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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06K
管理番号 1381446
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-12-29 
確定日 2022-01-19 
事件の表示 特願2016−116638「無線タグ」拒絶査定不服審判事件〔平成29年11月30日出願公開、特開2017−211964〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,平成28年5月26日の出願であって,令和2年3月17日付けで拒絶の理由が通知され,同年5月22日に意見書とともに手続補正書が提出され,同年9月17日付けで拒絶査定(謄本送達日同年9月29日)がなされ,これに対して令和3年1月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされ,同年6月8日付けで審査官により特許法164条3項の規定に基づく報告がなされたものである。


第2 令和3年1月4日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

令和3年1月4日にされた手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正について(補正の内容)

(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載

本件補正により,特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおり補正された。(下線部は,補正箇所である。)

「親機と無線回線で通信をする無線タグであって、
前記親機からの電波の強さを検出する電界強度検出手段と、
前記無線タグの少なくとも一の壁面上に位置付けられた発光部と、
前記発光部が有する発光素子と、
前記電界強度検出手段が検出した前記親機からの電波の強さに応じて、前記発光素子の発光色および点滅の双方または一方を制御する発光素子制御部とを備え、
前記発光部は、底部が開口した略蒲鉾形状もしくは半球形状をなした光拡散部であって前記発光素子が発した光を前記無線タグの前記少なくとも一の壁面側の略全方向に拡散する光拡散部を備えたことを特徴とする無線タグ。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲

本件補正前の,令和2年5月22日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「親機と無線回線で通信をする無線タグであって、
前記親機からの電波の強さを検出する電界強度検出手段と、
前記無線タグの少なくとも一の壁面上に位置付けられた発光部と、
前記発光部が有する発光素子と、
前記電界強度検出手段が検出した前記親機からの電波の強さに応じて、前記発光素子の発光色および点滅の双方または一方を制御する発光素子制御部とを備え、
前記発光部は、前記発光素子が発した光を前記無線タグの前記少なくとも一の壁面側の略全方向に拡散する光拡散部を備えたことを特徴とする無線タグ。」

2 補正の適否

本件補正は,本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「光拡散部」について,上記のとおり限定を付加するものであって,本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の請求項1に記載される発明(以下,「本件補正発明」という。)が同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について,以下,検討する。

(1)本件補正発明

本件補正発明は,上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用例及び周知例の記載事項

ア 引用例1の記載事項及び引用発明
(ア)原査定の拒絶の理由において引用した,本願の出願前に既に公知である,特開2006−197510号公報(平成18年7月27日公開。以下,これを「引用例1」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。(下線は当審で付加。以下同様。)

A 「【0033】
本実施形態の近距離無線通信装置は、図示しないRFIDカードリーダライタからの搬送波を検出した時に例えば青色の光を点灯させる第1の点灯制御機能と、搬送波による磁界強度が大きくなるにつれて例えば青色光の輝度を低下させると同時に例えば緑色光の輝度を高めるように点灯させ、逆に、搬送波による磁界強度が小さくなるにつれて青色光の輝度を高めると同時に緑色光の輝度を低下させるように点灯させる第2の点灯制御機能と、RFIDカードリーダライタとの間で通信が行われている時には上記第2の点灯制御機能により点灯している青色光と緑色光を点滅させる第3の点灯制御機能と、RFIDカード機能が停止状態にロックされているときには上記搬送波の強度によらずに青色光と緑色光を共に消灯する一方で赤色光を点灯させる第4の点灯制御機能とを有しいる。そして、本実施形態の近距離無線通信装置は、それら第1〜第4の点灯制御機能を実行するための構成として、赤色LED24,青色LED25,緑色LED26の3色LEDからなる表示部と、搬送波の磁界強度を青色LED25と緑色LED26の輝度に変換するための磁界強度/輝度変換部22と、青色LED25と緑色LED26を点滅させるための点滅発生回路部21と、磁界強度/輝度変換部22と点滅発生回路部21の機能を結合するための機能合成部23とを備えている。
【0034】
ここで、上記3色LEDからなる表示部は、当該RFIDカードが通信可能な状態になっているかどうか、及び、RFIDカードとRFIDカードリーダライタとの間の距離が適切であるかどうか、及び、RFIDカードとRFIDカードリーダライタとの間で通信が行われているかどうか等の通信状態を、ユーザに通知するための表示装置である。
【0035】
上記磁界強度/輝度変換部22は、上記表示部の3色LEDの点灯の仕方を決定するための回路部であり、ループアンテナ部1が受信している搬送波の磁界強度に応じて、LEDの輝度を変化させる機能を有している。すなわち本実施形態の場合、上記磁界強度/輝度変換部22は、搬送波が弱いときには青色LED25の輝度を高くすると同時に緑色LED26の輝度を低い状態とし、一方、搬送波が強まるにつれて徐々に緑色LED26の輝度を高くすると同時に青色LED25の輝度を低くするような点灯制御を行う。これにより、例えばRFIDカードをRFIDカードリーダライタへ徐々に近づけることで搬送波が徐々に強まるような場合、ユーザからみた表示部の表示状態は、段々とLEDの色が青→青緑→緑に変化していくように見えることになる。なお、本実施形態において、搬送波強度と色との関係は、一例であり、使用するLEDの色を変えれば、上記搬送波強度と色との関係を自由に変更することができる。」

