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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1381291
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-06-30 
確定日 2022-01-25 
事件の表示 特願2018− 20902「情報表示プログラム、情報表示方法、情報表示装置、及び配信装置」拒絶査定不服審判事件〔平成30年12月 6日出願公開、特開2018−195290、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続きの経緯

本願は、平成29年5月19日に出願した特願2017−100334号の一部を、平成30年2月8日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成31年 4月 3日付け :拒絶理由通知
令和 元年 6月 3日 :意見書、手続補正書の提出
令和 元年11月28日付け :拒絶査定(原査定)
令和 2年 6月30日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 3年 6月15日付け :拒絶理由(当審拒絶理由)通知
令和 3年 8月19日 :意見書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要

原査定(令和元年11月28日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1〜8、10〜12に係る発明は、以下の引用文献A、B及びDに基づいて、また、本願請求項9に係る発明は、以下の引用文献A〜Dに基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
A.特開2016−024734号公報
B.特許第5993075号公報
C.特開2015−213218号公報
D.山崎信悟,"ホームページ広告の配置を今どきにする!",[online],2014年 5月11日,PCまなぶ,[令和1年11月28日検索],<URL:https://pcmanabu.com/hp-adsense-position/ >

第3 当審拒絶理由の概要

当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

1.理由1(サポート要件)、理由2(明確性
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。
請求項1には、「前記画面中の所定の表示領域のうちスクロール方向の一方の端部領域である第1の端部領域に表示される第2コンテンツと、前記第1の端部領域の反対側にある第2の端部領域に表示される第2コンテンツは同一データではない異なる内容の画像であり、」との記載がされているが、「同一データではない」との記載は、本願の明細書等に記載されたものではなく、また、請求項1に記載された「同一データではない」との記載における「データ」が、請求項1において、どの「データ」を指しているのか明確ではないため、上記下線部は、本願の明細書等の記載を参照しても不明確であって、意味を把握することができない。
また、請求項1を引用する形式の請求項2〜9、及び請求項1と同様の記載がある請求項10〜12についても、同様の拒絶理由が存在する。

2.理由3(進歩性
本願請求項1〜8、10〜12に係る発明は、以下の引用文献1及び2に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2016−024734号公報(拒絶査定時の引用文献A)
2.特許第5993075号公報(拒絶査定時の引用文献B)

第4 本願発明

本願の請求項1〜9に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」〜「本願発明9」という。)は、令和3年8月19日になされた手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1〜9に記載された事項により特定される発明であり、このうち、本願発明1は、以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
第1コンテンツを画面に表示する表示制御手順と、
スクロール操作がなされた場合に、前記画面中の所定の表示領域のうちスクロール方向の端部領域には第2のコンテンツを表示することなく、前記所定の表示領域のうちのスクロール方向とは逆方向の端部領域に第2コンテンツを表示するコンテンツ表示手順と、
をコンピュータに実行させ、
前記画面中の所定の表示領域のうちスクロール方向の一方の端部領域である第1の端部領域に表示される第2コンテンツと、前記第1の端部領域の反対側にある第2の端部領域に表示される第2コンテンツは異なる内容の画像であり、前記第1の端部領域及び前記第2の端部領域に表示される2つの第2コンテンツは一対の関連画像であり、
前記第2コンテンツは動画であり、
前記コンテンツ表示手順は、前記第2コンテンツの表示が所定の条件を満たした場合に、前記第2コンテンツの再生位置を記録し、前記スクロール操作によって再び前記第2コンテンツが表示された場合には、記録した前記再生位置から前記第2コンテンツの再生を開始する、
処理であることを特徴とする情報表示プログラム。」

また、本願発明2〜6は、本願発明1を減縮したプログラムの発明であり、本願発明7は、本願発明1を「方法」の発明として特定したものであり、本願発明8は、本願発明1を「情報表示装置」の発明として特定したものであり、本願発明9は、本願発明1を「配信装置」の発明として特定したものである。

第5 当審拒絶理由の理由1及び2について

当審では、請求項1〜12に対し、上記「第3 1.」で示した拒絶の理由を通知しているが、令和3年8月19日になされた手続補正において、請求項1の「同一データではない」との記載が削除され、請求項1と同様の記載があった請求項10〜12の「同一データではない」との記載も削除された結果、この拒絶理由は解消した。

