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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01M
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H01M
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01M
管理番号 1380919
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-01-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-12-19 
確定日 2021-11-11 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6534518号発明「二次電池の製造装置および製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6534518号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜9〕、〔10〜16〕について訂正することを認める。 特許第6534518号の請求項1、3〜16に係る特許を維持する。 特許第6534518号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6534518号(以下、「本件特許」という。)の請求項1〜16に係る特許についての出願は、平成26年11月19日(パリ条約による優先権主張 2014年 8月 4日 韓国(KR))に出願され、令和 1年 6月 7日にその特許権の設定登録がされ、同年 6月26日に特許掲載公報が発行されたものであり、その後、その特許に対し、同年12月19日に特許異議申立人平賀博(以下、「申立人」という。)によって、特許異議の申立てがなされたものである。
その後の主な手続きの経緯は、以下のとおりである。

令和 2年 2月27日付け 取消理由通知書
同 年 5月11日 特許権者との応対記録
同 年 6月 1日 訂正請求書及び意見書の提出
同 年 7月15日 申立人による意見書の提出
同 年 8月31日付け 取消理由通知書(決定の予告)
同 年12月 3日 訂正請求書及び意見書の提出
令和 3年 4月28日 特許権者との応対記録
同 年 5月17日付け 取消理由通知書(決定の予告)
同 年 7月26日 特許権者との応対記録
同 年 8月16日 訂正請求書及び意見書の提出
同 年 9月 6日 申立人による上申書の提出

以下、令和 3年 8月16日提出の訂正請求書による訂正請求を「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。なお、令和 2年 6月 1日及び同年12月 3日にされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなされる。
なお、令和 3年 2月15日付け(起案日)で訂正請求があった旨を申立人に通知したが、その指定期間内に申立人から意見書は提出されなかった。

第2 訂正の適否について
1 訂正請求の趣旨及び訂正の内容
(1)本件訂正請求の趣旨
特許第6534518号の特許請求の範囲の請求項1〜16を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1〜16について訂正することを求める。

(2)訂正の内容
本件訂正の内容は、以下のア〜ウのとおりである(下線は訂正箇所を示す)。

ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1について、本件訂正前の
「基材を供給する基材供給部と、
マンドレルによって前記基材を巻き取る巻取部と、
前記基材供給部における基材供給量および前記巻取部におけるマンドレル回転量を制御する制御部と、を含み、
前記制御部は、前記マンドレル回転量と前記基材供給量との関係を示すプロファイルを貯蔵し、前記プロファイルに基づいて前記基材供給量と前記マンドレル回転量とを同期制御することを特徴とする二次電池の製造装置。」を
「基材を供給する基材供給部と、
マンドレルによって前記基材を巻き取る巻取部と、
前記基材供給部における基材供給量および前記巻取部におけるマンドレル回転量を制御する制御部と、を含み、
前記制御部は、前記基材にかかる張力が一定に維持されるように獲得された、前記マンドレル回転量と前記基材供給量との関係を示すプロファイルを貯蔵し、前記プロファイルに基づいて前記基材供給量と前記マンドレル回転量とを前記基材にかかる張力を一定に維持するように同期制御し、
前記プロファイルにおける前記基材供給量は、マンドレル1回転当たりの前記基材の単位供給量の変化量を反映した前記基材供給量からなることを特徴とする二次電池の製造装置。」に訂正する。
請求項1を引用する請求項3〜9も同様に訂正する。

イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項10について、本件訂正前の
「供給された基材を巻き取って形成された電極組立体を含む二次電池を製造する方法において、
前記基材を巻き取る巻取部におけるマンドレル回転量と前記基材を供給する基材供給部における基材供給量との関係を示すプロファイルを獲得する段階、および
前記プロファイルに基づいて前記マンドレルと基材供給部を同期駆動する段階を含むことを特徴とする二次電池の製造方法。」を
「供給された基材を巻き取って形成された電極組立体を含む二次電池を製造する方法において、
前記基材にかかる張力が一定に維持されるように、前記基材を巻き取る巻取部におけるマンドレル回転量と前記基材を供給する基材供給部における基材供給量との関係を示すプロファイルを獲得する段階、および
前記プロファイルに基づいて前記マンドレルと基材供給部を前記基材にかかる張力を一定に維持するように同期駆動する段階を含み、
前記プロファイルにおける前記基材供給量は、マンドレル1回転当たりの前記基材の単位供給量の変化量を反映した前記基材供給量からなることを特徴とする二次電池の製造方法。」に訂正する。
請求項10を引用する請求項11〜16も同様に訂正する。

2 訂正の適否についての判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1に係る訂正は、請求項1に記載の「プロファイル」を「前記基材にかかる張力が一定に維持されるように獲得された」ものに限定し、請求項1に記載の「同期制御」を「前記基材にかかる張力を一定に維持するように」行うものに限定するとともに、請求項1に記載の「プロファイル」における「基材供給量」を「マンドレル1回転当たりの前記基材の単位供給量の変化量を反映した前記基材供給量からなる」ものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

イ 訂正が願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであるかについて
本件特許についての出願の願書に添付した特許請求の範囲及び明細書には、以下の記載がある(下線は当審が付した。以下、同様)。

「【請求項2】
前記プロファイルは、前記マンドレル回転量に応じた円周の変化量を反映した前記基材供給量からなることを特徴とする請求項1に記載の二次電池の製造装置。」
「【0023】
また、本発明による二次電池の製造装置および製造方法は、基材にかかる張力を補正する必要がある時に、制御部がプロファイルに基づいて、その時のマンドレル回転量に応じて基材供給量を調節することによって、巻取り中に基材にかかる張力を一定に維持することができる。」
「【0028】
前記巻取部120は前記基材10を供給する基材供給部110の反対側に形成され、供給された基材10をマンドレルによって一定の形状に巻き取る。前記巻取部120は、前記マンドレルの形状によって、極板基材10を円筒形電池のための円筒形状に巻き取ったり、角型電池のためのフラット形状または楕円形状に巻き取ったりすることができる。そして、前記巻取部120は、前記基材10の巻取り時に一定の張力をかけながら巻き取ることが最も重要である。
【0029】
前記制御部130は前記基材供給部110と前記巻取部120を同時に制御し、それによって、巻き取られる基材10に一定の張力をかけながら前記巻取部120に基材10が巻き取られるようにする。
【0030】
このために、前記制御部130は後述するように、まずその内部に、前記巻取部120におけるマンドレル回転量と前記基材供給部110からの基材供給量との間の関係を示すプロファイル(profile)を貯蔵する。前記制御部130は前記プロファイルに基づいて前記基材供給部110における基材供給量と前記巻取部120におけるマンドレル回転量とを同時に制御する。したがって、前記マンドレル回転量が高速に加速または減速しても基材供給部110の基材供給量も時間遅延なしに制御されるので、基材10にかかる張力が変わらないことになる。また、予め貯蔵されているプロファイルを用いて制御が行われるため、別途のセンシングを必要とせず、そのため、センシングおよび信号伝達過程で発生し得るノイズおよび時間遅延を未然に防止することができる。したがって、本発明の実施例による二次電池の製造装置100によれば、電極組立体を製造するにあたって、基材10にかかる張力が一定に維持され、基材10を外形不良なしに巻き取ることができる。」
「【0034】
前記基材供給量測定部160は、前記基材10が前記ロードセル150から第3ローラ13を通って適用され、前記巻取部120の直前(基材10の移送方向における上流側)に位置する。前記基材供給量測定部160はエンコーダ(encoder)で構成されることができる。前記基材供給量測定部160は供給される基材10の量を測定することができる。前記基材供給量測定部160は本発明の実施例による二次電池の製造装置100において、初期設定で前記マンドレル回転量と基材供給量との関係を示すプロファイルを確保するのに使用される。より具体的には、前記基材供給量測定部160は、前記巻取部120のマンドレルを一定の角度で回転させながら前記マンドレルの直前で前記基材供給部110から適用された基材10の長さを測定する。そして、前記マンドレル回転量と基材供給量のデータによって獲得されたプロファイルを前記制御部130が貯蔵することになる。また、前述したように、前記制御部130は貯蔵された前記プロファイルに基づいて、前記巻取部120におけるマンドレル回転量と前記基材供給部110における基材供給量を同時に制御し、これによって、基材10にかかる張力を一定に維持しながら基材10を巻き取って電極組立体を製造することが可能となる。」
「【0037】
図2を参照すれば、本発明の実施例による二次電池が円筒形電池の場合、マンドレル回転量であるマンドレル回転角(グラフのx軸)に対する単位供給量(グラフの右側、y軸)は、回転角360度の倍数毎に、マンドレル回転角が増加するのに従って段階的に増加する傾向を有する。これは、マンドレルが円筒形に形成されており、前記基材10の厚さによって1回転当たりの巻取りのための円周が順次に段階的に増加するためである。また、マンドレル回転角(グラフのx軸)に対する累積供給量(グラフの左側、y側)はほぼ比例する形態のプロファイルが生成される。ただし、累積供給量で前記マンドレル回転角が360度の倍数で段階的に円周が増加するので累積供給量のプロファイルはマンドレル回転角と円周の増加分を共に反映して増加することになる。もちろん、基材10の厚さは非常に薄いため、累積供給量(グラフの左側、y側)はほぼ直線形状を有する。
【0038】
一方、図3を参照すれば、本発明の実施例による二次電池が角型電池の場合、マンドレル回転角(グラフのx軸)に対する単位供給量(グラフの右側、y側)は1回転(回転角0度乃至360度)でほぼ2種類の放物線からなる波形の形態を有するように変化する。これはマンドレルがほぼフラット(flat)な形態に形成されているため、マンドレルが0度から360度まで回転することによって巻き取られる基材10の長さが変わるためである。ここで、放物線の上限点はマンドレルの形状で長辺の中心に該当し、放物線の下限点はマンドレルの短辺に該当する。また、マンドレル回転角(グラフのx軸)に対する累積供給量(グラフの左側、y側)は前記単位供給量(グラフの右側、y側)を1回転単位で累積して前記マンドレルが回転することによって順次に増加する傾向を有する。もちろん、この場合にも前記基材10の厚さがあるため、マンドレルの回転時に基材供給量には増加分が反映されるが、基材10の厚さが非常に薄いので累積供給量はほぼ前記マンドレルの1回転単位で繰り返される形状を有する。」
「【0043】
より具体的に、マンドレル回転量と基材供給量との関係を示すプロファイルの獲得段階(S1)は、図5に示された段階を通して連続的な測定をすることによって行うことができる。前記段階ではまず、前記巻取部120のマンドレルを正位置させ(S11)、前記ダンサー140またはロードセル150をフィードバックモード(feedback mode)に設定する(S12)。前記フィードバックモードで前記ダンサー140および前記ロードセル150は前記基材10に印加される張力が一定に維持されるようにすることができ、一定の張力を維持するために変化量により前記基材供給部110の回転を制御することができる。」
「【0053】
前記基材供給量を調節する段階(S4)は、前記基材10にかかる張力を一定に維持するために、前記基材供給量を調節する段階である。もし、巻取り過程で必要に応じて基材10の張力を変動させる(補正する)必要がある場合には、前記制御部130は、その時の巻取部120のマンドレル角度を確認し、そのマンドレル角度にマッチングされる前記基材供給部110の単位供給量になるように基材供給部における基材供給量を微調節する。例えば、張力を高める場合には、前記基材の単位供給量を減少させ、張力を下げる場合には、前記単位供給量を増加させる。」

そして、訂正事項1における、「プロファイル」を「前記基材にかかる張力が一定に維持されるように獲得された」ものとする点は、摘記した【0043】に記載した事項の範囲内のものであり、訂正事項1における、「同期制御」を「前記基材にかかる張力を一定に維持するように」行う点は、摘記した、【0023】、【0028】〜【0030】、【0034】、【0053】に記載した事項の範囲内のものであり、訂正事項1における、「プロファイル」における「基材供給量」を「マンドレル1回転当たりの前記基材の単位供給量の変化量を反映した前記基材供給量からなる」ものとする点は、摘記した、請求項2、【0037】、【0038】、【0053】に記載した事項の範囲内のものである。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。

ウ 訂正が、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないかについて
訂正事項1に係る訂正は、請求項1に記載の「プロファイル」、「同期制御」、及び「プロファイル」における「基材供給量」を特定のものに限定するものであるから、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。

(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的について
訂正事項2に係る訂正は、請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

イ 訂正が願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであるかについて
訂正事項2に係る訂正は、請求項2を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でしたものである。

ウ 訂正が、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないかについて
訂正事項2に係る訂正は、請求項2を削除するものであるから、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。

(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的について
訂正事項3に係る訂正は、請求項10に記載の「プロファイルを獲得する段階」を「前記基材にかかる張力が一定に維持されるように」行うものに限定し、請求項10に記載の「同期駆動する段階」を「前記基材にかかる張力を一定に維持するように」行うものに限定するとともに、請求項10に記載の「プロファイル」における「基材供給量」を「マンドレル1回転当たりの前記基材の単位供給量の変化量を反映した前記基材供給量からなる」ものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

イ 訂正が願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであるかについて
本件特許についての出願の願書に添付した特許請求の範囲及び明細書の記載は、上記(1)イで摘記したとおりである。
そして、訂正事項3における「プロファイルを獲得する段階」を「前記基材にかかる張力が一定に維持されるように」行う点は、上記(1)イで摘記した、【0043】に記載した事項の範囲内のものであり、訂正事項3における、「同期駆動する段階」を「前記基材にかかる張力を一定に維持するように」行う点は、上記(1)イで摘記した、【0023】、【0028】〜【0030】、【0034】、【0053】に記載した事項の範囲内のものであり、訂正事項3における、「プロファイル」における「基材供給量」を「マンドレル1回転当たりの前記基材の単位供給量の変化量を反映した前記基材供給量からなる」ものとする点は、上記(1)イで摘記した、請求項2、【0037】、【0038】、【0053】に記載した事項の範囲内のものである。
したがって、訂正事項3に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でしたものである。

ウ 訂正が、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないかについて
訂正事項3に係る訂正は、請求項10に記載の「プロファイルを獲得する段階」、「同期駆動する段階」、及び「プロファイル」における「基材供給量」を特定のものに限定するものであるから、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。

(4)一群の請求項について
本件訂正前の請求項2〜9は、本件訂正前の請求項1を引用するものであるから、本件訂正前の請求項1〜9は一群の請求項である。
また、本件訂正前の請求項11〜16は、本件訂正前の請求項10を引用するものであるから、本件訂正前の請求項10〜16は一群の請求項である。
そして、本件訂正請求は、上記一群の請求項ごとにされたものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
また、本件訂正は、請求項間の引用関係の解消を目的とするものではなく、特定の請求項に係る訂正事項について別の訂正単位とする求めもないから、本件訂正請求は、訂正後の請求項〔1〜9〕、〔10〜16〕を訂正単位として訂正の請求をするものである。

(5)独立して特許を受けることができるかについて
本件特許異議の申立ては、全請求項(請求項1〜16)を対象に申し立てられたものであるから、本件訂正には、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定は適用されず、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならないとの要件は課されない。

(6)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、令和 3年 8月16日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜9〕、〔10〜16〕について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明
本件特許の請求項1〜16の記載は、令和 3年 8月16日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1〜16に記載された、次のとおりのものである。

「【請求項1】
基材を供給する基材供給部と、
マンドレルによって前記基材を巻き取る巻取部と、
前記基材供給部における基材供給量および前記巻取部におけるマンドレル回転量を制御する制御部と、を含み、
前記制御部は、前記基材にかかる張力が一定に維持されるように獲得された、前記マンドレル回転量と前記基材供給量との関係を示すプロファイルを貯蔵し、前記プロファイルに基づいて前記基材供給量と前記マンドレル回転量とを前記基材にかかる張力を一定に維持するように同期制御し、
前記プロファイルにおける前記基材供給量は、マンドレル1回転当たりの前記基材の単位供給量の変化量を反映した前記基材供給量からなることを特徴とする二次電池の製造装置。
【請求項2】(削除)
【請求項3】
前記基材にかかる張力を測定する張力測定部が、前記基材供給部と前記巻取部の間にさらに形成されることを特徴とする請求項1に記載の二次電池の製造装置。
【請求項4】
前記張力測定部はダンサーまたはロードセルのうち選択されたいずれか一つまたはこれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項3に記載の二次電池の製造装置。
【請求項5】
前記基材供給部と前記巻取部の間に前記基材供給量を測定する基材供給量測定部がさらに形成されることを特徴とする請求項1に記載の二次電池の製造装置。
【請求項6】
前記基材供給量測定部はエンコーダを含む構成となっていることを特徴とする請求項5に記載の二次電池の製造装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記基材にかかる張力を補正するために、前記マンドレル回転量に応じた基材供給量を基準に前記基材供給部における基材供給量を調節することを特徴とする請求項1に記載の二次電池の製造装置。
【請求項8】
前記二次電池が円筒形電池であり、前記プロファイルが、前記マンドレル回転量が増加するのに従って段階的に増加する、マンドレル1回転当たりの前記基材の単位供給量を含むことを特徴とする請求項1に記載の二次電池の製造装置。
【請求項9】
前記二次電池が角型電池であり、前記プロファイルが、2種類の放物線からなる波形を呈する、マンドレル1回転当たりの前記基材の単位供給量を含むことを特徴とする請求項1に記載の二次電池の製造装置。
【請求項10】
供給された基材を巻き取って形成された電極組立体を含む二次電池を製造する方法において、
前記基材にかかる張力が一定に維持されるように、前記基材を巻き取る巻取部におけるマンドレル回転量と前記基材を供給する基材供給部における基材供給量との関係を示すプロファイルを獲得する段階、および
前記プロファイルに基づいて前記マンドレルと基材供給部を前記基材にかかる張力を一定に維持するように同期駆動する段階を含み、
前記プロファイルにおける前記基材供給量は、マンドレル1回転当たりの前記基材の単位供給量の変化量を反映した前記基材供給量からなることを特徴とする二次電池の製造方法。
【請求項11】
前記プロファイルを獲得する段階は、前記マンドレルを予め設定された角度で回転させることによって前記基材供給部からの基材供給量を測定してなることを特徴とする請求項10に記載の二次電池の製造方法。
【請求項12】
前記プロファイルを獲得する段階は、前記マンドレルを連続的に回転させながら基材供給量測定部によって前記基材供給量を測定することを特徴とする請求項11に記載の二次電池の製造方法。
【請求項13】
前記プロファイルを獲得する段階は、前記マンドレルを予め設定された角度で回転させながら、前記基材供給部のローラ直径に回転角度をかけて前記基材供給量を測定する段階を繰り返してなることを特徴とする請求項11に記載の二次電池の製造方法。
【請求項14】
特定時点で前記基材にかかる張力を補正するために、前記プロファイルに基づいて前記特定時点でのマンドレル回転量に応じた基材供給量を算出し、算出された基材供給量を基準に前記基材供給部における基材供給量を調節する段階をさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の二次電池の製造方法。
【請求項15】
前記二次電池が円筒形電池であり、前記プロファイルが、前記マンドレル回転量が増加するのに従って段階的に増加する、マンドレル1回転当たりの前記基材の単位供給量を含むことを特徴とする請求項11に記載の二次電池の製造方法。
【請求項16】
前記二次電池が角型電池であり、前記プロファイルが、2種類の放物線からなる波形を呈する、マンドレル1回転当たりの前記基材の単位供給量を含むことを特徴とする請求項11に記載の二次電池の製造方法。」