B 「

図1」

(イ)上記記載から,引用例1には,次の技術的事項が記載されているものと認められる。

a 上記Aの「近距離無線通信装置は…(中略)…RFIDカードリーダライタからの搬送波を検出した時に…青色の光を点灯させる第1の点灯制御機能と、搬送波による磁界強度が大きくなるにつれて…青色光の輝度を低下させると同時に…緑色光の輝度を高めるように点灯させ、逆に、搬送波による磁界強度が小さくなるにつれて青色光の輝度を高めると同時に緑色光の輝度を低下させるように点灯させる第2の点灯制御機能と、RFIDカードリーダライタとの間で通信が行われている時には上記第2の点灯制御機能により点灯している青色光と緑色光を点滅させる第3の点灯制御機能と…(中略)…を有し」との記載から,引用例1には,“近距離無線通信装置は,RFIDカードリーダライタからの搬送波を検出した時に,青色の光を点灯させる第1の点灯制御機能と,搬送波による磁界強度が大きくなるにつれて青色光の輝度を低下させると同時に緑色光の輝度を高めるように点灯させ,逆に,搬送波による磁界強度が小さくなるにつれて青色光の輝度を高めると同時に緑色光の輝度を低下させるように点灯させる第2の点灯制御機能と,RFIDカードリーダライタとの間で通信が行われている時には上記第2の点灯制御機能により点灯している青色光と緑色光を点滅させる第3の点灯制御機能とを有”することが記載されているといえる。

b 上記Aの「点灯制御機能を実行するための構成として、赤色LED24,青色LED25,緑色LED26の3色LEDからなる表示部…(中略)…を備え」との記載から,引用例1には,“点灯制御機能を実行するための構成として,赤色LED,青色LED,緑色LEDの3色LEDからなる表示部を備え”ることが記載されているといえる。

c 上記Aの「上記磁界強度/輝度変換部22は、上記表示部の3色LEDの点灯の仕方を決定するための回路部であり、ループアンテナ部1が受信している搬送波の磁界強度に応じて、LEDの輝度を変化させる機能を有し」との記載から,引用例1には,“上記表示部の3色LEDの点灯の仕方を決定するための回路部である磁界強度/輝度変換部は,ループアンテナ部1が受信している搬送波の磁界強度に応じて,LEDの輝度を変化させる機能を有”することが記載されているといえる。

(ウ)上記(ア)及び(イ)より,引用例1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「RFIDカードリーダライタからの搬送波を検出した時に,青色の光を点灯させる第1の点灯制御機能と,搬送波による磁界強度が大きくなるにつれて青色光の輝度を低下させると同時に緑色光の輝度を高めるように点灯させ,逆に,搬送波による磁界強度が小さくなるにつれて青色光の輝度を高めると同時に緑色光の輝度を低下させるように点灯させる第2の点灯制御機能と,RFIDカードリーダライタとの間で通信が行われている時には上記第2の点灯制御機能により点灯している青色光と緑色光を点滅させる第3の点灯制御機能とを有し,
点灯制御機能を実行するための構成として,赤色LED,青色LED,緑色LEDの3色LEDからなる表示部を備え,
上記表示部の3色LEDの点灯の仕方を決定するための回路部である磁界強度/輝度変換部は,ループアンテナ部1が受信している搬送波の磁界強度に応じて,LEDの輝度を変化させる機能を有する
近距離無線通信装置。」