第6 引用文献、引用発明等

1.令和3年6月15日付けの拒絶理由(当審拒絶理由)に引用された引用文献

(1)引用文献1、引用発明1について
当審拒絶理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審付与。以下同様。)

「【0005】
しかしながら、従来の技術では、主コンテンツを表示しているWEBブラウザ内に副コンテンツ(広告)が表示されることにより、ユーザが閲覧しようとしている主コンテンツの一部を副コンテンツ(広告)が隠してしまうおそれがあった。この結果、ユーザが副コンテンツ(広告)に対して不快感を持ってしまうおそれがあった。
【0006】
これらの問題に鑑みて、本発明は、主コンテンツが副コンテンツの表示により隠されることに起因するユーザの不快感を解消又は軽減する観点から、適度な誘目度で副コンテンツを表示することが出来るプログラム、方法および情報端末を提供することを目的とする。」

「【0027】
第2サーバ120は、コンピュータ(CPU等の演算処理装置並びに主記憶装置、副記憶装置、及び補助記憶装置等の記憶装置を備えている。)により構成されている。第2サーバ120は、クライアントからのリンク付コンテンツ取得要求を受信し、商品サイトへのリンクを含む広告画像等のリンク付コンテンツC3を含むレスポンスR2をクライアントに送信する第2コンテンツ配信部121を備える。」

「【0029】
(クライアント群の構成)
PC210は、家庭用ネットワークに接続されたコンピュータ(情報を表示する表示画面、CPU等の演算処理装置並びに主記憶装置、副記憶装置、及び補助記憶装置等の記憶装置を備えている。)により構成されている。PC210には、PC用ブラウザ211がインストールされている。PC用ブラウザ211は、PC210の入力装置(マウス、キーボード等)を通じたユーザの操作に基づき、各サーバと通信を行い、各サーバから受信した情報を所定の形式でPC210の出力装置に出力(表示画面に表示)するように構成されている。なお、PC210が本発明の「情報端末」に相当し、PC用ブラウザ211が本発明の「表示手段」に相当する。
【0030】
PC用ブラウザ211がダウンロードしたプログラムC2をPC210が読み込むことにより、PC210が後述のリンク付コンテンツ表示・非表示処理を実行するコンテンツ呼出部212として機能する。」

「【0032】
(リンク付コンテンツ表示・非表示処理)
PC用ブラウザ211が主コンテンツC1及びプログラムC2をダウンロードしてPC210のメモリ等の記憶装置にプログラムC2を記憶させた時点で、当該プログラムC2を記憶装置から読み出したPC210の制御装置が本処理を実行する。この結果、PC210がコンテンツ呼出部212として機能する。同時に、PC用ブラウザ211は、その表示エリアAに、その表示エリアAの大きさと主コンテンツC1の内容とに応じて、主コンテンツC1の一部または全部を表示する。」

「【0035】
コンテンツ呼出部212は、主コンテンツC1の全部を表示するために、スクロールが必要か否かを判定する(図2/STEP104)。・・・(省略)・・・」

「【0037】
スクロールが必要と判断された場合(図2/STEP104‥YES)、コンテンツ呼出部212は、PC用ブラウザ211によりスクロールが開始されたか否かを判定する(図2/STEP106a)。・・・(省略)・・・」

「【0040】
当該判定結果が肯定的である場合(図2/STEP106a‥YES)、コンテンツ呼出部212は、主コンテンツC1に対してその表示範囲がずれる方向であるスクロールの方向(本発明の「指定方向」に相当する。)を取得する(図2/STEP108)。
・・・(省略)・・・
【0041】
コンテンツ呼出部212は、PC用ブラウザ211の表示エリアAのうち、指定方向に偏在している指定領域とは異なる領域に、図2/STEP102で取得したリンク付コンテンツC3を主コンテンツC1に重畳して表示する(図2/STEP110a)。
・・・(省略)・・・
【0042】
より具体的には、図3(b)に示されるように、下方向へのスクロールが行われている場合、コンテンツ呼出部212は、PC用ブラウザ211の表示エリアAのうち、指定領域U1とは異なる領域である上側領域A1(指定方向D1に垂直な方向に延在する線分L1により、表示エリアAが分割された際に、当該指定方向D1とは逆方向側の分割領域(の一部領域))にリンク付コンテンツC3を表示する。
【0043】
また、上記に代えて、図3(c)に示されるように、上方向へのスクロールが行われている場合、コンテンツ呼出部212は、PC用ブラウザ211の表示エリアAのうち、指定領域U2とは異なる領域である下側領域A2(基準点APから周方向に等間隔で放射状に延びる複数の線分L2〜L5により画定される複数の象限O1〜O4のうち、当該基準点APから指定方向D2と逆方向に延びるベクトルV2が存在する象限O3に相当する領域(の一部領域))にリンク付コンテンツC3を表示してもよい。」

