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審決分類 審判 査定不服 発明同一 取り消して特許、登録 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 A63F
管理番号 1380894
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-06-02 
確定日 2022-01-11 
事件の表示 特願2017−222005号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 6月20日出願公開、特開2019− 92578号、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年11月17日の出願であって、令和1年9月30日付けで拒絶の理由が通知され、同年12月9日に意見書及び手続補正書、上申書が提出され、令和2年5月11日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年7月8日に意見書及び手続補正書が提出され、同年7月17日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年9月25日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、令和3年2月25日付け(送達日:同年3月2日)で、令和2年9月25日付け手続補正が却下されるとともに拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされ、それに対して、令和3年6月2日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。


第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
本願請求項1に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特願2017−205837号(特開2019−76424号)


第3 令和3年6月2日に提出された手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)について
1 本件補正
本件補正は、特許請求の範囲を補正する内容を含んでおり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
(補正後:令和3年6月2日付け手続補正書による補正)
「【請求項1】
A 大入賞口と当該大入賞口とは異なる複数の入賞口とを備え、前記大入賞口へ遊技球が入球した場合には1球の入球に対して所定個数の賞球の払出しが行われるとともに、前記入賞口へ遊技球が入球した場合には1球の入球に対して入賞口毎に定められた個数の賞球の払出しが行われる遊技機において、
B 遊技に使用された有効球を検知する有効球検知手段と、
C 遊技に使用された有効球のうち、前記入賞口へ入球した遊技球を検知する入球検知手段と、
D 前記遊技機から通常遊技時に払出された賞球の総数を計数する通常時賞球計数手段と、
E 通常遊技時において遊技に使用された有効球の総数を計数する通常時有効球計数手段と、
F 全ての遊技状態において遊技に使用された有効球の総数を計数する全状態時有効球計数手段と、
G 前記全状態時有効球計数手段で計数されている遊技に使用された有効球の総数が所定数に達したときの前記通常時賞球計数手段で計数されている前記賞球の総数を記憶する賞球記憶手段と、
H 前記全状態時有効球計数手段で計数されている遊技に使用された有効球の総数が所定数に達したときの前記通常時有効球計数手段で計数されている遊技に使用された有効球の総数を記憶する有効球記憶手段と、
I 前記通常遊技時において遊技に使用された有効球の総数に対する前記通常遊技時における前記賞球の総数の割合を示すベース値を計数するベース値計数手段と、
J 前記ベース値計数手段によって計数されるベース値を特定し得るベース値情報を記憶するベース値記憶手段と、
K 表示手段と、
L 大当り確率を定めた1の設定値を設定する設定手段と、
L1 外枠と、
前記外枠に開閉可能に支持される中枠と、を備え、
M 前記ベース値には、前記所定数に達するまでに計数される第1ベース値と、前記所定数に達したときの第2ベース値と、があり、
N 前記表示手段は、前記ベース値を表示するベース表示部と、前記ベース表示部に表示されている前記ベース値の識別子を表示する識別子表示部と、を有し、
O 前記ベース値記憶手段には、前回までの計数で前記所定数に達したときのベース値を特定し得るベース値情報が複数回分、記憶可能であり、
P 前記ベース表示部には、前記第1ベース値と、所定回分の計数で前記所定数に達したときの前記第2ベース値と、が表示され、
P1 前記識別子には、前記第1ベース値を識別する第1識別子と前記第2ベース値を識別する第2識別子と、があり、
P2 前記表示手段の表示状態には、前記第1ベース値と前記第1識別子とを表示する第1表示状態と、前記第2ベース値と前記第2識別子とを表示する第2表示状態と、があり、前記第1表示状態と前記第2表示状態とが予め定めた順番で切り替わり、
P3 前記遊技機では、前記中枠を開放すると、開放エラーが発生し、
P4 前記ベース値は、前記中枠を開放しているときに視認可能であり、
P5 前記ベース値は、前記開放エラーが発生しているか否かに関わらず表示され、
Q 前記識別子には、前記第1ベース値を識別する第1識別子と前記第2ベース値を識別する第2識別子と、があり、
R 前記遊技機は、前記遊技機が前記設定値の変更を許容する設定変更状態となる第1モードと、前記遊技機が前記設定値として現在の設定値を報知する設定確認状態となる第2モードと、を有し、
S 前記遊技機は、前記第1モードであることの報知と前記第2モードであることの報知をそれぞれ行うことが可能であって、各報知は変動ゲームにおいて図柄を表示する図柄表示手段で大当り図柄の表示態様及びはずれ図柄の表示態様の何れとも異なる表示態様で行われ、
T 前記表示手段は、前記第1モード及び前記第2モードのそれぞれにおいて前記設定値を表示する設定表示手段として兼用されており、
U 前記表示手段では、
前記第1モードにおいて前記設定値は表示されているが、前記ベース値は表示されておらず、当該第1モードの終了を契機に前記設定値の表示が前記ベース値の表示に切り替わり、
V 前記第2モードにおいて前記設定値は表示されているが、前記ベース値は表示されておらず、当該第2モードの終了を契機に前記設定値の表示が前記ベース値の表示に切り替わり、
W 前記第1モード、及び前記第2モードには、機裏側から操作可能に配設された設定操作手段の操作態様によって移行可能であり、
X 前記表示手段は、機裏側から視認可能に配設されている一方、前記図柄表示手段は、機表側から視認可能に配設されており、
Y 前記第1モード及び前記第2モードのそれぞれにおいて、前記図柄表示手段では、前記設定値が表示されない
Z 遊技機。」へと補正された(下線は、補正箇所を明示するために当審で付した。また、符号A〜Zは、当審にて分説して付した。)。

2 補正の適否
(1)本件補正は、補正前の請求項1について、発明を特定するために必要な事項である「図柄表示手段」について、「前記第1モード及び前記第2モードのそれぞれにおいて、前記図柄表示手段では、前記設定値が表示されない」という限定を加えるものである。

(2)補正目的
上記(1)の補正事項は、補正前の発明特定事項に限定を加えるものであって、補正後の請求項1に係る発明は、補正前の請求項1に係る発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。

(3)新規事項
本件補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面の【0213】の記載からみて新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に掲げる要件を満たす。

(4)独立特許要件
「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示したことを含め、補正後の請求項1に係る発明は、独立特許要件を満たすものであるから、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。


第4 本願発明
本件出願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、本件補正により補正された、上記「第3 1 本件補正」で示した特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである。


第5 先願明細書等に記載された発明
1 先願明細書等に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願の日前の他の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた特願2017−205837号(特開2019−76424号)(以下、「先願1」という。)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「先願明細書等」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審にて付した。以下同じ。)。
(1)記載事項
ア 「【0011】
遊技機10は島設備に固定される枠11に、ヒンジを介して開閉回動自在に取り付けられる開閉枠を備える。開閉枠は、前面枠12(本体枠)及びガラス枠15によって構成されている。
【0012】
前面枠12には、遊技盤30(図2参照)が配設されるとともに、遊技盤30の前面を覆うカバーガラス14を有するガラス枠15が取り付けられる。カバーガラス14は、遊技盤30に形成される遊技領域32(図2参照)を視認可能とする遊技視認領域として機能する。
【0013】
前面枠12及びガラス枠15は、それぞれ個別に開放することが可能となっている。例えば、ガラス枠15のみを開放することで、遊技盤30の遊技領域32にアクセスすることができる。また、前面枠12をガラス枠15が開放されていない状態で開放することで、遊技盤30の裏面側に配設された遊技制御装置(主基板)100(図7参照)等にアクセスすることができる。」

