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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03F
管理番号 1381561
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-04-28 
確定日 2021-12-16 
事件の表示 特願2016− 14153「着色感光性樹脂組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 8月12日出願公開、特開2016−145975〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 事案の概要
1 手続等の経緯
特願2016−14153号(以下「本件出願」という。)は、平成28年1月28日(先の出願に基づく優先権主張 平成27年1月30日)を出願日とする出願であって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。

令和元年10月 1日付け:拒絶理由通知書
令和2年 1月20日提出:手続補正書
令和2年 1月20日提出:意見書
令和2年 5月13日付け:拒絶理由通知書
令和2年 9月 4日提出:手続補正書
令和2年 9月 4日提出:意見書
令和3年 2月 9日付け:補正の却下の決定
令和3年 2月 9日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和3年 4月28日提出:審判請求書

2 本願発明
本件出願の請求項1〜請求項8に係る発明は、令和2年1月20日にした手続補正後の特許請求の範囲の請求項1〜請求項8に記載された事項によって特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明は、次のものである(以下「本願発明」という。)。
「【請求項1】
着色剤(A)、樹脂(B)、重合性化合物(C)及び重合開始剤(D)を含み、
前記着色剤(A)として、C.I.ピグメントグリーン58とC.I.ピグメントイエロー185とを含み、
C.I.ピグメントイエロー185は、粒径100nm以上の粒子が5質量%以下である粒度分布を有し、
前記重合開始剤(D)は、O−アシルオキシム化合物を含むことを特徴とする着色感光性樹脂組成物。」

3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、(理由1)本願発明は、先の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない、あるいは、(理由2)本願発明は、先の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基づいて、先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:特開2014−26228号公報
引用文献2:特開2011−137125号公報
(当合議体注:引用文献1は、理由2における主引用例、引用文献2は、理由1及び2における主引用例である。)


第2 当合議体の判断
1 引用文献2を主引用例とした場合
(1)引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由に引用された、引用文献2(特開2011−137125号公報)は、先の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であるところ、そこには以下の記載がある。
なお、下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す(以下、同様である。)。

