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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1381369
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-10-08 
確定日 2022-01-25 
事件の表示 特願2015−248555「パラメータの設定」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 7月11日出願公開、特開2016−126781、請求項の数(13)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年12月21日(パリ条約による優先権主張2014年12月29日、欧州特許庁)の出願であって、令和元年11月7日付けで拒絶理由が通知され、令和2年5月11日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、令和2年6月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対して令和2年10月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に誤訳訂正書が提出され、その後、令和3年8月10日付けで当審より拒絶理由が通知され(以下、「当審拒絶理由」という。)、令和3年11月17日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(令和2年6月29日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1 (実施可能要件明確性)本願請求項6−15に係る発明は,特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載が不明であるから,本願は,特許法第36条第4項第1号及び第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

2 (新規性)本願請求項1−3、5に係る発明は、以下の引用文献Aに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

3 (進歩性)本願請求項1−5に係る発明は、以下の引用文献A−Cに基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
A.特開2009−266203号公報
B.特開2002−7023号公報
C.米国特許第8250488号明細書

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

1 (明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
請求項1には、「起動」が維持されることが記載されている。 しかし、「起動」とは、どのような処理であるのかが不明確である。 請求項1を引用する請求項2−15についても同様である。

2 (進歩性)本願請求項1に係る発明は、以下の引用文献1、3に基づいて、本願請求項2−4に係る発明は、以下の引用文献1−3に基づいて、本願請求項5−15に係る発明は、以下の引用文献1−4に基づいて、本願請求項1−15に係る発明は、以下の引用文献1−4に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

1.特開2009−266203号公報(拒絶査定時の引用文献A)
2.特開2002−7023号公報(拒絶査定時の引用文献B)
3.米国特許第8250488号明細書(拒絶査定時の引用文献C)
4.米国特許公開第2014/0245226号明細書(当審において新たに引用した文献)

第4 本願発明
本願請求項1−13に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」−「本願発明13」という。)は、令和3年11月17日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1−13に記載された事項により特定される発明であって、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
【請求項1】
パラメータを設定するコンピュータ実施方法であって、
グラフィカルユーザインターフェース上の第1の地点での第1のユーザ入力を検出すること(S20)と、
前記グラフィカルユーザインターフェース上に前記第1の地点を中心としてパイメニューを表示すること(S30)であって、前記パイメニューは、各々が、それぞれのカスタマイズ可能なパラメータに関連付けられた2つの角度セクタを含む、該表示することと、
一方の角度セクタ内で前記グラフィカルユーザインターフェース上の第2の地点での第2のユーザ入力を検出すること(S40)であって、前記第2のユーザ入力は維持される、該検出することと、
前記第2のユーザ入力の検出がされたときに、前記2つの角度セクタ間で、前記一方の角度セクタ上で該第2のユーザ入力を維持したままでその後続の動作を実行すること(S50)であって、前記一方の角度セクタは、前記第2のユーザ入力が前記ユーザによって維持されている間じゅう、起動が維持され、前記起動とは、前記ユーザによって実行される動作は、前記起動されている一方の角度セクタのみに関することになり、前記第2のユーザ入力が維持されている間じゅう、他方の角度セクタに関連付けられた前記カスタマイズ可能なパラメータの値が選択することができないように、前記後続の動作としてたとえ前記第2のユーザ入力が前記一方の角度セクタから前記他方の角度セクタへ移動しても、前記他方の角度セクタ内において前記第2のユーザ入力が維持されている間じゅうは、前記他方の角度セクタは起動されないままでいる、ことを意味する、該実行することと、
前記第2のユーザ入力を前記第2の地点から第3の地点に変位することによって、前記カスタマイズ可能なパラメータの値の中からカスタマイズ可能なパラメータの値を選択すること(S70)であって、前記第2の地点から前記第3の地点への変位は、前記起動されている一方の角度セクタの二等分に対してほぼ直角である、該選択することと、
前記第2のユーザ入力を解除し、それによって前記カスタマイズ可能なパラメータの前記選択された値を有効にすること(S90)と
を含むことを特徴とするコンピュータ実施方法。」