イ 「【0023】
なお、変動表示ゲームが実行される際の遊技状態は、複数の遊技状態からなる。通常遊技状態(通常状態)とは、特別な遊技状態が発生していない遊技状態である。また、特別な遊技状態とは、例えば、特定遊技状態としての時短状態や変動表示ゲームにおいて特別結果(例えば大当り)の発生確率が高い状態(確変状態、確率変動状態)、大当り状態(特別遊技状態)、小当り遊技状態(小当り状態)である。」

ウ 「【0038】
センターケース40の左下方の遊技領域32には一般入賞口35が配置されており、センターケース40の右下方の遊技領域32にも一般入賞口35が配置されている。これら一般入賞口35への遊技球の入賞は、一般入賞口35に備えられた入賞口スイッチ(SW)35a〜35n(図3参照)によって検出される。
【0039】
センターケース40の下方の遊技領域32には、特図変動表示ゲームの開始条件を付与する始動入賞口(第1始動入賞領域)36が設けられ、その直下には第2始動入賞口(第2始動入賞領域)を備えた普通変動入賞装置37が設けられる。普通変動入賞装置37は、上端側が手前側に倒れる方向に回動することで、遊技球が流入し易い状態に変換する可動部材(可動片)37bを備える。可動部材37bが閉状態である場合には遊技球が普通変動入賞装置37に入賞できないようになっている。遊技球が始動入賞口36又は普通変動入賞装置37に入賞した場合には、補助遊技として特図変動表示ゲームが実行される。
・・・
【0042】
普通変動入賞装置37の右下方の遊技領域32には、大入賞口ソレノイド(39b)(図3参照)によって上端側が手前側に倒れる方向に回動することで大入賞口を開放するアタッカ形式の開閉扉39cを有する特別変動入賞装置39が設けられている。特別変動入賞装置39は、特図変動表示ゲームの結果によって大入賞口を閉じた状態(遊技者にとって不利な閉塞状態)から開放状態(遊技者にとって有利な特別遊技状態)に変換し、大入賞口内への遊技球の流入を容易にさせることで、遊技者に所定の遊技価値(賞球)を付与するようになっている。なお、大入賞口内には、当該大入賞口に入った遊技球を検出する検出手段としてカウントスイッチ39a(図3参照)が配設されている。また、特別変動入賞装置39の大入賞口内や大入賞口近傍(大入賞口の周囲)には、大入賞口を照らす1つ又は複数の大入賞口LED39d(フルカラーLED)が配設されている。
【0043】
一般入賞口35、始動入賞口36、普通変動入賞装置37、及び特別変動入賞装置39の大入賞口に遊技球が入賞すると、払出制御装置200(図3参照)は、入賞した入賞口の種類に応じた数の賞球を払出装置から上皿21に排出する。また、普通変動入賞装置37の下方の遊技領域32には、入賞口等に入賞しなかった遊技球を回収するアウト口30bが設けられている。」

エ 「【0044】
また、遊技領域32の外側であって遊技盤本体30aの右下角部には、特図変動表示ゲーム(特図1変動表示ゲーム、特図2変動表示ゲーム)及び普図変動表示ゲームを実行する一括表示装置50が設けられている。一括表示装置50は、現在の遊技状態等の情報を表示する表示部51〜60を備える(図2B参照)。
【0045】
図2Bは、一括表示装置50の構成を示す図である。一括表示装置50は、7セグメント型の表示器(LEDランプ)等で構成された変動表示ゲーム用の第1特図変動表示部51(特図1表示器、ランプD1)及び第2特図変動表示部52(特図2表示器、ランプD2)と、普図変動表示ゲーム用の変動表示部53(普図表示器、ランプD8、D10、D18)と、各変動表示ゲームの始動(保留)記憶数報知用の記憶表示部(特図1保留表示器54、特図2保留表示器55、普図保留表示器56)と、を有している。特図1保留表示器54はランプD11、D12により構成される。特図2保留表示器55は、ランプD13、D14により構成される。普図保留表示器56は、ランプD15、D16により構成される。」

オ 「【0058】
遊技球の始動入賞口36への入賞及び普通変動入賞装置37への入賞は、始動口1スイッチ36a(図3参照)及び始動口2スイッチ37a(図3参照)によって検出される。始動入賞口36に入賞した遊技球は特図1変動表示ゲームの始動入賞球として検出され、所定の上限数を限度に記憶されるとともに、普通変動入賞装置37に入賞した遊技球は特図2変動表示ゲームの始動入賞球として検出され、所定の上限数を限度に記憶される。」

カ 「【0079】
また、遊技制御装置100(主基板)は、操作者の回転操作等によってオンすることによって遊技条件(遊技)に関する設定値を変更可能な状態にする設定キースイッチ93と、操作者の操作に応じて遊技条件に関する設定値を変更可能な設定値変更スイッチ102と、を備える。本実施形態では、遊技条件(遊技)に関する設定値は、大当り確率の確率設定値であるが、大当り確率以外の他の遊技条件(小当り確率や確変突入率など)も確率設定値に応じて変更可能である。設定キースイッチ93と設定値変更スイッチ102は、遊技条件に関する設定(設定値)を変更可能な設定変更手段(設定変更装置42)を構成する。なお、本実施形態において、設定値を確定させるための確定信号として、操作ハンドル24に設けられたタッチスイッチのタッチスイッチ信号を利用するが、操作可能な確定ボタンスイッチ(操作手段、操作部)を遊技制御装置100に設けて、確定ボタンスイッチからの信号を、設定値を確定させるための確定信号として利用してもよい。
【0080】
設定キースイッチ93と設定値変更スイッチ102は、遊技機10内部の遊技制御装置100上に設けられることによって、前面枠12(本体枠)が開放されなければ操作できない位置(アクセスできない位置)に配置される。即ち、一般の遊技者は、設定キースイッチ93と設定値変更スイッチ102にアクセスして操作することができない。なお、本実施形態において、設定キースイッチ93と設定値変更スイッチ102は、遊技制御装置100上に組み付けるようにして設けるが、電源装置400の電源基板上など、前面枠12(本体枠)が開放されなければアクセスできない位置に設けてもよい。
【0081】
遊技機10の電源投入の際に、前面枠12(本体枠)が開放されて設定キースイッチ93がオンした状態にある場合、操作者が設定値変更スイッチ102(設定値変更ボタン)を操作することによって、大当りの確率や確変突入率などの遊技条件に関する設定(設定値)を変更することができる。即ち、電源投入のときに、前面枠12が開放され設定キースイッチ93がオンした状態が、設定(設定値)の変更が可能となる設定可変状態となる。通常の手順では、操作者は、前面枠12を開放して設定キースイッチ93を回転操作してオン位置にし電源投入を行うと、設定変更中の状態に相当する設定可変状態となる。設定可変状態は、スピーカからの音声によって報知されてもよい。なお、電源投入のときに、ガラス枠15が開放され設定キースイッチ93がオンした状態を設定可変状態としてもよいし、前面枠12とガラス枠15の両方が開放され設定キースイッチ93がオンした状態を設定可変状態としてもよい
・・・
【0083】
設定値変更処理では、操作者によって設定値変更スイッチ102(設定値変更ボタン)が操作される度に、設定値(設定)を設定値1→設定値2→設定値3→設定値4→設定値5→設定値6→設定値1→設定値2→・・・のように変更して選択する。なお、設定値変更ボタンの操作ではなく、設定キースイッチ93を所定の位置に回転操作して設定値を変更する構成としてもよい。また、設定値は6段階に限られない。そして、選択されている1〜6の設定値が、7セグメント型の表示器である確率設定値表示装置143等に表示される。なお、確率設定値表示装置143は、電気回路を介して設定値変更スイッチ102の操作に直接連動して表示を変化させてよい。後述のように、一括表示装置50の変動表示ゲーム用の第1特図変動表示部51及び/又は第2特図変動表示部52に、選択されている1〜6の設定値を表示してもよい。
【0084】
操作者が操作ハンドル24に触れることによってタッチスイッチ信号が遊技制御装置100に入力されると、選択(変更)された設定値(即ち設定)が確定してRWM(記憶手段)内の確率設定値領域に記憶され、設定値変更処理は終了する。なお、タッチスイッチ信号に関係なく、設定値変更後に設定キースイッチ93をオフしたり、設定可変状態になってから所定時間経過すると、遊技制御装置100が設定値(即ち設定)を確定して記憶する構成も可能である。
【0085】
一方、遊技機10の電源投入後に、前面枠12(本体枠)を開放して設定キースイッチ93を回転操作してオフ状態からオン状態にすると、設定値確認モード(設定確認状態)になる。設定値確認モードでは、確率設定値表示装置143に表示された設定値を確認できる。一括表示装置50の変動表示ゲーム用の第1特図変動表示部51及び/又は第2特図変動表示部52に、選択されている1〜6の設定値を表示して確認してもよい。設定値確認モード(設定確認状態)は、スピーカからの音声によって報知されてもよい。」