ア 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置(LCD)や固体撮像素子(CCD、CMOSなど)等に用いられるカラーフィルタを作製するのに好適な顔料分散液、着色硬化性組成物、及び該着色硬化性組成物により形成された着色領域を有するカラーフィルタ、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カラーフィルタは、液晶ディスプレイや固体撮像素子に不可欠な構成部品である。近年、液晶ディスプレイでは、従来のTV用途・モニター用途のものに比し、より画質性能(色再現性領域、輝度、コントラスト等)の向上が求められている。特に、緑色カラーフィルタに最適な顔料として、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料が着目されている(例えば、特許文献1参照)。ハロゲン化亜鉛フタロシアニンは、従来の緑色顔料であるハロゲン化銅フタロシアニンと比較して、顔料一次粒子の平均粒子径が大きくても、Tmaxが高波長側にあり、しかも分光透過スペクトルの半値幅が非常にシャープであるため、それを用いたカラーフィルタは高い色純度・高コントラストを示す。さらに、ハロゲン化亜鉛フタロシアニンのハロゲン原子の含有量を調整することにより、着色力が改善し、高水準の輝度を示すようになった。
【0003】
また、カラーフィルタ製造用途の着色硬化性組成物に関しては、使用する顔料の粒子サイズとして、より微小なものを用いることで、コントラストを向上させる試みがなされている(例えば、特許文献2参照。)。
また、固体撮像素子用のカラーフィルタにおいても、高解像力化のために、色ムラの低減が必要な特性になっており、このために粒子サイズの小さな微細顔料を用いて、2次凝集体が無い状態に分散させることが重要になっている。
【0004】
近年、特に液晶表示装置用のカラーフィルタでは、色純度の向上が要求され、このために顔料の充填量アップが必要である。また、固体撮像素子用のカラーフィルタでは、解像力向上の手段のひとつとして、散乱による迷光低減等が必要であるが、このためにも着色層を薄層にする要求が強く、固体撮像素子用のカラーフィルタ作製においても、顔料の充填量アップが必要である。顔料の充填量アップには、着色硬化性組成物中の顔料濃度を高める必要がある。しかし、顔料濃度を高めると、必然的に着色硬化性組成物中の分散樹脂・硬化性成分(モノマー、重合開始剤等)の含有量が低下するため、保存安定性や現像性が悪化し、パターン形成性が不良になる問題が生じた。特に、固体撮像素子用カラーフィルタは、高画素化・小型化のために、パターンサイズが非常に小さくなり、現像性(未露光部の残渣抑制)の悪化が大きな問題となっていた。
【0005】
さらに、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料については、これを含む顔料分散液の分散性及び分散安定性や、該顔料分散液を含む着色組成物を用いた膜の現像性、耐光性が、従来の緑色顔料と比較して低いことが判明した。フタロシアニン顔料の分散に適用される分散剤としては、例えば、特許文献3には、アルミニウムフタロシアニン顔料や亜鉛フタロシアニン顔料などのフタロシアニン顔料を用いた着色組成物に用いる樹脂型分散剤として、櫛形の塩基性樹脂などが提案されている。しかし、このような従来の分散剤用いても、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を適用した顔料分散液の分散性、分散安定性、これを含む着色硬化性組成物における分散性、分散安定性、現像性、耐光性を満たすことはできていないのが現状である。また、特許文献4には、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料をブロック型分散樹脂及びアルカリ可溶性樹脂を用いて分散した顔料分散液が報告されている。しかし、特許文献4に記載の顔料分散液では、高顔料濃度の条件では分散安定性を保持することは難しく、また現像性と耐光性とを両立することが難しかった。
・・・中略・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前述の状況に鑑みたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。本発明は、顔料を高濃度で含む場合においても、顔料の分散性及び分散安定性に優れた顔料分散液を提供することを目的とする。
また、本発明は、顔料を高濃度で含む場合においても、顔料の分散性及び分散安定性に優れ、硬化膜を形成する際の現像性及び形成された硬化膜の耐光性が良好な着色硬化性組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、コントラストや色ムラ等の色特性が良好なカラーフィルタ、及びその製造方法を提供することを目的とする。
更に、本発明は、コントラストや色ムラ等の色特性が良好なカラーフィルタを備えた固体撮像素子、画像表示デバイス、及び液晶ディスプレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記実情に鑑み鋭意研究を行ったところ、特定の分散樹脂を含有する顔料分散液、及びそれを含有する着色硬化性組成物により、前記課題が解決されることを見出し、本発明を完成した。
即ち、前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
【0009】
<1>(A)ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料と、(B)(b−1)アミノ基及び含窒素へテロ環基から選択された少なくとも一つの基を有するモノマー、(b−2)カルボキシル基を有するモノマー、及び(b−3)重量平均分子量が1,000以上50,000以下のマクロモノマーの共重合体と、を含有する顔料分散液。
<2>更に、(A’)顔料誘導体を含有する<1>に記載の顔料分散液。
<3><1>又は<2>に記載の顔料分散液と、(C)光重合性化合物と、(D)光重合開始剤と、を含有する着色硬化性組成物。
<4>前記(D)光重合開始剤が、オキシム系化合物、ヘキサアリールビイミダゾール系化合物、及びトリアジン系化合物から選択される少なくとも1種の化合物である<3>に記載の着色硬化性組成物。
<5>支持体上に、<3>又は<4>に記載の着色硬化性組成物により形成された着色領域を有するカラーフィルタ。
<6><3>又は<4>に記載の着色硬化性組成物を、支持体上に塗布して着色層を形成する着色層形成工程と、該着色層をマスクを介してパターン露光する露光工程と、露光後の着色層を現像して着色領域を形成する現像工程と、を含むカラーフィルタの製造方法。
<7><5>に記載のカラーフィルタを備える固体撮像素子。
<8><5>に記載のカラーフィルタを備える画像表示デバイス。
<9><5>に記載のカラーフィルタを備える液晶ディスプレイ。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、顔料を高濃度で含む場合においても、顔料の分散性及び分散安定性に優れた顔料分散剤を提供することができる。
また、本発明によれば、顔料を高濃度で含む場合においても、顔料の分散性及び分散安定性に優れ、硬化膜を形成する際の現像性及び形成された硬化膜の耐光性が良好な着色硬化性組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、本発明の着色硬化性組成物を用いることにより、コントラストや色ムラ等の色特性が良好なカラーフィルタ、及びその製造方法を提供することができる。
更に、本発明によれば、コントラストや色ムラ等の色特性が良好なカラーフィルタを備えた固体撮像素子、画像表示デバイス、及び液晶ディスプレイを提供することができる。」

イ 「【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の顔料分散液、着色硬化性組成物、カラーフィルタその製造方法について詳細に説明する。
・・・中略・・・
【0012】
[顔料分散液]
・・・中略・・・
【0014】
<(B)(b−1)アミノ基及び含窒素へテロ環基から選択された少なくとも一つの基を有するモノマー、(b−2)カルボキシル基を有するモノマー、及び(b−3)重量平均分子量が1,000以上50,000以下のマクロモノマーの共重合体>
・・・中略・・・
【0076】
<(A)ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料>
・・・中略・・・
【0090】
<その他の顔料>
本発明の顔料分散液は、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料以外の公知の顔料を含有してもよい。
その他の顔料としては、本発明の顔料分散液を適用して得られるカラーフィルタが、高透過率であることが好ましいことを考慮すると、なるべく微細なものが好ましい。また、顔料分散液のハンドリング性をも考慮すると、その他の顔料の平均1次粒子径は、5nm〜100nmが好ましく、5nm〜50nmがより好ましい。」