「【図3】



したがって、上記引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「PC210は、コンピュータにより構成され、PC210には、PC用ブラウザ211がインストールされており、PC用ブラウザ211は、PC210の入力装置を通じたユーザの操作に基づき、各サーバと通信を行い、各サーバから受信した情報を所定の形式でPC210の表示画面に表示するように構成され、(【0029】)
PC用ブラウザ211がダウンロードしたプログラムC2をPC210が読み込むことにより、PC210が後述のリンク付コンテンツ表示・非表示処理を実行し、(【0030】)
リンク付コンテンツ表示・非表示処理として、(【0032】)
PC用ブラウザ211が主コンテンツC1及びプログラムC2をダウンロードして、当該プログラムC2をPC210の制御装置が実行し、PC210がコンテンツ呼出部212として機能し、PC用ブラウザ211は、その表示エリアAに、主コンテンツC1の一部または全部を表示し、(【0032】)
コンテンツ呼出部212は、主コンテンツC1の全部を表示するために、スクロールが必要か否かを判定し、スクロールが必要と判断された場合、コンテンツ呼出部212は、PC用ブラウザ211によりスクロールが開始されたか否かを判定し、(【0035】、【0037】)
当該判定結果が肯定的である場合、コンテンツ呼出部212は、主コンテンツC1に対してその表示範囲がずれる方向であるスクロールの方向(指定方向)を取得し、(【0040】)
コンテンツ呼出部212は、PC用ブラウザ211の表示エリアAのうち、指定方向に偏在している指定領域とは異なる領域に、商品サイトへのリンクを含む広告画像等のリンク付コンテンツC3を主コンテンツC1に重畳して表示し、(【0027】、【0041】)
より具体的には、下方向へのスクロールが行われている場合、コンテンツ呼出部212は、PC用ブラウザ211の表示エリアAのうち、指定領域U1とは異なる領域である上側領域A1にリンク付コンテンツC3を表示し、(【0042】)
また、上方向へのスクロールが行われている場合、コンテンツ呼出部212は、PC用ブラウザ211の表示エリアAのうち、指定領域U2とは異なる領域である下側領域A2にリンク付コンテンツC3を表示する、(【0043】)
リンク付コンテンツ表示・非表示処理をPC210に実行させるプログラムC2。」

(2)引用文献2、引用発明2について
当審拒絶理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の従来技術では、コンテンツに係る情報の訴求効果が必ずしも高いとは言えない場合がある。例えば、従来技術では、ウェブページのスクロール操作が行われた場合に、コンテンツを表示する面積を増大させるので、ウェブページを注視する利用者のコンテンツに対する印象が悪化する恐れがある。
【0005】
本願は、上記に鑑みてなされたものであって、コンテンツにかかる情報の訴求効果を向上させる情報表示装置、情報表示方法、情報表示プログラムおよび配信装置を提供することを目的とする。」

「【0010】
〔1.端末装置100の一例〕
まず、図1を用いて、情報表示装置の一例である端末装置100が実行する処理の一例について説明する。図1は、実施形態に係る端末装置の一例を示す図である。図1では、端末装置100によって、ウェブページC10と、コンテンツC20とが表示される例を示す。」

「【0016】
コンテンツC20は、ウェブページC10とともに表示されるコンテンツであり、例えば、広告に係るコンテンツ(以下、広告コンテンツと記載する。)である。例えば、コンテンツC20は、複数のコンテンツC21、C22を有する。コンテンツC21は、例えば、広告に係るアイコンが上端に配置され、各種の広告文が配置された画像である。また、コンテンツC22は、例えば、広告に係るアイコンが下端に配置され、各種の広告文が配置された画像である。」