キ 「【0104】
また、入力部120には、払出制御装置200から出力される枠電波不正信号、払出ビジー信号、払出異常を示すステータス信号、払出前の遊技球の不足を示すシュート球切れスイッチ信号、オーバーフローを示すオーバーフロースイッチ信号、操作ハンドル24に設けられたタッチスイッチの入力に基づくタッチスイッチ信号、アウト球検出スイッチからのアウト球検出スイッチ信号を取り込んでデータバス140を介して遊技用マイコン111に供給する第1入力ポート122が設けられている。オーバーフロースイッチ信号は、下皿23に遊技球が所定量以上貯留されていること(満杯になったこと)を検出したときに出力される信号である。枠電波不正信号は前面枠12(本体枠)に設けられた枠電波センサが電波を検出することに基づき出力される信号であり、払出ビジー信号は払出制御装置200がコマンドを受付可能な状態か否かを示す信号である。本実施形態において、アウト球検出スイッチ(不図示)は、遊技領域に発射されて遊技を終えた全ての遊技球を検出するものである。アウト球検出スイッチ(不図示)は、アウト口30bを通過する遊技球のみを検出してもよい。」

ク 「【0121】
状態表示装置152は、遊技制御装置100(主基板)上に設けられるものであるが、他の場所に設けられてもよい。例えば、状態表示装置152は、4桁の7セグメント型(点部分を含めると8セグメント型)の表示器であり、役物比率や出玉率や排出球数を表示可能である。なお、状態表示装置152は、役物比率や出玉率や排出球数を直接的に表示するものに限られずに、排出球数、出玉率、役物比率を間接的に表示するものでもよい。即ち、状態表示装置152は、役物比率や出玉率や排出球数に関する情報を表示できればよい。
【0122】
ここで、排出球数は、遊技領域32から排出された遊技球の数(アウト球数とも呼ぶ)であり、入賞口を通過した遊技球の数(入賞数)とアウト口30bを通過した遊技球の数との合計である。排出球数は、球発射装置から遊技領域32に発射された遊技球の個数である発射球数と基本的に同じになる。排出球数は、アウト球検出スイッチの信号をカウント(計数)することにより取得できる。本実施形態では、入賞口には、一般入賞口35、始動入賞口36(第1始動入賞口、始動口1)、普通変動入賞装置37(第2始動入賞口、始動口2)、及び、特別変動入賞装置39(大入賞口)が含まれる。排出球数は、カウントダウン表示され、(100−排出球数)が表示され、100個(所定個数)までしかカウントされない。なお、排出球数は、「00」から「99」へとカウントアップ表示されてもよい。
【0123】
出玉率は、排出球数(或は発射球数)に対する賞球数の合計の比率(割合)であり、(獲得球数÷排出球数)×100(%)で計算される。即ち、出玉率は、排出球数100個当りの獲得球数(賞球数の合計)となる。」

ケ 「【0243】
次に、遊技制御装置100は、状態スキャンカウンタの値に応じて、監視する状態を設定するための遊技機状態監視テーブル2を準備する(A2014)。そして、エラーが発生しているかなどの状態を判定する遊技機状態チェック処理を実行する(A2015)。
【0244】
状態スキャンカウンタの値を遊技機状態監視テーブル2に参照することで、状態スキャンカウンタの値が0である場合はガラス枠開放検出スイッチから出力される信号に基づく状態(ガラス枠開放エラー)の監視が設定され、状態スキャンカウンタの値が1である場合は前面枠開放検出スイッチから出力される信号に基づく状態(本体枠開放エラー、前面枠開放エラー)の監視が設定される。また、状態スキャンカウンタの値が2である場合は枠電波不正信号に基づく状態(枠電波不正)の監視が設定され、状態スキャンカウンタの値が3である場合はタッチスイッチ信号に基づく状態の監視が設定される。」

コ 「【0267】
次に、遊技制御装置100は、操作ハンドル24に設けられたタッチスイッチからのタッチスイッチ信号の入力があるか否かを判定する(A2411)。タッチスイッチ信号の入力がない場合に(A2411の結果が「N」)、確率設定値変更処理を終了する。タッチスイッチ信号の入力がある場合に(A2411の結果が「Y」)、作業用確率設定値領域の値をロードし、確率設定値領域にセーブする(A2412)。タッチスイッチ信号は、設定値を確定させるための確定信号となる。そして、確定した確率設定値に対応する値0〜5が確率設定値領域に記憶されることになる。」

サ 「【0617】
[第3実施形態]
図50から図54を参照して、第3実施形態について説明する。なお、以下で述べる以外の構成は、第1実施形態や第2実施形態と同様でよい。また、以下の実施形態では、第1実施形態や第2実施形態と同じ機能を果たす構成には同一の符号を用い、重複する記載を適宜省略して説明する。第3実施形態は、電源投入時の役物(可動部材)の初期動作に関するものである。
【0618】
〔遊技機の裏面〕
始めに、図50を参照して、第3実施形態に係る遊技機10の裏面側に配設された遊技制御装置100(主基板)等の構成について説明する。図50は、第3実施形態に係る遊技機10の裏面図である。
・・・
【0622】
また、遊技制御装置100の裏面下部には、遊技条件に関する設定を変更可能な設定変更装置42(設定変更手段)の設定キースイッチ93(キースイッチ)及び設定値変更スイッチ102(設定値変更ボタンスイッチ、ボタンスイッチ)と、7セグメント型の確率設定値表示装置143(表示器、LEDランプ)と、が配設される。このように、設定キースイッチ93、設定値変更スイッチ102、及び確率設定値表示装置143は、遊技機10内部に設けられており、例えば前面枠12を開けなければ操作できない(アクセスできない)。すなわち、一般の遊技者は、設定変更装置42にアクセスして操作することができず、確率設定値表示装置143の表示も確認することはできない。また、設定キースイッチ93、設定値変更スイッチ102、及び確率設定値表示装置143は、遊技機10内部に設けられているので、後述する内部役物44a、44bや外部役物95aの初期動作によって隠蔽される(重なる)ことがない。」