第4 申立理由の概要
申立人は、証拠方法として、いずれも本願の優先日前に、日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、下記甲第1〜6号証(以下「甲1」〜「甲6」という。)を提出して、以下の申立理由1〜3により、本件訂正前の請求項1〜16係る特許を取り消すべきである旨主張している。

1 申立理由1(新規性
(1)申立理由1−1
本件特許の願書に添付された特許請求の範囲の請求項1〜11、14〜16に係る発明は、甲1に記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。

(2)申立理由1−2
本件特許の願書に添付された特許請求の範囲の請求項1〜11、14〜16に係る発明は、甲2に記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。

(3)申立理由1−3
本件特許の願書に添付された特許請求の範囲の請求項1〜11、14〜16に係る発明は、甲3に記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。

(4)申立理由1−4
本件特許の願書に添付された特許請求の範囲の請求項1〜11、14〜16に係る発明は、甲4に記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。

2 申立理由2(進歩性
(1)申立理由2−1
本件特許の願書に添付された特許請求の範囲の請求項1〜16に係る発明は、甲1に記載された発明に基いて、その発明の属する分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。

(2)申立理由2−2
本件特許の願書に添付された特許請求の範囲の請求項1〜16に係る発明は、甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。

(3)申立理由2−3
本件特許の願書に添付された特許請求の範囲の請求項1〜16に係る発明は、甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。

(4)申立理由2−4
本件特許の願書に添付された特許請求の範囲の請求項1〜16に係る発明は、甲4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。

3 申立理由3(明確性
(a)本件特許の願書に添付された特許請求の範囲の請求項1に記載の「プロファイル」は、「前記マンドレル回転量と前記基材供給量との関係を示す」ものであれば、どのようなものであってもよいのか不明であり、「基材供給量」というのは、どこの時点、どこの箇所における「基材」の「供給量」を指すのか不明であり、(b)本件特許の願書に添付された特許請求の範囲の請求項1に記載の「同期制御」が不明確であり、(c)本件特許の願書に添付された特許請求の範囲の請求項2に記載の「プロファイル」と同請求項1に記載の「プロファイル」とは相互に矛盾するものであるから、本件特許請求の範囲の記載には不備があり、本件請求項1〜16に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。

証拠方法
甲1:特開2002−270213号公報
甲2:特開2004−210422号公報
甲3:特開2003−142063号公報
甲4:特開2013−236028号公報
甲5:特開2000−68170号公報
甲6:特開平1−220428号公報

第5 取消理由の概要
1 訂正前の請求項1〜16に係る特許に対して、当審が令和 2年 2月27日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1) 取消理由1(進歩性:申立理由2−1を一部採用)
請求項1、7、10〜14に係る発明は、特開2002−270213号公報(甲1)に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、請求項1、7、10〜14に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。

(2) 取消理由2(サポート要件:職権で採用)
請求項1〜16には、「プロファイル」が、当該「プロファイル」に基づいて「基材供給量」と「マンドレル回転量」とを制御した場合に、「基材の供給過程」で「基材」にかかる「張力」を「一定に維時する」ようなものであるか、または、「プロファイル」が、「基材」に印加される張力が一定の張力を維持するような条件で獲得されたものであることを特定し得る記載がない。
したがって、請求項1〜16に係る発明は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲を超えるものである。
よって、請求項1〜16に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものでなく、請求項1〜16に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。

(3) 取消理由3(明確性:申立理由3を一部採用)
請求項1における「プロファイル」と請求項2における「プロファイル」は、その意味が整合していない。
そして、請求項2は請求項1を引用するから、請求項2においては、「プロファイル」が整合していない2つの意味を有することなり、請求項2における「プロファイル」がどのような意味であるのかが不明確である。
よって、請求項2に係る発明は明確でなく、請求項2に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。

2 取り下げられたとみなされる令和 2年 6月 1日提出の訂正請求書により訂正された請求項1、3〜16に係る特許に対して、当審が令和2年8月31日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は以下のとおりである。
取消理由4(明確性
令和 2年 6月 1日提出の訂正請求書による訂正後の請求項1、10に記載の「前記プロファイルにおける前記基材供給量は、前記マンドレル回転量に応じた円周の変化量または巻き取られた基材の厚さの変化量を反映した前記基材供給量からなる」のうちの「巻き取られた基材の厚さの変化量」との記載の意味を一義的に特定することができず、訂正後の請求項1、3〜16に係る発明が明確であるとはいえないから、同請求項に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。

3 取り下げられたとみなされる令和 2年12月 3日提出の訂正請求書により訂正された請求項1、3〜16に係る特許に対して、当審が令和 3年 5月17日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は以下のとおりである。
取消理由5(明確性
令和 2年12月 3日の訂正請求による訂正後の請求項1、10に記載の「前記プロファイルにおける前記基材供給量は、前記マンドレル回転量に応じた円周の変化量または、巻き取られた基材全体の厚さの変化量を反映した前記基材供給量からなる」のうちの「巻き取られた基材全体の厚さの変化量」との記載の意味を一義的に特定することができず、訂正後の請求項1、3〜16に係る発明が明確であるとはいえないから、同請求項に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。

第6 当審の判断
1 本件特許における発明の詳細な説明の記載事項、並びに甲1〜6の記載事項及び甲1〜4に記載された発明 (1)本件特許の明細書における発明の詳細な説明には、以下の記載がある。なお、下線は当審が付与した。以下同じである。

「【0003】
二次電池は、一般に正極板、セパレータおよび負極板が積層された状態で巻き取られた構造からなる電極組立体を含む構成となっている。
【0004】
そして、このためには各極板を形成する基材が巻かれているスプールから基材が繰り出されながら巻取りが行われるようになるが、巻取り時の基材にかかる張力を維持するのが大変重要である。これは、巻取り過程で張力が一定でなければ電極組立体の内部で基材に変形が生じるためである。したがって、基材の供給過程で張力を一定に維持するための技術開発が要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、電極組立体の巻取り時に不良を減らすことができる二次電池の製造装置および製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による二次電池の製造装置は、基材を供給する基材供給部と、マンドレルによって前記基材を巻き取る巻取部と、前記基材供給部における基材供給量および前記巻取部におけるマンドレル回転量を制御する制御部と、を含み、前記制御部は、前記マンドレル回転量と前記基材供給量との関係を示すプロファイルを貯蔵し、前記プロファイルに基づいて前記基材供給量と前記マンドレル回転量とを同期制御する。」
「【0015】
さらに、本発明による二次電池の製造方法は、供給された基材を巻き取って形成された電極組立体を含む二次電池を製造する方法において、前記基材を巻き取る巻取部におけるマンドレル回転量と前記基材を供給する基材供給部における基材供給量との関係を示すプロファイルを獲得する段階、および前記プロファイルに基づいて前記マンドレルと基材供給部を同期駆動する段階を含むことができる。」
「【発明の効果】
【0022】
本発明による二次電池の製造装置および製造方法は、巻取部におけるマンドレル回転量と基材供給部における基材供給量との関係を示すプロファイルを予め貯蔵し、そのプロファイルに基づいて制御部がマンドレルおよび基材供給部を同時に制御することによって、迅速な基材の張力補正が可能である。」
「【0028】
前記巻取部120は前記基材10を供給する基材供給部110の反対側に形成され、供給された基材10をマンドレルによって一定の形状に巻き取る。前記巻取部120は、前記マンドレルの形状によって、極板基材10を円筒形電池のための円筒形状に巻き取ったり、角型電池のためのフラット形状または楕円形状に巻き取ったりすることができる。そして、前記巻取部120は、前記基材10の巻取り時に一定の張力をかけながら巻き取ることが最も重要である。
【0029】
前記制御部130は前記基材供給部110と前記巻取部120を同時に制御し、それによって、巻き取られる基材10に一定の張力をかけながら前記巻取部120に基材10が巻き取られるようにする。
【0030】
このために、前記制御部130は後述するように、まずその内部に、前記巻取部120におけるマンドレル回転量と前記基材供給部110からの基材供給量との間の関係を示すプロファイル(profile)を貯蔵する。前記制御部130は前記プロファイルに基づいて前記基材供給部110における基材供給量と前記巻取部120におけるマンドレル回転量とを同時に制御する。したがって、前記マンドレル回転量が高速に加速または減速しても基材供給部110の基材供給量も時間遅延なしに制御されるので、基材10にかかる張力が変わらないことになる。また、予め貯蔵されているプロファイルを用いて制御が行われるため、別途のセンシングを必要とせず、そのため、センシングおよび信号伝達過程で発生し得るノイズおよび時間遅延を未然に防止することができる。したがって、本発明の実施例による二次電池の製造装置100によれば、電極組立体を製造するにあたって、基材10にかかる張力が一定に維持され、基材10を外形不良なしに巻き取ることができる。
【0031】
前記ダンサー140およびロードセル150は、本発明の実施例による二次電池の製造装置100において、前記基材10にかかる張力を測定する手段として用いられる。
【0032】
前記ダンサー140には、前記第1ローラ11によって前記基材10の方向をほぼ反対方向に転換させて基材10に張力が印加された状態で、前記基材10が適用される。前記ダンサー140はバー(bar)形状に構成されており、下部のローラ141によって前記基材10の方向を再びほぼ反対方向に転換させるように適用され、前記下部は上部を回転軸として左右に回転可能であるように形成される。また、前記ダンサー140は、前記基材10にかけられた張力によって下部が回転して、前記基材10に一定の張力が印加されるようにすることができる。また、前記ダンサー140は回転軸となる上部に回転角測定センサー142を含んでおり、前記下部の回転角度を測定することによって、前記基材10の張力を測定することができる。
【0033】
前記ロードセル150には、前記基材10が前記ダンサー140から第2ローラ12を通って適用される。また、前記ロードセル150は、図示されているように3個のローラ151乃至153によって基材10の方向を転換させる。特に、前記ローラのうち、前後段のローラ151、153はその上部に基材10が通過するように位置し、中段のローラ152はその下部を通して基材10が通過するように位置しており、中段のローラ152の下部に弾性部材154を形成することができる。したがって、前記基材10にかけられた張力に応じて前記弾性部材154に加わる力が変動することになり、これに基づいて、前記ロードセル150は前記基材10の張力を測定することができる。」

「【0043】
より具体的に、マンドレル回転量と基材供給量との関係を示すプロファイルの獲得段階(S1)は、図5に示された段階を通して連続的な測定をすることによって行うことができる。前記段階ではまず、前記巻取部120のマンドレルを正位置させ(S11)、前記ダンサー140またはロードセル150をフィードバックモード(feedback mode)に設定する(S12)。前記フィードバックモードで前記ダンサー140および前記ロードセル150は前記基材10に印加される張力が一定に維持されるようにすることができ、一定の張力を維持するために変化量により前記基材供給部110の回転を制御することができる。」
「【0051】
前記マンドレルおよび基材供給部を同期駆動する段階(S2)は、獲得されたプロファイルに基づいて、制御部130が前記巻取部120のマンドレルと前記基材供給部110を同期駆動する段階である。本段階は既存のフィードバック方式ではないため、基材10の張力センシングから実際に基材供給を制御するまでの時差を考慮する必要がなく、すぐに正確な制御が可能である。」

(2)甲1の記載事項及び甲1に記載の発明
ア 甲1の記載事項
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、扁平型キャパシターや扁平型電池等の扁平型電子部品を構成する電極シート、セパレータ等の帯状素子を扁平状の巻芯に巻き取るための巻取方法及び巻取装置に関する。」
「【0016】
【発明の実施の形態】本発明の好ましい実施の形態について以下に図面を参照して説明する。図1は、本発明に係る扁平型電子部品用帯状素子の巻取装置の第1実施形態を示す構成概念図である。図1に示す例は、リチウム二次電池の巻取装置1であり、正極電極材料を構成する帯状素子2aと、負極電極材料を構成する帯状素子2bと、帯状素子2aと帯状素子2bとの間に挟まれるセパレータを構成する帯状素子3とを同時に巻き取る装置である。」
「【0025】送り装置5を構成しているリニアガイド5bは、ボール螺子駆動式、タイミングベルト駆動式等の種々の構造のものを採用し得るが、例えば、タイミングベルト駆動式の場合は、タイミングベルトが巻回されているプーリの半径をRとすれば、リニアガイド5bのサーボモータの回転角速度ωLは、
【0026】
【数2】

【0027】で回転するようコントローラからの命令で制御される。この場合、プーリ半径Rは一定である。」
「【0038】次に本発明に係る巻取装置の第2実施形態について以下に図2及び図3を参照して説明する。図2は、本発明第2実施形態の要部を概念的に示す斜視図、図3は、本発明第2実施形態の作動状態を説明するための説明図である。
【0039】図2に示すように、巻芯4の回転軸4bにカム10が直結されており、カム10には回転軸4bの周囲を囲むようにして周溝10aが形成され、巻芯4に巻き取られる帯状部材を押さえつけるための押さえローラ11の軸11aが周溝10aに摺動自在に嵌まっている。
【0040】押さえローラ11は、その軸11aをスリット部12に通す等することによって直線方向にのみ移動可能とされている。また、押さえローラ11は、樹脂で形成された筒状部11bで被覆されている。押さえローラ11は、巻芯4の回転中心を挟んで直線上に対向配置することとが好ましい。
【0041】周溝10aは、図3に示すように、巻芯4の回転時において、押さえローラ11が巻芯4の巻取面に沿って移動するように押さえローラ11を案内するように、略楕円形又は略長円形に形成されている。
【0042】上記構成を有する本発明第2実施形態の巻取装置によれば、押さえローラ11が巻芯4の巻取面に沿った移動経路を強制的に案内されることになるため、従来のように巻芯の回転によって押さえローラ11がバウンドすることがなく、高速巻取が可能となる。」
「【0044】上記のような押さえローラ11を用いた装置では、巻取速度が上記した式(1)のコサインカーブからややずれることがあり、この場合の制御に関する実施形態について以下に図4〜8を参照して説明する。
【0045】図4の(a)〜(c)は、帯状素子2a(2b又は3)を押さえローラ11によって押さえながら巻芯4に巻き取る場合の状態を時系列で示す説明図である。図中15は、ガイドローラを示す。押さえローラ11とガイドローラ15との関係により、巻取速度(送り速度)は図5に示すようなカーブとなる。図5において、横軸は巻芯4の回転角度、縦軸は巻取速度(=送り速度)である。
【0046】図5に示された速度変位に送り装置5の送り速度を追従させる方法として、例えば、巻芯4の回転角度に対する送り装置5の送り量を実際にサンプリングし、そのサンプリングされたカーブデータをトレースすることができる。
サンプリング方法の例を以下に説明する。
【0047】図6に示すように、実際に帯状素子2aをセットし、送り装置5のサーボモータをフリーにして、巻芯4のサーボモータ(巻取モータ4a)を、巻芯4の回転角度を、(180°/40)単位に等分割して4.5°づつ巻き取り、4.5°づつの送り量を、送り装置5のサーボモータに設けた角度検出器からの検出値から計算し、これを記録する。この操作を何度か繰り返し、巻芯4が4.5°回転する毎に巻き取られる帯状素子2aの巻き取り量(=送り量)の平均値をとる。
【0048】こうして得られた4.5°回転単位の平均送り量を、最長送り量を100としてパーセンテージに換算し、これを縦軸にプロットし、横軸に対応する角度位置をプロットすると、図7に示すグラフが得られる。図7に示されたグラフは、上記式(1)で示したコサインカーブから少しずれていることが分かる。
【0049】4.5°づつの角度位置をi(i=1,2,3,・・・)、角度位置iに対応する送り量(=巻取量)の前記パーセンテージをKiとすると、角度位置iでの送り速度Viは、次式(5)で表される。
【0050】
【数5】

【0051】ここで、Vbは、基準速度であり、以下のようにして求められる。
【0052】巻芯が4.5°描いてするときの時間taは、
【0053】
【数6】

【0054】であるから、巻芯が4.5°回転した時の移動量Laは、
【0055】
【数7】

【0056】であり、巻芯が180°回転した後の移動量は、2rであるから、
【0057】
【数8】

【0058】よって、Vbは、次式で表される。
【0059】
【数9】

【0060】式(5)に、巻太りによる補正項α1、α2を挿入すると、
【0061】
【数10】

【0062】となる。ここで、α1は、巻取に従って巻芯幅が広くなることに伴って速度を増加させるための補正項であり、α2は、巻取に従って巻芯が厚くなることに伴いって比率Kiのカーブが緩やかになることに基づく補正項である。」
「【0066】従って、送り装置5のサーボモータは、上式(6)によって制御されることになる。具体的には、巻芯4のサーボモータ(4a)を位置指令パルス信号によって駆動し、サーボモータ(4a)の位置検出器により検出されたパルスをカウンタでカウントし、このカウンタ数に応じて、上式(6)に従ってモータコントローラにより送り装置5のサーボモータを駆動する。
【0067】送りモータ5のサーボモータに設けられた位置検出器からのパルスをカウンタでカウントしておき、巻取終了後は、所定角度位置に戻す。
【0068】このように実際の巻取量(=送り量)をトレースすることにより、誤差の少ない巻取が可能になる。」
「【図2】


「【図3】


「【図4】


「【図5】


「【図6】


「【図7】



イ 甲1に記載された発明
(ア)上記アで摘記した【0046】、【0047】、【0066】、【0068】、図6より、甲1の「送り装置5」は「帯状基材2a」を送るものと認められる。
(イ)上記アで摘記した【0045】、【0047】、図2〜4、6の記載から、甲1の「巻芯4」は「帯状基材2a」を巻き取るものと認められる。
(ウ)上記アで摘記した事項及び上記(ア)、(イ)より、甲1には、次の2つの発明(以下、それぞれ「甲1−1発明」、「甲1−2発明」という。)が記載されていると認められる。

[甲1−1発明]
「帯状素子2aを送る送り装置5と、
帯状素子2aを巻き取る巻芯4と、を含み、
実際に帯状素子2aをセットし、送り装置5のサーボモータをフリーにして、
巻芯4のサーボモータ(巻取モータ4a)を、巻芯4の回転角度を、(180°/40)単位に等分割して4.5°づつ巻き取り、4.5°づつの送り量を、送り装置5のサーボモータに設けた角度検出器からの検出値から計算し、これを記録し、この操作を何度か繰り返し、巻芯4が4.5°回転する毎に巻き取られる帯状素子2aの巻き取り量(=送り量)の平均値をとり、4.5°づつの角度位置をi(i=1,2,3,・・・)、最長送り量を100としたときの角度位置iに対応する送り量(=巻取量)のパーセンテージをKiとし、
角度位置iでの送り速度Viを、以下の式(6)により求め、

ここで、

であり、
taは、巻芯が4.5°回転するときの時間であり、α1は、巻取に従って巻芯幅が広くなることに伴って速度を増加させるための補正項であり、α2は、巻取に従って巻芯が厚くなることに伴って比率Kiのカーブが緩やかになることに基づく補正項であり、
巻芯4のサーボモータ(4a)を位置指令パルス信号によって駆動し、サーボモータ(4a)の位置検出器により検出されたパルスをカウンタでカウントし、このカウンタ数に応じて、上式(6)に従ってモータコントローラにより送り装置5のサーボモータを駆動して、実際の巻取量(=送り量)をトレースすることにより、誤差の少ない巻取が可能である、
扁平型電池等の扁平型電子部品を構成する電極シート、セパレータ等の帯状素子を扁平状の巻芯に巻き取るための巻取装置。」