「【0056】
ここで、端末装置100は、利用者の指F10がウェブページC10上で上スクロール操作を行った場合は、上スクロール操作に従って、ウェブページC10を画面上方向にスクロールさせるとともに、同じ量だけ、コンテンツC21、C22の可視領域を画面上方向へと移動させる。
【0057】
この結果、端末装置100は、第2状態に示すように、ウェブページC10の表示領域を画面上方向へと移動させるとともに、コンテンツC21の表示領域を狭め、コンテンツC22の表示領域を広げるといった画面を表示する。すなわち、端末装置100は、コンテンツC20の画面占有率を一定に保ったままで、コンテンツC21、C22の画面占有率を個別に変更する。」

「【0142】
〔8−5.コンテンツについて〕
なお、上述した例では、端末装置100は、コンテンツC21、C22を画面上の対になる位置に配置したが、かかるコンテンツC21、C22は、同一の広告主や配信元に関連するコンテンツであってもよく、異なる広告主や配信元に関連するコンテンツであってもよい。また、端末装置100は、同一のデータをコンテンツC21、C22として表示してもよい。すなわち、上述したコンテンツC21、C22とは、表示される画像や動画像等の内容が異なるコンテンツを意味するのではない。つまり、端末装置100は、同一のデータをコンテンツC21、C22として表示してもよく、同一のデータのうち異なる部分をコンテンツC21、C22として表示してもよい。このような処理を行った場合、例えば、端末装置100は、ウェブページC10に対するスクロール操作に応じて、ある一つのコンテンツの画面占有率が変化するといった表示態様も実現可能である。
【0143】
すなわち、端末装置100は、ウェブページC10に対するスクロール操作に応じて、コンテンツC20の画面占有率を所定の範囲内に保つのであれば、任意の態様で、コンテンツC20を構成するコンテンツの画面占有率を変更してよい。例えば、端末装置100は、ある一つの画像を構成する2つの画像であって、一部の領域が重複する画像をコンテンツC21、C22として配置する。そして、端末装置100は、ウェブページC10に対するスクロール操作に応じて、ウェブページC10の表示範囲を移動させつつ、コンテンツC20の画面占有率を所定の範囲内に保ちつつ、各コンテンツC21、C22の画面占有率を変更する。このような処理を実行した場合、端末装置100は、あたかもウェブページC10の表示領域により1つの画像が分割して表示され、ウェブページC10のスクロール操作により、画像を分割する位置が変化するといった複雑な態様で、コンテンツC20を表示することができる。」

「【図1】



したがって、上記引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「ウェブページC10と、コンテンツC20とが表示される端末装置100において、
コンテンツC20は、ウェブページC10とともに表示されるコンテンツであり、例えば、広告コンテンツであり、複数のコンテンツC21、C22を有し、コンテンツC21は、例えば、広告に係るアイコンが上端に配置され、各種の広告文が配置された画像であり、また、コンテンツC22は、例えば、広告に係るアイコンが下端に配置され、各種の広告文が配置された画像であり、
利用者の指F10がウェブページC10上で上スクロール操作を行った場合は、上スクロール操作に従って、ウェブページC10を画面上方向にスクロールさせるとともに、同じ量だけ、コンテンツC21、C22の可視領域を画面上方向へと移動させ、コンテンツC21の表示領域を狭め、コンテンツC22の表示領域を広げるといった画面を表示し、
コンテンツC21、C22を画面上の対になる位置に配置し、かかるコンテンツC21、C22は、同一の広告主や配信元に関連するコンテンツであってもよく、
端末装置100は、同一のデータをコンテンツC21、C22として表示してもよく、同一のデータのうち異なる部分をコンテンツC21、C22として表示してもよく、例えば、端末装置100は、ある一つの画像を構成する2つの画像であって、一部の領域が重複する画像をコンテンツC21、C22として配置する、
端末装置100。」

2.原査定の拒絶の理由に引用された引用文献

(1)引用文献Cの記載事項について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献Cには、図面とともに次の事項が記載されている。