イ 引用例2の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用した,本願の出願前に既に公知である,特開2004−334431号公報(平成16年11月25日公開。以下,これを「引用例2」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

C 「【0021】
図2に、上述の非接触IDタグ処理装置1で処理する本発明に係る非接触IDタグの第1実施形態の構成を示す。
図2において、本実施形態のタグ10は、同図(A)に示すように、一面開口のケース11内に、コイルアンテナ12、2つの板状の磁性体13A,13B、基板14に設けたICチップ15及び2つのLED16,17を収納し、同図(B)に示す板状の蓋18でケース11の開口部を塞いでケース11内を密閉すると共に、蓋18にシールド部としての遮蔽板19を取付ける構成である。
【0022】
ケース11は、樹脂製で平板状に形成され、タグ10を挟んで互いに対面する位置側から同時に視認可能な位置、例えば対角位置にある2ヶ所の角部に光透過可能な透明又は半透明の樹脂で形成された発光表示部11a、11bが設けられ、LED16,17からの光により点灯する。コイルアンテナ12は、例えば銅線等を巻回した平面状アンテナである。2つの磁性体13A,13Bは、非接触IDタグ処理装置1との交信時にケース11の平坦面に対して略平行で互いに直交する2方向(図中の矢印X、Y方向)に外部磁束がアンテナ12を貫くようにそれぞれ外部磁束を指向させて導くためのもので、互いに直交しそれぞれ図中破線で示すように一端側がアンテナ12の下側に位置するように設けられている。タグの制御部としてのICチップ15は、後述の図5に示すフローチャートのようにタグ10の動作を制御するもので、非接触IDタグ処理装置1からの指令に基づいて固有のID情報を含む記憶情報の送信動作及びLED16,17の点消灯動作等を制御する。LED16,17は、ケース11の発光表示部11a、11b近傍にそれぞれ配置されている。また、蓋18は、ケース11と同一の樹脂で形成された平板であり、図に示すように前記発光表示部11a、11bに対応する角部が透明又は半透明の樹脂形状に合わせて切り欠いた形状である。遮蔽板19は、ケース11の平坦面に対して垂直方向の磁束を遮り、複数のタグを一括処理する際にタグ間の動作干渉を防止するためのものである。」

D 「

図2」

E 「

図4」

ウ 周知例1
本願の出願前に既に公知である,特開2009−195534号公報(平成21年9月3日公開。以下,これを「周知例1」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

F 「【0035】
呼び出しランプユニット5の端部近傍で、画面11の両脇にはインジケータ7が設けられる。インジケータ7は半円断面形状である。すなわち、半円筒状のインジケータ7が略鉛直方向に設けられる。従って、インジケータ7は、呼び出しランプユニット5の前方に突出した形態となる。なお、インジケータ7は画面11に近い位置に設けられることが望ましい。」

G 「【0038】
また、呼び出しランプユニット5の側面のランプ9bは、呼び出しランプユニット5自体の影に隠れるため、同様に視認性が悪い。しかし、インジケータ7は呼び出しランプユニット5の前面に突出しているため、略横方向からでも視認性が良く、このため、島の端からでも島全体の遊技機1に対するインジケータ7を見渡すことができる。」

H 「

図5」

エ 周知例2
本願の出願前に既に公知である,特開2009−248199号公報(平成21年10月29日公開。以下,これを「周知例2」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

I 「【0036】
さらにこの保護カバー8は、図2および図3に示すように、上記確認穴52aに対応する位置に、確認穴52aを通って射出されるLED6の光の射出方向前方に、半球状に突出した導光部8aを有している。LED6からの灯光は、保護カバー8を透過して導光部8aの半球面において反射することにより、導光部8aの周囲に拡散、散乱する。これによって、LED6が点灯した場合には、導光部8a全体が発光するように見える。そのため、作業者が確認穴52aからLED6の灯光が直接見える位置でトルクレンチ1を操作していなくても、突出した導光部8aが見える位置からであれば、LED6の点灯を導光部8aから出る光によって確認することができる。」