なお、本願発明2−13の概要は以下のとおりである。
本願発明2−9は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明10は、本願発明1−9に対応するウィジェットの発明である。
本願発明11−12は、本願発明10を減縮した発明である。
本願発明13は、本願発明1−9に対応するシステムの発明である。

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1及び引用発明
(1) 引用文献1
当審拒絶理由に引用した引用文献1には、図面とともに、以下の記載がある(下線は、特に着目した箇所を示す。以下同様。)。

ア 段落【0024】
「【0024】
図2に最も良く示されているように、本発明の一実施形態によるラジアルコントロールメニュー10は複数のウェッジ12を含んでいる。各ウェッジ12は、各々が最大値および最小値を表わす最大境界14および最小境界16により画定され、その間で対応する変数の値を設定することができる。例えば、ウェッジAが明度変数を表わす場合、明度変数の値は、最大境界14で表わされる100%と最小境界16で表わされる0%の間で設定することができる。対応する変数が最大値と最小値の間のどこに設定されるかをユーザーに対して視覚的にフィードバックすべく、各ウェッジ12に可動インジケータ18が配置されている。図2に示すように、各々の可動インジケータ18は、ラジアルコントロールメニュー10の原点20から各々のウェッジ12まで伸びる半径方向の線であってよい。可動インジケータ18は、ラジアルコントロールメニュー10の原点20の回りを角度的に変位可能である。例えばユーザーが変数の設定/更新に関する意思を変えた場合にラジアルコントロールメニュー10の原点20を選択して、ラジアルコントロールメニュー10を解除することができる。各々のウェッジ12は好適には、各々が同一サイズであるように一様な角度量を定める。しかし、1個の変数項目といくつかの固定項目を混在させる場合のように、可変項目を大きくして値を選択し易くしながら、より多くの項目を許容するために固定項目をより小さくすることが望ましい場合があり得るので、これは必須ではない。この構成は図6Cに最も良く示され、以下に説明する。」

イ 【図2】




ウ 段落【0026】
「【0026】
図3Aに最も良く示されているように、ウェッジ12内の可動インジケータ18は、対応する変数の値を連続的に調整すべく角度的に変位可能である。ユーザーは、入力装置22(図10参照)を用いて可動インジケータ18を選択し、そのインジケータ18を原点20の回りを角度的に移動させることができる。入力装置22は、マウス、キーボード、スタイラス、位置指示装置等であってよい。例えば、入力装置22がマウスである場合、マウスをクリックし、次いで可動インジケータ18を保持して所望の位置までドラッグすることにより可動インジケータ18を選択することができる。次いでマウスボタンを離して可動インジケータ18を設定し、対応する変数を新たな値に設定することができる。」

エ 段落【0028】
「【0028】
当業者には理解されるように、グラフィカルユーザーインターフェース26は、ユーザーが入力装置22(図10参照)を用いてディスプレイ32(図10参照)と対話可能な処理ユニット82(図10参照)上で動作するソフトウェアまたはコンピュータプログラムを指す。グラフィカルユーザーインターフェース26は、特定のアプリケーション専用に設計されていても、あるいはMicrosoft Windows(登録商標)が提供するインターフェースのような標準のオペレーティング・システム・グラフィカル・ユーザー・インターフェースであってもよい。入力装置22は、Wacom社製のデジタイザタブレット、グラフィックスタブレット、あるいはスタイラスまたはポインタに関連付けられたペンタブレット装置であってよい。」

オ 【図3】(図3A−図3Dのうち「図3A」のみ摘記。)