「【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本願に係る配信装置、表示制御装置、表示制御方法、および表示制御プログラムの実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態により本願に係る配信装置、表示制御装置、表示制御方法、および表示制御プログラムが限定されるものではない。
【0011】
[1.表示制御処理]
まず、図1A、図1B、および図1Cを用いて、実施形態に係る表示制御処理の一例について説明する。図1A、図1B、および図1Cは、実施形態に係る表示制御処理の一例を示す図である。
【0012】
ここでは、ブラウザ(例えば、ウェブブラウザ)を有する端末装置(表示制御装置の一例)によって、動画の広告コンテンツ(以下、「動画コンテンツC」と記載する)が配置されるページW(例えば、ウェブページW)の一部がブラウザの表示領域に表示される例を示す。以下、ページWのうちブラウザに表示される領域を可視領域VAと記載する。
【0013】
図1Aに示すように、ページWは、第1領域AR1と、第2領域AR2とを含む。さらに、ページWは、第1領域AR1と第2領域AR2との間に設定される第3領域AR3を含む。なお、図1Aに示すページWの構成は一例であり、これに限定されるものではない。ページWは、第1領域AR1と第2領域AR2とが隣接する位置に設定され、第1領域AR1および第2領域AR2が設定されない他の位置に第3領域AR3が設定されてもよい。
【0014】
第1領域AR1および第2領域AR2は、例えば、広告の動画コンテンツCの再生が行われる広告枠である。なお、ここでは、広告枠が第1領域AR1および第2領域AR2の2枠である場合について説明するが、広告枠は3枠以上であってもよい。
【0015】
第3領域AR3には、例えば、ニュースなどの記事(投稿メッセージの一例)が時系列に配列される。各記事は、例えば、1以上のセンテンスや1以上のパラグラフを含む。なお、第3領域AR3に配列されるコンテンツ情報は、時系列に配列される投稿メッセージに限定されるものではなく、例えば、スマートデバイス向けのUI(User Interface)コンテンツなど、任意のコンテンツ情報であってもよい。
【0016】
図1Aに示す例では、ページWの縦サイズは、ブラウザの表示領域の縦サイズよりも長い。このためブラウザの表示領域内に位置するページWの領域が表示され、ブラウザの表示領域外に位置するページの領域は表示されない。端末装置のユーザ(以下、単に「ユーザ」と記載する)は、例えば、スクロール操作によって、ページのうちブラウザの表示領域に位置させる領域を変更することができる。
【0017】
このため、動画コンテンツCは、ユーザによるスクロールのタイミングによっては、広告の内容を適切にユーザへ伝えることができず、広告効果が低減することがある。例えば、図1Aに示すように、第1領域AR1が可視領域VA内に位置する状態で、15秒間の車の動画コンテンツCが5秒間再生された時点では、動画コンテンツCの主要な内容である車の映像が一部しか表示されていない。
【0018】
このため、この時点でユーザがスクロール操作を行って、可視領域VAを第3領域AR3へ移動させた場合、図1Bに示すように、動画コンテンツCの再生開始から10秒後に表示される車全体の映像をユーザに閲覧させることができずに広告効果が低減する。
【0019】
そこで、本実施形態に係る表示制御処理では、動画コンテンツCの再生途中に、第1領域AR1が可視領域VA外になり、その後、第2領域AR2が可視領域VA内になった場合に、閲覧が中断された動画コンテンツCの続きを端末装置によって再生させる。
【0020】
具体的には、本実施形態では、端末装置に表示されるページWに設定される動画コンテンツCを制御する制御情報(プログラム)によって端末装置に以下の手順を実行させることにより、閲覧が中断された動画コンテンツCの続きを端末装置によって再生させる。」

「【0024】
これにより、例えば、図1Bに示すように、動画コンテンツCの閲覧が再生開始から10秒の時点で中断されても、図1Cに示すように、第2領域AR2が可視領域内になった場合に、動画コンテンツCを再生開始後10秒の時点から再生させることができる。」