シ 「【0979】
その後、時刻u9で設定キースイッチ93(設定キー)がオフ(第二態様)にされ、クリア対象のRAM領域が0クリアされることによって(A2417)、確率設定値変更中フラグとともに、セキュリティ信号制御タイマが所定時間経過したか否かに関わらず強制的にクリアされて、外部情報出力がオフになり、遊技機状態は設定変更モードから遊技モードになり、設定変更が終了する。また、クリア対象のRAM領域が0クリアされることで(A2417)、確率設定値表示許可フラグもクリアされ、設定値が表示されていた確率設定値表示装置143(本実施形態では、状態表示装置152の役物比率表示部68が兼用する)に役物比率が表示される(役物比率表示)。なお、確率設定値表示装置143と兼用される状態表示装置152には、役物比率に関する情報を表示する代わりに、出玉率や排出球数、ベース値(通常遊技状態における出玉率)に関する情報を表示してもよい(出玉率表示、排出球数表示、ベース値表示)。
・・・
【1000】
その後、時刻u13で設定キースイッチ93がオフにされることによって、確率設定値確認モード中フラグとともにセキュリティ信号制御タイマが所定時間経過したか否かに関わらず強制的にクリアされて(A2510)、外部情報出力がオフになり、遊技機状態は設定確認モードから遊技モードになり、設定確認が終了する。また、併せて、確率設定値表示許可フラグがクリアされて(A2511)、設定値が表示されていた確率設定値表示装置143(設定表示装置)に役物比率が表示される(役物比率表示)。なお、役物比率表示に限らず、出玉率表示や排出球数表示、ベース値表示としてもよい。」

ス 「【1030】
[第10実施形態]
図101から図103を参照して、第10実施形態について説明する。なお、以下で述べる以外の構成は、第1実施形態から第9実施形態までの実施形態と同様でよい。第10実施形態は、確率設定値の表示態様に関するものである。
【1031】
〔一括表示装置の表示〕
図101は、停止図柄番号(A4004、A4013、A4016、A7510)と当該停止図柄番号に対応する一括表示装置50の第1特図変動表示部51の点灯パターンと、確率設定値の点灯パターンと、を例示する図である。点灯パターンは、停止図柄パターン(A4006、A4014、A4017)に対応するものである。
【1032】
始めに、図101(a)は、停止図柄番号と当該停止図柄番号に対応する一括表示装置50の特図1変動表示ゲーム用の第1特図変動表示部51(7セグメント型(又は8セグメント型)のLEDランプD1(図34A等))の点灯パターンを例示する図である。
【1033】
特図1変動表示ゲーム(第1特図変動表示ゲーム)において、遊技制御装置100は、特図1表示部51で識別情報(特別図柄、特図)を変動表示した後に所定の結果態様を停止表示する。識別情報が変動表示した後の所定の結果態様は、例えば、図101(a)に示す点灯パターンのうち所定の結果態様の停止図柄番号(0〜50)に対応する点灯パターンが選択される。
・・・
【1036】
本実施形態に係る確率設定変更中(設定の変更が可能となる設定可変状態中)の一括表示装置50の各表示部の表示、即ち、一括表示装置50の各発光部(LEDランプD1〜D18)の発光態様(点灯・消灯の態様)については、図34Aや図35で説明した第1実施形態に係る態様と同様に行うことができる。具体的には、第1特図変動表示部51には、作業用確率設定値に対応する確率設定値表示データ(A2409)や確率設定値に対応する確率設定値表示データ(A2413)に基づいて、作業用確率設定値や確率設定値を示す数字1〜6が点灯表示又は点滅表示される(出力処理のA1603〜A1608)。
【1037】
このように、確率設定変更中において、第1特図変動表示部51に変動停止時と異なる表示(通常と異なる表示)を行うことによって、遊技機10が遊技(例えば変動表示ゲーム)のできない状態であることを遊技機10の正面において明示できる。なお、第1特図変動表示部51の変動停止時の停止表示(図101(a)の点灯パターン)では、確率設定値を示す数字1〜6は使用されないものとする。その結果、確率設定値の表示態様と、特図1変動表示ゲームの結果態様のような遊技に関する表示態様と、を容易に見分けることができる。」

セ 「【図101】



ソ 「【1042】
加えて、確率設定変更中において、確率設定値を一括表示装置50の第1特図変動表示部51や第2特図変動表示部52に表示している間、第1特図変動表示部51や第2特図変動表示部52以外の一括表示装置50の全ての発光部(LEDランプD3−D18)を点滅表示させるようにしてもよい。このように、第1特図変動表示部51や第2特図変動表示部52以外の一括表示装置50の全ての発光部を、通常と異なる態様で点滅表示させることによっても、遊技機10が確率設定変更中であることを遊技機10の正面において示唆することができる。
【1043】
〔状態表示装置の表示〕
図102は、出玉率に関する情報を表示する状態表示装置152の詳細を示す図である。状態表示装置152は、4個の7セグメント型(点部分を含めると8セグメント型)の表示器900を横に並べたものであり、右から桁0、桁1、桁2、桁3を示す4桁の7セグメント型の表示器である。状態表示装置152は、遊技機10の電源投入から現在までの全体の出玉率(例えば図102に示す「bL.35」)と、直近の所定数(例えば6万発)の排出球数に対する出球率(例えば「b6.36」)と、を切り換えて表示することができる。なお、状態表示装置152は、出球率だけでなく、ベース値や役物比率を表示してもよい。また、本実施形態において、状態表示装置152は、確率設定値表示装置143としても用いられ、確率設定値を表示可能である。
【1044】
続いて、図103は、確率設定値を示す数字を表示する状態表示装置152の詳細を示す図である。【1045】図103(a)は、確率設定値を示す数字(例えば3)を左端の桁3に表示した状態表示装置152の一例である。桁3は、図102に示す出球率表示において、数字以外の文字(例えば「b」)が表示される桁である。したがって、桁3に確率設定値を表示することで、確率設定値以外の他の表示、すなわち遊技に関する表示(例えば出球率表示)における数字部分と確率設定値とが被ることがない。また、図102に示す出球率表示と異なり、確率設定値を表示する桁3以外の桁は消灯状態になる。その結果、確率設定値の表示態様と、出球率表示といった他の表示態様と、を容易に見分けることができる。
・・・
【1051】
〔第10実施形態の変形例〕
また、第10実施形態では、表示装置(一括表示装置50や状態表示装置152)は確率設定値表示装置143としても機能し、遊技に関する表示(例えば識別情報を変動表示した後の表示結果としての所定の結果態様や、出球率、ベース値、役物比率)と遊技条件に関する設定値(確率設定値)とをそれぞれ表示可能であった。しかしながら、このように表示装置(一括表示装置50や状態表示装置152)を確率設定値表示装置143と兼用させる態様に限らず、第1実施形態と同様に、表示装置(一括表示装置50や状態表示装置152(第1表示装置))とは異なる独立した第2表示装置として確率設定値表示装置143を遊技機10上に設けてもよい。また、一方の表示装置で表示を行っている際は、他方の表示装置の表示を消灯してもよい。具体的には、例えば第2表示装置(確率設定値表示装置143)に確率設定値を表示している際は、第1表示装置(一括表示装置50、状態表示装置152)の遊技に関する表示を非表示にすることができる。
・・・
【1055】
なお、表示装置(一括表示装置50や状態表示装置152)の表示態様は、確率設定変更中だけに限らず、確率設定確認中(設定確認モード、設定確認状態)においても、上述したような遊技に関する表示と異なる表示態様とすることができる。
【1056】
第10実施形態の変形例に係る遊技機10では、遊技に関する表示(例えば識別情報を変動表示した後の表示結果としての所定の結果態様や、出球率、ベース値、役物比率)を表示可能な第1表示装置(一括表示装置50、状態表示装置152)と、遊技条件に関する設定値(確率設定値)を変更可能な設定変更手段(設定変更装置42)と、設定値を表示可能な第2表示装置(確率設定値表示装置143)と、を備える。制御手段(遊技制御装置100)は、設定変更手段によって設定値が変更可能な状態(設定変更モード、設定可変状態)にされたことに対応して、遊技に関する表示とは異なる態様で当該設定値を第2表示装置に表示する。このような遊技機10によれば、遊技に関する表示と遊技条件に関する表示とがそれぞれ別の表示装置に表示されることになるので、遊技に関する表示と遊技条件に関する表示とを容易に見分けることができる。
【1057】
また、第10実施形態の変形例に係る遊技機10では、制御手段(遊技制御装置100)は、遊技に関する表示(例えば識別情報を変動表示した後の表示結果としての所定の結果態様や、出球率、ベース値、役物比率)を第1表示装置(一括表示装置50、状態表示装置152)に表示し、設定変更手段(設定変更装置42)によって設定値(確率設定値)が変更可能な状態(設定変更モード、設定可変状態)にされたことに対応して、第1表示装置の遊技に関する表示を非表示にし、第2表示装置(確率設定値表示装置143)に設定値を表示する。このような遊技機10によれば、第2表示装置に設定値を表示している際に、第1表示装置の遊技に関する表示が非表示となるので、遊技機10が遊技(例えば変動表示ゲーム)のできない状態であることを容易に見分けることができる。」

