 9月 2日付け :拒絶理由通知書
令和2年 10月28日 :意見書、手続補正書の提出
令和3年 1月28日付け :拒絶査定(原査定)
令和3年 5月 7日 :審判請求書の提出


第2 原査定の概要
原査定(令和3年1月28日付け拒絶査定)の拒絶の理由の概要は次のとおりである。

本願の請求項1−5に係る発明は、以下の引用文献1−2に記載された発明に基いて、本願出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1 特開平01−159175号公報
引用文献2 特開平06−091547号公報


第3 本願発明
本願請求項1−5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」−「本願発明5」という。)は、令和2年10月28日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1−5に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
チタン又はチタン合金からなり軸線回りに回転可能に形成され前記軸線方向の一方側にブレード取付面が形成されたチタンハブと、
前記ブレード取付面に配置されたブレード本体と、
前記ハブ側と前記ブレード本体側に位置され両面に粘着性を有し前記ハブと前記ブレード本体とを接続する両面粘着テープと、
を備え、
前記ブレード取付面は、
表面粗さRmax0〜20μmに形成されている
ことを特徴とするハブ型ブレード。
【請求項2】
請求項1に記載のハブ型ブレードであって、
前記両面粘着テープは、
導電性を有している
ことを特徴とするハブ型ブレード。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のハブ型ブレードであって、
前記ブレード本体は、
金属母材と、前記金属母材に分散された砥粒とを備えていることを特徴とするハブ型ブレード。
【請求項4】
請求項3に記載のハブ型ブレードであって、
前記金属母材は、ニッケル又はニッケル合金からなり、
前記砥粒は、ダイヤモンド超砥粒とされていることを特徴とするハブ型ブレード。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のハブ型ブレードであって、
前記ブレード本体において両面粘着テープと接続される接続面は、
平坦に形成されていることを特徴とするハブ型ブレード。」


第4 引用文献、引用発明
1 引用文献1について
(1)引用文献1には、図面とともに以下の記載がある(下線は当審で付与した。以下同様。)。

ア 「 『問題点を解決する手段』
本発明は上記問題を解決するためになされたもので、金属めっき相中に超砥粒を分散してなる砥粒層シートから円環状砥粒層を成形し、この円環状砥粒層をそれよりも小径の円環状ハブの一面側に接着固定し、さらに前記砥粒層の露出面側にこの砥粒層と同径の研削用円板を剥離可能に貼付したのち、これら砥粒層および研削用円板の外周部を所定寸法に研削し、前記研削用円板を砥粒層から剥がすことを特徴とする。」(第2ページ左上欄第15行−右上欄第4行)

イ 「 『実施例』
以下、第1図ないし第8図を参照して、本発明に係わるハブ付き極薄刃砥石の製造方法の一実施例を説明する。
本法ではまず、第1図に示すようなアルミニウムまたはその合金からなるハブ10を用意する。このハブ10は、一端側にフランジ部10A、他端側に研削盤のマウントに外周を挟持される被固定部10Bを有し、研削加工により既に最終寸法に成形され、さらに陽極酸化処理が施されて表面に所定厚のアルミナ膜が形成されたものである。」(第2ページ右上欄第5行−第15行)

ウ 「 次に、得られた円環状砥粒層11を、第2図のように前記アルミハブ10に接着固定する。まず、ハブ10のフランジ部10A側の端面に接着剤を薄く塗布し、ここに取付治具で保持した円環状砥粒層11を同心に位置決めしてプレスし、固化するのを待つ。前記接着剤としては、粘性が小さく接着力の強いものが望ましく、例えばエポキシ系接着剤や瞬間接着剤等が好適である。」(第2ページ右下欄第11行−第18行)

エ 「 さらに、この例ではハブ10に陽極酸化処理を予め施したうえで砥粒層11を接着するので、ハブ10の材質自体に直接接着するより高い接着強度を得ることができる。これは、陽極酸化皮膜に存在する気孔が接着剤の接着力を高めるためである。」(第3ページ右上欄第4行−第9行)

オ 「 また、上記の例ではアルミハブ10を用いたが、本法ではエッチングが要らないためアルミ以外の金属も使用可能であり、例えば鉄製ハブなどを用いればさらに製造コストが削減できる。また、本法ではハブが金属製でなくてもよく、例えば各種プラスチック,セラミックス,焼結金属等で成形したハブも使用可能であり、その場合には量産によってさらにコスト削減が図れる。」(第3頁左下欄第5行−第12行)