「【図1A】



「【図1B】



「【図1C



したがって、上記引用文献Cには、以下の技術的事項が記載されていると認められる。

「表示制御プログラムの実施形態に係る表示制御処理として、
ブラウザを有する端末装置によって、動画の広告コンテンツ(動画コンテンツC)が配置されるページWの一部がブラウザの表示領域に表示され、ページWのうちブラウザに表示される領域を可視領域VAとし、
ページWは、第1領域AR1と、第2領域AR2とを含み、第1領域AR1および第2領域AR2は、例えば、広告の動画コンテンツCの再生が行われる広告枠であり、広告枠は3枠以上であってもよく、
ページWの縦サイズは、ブラウザの表示領域の縦サイズよりも長く、このためブラウザの表示領域内に位置するページWの領域が表示され、ブラウザの表示領域外に位置するページの領域は表示されず、端末装置のユーザは、スクロール操作によって、ページのうちブラウザの表示領域に位置させる領域を変更することができ、
動画コンテンツCの再生途中に、第1領域AR1が可視領域VA外になり、その後、第2領域AR2が可視領域VA内になった場合に、閲覧が中断された動画コンテンツCの続きを端末装置によって再生させ、
具体的には、端末装置に表示されるページWに設定される動画コンテンツCを制御する制御情報(プログラム)によって端末装置に、閲覧が中断された動画コンテンツCの続きを端末装置によって再生させる、
表示制御処理を実行させる表示制御プログラム。」

(2)引用文献Dの記載事項について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献Dには、次の事項が記載されている。

「ITスキル習得サイト
・・・(中略)・・・
ホームページの広告の配置を今どきにする!」
(引用文献Dのウェブサイト冒頭)




(引用文献Dのウェブサイト冒頭)

上記の特に赤色の破線で囲われた部分に注目すると、引用文献Dには、複数の広告画像が含まれるホームページの表示画面において、当該複数の広告画像は、「印鑑」に関連する画像であって、同一データではない異なる内容の画像が表示されていることが、見て取れる。

第7 当審拒絶理由の理由3について

1.本願発明1について

(1)対比
本願発明1と上記引用発明1とを対比すると、次のことがいえる。

ア 引用発明1の「主コンテンツC1」は、本願発明1の「第1コンテンツ」に相当する。また、引用発明1の「PC210」の「表示画面」は、本願発明1の「画面」に相当する。そして、引用発明1では、「プログラムC2をPC210の制御装置が実行し、PC210がコンテンツ呼出部212として機能」することにより、「その表示エリアAに、主コンテンツC1の一部または全部を表示」することから、引用発明1は、本願発明1の「第1コンテンツを画面に表示する表示制御手順」を含むといえる。

イ 引用発明1の「スクロールが行われている場合」は、本願発明1の「スクロール操作がなされた場合」に相当する。また、引用発明1の「表示エリアA」は、「PC210」の「表示画面」に「主コンテンツC1」や「リンク付コンテンツC3」が表示される「領域」であることから、本願発明1の「画面中の所定の表示領域」に相当する。さらに、引用発明1の「商品サイトへのリンクを含む広告画像等」である「リンク付コンテンツC3」は、本願発明1の「第2コンテンツ」に相当する。

ウ 引用発明1の「指定領域」は、「スクロールの方向(指定方向)」に「偏在している」領域のことであることから、本願発明1の「スクロール方向の端部領域」に相当する。また、引用発明1の「指定領域U1とは異なる領域である上側領域A1」及び「指定領域U2とは異なる領域である下側領域A2」は、いずれも本願発明1の「スクロール方向とは逆方向の端部領域」に相当する。
そして、引用発明1は、前記「コンテンツ呼出部212」により「下方向へのスクロールが行われている場合、」「表示エリアAのうち、指定領域U1とは異なる領域である上側領域A1にリンク付コンテンツC3を表示し、」「また、上方向へのスクロールが行われている場合、」「表示エリアAのうち、指定領域U2とは異なる領域である下側領域A2にリンク付コンテンツC3を表示する」ものであることから、上記ア及びイを踏まえると、引用発明1は、本願発明1の「スクロール操作がなされた場合に、前記画面中の所定の表示領域のうちスクロール方向の端部領域には第2のコンテンツを表示することなく、前記所定の表示領域のうちのスクロール方向とは逆方向の端部領域に第2コンテンツを表示するコンテンツ表示手順」を含むといえる。

エ 引用発明1の「PC210」は、「コンピュータにより構成」されるものであり、上記ア及びウで示した「コンテンツ呼出部212」としての「機能」を実行するものであるから、本願発明1の「コンピュータ」に相当する。