(2)認定事項
ア 認定事項ア
先願明細書等の【0083】に、「・・・選択されている1〜6の設定値が、7セグメント型の表示器である確率設定値表示装置143等に表示される。」と記載され、【0979】には、「・・・設定値が表示されていた確率設定値表示装置143(本実施形態では、状態表示装置152の役物比率表示部68が兼用する)に役物比率が表示される(役物比率表示)。なお、確率設定値表示装置143と兼用される状態表示装置152には、役物比率に関する情報を表示する代わりに、出玉率や排出球数、ベース値(通常遊技状態における出玉率)に関する情報を表示してもよい(出玉率表示、排出球数表示、ベース値表示)。」と記載され、【1000】には、「設定値が表示されていた確率設定値表示装置143(設定表示装置)に役物比率が表示される(役物比率表示)。なお、役物比率表示に限らず、出玉率表示や排出球数表示、ベース値表示としてもよい。」と記載されている。
これらの記載は、確率設定値表示装置143と兼用される状態表示装置152に設定値又はベース値(通常遊技状態における出玉率)に関する情報が表示されていることを表しているから、先願明細書等には、状態表示装置152に設定値が表示されること、及び、設定値が表示されていた状態表示装置152にベース値(通常遊技状態における出玉率)に関する情報を表示することが記載されていると認められる。

イ 認定事項イ
先願明細書等の【1036】に、「本実施形態に係る確率設定変更中(設定の変更が可能となる設定可変状態中)の一括表示装置50の各表示部の表示、・・・具体的には、第1特図変動表示部51には、作業用確率設定値に対応する確率設定値表示データ(A2409)や確率設定値に対応する確率設定値表示データ(A2413)に基づいて、作業用確率設定値や確率設定値を示す数字1〜6が点灯表示又は点滅表示される(出力処理のA1603〜A1608)。」と記載され、【1037】に、「このように、確率設定変更中において、第1特図変動表示部51に変動停止時と異なる表示(通常と異なる表示)を行うことによって、遊技機10が遊技(例えば変動表示ゲーム)のできない状態であることを遊技機10の正面において明示できる。なお、第1特図変動表示部51の変動停止時の停止表示(図101(a)の点灯パターン)では、確率設定値を示す数字1〜6は使用されないものとする。その結果、確率設定値の表示態様と、特図1変動表示ゲームの結果態様のような遊技に関する表示態様と、を容易に見分けることができる。」と記載されている。
また、先願明細書等の【0083】に、「設定値変更処理では、操作者によって設定値変更スイッチ102(設定値変更ボタン)が操作される度に、設定値(設定)を設定値1→設定値2→設定値3→設定値4→設定値5→設定値6→設定値1→設定値2→・・・のように変更して選択する。・・・後述のように、一括表示装置50の変動表示ゲーム用の第1特図変動表示部51及び/又は第2特図変動表示部52に、選択されている1〜6の設定値を表示してもよい。」とも記載され、上で摘記した【1036】の「作業用確率設定値や確率設定値を示す数字1〜6」を、「選択されている1〜6の設定値」と言い換えることができるから、先願明細書等には、設定可変状態において、第1特図変動表示部51に、選択されている1〜6の設定値が点灯表示又は点滅表示されて、第1特図変動表示部51に変動停止時と異なる表示(通常と異なる表示)を行うことが記載されていると認められる。

ウ 認定事項ウ
上記イに加えて、先願明細書等の【1055】に、「なお、表示装置(一括表示装置50や状態表示装置152)の表示態様は、確率設定変更中だけに限らず、確率設定確認中(設定確認モード、設定確認状態)においても、上述したような遊技に関する表示と異なる表示態様とすることができる。」と記載されていることから、先願明細書等には、設定確認状態において、第1特図変動表示部51に、選択されている1〜6の設定値が点灯表示又は点滅表示されて、第1特図変動表示部51に変動停止時と異なる表示(通常と異なる表示)を行うことが記載されていると認められる。

エ 認定事項エ
先願明細書等の【0080】に、「設定キースイッチ93と設定値変更スイッチ102は、遊技機10内部の遊技制御装置100上に設けられることによって、前面枠12(本体枠)が開放されなければ操作できない位置(アクセスできない位置)に配置される。」と記載され、【0081】に、「遊技機10の電源投入の際に、前面枠12(本体枠)が開放されて設定キースイッチ93がオンした状態にある場合、操作者が設定値変更スイッチ102(設定値変更ボタン)を操作することによって、大当りの確率や確変突入率などの遊技条件に関する設定(設定値)を変更することができる。」と記載され、これら記載から、設定キースイッチ93と設定値変更スイッチ102のみならず、遊技機10内部の遊技制御装置100自体が、前面枠12(本体枠)が開放されることによりアクセス可能となる位置に配置されているといえ、さらに、【0121】に、「状態表示装置152は、遊技制御装置100(主基板)上に設けられるものであるが、」と記載されていること、及び、認定事項アより、状態表示装置152にベース値(通常遊技状態における出玉率)に関する情報を表示することが記載されていると認められること踏まえると、先願明細書等には、ベース値(通常遊技状態における出玉率)に関する情報が表示される状態表示装置152が設けられている遊技制御装置100は、前面枠12(本体枠)が開放されることによりアクセス可能となる位置に配置されていることが記載されていると認められる。

(3)先願発明
上記(1)、(2)を総合すると、先願明細書等には次の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されていると認められる(符号a〜zは、本願発明の分説に対応させて、当審が付した。)。
先願発明
「a 大入賞口ソレノイド(39b)によって上端側が手前側に倒れる方向に回動することで大入賞口を開放するアタッカ形式の開閉扉39cを有する特別変動入賞装置39が設けられ、センターケース40の左下方の遊技領域32には一般入賞口35が配置され、センターケース40の右下方の遊技領域32にも一般入賞口35が配置され、センターケース40の下方の遊技領域32には、特図変動表示ゲームの開始条件を付与する始動入賞口(第1始動入賞領域)36が設けられ、その直下には第2始動入賞口(第2始動入賞領域)を備えた普通変動入賞装置37が設けられ、一般入賞口35、始動入賞口36、普通変動入賞装置37、及び特別変動入賞装置39の大入賞口に遊技球が入賞すると、払出制御装置200は、入賞した入賞口の種類に応じた数の賞球を払出装置から上皿21に排出する遊技機10において(【0011】、【0038】、【0039】、【0042】、【0043】)、

b 遊技領域に発射されて遊技を終えた全ての遊技球を検出するアウト球検出スイッチと(【0104】)、

c 一般入賞口35への遊技球の入賞を検出する入賞口スイッチ(SW)35a〜35nと、大入賞口に入った遊技球を検出するカウントスイッチ39aと、遊技球の始動入賞口36への入賞及び普通変動入賞装置37への入賞を検出する、始動口1スイッチ36a及び始動口2スイッチ37aと(【0038】、【0042】、【0058】)、