J 「

図3」

(3)対比

本件補正発明と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「近距離無線通信装置」は,「RFIDカードリーダライタとの間で通信が行われ」るものであるところ,当該「RFIDカードリーダライタ」は,本件補正発明の「親機と無線回線で通信をする無線タグ」における,「親機」に相当する。
引用発明の「近距離無線通信装置」は,「RFIDカードリーダライタからの搬送波を検出」するものであって,当該「RFIDカードリーダライタ」との間で通信をしていることから,本件補正発明の「無線タグ」とは“無線機器”である点で共通するといい得る。
したがって,引用発明と本件補正発明とは,下記相違点1で相違するものの,“親機と無線回線で通信をする無線機器”である点で一致する。

イ 引用発明は,「搬送波による磁界強度が大きくなるにつれて青色光の輝度を低下させると同時に緑色光の輝度を高めるように点灯させ,逆に,搬送波による磁界強度が小さくなるにつれて青色光の輝度を高めると同時に緑色光の輝度を低下させるように点灯させる第2の点灯制御機能」を有するものであるところ,当該「磁界強度」に応じて,「青色光」や「緑色光」の「輝度」を変更させることは,「RFIDカードリーダライタからの搬送波」,すなわち上記アの認定を踏まえると,“親機からの電波の強さを検出”して「青色光」や「緑色光」の「輝度」を変更しているといえ,電波の強さを検出する以上,“電界強度”を検出しているともいえることから,引用発明と本件補正発明とは,“前記親機からの電波の強さを検出する電界強度検出手段”を備える点で一致する。

ウ 引用発明の「近距離無線通信装置」に備えられる,「赤色LED,青色LED,緑色LEDの3色LEDからなる表示部」は,本件補正発明の「前記無線タグの少なくとも一の壁面上に位置付けられた発光部」と,下記相違点1及び2で相違するものの,“前記無線機器に取り付けられた発光部”である点で共通する。
また,引用発明の当該「赤色LED,青色LED,緑色LEDの3色LED」は,“前記発光部が有する発光素子”といい得ることから,以上総合して,引用発明と本件補正発明とは,下記相違点1及び2で相違するものの,“前記無線機器に取り付けられた発光部”,及び“前記発光部が有する発光素子”を備える点で一致する。

エ 引用発明は,「RFIDカードリーダライタからの搬送波を検出した時に,…(中略)…搬送波による磁界強度が大きくなるにつれて青色光の輝度を低下させると同時に緑色光の輝度を高めるように点灯させ,逆に,搬送波による磁界強度が小さくなるにつれて青色光の輝度を高めると同時に緑色光の輝度を低下させるように点灯させる第2の点灯制御機能と,RFIDカードリーダライタとの間で通信が行われている時には上記第2の点灯制御機能により点灯している青色光と緑色光を点滅させる第3の点灯制御機能とを有」していて,「磁界強度/輝度変換部」により,「ループアンテナ部1が受信している搬送波の磁界強度に応じて,LEDの輝度を変化させ」ていることから,上記イ及びウの認定を踏まえれば,“前記電界強度検出手段が検出した前記親機からの電波の強さに応じ”た“前記発光素子の発光色および点滅の双方または一方”の“制御”をしているといえ,したがって引用発明と本件補正発明とは,“前記電界強度検出手段が検出した前記親機からの電波の強さに応じて,前記発光素子の発光色および点滅の双方または一方を制御する発光素子制御部”を備える点で一致する。

オ 以上,ア〜エの検討結果を踏まえると,引用発明と本件補正発明とは,次の一致点及び相違点を有する。

〈一致点〉
親機と無線回線で通信をする無線機器であって,
前記親機からの電波の強さを検出する電界強度検出手段と,
前記無線機器に取り付けられた発光部と,
前記発光部が有する発光素子と,
前記電界強度検出手段が検出した前記親機からの電波の強さに応じて,前記発光素子の発光色および点滅の双方または一方を制御する発光素子制御部とを備えたことを特徴とする無線機器。

〈相違点1〉
「無線機器」に関して,本件補正発明が,「無線タグ」であるのに対し,引用発明は,「近距離無線通信装置」である点。

〈相違点2〉
本件補正発明の「発光部」が,「少なくとも一の壁面上に位置付けられ」るとともに,「底部が開口した略蒲鉾形状もしくは半球形状をなした光拡散部であって前記発光素子が発した光を前記無線タグの前記少なくとも一の壁面側の略全方向に拡散する光拡散部を備え」ているのに対し,引用発明は,「赤色LED,青色LED,緑色LEDの3色LEDからなる表示部」が,「近距離無線通信装置」のいずれに設けられ,またその形状がどのようなものであるかについて特定されていない点。