[甲1−2発明]
「扁平型電池等の扁平型電子部品を構成する電極シート、セパレータ等の帯状素子を扁平状の巻芯に巻き取るための巻取方法において、
実際に帯状素子2aをセットし、送り装置5のサーボモータをフリーにして、
巻芯4のサーボモータ(巻取モータ4a)を、巻芯4の回転角度を、(180°/40)単位に等分割して4.5°づつ巻き取り、4.5°づつの送り量を、送り装置5のサーボモータに設けた角度検出器からの検出値から計算し、これを記録し、この操作を何度か繰り返し、巻芯4が4.5°回転する毎に巻き取られる帯状素子2aの巻き取り量(=送り量)の平均値をとり、4.5°づつの角度位置をi(i=1,2,3,・・・)、最長送り量を100としたときの角度位置iに対応する送り量(=巻取量)のパーセンテージをKiとし、
角度位置iでの送り速度Viを、以下の式(6)により求め、

ここで、

であり、
taは、巻芯が4.5°回転するときの時間であり、α1は、巻取に従って巻芯幅が広くなることに伴って速度を増加させるための補正項であり、α2は、巻取に従って巻芯が厚くなることに伴って比率Kiのカーブが緩やかになることに基づく補正項であり、
巻芯4のサーボモータ(4a)を位置指令パルス信号によって駆動し、サーボモータ(4a)の位置検出器により検出されたパルスをカウンタでカウントし、
このカウンタ数に応じて、上式(6)に従ってモータコントローラにより送り装置5のサーボモータを駆動して、実際の巻取量(=送り量)をトレースすることにより、誤差の少ない巻取が可能である、
巻取方法。」

(3)甲2の記載事項及び甲2に記載の発明
ア 甲2の記載事項
「【発明の属する技術分野】
【0001】
本発明は、例えば偏平状の巻芯や角形状の巻芯等の非円筒形の巻芯に対応できる巻取り装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、偏平状の巻芯を備えた二点支持巻取り装置として、特許文献1に開示されたものが提案されている。この巻取り装置は、一対の支持部を持つ偏平状の巻芯(巻取部材)を具備し、両支持部の中間点を軸として旋回する巻取手段と、当該巻取手段へ例えば電極シート等の巻取材料を供給リールから等速度で送り出すための送り手段を備えている。又、この巻取り装置は、前記巻取手段に巻芯の旋回角が180度周期で変化する引き込み速度の最大と最低の格差を緩和するため、前記巻芯の旋回と同期した調整を行う旋回速度補正部を備えている。さらに、この巻取り装置は、前記供給リールから送り出される巻取材料の等速運動と、前記巻芯による不等速運動との差を吸収して前記巻芯に対し一定の張力で送り込めるように巻芯による前記引き込み速度が遅いときは巻芯の供給経路を伸長し、引き込み速度が速いときは巻取材料の供給経路を短縮すべく、前記巻芯の旋回と同期した巻取材料の送り調整を行う送り補正部を備えている。」
「【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来の巻取り装置は、送り手段の送り補正部がレバー・リンク機構によって構成されているので、巻芯の大きさや形状が変化すると、それに応じてレバー・リンク機構の設計を変更する必要があるので、形状及び寸法の異なる別の巻芯と交換することができないという問題があった。
【0006】
又、前記レバー・リンク機構はサインカーブの運動によって巻取材料の送り補正を行うが、偏平状の巻芯による巻取材料の速度変動曲線は正確にはサインカーブではないため、適正な送り補正を行うことができないという問題があった。この適正な送り補正ができない場合には、巻取材料の張力変動によって、巻芯に巻き取られる巻取材料の巻きズレ等が発生して、巻取材料を用いた例えば携帯電話に用いられる偏平状の蓄電池の品質を低下させるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記従来の技術に存する問題点を解消して、巻芯の大きさ寸法が変化しても送り調整のための機構(ハードウェア)を変更することなく巻取材料の巻芯への送り込み速度を適正に調整制御することができる巻取り装置を提供することにある。
【0008】
本発明の別の目的は、上記目的に加えて巻芯の形状が変化しても送り調整のための機構(ハードウェア)を変更することなく巻取材料の送り込み速度を適正に調整制御することができる巻取り装置を提供することにある。」
「【0015】
図3は巻取り装置全体を示す概略正面図である。この図3に示すように、巻取り装置における装置フレーム11の前面中央には電極シート22,24及びセパレータ28,30を巻き込むための偏平状の巻芯12が装設されている。前記巻芯12の右側下方に位置するように、装置フレーム11の前面には供給リール21が回転可能に配設され、この供給リール21には電池における正極の電極シート22(正極シート22)が巻装されている。巻芯12の左側下方に位置するように、装置フレーム11の前面には別の供給リール23が回転可能に配設され、この供給リール23には電池における負極の電極シート24(負極シート24)が巻装されている。」
「【0017】
前記巻芯12の右側下方に位置するように、装置フレーム11の前面には供給リール27が回転可能に配設され、この供給リール27には二次電池における第1セパレータ28が巻装されている。供給リール23の上方に位置するように、装置フレーム11の前面には別の供給リール29が回転可能に配設され、この供給リール29には二次電池における第2セパレータ30が巻装されている。」
「【0019】
巻取り装置の運転時には、巻芯回転機構を構成する巻取り用モータ13(図2参照)により巻芯12が図3の時計方向に回転される。又、リール回転機構を構成するリール回転用モータ14(図2参照)により各供給リール21,27,23,29が回転されて、正極シート22、第1セパレータ28、負極シート24及び第2セパレータ30が等速で送り出される。そして、複数のガイドローラ25,26,31,32に案内されて巻芯12の外周にシート巻取体70が積層状態で偏平状に巻き取られるようになっている。すなわち、シート巻取体70は巻芯12の形状や寸法に従って不等速に巻き取られる。」
「【0022】
この実施形態では前記ダンサローラ33、定トルクアクチュエータ37、往復動ロッド38及び制御装置51によって張力付与手段を構成している。
前記各供給リール21,23から巻芯12に至る各電極シート22,24の供給経路中に位置するように、装置フレーム11の前面には各電極シート22,24を巻掛けて移動可能な調整ローラ49を備えた送り調整機構41,42がそれぞれ配設されている。同様に、各供給リール27,29から巻芯12に至る各セパレータ28,30の供給経路中に位置するように、装置フレーム11の前面には各セパレータ28,30を巻掛けて移動可能な調整ローラ49を備えた送り調整機構43,44がそれぞれ設けられている。
【0023】
送り調整手段を構成する前記送り調整機構41〜43は、それぞれ同様に構成されているので、原理を表した図1により1つの送り調整機構41について説明する。前記送り調整機構41は例えばリニアモータ45を備え、このリニアモータ45はコイル46とマグネット47とにより構成されている。前記マグネット47にはブラケット48を介して前記調整ローラ49が取り付けられている。そして、前記送り調整機構41により巻取り装置の巻取り運転時に、前記供給リール27,29からの各電極シート22,24の等速運動と前記巻芯12による引き込み時の不等速運動との差が吸収される。そして、偏平状の巻芯12の回転に伴って電極シート22に発生する巻き取り速度の脈動分が吸収されるようになっている。すなわち、水平方向に往復動する調整ローラ49により電極シート22の走行経路の長さの変動を吸収し、この調整ローラ49が巻芯12の回転と同調して動作することにより、巻芯12への送り込み速度が調整され、従って、巻芯12に対する電極シート22の張力が一定になるように制御される。」
「【0025】
この制御装置51は例えば後述する演算式等のデータに基づいて送り調整演算等の各種の演算処理を行うための中央演算処理装置(CPU)52を備えている。又、制御装置51は送り調整演算等の各種のプログラムを記録した読み出し専用の記録媒体としてのリードオンリーメモリー(ROM)53及び各種のデータを記録し、かつ読み出し又は書き込み可能な記録媒体としてのランダムアクセスメモリー(RAM)54を備えている。前記CPU52には予め設定された巻芯12の回転速度指令を出力するための巻芯回転速度指令部55が設けられている。この巻芯回転速度指令部55によって前記巻取り用モータ13が巻径の変化も考慮して平均巻取り速度が一定となるように予め設定した速度で回転されるようになっている。又、前記CPU52には予め設定された供給リール21の回転速度指令を出力するためのリール回転速度指令部56が設けられている。そして、電極シート22を巻き取っている供給リール21の直径寸法が次第に減少しても供給リール21が電極シート22を一定の速度で送り出すようにしている。さらに,前記CPU52には前記巻芯12の巻き取り動作に同期して前記リニアモータ45を制御し調整ローラ49の往復動作を数値制御するための送り調整演算部57が設けられている。」
「【0028】
次に、演算式を導くために必要な各種の条件について説明する。
(A)不変条件として以下のものがある。
巻芯12の旋回軸心O1、ガイドローラ25の回転軸心O2、巻芯12の半円弧状部12aの中心軸心O3とすると、
・ 旋回軸心O1と中心軸心O3との軸心間距離Rs、
・ 巻芯12の半円弧状部12aの半径r0(巻取量が零状態の初期値)、
・ ガイドローラ25の半径Rr、
・ 旋回軸心O1と回転軸心O2を結ぶ直線状の基線Hにおける軸心O1,O2の軸心間距離L、
・ 初期状態の巻芯12の開始点Esとガイドローラ25と正極シート22の接点Tsとを結ぶ直線Dの長さI0、
・ 基線Hに対する直線Dの初期位相角θ0、
(B)変化条件として以下のものがある。
・ ガイドローラ25と巻芯12の間において両者に接するように張設された正極シート22の長さI、
・ 基線Hに対する正極シート22(シート長さI)の傾斜角θ1、
・ ガイドローラ25の回転軸心O2と半円弧状部12aの円弧の中心軸心O3との軸心間距離I5、
・ 基線Hに対する半円弧状部12aの円弧の中心軸心O3の時計回り方向への旋回角θ' 、
・ 正極シート22(シート長さI)に対する両軸心O2,O3を結ぶ直線(軸心間距離I5)の傾斜角度θ4、
・ 中心軸心O3を通り、かつ基線Hと並行な直線H1に対する両軸心O2,O3を結ぶ直線(軸心間距離I5)の傾斜角度θ5、
(C)初期状態及び巻き取りが開始された状態において成立する関係式について
Lsinθ0=Rr+rt
∴θ0=sin-1〔(Rr+rt)/L〕
I0=Lcosθ0+Rr
但し、rtは半円弧状部12aの半径r0からθ+θ0≒360度毎に、つまり巻芯12が一回旋回される毎に巻き太る量(シート22,24及びセパレータ28,30の総厚さ分αt)を表し、添字の「t」は旋回動作の回数を意味する。
【0029】
I5=sinθ5=Rsinθ'
I5cosθ5=L−Rcosθ'
∴tanθ5=Rsinθ/(L−Rcosθ' )
∴θ5=tan−1(Rsinθ/(L−Rcosθ' )
∴I5=Rsinθ' /sinθ5
I5cosθ4=I
I5sinθ4=Rr+rt
∴θ4=sin−1〔(Rr+rt)/I5〕
∴I=I5cosθ4
θ1=θ4+θ5
但し、θ0≦θ' <180+θ0
(D)リニアモータ45を数値制御するための演算式(1)〜(3)について
上述した(C)項の各関係式から、調整ローラ49と巻芯12の間の2つのガイドローラ25の間の(B)地点における電極シート22の速度、つまり初期位相角θ0からの移動量x(θ)は、次の演算式(1)となる。
【0030】
x(θ)=〔Rrθ1+I+rt(θ' +θ1)〕−(Rrθ0+I0)+2Rr・・・(1)
一方、調整ローラ49の上流側の(A)地点における電極シート22の速度、つまり初期位相角θ0からの移動量y(θ)は(θは総回転角)、次の演算式(2)となる。
【0031】
y(θ)=(πrt+2R)θ/180−Rrθ1・・・(2)
従って、電極シート22の送り込み速度を調整するためのリニアモータ45による調整ローラ49の位置、つまり移動量Z(θ)は、次の演算式(3)となる。
【0032】
z(θ)=〔x(θ)−y(θ)〕/2・・・(3)
前述した各種の条件及び演算式(1),(2),(3)等の必要なデータは、入力装置58によって前記制御装置51のCPU52、ROM53及びRAM54等に予め格納されている。そして、送り調整演算部57により演算された移動量Z(θ)の演算式(3)の演算値に基づいてリニアモータ45の往復動作が制御され、調整ローラ49による正極シート22の送り込み速度の調整の制御が行われる。
【0033】
前述した電極シート22,24及びセパレータ28,30は、図3に示すように巻芯12に対する巻き取り角(初期位相角θ0)がそれぞれ異なる。従って、リニアモータ45を制御する演算式(1)〜(3)は全て同じであるが、それぞれの総回転角(θ)の位相角をそれぞれ相違させるようにしている。又、巻芯12に対する電極シート22,24及びセパレータ28,30の巻き取り動作は同時に行われるために、それぞれの巻き太り量rtは、電極シート22,24及びセパレータ28,30の総厚さ寸法となっている。
【0034】
なお、実際の巻取り装置においては、例えばガイドローラ25の半径Rr=29mm、巻芯12の半円弧状部12aの半径r0=2mm、軸心O1,O2間の距離L=220mm、移動量x(θ)max=15000mm/min、軸心間距離Rs=100mm、電極シート22,24及びセパレータ28,30の総厚さα=0.15mm、巻芯回転数max=300rev/minのように条件設定される。
【0035】
次に、前記のように構成された巻取り装置の動作を説明する。
図1,3において前記巻芯12が初期状態から回転を開始すると、巻芯12の外周面に電極シート22,24及びセパレータ28,30が巻き取られて、シート巻取体70が形成される。この巻き取り動作中においては、図2に示す制御装置51の巻芯回転速度指令部55によって、巻芯12の回転速度指令が巻取り用モータ13に出力されて、巻芯12の回転速度が予め設定された速度に制御される。
【0036】
一方、リール回転速度指令部56からリール回転用モータ14に対して所定の回転速度指令が出力されるので、リール回転用モータ14は予め設定された速度指令信号に基づいて回転制御され、電極シート22,24及びセパレータ28,30の送り出し速度がそれぞれ一定に制御される。
【0037】
さらに、送り調整演算部57によって演算式(1)〜(3)に基づいて演算された調整ローラ49の移動量Z(θ)の演算値は、送り調整機構41のリニアモータ45に出力されて調整ローラ49が巻芯12の旋回動作により生じる脈動分を吸収するように往復動される。このため、電極シート22の巻芯12による引き込み速度が不等速にもかかわらず、送り調整機構41による送り込み速度の調整によって巻芯12に対し電極シート22の張力が一定に保持されて巻芯12の外周面に対する電極シート22の巻き取り動作が適正に行われる。
【0038】
上記実施形態の巻取り装置によれば、以下のような特徴を得ることができる。
(1)上記実施形態では、前記制御装置51に前述した各種の条件及び演算式(1)(2)(3)等の必要なデータを予め格納しておき、それらによる演算に基づいて送り調整機構41を数値制御することにより調整ローラ49を往復動作するようにした。このため、電極シート22,24及びセパレータ28,30に対するそれぞれの送り込み速度の調整を適正に行うことができるとともに、従来のレバー・リンク機構を用いた送り補正機構と比較して、送り調整動作を正確に行うことができる。又、巻芯12の形状が同じで大きさが異なるものに変更された場合においても、前記演算式(1)(2)(3)の条件設定を変更することにより対応することができ、1台の巻取り装置によって大きさの異なる巻芯12に対する巻取り動作を容易に行うことができる。上記条件設定の変更要素は、旋回軸心O1と中心軸心O3との軸心間距離Rs、巻芯12の半円弧状部12aの半径r0、シート22,24及びセパレータ28,30の総厚さ分αt(巻き太り量)である。この3つの要素の設定を変えるのみで、異なる巻芯12及び異なる厚さ寸法の巻取材料に対処することができる。」
「【0042】
なお、本実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 図5に示すように、前記巻芯12の形状を4角形にしたり、図6に示すように3角形状にしたり、その他、図示しないが楕円形状にしたり、その他の非円筒形状にしたり、あるいは円筒形状にしたりしてもよい。これらの場合においてもそれぞれに適した各種条件及び演算式を用いて、巻取材料の送り込み速度を適正に調整制御することができる。これにより、巻芯12の形状が変化しても対応する演算式を選択するだけで、送り調整を行うことができる。」
「【図1】


「【図2】


「【図3】



イ 甲2に記載の発明
(ア)上記アで摘記した【0015】、【0022】、【0023】、【0036】、図3より、甲2の「供給リール21、23、27、29」は「電極シート22、24」、「セパレータ27、30」を送り出し速度を一定に制御して送るものと認められる。
(イ)上記アで摘記した【0015】、【0022】、【0023】、【0035】、図3の記載から、甲2の「巻芯12」は「電極シート22、24」、「セパレータ27、30」を予め設定された速度に制御して巻き取るものと認められる。
(ウ)上記アで摘記した【0022】、【0023】、【0028】〜【0032】、【0038】、図1、3の記載から、甲2の「送り調整機構41〜44」では、「送り調整機構41〜44」の「調整ローラ49」が「巻き芯12」の回転と同調して動作することにより「電極シート22、24」、「セパレータ27、30」の張力が一定になるように制御するものと認められる。
(エ)上記アで摘記した【0015】、【0017】、【0022】、【0023】、図1、3の記載から、甲2の「巻芯12」は「電極シート22、24」、「セパレータ27、30」を巻き取り、二次電池を製造するものと認められる。
(オ)上記アで摘記した事項及び上記(ア)〜(エ)より、甲2には、次の2つの発明(以下、それぞれ「甲2−1発明」、「甲2−2発明」という。)が記載されていると認められる。