k ベース値(通常遊技状態における出玉率)に関する情報を表示する状態表示装置152と(【0083】、【0979】、認定事項ア)、

l 作業用確率設定値領域の値をロードし、確率設定値領域にセーブする遊技制御装置100と(【0267】)、

l1 島設備に固定される枠11と、
前記枠11に、ヒンジを介して開閉回動自在に取り付けられ、前面枠12(本体枠)及びガラス枠15によって構成されている開閉枠と、を備え(【0011】、【0012】)、

p3 遊技制御装置100は、状態スキャンカウンタの値に応じて、監視する状態を設定するための遊技機状態監視テーブル2を準備し、エラーが発生しているかなどの状態を判定する遊技機状態チェック処理を実行して、状態スキャンカウンタの値を遊技機状態監視テーブル2に参照することで、状態スキャンカウンタの値が1である場合は前面枠開放検出スイッチから出力される信号に基づく状態(本体枠開放エラー、前面枠開放エラー)の監視が設定され(【0243】、【0244】)、

r 遊技機10の電源投入の際に、前面枠12(本体枠)が開放されて設定キースイッチ93がオンした状態にある場合、操作者が設定値変更スイッチ102を操作することによって、大当りの確率や確変突入率などの遊技条件に関する設定(設定値)を変更することができる設定可変状態となり、遊技機10の電源投入後に、前面枠12(本体枠)を開放して設定キースイッチ93を回転操作してオフ状態からオン状態にすると、設定確認状態になり(【0081】、【0085】)、

s 設定可変状態において、第1特図変動表示部51に、選択されている1〜6の設定値が点灯表示又は点滅表示されて、第1特図変動表示部51に変動停止時と異なる表示(通常と異なる表示)を行うとともに、設定確認状態において、第1特図変動表示部51に、選択されている1〜6の設定値が点灯表示又は点滅表示されて、第1特図変動表示部51に変動停止時と異なる表示(通常と異なる表示)を行い(【0083】、【1036】、【1037】、【1055】、認定事項イ、認定事項ウ)、

t 設定可変状態では、選択されている1〜6の設定値が、状態表示装置152に表示され、設定確認状態では、状態表示装置152に表示された設定値を確認でき(【0081】、【0083】、【0085】、【0979】、【1043】、認定事項ア)、

u 設定キースイッチ93がオフにされ、クリア対象のRAM領域が0クリアされることによって、遊技機状態は設定可変状態から遊技モードになり、設定変更が終了し、また、クリア対象のRAM領域が0クリアされることで、確率設定値表示許可フラグもクリアされ、設定値が表示されていた状態表示装置152にベース値(通常遊技状態における出玉率)に関する情報を表示し(【0081】、【0083】、【0979】、【1000】、認定事項ア)、

v 設定キースイッチ93がオフにされると、遊技機状態は設定確認状態から遊技モードになり、設定確認が終了し、また、併せて、確率設定値表示許可フラグがクリアされて、設定値が表示されていた状態表示装置152にベース値(通常遊技状態における出玉率)に関する情報を表示し(【0083】、【0085】、【0979】、【1000】、認定事項ア)、

p4、w 遊技機10の裏面側に配設された遊技制御装置100の裏面下部には、遊技条件に関する設定を変更可能な設定変更装置42(設定変更手段)の設定キースイッチ93及び設定値変更スイッチ102と、が配設され、ベース値(通常遊技状態における出玉率)に関する情報が表示される状態表示装置152が設けられている遊技制御装置100は、前面枠12(本体枠)が開放されることによりアクセス可能となる位置に配置されていて、
遊技機10の電源投入の際に、前面枠12(本体枠)が開放されて設定キースイッチ93がオンした状態にある場合、操作者が設定値変更スイッチ102を操作することによって、大当りの確率や確変突入率などの遊技条件に関する設定(設定値)を変更することができ、電源投入後に、前面枠12(本体枠)を開放して設定キースイッチ93を回転操作してオフ状態からオン状態にすると、設定確認状態になり(【0080】、【0081】、【0085】、【0121】、【0618】、【0622】、認定事項エ)、

x 状態表示装置152は、遊技機10の裏面側に配設された遊技制御装置100上に設けられ、変動表示ゲーム用の第1特図変動表示部51を有している一括表示装置50は、遊技領域32の外側であって遊技盤本体30aの右下角部に設けられている(【0044】、【0121】、【0618】)、

z 遊技機10(【0011】)。」


第6 対比・判断
1 対比
分説に従い、先願発明と本願発明とを対比する。
ア 構成Aについて
先願発明の「大入賞口」は、本願発明の「大入賞口」に相当し、先願発明の「一般入賞口35」、「始動入賞口(第1始動入賞領域)36」及び「第2始動入賞口(第2始動入賞領域)」は、本願発明の「複数の入賞口」に相当する。また、先願発明の「払出制御装置200」が具備する「一般入賞口35、始動入賞口36、普通変動入賞装置37、及び特別変動入賞装置39の大入賞口に遊技球が入賞すると、」「入賞した入賞口の種類に応じた数の賞球を払出装置から上皿21に排出する」という機能は、本願発明の「前記大入賞口へ遊技球が入球した場合には1球の入球に対して所定個数の賞球の払出しが行われるとともに、前記入賞口へ遊技球が入球した場合には1球の入球に対して入賞口毎に定められた個数の賞球の払出しが行われる」ことに相当する。
よって、先願発明の構成aは、本願発明の構成Aに相当する。

イ 構成Bについて
先願発明の「アウト球検出スイッチ」は、本願発明の「有効球検知手段」に相当する。
よって、先願発明の構成bは、本願発明の構成Bに相当する。

ウ 構成Cについて
上記アより、先願発明の「大入賞口」は、本願発明の「大入賞口」に相当し、先願発明の「一般入賞口35」、「始動入賞口(第1始動入賞領域)36」及び「第2始動入賞口(第2始動入賞領域)」は、本願発明の「複数の入賞口」に相当する。そして、先願発明の「入賞口スイッチ(SW)35a〜35n」、「始動口1スイッチ36a」及び「始動口2スイッチ37a」は、各入賞口への「遊技球を検出する」又は「入賞を検出」するものであるから、本願発明の「入球検知手段」に相当する。
よって、先願発明の構成cは、本願発明の構成Cに相当する。

エ 構成K、Tについて
先願発明の「状態表示装置152」、「設定可変状態」、「設定確認状態」、「設定値」は、それぞれ、本願発明の「表示手段」、「第1モード」、「第2モード」、「設定値」に相当する。
また、先願発明の「状態表示装置152」(本願発明の「表示手段」に相当。)において、本願発明の「第1モード」に相当する「設定可変状態では、選択されている1〜6の設定値が」表示されるとともに、本願発明の「第2モード」に相当する「設定確認状態では、状態表示装置152に表示された設定値を確認でき」ることは、本願発明の「前記表示手段は、前記第1モード及び前記第2モードのそれぞれにおいて前記設定値を表示する設定表示手段として兼用されて」いることに相当する。
よって、先願発明の構成k、tは、それぞれ、本願発明の構成K、Tに相当する。

オ 構成Lについて
先願発明の「作業用確率設定値領域の値をロードし、確率設定値領域にセーブする遊技制御装置100」が、本願発明の「設定手段」に相当する。 よって、先願発明の構成lは、本願発明の構成Lに相当する。

カ 構成L1について
先願発明の「枠」、「ヒンジを介して開閉回動自在に取り付けられ」ること、「前面枠12(本体枠)」は、それぞれ、本願発明の「外枠」、「開閉可能に支持される」こと、「中枠」に相当する。
よって、先願発明の構成l1は、本願発明の構成L1に相当する。

