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審決分類 |
審判 一部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 H01R 審判 一部申し立て 判示事項別分類コード:857 H01R 審判 一部申し立て 2項進歩性 H01R 審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 H01R 審判 一部申し立て 4項(134条6項)独立特許用件 H01R |
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管理番号 | 1380920 |
総通号数 | 1 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2022-01-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2020-03-17 |
確定日 | 2021-10-27 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | true |
事件の表示 | 特許第6583323号発明「配線用接続器具、及び電気機器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6583323号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜10〕について訂正することを認める。 特許第6583323号の請求項2、3及び10に係る特許を維持する。 特許第6583323号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6583323号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし10に係る特許についての出願は、平成29年3月21日に出願され、令和1年9月13日にその特許権の設定登録がされ、同年10月2日に特許掲載公報が発行された。 本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和2年 3月17日 :特許異議申立人田中貞嗣及び小山卓志 (以下、「異議申立人」という。)による 請求項1〜3及び10に係る特許に対する 特許異議の申立て 同年 6月29日付け:取消理由通知 同年 8月27日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 同年12月 1日 :異議申立人による意見書の提出 令和3年 3月12日付け:取消理由通知<決定の予告> 同年 5月14日 :特許権者よるに意見書及び訂正請求書の提出 同年 6月24日 :異議申立人による意見書の提出 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 令和3年5月14日の訂正請求書による訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は、以下の(1)〜(3)のとおりである。 なお、令和2年8月27日の訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1を削除する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2の 「絶縁体からなり、前記導電端子部材、前記絶縁端子部材、及び前記弾性部材を覆う外装部材を備えることを特徴とする請求項1に記載の配線用接続器具。」 との記載を、 「電気機器の上面から下面方向を奥行方向とし、前記電気機器の長手方向を縦方向とし、 前記電気機器の前記縦方向の一端側及び他端側に設けられたねじ端子に電線を接続するための配線用接続器具であって、 導体からなり、前記ねじ端子の夫々に対して前記縦方向の一端側及び他端側から取り付けられると共に、前記ねじ端子によって締め付けられ前記電気機器に固定される導電端子部材と、 絶縁体からなり、前記導電端子部材が組み込まれ、前記奥行方向に貫通して前記電線を前記導電端子部材に導く電線差込部が形成された絶縁端子部材と、 導体からなり、前記絶縁端子部材に組み込まれ、前記電線差込部に差し込まれた前記電線を前記導電端子部材に押し付ける弾性部材と、 絶縁体からなり、前記導電端子部材、前記絶縁端子部材、及び前記弾性部材を覆う外装部材と、を備えることを特徴とする配線用接続器具。」 に訂正する。 (請求項2の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3〜10も同様に訂正する。) (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項10の 「請求項1〜9の何れか一項に記載の配線用接続器具を備えた電気機器。」 との記載を 「請求項2〜9の何れか一項に記載の配線用接続器具を備えた電気機器。」 に訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の有無 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、特許請求の範囲の請求項1を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。 そして、訂正事項1は、願書に添付された特許請求の範囲に記載された事項の範囲内においてする訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 また、訂正事項1は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、訂正前の請求項2が訂正前の請求項1の記載を引用していたものを、請求項間の引用関係を解消して、独立形式の請求項の記載に改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。 