[甲2−1発明]
「電極シート22、24、若しくはセパレータ27、30を送り出し速度を一定に制御して送る供給リール21、23、27、29と、
電極シート22、24、若しくはセパレータ27、30を予め設定された速度に制御して巻き取る巻芯12と、
調整ローラ49が巻き芯12の回転と同調して動作することにより電極シート22、24、若しくはセパレータ27、30の張力が一定になるように制御する送り調整機構41〜44を含み、
(A)不変条件として以下の
巻芯12の旋回軸心O1、ガイドローラ25の回転軸心O2、巻芯12の半円弧状部12aの中心軸心O3とすると、
・旋回軸心O1と中心軸心O3との軸心間距離Rs、
・巻芯12の半円弧状部12aの半径r0(巻取量が零状態の初期値)、
・ガイドローラ25の半径Rr、
・旋回軸心O1と回転軸心O2を結ぶ直線状の基線Hにおける軸心O1,O2の軸心間距離L、
・初期状態の巻芯12の開始点Esとガイドローラ25と正極シート22の接点Tsとを結ぶ直線Dの長さI0、
・基線Hに対する直線Dの初期位相角θ0、
(B)変化条件として以下の
・ガイドローラ25と巻芯12の間において両者に接するように張設された正極シート22の長さI、
・基線Hに対する正極シート22(シート長さI)の傾斜角θ1、
・ガイドローラ25の回転軸心O2と半円弧状部12aの円弧の中心軸心O3との軸心間距離I5、
・基線Hに対する半円弧状部12aの円弧の中心軸心O3の時計回り方向への旋回角θ'、
・正極シート22(シート長さI)に対する両軸心O2,O3を結ぶ直線(軸心間距離I5)の傾斜角度θ4、
・中心軸心O3を通り、かつ基線Hと並行な直線H1に対する両軸心O2,O3を結ぶ直線(軸心間距離I5)の傾斜角度θ5、
(C)初期状態及び巻き取りが開始された状態において成立する関係式について
Lsinθ0=Rr+rt
∴θ0=sin-1〔(Rr+rt)/L〕
I0=Lcosθ0+Rr
(但し、rtは半円弧状部12aの半径r0からθ+θ0≒360度毎に、つまり巻芯12が一回旋回される毎に巻き太る量(シート22,24及びセパレータ28,30の総厚さ分αt)を表し、添字の「t」は旋回動作の回数を意味する。)
I5=sinθ5=Rsinθ'
I5cosθ5=L−Rcosθ'
∴tanθ5=Rsinθ/(L−Rcosθ' )
∴θ5=tan−1(Rsinθ/(L−Rcosθ' )
∴I5=Rsinθ' /sinθ5
I5cosθ4=I
I5sinθ4=Rr+rt
∴θ4=sin−1〔(Rr+rt)/I5〕
∴I=I5cosθ4
θ1=θ4+θ5
但し、θ0≦θ' <180+θ0
(D)リニアモータ45を数値制御するための演算式(1)〜(3)について上述した(C)項の各関係式から、調整ローラ49と巻芯12の間の2つのガイドローラ25の間の(B)地点における電極シート22の速度、つまり初期位相角θ0からの移動量x(θ)に関する、次の演算式(1)
x(θ)=〔Rrθ1+I+rt(θ' +θ1)〕−(Rrθ0+I0)+2Rr・・・(1)
調整ローラ49の上流側の(A)地点における電極シート22の速度、つまり初期位相角θ0からの移動量y(θ)(θは総回転角)に関する、次の演算式(2)
y(θ)=(πrt+2R)θ/180−Rrθ1・・・(2)
従って、電極シート22の送り込み速度を調整するためのリニアモータ45による調整ローラ49の位置、つまり移動量Z(θ)に関する、次の演算式(3)
z(θ)=〔x(θ)−y(θ)〕/2・・・(3)
についての各種の条件及び演算式(1),(2),(3)等の必要なデータが格納され、それらデータによる演算に基づいて送り調整機構41を数値制御することにより調整ローラ49を往復動作するように制御する制御装置51とを備えた、
偏平状の巻芯や角形状の巻芯等の非円筒形の巻芯に対応できる二次電池の巻取り装置。」

[甲2−2発明]
「電極シート22、24、セパレータ27、30を巻き取り、二次電池を製造する方法であって、
供給リール21、23、27、29により、電極シート22、24、若しくはセパレータ27、30を送り出し速度を一定に制御して送り、
巻芯12により、電極シート22、24、若しくはセパレータ27、30を予め設定された速度に制御して巻き取り、
調整ローラ49が巻き芯12の回転と同調して動作することにより電極シート22、24、若しくはセパレータ27、30の張力が一定になるように、
(A)不変条件として以下の巻芯12の旋回軸心O1、ガイドローラ25の回転軸心O2、巻芯12の半円弧状部12aの中心軸心O3とすると、
・旋回軸心O1と中心軸心O3との軸心間距離Rs、
・巻芯12の半円弧状部12aの半径r0(巻取量が零状態の初期値)、
・ガイドローラ25の半径Rr、
・旋回軸心O1と回転軸心O2を結ぶ直線状の基線Hにおける軸心O1,O2の軸心間距離L、
・初期状態の巻芯12の開始点Esとガイドローラ25と正極シート22の接点Tsとを結ぶ直線Dの長さI0、
・基線Hに対する直線Dの初期位相角θ0、
(B)変化条件として以下の
・ガイドローラ25と巻芯12の間において両者に接するように張設された正極シート22の長さI、
・基線Hに対する正極シート22(シート長さI)の傾斜角θ1、
・ガイドローラ25の回転軸心O2と半円弧状部12aの円弧の中心軸心O3との軸心間距離I5、
・基線Hに対する半円弧状部12aの円弧の中心軸心O3の時計回り方向への旋回角θ'、
・正極シート22(シート長さI)に対する両軸心O2,O3を結ぶ直線(軸心間距離I5)の傾斜角度θ4、
・中心軸心O3を通り、かつ基線Hと並行な直線H1に対する両軸心O2,O3を結ぶ直線(軸心間距離I5)の傾斜角度θ5、
(C)初期状態及び巻き取りが開始された状態において成立する関係式について
Lsinθ0=Rr+rt
∴θ0=sin-1〔(Rr+rt)/L〕
I0=Lcosθ0+Rr
(但し、rtは半円弧状部12aの半径r0からθ+θ0≒360度毎に、つまり巻芯12が一回旋回される毎に巻き太る量(シート22,24及びセパレータ28,30の総厚さ分αt)を表し、添字の「t」は旋回動作の回数を意味する。)
I5=sinθ5=Rsinθ'
I5cosθ5=L−Rcosθ'
∴tanθ5=Rsinθ/(L−Rcosθ' )
∴θ5=tan−1(Rsinθ/(L−Rcosθ' )
∴I5=Rsinθ' /sinθ5
I5cosθ4=I
I5sinθ4=Rr+rt
∴θ4=sin−1〔(Rr+rt)/I5〕
∴I=I5cosθ4
θ1=θ4+θ5
但し、θ0≦θ' <180+θ0
(D)リニアモータ45を数値制御するための演算式(1)〜(3)について上述した(C)項の各関係式から、調整ローラ49と巻芯12の間の2つのガイドローラ25の間の(B)地点における電極シート22の速度、つまり初期位相角θ0からの移動量x(θ)に関する、次の演算式(1)
x(θ)=〔Rrθ1+I+rt(θ' +θ1)〕−(Rrθ0+I0)+2Rr・・・(1)
調整ローラ49の上流側の(A)地点における電極シート22の速度、つまり初期位相角θ0からの移動量y(θ)(θは総回転角)に関する、次の演算式(2)
y(θ)=(πrt+2R)θ/180−Rrθ1・・・(2)
従って、電極シート22の送り込み速度を調整するためのリニアモータ45による調整ローラ49の位置、つまり移動量Z(θ)に関する、次の演算式(3)
z(θ)=〔x(θ)−y(θ)〕/2・・・(3)
についての各種の条件及び演算式(1),(2),(3)等の必要なデータが格納され、それらデータによる演算に基づいて送り調整機構41を数値制御することにより調整ローラ49を往復動作する、
電極シート22、24、セパレータ27、30を巻き取り、二次電池を製造する方法」

(4)甲3の記載事項及び甲3に記載の発明
ア 甲3の記載事項
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、巻取装置及び巻回素子の製造方法に係り、例えばリチウムイオン電池等の二次電池の製造に際し用いられる巻取装置及び巻回素子の製造方法を含む技術分野に属するものである。」
「【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記の巻取に際しては、巻ズレの発生を防止するために、各電極箔に対し所謂バックテンションがかけられるようになっている。より詳しくは、各電極箔は、その基端部側がチャックにより把持された状態で、巻芯によって先端側から巻き取られる。このとき、前記チャックに対して錘等を設置することで、巻き取られる方向、つまり引っ張られ方向とは逆方向に、バックテンションがかけられる。しかしながら、必要以上にバックテンションがかかってしまうと、巻締まり等が生じることから、得られる電池素子の充放電特性が悪化してしまうおそれがある。そのため、電極箔にかかるバックテンションを比較的小さくした状態で巻取を行いたいという要請があるのも事実である。
【0005】また、巻取に際してバックテンションにばらつきがあると、電池素子の品質もばらついてしまう。かかるばらつきは、比較的高速で巻取った場合や、非円形状(例えば平板状)の巻芯を用いて巻き取った場合に起こりやすい。
【0006】本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、得られる素子の特性が悪化してしまうのを抑制し、安定した巻取を行うことのできる巻取装置及び巻回素子の製造方法を提供することを主たる目的の一つとしている。」
「【0032】
【発明の実施の形態】(第1の実施の形態)以下、第1の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0033】まず、本実施の形態の巻取装置によって得られるリチウムイオン電池素子の構成について説明する。図2に示すように、巻回素子を構成する電池素子1は、複数枚の帯状体が略長円形状に巻回された巻回体を主として備え、その最外周にテープ2が貼付けられることによって構成されている。帯状体は、2枚のセパレータ3,4と、プラス電極箔5及びマイナス電極箔6とによって構成されている。セパレータ3,4は、異種の電極箔5,6が互いに接触して短絡を起こしてしまうのを防止するべく絶縁体よりなる。
【0034】プラス電極箔5は、例えば銅箔7と、該銅箔7表面に塗布された活物質たる活性炭8とから構成されている。マイナス電極箔6は、例えばアルミニウム箔9と、該アルミニウム箔9に塗布形成された活物質たる活性炭10とから構成されている。但し、電極箔5,6の巻き中心部分には、活性炭8,10が塗布形成されていない部分があり、該部分に、長板状のリード11,12が取り付けられている。
【0035】次に、図1,3に従って上記電池素子1を製造するための巻取装置20について説明する。前記巻取装置20は、図3に示すように、サーボモータ21の回転に基づいて回転可能に軸支された巻芯22を備えている。サーボモータ21の回転軸23及び巻芯22には、タイミングベルト24が掛けられており、これにより、サーボモータ21の回転軸23の回転駆動力が巻芯22に伝達されるようになっている。
【0036】巻芯22は、タイミングベルト24が掛けられている軸部25と、軸部25の先端に設けられた本体部26とを備えている。本体部26は、例えば軸部25の延長線上で2つに分かれた板状体が若干の隙間(スリット)22aを有する形状をなしている。また、巻芯22は、その軸線方向に出没可能となっており、非巻取時には没入状態を、巻取時には突出状態をそれぞれとるようになっている。
【0037】図1に示すように、プラス電極箔5は、プラス電極箔原反繰出部27においてロール状に巻回されている。前記プラス電極箔5の搬送経路途中には、前記リード11を溶接によって所定のタイミングで取付けるためのリード取付手段28と、プラス電極箔5を短冊状に切断する切断手段29と、短冊状のプラス電極箔5の前後端を挟持して所定位置(巻芯22に対応する位置)に搬送する搬送手段(図示略)と、さらに、前記搬送手段より受け渡された短冊状のプラス電極箔5を挟持してその先端を前記巻芯22の方へ案内するための案内手段30とが設けられている。また、前記案内手段30の下方には、該案内手段30を経路に沿って移動させる移動手段を構成するボールネジ70が、直線状且つ図示しないモータにより回転可能に設けられている。
【0038】一方、図面の煩雑化を回避するためここでは大部分につき図示を省略しているが、マイナス電極箔6に関しても、前記プラス電極箔5と同様の手段が設けられている。すなわち、マイナス電極箔6もロール状に巻回されており、その搬送経路途中には、リード取付手段、切断手段、搬送手段及び案内手段とが設けられている。但し、案内手段には、短冊状のマイナス電極箔6の端縁に前記テープ2を貼リ付けるための貼付け機構が設けられている。
【0039】かかる構成の下、ロール状のプラス電極箔原反繰出部27から、帯状のプラス電極箔5がリード取付手段28へと送り出され、該リード取付手段28にて、前記プラス電極箔5にリード11が取り付けられる。さらに、プラス電極箔5は、切断手段29に送られここで短冊状に切断される。より詳しくは、切断手段29はプラス電極箔5の先端部分を引っ張り込む機構を備えており、該機構によってプラス電極箔5が所定長だけ引っ張り込まれた後、切断手段29のカッタによって短冊状に切断される。そして、短冊状のプラス電極箔5は、搬送手段によって所定位置に搬送され案内手段30へと引き渡される。
【0040】同様に、マイナス電極箔6についても、マイナス電極箔繰出部から、リード取付手段にて、所定タイミングでリード12が取り付けられ、保護テープ貼付機構によって保護テープ13が貼着けされる。さらに、マイナス電極箔6は、切断手段に送られ短冊状に切断され、搬送手段によって所定位置に搬送され、その後案内手段へと引き渡される。案内手段では、貼付け機構によってマイナス電極箔6の端縁にはテープ2が貼り付けられる。これにより、巻回終了時に外周側にテープ2が貼付けられるようになっている。
【0041】セパレータ3,4は、セパレータ原反繰出部31,32においてロール状に巻回されている。両セパレータ3,4は、その先端側から巻芯22に供給されるようになっており、セパレータ3,4の先端側の部分を把持して引っ張り込むためのセパレータチャック(図示略)等が設けられている。
【0042】また、巻取装置20には、前記巻芯22の近傍において、前記セパレータ3,4及び電極箔5,6を巻芯22に対し押さえつけるための押さえローラや、セパレータ3,4を切断するためのセパレータカッタ(いずれも図示略)等が設けられている。さらに、前記巻取装置20には、巻取によって得られた電池素子1を載置台35まで移送して載置するための移送手段(図示略)が設けられている。」
「【0050】次に、上記のように構成されてなる巻取装置20を用いた巻取方法(電池素子1の製造方法)の一例について説明する。
【0051】まず、前記セパレータチャックにて、2枚のセパレータ3,4の先端部分を所定位置まで引っ張り込む。続いて、それまで没入状態にあった巻芯22を突出させる。すると、巻芯22のスリットにセパレータ3,4が入り込み、前記巻芯22の本体部26からはみ出した格好となる。さらに、この状態で図示しない押さえローラによってセパレータ3,4を巻芯22に対し押さえ付ける。また、この押さえ付けに合わせて、前記セパレータチャックによる把持を解除する。次いで、この状態から巻芯22を180度回転させる。この時点で、セパレータ3,4が巻芯22に巻き付けられることになるため、位置ずれのおそれがなくなる。従って、この時点で押さえローラによる押さえを解除する。
【0052】なお、このセパレータ3,4の巻取開始に先だって、案内手段30でもって、プラス電極箔5を所定の待機位置まで案内しておく。すなわち、プラス電極箔5は、前記搬送手段によって案内手段30へと渡され、マイナス電極箔6についても図示しない案内手段へと渡された状態にしておく。
【0053】次に、巻芯22を回転させつつ、プラス電極箔5及びマイナス電極箔6を先端側から巻芯22の方向へ案内する。本実施の形態では、まずプラス電極箔5を先に案内してから巻芯22をさらに180度回転させた後、マイナス電極箔6を案内する。これにより、両電極箔5,6がセパレータ3,4で挟まれるように巻き付けられる。その後、巻芯22を高速で回転させることで、セパレータ3,4及び電極箔5,6を巻き付けていく。そして、所定回転数だけ巻き取った後、仕上げ段階として、セパレータカッタでセパレータ3,4を切断する。さらにその後、プラス電極箔5に貼り付けられているテープ2で帯状体が固定される(固定に際しては再度前記押さえローラにて押さえ付けられ、また、巻取完了に際しては前記チャック部材60による挟持も解除される)。その後、巻芯22が没入状態とさせられることで電池素子1が巻芯22から取り外され、前記移送手段にて載置台35上に移送され載置される。これにより、図2に示すような断面構造を備えた電池素子1が得られることとなる。
【0054】さて、前記プラス電極箔5及びマイナス電極箔6については、各基端部がチャック部材60に挟持された状態のまま巻取られてゆく。この巻取に際し、コイルバネ54によってチャック部材60にバックテンションが付与されることで、巻き取られる両電極箔5,6に対し巻き取られる方向とは反対方向へ張力が付与され、これにより巻ずれ等が防止される。
【0055】また、モータ(ひいてはボールネジ70の回転速度)が制御装置によって制御されることで、チャック部材60と、コイルバネ54を搭載したブロック部材50とが、両電極箔5,6の巻取にほぼ同期して、巻芯22の方向へ直線状に案内されつつ移動させられる。つまり、電極箔5,6を保持するチャック部材60等が巻芯22の回転に追従して積極移動させられることから、必要以上に電極箔5,6が引っ張られることがない。そのため、両電極箔5,6に対して必要以上にバックテンションがかかることが抑制され、巻締まり等が生じるのを防止できる。その結果、得られる電池素子1の特性悪化を抑制することができる。
【0056】さらに、コイルバネ54も積極移動させられることから、バックテンションが大きく変動してしまうことが起こりにくい。従って、安定した巻取を行うことが可能となる。
【0057】ここで、本実施の形態で採用される巻芯22は板形状をなしているため、巻芯22が回転して電極箔5,6が巻取られる際の巻取速度が一定とはならず、電極箔5,6の移動速度に斑が生じることとなる。つまり、図5に示すように、電極箔5が巻き取られる速度(移動速度)は、一定とはならず、速すぎる状態(進みすぎる状態)と、遅すぎる状態(遅れる状態)とが交互に繰り返されることとなる。
【0058】ここで、前記速すぎる状態の場合は、支持部材52はブロック部材50に対し後方へ相対移動することから、コイルバネ54は収縮されることとなる。この場合、本実施の形態では前記センサドグ53a〜53cに対向して設けられるセンサによって、予め設定されたドグとは異なるドグの通過が検知されると、電極箔5,6の移動速度が速すぎる旨が判断され、制御装置のフィードバック制御によってモータ、ひいてはボールネジ70の回転速度が低下させられる。
【0059】逆に、遅すぎる状態の場合は、電極箔5,6が巻芯22に引っ張られることとなり、これによって、支持部材52も前方へと引っ張られ、コイルバネ54が伸ばされることとなる。そして、前記センサによって支持部材52が前方へ相対移動したことが検知されると移動速度が遅すぎる旨が判断され制御装置のフィードバック制御によって、モータ、ひいてはボールネジ70の回転速度が増大させられ速められる。
【0060】従って、電極箔5,6の巻取に際し、バックテンションが大きく変動してしまうことが起こりにくい。その結果、安定した巻取を行うことができ、ひいては、得られる製品の性能も安定したものとなる。」
「【0078】(j)第1の実施の形態では、モータをフィードバック制御する構成となっていたが、予め設定されたプログラムデータに基づいてフィードフォワード制御する構成としてもよい。」
「【図1】


「【図2】


「【図3】


「【図4】


「【図5】



イ 甲3に記載の発明
(ア)上記アで摘記した【0037】、【0055】、【0057】〜【0059】、【0078】、図3より、甲3の「案内手段30」と「ボールネジ70」は、「予め設定されたプログラムデータに基づいてフィードフォワード制御」して「電極箔5,6」を送るものと認められる。
(イ)上記アで摘記した【0057】〜【0059】、図3の記載から、甲3の「巻芯22」が回転して「電極箔5,6」を巻き取るものと認められる。
(ウ)上記アで摘記した【0001】、【0033】の記載から、甲3の「巻取装置」及び「巻回素子」は、リチウムイオン電池素子を製造する際に用いられるものと認められる。
(エ)上記アで摘記した事項及び上記(ア)〜(エ)より、甲3には、次の2つの発明(以下、それぞれ「甲3−1発明」、「甲3−2発明」という。)が記載されていると認められる。

[甲3−1発明]
「電極箔5、6を送る案内手段30とボールネジ70と、
電極箔5、6を巻き取る板状の巻芯22と、
モータを予め設定されたプログラムデータに基づいてフィードフォワード制御する構成、とを含む
リチウムイオン電池装置を製造する際に用いられる巻取装置。」

[甲3−2発明]
「リチウムイオン電池等の二次電池の製造に際し用いられる巻回素子の製造方法であって、
モータを予め設定されたプログラムデータに基づいてフィードフォワード制御して、案内手段30とボールネジ70で電極箔5、6を送り、巻芯22で電極箔5、6を巻き取る
リチウムイオン電池等の二次電池の製造に際し用いられる巻回素子の製造方法。」