キ 構成P3について
上記カより、先願発明の「前面枠12(本体枠)」は、本願発明の「中枠」に相当することを踏まえ、先願発明である「遊技機10」(本願発明の「遊技機」に相当。)が、「エラーが発生しているかなどの状態を判定する遊技機状態チェック処理を実行して、」「前面枠開放検出スイッチから出力される信号に基づく状態(本体枠開放エラー、前面枠開放エラー)の監視が設定され」ることは、本願発明において、「前記遊技機では、前記中枠を開放すると、開放エラーが発生」することに相当する。
よって、先願発明の構成p3は、本願発明の構成P3に相当する。

ク 構成P4について
上記カより、先願発明の「前面枠12(本体枠)」は、本願発明の「中枠」に相当し、加えて、先願発明の「ベース値(通常遊技状態における出玉率)に関する情報」は、本願発明の「ベース値」に相当する。
そして、先願発明において、「ベース値(通常遊技状態における出玉率)に関する情報が表示される状態表示装置152が設けられている遊技制御装置100は、前面枠12(本体枠)が開放されることによりアクセス可能となる位置に配置されてい」ることは、本願発明において、「前記ベース値は、前記中枠を開放しているときに視認可能であ」ることに相当する。
よって、先願発明の構成p4、wは、本願発明の構成P4に相当する構成を備えている。

ケ 構成Rについて
上記エで検討したとおり、先願発明の「設定可変状態」、「設定確認状態」は、それぞれ、本願発明の「第1モード」、「第2モード」に相当する。 よって、先願発明の構成rは、本願発明の構成Rに相当する。

コ 構成Sについて
先願発明の「第1特図変動表示部51」は、本願発明の「図柄表示装置」に相当する。
また、上記エで検討したとおり、先願発明の「設定可変状態」、「設定確認状態」は、それぞれ、本願発明の「第1モード」、「第2モード」に相当することを踏まえると、先願発明の「第1特図変動表示部51」における表示として、「設定可変状態において、」「選択されている1〜6の設定値が点灯表示又は点滅表示され」ることは、本願発明の「前記第1モードであることの報知」を「行う」ことに相当し、先願発明の「設定確認状態において、」「選択されている1〜6の設定値が点灯表示又は点滅表示され」ることは、本願発明の「前記第2モードであることの報知を」「行う」ことに相当する。
そして、先願発明における「設定可変状態」、「設定確認状態」のいずれにおいても、「選択されている1〜6の設定値が点灯表示又は点滅表示され」るという、「第1特図変動表示部51に変動停止時と異なる表示(通常と異なる表示)を行う」ことは、本願発明の「変動ゲームにおいて図柄を表示する図柄表示手段で大当り図柄の表示態様及びはずれ図柄の表示態様の何れとも異なる表示態様で行われ」ることに相当する。
よって、先願発明の構成sは、本願発明の構成Sに相当する。

サ 構成Uについて
上記エで検討したとおり、先願発明の「設定可変状態」は、本願発明の「第1モード」に相当することを踏まえると、先願発明において、「遊技機状態は設定可変状態から遊技モードになり、設定変更が終了」することは、本願発明の「当該第1モードの終了」に相当する。また、先願発明の「ベース値(通常遊技状態における出玉率)に関する情報」は、本願発明の「ベース値」に相当し、先願発明において、「設定値が表示されていた状態表示装置152にベース値(通常遊技状態における出玉率)に関する情報を表示」することは、本願発明において、「前記第1モードにおいて前記設定値は表示されているが、前記ベース値は表示されて」いないこと、及び、「前記設定値の表示が前記ベース値の表示に切り替わ」ることに相当する。
よって、先願発明の構成uは、本願発明の構成Uに相当する。

シ 構成Vについて
上記エで検討したとおり、先願発明の「設定確認状態」は、本願発明の「第2モード」に相当することを踏まえると、先願発明において、「遊技機状態は設定可変状態から遊技モードになり、設定変更が終了」することは、本願発明の「当該第2モードの終了」に相当し、先願発明において、「設定値が表示されていた状態表示装置152にベース値(通常遊技状態における出玉率)に関する情報を表示」することは、本願発明において、「前記第2モードにおいて前記設定値は表示されているが、前記ベース値は表示されて」いないこと、及び、「前記設定値の表示が前記ベース値の表示に切り替わ」ることに相当する。
よって、先願発明の構成vは、本願発明の構成Vに相当する。

ス 構成Wについて
上記エで検討したとおり、先願発明の「設定可変状態」、「設定確認状態」は、それぞれ、本願発明の「第1モード」、「第2モード」に相当する。 そして、先願発明の「設定(設定値)を変更することができ」る状態とは、「設定可変状態」にほかならない。
そうすると、先願発明の「設定可変状態」及び「設定値確認モード」が、「遊技機10の裏面側に配設された遊技制御装置100の裏面下部」に配設された「設定キースイッチ93がオンした状態にある場合」に設定される構成は、本願発明の「前記第1モード、及び前記第2モードには、機裏側から操作可能に配設された設定操作手段の操作態様によって移行可能であ」ることに相当する。
よって、先願発明の構成wは、本願発明の構成Wに相当する。

セ 構成Xについて
上記エで検討したとおり、先願発明の「状態表示装置152」は、本願発明の「表示手段」に相当するから、先願発明において、「状態表示装置152は、遊技機10の裏面側に配設された遊技制御装置100上に設けられ」ていることは、本願発明において、「前記表示手段は、機裏側から視認可能に配設されている」ことに相当する。
また、上記コで検討したとおり、先願発明の「第1特図変動表示部51」は、本願発明の「図柄表示装置」に相当するから、先願発明において、「変動表示ゲーム用の第1特図変動表示部51を有している一括表示装置50は、遊技領域32の外側であって遊技盤本体30aの右下角部に設けられている」ことは、本願発明において、「前記図柄表示手段は、機表側から視認可能に配設されて」いることに相当する。
よって、先願発明の構成xは、本願発明の構成Xに相当する。

ソ 構成Zについて
先願発明の「遊技機10」は、本願発明の「遊技機」に相当する。
よって、先願発明の構成zは、本願発明の構成Zに相当する。

2 一致点・相違点
上記ア〜ソによれば、本願発明と先願発明は、
・一致点
「【請求項1】
A 大入賞口と当該大入賞口とは異なる複数の入賞口とを備え、前記大入賞口へ遊技球が入球した場合には1球の入球に対して所定個数の賞球の払出しが行われるとともに、前記入賞口へ遊技球が入球した場合には1球の入球に対して入賞口毎に定められた個数の賞球の払出しが行われる遊技機において、
B 遊技に使用された有効球を検知する有効球検知手段と、
C 遊技に使用された有効球のうち、前記入賞口へ入球した遊技球を検知する入球検知手段と、
K 表示手段と、
L 大当り確率を定めた1の設定値を設定する設定手段と、
L1 外枠と、
前記外枠に開閉可能に支持される中枠と、を備え、
P3 前記遊技機では、前記中枠を開放すると、開放エラーが発生し、
P4 前記ベース値は、前記中枠を開放しているときに視認可能であり、
R 前記遊技機は、前記遊技機が前記設定値の変更を許容する設定変更状態となる第1モードと、前記遊技機が前記設定値として現在の設定値を報知する設定確認状態となる第2モードと、を有し、
S 前記遊技機は、前記第1モードであることの報知と前記第2モードであることの報知をそれぞれ行うことが可能であって、各報知は変動ゲームにおいて図柄を表示する図柄表示手段で大当り図柄の表示態様及びはずれ図柄の表示態様の何れとも異なる表示態様で行われ、
T 前記表示手段は、前記第1モード及び前記第2モードのそれぞれにおいて前記設定値を表示する設定表示手段として兼用されており、
U 前記表示手段では、
前記第1モードにおいて前記設定値は表示されているが、前記ベース値は表示されておらず、当該第1モードの終了を契機に前記設定値の表示が前記ベース値の表示に切り替わり、
V 前記第2モードにおいて前記設定値は表示されているが、前記ベース値は表示されておらず、当該第2モードの終了を契機に前記設定値の表示が前記ベース値の表示に切り替わり、
W 前記第1モード、及び前記第2モードには、機裏側から操作可能に配設された設定操作手段の操作態様によって移行可能であり、
X 前記表示手段は、機裏側から視認可能に配設されている一方、前記図柄表示手段は、機表側から視認可能に配設されている、
Z 遊技機。」
である点で一致し、次の点で相違する。