また、訂正事項2は、 「電気機器の上面から下面方向を奥行方向とし、前記電気機器の長手方向を縦方向と」すること、 ねじ端子が電気機器「の前記縦方向の一端側及び他端側」に設けられたこと、 導電端子部材が「前記ねじ端子の夫々に対して前記縦方向の一端側及び他端側からから取り付けられる」こと、及び、 電線差込部が「前記奥行方向に貫通して」電線を導電端子部材に導くものであることを特定するものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 そして、訂正事項2は、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1及び2、明細書の段落【0009】〜【0011】及び【0018】並びに【図2】に記載された事項の範囲内においてする訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 また、訂正事項2は、請求項2の特定事項を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。 (3)訂正請求3について 訂正事項3は、訂正前の請求項10が、訂正前の請求項1〜10の記載を引用していたものを、請求項2〜10の記載を引用するものに限定し、訂正事項1により削除される請求項1を引用する記載を解消するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」及び同項ただし書第3項に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正である。 そして、訂正事項3は、願書に添付された特許請求の範囲に記載された事項の範囲内においてする訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 また、訂正事項3は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。 3 一群の請求項 訂正前の請求項1〜10について、訂正前の請求項2〜10は訂正前の請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものであるから、本件訂正請求は、一群の請求項に対して請求されたものである。 4 独立特許要件 本件の特許異議の申立てにおいては、訂正前の請求項1〜3及び10に対して特許異議の申立てがされているため、請求項1〜3及び10については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 そこで、請求項4〜9について検討する。 訂正後の請求項4〜9は、いずれも訂正後の請求項2の記載を直接または間接的に引用するものであり、訂正後の請求項2の全ての構成をそれぞれ備えるものであるため、下記「第4 4 (1)本件発明2について」で述べると同様の理由により進歩性が認められ、また、他に特許を取り消すべき理由を有しないから、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件を満たす。 5 異議申立人の主張について 異議申立人は、令和3年6月24日の意見書の3(3)において、訂正後の特許請求の範囲の請求項2、3及び10の「奥行方向」及び「縦方向」について、明細書の記載を参酌しても不明確である旨主張する。 しかしながら、「奥行方向」及び「縦方向」と記載することで、両者を別の方向として定義する意図があることは明らかであるし、配線用接続器具の設置姿勢がどのように変化しようとも、幅方向、縦方向、及び奥行方向が、空間内で互いに直行する三方向であること(明細書の、「空間内で互いに直行する三方向を、便宜的に、幅方向、縦方向、及び奥行方向とする。」(段落【0009】)との記載も参照。)に変わりはない。 また、図面の【図1】〜【図12】において、図面の上下方向を「奥行方向」としているは、便宜的なものに過ぎず、配線用接続器具の特定の設置姿勢の際に、「奥行方向」と「縦方向」とを同一視させることを意図したものとは認められない。 したがって、「奥行方向」と「縦方向(長手方向)」とを混同することはないので、訂正後の特許請求の範囲の請求項2の「奥行方向」及び「縦方向」は明確であるといえる。 そうであれば、訂正後の特許請求の範囲の請求項2の「奥行方向」及び「縦方向」に係る、「ねじ端子」及び「導電端子部材」並びに「電線差込部が形成された絶縁端子部材」等の発明特定事項を備える「配線用接続器具」が不明確とはいえないから、訂正後の請求項2、3及び10に係る発明は明確であって、特許法第36条第6項第2号の要件を満たす。 したがって、異議申立人のかかる主張は、採用することができない。 6 小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項〜第7項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜10〕について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 上記訂正請求により訂正された請求項2、3及び10に係る発明(以下、それぞれ「本件発明2」等という。)は、次のとおりである。 「【請求項2】 電気機器の上面から下面方向を奥行方向とし、前記電気機器の長手方向を縦方向とし、 前記電気機器の前記縦方向の一端側及び他端側に設けられたねじ端子に電線を接続するための配線用接続器具であって、 導体からなり、前記ねじ端子の夫々に対して前記縦方向の一端側及び他端側から取り付けられると共に、前記ねじ端子によって締め付けられ前記電気機器に固定される導電端子部材と、 絶縁体からなり、前記導電端子部材が組み込まれ、前記奥行方向に貫通して前記電線を前記導電端子部材に導く電線差込部が形成された絶縁端子部材と、 導体からなり、前記絶縁端子部材に組み込まれ、前記電線差込部に差し込まれた前記電線を前記導電端子部材に押し付ける弾性部材と、 絶縁体からなり、前記導電端子部材、前記絶縁端子部材、及び前記弾性部材を覆う外装部材と、を備えることを特徴とする配線用接続器具。 【請求項3】 前記外装部材は、前記電線差込部に対応する位置に、前記電線を差し込むための電線差込開口が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の配線用接続器具。 【請求項10】 請求項2〜9の何れか一項に記載の配線用接続器具を備えた電気機器。