(5)甲4の記載事項及び甲4に記載の発明
ア 甲4の記載事項
「【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器、電気機器、産業機器、自動車等に使用されるフィルムを巻回したコンデンサや電池等を製造する際に使用可能なフィルムの巻取り装置及びフィルムの巻取り方法に関するものである。」
「【0005】
しかし、近年では、ハイブリッド車に用いられる電気モータに関連して使用されるコンデンサとして、その断面形状を非円形として、車両の所定の隙間にそのようなコンデンサを収容させて部品の搭載率を高める試みが成されている。このような断面が非円形のコンデンサ等を得るためには、断面が非円形の巻芯にフィルムを巻回させるようなことが行われ、この場合に断面が非円形の巻芯を等速で回転させると、その巻芯の外周に巻取られるフィルムの速度は変化することになる。例えば、フィルムが巻回される巻芯の断面が長方形状のような扁平形状を成しており、その長方形状断面の長辺が短辺に比較して著しく長い場合に、その巻芯が一定の速度で回転すると、その断面が非円形の巻芯に巻取られるフィルムの速度は著しく変化し、比較的速い速度と著しく遅い速度が交互に繰り返されるようになる。
【0006】
巻取られるフィルムの速度が変化すると、そのフィルムを繰出す側においても、そのフィルムの繰出し速度をそのフィルムが巻取られる速度と同じように、フィルムを比較的速い速度で繰出した後にその繰出し速度を著しく遅くさせるようなことを交互に繰り返す必要が生じる。してみると、実質的に巻芯にフィルムを巻取る速度が、フィルムを繰出す側において、そのフィルムを速度を変えて繰出す速度に依存することになる。
【0007】
しかし、フィルムを繰出す側において、繰出すフィルムが比較的大きなスプールに巻回されていた場合には、そのスプールは比較的大きな慣性力を有することになるので、その慣性の大きさ故にそのスプールの回転の加速及び減速を速やかに行うことが困難になる。このため、結果的に迅速なフィルムの繰出しが困難になって、フィルムの巻取り速度を高めることが困難になる不具合がある。
【0008】
本発明の目的は、フィルムの巻取り速度を変化させつつそのフィルムを巻回する場合であっても、比較的高速にそのフィルムを巻回し得るフィルムの巻取り装置及びフィルムの巻取り方法を提供することにある。」
「【0016】
図1に、本発明の実施の形態によるフィルムの巻取り装置10を示す。この巻取り装置10は、所定量の帯状フィルム11を一定量で繰出す繰出し機構12を備える。この実施の形態における繰出し機構12とは、図示しないボビン又はリールに帯状フィルム11が円形に巻回されたフィルムロール11aを装填可能に構成された巻出し軸12aと、その巻出し軸12aをそのフィルムロール11aとともに回転させる図示しない繰出しモータとを備える。本実施の形態では、この帯状の金属化フィルム11を2枚1組として一対で重ね合わせて巻回する装置10を示す。このため、2組の帯状金属化フィルム11が巻回された2つのフィルムロール11aを夫々装填できるように、繰出し機構12を構成する巻出し軸12a及び図示しない繰出しモータもそれぞれ一対、即ち2組備えられる。
【0017】
そして、この2本の巻出し軸12aをそれぞれ回転させる図示しない繰出しモータは、円形に巻回されたフィルムロール11aとともに、この巻出し軸12aをそれぞれ一定速度で回転させることにより、その回転する円形のフィルムロール11aから所定量のフィルム11を等速であって常時一定量で繰出すように構成される。なお、この金属化フィルム11として、コンデンサ用のものとしては、ポリプロピレンからなる誘電体フィルムの片面に金属蒸着電極を形成することによって構成された、幅80mm、厚さ3μmのものが例示される。
【0018】
また、本発明のフィルムの巻取り装置10は、繰出し機構12から繰出されるフィルム11を巻回する巻取り機構13が備えられる。この巻取り機構13は所定量のフィルム11を巻取り速度を変えて巻取るものであって、この実施の形態では、フィルム11を巻回する断面が非円形の巻芯13aと、この巻芯13aを一定の速度で回転させる図示しない巻取りモータとを備えるものを示す。そして、図示しない巻取りモータが、断面が非円形の巻芯13aを一定の速度で回転させ、その一定速度で回転する巻芯13aの外周にフィルム11を巻回することにより、巻取り機構13は、所定量のフィルム11を巻取り速度を変えて巻取るように構成される。
【0019】
繰出し機構12を構成する巻出し軸12aと巻取り機構13を構成する巻芯13aの間のフィルム11の搬送経路には複数の搬送ローラ16が設けられる。2本の巻出し軸12aを備えるこの実施におけるフィルムの巻取り装置10では、それぞれの巻出し軸12aから巻芯13aまで同数の搬送ローラ16がそれぞれ設けられる場合を示す。この搬送ローラ16は、金属化フィルム11の搬送経路に複数本固定して設けられて金属化フィルム11の搬送をガイドするものであり、この複数の搬送ローラ16は、フィルム11が掛け回される外周から吹き出すエアによりフィルム11を浮上させてそのフィルム11を搬送するように構成される。複数の搬送ローラ16は全て同一構造であり、図1における1の搬送ローラ16を代表して説明すると、図4及び図5に示すように、この搬送ローラ16は、外周から吹き出すエアにより掛け回されたフィルム11を浮上可能に構成された筒部23と、その筒部23の両側に設けられて筒部23に掛け回されて浮上するフィルム11の幅方向の移動を制限する壁部材24,25とを備える。」
「【0032】
図1に戻って、搬送ローラ16により転向して水平方向に向かうフィルム11は一対の固定ローラ31,32の上側に掛け渡され、一対の固定ローラ31,32の間のフィルム11がそれより下方に存在する可動ローラ33に下方から掛け回される。従って、このアキュームレート機構30では、フィルム11の搬送経路に沿って設けられた一対の固定ローラ31,32と、その一対の固定ローラ31,32からフィルム11の搬送経路に直交する方向に設けられた可動ローラ33にフィルム11を掛け回すことにより、フィルム11の蓄えが行われる。
【0033】
一方、図示しないコントローラからの指令に基づいてアキューム用サーボモータ34が駆動してボールねじ36を回転させると、それに螺合されている可動台37が可動ローラ33とともに鉛直方向に移動することになる。このため、アキューム用サーボモータ34が駆動して可動ローラ33が下降すると一対の固定ローラ31,32と可動ローラ33の鉛直距離は拡大し、一対の固定ローラ31,32と可動ローラ33の鉛直距離の2倍の長さのフィルム11が一対の固定ローラ31,32の間に蓄えられることになる。逆に、可動ローラ33が上昇するようにアキューム用サーボモータ34が駆動すると、一対の固定ローラ31,32と可動ローラ33の鉛直距離は縮まり、その蓄えたフィルム11を排出するように構成される。このため、フィルム11の蓄積量の変化は、サーボモータ34により可動ローラ33を一対の固定ローラ31,32に接近させ又はその一対の固定ローラ31,32から離間させることにより行われることになる。
【0034】
また、断面が非円形の巻芯13aの外周にフィルム11を巻回すると、その巻芯13aが一定速度で回転しても、その巻芯13aを有する巻取り機構13は、所定量のフィルム11を巻取り速度を変えて巻取るようになる。図2に示すように、例えば断面が長円状を成す巻芯13aであれば、巻芯13aが回転してその長手方向Cがその巻芯13aに巻回されるフィルム11と平行になった場合(図2(a)及び(g))の巻取り速度は著しく遅くなる。一方、巻芯13aが回転してその長手方向Cがその巻芯13aに巻回されるフィルム11と略直交するようになった場合(図2(c)及び(d))の巻取り速度は著しく早くなる。そして、この巻取り機構13が巻取るフィルム11の巻取り速度変化に対応して、このアキュームレート機構30は、図示しないコントローラからの指令により可動ローラ33を昇降させて、そのフィルム11の蓄積量を変化させるように構成される。
【0035】
具体的に、図示しない巻取りモータはコントローラにより制御され、そのモータにより回転する断面非円形の巻芯13aの回転位置は、そのコントローラにより把握可能に構成される。本発明の巻取り装置10では、巻芯13aが一回転することにより巻取り速度を変えて巻取るフィルム11の巻取り量と、その巻芯13aが一回転する間に繰出し機構12から繰出されるフィルム11の量は同一とされる。そして、巻取り機構13の巻取り速度が遅い時に繰出し機構12から繰出される余剰のフィルム11をアキュームレート機構30により蓄え、その逆に、巻取り機構13の巻取り速度が早い時にアキュームレート機構30が蓄えた余剰のフィルム11を巻取り機構13に向けて繰出すように構成される。
【0036】
また、このフィルムの巻取り装置10は、繰出し機構12から繰出されて巻取り機構13にまで搬送されるフィルム11に張力を加えるテンション付与装置40が設けられる。このテンション付与装置40は、アキュームレート機構30から巻芯13aに向かうフィルム11に沿って設けられた一対のガイドローラ41,42と、その一対のガイドローラ41,42の間に設けられレバー43によりその一対のガイドローラ41,42から離間し又は接近するように移動可能なダンサーローラ44とを備え、そのダンサーローラ44を一対のガイドローラ41,42から遠ざける方向に付勢するスプリング46が設けられる。このスプリング46により付与されるダンサーローラ44の付勢力によって、このテンション付与装置40では繰出し機構12から繰出されてアキュームレート機構30により蓄えられたフィルム11に所定の張力を与えるように構成される。」
「【0052】
また、繰出し機構12では、フィルムロール11aからフィルム11を常時一定量で繰出すので、本発明では各フィルムロール11a,11aの回転を急加速することもなければ急減速することもない。よって、各フィルムロール11a,11aを回転させる図示しない繰出しモータにあっては、そのフィルムロール11aを一定の速度で回転させる程度の出力を有するモータであれば足りる。よって、フィルムロール11a,11aの回転を加速及び減速する従来のもののように出力が大きなモータを設けること必要としない。このため、巻取り装置10の大型化を回避するとともに、比較的安価な巻取り装置10を得ることができる。」
「【0054】
一方、金属化フィルム11を巻芯13aに巻回してコンデンサ素子14を作製するとその外径は徐々に大きくなり、巻取られるフィルム11の量は増加する。また、繰出し機構12におけるフィルムロール11aは、その回転によりフィルム11を繰出すものであるので、フィルム11を繰出すとその外径は徐々に減少し、回転速度が同一である場合には単位時間に繰出されるフィルム11の量は徐々に減少する。このように、巻取られるフィルム11の量が増加するとともに、繰出されるフィルム11の量が減少すると、繰出し機構12と巻取り機構13の間にあるフィルム11の全長は徐々に縮まって、そのフィルム11に張力を付与するテンション付与装置40におけるダンサーローラ44は、図1の上方に移動して一対のガイドローラ41,42に近づく。すると、このダンサーローラ44の移動は位置検出用角度センサ47により検出され、この検出出力に基づいて図示しないコントローラは図示しない繰出しモータを制御し、フィルムロール11aの外径の変化に伴ってフィルムロール11aの回転速度を変更し、単位時間に繰出されるフィルム11の量を常に一定にする。これによりフィルムロール11a及び巻芯に巻回されたフィルム11から成るコンデンサ素子14の外径の変化にかかわらず、繰出されるフィルム11の量と巻取られるフィルム11の量を常時一定量にすることができる。」
「【図1】


「【図2】



イ 甲4に記載の発明
上記アで摘記した事項、特に【0001】、【0016】、【0018】、【0034】〜【0035】より、甲4には、次の2つの発明(以下、それぞれ「甲4−1発明」、「甲4−2発明」という。)が記載されていると認められる。

[甲4−1発明]
「所定量の帯状フィルム11を一定量で繰出す繰出し機構12と、
巻芯13aによって繰出し機構12から繰出されるフィルム11を巻回する巻取り機構13と、
巻芯13aが一回転することにより巻取り速度を変えて巻取るフィルム11の巻取り量と、その巻芯13aが一回転する間に繰出し機構12から繰出されるフィルム11の量は同一とされ、巻取り機構13の巻取り速度が遅い時に繰出し機構12から繰出される余剰のフィルム11をアキュームレート機構30により蓄え、その逆に、巻取り機構13の巻取り速度が早い時にアキュームレート機構30が蓄えた余剰のフィルム11を巻取り機構13に向けて繰出すように構成されるアキュームレート機構30と、
指令によりアキュームレート機構30の可動ローラ33を昇降させて、そのフィルム11の蓄積量を変化させ、巻取りモータを制御するコントローラ、
繰出し機構12から繰出されてアキュームレート機構30により蓄えられたフィルム11に所定の張力を与えるように構成されるテンション付与装置40、とを含む
電池を製造する際に使用可能なフィルムの巻取り装置。」

[甲4−2発明]
「フィルムを巻回した電池等を製造する際に使用可能なフィルムの巻取り方法であって、
断面非円形の巻芯13aの回転位置は、コントローラにより把握可能に構成し、巻芯13aが一回転することにより巻取り速度を変えて巻取るフィルム11の巻取り量と、その巻芯13aが一回転する間に繰出し機構12から繰出されるフィルム11の量は同一とされ、巻取り機構13の巻取り速度が遅い時に繰出し機構12から繰出される余剰のフィルム11をアキュームレート機構30により蓄え、その逆に、巻取り機構13の巻取り速度が早い時にアキュームレート機構30が蓄えた余剰のフィルム11を巻取り機構13に向けて繰出し、
テンション付与装置40は繰出し機構12から繰出されてアキュームレート機構30により蓄えられたフィルム11に所定の張力を与える、
フィルムを巻回した電池等を製造する際に使用可能なフィルムの巻取り方法。」

(6)甲5の記載事項
「【0023】7は外周面が帯状体2bの片面に当接して帯状体2bの搬送移動に同期して回転する金属材あるいは絶縁材などでなる回転体、8は回転体7の回転軸の一端に結合されて回転体7の回転状態を検知する光式、電気式あるいは機械式などでなる測長エンコーダであり、これらにより構成される長さの検出部は複数ある帯状体2、2a、2b、2cのいずれか一つの帯状体(本実施の形態では帯状体2b)の搬送経路に配置される。」
「【図1】



(7)甲6の記載事項
「 ロータリエンコーダ2は、本体部2a及び回転部2bとからなり、更に弾発部材(図示せず)によって一方向に付勢力を有する取付腕40を介して巻取装置lに装着されている。回転部2bは巻取装置1に回動自在に枢着されたローラ6に対して押圧状態で接触し、陽極箔20の走行に伴なって円滑に回転して該陽極箔の移動量を計測できるようになっている。
ロータリエンコーダ3は、本体部3a及び回転部3bとからなり、更に弾発部材(図示せず)によって一方向(図中反時計方向)に付勢力を有する取付腕41を介して巻取装置1に装着されている。回転部3bは巻取装置lに回動自在に枢着されたローラ8に対して押圧状態で接触し、陰極箔21の走行に伴なって円滑に回転して該陰極箔の移動量を計測できるようになっている。」(第4頁右上欄4〜19行)
「第1図



2 甲1を主引例とした新規性進歩性について(上記第4 1(1)、第4 2(1)及び第5 1(1)について)
(1)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1−1発明との対比
(ア)甲1−1発明の「帯状素子2aを送る送り装置5」は、本件発明1の「基材を供給する基材供給部」に相当する。
(イ)甲1−1発明の「帯状素子2aを巻き取る巻芯4」は、本件発明1の「マンドレルによって前記基材を巻き取る巻取部」に相当する。
(ウ)甲1−1発明において、「巻芯4のサーボモータ(4a)を位置指令パルス信号によって駆動し、サーボモータ(4a)の位置検出器により検出されたパルスをカウンタでカウントし、このカウンタ数に応じて、上式(6)に従ってモータコントローラにより送り装置5のサーボモータを駆動して」との制御を行う部分は、全体として、本件発明1の「前記基材供給部における基材供給量および前記巻取部におけるマンドレル回転量を制御する制御部」に相当する。
(エ)甲1−1発明の「角度位置i」は、本件発明1の「マンドレル回転量」に相当し、甲1−1発明の「Ki」は、甲1−1発明の「基材供給量」に相当する。
(オ)甲1−1発明において、「実際に帯状素子2aをセットし、送り装置5のサーボモータをフリーにして、巻芯4のサーボモータ(巻取モータ4a)を、巻芯4の回転角度を、(180°/40)単位に等分割して4.5°づつ巻き取り、4.5°づつの送り量を、送り装置5のサーボモータに設けた角度検出器からの検出値から計算し、これを記録し、この操作を何度か繰り返し、巻芯4が4.5°回転する毎に巻き取られる帯状素子2aの巻き取り量(=送り量)の平均値をとり、4.5°づつの角度位置をi(i=1,2,3,・・・)、最長送り量を100としたときの角度位置iに対応する送り量(=巻取量)のパーセンテージをKiとし」て得られた結果は、「角度位置i」と「Ki」との関係であって、上記(エ)を考慮すると、当該結果は、本件発明1の「前記マンドレル回転量と前記基材供給量との関係を示すプロファイル」に相当する。
(カ)甲1−1発明の「実際に帯状素子2aをセットし、送り装置5のサーボモータをフリーにして、巻芯4のサーボモータ(巻取モータ4a)を、巻芯4の回転角度を、(180°/40)単位に等分割して4.5°づつ巻き取り、4.5°づつの送り量を、送り装置5のサーボモータに設けた角度検出器からの検出値から計算し、これを記録し、この操作を何度か繰り返し」との操作は、「角度位置i」と「Ki」との関係を記録するための操作であり、上記(オ)を考慮すると、本件発明1の「前記マンドレル回転量と前記基材供給量との関係を示すプロファイルを貯蔵し」との操作に相当する。
(キ)甲1−1発明における「式(6)」は、上記(オ)にて本件発明1の「プロファイル」に相当するとした結果を用いるものであるから、甲1−1発明における、「巻芯4のサーボモータ(4a)を位置指令パルス信号によって駆動し、サーボモータ(4a)の位置検出器により検出されたパルスをカウンタでカウントし、このカウンタ数に応じて、上式(6)に従ってモータコントローラにより送り装置5のサーボモータを駆動して、実際の巻取量(=送り量)をトレースすることにより、誤差の少ない巻取が可能である」との制御は、式(6)が「巻取に従って巻芯幅が広くなることに伴って速度を増加させるための補正項」である「ta」が含まれ、「巻芯幅」を考慮して「実際の巻取量(=送り量)をトレース」して誤差の少ない巻取をしており、甲発明1−1は、巻芯幅の変化に追従して巻取量を変化させていることから、本件発明1の「前記プロファイルに基づいて前記基材供給量と前記マンドレル回転量とを前記基材にかかる張力を一定に維持するように同期制御」するとの制御と、「プロファイル」に基づいて「基材供給量」と「マンドレル回転量」とを「基材にかかる張力を一定に維持するように」「制御する」点で共通する。
(ク)甲1−1発明における、「巻芯4のサーボモータ(4a)を位置指令パルス信号によって駆動し、サーボモータ(4a)の位置検出器により検出されたパルスをカウンタでカウントし、このカウンタ数に応じて、上式(6)に従ってモータコントローラにより送り装置5のサーボモータを駆動して」との制御は、「巻芯4のサーボモータ(4a)」と「送り装置5のサーボモータ」とを同時に制御しているから、本件発明1の「前記プロファイルに基づいて前記基材供給量と前記マンドレル回転量とを前記基材にかかる張力を一定に維持するように同期制御すること」との制御と、「前記基材供給量と前記マンドレル回転量とを前記基材にかかる張力を一定に維持するように同期制御」することで共通する。
(ケ)甲1−1発明の「扁平型電池等の扁平型電子部品を構成する電極シート、セパレータ等の帯状素子を扁平状の巻芯に巻き取るための巻取装置」と、本件発明1の「二次電池の製造装置」とは、「電池の製造装置」である点で共通する。
(コ)上記(ア)〜(ケ)より、本件発明1と甲1−1発明とは、以下の一致点1−1において一致し、以下の相違点1−1、1−2において相違する。