(4)当審の判断

上記相違点につき検討する。

ア 相違点1について
本件補正発明の「無線タグ」は,「電界強度検出手段」,「発光部」,「発光素子」及び「発光素子制御部」を備えるものであるところ,当該「無線タグ」が「親機と無線回線で通信をする」にあたって,なんらかの「無線タグ」特有の通信を行うものではなく,引用発明の「近距離無線通信装置」とは,上記一致点に示したように“親機と無線回線で通信をする無線機器”である点で一致するといえるものであり,「無線タグ」は,当該技術分野のみならず,一般的にごくありふれたものであって,「無線機器」として「無線タグ」を採用することは,必要に応じて適宜なし得ることに過ぎず,格別なものとはいえない。

イ 相違点2について
引用発明の「近距離無線通信装置」は,「ループアンテナ部1が受信している搬送波の磁界強度に応じて,LEDの輝度を変化させる」ことによって,親機たる「RFIDカードリーダライタ」との通信状態を,外部に対して報知するものであるから,当該報知に際して,外部から見やすい状態で「LEDの輝度」の変化を視認できるようにしなければならないことは当然である。
一方,上記2(2)イに示した引用例2に示されるように,非接触IDタグの外側壁面の一部に発光部を設ける態様は,本願の出願前に既に知られた構造であり,また,上記2(2)ウ及びエに示した周知例1及び2に示されるように,外部から発光部の発光状態を視認できるよう,その形状を略蒲鉾形状(ウのHの(c)等参照。)や半球形状(エのJにおける,「導光部8a」等参照。)とすることは,単なる慣用技術に過ぎない。
そして,引用発明において,「赤色LED,青色LED,緑色LEDの3色LEDからなる表示部」の点灯状態を外部から視認し易くすることも,当然考慮される課題に過ぎないのであって,これを少なくとも近距離無線通信装置の一の壁面上に位置づけた上,底部が開口した略蒲鉾形状もしくは半球形状をなした光拡散部であって,発光素子が発した光を当該少なくとも一の壁面側の略全方向に拡散する光拡散部を備えるような構成とすることは,当業者が当該課題にしたがって容易に想到し得るというべきである。

オ 当審の判断についての結論
以上検討したとおり,相違点1及び2はいずれも格別なものではなく,またそのことによる効果も,当業者であれば普通に想起し得る程度のことに過ぎない。
したがって,本件補正発明は,引用発明,並びに引用例2,周知例1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものであり,特許法29条2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび

以上のとおり,本件補正は特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について

1 本願発明

令和3年1月4日にされた手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,令和2年5月22日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,明細書及び図面の記載からみて,その請求項1に記載された事項により特定される,前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。再掲すれば,次のとおり。

「親機と無線回線で通信をする無線タグであって、
前記親機からの電波の強さを検出する電界強度検出手段と、
前記無線タグの少なくとも一の壁面上に位置付けられた発光部と、
前記発光部が有する発光素子と、
前記電界強度検出手段が検出した前記親機からの電波の強さに応じて、前記発光素子の発光色および点滅の双方または一方を制御する発光素子制御部とを備え、
前記発光部は、前記発光素子が発した光を前記無線タグの前記少なくとも一の壁面側の略全方向に拡散する光拡散部を備えたことを特徴とする無線タグ。」

2 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は,この出願の請求項1及び2に係る発明は,本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1及び2に記載された発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

引用文献1:特開2006−197510号公報
引用文献2:特開2004−334431号公報

3 引用文献

原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及び2の記載事項は,前記第2[理由]2(2)においてそれぞれ,引用例1及び引用例2として記載したとおりである。

4 対比・判断

本願発明は,前記第2[理由]2で検討した本件補正発明から,「光拡散部」に係る限定事項を削除したものである。
そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が,前記第2[理由]2の(3)及び(4)に記載したとおり,引用発明及び引用例2(原査定の引用文献1及び2)に記載された技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用発明及び引用例2に記載された技術に基づいて,当業者が容易に発明することができたものである。


第4 むすび

以上のとおり,本願発明は,本願の出願前に頒布された引用例1及び引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2021-10-29 
結審通知日 2021-11-09 
審決日 2021-11-25 
出願番号 P2016-116638
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06K)
P 1 8・ 121- Z (G06K)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 田中 秀人
特許庁審判官 山崎 慎一
山澤 宏
発明の名称 無線タグ  

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