カ 段落【0056】−【0059】
「【0056】
図2〜6Cの実施形態においてウェッジ、項目、または変数の値を選択可能ないくつかの異なる種類の方法がある。簡潔のため、これらの方法を図2に示すラジアルコントロールメニュー10、および図5Aに示すラジアルコントロールメニュー40を参照して説明する。しかし、これらの方法またはこれらの方法に対する変更が本明細書に図示および記述したどのラジアルメニューおよび/またはウェッジと共に用いてもよい点を理解されたい。
【0057】
入力装置22(図10参照)においてメニュー起動コマンドが受理されたならば、入力装置22と通信するグラフィカルユーザーインターフェース26はメニュー起動コマンドに応答してラジアルコントロールメニュー10を表示する。図2のラジアルコントロールメニュー10は好適には、メニューが最初に表示された時にグラフィカルユーザーインターフェース26内でカーソル24が位置する場所にメニュー10の原点20が配置されるように表示される。これにより、ユーザーは入力装置22(図10参照)を最小限移動させるだけで、どのウェッジ12にも直ちにアクセスすることができる。
【0058】
メニュー起動コマンドは、入力装置22の特定のボタンに割り当てることができる。例えば、メニュー起動コマンドは、マウスの右または左ボタン、キーボードの特定のキー、デジタイザタブレットのスタイラスのボタンまたは入力、あるいはデジタイザタブレット本体に配置されたボタンに設定されていてよい。図7Aに最も良く示されているように、割り当てられたボタンの第1の選択によりステップS100においてメニュー10を起動して、ステップS102でディスプレイ上に表示させ、一方で割り当てられたボタンの第2の選択を用いてウェッジ12内で項目または値を選択、および/または可動インジケータ18を選択することができる。この場合、第2の選択がステップS104で保持されている間に可動インジケータ18をドラッグして、ステップS106で第2の選択が解除されたならばウェッジ12内の適当な位置が選択されるようにできる。
【0059】
メニュー項目/ウェッジ選択ボタンは、メニュー10の起動用に割り当てられたボタンとは異なっていてよい。この場合、メニュー10は、メニュー起動コマンドを発行すべく第1のボタンにより起動され、次いで入力装置22(図10参照)の別のボタンを用いて、可動インジケータ18を例えばクリック、ドラッグ、および解除することにより、可動インジケータ18を選択および/または移動させる。このようにして、2回のボタン選択操作(メニュー10の起動に1回、ウェッジ/項目/値の選択に1回)によりメニュー10を起動して、ウェッジ/項目を選択することができる。」

(2) 引用発明
したがって、上記引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「ラジアルコントロールメニュー10は複数のウェッジ12を含んでおり、
各ウェッジ12は、各々が最大値および最小値を表わす最大境界14および最小境界16により画定され、その間で対応する変数の値を設定することができ、対応する変数が最大値と最小値の間のどこに設定されるかをユーザーに対して視覚的にフィードバックすべく、各ウェッジ12に可動インジケータ18が配置されており、
各々の可動インジケータ18は、ラジアルコントロールメニュー10の原点20から各々のウェッジ12まで伸びる半径方向の線であって、
ウェッジ12内の可動インジケータ18は、対応する変数の値を連続的に調整すべく角度的に変位可能であり、ユーザーは、入力装置22を用いて可動インジケータ18を選択し、そのインジケータ18を原点20の回りを角度的に移動させることができ、
入力装置22がマウスである場合、マウスをクリックし、次いで可動インジケータ18を保持して所望の位置までドラッグすることにより可動インジケータ18を選択することができ、次いでマウスボタンを離して可動インジケータ18を設定し、対応する変数を新たな値に設定することができ、
グラフィカルユーザーインターフェース26は、ユーザーが入力装置22を用いてディスプレイ32と対話可能な処理ユニット82上で動作するソフトウェアまたはコンピュータプログラムを指し、
入力装置22においてメニュー起動コマンドが受理されたならば、入力装置22と通信するグラフィカルユーザーインターフェース26はメニュー起動コマンドに応答してラジアルコントロールメニュー10を表示し、メニューが最初に表示された時にグラフィカルユーザーインターフェース26内でカーソル24が位置する場所にメニュー10の原点20が配置されるように表示される、
ウェッジ、項目、または変数の値を選択可能な方法。」