[一致点1−1]
「基材を供給する基材供給部と、
マンドレルによって前記基材を巻き取る巻取部と、
前記基材供給部における基材供給量および前記巻取部におけるマンドレル回転量を制御する制御部と、を含み、
前記制御部は、前記基材にかかる張力が一定に維持されるように獲得された、前記マンドレル回転量と前記基材供給量との関係を示すプロファイルを貯蔵し、前記プロファイルに基づいて前記基材供給量と前記マンドレル回転量とを前記基材にかかる張力を一定に維持するように同期制御する、
電池の製造装置。」

[相違点1−1]
本件発明1では、「貯蔵」する「プロファイル」は、「前記プロファイルにおける前記基材供給量は、マンドレル1回転当たりの前記基材の単位供給量の変化量を反映した前記基材供給量からなる」ものであるのに対し、
甲1−1発明は、「巻芯4のサーボモータ(巻取モータ4a)を、巻芯4の回転角度を、(180°/40)単位に等分割して4.5°づつ巻き取り、4.5°づつの送り量を、送り装置5のサーボモータに設けた角度検出器からの検出値から計算し、これを記録し、この操作を何度か繰り返し、巻芯4が4.5°回転する毎に巻き取られる帯状素子2aの巻き取り量(=送り量)の平均値をとり、4.5°づつの角度位置をi(i=1,2,3,・・・)」として、「角度位置iでの送り速度Viを」、「巻取に従って巻芯幅が広くなることに伴って速度を増加させるための補正項であ」る「α1」と、「巻取に従って巻芯が厚くなることに伴って比率Kiのカーブが緩やかになることに基づく補正項」である「α2」から「式(6)により求め」、「巻芯4のサーボモータ(4a)を位置指令パルス信号によって駆動し、サーボモータ(4a)の位置検出器により検出されたパルスをカウンタでカウントし、このカウンタ数に応じて、上式(6)に従ってモータコントローラにより送り装置5のサーボモータを駆動」するとの制御を行っており、「巻取に従っ」た補正項「α1」と「α2」で「式(6)」で「送り速度Vi」を計算するものである点。

[相違点1−2]
本件発明1では、「電池」が「二次電池」であると特定されているのに対し、甲1−1発明は、「巻取装置」の巻取りの対象「電池」用の「帯状素子」であって、「二次電池」用とは特定されておらず、「二次電池」用か否か不明である点。

イ 相違点1−1についての判断
(ア)まず、甲1−1発明においては、上記相違点1−1の認定で説示したとおり、「巻取に従っ」た補正項「α1」と「α2」を含む「式(6)」で「送り速度Vi」を計算するものであって、本件発明1のように、「前記基材供給量は、マンドレル1回転当たりの前記基材の単位供給量の変化量を反映」した「プロファイル」を「貯蔵」する技術とは異なるものであることから、相違点1−1は実質的な相違点である。
(イ)そして、甲1−1発明は、「巻取に従っ」た補正項「α1」と「α2」を含む「式(6)」で「送り速度Vi」を計算するものであって、本件発明1のように、「前記基材供給量は、マンドレル1回転当たりの前記基材の単位供給量の変化量を反映」した「プロファイル」を「貯蔵」する技術に変更する動機付けはない。
(ウ)そして、このような本件発明1の構成とすることで、「予め貯蔵されているプロファイルを用いて制御が行われるため、別途のセンシングを必要とせず、そのため、センシングおよび信号伝達過程で発生し得るノイズおよび時間遅延を未然に防止することができる」(【0030】)との効果を奏し、この効果は当業者が予測し得たものであるとはいえない。
(エ)a なお、令和 3年 9月 6日付け上申書において、申立人は、本件明細書においては、「マンドレル1回転当たりの前記基材の単位供給量の変化量」というのは、非常に僅かなものであり、また、一般的には、「マンドレル1回転あたりの前記基材の単位供給量の変化量」よりも、「基材供給部」のスプール1回転あたりの前記基材の単位供給量の変化量の方が大きく変化することから、スプールの1回転当たりの基材の単位供給量の変化量についての処置をしないのであれば、それよりも小さな「マンドレル1回転あたりの前記基材の単位供給量の変化量」を反映させるか否かは、設計事項の範疇であり、依然として進歩性が否定されるべきであると主張する。
しかしながら、「マンドレル1回転あたりの前記基材の単位供給量の変化量」よりも、「基材供給部」のスプール1回転あたりの前記基材の単位供給量の変化量の方が大きく変化するのが一般的であるとの申立人の主張については、その根拠が明らかではない。
そして、本件請求項1には、「前記基材供給部における基材供給量および前記巻取部におけるマンドレル回転量を制御する制御部」、「前記制御部は、前記基材にかかる張力が一定に維持されるように獲得された、前記マンドレル回転量と前記基材供給量との関係を示すプロファイルを貯蔵し、前記プロファイルに基づいて前記基材供給量と前記マンドレル回転量とを前記基材にかかる張力を一定に維持するように同期制御し」との記載があり、張力が一定に維持されるように基材供給部における基材供給量を制御している旨が記載されており、張力が一定に維持されるように制御するためには、基材供給部のスプール側の単位供給量の変化量も取り込んだ上で制御する必要があることは明らかであるから、「スプールの1回転当たりの基材の単位供給量の変化量についての処置をしない」との申立人の主張は採用することはできない。
b さらに、上記上申書において、申立人は、周知例として特開平8−282893号公報の「このとき、上記回転検出器17及び回転検出器19より得られた繰り出し量及び巻取量の比から供給軸2側と巻取軸14側にそれぞれ巻回されている帯状材1の巻径をCPU31で計算(外径演算102)し、ここで得られた信号Rと、上記パルス信号VR1と位置補正信号PCの合成信号VCとで外径補正(103)し、補正後の位置補正信号(PC)を決定する。また、ここで決定された位置補正信号(PC)は、D/A変換器34でデジタル/アナログ変換され、電圧信号の形でサーボアンプ40を介してモータ4に出力され、このモータ4の回転が調整(速度制御104)される。これにより、ダンサローラ18が帯状材1にかかる張力が調整され、繰り出し側と巻取側における巻径の比が変化してもダンサローラ18の位置は一定に保たれることになり、帯状材1を巻取軸14で巻き取るときの張力を一定に保つことができる。」(【0020】)との記載を挙げるが、仮にこれを周知例として採用することができたとしても、この周知例には、本件発明1に係る「前記基材供給量は、マンドレル1回転当たりの前記基材の単位供給量の変化量を反映」した「プロファイル」について開示されていないことから、上記相違点1−1が容易に想到できたものとであるといえる根拠とはならない。よって、上記特開平8−282893号公報を周知例として採用することができたとしても、本件発明1の進歩性を否定できるものではない。

ウ 小括
したがって、相違点1−2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1−1発明に記載されたものであるとはいえず、甲1−1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(2)本件発明3〜9について
本件発明3〜9は、本件請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、少なくとも上記相違点1−1において甲1−1発明と相違するものであるところ、当該相違点1−1についての判断は、上記(1)イのとおりであるから、本件発明3〜9も、甲1−1発明であるとはいえず、また、甲1−1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(3)本件発明10について
ア 本件発明10と甲1−2発明との対比
(ア)甲1−2発明の「扁平型電池等の扁平型電子部品を構成する電極シート、セパレータ等の帯状素子を扁平状の巻芯に巻き取るための巻取方法」と、本件発明10の「供給された基材を巻き取って形成された電極組立体を含む二次電池を製造する方法」とは、「供給された基材を巻き取って形成された電極組立体を含む電池を製造する方法」である点で共通する。
(イ)甲1−2発明の「巻芯4」は、本件発明10の「基材を巻き取る巻取部」に相当し、甲1−2発明の「角度位置i」は、本件発明10の「マンドレル回転量」に相当する。
(ウ)甲1−2発明の「送り装置5」は、本件発明10の「基材を供給する基材供給部」に相当し、甲1−2発明の「Ki」は、本件発明10の「基材供給量」に相当する。
(エ)甲1−2発明において、「実際に帯状素子2aをセットし、送り装置5のサーボモータをフリーにして、巻芯4のサーボモータ(巻取モータ4a)を、巻芯4の回転角度を、(180°/40)単位に等分割して4.5°づつ巻き取り、4.5°づつの送り量を、送り装置5のサーボモータに設けた角度検出器からの検出値から計算し、これを記録し、この操作を何度か繰り返し、巻芯4が4.5°回転する毎に巻き取られる帯状素子2aの巻き取り量(=送り量)の平均値をとり、4.5°づつの角度位置をi(i=1,2,3,・・・)、角度位置iに対応する送り量(=巻取量)の100とした最長送り量に対するパーセンテージをKiとし」て得られた結果は、「角度位置i」と「Ki」との関係であって、上記(イ)、(ウ)も考慮すると、当該結果は、本件発明10の「前記基材を巻き取る巻取部におけるマンドレル回転量と前記基材を供給する基材供給部における基材供給量との関係を示すプロファイル」に相当する。
(オ)甲1−2発明の「実際に帯状素子2aをセットし、送り装置5のサーボモータをフリーにして、巻芯4のサーボモータ(巻取モータ4a)を、巻芯4の回転角度を、(180°/40)単位に等分割して4.5°づつ巻き取り、4.5°づつの送り量を、送り装置5のサーボモータに設けた角度検出器からの検出値から計算し、これを記録し、この操作を何度か繰り返し」との段階は、「角度位置i」と「Ki」との関係を得るための操作であり、上記(イ)〜(エ)を考慮すると、本件発明10の「前記基材を巻き取る巻取部におけるマンドレル回転量と前記基材を供給する基材供給部における基材供給量との関係を示すプロファイルを獲得する段階」に相当する。
(カ)甲1−2発明における「式(6)」は、上記(エ)にて本件発明10の「プロファイル」に相当するとした結果を用いるものであるから、甲1−2発明における、「巻芯4のサーボモータ(4a)を位置指令パルス信号によって駆動し、サーボモータ(4a)の位置検出器により検出されたパルスをカウンタでカウントし、このカウンタ数に応じて、上式(6)に従ってモータコントローラにより送り装置5のサーボモータを駆動して」との段階は、本件発明10の「前記プロファイルに基づいて前記マンドレルと基材供給部を同期駆動する段階」と、「プロファイル」に基づいて「マンドレル」と「基材供給部」とを「基材にかかる張力を一定に維持するように」「駆動する」点で共通する。
(キ)甲1−2発明における、「巻芯4のサーボモータ(4a)を位置指令パルス信号によって駆動し、サーボモータ(4a)の位置検出器により検出されたパルスをカウンタでカウントし、このカウンタ数に応じて、上式(6)に従ってモータコントローラにより送り装置5のサーボモータを駆動して」との制御は、「巻芯4のサーボモータ(4a)」と「送り装置5のサーボモータ」とを同時に制御しているから、本件発明1の「前記プロファイルに基づいて前記基材供給量と前記マンドレル回転量とを前記基材にかかる張力を一定に維持するように同期制御すること」との制御と、「前記基材供給量と前記マンドレル回転量とを前記基材にかかる張力を一定に維持するように同期制御すること」で共通する。
(ク)甲1−2発明における、「巻芯4のサーボモータ(4a)を位置指令パルス信号によって駆動し、サーボモータ(4a)の位置検出器により検出されたパルスをカウンタでカウントし、このカウンタ数に応じて、上式(6)に従ってモータコントローラにより送り装置5のサーボモータを駆動して」との段階は、「巻芯4のサーボモータ(4a)」と「送り装置5のサーボモータ」とを同時に駆動するものであるから、本件発明10の「前記プロファイルに基づいて前記マンドレルと基材供給部を前記基材にかかる張力を一定に維持するように同期駆動する段階」と、「前記マンドレルと基材供給部を同期駆動する」点で共通する。
(ケ)したがって、本件発明10と甲1−2発明とは、以下の一致点1−2で一致し、相違点1−3、1−4で相違する。

[一致点1−2]
「供給された基材を巻き取って形成された電極組立体を含む電池を製造する方法において、
前記基材を巻き取る巻取部におけるマンドレル回転量と前記基材を供給する基材供給部における基材供給量との関係を示すプロファイルを獲得する段階、および
前記プロファイルに基づいて前記マンドレルと基材供給部を前記基材にかかる張力を一定に維持するように同期駆動する段階を含む、
電池の製造方法。」

[相違点1−3]
本件発明10では、「獲得」する「プロファイル」を「前記基材にかかる張力が一定に維持されるように」「獲得」されており、「前記プロファイルにおける前記基材供給量は、マンドレル1回転当たりの前記基材の単位供給量の変化量を反映した前記基材供給量からなる」のに対し、甲1−2発明において、「角度位置iでの送り速度Viを」、「式(6)により求め」、「巻芯4のサーボモータ(4a)を位置指令パルス信号によって駆動し、サーボモータ(4a)の位置検出器により検出されたパルスをカウンタでカウントし、このカウンタ数に応じて、上式(6)に従ってモータコントローラにより送り装置5のサーボモータを駆動して、実際の巻取量(=送り量)をトレースすることにより、誤差の少ない巻取が可能である」との制御を行う点。

[相違点1−4]
本件発明10は、「二次電池の製造方法」であって、「電池」が「二次電池」であることが特定されているのに対し、甲1−2発明は、「巻取方法」の巻取りの対象が「扁平型電池等の扁平型電子部品を構成する電極シート、セパレータ等の帯状素子」であって、「二次電池」用の「帯状素子」か否か不明である点。

イ 相違点1−3についての判断
(ア)まず、甲1−2発明においては、上記相違点1−3の認定で説示したとおり、「巻取に従っ」た補正項「α1」と「α2」を含む「式(6)」で「送り速度Vi」を計算するものであって、本件発明10のように、「前記基材供給量は、マンドレル1回転当たりの前記基材の単位供給量の変化量を反映」した「プロファイル」を「獲得」する技術とは異なるものであることから、相違点1−3は実質的な相違点である。
(イ)甲1−2発明においては、「巻取に従っ」た補正項「α1」と「α2」を含む「式(6)」で「送り速度Vi」を計算するものであって、本件発明1のように、「前記基材供給量は、マンドレル1回転当たりの前記基材の単位供給量の変化量を反映」した「プロファイル」を「獲得」する技術に変更する動機付けはない。
(ウ)そして、このような本件発明10の構成とすることで、「予め貯蔵されているプロファイルを用いて制御が行われるため、別途のセンシングを必要とせず、そのため、センシングおよび信号伝達過程で発生し得るノイズおよび時間遅延を未然に防止することができる」との効果を奏し、この効果は当業者が予測し得たものであるとはいえない。

ウ 小括
したがって、相違点1−4について検討するまでもなく、本件発明10は、甲1−2発明に記載されたものとはいえず、甲1−2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(5)本件発明11〜16について
本件発明11〜16は、本件請求項10を直接又は間接的に引用するものであるから、少なくとも上記相違点1−3において甲1−2発明と相違するものであるところ、当該相違点1−3についての判断は、上記(4)イのとおりであるから、本件発明11〜16も、甲1−2発明であるとはいえず、また、甲1−2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

3 甲2を主引例とした新規性進歩性について(上記第4 1(2)、及び第4 2(2)について)
(1)本件発明1について
ア 本件発明1と甲2−1発明との対比
(ア)甲2−1発明の「電極シート22、24、若しくはセパレータ27、30を送り出し速度を一定に制御して送る供給リール21、23、27、29」は、本件発明1の「基材を供給する基材供給部」に相当する。
(イ)甲2−1発明の「電極シート22、24、若しくはセパレータ27、30を予め設定された速度に制御して巻き取る巻芯12」は、本件発明1の「マンドレルによって前記基材を巻き取る巻取部」に相当する。
(ウ)甲2−1発明において、「各種の条件及び演算式(1),(2),(3)等の必要なデータが格納され、それらデータによる演算に基づいて送り調整機構41を数値制御することにより調整ローラ49を往復動作するように制御する制御装置51」は、本件発明1の「前記基材供給部における基材供給量および前記巻取部におけるマンドレル回転量を制御する制御部」と「制御部」である点で共通する。
(エ)甲2−1発明の「基線Hに対する半円弧状部12aの円弧の中心軸心O3の時計回り方向への旋回角θ'」は、本件発明1の「マンドレル回転量」に相当し、甲2−1発明の「電極シート22の速度、つまり初期位相角θ0からの移動量y(θ)」は、本件発明1の「基材供給量」に相当する。
(オ)甲2−1発明において、「各種の条件及び演算式(1)、(2)、(3)等の必要なデータ」は、上記(エ)を考慮すると演算式(1)、(2)とにより「基線Hに対する半円弧状部12aの円弧の中心軸心O3の時計回り方向への旋回角θ'」から「電極シート22の速度、つまり初期位相角θ0からの移動量y(θ)」を求めており、本件発明1の「前記マンドレル回転量と前記基材供給量との関係を示すプロファイル」に相当する。
(カ)甲2−1発明の「各種の条件及び演算式(1),(2),(3)等の必要なデータは、格納され」との操作は、「基線Hに対する半円弧状部12aの円弧の中心軸心O3の時計回り方向への旋回角θ'」と「電極シート22の速度、つまり初期位相角θ0からの移動量y(θ)」との関係を記録するための操作であり、上記(オ)を考慮すると、本件発明1の「前記マンドレル回転量と前記基材供給量との関係を示すプロファイルを貯蔵し」との操作に相当する。
(キ)甲2−1発明における「演算式(3)」は、上記(オ)にて本件発明1の「プロファイル」に相当するとしたデータを用いるものであるから、甲2−1発明における、「送り調整機構41〜44」において「調整ローラ49が巻き芯12の回転と同調して動作することにより電極シート22、24、若しくはセパレータ27、30の張力が一定になるように制御する」ことは、本件発明1の「前記プロファイルに基づいて」「前記基材にかかる張力を一定に維持するように同期制御」するとの点で共通する。
(ク)甲2−1発明の「二次電池の巻取り装置」は、本件発明1の「二次電池の製造装置」に相当する。
(ケ)上記(ア)〜(ク)より、本件発明1と甲2−1発明とは、以下の一致点2−1において一致し、以下の相違点2−1において相違する。

[一致点2−1]
「基材を供給する基材供給部と、
マンドレルによって前記基材を巻き取る巻取部と、
制御部と、を含み、
前記制御部は、前記基材にかかる張力が一定に維持されるように獲得された、前記マンドレル回転量と前記基材供給量との関係を示すプロファイルを貯蔵し、前記プロファイルに基づいて前記基材にかかる張力を一定に維持するように同期制御する、
二次電池の製造装置。」

[相違点2−1]
本件発明1では、「前記基材供給部における基材供給量および前記巻取部におけるマンドレル回転量を制御する制御部」は「前記基材にかかる張力が一定に維持されるように獲得された、前記マンドレル回転量と前記基材供給量との関係を示すプロファイルを貯蔵し、前記プロファイルに基づいて前記基材供給量と前記マンドレル回転量とを前記基材にかかる張力を一定に維持するように同期制御し」、「前記プロファイルにおける前記基材供給量は、マンドレル1回転当たりの前記基材の単位供給量の変化量を反映した前記基材供給量からなる」のに対し、甲2−1発明において、「各種の条件及び演算式(1),(2),(3)等の必要なデータが格納され、それらデータによる演算に基づいて送り調整機構41を数値制御することにより調整ローラ49を往復動作するように制御する制御装置51」は、「送り調整機構41を数値制御することにより調整ローラ49を往復動作するようにし」て「電極シート22、24、若しくはセパレータ27、30の張力が一定になるように制御」している点。