・相違点
(1)相違点1(構成D〜Jについて)
ベース値を計数し、計数されるベース値を特定し得るベース値情報を記憶するための手段について、本願発明は、「前記遊技機から通常遊技時に払出された賞球の総数を計数する通常時賞球計数手段と、通常遊技時において遊技に使用された有効球の総数を計数する通常時有効球計数手段と、全ての遊技状態において遊技に使用された有効球の総数を計数する全状態時有効球計数手段と、前記全状態時有効球計数手段で計数されている遊技に使用された有効球の総数が所定数に達したときの前記通常時賞球計数手段で計数されている前記賞球の総数を記憶する賞球記憶手段と、前記全状態時有効球計数手段で計数されている遊技に使用された有効球の総数が所定数に達したときの前記通常時有効球計数手段で計数されている遊技に使用された有効球の総数を記憶する有効球記憶手段と、前記通常遊技時において遊技に使用された有効球の総数に対する前記通常遊技時における前記賞球の総数の割合を示すベース値を計数するベース値計数手段と、前記ベース値計数手段によって計数されるベース値を特定し得るベース値情報を記憶するベース値記憶手段と、」を備えているのに対し、先願発明はそのような構成を備えていない点。

(2)相違点2(構成M〜O、P1、P2、P5、Qについて)
表示手段に表示されるベース値について、本願発明は、「前記ベース値には、前記所定数に達するまでに計数される第1ベース値と、前記所定数に達したときの第2ベース値と、があり、前記表示手段は、前記ベース値を表示するベース表示部と、前記ベース表示部に表示されている前記ベース値の識別子を表示する識別子表示部と、を有し、前記ベース値記憶手段には、前回までの計数で前記所定数に達したときのベース値を特定し得るベース値情報が複数回分、記憶可能であり、前記ベース表示部には、前記第1ベース値と、所定回分の計数で前記所定数に達したときの前記第2ベース値と、が表示され、前記識別子には、前記第1ベース値を識別する第1識別子と前記第2ベース値を識別する第2識別子と、があり、前記表示手段の表示状態には、前記第1ベース値と前記第1識別子とを表示する第1表示状態と、前記第2ベース値と前記第2識別子とを表示する第2表示状態と、があり、前記第1表示状態と前記第2表示状態とが予め定めた順番で切り替わり、前記ベース値は、前記開放エラーが発生しているか否かに関わらず表示され、前記識別子には、前記第1ベース値を識別する第1識別子と前記第2ベース値を識別する第2識別子と、があ」るのに対し、先願発明は、「ベース値(通常遊技状態における出玉率)に関する情報」を表示するものの、当該ベース値(通常遊技状態における出玉率)に関する情報」は、そのような構成ではない点。

(3)相違点3(構成Yについて)
本願発明は、「前記第1モード及び前記第2モードのそれぞれにおいて、前記図柄表示手段では、前記設定値が表示されない」のに対し、先願発明はそのような構成を備えていない点。

3 判断
事案に鑑みて、相違点3について検討する。
ア 先願発明について
先願発明は、「構成s」を有するところ、先願発明の「設定可変状態」(本願発明の「第1モード」に相当。)、「設定確認状態」(本願発明の「第2モード」に相当。)のいずれにおいても、「第1特図変動表示部51」(本願発明の「図柄表示装置」に相当)で、「選択されている1〜6の設定値が点灯表示又は点滅表示され」るものであるから、本願発明の「Y 前記第1モード及び前記第2モードのそれぞれにおいて、前記図柄表示手段では、前記設定値が表示されない」ものではない。
よって、上記相違点3に係る本願発明の構成Yは、先願明細書等には記載されておらず、また周知技術ともいえず、これが課題解決のための具体化手段における微差ということもできない。

イ 先願明細書等の他の記載について
(ア)また、先願明細書等の【0459】には、「図34Bでは、確率設定変更中において、第1特図変動表示部51(LEDランプD1)に、所定の表示として、確率設定変更中(設定可変状態中)であることを示唆する変更中情報表示(例えば文字「P」)が表示される。このように、確率設定変更中において、第1特図変動表示部51に変動停止時と異なる表示(通常と異なる表示)を行うことによって、遊技機10が遊技のできない状態であることを遊技機10の正面において明示できる。なお、第1特図変動表示部51及び第2特図変動表示部52の変動停止時の停止表示では、変更中情報表示(例えば文字「P」)と同じ識別情報(特別図柄)は使用されないものとする。」との記載があり、これより、第1特図変動表示部51に、変動停止時と異なる表示(通常と異なる表示)であって、設定可変状態中であることを示唆する変更中情報表示(例えば文字「P」)が表示されることが記載されているといえる。
先願発明において、設定可変状態において、第1特図変動表示部51に、表示される「設定値」は、「選択されている1〜6」の数字であるから、先願明細書等に記載された、設定可変状態において、第1特図変動表示部51に、当該「変更中情報表示(例えば文字「P」)」が表示されることは、本願発明の構成Yの「前記第1モード」「において、前記図柄表示手段では、前記設定値が表示されない」ことに相当する。

(イ)ところで、設定可変状態において、第1特図変動表示部51に、当該「変更中情報表示(例えば文字「P」)」が表示される実施例は、先願明細書等の【0009】から始まる段落に記載の[第1実施形態]として記載の実施例であるところ、[第1実施形態]には、本願発明の「第2モード」に相当する「設定確認状態」において、第1特図変動表示部51にどのような表示を行うかについて何ら記載されていない。
また、先願明細書等の他の記載をみても、「設定確認状態」において、当該「変更中情報表示(例えば文字「P」)」が表示されることの記載も示唆も無いので、設定可変状態において、第1特図変動表示部51に、当該「変更中情報表示(例えば文字「P」)」が表示されるときに、「設定確認状態」において、どのような表示が行われるか不明である。
そうすると、先願明細書等には、少なくとも、本願発明の構成Yの「前記第2モード」「において、前記図柄表示手段では、前記設定値が表示されない」ことが記載されているとは認められない。

ウ まとめ
上記ア、イの検討より、上記相違点3に係る本願発明の構成Yは、先願明細書等には記載されておらず、これが課題解決のための具体化手段における微差ということもできない。
したがって、本願発明は、相違点1及び相違点2について検討するまでもなく、先願1の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であるということができない。


第7 原査定について
審判請求時の補正により、本願発明は、「前記第1モード及び前記第2モードのそれぞれにおいて、前記図柄表示手段では、前記設定値が表示されない」という構成(構成Y)が特定されたものとなっており、原査定において引用された先願1の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であるということができない。
したがって、原査定の理由を維持することができない。


第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-12-21 
出願番号 P2017-222005
審決分類 P 1 8・ 575- WY (A63F)
P 1 8・ 161- WY (A63F)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 鉄 豊郎
特許庁審判官 蔵野 いづみ
▲吉▼川 康史
発明の名称 遊技機  
代理人 恩田 誠  
代理人 恩田 博宣  
代理人 山本 実  

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