オ 上記イ及びウを踏まえると、引用発明1の前記「スクロールが行われている場合」の「表示エリアAのうち、指定領域U1とは異なる領域である上側領域A1」及び「表示エリアAのうち、指定領域U2とは異なる領域である下側領域A2」は、引用文献1の【図3】に表されるように、それぞれ「表示エリアA」の「上側」及び「下側」の位置関係であり、互いに「反対側」に位置しているといえることから、それぞれ、本願発明1の「前記画面中の所定の表示領域のうちスクロール方向の一方の端部領域である第1の端部領域」及び「前記第1の端部領域の反対側にある第2の端部領域」に相当する。よって、引用発明1の上記「表示エリアA」の「上側領域A1」に表示される「リンク付コンテンツC3」、及び、上記「表示エリアA」の「下側領域A2」に表示される「リンク付コンテンツC3」は、それぞれ、本願発明1の「前記画面中の所定の表示領域のうちスクロール方向の一方の端部領域である第1の端部領域に表示される第2コンテンツ」、及び、「前記第1の端部領域の反対側にある第2の端部領域に表示される第2コンテンツ」に相当する。

カ 引用発明1の「リンク付コンテンツC3」は、「商品サイトへのリンクを含む広告画像等」のコンテンツであることから、「画像」であるといえる。
したがって、上記オを踏まえると、引用発明1と、「前記画面中の所定の表示領域のうちスクロール方向の一方の端部領域である第1の端部領域に表示される第2コンテンツと、前記第1の端部領域の反対側にある第2の端部領域に表示される第2コンテンツは異なる内容の画像であり、前記第1の端部領域及び前記第2の端部領域に表示される2つの第2コンテンツは一対の関連画像である」本願発明1とは、「前記画面中の所定の表示領域のうちスクロール方向の一方の端部領域である第1の端部領域に表示される第2コンテンツと、前記第1の端部領域の反対側にある第2の端部領域に表示される第2コンテンツは画像である」点で共通している。

キ 引用発明1の「プログラムC2」は、「PC210」が「実行」することで、当該「PC210」を「コンテンツ呼出部212として機能」させ、上記ア及びウで示したように、「PC210」の「表示画面」の「表示エリアA」に「主コンテンツC1」や「リンク付コンテンツC3」を表示させることから、後述する相違点を除き、本願発明1の「情報表示プログラム」に相当する。

(2)一致点・相違点
以上のことから、本願発明1と引用発明1とは、以下の点において一致、及び相違する。

<一致点>
「第1コンテンツを画面に表示する表示制御手順と、
スクロール操作がなされた場合に、前記画面中の所定の表示領域のうちスクロール方向の端部領域には第2のコンテンツを表示することなく、前記所定の表示領域のうちのスクロール方向とは逆方向の端部領域に第2コンテンツを表示するコンテンツ表示手順と、
をコンピュータに実行させ、
前記画面中の所定の表示領域のうちスクロール方向の一方の端部領域である第1の端部領域に表示される第2コンテンツと、前記第1の端部領域の反対側にある第2の端部領域に表示される第2コンテンツは画像である、
ことを特徴とする情報表示プログラム。」

<相違点>
(相違点1)
画面中の所定の表示領域のうちスクロール方向の一方の端部領域である第1の端部領域に表示される第2コンテンツと、前記第1の端部領域の反対側にある第2の端部領域に表示される第2コンテンツは、本願発明1では、「異なる内容の画像であり、前記第1の端部領域及び前記第2の端部領域に表示される2つの第2コンテンツは一対の関連画像」であるのに対し、引用発明1では、どのような関係の画像であるか特定されていない点。

(相違点2)
前記第2コンテンツは、本願発明1では、「動画」であって、「前記コンテンツ表示手順は、前記第2コンテンツの表示が所定の条件を満たした場合に、前記第2コンテンツの再生位置を記録し、前記スクロール操作によって再び前記第2コンテンツが表示された場合には、記録した前記再生位置から前記第2コンテンツの再生を開始する」ものであるのに対し、引用発明1では、「動画」との特定はされておらず、また、コンテンツ表示手順として、本願発明1のような、「前記第2コンテンツの表示が所定の条件を満たした場合に、前記第2コンテンツの再生位置を記録し、前記スクロール操作によって再び前記第2コンテンツが表示された場合には、記録した前記再生位置から前記第2コンテンツの再生を開始する」との特定はされていない点。