イ 相違点2−1についての判断
(ア)まず、上記アで指摘したとおり、甲2−1発明においては、「調整ローラ49が巻き芯12の回転と同調して動作することにより電極シート22、24、若しくはセパレータ27、30の張力が一定になるように制御する送り調整機構41〜44」は、「送り調整機構41を数値制御することにより調整ローラ49を往復動作するようにし」て「電極シート22、24、若しくはセパレータ27、30の張力が一定になるように制御」しており、すなわち、「調整ローラ49」により「電極シート22、24、若しくはセパレータ27、30の張力が一定になるように制御」しており、本件発明1のように、「前記基材供給量と前記マンドレル回転量とを前記基材にかかる張力を一定に維持するように同期制御」する技術とは異なるものであることから、上記相違点2−1は、実質的な相違点である。
(イ)甲2−1発明においては、「調整ローラ49が巻き芯12の回転と同調して動作することにより電極シート22、24、若しくはセパレータ27、30の張力が一定になるように制御する送り調整機構41〜44」は、「調整機構41を数値制御することにより調整ローラ49を往復動作するようにし」て「電極シート22、24、若しくはセパレータ27、30の張力が一定になるように制御」する技術を、本件発明1のように、「前記プロファイルに基づいて前記基材供給量と前記マンドレル回転量とを前記基材にかかる張力を一定に維持するように同期制御」する技術に変更する動機付けは見い出せない。
(ウ)そして、このような本件発明1の構成とすることで、「予め貯蔵されているプロファイルを用いて制御が行われるため、別途のセンシングを必要とせず、そのため、センシングおよび信号伝達過程で発生し得るノイズおよび時間遅延を未然に防止することができる」との効果を奏し、この効果は当業者が予測し得たものではない。

ウ 小括
したがって、本件発明1は、甲2−1発明であるとはいえず、甲2−1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(2)本件発明3〜9について
本件発明3〜9は、本件請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、少なくとも上記相違点2−1において甲2−1発明と相違するものであるところ、当該相違点2−1についての判断は、上記(1)イのとおりであるから、本件発明3〜9も、甲2−1発明であるとはいえず、また、甲2−1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(3)本件発明10について
ア 本件発明10と甲2−2発明との対比
(ア)甲2−2発明の「電極シート22、24、セパレータ27、30を巻き取り二次電池を製造する方法」は、本件発明10の「供給された基材を巻き取って形成された電極組立体を含む二次電池を製造する方法」に相当する。
(イ)甲2−2発明の「電極シート22、24、若しくはセパレータ27、30を予め設定された速度に制御して巻き取る巻芯12」は、本件発明10の「基材を巻き取る巻取部」に相当し、甲2−2発明の「基線Hに対する半円弧状部12aの円弧の中心軸心O3の時計回り方向への旋回角θ'」は、本件発明10の「マンドレル回転量」に相当する。
(ウ)甲2−2発明の「電極シート22、24、若しくはセパレータ27、30を送り出し速度を一定に制御して送る供給リール21、23、27、29」は、本件発明10の「基材を供給する基材供給部」に相当し、甲2−2発明の「電極シート22の速度、つまり初期位相角θ0からの移動量y(θ)」は、本件発明10の「基材供給量」に相当する。
(エ)甲2−2発明において、「各種の条件及び演算式(1),(2),(3)等の必要なデータ」は、上記(イ)(ウ)を考慮すると「演算式(1),(2)」から演算式(1)、(2)より「電極シート22の速度、つまり初期位相角θ0からの移動量y(θ)」を求めており、本件発明10の「前記基材を巻き取る巻取部におけるマンドレル回転量と前記基材を供給する基材供給部における基材供給量との関係を示すプロファイル」に相当する。
(オ)甲2−2発明の「各種の条件及び演算式(1),(2),(3)等の必要なデータは、入力装置58によって前記制御装置51のCPU52、ROM53及びRAM54等に予め格納し」との操作は、「総回転角」の「θ」と「電極シート22の速度、つまり初期位相角θ0からの移動量y(θ)」との関係を記録するための操作であり、上記(オ)を考慮すると、本件発明10の「前記基材を巻き取る巻取部におけるマンドレル回転量と前記基材を供給する基材供給部における基材供給量との関係を示すプロファイルを獲得する段階」に相当する。
(カ)甲2−2発明における「演算式(3)」は、上記(エ)にて本件発明10の「プロファイル」に相当するとした結果を用いるものであるから、甲2−2発明における、「送り調整機構41〜44」において「調整ローラ49が巻き芯12の回転と同調して動作することにより電極シート22、24、若しくはセパレータ27、30の張力が一定になるように制御する」との段階は、本件発明10の「前記プロファイルに基づいて」「前記基材にかかる張力を一定に維持するように同期制御」するとの点で共通する。
(キ)したがって、本件発明10と甲2−2発明とは、以下の一致点2−2で一致し、相違点2−2で相違する。

[一致点2−2]
「供給された基材を巻き取って形成された電極組立体を含む電池を製造する方法において、
前記基材にかかる張力を一定に維持するように、前記基材を巻き取る巻取部におけるマンドレル回転量と前記基材を供給する基材供給部における基材供給量との関係を示すプロファイルを獲得する段階、および
前記プロファイルに基づいて前記基材にかかる張力を一定に維持するように同期駆動する段階を含む、
二次電池の製造方法。」

[相違点2−2]
本件発明10では、「獲得」する「プロファイル」を「前記基材にかかる張力が一定に維持されるように」、「前記マンドレルと基材供給部を前記基材にかかる張力を一定に維持するように同期駆動する」のに対し、甲2−2発明において、「演算に基づいて送り調整機構41を数値制御することにより調整ローラ49を往復動作する」ことで「電極シート22、24、若しくはセパレータ27、30の張力が一定になるように」制御を行う点。

イ 相違点2−2についての判断
(ア)まず、上記アで指摘したとおり、本件発明10においては、「獲得」する「プロファイル」を「前記基材にかかる張力が一定に維持されるように」、「前記マンドレルと基材供給部を前記基材にかかる張力を一定に維持するように同期駆動」しており、すなわち、「マンドレルと基材供給部」を「同期駆動」しており、甲2−2発明のように、「調整ローラ49を往復動作する」ことで「電極シート22、24、若しくはセパレータ27、30の張力が一定になるように」制御する技術とは異なるものであることから、上記相違点2−2は、実質的な相違点である。
(イ)甲2−2発明において、「調整ローラ49を往復動作する」ことで「電極シート22、24、若しくはセパレータ27、30の張力が一定になるように」制御する技術を、本件発明10のように、「プロファイル」自体に「前記基材供給量は、マンドレル1回転当たりの前記基材の単位供給量の変化量を反映した前記基材供給量からなる」ように貯蔵する技術に変更する動機付けは見い出せない。
(ウ)そして、このような本件発明10の構成とすることで、「予め貯蔵されているプロファイルを用いて制御が行われるため、別途のセンシングを必要とせず、そのため、センシングおよび信号伝達過程で発生し得るノイズおよび時間遅延を未然に防止することができる」との効果を奏し、この効果は当業者が予測し得たものではない。

ウ 小括
したがって、本件発明10は、甲2−2発明であるとはいえず、甲2−2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(5)本件発明11〜16について
本件発明11〜16は、本件請求項10を直接又は間接的に引用するものであるから、少なくとも上記相違点2−2において甲2−2発明と相違するものであるところ、当該相違点2−2についての判断は、上記(4)イのとおりであるから、本件発明11〜16も、甲2−2発明であるとはいえず、また、甲2−2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

4 甲3を主引例とした新規性進歩性について(上記第4 1(3)、及び第4 2(3)について)
(1)本件発明1について
ア 本件発明1と甲3−1発明の対比
(ア)甲3−1発明の「電極箔5、6を送る案内手段30とボールネジ70」は、本件発明1の「基材を供給する基材供給部」に相当する。
(イ)甲3−1発明の「電極箔5、6を巻き取る板状の巻芯22」は、本件発明1の「マンドレルによって前記基材を巻き取る巻取部」に相当する。
(ウ)甲3−1発明において、「モータを予め設定されたプログラムデータに基づいてフィードフォワード制御する構成」は、本件発明1の「前記基材供給部における基材供給量および前記巻取部におけるマンドレル回転量を制御する制御部」と「制御部」である点で共通する。
(エ)甲3−1発明の「リチウムイオン電池装置を製造する際に用いられる巻取装置」は、本件発明1の「二次電池の製造装置」に相当する。
(オ)上記(ア)〜(エ)より、本件発明1と甲3−1発明とは、以下の一致点3−1において一致し、以下の相違点3−1において相違する。

[一致点3−1]
「基材を供給する基材供給部と、
マンドレルによって前記基材を巻き取る巻取部と、
制御部と、を含む、
二次電池の製造装置。」

[相違点3−1]
本件発明1では、「制御部」は「前記基材供給部における基材供給量および前記巻取部におけるマンドレル回転量を制御」し、「前記基材にかかる張力が一定に維持されるように獲得された、前記マンドレル回転量と前記基材供給量との関係を示すプロファイルを貯蔵し、前記プロファイルに基づいて前記基材供給量と前記マンドレル回転量とを前記基材にかかる張力を一定に維持するように同期制御」するもので、「前記プロファイルにおける前記基材供給量は、マンドレル1回転当たりの前記基材の単位供給量の変化量を反映した前記基材供給量からなる」のに対し、甲3−1発明において、「予め設定されたプログラムデータに基づいてフィードフォワード制御する構成」は、「電極箔5、6」を送る「案内手段30とボールネジ70」と、「電極箔5、6を巻き取る板状の巻芯22」の駆動制御しているのか不明な点。

イ 相違点3−1についての判断
(ア)まず、上記アで指摘したとおり、甲3−1発明においては、「予め設定されたプログラムデータに基づいてフィードフォワード制御する構成」は、「電極箔5、6」を送る「案内手段30とボールネジ70」と、「電極箔5、6を巻き取る板状の巻芯22」の駆動を制御しているのか不明であるが、本件発明1のように、「制御部」は「前記基材供給部における基材供給量および前記巻取部におけるマンドレル回転量を制御」し、「前記基材にかかる張力が一定に維持されるように獲得された、前記マンドレル回転量と前記基材供給量との関係を示すプロファイルを貯蔵し、前記プロファイルに基づいて前記基材供給量と前記マンドレル回転量とを前記基材にかかる張力を一定に維持するように同期制御」するもので、「前記プロファイルにおける前記基材供給量は、マンドレル1回転当たりの前記基材の単位供給量の変化量を反映した前記基材供給量からなる」ものとする技術は、制御するにあたり自明のものということはできず、甲3−1発明において、当該技術で制御しているとはいえないため、上記相違点3−1は、実質的な相違点である。
(イ)また、甲3−1発明の「予め設定されたプログラムデータに基づいてフィードフォワード制御する構成」において、本件発明1のように「前記基材供給部における基材供給量および前記巻取部におけるマンドレル回転量を制御」し、「前記基材にかかる張力が一定に維持されるように獲得された、前記マンドレル回転量と前記基材供給量との関係を示すプロファイルを貯蔵し、前記プロファイルに基づいて前記基材供給量と前記マンドレル回転量とを前記基材にかかる張力を一定に維持するように同期制御」するもので、「前記プロファイルにおける前記基材供給量は、マンドレル1回転当たりの前記基材の単位供給量の変化量を反映した前記基材供給量からなる」ものとする技術を採用する動機付けは見い出せない。
(ウ)そして、このような本件発明1の構成とすることで、「予め貯蔵されているプロファイルを用いて制御が行われるため、別途のセンシングを必要とせず、そのため、センシングおよび信号伝達過程で発生し得るノイズおよび時間遅延を未然に防止することができる」との効果を奏し、この効果は当業者が予測し得たものではない。

ウ 小括
したがって、本件発明1は、甲3−1発明であるとはいえず、甲3−1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(2)本件発明3〜9について
本件発明3〜9は、本件請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、少なくとも上記相違点3−1において甲3−1発明と相違するものであるところ、当該相違点3−1についての判断は、上記(1)イのとおりであるから、本件発明3〜9も、甲3−1発明であるとはいえず、また、甲3−1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(3)本件発明10について
ア 本件発明10と甲3−2発明との対比
(ア)甲3−2発明の「リチウムイオン電池等の二次電池の製造に際し用いられる巻取装置及び巻回素子の製造方法」は、本件発明10の「供給された基材を巻き取って形成された電極組立体を含む二次電池を製造する方法」に相当する。
(イ)甲3−2発明の「予め設定されたプログラムデータ」は、本件発明10の「プロファイル」に相当し、甲3−2発明の「プログラムデータ」を「予め設定」することと本件発明10の「前記基材にかかる張力が一定に維持されるように、前記基材を巻き取る巻取部におけるマンドレル回転量と前記基材を供給する基材供給部における基材供給量との関係を示すプロファイルを獲得する段階」とは「プロファイルを獲得する段階」で共通する。
(ウ)したがって、本件発明10と甲3−2発明とは、以下の一致点3−2で一致し、相違点3−2で相違する。

[一致点3−2]
「供給された基材を巻き取って形成された電極組立体を含む二次電池を製造する方法において、
プロファイルを獲得する段階を含む、
二次電池の製造方法。」

[相違点3−2]
本件発明10では、「獲得」した「プロファイル」が、「前記基材にかかる張力が一定に維持されるように、前記基材を巻き取る巻取部におけるマンドレル回転量と前記基材を供給する基材供給部における基材供給量との関係を示」し、「前記プロファイルに基づいて前記マンドレルと基材供給部を前記基材にかかる張力を一定に維持するように同期駆動する」ものであり、「前記プロファイルにおける前記基材供給量は、マンドレル1回転当たりの前記基材の単位供給量の変化量を反映した前記基材供給量からなる」のに対し、甲3−2発明では、「モータを予め設定されたプログラムデータに基づい」た「フィードフォワード制御」において、どのようなプログラムデータによって「案内手段30とボールネジ70で電極箔5、6を送り、巻芯22で電極箔5、6を巻き取る」のか不明である点。

イ 相違点3−2についての判断
(ア)まず、甲3−2発明のように、「モータを予め設定されたプログラムデータに基づいてフィードフォワード制御して、案内手段30とボールネジ70で電極箔5、6を送り、巻芯22で電極箔5、6を巻き取る」ものであれば、当該プログラムデータが、本件発明10のように、「獲得」した「プロファイル」を「前記基材にかかる張力が一定に維持されるように、前記基材を巻き取る巻取部におけるマンドレル回転量と前記基材を供給する基材供給部における基材供給量との関係を示」し、「前記プロファイルに基づいて前記マンドレルと基材供給部を前記基材にかかる張力を一定に維持するように同期駆動する」ものであり、「前記プロファイルにおける前記基材供給量は、マンドレル1回転当たりの前記基材の単位供給量の変化量を反映した前記基材供給量からなる」ものであることは自明であるとはいえず、上記相違点3−2は、実質的な相違点である。
(イ)また、甲3−2発明の「モータを予め設定されたプログラムデータに基づいてフィードフォワード制御して、案内手段30とボールネジ70で電極箔5、6を送り、巻芯22で電極箔5、6を巻き取る」構成において、当該プログラムデータが、本件発明10のように、「獲得」した「プロファイル」を「前記基材にかかる張力が一定に維持されるように、前記基材を巻き取る巻取部におけるマンドレル回転量と前記基材を供給する基材供給部における基材供給量との関係を示」し、「前記プロファイルに基づいて前記マンドレルと基材供給部を前記基材にかかる張力を一定に維持するように同期駆動する」ものであり、「前記プロファイルにおける前記基材供給量は、マンドレル1回転当たりの前記基材の単位供給量の変化量を反映した前記基材供給量からなる」ものとする動機付けは見い出せない。
(ウ)そして、このような本件発明10の構成とすることで、「予め貯蔵されているプロファイルを用いて制御が行われるため、別途のセンシングを必要とせず、そのため、センシングおよび信号伝達過程で発生し得るノイズおよび時間遅延を未然に防止することができる」との効果を奏し、この効果は当業者が予測し得たものではない。

ウ 小括
したがって、本件発明10は、甲3−2発明であるとはいえず、甲3−2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(5)本件発明11〜16について
本件発明11〜16は、本件請求項10を直接又は間接的に引用するものであるから、少なくとも上記相違点3−2において甲3−2発明と相違するものであるところ、当該相違点3−2についての判断は、上記(4)イのとおりであるから、本件発明11〜16も、甲3−2発明であるとはいえず、また、甲3−2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

5 甲4を主引例とした新規性進歩性について(上記第4 1(4)、及び第4 2(4)について)
(1)本件発明1について
ア 本件発明1と甲4−1発明との対比
(ア)甲4−1発明の「所定量の帯状フィルム11を一定量で繰出す繰出し機構12」は、本件発明1の「基材を供給する基材供給部」に相当する。
(イ)4−1発明の「巻芯13aによって繰出し機構12から繰出されるフィルム11を巻回する巻取り機構13」は、本件発明1の「マンドレルによって前記基材を巻き取る巻取部」に相当する。
(ウ)甲4−1発明において、「繰出し機構12から繰出されてアキュームレート機構30により蓄えられたフィルム11に所定の張力を与えるように構成されるテンション付与装置40」は、本件発明1の「前記基材にかかる張力が一定に維持されるように獲得された、前記マンドレル回転量と前記基材供給量との関係を示すプロファイルを貯蔵し、前記プロファイルに基づいて前記基材供給量と前記マンドレル回転量とを前記基材にかかる張力を一定に維持するように同期制御」する「前記基材供給部における基材供給量および前記巻取部におけるマンドレル回転量を制御する制御部」と「前記基材にかかる張力を一定に維持するように同期制御」する「制御部」である点で共通する。
(エ)甲4−1発明の「巻芯13aが一回転することにより巻取り速度を変えて巻取るフィルム11の巻取り量」は、本件発明1の「マンドレル回転量」に相当し、甲4−1発明の「繰出し機構12から繰出されるフィルム11の量」は、本件発明1の「基材供給量」に相当する。
(オ)甲4−1発明の「電池を製造する際に使用可能なフィルムの巻取り装置」は、本件発明1の「二次電池の製造装置」と「電池の製造装置」の点で共通する。
(カ)上記(ア)〜(オ)より、本件発明1と甲4−1発明とは、以下の一致点4−1において一致し、以下の相違点4−1、4−2において相違する。

[一致点4−1]
「基材を供給する基材供給部と、
マンドレルによって前記基材を巻き取る巻取部と、
制御部と、を含み、
前記制御部は、前記基材供給量と前記マンドレル回転量とを前記基材にかかる張力を一定に維持するように同期制御する、
電池の製造装置。」

[相違点4−1]
本件発明1では、「制御部」は、「前記基材供給部における基材供給量および前記巻取部におけるマンドレル回転量を制御する」ものであり、「前記基材にかかる張力が一定に維持されるように獲得された、前記マンドレル回転量と前記基材供給量との関係を示すプロファイルを貯蔵し、前記プロファイルに基づいて前記基材供給量と前記マンドレル回転量とを前記基材にかかる張力を一定に維持するように同期制御」するのに対し、甲4−1発明の「コントローラ」は、「巻芯13aが一回転することにより巻取り速度を変えて巻取るフィルム11の巻取り量と、その巻芯13aが一回転する間に繰出し機構12から繰出されるフィルム11の量は同一とされ、巻取り機構13の巻取り速度が遅い時に繰出し機構12から繰出される余剰のフィルム11をアキュームレート機構30により蓄え、その逆に、巻取り機構13の巻取り速度が早い時にアキュームレート機構30が蓄えた余剰のフィルム11を巻取り機構13に向けて繰出すように構成されるアキュームレート機構30を指令により可動ローラ33を昇降させて、そのフィルム11の蓄積量を変化させ」ている点。