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 1 令和2年6月29日付けの取消理由 請求項1〜3及び10に係る特許に対して、当審が令和2年6月29日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 (1)本件特許の請求項1及び10に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、本件特許は取り消すべきものである。 (2)本件特許の請求項1〜3及び10に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の引用文献1及び2に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件特許は取り消すべきものである。 2 令和3年3月12日付けの取消理由<決定の予告> 請求項1〜3及び10に係る特許に対して、当審が令和2年6月29日付けで特許権者に通知した取消理由<決定の予告>の要旨は、次のとおりである。 (1)本件特許の請求項1及び10に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された引用文献3に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、本件特許は取り消すべきものである。 (2)本件特許の請求項1及び10に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の引用文献3に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件特許は取り消すべきものである。 引用文献1:特開平6−119943号公報(異議申立人の甲第1号証。) 引用文献2:特開2013−127969号公報(異議申立人の甲第2号証。) 引用文献3:特開平10−177870号公報(異議申立人の甲第3号証。) 3 引用文献の記載等 (1)引用文献1・引用発明1 令和2年6月29日付けの取消理由において引用した引用文献1には、次の事項が記載されている。 ア「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、特にブレーカーの端子に接続して使用する中間接続器に関するものである。 【0002】 【従来の技術】従来、ブレーカーに電線を接続するには、図5に示すように、ブレーカー端子30に穿設された螺子孔に螺合した端子ネジ32を緩め、ブレーカー端子30と座金31との間に電線Cを差し込んで、端子ネジ32を締め付けてブレーカー端子30と座金31との間で電線Cを挟着して接続していた。 【0003】また、図6に示すように、電線Cをリング状に折り曲げて座金31に挿通した端子ネジ32に嵌合させ、端子ネジ32をブレーカー端子30に穿設された螺子孔に螺合させて締め付け、ブレーカー端子30と座金31との間で電線Cを挟着して接続していた。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、図5に示すように、ブレーカー端子30と座金31との間に電線Cを差し込んで端子ネジ32を締め込み、ブレーカー端子30と座金31との間で電線Cを挟着してブレーカーBに電線Cを接続すると、電線Cに作用する比較的弱い引張外力で端子30と座金31との間から電線Cが引き抜けるという問題点がある。 【0005】また、図6に示すように、電線Cをリング状に折り曲げて座金31に挿通した端子ネジ32に嵌合させ、端子ネジ32を締め付けてブレーカー端子30と座金31との間で電線Cを挟着してブレーカーBに電線Cを接続すれば、電線Cに作用する機械的外力によりブレーカー端子30と座金31との間から電線Cが引き抜けるようなことはないが、電線Cをリング状に折り曲げる作業は熟練技術をもってしても面倒で、高層ビル内配線のようにブレーカーBの設置個数が多い場合には配線作業に長時間を要する。さらに、ブレーカーBは壁面高所に取り付けられるために、ブレーカー端子30から端子ネジ32と座金31を外し、リング状に折り曲げた電線Cを端子ネジ32に嵌合させる際、端子ネジ32や座金31を落とすとこれを拾うのに手間が掛かり作業性が極めて悪いばかりでなく、端子ネジ32や座金31を紛失するおそれがある等の問題点がある。 【0006】本発明は上記問題点に鑑みなされたもので、極めて簡単にブレーカー等の電気機器に電線を接続し得る中間接続器を提供することを目的とする。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明は、端子部2と鎖錠バネ収納部4とを長手方向に連続して折り曲げ形成した端子金具1の上記鎖錠バネ収納部4内に、電線鎖錠部10a及び電線押圧部10bを連続一体に折り曲げ形成した鎖錠バネ10を収納すると共に、鎖錠バネ収納部4上に、背面に電線挿通孔16を穿設し上面に解錠釦20を上下動自在に設けた絶縁カバー15を被せて中間接続器を構成し、従来の問題点を解消したものである。 【0008】 【作用】端子金具1に形成した端子部2はブレーカー等の電気機器の端子にネジ止め固定するためのものである。端子部2と長手方向に連続一体に形成された鎖錠バネ収納部4内には電線を鎖錠する鎖錠バネ10が収納される。鎖錠バネ10は電線を前記端子金具1に形成された鎖錠バネ収納部4の上面内壁との間に挟着すると共に、電線を抜け止め鎖錠する。鎖錠バネ収納部4上に被せた絶縁カバー15は感電事故等を防止する。絶縁カバー15に上下動自在に設けた解錠釦20は前記鎖錠バネ10に折り曲げ形成された電線鎖錠部10aを下方に撓ませ電線を解錠する。 【0009】即ち、端子金具1に形成された鎖錠バネ収納部4上に被せた絶縁カバー15の背面に穿設した電線挿通孔16から鎖錠バネ収納部4内に電線を挿入すると、鎖錠バネ10に形成された電線鎖錠部10a及び電線押圧部10bは電線に押されて下方に撓み、その反発バネ力により電線を鎖錠バネ収納部4の上面内壁との間に挟着保持し、電線を引く抜く方向に外力が作用すると、電線鎖錠部10aが電線に食い込み電線の後方への抜けは確実に防止される。電線鎖錠部10aにより鎖錠された電線を解錠して引き抜くには、絶縁カバー15に上下動自在に枢着された解錠釦20を下方に押圧して、電線鎖錠部10aを強制的に下方に撓ませることにより簡単に引き抜くことができる。 