(2)上記(1)から、引用文献1には次の技術的事項が記載されているものと認められる。

ア 上記(1)ア及びイの記載によれば、ハブ付き極薄刃砥石を構成するハブ10は円環状であり、ハブ10の一端側にはフランジ部10Aが形成され、ハブ10の他端側には研削盤のマウントに外周を挟持される被固定部10Bが形成されていること。
そして、ハブ付き極薄刃砥石の通常の使用方法を考慮すれば、円環状のハブ10は、被固定部10Bを挟持する研削盤によって、円環の中心軸線回りに回転可能な構成であり、また、ハブ10の軸線方向の一端側(一方側)にはフランジ部10Aが形成され、他端側(他方側)には被固定部10Bが形成されていること。

イ 上記(1)ウの記載によれば、ハブ10のフランジ部10A側に、円環状砥粒層11が接着固定されるものであること、当該接着固定により、前記ハブ10と前記円環状砥粒層11の間に接着剤が位置されること。

ウ 上記(1)イ、ウ及びエの記載によれば、アルミニウム又はその合金からなるハブ10において、接着剤が塗布されるフランジ部10Aの表面には、予め施された陽極酸化処理によって、所定厚の陽極酸化皮膜(アルミナ膜)が形成されており、陽極酸化皮膜に存在する気孔により接着剤の接着力が高められていること。

(3)上記(1)、(2)から、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「アルミニウム又はその合金からなり軸線回りに回転可能に形成され前記軸線方向の一方側にフランジ部10Aが形成されたハブ10と、
前記フランジ部10Aに接着固定された円環状砥粒層11と、
前記ハブ10と前記円環状砥粒層11の間に位置され前記ハブ10と前記円環状砥粒層11とを接着固定する接着剤と、
を備え、
前記フランジ部10Aの表面には、所定厚の陽極酸化皮膜が形成され、当該陽極酸化皮膜に存在する気孔により接着力が高められた、
ハブ付き極薄刃砥石。」

2 引用文献2について
(1)引用文献2には、図面とともに以下の記載がある。

ア 「【0009】円板砥石1は、図3に示すように、柔軟なシート状基材8の両面に、それぞれ弾性接着層10を介して、超砥粒12を一定厚の金属めっき相14中に分散してなる電鋳砥粒層16が接合されたものである。
【0010】シート状基材8としては、ポリエステル,ナイロン等の化学繊維布、不織布、各種紙、ポリイミドフィルム,ポリエステルフィルム等のエラスティックフィルム、金属やプラスチックからなる網状体、黄銅,銅,リン青銅等の金属箔などの比較的軟質な材質が選択され、その厚さは砥石として必要な強度および可撓性を考慮して決定される。
【0011】弾性接着層10としては、ゴム系,ウレタン系等の固化後にも柔軟な接着剤が使用され、その厚さは円板砥石1の可撓性が適正となるように設定される。例えば、歯科加工等用の砥石として好適な厚さ範囲は30〜500μm程度である。」

イ 「【0016】次に、用意したシート状基材8の両面に弾性接着剤10を塗布する一方、上記砥粒層16を基材8の寸法に応じて裁断し、シート状基材8の両面に砥粒層16の剥離面を貼付する。これら剥離面は、平面基板の表面と等しく良好な平滑度を有するので、砥粒層16に凹凸などが生じることなく、きわめて高精度に接着が行える。なお、シート状基材8は、予め両面に弾性接着層(粘着層)10が形成された両面粘着シートであってもよいし、各弾性接着層10そのものとして両面粘着テープを使用してもよい。」

ウ 「【0023】一方、シート状基材8としてメッシュ体を使用した場合には、図5に示すようにメッシュ体の孔の内部にも弾性接着層10を侵入させ、表裏両面の弾性接着層10を一体化してもよい。この場合には、弾性接着層10とシート状基材8との接合強度を高めることができる。」