[相違点4−2]
本件発明1は、「二次電池の製造装置」であるのに対し、甲4−1発明は、「電池を製造する際に使用可能なフィルムの巻取り装置」であって、「二次電池」を製造するものであるのか明らかではない点。

イ 相違点4−1についての判断
(ア)まず、上記アで指摘したとおり、甲4−1発明の「コントローラ」は、「巻芯13aが一回転することにより巻取り速度を変えて巻取るフィルム11の巻取り量と、その巻芯13aが一回転する間に繰出し機構12から繰出されるフィルム11の量は同一とされ、巻取り機構13の巻取り速度が遅い時に繰出し機構12から繰出される余剰のフィルム11をアキュームレート機構30により蓄え、その逆に、巻取り機構13の巻取り速度が早い時にアキュームレート機構30が蓄えた余剰のフィルム11を巻取り機構13に向けて繰出すように構成されるアキュームレート機構30を指令により可動ローラ33を昇降させて、そのフィルム11の蓄積量を変化させ」ており、「アキュームレート機構30」で「巻取り機構13」に「フィルム11」を繰り出すものであって、本件発明1のように、「前記基材供給量と前記マンドレル回転量とを前記基材にかかる張力を一定に維持するように同期制御」する技術とは異なるものであることから、上記相違点4−1は、実質的な相違点である。
(イ)甲4−1発明においては、「コントローラ」は、「巻芯13aが一回転することにより巻取り速度を変えて巻取るフィルム11の巻取り量と、その巻芯13aが一回転する間に繰出し機構12から繰出されるフィルム11の量は同一とされ、巻取り機構13の巻取り速度が遅い時に繰出し機構12から繰出される余剰のフィルム11をアキュームレート機構30により蓄え、その逆に、巻取り機構13の巻取り速度が早い時にアキュームレート機構30が蓄えた余剰のフィルム11を巻取り機構13に向けて繰出すように構成されるアキュームレート機構30を指令により可動ローラ33を昇降させて、そのフィルム11の蓄積量を変化させ」ており、「アキュームレート機構30」で「巻取り機構13」に「フィルム11」を繰り出すものであって、本件発明1のように、「前記プロファイルに基づいて前記基材供給量と前記マンドレル回転量とを前記基材にかかる張力を一定に維持するように同期制御」する技術に変更する動機付けは見い出せない。
(ウ)そして、このような本件発明1の構成とすることで、「予め貯蔵されているプロファイルを用いて制御が行われるため、別途のセンシングを必要とせず、そのため、センシングおよび信号伝達過程で発生し得るノイズおよび時間遅延を未然に防止することができる」との効果を奏し、この効果は当業者が予測し得たものではない。

ウ 小括
したがって、相違点4−2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲4−1発明であるとはいえず、甲4−1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(2)本件発明3〜9について
本件発明3〜9は、本件請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、少なくとも上記相違点4−1において甲4−1発明と相違するものであるところ、当該相違点4−1についての判断は、上記(1)イのとおりであるから、本件発明3〜9も、甲4−1発明であるとはいえず、また、甲4−1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(3)本件発明10について
ア 本件発明10と甲4−2発明との対比
(ア)甲4−2発明の「フィルムを巻回した電池等を製造する際に使用可能なフィルムの巻取り方法」は、電池の製造の際フィルムを巻回すると「電極組立体」が形成されるといえるから、本件発明10の「供給された基材を巻き取って形成された電極組立体を含む二次電池を製造する方法」とは「供給された基材を巻き取って形成された電極組立体を含む電池を製造する方法」で共通する。
(イ)甲4−2発明では、「断面非円形の巻芯13aの回転位置は、コントローラにより把握可能に構成し、巻芯13aが一回転することにより巻取り速度を変えて巻取るフィルム11の巻取り量と、その巻芯13aが一回転する間に繰出し機構12から繰出されるフィルム11の量は同一とされ、巻取り機構13の巻取り速度が遅い時に繰出し機構12から繰出される余剰のフィルム11をアキュームレート機構30により蓄え、その逆に、巻取り機構13の巻取り速度が早い時にアキュームレート機構30が蓄えた余剰のフィルム11を巻取り機構13に向けて繰出し」、「テンション付与装置40は繰出し機構12から繰出されてアキュームレート機構30により蓄えられたフィルム11に所定の張力を与える」ことは、本件発明10の「前記基材にかかる張力が一定に維持されるように、前記基材を巻き取る巻取部におけるマンドレル回転量と前記基材を供給する基材供給部における基材供給量との関係を示すプロファイルを獲得する段階」および「前記プロファイルに基づいて前記マンドレルと基材供給部を前記基材にかかる張力を一定に維持するように同期駆動する段階」とは、「張力を一定に維持するように駆動する段階」で共通する。
(ウ)上記(ア)、(イ)より、本件発明10と甲4−2発明とは、以下の一致点4−2で一致し、相違点4−3で相違する。

[一致点4−2]
「供給された基材を巻き取って形成された電極組立体を含む電池を製造する方法において、
前記基材にかかる張力を一定に維持するように同期駆動する段階を含む、
電池の製造方法。」

[相違点4−3]
本件発明10では、「前記基材にかかる張力が一定に維持されるように、前記基材を巻き取る巻取部におけるマンドレル回転量と前記基材を供給する基材供給部における基材供給量との関係を示すプロファイルを獲得する段階」、および「前記プロファイルに基づいて前記マンドレルと基材供給部を前記基材にかかる張力を一定に維持するように同期駆動する段階を含み」、「前記プロファイルにおける前記基材供給量は、マンドレル1回転当たりの前記基材の単位供給量の変化量を反映した前記基材供給量からなる」ものであるのに対し、甲4−2発明において、「断面非円形の巻芯13aの回転位置は、そのコントローラにより把握可能に構成し、巻芯13aが一回転することにより巻取り速度を変えて巻取るフィルム11の巻取り量と、その巻芯13aが一回転する間に繰出し機構12から繰出されるフィルム11の量は同一とされ、巻取り機構13の巻取り速度が遅い時に繰出し機構12から繰出される余剰のフィルム11をアキュームレート機構30により蓄え、その逆に、巻取り機構13の巻取り速度が早い時にアキュームレート機構30が蓄えた余剰のフィルム11を巻取り機構13に向けて繰出す」制御を行い、「アキュームレート機構30」により「フィルム11」の「巻取り機構13の巻取り速度」を変更している点。

イ 相違点4−3についての判断
(ア)まず、上記アで指摘したとおり、本件発明10においては、「前記基材にかかる張力が一定に維持されるように、前記基材を巻き取る巻取部におけるマンドレル回転量と前記基材を供給する基材供給部における基材供給量との関係を示すプロファイルを獲得する段階」、および「前記プロファイルに基づいて前記マンドレルと基材供給部を前記基材にかかる張力を一定に維持するように同期駆動する段階を含み」、「前記プロファイルにおける前記基材供給量は、マンドレル1回転当たりの前記基材の単位供給量の変化量を反映した前記基材供給量からなる」ものであって、すなわち「マンドレルと基材供給部」を「同期駆動」しており、甲4−2発明のように、「アキュームレート機構30」により「フィルム11」の「巻取り機構13の巻取り速度」を変更する技術とは異なるものであることから、上記相違点4−3は、実質的な相違点である。
(イ)甲4−2発明において、「アキュームレート機構30」により「フィルム11」の「巻取り機構13の巻取り速度」を変更する技術を、本件発明10のように、「前記基材にかかる張力が一定に維持されるように、前記基材を巻き取る巻取部におけるマンドレル回転量と前記基材を供給する基材供給部における基材供給量との関係を示すプロファイルを獲得する段階」、および「前記プロファイルに基づいて前記マンドレルと基材供給部を前記基材にかかる張力を一定に維持するように同期駆動する段階を含」む技術に変更する動機付けは見い出せない。
(ウ)そして、このような本件発明10の構成とすることで、「予め貯蔵されているプロファイルを用いて制御が行われるため、別途のセンシングを必要とせず、そのため、センシングおよび信号伝達過程で発生し得るノイズおよび時間遅延を未然に防止することができる」との効果を奏し、この効果は当業者が予測し得たものではない。

ウ 小括
したがって、本件発明10は、甲4−2発明であるとはいえず、甲4−2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(5)本件発明11〜16について
本件発明11〜16は、本件請求項10を直接又は間接的に引用するものであるから、少なくとも上記相違点4−3において甲4−2発明と相違するものであるところ、当該相違点4−3についての判断は、上記(4)イのとおりであるから、本件発明11〜16も、甲4−2発明であるとはいえず、また、甲4−2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

6 サポート要件(上記第5 1(2)取消理由2について)
(1)サポート要件を検討する観点について
特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものであるか否か、また、発明の詳細な説明に記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである。
以下、上記の観点から検討する。

(2)特許請求の範囲の記載について
本件特許の特許請求の範囲の記載は、上記第3に記載したとおりのものである。

(3)発明の詳細な説明の記載について
本件特許の明細書における発明の詳細な説明には、上記1(1)で摘記した記載がある。

(4)本件発明が解決しようとする課題について
【0005】の記載から、本件発明が解決しようとする課題は、「電極組立体の巻取り時に不良を減らすことができる二次電池の製造装置および製造方法を提供する」こと(以下、単に「課題」という。)である。

(5)発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲について
ア 【0004】、【0030】の記載から、上記課題における「不良」は、「変形」や「外形不良」を意味し、「不良」を減らすためには、「基材の供給過程」で「基材」にかかる「張力」を「一定に維持する」ことが必要と認められる。

イ 【0022】、【0028】〜【0030】の記載から、「基材の供給過程」で「基材」にかかる「張力」を「一定に維持する」するためには、「プロファイル」が、当該「プロファイル」に基づいて「基材供給量」と「マンドレル回転量」とを制御した場合に、「基材の供給過程」で「基材」にかかる「張力」を「一定に維時する」ようなものであることが必要といえる。

ウ また、【0043】、【0051】を参照すると、上記イで述べたような「プロファイル」は、「基材」に印加される張力が一定の張力を維持するような条件で獲得されたものであることが認められる。

エ 上記ア〜ウ、【0006】及び【0015】より、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲は、次の(ア)または(イ)を備える範囲である。
(ア)「基材を供給する基材供給部と、マンドレルによって前記基材を巻き取る巻取部と、前記基材供給部における基材供給量および前記巻取部におけるマンドレル回転量を制御する制御部と、を含み、前記制御部は、前記基材にかかる張力が一定に維持されるように獲得された、前記マンドレル回転量と前記基材供給量との関係を示すプロファイルを貯蔵し、前記プロファイルに基づいて前記基材供給量と前記マンドレル回転量とを前記基材にかかる張力を一定に維持するように同期制御する」「二次電池の製造装置」。
(イ)「 供給された基材を巻き取って形成された電極組立体を含む二次電池を製造する方法において、前記基材にかかる張力が一定に維持されるように、前記基材を巻き取る巻取部におけるマンドレル回転量と前記基材を供給する基材供給部における基材供給量との関係を示すプロファイルを獲得する段階、および
前記プロファイルに基づいて前記マンドレルと基材供給部を前記基材にかかる張力を一定に維持するように同期駆動する段階を含」む「二次電池の製造方法」。

(6) 本件発明1、3〜16と発明の詳細な説明に記載された発明との対比
本件発明1には、上記(5)(ア)の構成があり、本件発明10には、上記(5)(イ)の構成があるから、本件発明1、3〜16は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲内のものであるといえる。

(7)まとめ
したがって、本件発明1、3〜16は、発明の詳細な説明に記載されたものであり、請求項1、3〜16に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえない。

明確性(上記第4 3 申立理由3、第5 1 (3)取消理由3、第5 2 (1)取消理由4及び第5 3 取消理由5)について
(1)訂正前の請求項2において「第1凹部」が「第2領域」に形成される点に係る明確性については,本件訂正により請求項2が削除されたため,取消理由は解消した。

(2)本件訂正請求による訂正後の請求項1、10には、「前記プロファイルにおける前記基材供給量は、マンドレル1回転当たりの前記基材の単位供給量の変化量を反映した前記基材供給量からなる」と記載されている。
この記載によって、請求項1、10に記載の「基材供給量」は、「巻き取られた」状態にある「基材」において、当該「基材」の長さ方向の全体にわたって「厚さ」が変動している場合における、その「厚さ」の「変化量」「を反映した」「基材供給量」(令和 3年 5月17日付け取消理由通知書(決定の予告)の第5 1)を指すのではなく、「マンドレル1回転当たりの前記基材の単位供給量の変化量を反映した基材供給量」であることが読み取れるようになり、取消理由は解消した。
また、本件訂正請求による訂正後の請求項3〜9は、本件訂正請求による訂正後の請求項1を引用するものであり、本件訂正請求による訂正後の請求項11〜16は、本件訂正請求による訂正後の請求項10を引用するものである。

(3)したがって、本件訂正請求による訂正後の請求項1、3〜16に係る発明は明確である。

(4)よって、本件特許の請求項1、3〜16に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえない。

8 令和 3年 9月 6日付け上申書における実施可能要件に係る申立人の主張について
令和 3年 9月 6日付け上申書において、申立人は、本件発明1に係る「基材を供給する基材供給部」について、本件明細書の発明の詳細な説明【0027】の記載を挙げ、一般的に、スプールにまかれている極板基材は、1回の巻回分ではなく、多数回の巻回ができるように多くの極板が巻回され、巻回体を作成する毎に、その径が変わる筈であることから、スプール1回転当たりの基材の供給量は都度変わることになる筈であるが、本件発明1では、その径を得ることについては何ら規定されておらず、「前記プロファイルに基づいて前記基材供給量と前記マンドレル回転量とを前記基材にかかる張力に一定に維持するように同期制御」する手段について、明細書中においても実施可能に開示していないため、実施可能要件に違反することは明白であると主張する。
しかしながら、本件訂正前から本件発明1に存在する構成である「基材を供給する基材供給部」についての当該主張は、異議申立書に提示していない新たな申立ての理由であって、訂正により追加された事項についての見解など訂正の請求の内容に付随して生じる理由である場合や、適切な取消理由を構成することが一見して明らかな場合に該当する主張であるとはいえないから、当該新たな申立ての理由を採用することはできない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、当審の取消理由及び異議申立理由によっては、本件特許の請求項1、3〜16に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1、3〜16に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件特許の請求項2は、本件訂正により削除されたため、申立人による請求項2に係る特許に対する特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材を供給する基材供給部と、
マンドレルによって前記基材を巻き取る巻取部と、
前記基材供給部における基材供給量および前記巻取部におけるマンドレル回転量を制御する制御部と、を含み、
前記制御部は、前記基材にかかる張力が一定に維持されるように獲得された、前記マンドレル回転量と前記基材供給量との関係を示すプロファイルを貯蔵し、前記プロファイルに基づいて前記基材供給量と前記マンドレル回転量とを前記基材にかかる張力を一定に維持するように同期制御し、
前記プロファイルにおける前記基材供給量は、マンドレル1回転当たりの前記基材の単位供給量の変化量を反映した前記基材供給量からなることを特徴とする二次電池の製造装置。
【請求項2】(削除)
【請求項3】
前記基材にかかる張力を測定する張力測定部が、前記基材供給部と前記巻取部の間にさらに形成されることを特徴とする請求項1に記載の二次電池の製造装置。
【請求項4】
前記張力測定部はダンサーまたはロードセルのうち選択されたいずれか一つまたはこれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項3に記載の二次電池の製造装置。
【請求項5】
前記基材供給部と前記巻取部の間に前記基材供給量を測定する基材供給量測定部がさらに形成されることを特徴とする請求項1に記載の二次電池の製造装置。
【請求項6】
前記基材供給量測定部はエンコーダを含む構成となっていることを特徴とする請求項5に記載の二次電池の製造装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記基材にかかる張力を補正するために、前記マンドレル回転量に応じた基材供給量を基準に前記基材供給部における基材供給量を調節することを特徴とする請求項1に記載の二次電池の製造装置。
【請求項8】
前記二次電池が円筒形電池であり、前記プロファイルが、前記マンドレル回転量が増加するのに従って段階的に増加する、マンドレル1回転当たりの前記基材の単位供給量を含むことを特徴とする請求項1に記載の二次電池の製造装置。
【請求項9】
前記二次電池が角型電池であり、前記プロファイルが、2種類の放物線からなる波形を呈する、マンドレル1回転当たりの前記基材の単位供給量を含むことを特徴とする請求項1に記載の二次電池の製造装置。
【請求項10】
供給された基材を巻き取って形成された電極組立体を含む二次電池を製造する方法において、
前記基材にかかる張力が一定に維持されるように、前記基材を巻き取る巻取部におけるマンドレル回転量と前記基材を供給する基材供給部における基材供給量との関係を示すプロファイルを獲得する段階、および
前記プロファイルに基づいて前記マンドレルと基材供給部を前記基材にかかる張力を一定に維持するように同期駆動する段階を含み、
前記プロファイルにおける前記基材供給量は、マンドレル1回転当たりの前記基材の単位供給量の変化量を反映した前記基材供給量からなることを特徴とする二次電池の製造方法。
【請求項11】
前記プロファイルを獲得する段階は、前記マンドレルを予め設定された角度で回転させることによって前記基材供給部からの基材供給量を測定してなることを特徴とする請求項10に記載の二次電池の製造方法。
【請求項12】
前記プロファイルを獲得する段階は、前記マンドレルを連続的に回転させながら基材供給量測定部によって前記基材供給量を測定することを特徴とする請求項11に記載の二次電池の製造方法。
【請求項13】
前記プロファイルを獲得する段階は、前記マンドレルを予め設定された角度で回転させながら、前記基材供給部のローラ直径に回転角度をかけて前記基材供給量を測定する段階を繰り返してなることを特徴とする請求項11に記載の二次電池の製造方法。
【請求項14】
特定時点で前記基材にかかる張力を補正するために、前記プロファイルに基づいて前記特定時点でのマンドレル回転量に応じた基材供給量を算出し、算出された基材供給量を基準に前記基材供給部における基材供給量を調節する段階をさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の二次電池の製造方法。
【請求項15】
前記二次電池が円筒形電池であり、前記プロファイルが、前記マンドレル回転量が増加するのに従って段階的に増加する、マンドレル1回転当たりの前記基材の単位供給量を含むことを特徴とする請求項11に記載の二次電池の製造方法。
【請求項16】
前記二次電池が角型電池であり、前記プロファイルが、2種類の放物線からなる波形を呈する、マンドレル1回転当たりの前記基材の単位供給量を含むことを特徴とする請求項11に記載の二次電池の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-11-01 
出願番号 P2014-234309
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (H01M)
P 1 651・ 121- YAA (H01M)
P 1 651・ 113- YAA (H01M)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 粟野 正明
特許庁審判官 村川 雄一
池渕 立
登録日 2019-06-07 
登録番号 6534518
権利者 三星エスディアイ株式会社
発明の名称 二次電池の製造装置および製造方法  
代理人 阿部 達彦  
代理人 阿部 達彦  
代理人 村山 靖彦  
代理人 村山 靖彦  

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