【0010】 【実施例】以下、本発明の実施例を図面により説明する。図1は本発明の一実施例を示す分解斜視図、図2は縦断面図、図3は使用状態を示す説明図である。 【0011】図において1は銅合金等の導電性金属板からなる端子金具、2は端子金具1を構成する端子部、2a、2aは端子部の両側を直角に上方に折り曲げて形成した補強板、3はボルト挿通用のU状切欠溝で、該切欠溝3はボルト挿通孔としてもよいことは勿論である。4、4は後述する鎖錠バネ10を収納する鎖錠バネ収納部、5、5は鎖錠バネ収納部4、4の上面4a側縁を下方に直角に折り曲げて形成した鎖錠バネ10を位置決めするガイド板、6は鎖錠バネ収納部4、4の上面4a、4aに設けられたコ状切欠部で、該コ状切欠部6には後述する絶縁カバー15に回動自在に枢着した鎖錠釦20の先端部が嵌入する。7、7は鎖錠バネ収納部4の底面に穿設されたコ状溝4cの両側縁を上方に直角に折り曲げて形成した鎖錠バネ10を位置決めするガイド板で、該ガイド板7、7は前記鎖錠バネ収納部4、4の上面4a、4aを直角に下方に折り曲げて形成したガイド板5、5と相対向している。8は鎖錠バネ収納部4の両側面4b、4bに穿設された矩形状の係止口で、該係止口8には後述する絶縁カバー15に左右動自在に設けられた係止突起17が嵌合係止する。9は鎖錠バネ収納部4の底面を切り起して形成した後述する鎖錠バネ10のストッパーである。 【0012】10は鎖錠バネで、該鎖錠バネ10は燐青銅等の板バネを斜めU状に折り曲げて、折り曲げ先端に電線鎖錠部10aを形成すると共に、斜め逆U状に折り返して電線押圧部10bを形成し、さらに、折り返し先端を前方に水平に延長させ、その先端部を上方に直角に折り曲げてストッパー10cを形成して構成されている。この鎖錠バネ10はストッパー10cを前述した端子金具1に折り曲げ形成したストッパー9に当接させて鎖錠バネ収納室4内に収納されている。なお、鎖錠バネ10の巾は電線外径より2mm程度広く、後述する解錠釦20は電線を避けて鎖錠バネ10に形成した電線鎖錠部10aを下方に撓ませるようになっている。 【0013】15は後述する解錠釦20を上下動自在に枢着した合成樹脂等からなる絶縁カバー、16、16は絶縁カバー15の背面に穿設された電線挿通孔、17、17は絶縁カバー15の両側面に左右動自在に設けられた係止突起で、この係止突起17、17は左右動自在の係止板17aの遊端部に前記鎖錠バネ収納室4の両側面4b、4bに穿設した係止口8に嵌合係止する突起17bを突設して形成されている。18は絶縁カバー15の上面に穿設された矩形口で、該矩形口18には解錠釦20の操作部20bが嵌合する。 【0014】20は操作部20bを上記絶縁カバー15の上面に穿設された矩形口18に嵌合し、ヒンジ部20aを上記絶縁カバー15に上下動自在に枢着した解錠釦で、該解錠釦20を下方に押すことにより、解錠釦20の底面コーナー部20cで前述した鎖錠バネ10に形成した電線鎖錠部10aを下方に撓ませ、電線Cを解錠するようになっている。 【0015】上述のように構成した本発明の中間接続器をブレーカーに接続し、該中間接続器を介して電線をブレーカーに接続するには、図3に示すようにブレーカーBの端子ネジ32を緩めてブレーカー端子30と座金31との間に端子金具1に設けた端子部2を差し込み、端子ネジ32を緊締して中間接続器をブレーカーに接続する。 【0016】次いで、図2に示すように絶縁カバー15の背面に穿設した電線挿通孔16から端子金具1に形成した鎖錠バネ収納部4内に電線Cを挿入する。この際、鎖錠バネ10に折り曲げ形成した電線鎖錠部10aと電線押圧部10bは夫々のU状折り曲げ部10a’、10b’を支点として下方に撓み、その反発バネ力により電線Cは電線鎖錠部10a及び電線押圧部10bと鎖錠バネ収納部4の上面4a内壁面との間に電気的に確実に挟着保持され、電線Cを引き抜く方向に機械的外力が作用した際には、電線鎖錠部10aが電線Cに食い込み電線Cは確実強固に抜け止めされ、中間接続器を介して電線CとブレーカーBとは電気的に確実に接続される。なお、本発明の中間接続器を予めブレーカーBに接続しておき、現場作業で中間接続器に電線を差し込み接続することにより、従来欠点を一掃し作業性を著しく向上させることができる。 【0017】而して、誤配線等により中間接続器に接続した電線Cを外す必要が生じた際には、図2に点線で示すように絶縁カバー15に上下動自在に枢着した解錠釦20を下方に押圧し、鎖錠バネ10の電線鎖錠部10aを下方に強制的に撓ませることにより、電線を簡単に引き抜くことができる。 【0018】なお、以上は本発明の中間接続器をブレーカーに取り付けて使用することについて図示説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各種電気機器に接続して使用し得ることは勿論である。また、端子金具1に形成する鎖錠バネ収納部4の形状は、図4に示すように鎖錠バネ収納部4の上面長手方向中央部及び底面長手方向中央部を夫々内方に膨出させて形成し、また、1個の鎖錠バネ10を鎖錠バネ収納部4内に収納するように形成する等、必要に応じ適宜設計変更し得るものである。さらに、端子金具1に形成した鎖錠バネ収納部4上に被せる絶縁カバー15は、鎖錠バネ収納部4に貼着して被せてもよく、この場合には、鎖錠バネ収納部4及び絶縁カバー15の両側面に設ける係止口8、係止突起17は省略し得る。 【0019】 【発明の効果】本発明の中間接続器によれば上述したように、端子金具1に形成した鎖錠バネ収納部4上に被せた絶縁カバー15に穿設された電線挿通孔16から鎖錠バネ収納部4内に電線Cを挿入するだけの極めて簡単な作業で電線Cを確実、且つ、強固に接続することができるので、特に、高層ビル等に多数使用するブレーカーBに接続して使用することにより、作業性を著しく向上させ得る等の優れた利点がある。」 イ 引用文献1の【図2】からは、絶縁カバー15に穿設された電線挿通孔16のテーパーによって電線Cが端子金具1に導かれる構成が見て取れる。 ウ 引用文献1の【図2】からは、鎖錠バネ10の全体が絶縁カバー15内に配置されている構成が見て取れる。 エ 引用文献1の「(省略)電線を引き抜く方向に外力が作用すると、電線鎖錠部10aが電線に食い込み電線の後方への抜けは確実に防止される。」