2 引用文献2について
当審拒絶理由に引用した引用文献2には、図13−16に、以下の記載がある。

(1) 図13




(2) 図14




(3) 図15




(4) 図16




3 引用文献3について
当審拒絶理由に引用した引用文献3には、図面とともに、以下の記載がある。

(1) 3欄21−51行
「Since a distance that the cursor moves on a display often directly corresponds to movement of a user input device (e.g. a mouse, trackball, haptic device, touchpad, and electronic drawing tablet), a result of the current state of the art is increased sensitivity of the user input device based on a decreased distance of the cursor from the radial center 224 of the size slider GUI 216 on the display. This may be undesirable when a user wants very fine control of the size slider GUI 216 regardless of the distance of the cursor from the radial center 224 of the size slider GUI 216. Further, the user may desire a consistent motion of the cursor to correspond to consistent movement of the size slider GUI 216.
The presently disclosed technology provides sensitivity independence from a distance between a cursor and a radial center 224 of a size slider GUI 216. Instead of defining the field of cursor operation according to the present state of the art as shown as illustrated by the triangular area bound by lines 228, an area of operation of the size slider GUI 216 of the right circular control panel 205 is defined by an area between bounds corresponding to parallel lines 252 oriented equidistant from the radial center 224 of the size slider GUI 216 and extending from the outermost limits of the size slider GUI 216 in both directions. In alternative implementations, the parallel lines 252 extend only a certain distance or only in one direction from the size slider GUI 216. Because of the geometry of the area of operation for the presently disclosed technology, a distance required to operate the entire range of the size slider GUI 216 is independent from a distance between the cursor and the radial center 224 of the size slider GUI 216. Therefore distances 256 are equal.」
(当審訳:
カーソルが画面上で動く距離は、通常、ユーザ入力デバイス(例えばマウス、トラックボール、タッチパッド、及び、電子描画タブレット)の移動に直接的に対応する。このため、最近の技術水準によれば、ディスプレイ上のサイズ用スライダ216の半径方向の中心224からカーソルまでの距離が近づくにつれて、ユーザ入力装置の感度は増加する。このことは、ユーザが、スライダ216の半径方向の中心224からカーソルまでの距離に関わらずに、スライダのGUI216を非常に細かく制御したい場合は、望ましくないであろう。また、カーソルの所定の移動に対して、サイズ用スライダ216が一貫して移動することを、ユーザは所望し得る。
本明細書で開示される技術によれば、感度は、カーソルとスライダ216の半径方向の中心224間の距離とは無関係になる。最近の技術水準に対応して、図示されるように、直線228で区切られた三角形の領域で表されるカーソルの操作領域を定義することに替えて、右側のコントロールパネル205において、サイズ用スライダ216の作動領域は、サイズ用スライダGUI216の半径方向の中心224から等距離に配向されて、サイズ用スライダ216の両側の最先端から両方向に伸びる平行線256に対応する境界間の領域として定義される。代替的な実装例では、平行線252は、サイズ用スライダGUI216から所定の距離だけ、または、一方向だけに延びる。ここで開示される技術での作動領域の幾何学的配置のため、サイズ用スライダGUI216の全範囲を作動させるのに必要な距離は、カーソルとサイズ用スライダGUI216の半径方向の中心224との間の距離とは無関係である。したがって、距離256は一定である。)

(2) 3欄61−67行
「In one implementation, the size slider GUI 216 is selected using a mouse by clicking and dragging it to the desired position and deselected by releasing the mouse button. In another implementation, motion of the cursor outside of the parallel lines 252 results in movement of the size slider GUI 216 to an outermost limit that coincides with the closest of the parallel lines 252 to the position of the cursor.」
(当審訳:
一実施形態では、サイズ用スライダ216は、マウスでクリックして所望の位置へドラッグすることによって選択されて、マウスボタンを離すことによって選択解除される。別の実施形態では、平行線252の外側へのカーソル移動によって、サイズ用スライダのGUIは、カーソル位置に最も近い平行線252と重なる、最も外側の境界値まで移動する。」