(2)相違点についての検討
事案に鑑みて、上記相違点2について先に検討すると、相違点2に係る本願発明1の「前記第2コンテンツは動画であり、前記コンテンツ表示手順は、前記第2コンテンツの表示が所定の条件を満たした場合に、前記第2コンテンツの再生位置を記録し、前記スクロール操作によって再び前記第2コンテンツが表示された場合には、記録した前記再生位置から前記第2コンテンツの再生を開始する」との構成は、上記「第6 1.(1)」、「第6 1.(2)」及び「第6 2.(2)」でそれぞれ示した引用文献1、引用文献2及び引用文献Dのいずれにも記載も示唆もされていない。

一方、上記「第6 2.(1)」で示した引用文献Cには、第1領域AR1及び第2領域AR2を含む複数の広告の動画コンテンツCの再生が行われる広告枠が配置されたページWの一部をブラウザの可視領域VAである表示領域に表示する表示制御プログラムの表示制御処理として、動画コンテンツCの再生途中に、第1領域AR1が可視領域VA外になり、その後、第2領域AR2が可視領域VA内になった場合に、閲覧が中断された動画コンテンツCの続きを端末装置によって再生させる技術的事項が開示されている。

引用発明1の「リンク付コンテンツC3」(第2コンテンツ)と、引用文献Cの「広告の動画コンテンツ」は、ともに「広告」のコンテンツである点で共通しているものの、
引用文献Cにおける広告の動画コンテンツCが配置されるのは、スクロール操作の対象であるページWの中に配置された、第1領域AR1、第2領域AR2等の広告枠であり、これらの広告枠における動画コンテンツCの閲覧の中断や続きの再生を行う態様を、引用発明1における、スクロールされる「主コンテンツC1」(第1コンテンツ)とは別のコンテンツであって、それ自体はスクロールされない「第2コンテンツ」が表示される領域である「画面中の所定の表示領域のうちスクロール方向の一方の端部領域である第1の端部領域」と、「前記第1の端部領域の反対側にある第2の端部領域」における「第2コンテンツ」の表示態様に、適用する動機付けは存在しない。

すなわち、引用発明1と引用文献Cは、それぞれの広告のコンテンツについて、スクロール操作がなされるコンテンツとの関係が異なるため、広告のコンテンツの表示の態様や効果が異なることから、引用発明1の「画面中の所定の表示領域のうちスクロール方向の一方の端部領域である第1の端部領域」と、「前記第1の端部領域の反対側にある第2の端部領域」における広告のコンテンツである「リンク付きコンテンツC3」の表示態様に、上記引用文献Cの技術的事項に開示された第1領域AR1、第2領域AR2等の広告枠の表示態様を適用することは想定することができず、上記相違点2に係る本願発明1の上記構成を容易に想到することはできない。
また、相違点2に係る本願発明1の上記構成は、本願出願前に周知技術であるともいえない。

したがって、相違点1について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明1、2、引用文献C及びDに記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2〜9について

本願発明2〜6は、上記相違点2に係る本願発明1の上記構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明1、2、引用文献C及びDに記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
また、本願発明7は、本願発明1を「方法」の発明として特定したものであり、本願発明8は、本願発明1を「情報表示装置」の発明として特定したものであり、本願発明9は、本願発明1を「配信装置」の発明として特定したものであるから、本願発明7、8及び9のいずれも、上記相違点2に係る本願発明1の上記構成と同一の構成を備えるものであるため、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明1、2、引用文献C及びDに記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第8 原査定についての判断

令和3年8月19日になされた手続補正により、補正後の請求項1〜9は、上記相違点2に係る構成を有するものとなった。当該構成は、原査定における引用文献A、B(当審拒絶理由における引用文献1、2)及びDには記載されておらず、本願出願前における周知技術でもない。また、引用文献Cに記載された技術的事項を引用文献Aに記載された発明に適用する動機付けもないので、引用文献A、Cに基づいて、当該構成を容易に想到することができたとも認められない。よって、本願発明1〜9は、当業者であっても、原査定における引用文献A〜Dに基づいて容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第9 むすび

以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-01-04 
出願番号 P2018-020902
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 ▲吉▼田 耕一
特許庁審判官 角田 慎治
富澤 哲生
発明の名称 情報表示プログラム、情報表示方法、情報表示装置、及び配信装置  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  

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