(段落【0009】)との記載及び【図2】の図示内容から、鎖錠バネ10の電線鎖錠部10aのU状折り曲げ部10a’の後方の端(【図2】のU状折り曲げ部10a’の左端)が、絶縁カバー15に当接しているので、電線鎖錠部10aに食い込んだ電線Cが、後方(【図2】の左側)に移動できないと解される。 オ 【図2】 カ 【図3】 上記の記載事項、認定事項及び図示内容を総合し、本件特許の請求項2の記載振りに則って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 [引用発明1] 「ブレーカーB等の電気機器に設けられた端子ネジ32を螺合するブレーカー端子30に電線Cを接続するための中間接続器であって、 導電性金属板からなり、端子ネジ32を締め込んでブレーカー端子30と座金31との間で挟着され前記電気機器に接続される端子金具1と、 合成樹脂等からなり、前記端子金具1上に被せられ、前記電線Cを前記端子金具1に導く電線挿通孔16が穿設された絶縁カバー15と、 燐青銅等からなり、前記絶縁カバー15内に全体が配置され、一部が絶縁カバー15に当接し、前記電線挿通孔16に挿入された前記電線Cを前記端子金具1との間で反発バネ力により挟着保持する鎖錠バネ10と、を備える中間接続器。」 (2)引用文献2 令和2年6月29日付けの取消理由において引用した引用文献2には、次の事項が記載されている。 ア「【請求項1】 被覆で覆われた電線を途中まで露出させた露出芯線を結線する結線部を内部に備えるとともに前記露出芯線を前記結線部に挿入させる端子台挿入孔を有する端子台に取り付けられ、前記端子台挿入孔に対応するように前記端子台挿入孔と連通するカバー側挿入孔を有することを特徴とする端子台カバー。」 イ「【0016】 回路基板110は、電子部品が実装される略長方形の基板であり、長手方向の一方の端部側に実装される端子台(以下、入力端子台120aという)と、長手方向の他方の端部側(入力端子台120aが実装される一方側に対して反対側)に実装される端子台(以下、出力端子台120bという)とを備える。 【0017】 また、点灯装置1000は、入力端子台120aを覆うように取り付けられるカバー(以下、入力端子台カバー130aという)と、出力端子台120bを覆うように取り付けられるカバー(以下、出力端子台カバー130bという)とを備える。 【0018】 なお、入力端子台120aの構造と出力端子台120bの構造とは、ほぼ同じであるため、入力端子台120aと出力端子台120bとを単に端子台120という場合がある。同様に、入力端子台カバー130aと出力端子台カバー130bとを、単に端子台カバー130という場合がある。 【0019】 図3は、実施の形態1に係る点灯装置1000における図2のA方向からの正面図である。図4は、実施の形態1に係る端子台120の図3のC方向からの端子台120の側面図である。図5は、実施の形態1に係る端子台120の図3のB−B断面図である。図6は、実施の形態1に係る端子台カバー130の斜視図であり、(a)は端子台カバー130の上面斜視図であり、(b)は端子台カバー130の下面斜視図である。 【0020】 図3〜図6を用いて、端子台120及び端子台カバー130の構成について説明する。 【0021】 図3に示すように、回路基板110は、点灯装置ケース200の底部近傍に、点灯装置ケース200の底面に略平行に取り付けられている。点灯装置1000には、両端部に開放された部分である開放部155が形成される。端子台120は、点灯装置1000の開放部155近傍に装着される。図1,図2に示すように、端子台120は、回路基板110の領域のうち、点灯装置カバー300に覆われていない領域に取り付けられる。あるいは、端子台120の一部が開放部155から点灯装置1000の内部に入るように取り付けられていてもよい。 【0022】 図5に示すように、端子台120は、外郭ケース121と、外郭ケース121に収納される電極122とを備える。端子台120は、複数の面を有する箱状である。外郭ケース121の外形は、ほぼ直方体形状をなしている。外郭ケース121は、1つの面に電線が挿入される端子台側電線挿入孔121aを備える。外郭ケース121は、端子台側電線挿入孔121aの下側に階段状に凹んだ外郭ケース凹部121bを備え、天面128側に開口部121cを備える。 【0023】 端子台120は、後述する被覆で覆われた電線400の被覆を途中まで剥がして露出させた所定長の露出芯線(後述する)を結線する電極122(結線部)を外郭ケース121の内部に備える。端子台120は、1つの面に所定長の露出芯線を電極122(結線部)に挿入させる端子台側電線挿入孔121a(端子台挿入孔)を有する。以下、端子台側電線挿入孔121aを有する面を端子台孔形成面129という。 【0024】 電極122は、「く」の字状に折り曲げられて形成されて、後述する電線400の露出芯線410と電気的に接触する金属性かつバネ性の電極バネ部122aと、「コ」の字状に折り曲げられて形成される収納部122b1と、回路基板110のパターンに半田で接触される接触ピン122b2とを有する電極バネ部収納部122bを備える。 【0025】 端子台カバー130は、2つの面を有し、側面形状がL字形状となっている。端子台カバー130は、端子台孔形成面129を覆うように端子台120に取り付けられる。端子台カバー130は、端子台120に取り付けられた場合に、端子台側電線挿入孔121aに対応する位置に端子台側電線挿入孔121aと連通するカバー側電線挿入孔131(カバー側挿入孔)を有する。端子台カバー130において、カバー側電線挿入孔131が形成されている面をカバー孔形成面139という。カバー側電線挿入孔131は、丸穴、角穴等の形状でも良いが、露出芯線410を挿入することを考慮すると丸穴が好適である。」 ウ「【0039】 図7は、実施の形態1に係る点灯装置1000の端子台120に電線400を接続する工程を示す図である。図7を用いて、端子台120に電線400を接続する工程について説明する。」 エ「【0042】 次に、端子台120を覆うように取り付けられている端子台カバー130のカバー側電線挿入孔131から電線400(露出芯線410)を挿入し、さらに、端子台側電線挿入孔121aに挿入する。このとき、露出芯線410は、端子台120の電極122に接触し、電線400をさらに押し込むと、電極バネ部122aが弾性変形して、露出芯線410が電極バネ部122aと電極バネ部収納部122bに挟まれて嵌合し、機械的に結合するとともに、電気的に結合する。」 