(3) 図2




4 引用文献4について
当審拒絶理由に引用した引用文献4には、図2に、以下の記載がある。




第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1) 対比
本願発明1と、引用発明とを対比すると、以下のことがいえる。

ア 引用発明の「ウェッジ、項目、または変数の値を選択可能な方法」は、「グラフィカルユーザーインターフェース26は、ユーザーが入力装置22を用いてディスプレイ32と対話可能な処理ユニット82上で動作するソフトウェアまたはコンピュータプログラムを指し」ているから、本願発明1の「パラメータを設定するコンピュータ実施方法」に相当する。

イ 引用発明の「メニュー起動コマンド」は、本願発明1の「第1のユーザ入力」に相当する。
引用発明の「複数のウェッジ12」は、本願発明1の「2つの角度セクタ」に相当する。
よって、引用発明の「ラジアルコントロールメニュー10は複数のウェッジ12を含んでおり」、「入力装置22においてメニュー起動コマンドが受理されたならば、入力装置22と通信するグラフィカルユーザーインターフェース26はメニュー起動コマンドに応答してラジアルコントロールメニュー10を表示し、メニューが最初に表示された時にグラフィカルユーザーインターフェース26内でカーソル24が位置する場所にメニュー10の原点20が配置されるように表示される」ことは、
本願発明1の「グラフィカルユーザインターフェース上の第1の地点での第1のユーザ入力を検出すること(S20)」、及び、
「前記グラフィカルユーザインターフェース上に前記第1の地点を中心としてパイメニューを表示すること(S30)であって、前記パイメニューは、各々が、それぞれのカスタマイズ可能なパラメータに関連付けられた2つの角度セクタを含む、該表示すること」に相当する。

ウ 引用発明において、「ユーザーは、入力装置22を用いて可動インジケータ18を選択し」ていることは、本願発明1の「第2のユーザ入力」に相当する。
よって、引用発明の「ウェッジ12内の可動インジケータ18は、対応する変数の値を連続的に調整すべく角度的に変位可能であり、ユーザーは、入力装置22を用いて可動インジケータ18を選択し、そのインジケータ18を原点20の回りを角度的に移動させることができ、
入力装置22がマウスである場合、マウスをクリックし、次いで可動インジケータ18を保持して所望の位置までドラッグすることにより可動インジケータ18を選択することができ、次いでマウスボタンを離して可動インジケータ18を設定」することは、
本願発明1の「一方の角度セクタ内で前記グラフィカルユーザインターフェース上の第2の地点での第2のユーザ入力を検出すること(S40)であって、前記第2のユーザ入力は維持される、該検出すること」に相当する。

エ 引用発明の「マウスをクリックし、次いで可動インジケータ18を保持して所望の位置までドラッグすること」は、本願発明1の「該第2のユーザ入力を維持して後続の動作を実行すること」に相当する。
よって、引用発明の「ウェッジ12内の可動インジケータ18は、対応する変数の値を連続的に調整すべく角度的に変位可能であり、ユーザーは、入力装置22を用いて可動インジケータ18を選択し、そのインジケータ18を原点20の回りを角度的に移動させることができ、
入力装置22がマウスである場合、マウスをクリックし、次いで可動インジケータ18を保持して所望の位置までドラッグすることにより可動インジケータ18を選択することができ」ることは、
本願発明1の「前記第2のユーザ入力の検出がされたときに、前記2つの角度セクタ間で、前記一方の角度セクタ上で該第2のユーザ入力を維持したままでその後続の動作を実行すること(S50)であって、前記一方の角度セクタは、前記第2のユーザ入力が前記ユーザによって維持されている間じゅう、起動が維持され、前記起動とは、前記ユーザによって実行される動作は、前記起動されている一方の角度セクタのみに関することになり、前記第2のユーザ入力が維持されている間じゅう、他方の角度セクタに関連付けられた前記カスタマイズ可能なパラメータの値が選択することができないように、前記後続の動作としてたとえ前記第2のユーザ入力が前記一方の角度セクタから前記他方の角度セクタへ移動しても、前記他方の角度セクタ内において前記第2のユーザ入力が維持されている間じゅうは、前記他方の角度セクタは起動されないままでいる、ことを意味する、該実行すること」と、
「前記第2のユーザ入力の検出がされたときに、前記2つの角度セクタ間で、前記一方の角度セクタ上で該第2のユーザ入力を維持したままでその後続の動作を実行すること(S50)であって、該実行すること」である点で共通するといえる。