第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。

引用発明1における「フランジ部10A」は、本願発明1における「ブレード取付面」に相当し、以下同様に、「円環状砥粒層11」は「ブレード本体」に、「ハブ付き極薄刃砥石」は「ハブ型ブレード」に、それぞれ相当する。
また、引用発明1における、アルミニウム又はその合金からなる「ハブ10」と、本願発明1における、チタン又はチタン合金からなる「チタンハブ」とは、ハブ型ブレードを構成する「ハブ」であるという点では一致するものである。
また、引用発明1における「接着剤」と、本願発明1における「両面粘着テープ」とは、ハブとブレード本体との間に位置され、前記ハブと前記ブレード本体とを接続する接続部材であるという点では一致するものである。
そして、引用発明1において、円環状砥粒層11がフランジ部10Aに「接着固定」されたことは、本願発明1において、ブレード本体がブレード取付面に「配置」されたことに相当し、以下同様に、接着剤によりハブ10と円環状砥粒層11とを「接着固定」することは、両面粘着テープによりハブとブレード本体とを「接続」することに相当する。

したがって、本願発明1と引用発明1の一致点、相違点は以下のとおりである。

<一致点>
「軸線回りに回転可能に形成され前記軸線方向の一方側にブレード取付面が形成されたハブと、
前記ブレード取付面に配置されたブレード本体と、
前記ハブと前記ブレード本体との間に位置され、前記ハブと前記ブレード本体とを接続する接続部材と、
を備えたハブ型ブレード。」

<相違点1>
本願発明1は、ハブが、「チタン又はチタン合金」からなるのに対し、引用発明1は、ハブが、「アルミニウム又はその合金」からなる点。

<相違点2>
本願発明1は、接続部材が「両面粘着テープ」であり、当該「両面粘着テープ」が位置される「前記ブレード取付面は、表面粗さRmax0〜20μmに形成されている」のに対し、引用発明1は、接続部材が「接着剤」であり、当該「接着剤」が位置される「前記フランジ部10Aの表面には、所定厚の陽極酸化皮膜が形成され、当該陽極酸化皮膜に存在する気孔により接着力が高められ」ている点。

(2)判断
ア 事案に鑑みて、上記相違点2から検討する。

(ア)第一に、引用文献1には、上記第4の1(1)の記載はもとより、他の記載をみても、接続部材として両面粘着テープを使用する点について記載や示唆はされておらず、また、ハブ10のフランジ部10Aにおける表面粗さを、両面粘着テープを安定して貼付できるよう、「表面粗さRmax0〜20μm」とすることについても、記載や示唆はされていない。

(イ)第二に、引用文献2には、上記第4の2(1)の記載によれば、シート状基材8の両面に、弾性接着層10又は両面粘着テープを介して、電鋳砥粒層16が接合されている可撓性円板砥石1、という技術的事項が記載されている。
また、引用文献2には、シート状基材8について、比較的軟質な材質が選択されること(段落【0010】)、厚さは砥石として必要な強度及び可撓性を考慮して決定されること(段落【0010】)、メッシュ体を使用すること(段落【0023】)、という技術的事項についても記載されている。
しかしながら、引用文献2には、上記第4の2(1)の記載はもとより、他の記載をみても、電鋳砥粒層16をシート状基材8に接合するに際し、シート状基材8の表面粗さに何らかの工夫(特に、両面粘着テープをシート状基材に安定して貼付できるように、シート状基材の表面粗さを所定の表面粗さにすること)を図る点については記載や示唆はされていない。

(ウ)第三に、ハブ型ブレードの技術分野において、ハブとブレード本体とを接続する接続部材として両面粘着テープを使用し、さらにハブのブレード取付面を表面粗さRmax0〜20μmに形成することが、当業者にとっては本願出願前に周知の技術又は技術常識であるとする証拠もない。

(エ)したがって、引用発明1において、引用文献1−2の記載、及び、当業者にとって周知の技術又は技術常識を参酌しても、相違点2に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。

イ 上記のとおり、引用発明1において、相違点2に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえないから、相違点1について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明1及び引用文献1−2の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2−5について
本願発明2−5は、本願発明1を直接的又は間接的に引用するものであり、本願発明1の構成を全て有するものであるから、上記1(2)において述べたものと同様の理由により、引用発明1及び引用文献1−2の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 小括
そうすると、本願発明1−5は、引用発明1及び引用文献1−2の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。


第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。


 
審決日 2021-12-01 
出願番号 P2017-024402
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B24D)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 見目 省二
特許庁審判官 田々井 正吾
貞光 大樹
発明の名称 ハブ型ブレード  
代理人 鈴木 慎吾  
代理人 細川 文広  
代理人 田▲崎▼ 聡  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