オ「【0049】 図7(a)に示すように、空間距離Bは、空間距離Aと、端子台カバー130の厚さRと、隙間rとの和である。端子台カバー130を取り付けることにより空間距離Bを調節するには、端子台カバー130の厚さRを調節したり、隙間rを調節したりすることにより実現される。」 カ 引用文献2の段落【0039】、【0042】及び【0047】の記載事項から、端子台カバー130は、端子台120に電線400を接続する工程において、作業者が露出芯線410と電気的な接触がおきない材質からなることが当業者であれば理解できるから、端子台カバーは絶縁体からなるといえる。 キ 【図7】 上記の記載事項、認定事項及び図示内容を総合し、本件特許の請求項2の記載振りに則って整理すると、引用文献2には、次の事項(以下、「引用文献2の記載事項」という。)が記載されていると認められる。 [引用文献2の記載事項] 「絶縁体からなり、回路基板110のパターンに半田で接触される接触ピン122b2を有する電極バネ部収納部122b、外郭ケース121、及び電極バネ部122aを覆う端子台カバー130であって、外郭ケース121の端子台側電線挿入孔121aに対応する位置に電線400の露出芯線410を挿入するカバー側電線挿入孔131が形成されている端子台カバー130を備えた端子台120。」 (3)引用文献3・引用発明3 令和3年3月12日付けの取消理由<決定の予告>において引用した引用文献3には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。 ア「【0003】そこで、電線導体の接続作業性を向上するために、電気機器の端子部に鎖錠ばねを用いて、電線の挿通作業のみで接続できる速結端子装置が使用されている。」 イ「【0005】しかし、電線挿通方向が取付面に平行な方向であったため接続作業が容易でないという欠点があった。したがって、この発明の目的は、螺子締め方式の電気機器に簡単に取着でき、かつ電線導体の接続作業を容易にすることができる速結端子装置を提供することである。」 ウ「【0016】 【発明の実施の形態】この発明の一実施の形態を図1ないし図9により説明する。すなわち、この速結端子装置は、端子螺子1を有し、この端子螺子1を受ける受け孔2のある端子板3を有する電気機器4に取着されるものである。実施の形態では電気機器4が回路遮断器であり、その一端に入力側の螺子締め方式の端子装置5を設け、他端に出力側の螺子締め方式の端子装置6を設けている。電気機器4の端子装置5,6の端子板2は奥壁20および両側壁21,22により包囲されている。また端子板3の受け孔2は貫通孔であり、その裏面側に端子螺子1を螺合するナット(図示せず)を設けているが、受け孔2を螺子孔に形成してもよい。7は壁面に取付ける取付面、8は取付用凹部である。 【0017】速結端子装置は、端子接続部10と、速結端子部23と、ケース12とを有する。端子接続部10は、端子板3に重ねられて、受け孔2に整合する螺子挿通孔11を有し、端子螺子1により螺子挿通孔11を通して端子板3に取着される。実施の形態では端子接続部10を端子板3と同程度の幅をもった導電板により形成し、端子螺子1を螺子挿通孔11および受け孔2に通しナットに螺合し端子接続部10を締付け固定する。 【0018】速結端子部23は、端子接続部10に電気的機械的に接続されて、電気機器4の取付面7と反対側から取付面7に対して略垂直な方向に電線導体33を差し込ませる鎖錠ばね13を有する。実施の形態では、速結端子部23が、差し込まれた電線導体33と接触する電線導体接触板14と、この電線導体接触板14に押し付けるように電線導体33を鎖錠する鎖錠ばね13と、この鎖錠ばね13を撓めて電線導体33を解錠する解錠部材15とで構成している。電線導体接触板14は図4に示すように端片14a,14cおよび中間片14bからなる断面コ字形に形成され、その端片14aの一端で端子接続部10と略L字状をなすように一体形成している。電線導体接触板14の中間片14bの略中央に位置決め突起40を切起こしにより形成している。鎖錠ばね13は板ばねの一端を折返して鎖錠片13aを形成し、他端をZ字形に折曲して接触片13bを形成し、鎖錠ばね13を電線導体接触板14の内側に嵌め、接触片13bの折曲部分を位置決め突起40に図6に示すように係合して電線導体接触板14の端片14cとの間に保持し、電線導体33は鎖錠片13aおよび接触片13bと端片14aとの間に挿通させることとしている。図7は電線導体33を差し込んだ状態であり、鎖錠片13aおよび接触片13bが撓んで電線導体33を電線導体接触片14の端片14aに押付け、鎖錠片13aの先端が電線導体33に食い込んで抜止めし、電線導体33が接触片13bに弾接して電気的に接続される。」 エ「【0020】ケース12は、速結端子部23を収納する収納部25を有し、電線導体33を電気機器4の取付面7と反対側から取付面7に対して略垂直な方向に電線導体12を挿通して速結端子部23に差し込ませる電線挿通孔26を収納部25に形成している。実施の形態のケース12は、端子接続部10が端子板3に取着された状態で、収納部25が電気機器4の端面4aの端子板3よりも取付面7側に位置し、かつ速結端子部23に電線導体12を差し込んだときに電気機器4の端面4aに収納部25の壁34の外面が当接するように略L字状に形成するもので、端子接続部10の両側を包囲するとともに電気機器4の両側壁21,22に当接する側壁35,36を、収納部25からL字状に延出して形成している。電線導体接触板14の端片14aはケース12の電気機器4の端面4aに当接する壁34の内面に当接している。」 オ 速結端子装置を構成する部材において、導電性を要する部分を除けば、漏電防止等の必要性により絶縁体で形成されることが普通であるから、電気機器4のケース12は、絶縁体で構成されると認められる。 カ 上記ウの「電線導体33が接触片13bに弾接して電気的に接続される。」(段落【0018】)との記載から、接触片13bを有する鎖錠ばね13は、導体であることが理解できる。 キ【図2】の左右方向の距離が上下方向の距離より長く、【図3】の左右方向の距離が上下方向の距離より長いから、【図2】及び【図3】の左右方向は、電気機器4の長手方向といえる。 