オ 引用発明の、「ウェッジ12内の可動インジケータ18は、対応する変数の値を連続的に調整すべく角度的に変位可能であり、ユーザーは、入力装置22を用いて可動インジケータ18を選択し、そのインジケータ18を原点20の回りを角度的に移動させることができ、
入力装置22がマウスである場合、、マウスをクリックし、次いで可動インジケータ18を保持して所望の位置までドラッグすることにより可動インジケータ18を選択することができ」ることは、
本願発明の「前記第2のユーザ入力を前記第2の地点から第3の地点に変位することによって、前記カスタマイズ可能なパラメータの値の中からカスタマイズ可能なパラメータの値を選択すること(S70)であって、前記第2の地点から前記第3の地点への変位は、前記起動されている一方の角度セクタの二等分に対してほぼ直角である、該選択すること」に相当する。

カ 引用発明の、「入力装置22がマウスである場合、、マウスをクリックし、次いで可動インジケータ18を保持して所望の位置までドラッグすることにより可動インジケータ18を選択することができ、次いでマウスボタンを離して可動インジケータ18を設定し、対応する変数を新たな値に設定することができ」ることは、
本願発明の「前記第2のユーザ入力を解除し、それによって前記カスタマイズ可能なパラメータの前記選択された値を有効にすること(S90)」に相当する。

(2) 一致点、相違点
よって、本願発明1と引用発明との一致点・相違点は次のとおりであるといえる。

[一致点]
「パラメータを設定するコンピュータ実施方法であって、
グラフィカルユーザインターフェース上の第1の地点での第1のユーザ入力を検出すること(S20)と、
前記グラフィカルユーザインターフェース上に前記第1の地点を中心としてパイメニューを表示すること(S30)であって、前記パイメニューは、各々が、それぞれのカスタマイズ可能なパラメータに関連付けられた2つの角度セクタを含む、該表示することと、
一方の角度セクタ内で前記グラフィカルユーザインターフェース上の第2の地点での第2のユーザ入力を検出すること(S40)であって、前記第2のユーザ入力は維持される、該検出することと、
前記第2のユーザ入力の検出がされたときに、前記2つの角度セクタ間で、前記一方の角度セクタ上で該第2のユーザ入力を維持したままでその後続の動作を実行すること(S50)であって、該実行することと、
前記第2のユーザ入力を前記第2の地点から第3の地点に変位することによって、前記カスタマイズ可能なパラメータの値の中からカスタマイズ可能なパラメータの値を選択すること(S70)であって、前記第2の地点から前記第3の地点への変位は、前記起動されている一方の角度セクタの二等分に対してほぼ直角である、該選択することと、
前記第2のユーザ入力を解除し、それによって前記カスタマイズ可能なパラメータの前記選択された値を有効にすること(S90)と
を含むことを特徴とするコンピュータ実施方法。」

[相違点1]
本願発明1では、「前記少なくとも1つの角度セクタ内で該第2のユーザ入力を維持して後続の動作を実行すること(S50)」において、「前記一方の角度セクタは、前記第2のユーザ入力が前記ユーザによって維持されている間じゅう、起動が維持され、前記起動とは、前記ユーザによって実行される動作は、前記起動されている一方の角度セクタのみに関することになり、前記第2のユーザ入力が維持されている間じゅう、他方の角度セクタに関連付けられた前記カスタマイズ可能なパラメータの値が選択することができないように、前記後続の動作としてたとえ前記第2のユーザ入力が前記一方の角度セクタから前記他方の角度セクタへ移動しても、前記他方の角度セクタ内において前記第2のユーザ入力が維持されている間じゅうは、前記他方の角度セクタは起動されないままでいる、ことを意味する」のに対して、引用発明では、ユーザ入力が維持されている間「起動が維持される」ことについて特定されていない点。

(3) 当審の判断
本願発明1の上記[相違点1]に係る、「前記一方の角度セクタは、前記第2のユーザ入力が前記ユーザによって維持されている間じゅう、起動が維持され、前記起動とは、前記ユーザによって実行される動作は、前記起動されている一方の角度セクタのみに関することになり、前記第2のユーザ入力が維持されている間じゅう、他方の角度セクタに関連付けられた前記カスタマイズ可能なパラメータの値が選択することができないように、前記後続の動作としてたとえ前記第2のユーザ入力が前記一方の角度セクタから前記他方の角度セクタへ移動しても、前記他方の角度セクタ内において前記第2のユーザ入力が維持されている間じゅうは、前記他方の角度セクタは起動されないままでいる、ことを意味する」ことは、上記引用文献1−4には記載されておらず、本願優先日前において周知技術であるともいえない。

特に、上記引用文献3には、3欄61−67行(上記「第5」「3(2)」)の記載を参照すると、2本の平行線252で区切られた入力領域(引用文献3の図2の右側の図を参照。)で、カーソルをクリックしてから、その後、ホールドしたままで、たとえ2本の平行線252で区切られた単独の入力領域の外側にカーソルを移動した場合でも、元の単独の入力領域への入力状態を維持する、という技術的事項が開示されているといえる。
しかしながら、上記引用文献3は、3欄21−51行(上記「第5」「3(1)」)の記載を参照すると、従来技術のパイ型メニューの「三角形の領域」の入力領域を用いる場合(図2の左側の図を参照。)、パイ型メニューの中心にカーソルが近づくほど、カーソル移動に対する「感度」が増加してしまうという課題に着目して、「三角形の領域」を用いることに替えて、マウスのクリック後は、2本の平行線252で区切られた、単独の入力領域に切り替えることを前提とするものである。
よって、引用文献3には、たとえ2本の平行線252で区切られた入力領域の外側にカーソルを移動しても、元の入力領域への入力状態を維持するという技術的事項のみを、従来技術のパイ型メニューの「三角形の領域」の入力領域に組み合わせることの積極的な動機付けは見出せず、むしろ阻害要因が存在するというべきである。

なお、上記「引用文献2」には、図13−図16(上記「第5」「2」「(1)」〜「(4)」)を参照すると、GUIとして、「ライン」と「ハンドル」からなる「スライダ」を用いることが開示され、また、上記「引用文献4」には、図2(上記「第5」「4」)を参照すると、GUIとして、複数の「スライダ」を並列に用いることについて開示されているものの、いずれの文献にも、上記[相違点1]に係る構成は記載されておらず、また、周知技術であるともいえない。

したがって、本願発明1は、当業者であっても引用文献1ないし4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 請求項2−13について
本願発明2−13も、本願発明1の上記[相違点1]に係る、「前記一方の角度セクタは、前記第2のユーザ入力が前記ユーザによって維持されている間じゅう、起動が維持され、前記起動とは、前記ユーザによって実行される動作は、前記起動されている一方の角度セクタのみに関することになり、前記第2のユーザ入力が維持されている間じゅう、他方の角度セクタに関連付けられた前記カスタマイズ可能なパラメータの値が選択することができないように、前記後続の動作としてたとえ前記第2のユーザ入力が前記一方の角度セクタから前記他方の角度セクタへ移動しても、前記他方の角度セクタ内において前記第2のユーザ入力が維持されている間じゅうは、前記他方の角度セクタは起動されないままでいる、ことを意味する」と、(実質的に)同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用文献1ないし4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