ク 【図1】 ケ 【図2】 コ 【図3】 上記の記載事項、認定事項及び図示内容を総合し、本件発明2に係る請求項の記載ぶりに則って整理すると、引用文献3には、次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。 [引用発明3] 「電気機器4の長手方向の一端及び他端に設けられた螺子締め方式の端子装置5、6に電線導体33を接続するための速結端子装置であって、 導電板からなり、前記端子装置5、6の夫々に対して前記長手方向の一端及び他端から取付けられると共に、前記端子装置5、6の端子螺子1によって締付け固定され前記電気機器4に固定される端子接続部10及び電線導電接触板14と、 絶縁体からなり、前記端子接続部10及び電線導電接触板14が収納され、電気機器4の取付面7に対して略垂直な方向に貫通して前記電線導体33を前記端子接続部10及び電線導電接触板14に差し込ませる電線挿通孔26が形成されたケース12と、 導体からなり、前記ケース12に収納され、前記電線挿通孔26に挿通された前記電線導体33を前記電線導電接触板14に押付ける鎖錠ばね13と、を備える速結端子装置。」 (4)引用文献4 令和2年12月1日に異議申立人が提出した意見書に、甲第4号証として添付された特開2017−16767号公報(以下、「引用文献4」という。)には、以下の事項が記載されている。 「【0019】 <速結端子ユニットの構造> 次に速結端子ユニット3の構造を説明する。図4は速結端子ユニット3の3面図であり、3つの方向から速結端子ユニット3を観察した状態を示している。速結端子ユニット3は、2つのケース3d、3eで外部を覆われており、取り付けネジ3fで2つのケース3d、3eを固定している。 【0020】 速結端子ユニット3の上面(第1の面)には、電線を挿入して各端子板2a、2bと電気的に接続させる電線挿入穴3a、内部に形成された速結端子電極4が通電しているかを調べるための検電穴3b、電源側端子板2aおよび負荷側端子板2bと接続した電線を取り外すための解錠操作を行うための解錠操作穴3cが形成されている。これらの操作を行うための穴は、すべて速結端子ユニット3の上面に形成されており、固定ネジ8を挿入する反対方向である、回路遮断器1の操作面方向から操作を行うことができる。 【0021】 図5は、速結端子ユニット3の検電穴3b部分を含む方向の断面図を示している。速結端子ユニット3の内部には、電線7と接続する電線接触部4a、電源側端子板2aまたは負荷側端子板2bと接続する接続面4c、電線接触部4aと接続面4cとの間を繋ぐ導電部材4bから成る速結端子電極4が配置され、接続面4cは速結端子ユニット3の下面(第2の面)に位置している。また電線の引き抜けを防止する鎖錠部5aと電線を抑える接圧部5bを有する板バネ5も配置されている。なお、回路遮断器1に速結端子ユニット3を取り付けた状態で、速結端子ユニット3の上面/下面は、それぞれ回路遮断器1の操作面/底面に対応する。」 4 当審の判断 (1)本件発明2について ア 対比 本件発明2と引用発明3とを対比すると、引用発明3の「電気機器4」は、本件発明2の「電気機器」に相当し、以下同様に、 「長手方向」は「長手方向」及び「縦方向」に、 「一端及び他端」は「一端側及び他端側」に、 「螺子締め方式の端子装置5、6」は「ねじ端子」に、 「電線導体33」は「電線」に、 「速結端子装置」は「配線用接続器具」に、 「導電板」は「導体」に、 「取付けられ」ることは「取り付けられ」ることに、 「端子装置5、6の端子螺子1によって締付け固定され」ることは「ねじ端子によって締め付けられ」ることに、 「端子接続部10及び電線導電接触板14」は「導電端子部材」に、 「収納され」ることは「組み込まれ」ることに、 「電気機器4の取付面7に対して略垂直な方向」は「電気機器の上面から下面方向」及び「奥行方向」に、 「差し込ませる」ことは「導く」ことに、 「電線挿通孔26」は「電線差込部」に、 「ケース12」は「絶縁端子部材」に、 「挿通され」ることは「差し込まれ」ることに、 「押付ける」ことは「押し付ける」ことに、 「鎖錠ばね13」は、「弾性部材」に、それぞれ相当する。 したがって、本件発明2と引用発明3とは、 「電気機器の上面から下面方向を奥行方向とし、前記電気機器の長手方向を縦方向とし、 前記電気機器の前記縦方向の一端側及び他端側に設けられたねじ端子に電線を接続するための配線用接続器具であって、 導体からなり、前記ねじ端子の夫々に対して前記縦方向の一端側及び他端側から取り付けられると共に、前記ねじ端子によって締め付けられ前記電気機器に固定される導電端子部材と、 絶縁体からなり、前記導電端子部材が組み込まれ、前記奥行方向に貫通して前記電線を前記導電端子部材に導く電線差込部が形成された絶縁端子部材と、 導体からなり、前記絶縁端子部材に組み込まれ、前記電線差込部に差し込まれた前記電線を前記導電端子部材に押し付ける弾性部材と、を備える配線用接続器具。」 である点で一致し、以下の相違点で相違する。 [相違点]本件発明2は「絶縁体からなり、前記導電端子部材、前記絶縁端子部材、及び前記弾性部材を覆う外装部材」を備えるのに対し、引用発明3は、本件発明2のような絶縁体の外装部材を備えない点で相違する。 イ 検討 上記相違点について検討する。 引用発明3は、絶縁体のケース12に、端子接続部10及び電線導電接触板14並びに鎖錠ばね13を収納する構成であり、その絶縁体のケース12により端子接続部10及び電線導電接触板14並びに鎖錠ばね13の絶縁処理は完了していると解されるから、仮に引用文献1、2又は4に上記相違点に係る外装部材に相当する構成が記載ないし示唆されていたとしても、絶縁体のケース12を、さらに絶縁体の外装部材で覆う動機付けはない。 異議申立人は、令和3年6月24日の意見書の3(5)において、「一般に、目的の達成をより確実にするために同様な目的の機能の手段を複数併用することは広く知られており、ことに、安全を目的とするものについては、厳重に二重、三重の対策を講じることは技術常識である。」とし、「絶縁という目的の達成をより確実にするために甲第3号証に記載された発明の絶縁体のケース12を、さらに絶縁体の外装部材で覆う多重絶縁をすることは技術常識である。」と主張している。 しかしながら、引用文献1、2及び4のいずれにも、絶縁体のケースを、さらに絶縁体の外装部材で覆って多重絶縁の構成とすることは、記載も示唆もされていない。 