3 当審拒絶理由の理由2(進歩性)についてのまとめ
以上のとおりであるから、当審拒絶理由の理由2によっては、もはや、本願を拒絶することはできない。

4 当審拒絶理由の理由1(明確性)について
当審では、請求項1−15に対し、上記「第3」、「1」で示した拒絶の理由を通知しているが、令和3年11月17日になされた手続補正において、請求項1の「起動が維持され、前記ユーザ又はシステムによって実行される動作は、前記第2のユーザ入力が維持されている間じゅう、前記起動されている少なくとも1つの角度セクタのみ又は前記起動されている少なくとも1つの角度セクタ内のオブジェクトに関することになり、前記起動されている少なくとも1つの角度セクタ内のオブジェクトは、前記第2の地点に表示された前記カスタマイズ可能なパラメータの値を設定することができる」との記載は、「起動が維持され、前記起動とは、前記ユーザによって実行される動作は、前記起動されている一方の角度セクタのみに関することになり、前記第2のユーザ入力が維持されている間じゅう、他方の角度セクタに関連付けられた前記カスタマイズ可能なパラメータの値が選択することができないように、前記後続の動作としてたとえ前記第2のユーザ入力が前記一方の角度セクタから前記他方の角度セクタへ移動しても、前記他方の角度セクタ内において前記第2のユーザ入力が維持されている間じゅうは、前記他方の角度セクタは起動されないままでいる、ことを意味する、」と補正された結果、この拒絶理由は解消した。

第7 原査定についての判断
1 理由2(新規性)、理由3(進歩性)について
令和3年11月17日付けの手続補正により、補正後の請求項1−13は、本願発明1の上記[相違点1]に係る、「前記一方の角度セクタは、前記第2のユーザ入力が前記ユーザによって維持されている間じゅう、起動が維持され、前記起動とは、前記ユーザによって実行される動作は、前記起動されている一方の角度セクタのみに関することになり、前記第2のユーザ入力が維持されている間じゅう、他方の角度セクタに関連付けられた前記カスタマイズ可能なパラメータの値が選択することができないように、前記後続の動作としてたとえ前記第2のユーザ入力が前記一方の角度セクタから前記他方の角度セクタへ移動しても、前記他方の角度セクタ内において前記第2のユーザ入力が維持されている間じゅうは、前記他方の角度セクタは起動されないままでいる、ことを意味する」という技術的事項を有するものとなった。
当該技術的事項は、原査定における引用文献1−3には記載されておらず、本願優先日前における周知技術でもないので、本願発明1−13は、引用文献1に記載された発明ではなく、また、当業者であっても、原査定における引用文献1−3に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

2 理由1(実施可能要件明確性)について
請求項6−15について、用語「検証すること(S90)」は(請求項1における)「有効にすること(S90)」と補正され、請求項9−15について、(1)用語(カスタマイズ可能なパラメータの)「値のセット」は(請求項7において)「セット」が削除され、(2)用語「セットのランク付けされた値」は「セットの連続値」と補正され、(3)用語「ランク付けされた値」は「連続値」と補正され、(4)用語「トラバース」は「通過」と補正され、(5)「ランク付けされた値の数」は「連続値の数」と補正され、(6)「前記トラバース中に遭遇した最後の値」は「前記通過中に位置した最後の値」と補正され、(7)「実行される」は削除された結果、この拒絶理由は解消した。

3 まとめ
したがって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。


 
審決日 2022-01-04 
出願番号 P2015-248555
審決分類 P 1 8・ 113- WY (G06F)
P 1 8・ 536- WY (G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F)
P 1 8・ 537- WY (G06F)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 ▲吉▼田 耕一
特許庁審判官 稲葉 和生
野崎 大進
発明の名称 パラメータの設定  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  

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