また、引用発明3において、絶縁体のケース12の外周りに余剰な空間がなく、別の部材で覆うことが困難であり、また、仮にこの絶縁体のケース12を、絶縁体の外装部材で覆うことを試みても、端子接続部10や電線挿通孔26の開孔等、絶縁体のケース12によっては絶縁できない部分を、絶縁体の外装部材によっても塞ぐことは機能上不可能であるから、絶縁体のケース12絶縁体を、外装部材で覆う多重絶縁の構成が採用できない。 そうすると、本件発明2は、引用発明3及び引用文献1、2又は4に記載された事項ないし技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 また、引用発明1及び引用文献2の記載事項は、いずれも電気機器の取り付け面に対して平行に電線を差し込む構成を前提としたものであるため、引用発明1に引用文献2の記載事項を組み合わせても、電気機器の奥行方向に電線を差し込む本件発明2の構成に至らない。そうすると、本件発明2は、引用発明1及び引用文献2の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明3及び10について 本件発明3及び10は、請求項2の記載を直接または間接的に引用するものであり、本件発明2の全ての構成を備えるものである。 このため、上記(1)と同様の理由により、本件発明3及び10は、引用発明3及び引用文献1、2又は4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、引用発明1及び引用文献2の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件の請求項2、3及び10に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件の請求項2、3及び10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、本件の請求項1は、本件訂正請求により削除されたため、異議申立人による特許異議の申立てにおける請求項1に係る特許についての申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 (削除) 【請求項2】 電気機器の上面から下面方向を奥行方向とし、前記電気機器の長手方向を縦方向とし、 前記電気機器の前記縦方向の一端側及び他端側に設けられたねじ端子に電線を接続するための配線用接続器具であって、 導体からなり、前記ねじ端子の夫々に対して前記縦方向の一端側及び他端側から取り付けられると共に、前記ねじ端子によって締め付けられ前記電気機器に固定される導電端子部材と、 絶縁体からなり、前記導電端子部材が組み込まれ、前記奥行方向に貫通して前記電線を前記導電端子部材に導く電線差込部が形成された絶縁端子部材と、 導体からなり、前記絶縁端子部材に組み込まれ、前記電線差込部に差し込まれた前記電線を前記導電端子部材に押し付ける弾性部材と、 絶縁体からなり、前記導電端子部材、前記絶縁端子部材、及び前記弾性部材を覆う外装部材と、を備えることを特徴とする配線用接続器具。 【請求項3】 前記外装部材は、前記電線差込部に対応する位置に、前記電線を差し込むための電線差込開口が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の配線用接続器具。 【請求項4】 前記導電端子部材は、前記電線差込部の奥側に、前記電線の差し込み方向と平行な押付面を備え、 前記弾性部材は、基端側か前記絶縁端子部材に支持され、先端側が前記押付面に向かって付勢された板ばねからなり、 前記電線差込部に前記電線が差し込まれると、前記電線に押されて前記板ばねが弾性変形し、前記板ばねの先端と前記押付面との間に前記電線が差し込まれたときに、前記板ばねの弾性力によって前記電線が前記押付面に押し付けられ、且つ引き抜き方向の変位が抑制されることを特徴とする請求項3に記載の配線用接続器具。 【請求項5】 前記導電端子部材は、前記押付面を一端に有し、前記板ばねの基端部を支持する支持部を他端に有するコ字状からなる板ばね接続部を備えていることを特徴とする請求項4に記載の配線用接続器具。 【請求項6】 前記絶縁端子部材には、工具を差し込むための工具差込部が形成され、 前記外装部材には、前記工具差込部に対応する位置に、前記工具を差し込むための工具差込開口が形成され、 前記工具差込部に前記工具が差し込まれると、前記工具に押されて前記板ばねが弾性変形し、前記板ばねの弾性力から解放されたときに、前記電線の引き抜きが許容されることを特徴とする請求項4又は5に記載の配線用接続器具。 【請求項7】 前記電線の先端には、カラー付きフェルールが圧着され、 前記絶縁端子部材には、前記電線差込部に前記電線を差し込んだ状態で、前記カラーを軸直角方向から目視可能な第一の切欠が形成され、 前記外装部材には、前記第一の切欠に対応する位置に、前記カラーを軸直角方向から目視可能な第二の切欠か形成されることを特徴とする請求項4〜6の何れか一項に記載の配線用接続器具。 【請求項8】 前記外装部材は、前記ねじ端子の上面を覆うことを特徴とする請求項2〜7の何れか一項に記載の配線用接続器具。 【請求項9】 前記外装部材に、電気機器側のねじ端子の工具挿入穴に係合される係合部を設けたことを特徴とする請求項8に記載の配線用接続器具。 【請求項10】 請求項2〜9の何れか一項に記載の配線用接続器具を備えた電気機器。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2021-10-15 |
出願番号 | P2017-054200 |
審決分類 |
P
1
652・
851-
YAA
(H01R)
P 1 652・ 537- YAA (H01R) P 1 652・ 857- YAA (H01R) P 1 652・ 121- YAA (H01R) P 1 652・ 856- YAA (H01R) |
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
田村 嘉章 |
特許庁審判官 |
内田 博之 尾崎 和寛 |
登録日 | 2019-09-13 |
登録番号 | 6583323 |
権利者 | 富士電機機器制御株式会社 |
発明の名称 | 配線用接続器具、及び電気機器 |
代理人 | 廣瀬 一 |
代理人 | 廣瀬 一 |
代理人 | 田中 秀▲てつ▼ |
代理人 | 田中 秀▲てつ▼ |