ウ 「【0126】
本発明の顔料分散液は、カラーフィルタ製造用等に適用される着色硬化性組成物、印刷用インク、インクジェット用インク、塗料等に好適である。
【0127】
[着色硬化性組成物]
本発明の着色硬化性組成物は、本発明の顔料分散液と、(C)光重合性化合物と、(D)光重合開始剤と、を含有する着色硬化性組成物である。
本発明の着色硬化性組成物は、上記の構成を有することにより、顔料を高濃度で含む場合においても、顔料の分散性及び分散安定性に優れ、硬化膜を形成する際の現像性及び形成された硬化膜の耐光性が良好な着色硬化性組成物となる。
【0128】
<(C)光重合性化合物>
光重合性化合物としては、少なくとも1個の付加重合可能なエチレン性不飽和基を有し、沸点が常圧で100℃以上である化合物が好ましく、中でも4官能以上のアクリレート化合物がより好ましい。
【0129】
少なくとも1個の付加重合可能なエチレン性不飽和基を有し、沸点が常圧で100℃以上である化合物としては、例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能のアクリレートやメタアクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイロキシエチル)イソシアヌレート、グリセリンやトリメチロールエタン等の多官能アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加させた後(メタ)アクリレート化したもの、ペンタエリスリトール又はジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート化したもの、特公昭48-41708号、特公昭50-6034号、特開昭51-37193号公報に記載のウレタンアクリレ-ト類、特開昭48-64183号、特公昭49-43191号、特公昭52-30490号公報に記載のポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタアクリレートを挙げることができる。
更に、日本接着協会誌Vol.20、No.7、300〜308頁に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも、光重合性化合物として使用できる。
【0130】
また、光重合性化合物としては、特開平10-62986号公報において一般式(1)及び(2)としてその具体例と共に記載の、前記多官能アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加させた後に(メタ)アクリレート化した化合物も用いることができる。
【0131】
中でも、光重合性化合物としては、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、及びこれらのアクリロイル基がエチレングリコール、プロピレングリコール残基を介している構造を有するものが好ましい。これらのオリゴマータイプのもの光重合性化合物として使用できる。
・・・中略・・・
【0148】
本発明においては、オキシムエステル系化合物の中でも、下記一般式(a)で表される化合物が、感度、径時安定性、後加熱時の着色の観点から、好ましい。また、チバ・スペシャリティ・ケミカル社製イルガキュアOXE−01、OXE−02なども好ましい。
【0149】

【0150】
一般式(a)中、R及びXは、各々独立に、1価の置換基を表し、Aは、2価の有機基を表し、Arは、アリール基を表す。nは、1〜5の整数である。
【0151】
Rとしては、高感度化の点から、アシル基が好ましく、具体的には、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基、トルイル基が好ましい。
【0152】
Aとしては、感度を高め、加熱経時による着色を抑制する点から、無置換のアルキレン基、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、ドデシル基)で置換されたアルキレン基、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基)で置換されたアルキレン基、アリール基(例えば、フェニル基、p−トリル基、キシリル基、クメニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナントリル基、スチリル基)で置換されたアルキレン基が好ましい。
【0153】
Arとしては、感度を高め、加熱経時による着色を抑制する点から、置換又は無置換のフェニル基が好ましい。置換フェニル基の場合、その置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン基が好ましい。
【0154】
Xとしては、溶剤溶解性と長波長領域の吸収効率向上の点から、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルチオキシ基、置換基を有してもよいアリールチオキシ基、置換基を有してもよいアミノ基が好ましい。また、一般式(a)におけるnは1〜2の整数が好ましい。」

エ 「【0215】

【0216】
下記表2に、上記の合成例1〜18、比較合成例1及び2により得られた樹脂(J−1)〜(J−20)の物性値(重量平均分子量、アミン価、酸価)を示した。
【0217】

【0218】
[実施例1〜25、比較例1〜5]
以下、顔料分散液を調製した実施例及び比較例を挙げて説明する。なお、比較例3に用いたソルスパース24000GR(ポリエチレンイミンとポリエステルの縮合物、アビシア(株)製)、比較例4に用いたアジスパーPB821(ポリアリルアミンとポリエステルの縮合物、味の素ファインテクノ(株)製)、及び、比較例5に用いた樹脂(B)は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで30質量%溶液にしたものを用いた。
【0219】
1−1.顔料分散液の調製
表3に従い、顔料40部、顔料誘導体5部、特定樹脂又は比較用樹脂のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液60部(固形換算18部)、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート300部からなる混合液を、ビーズミル(ジルコニアビーズ0.3mm径)により3時間混合・分散して、顔料分散液(X−1)〜(X−30)を調製した。
なお、表3中のPG58、PY139、PY150、PY185は、それぞれC.I.ピグメントグリーン58、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー185を表す。
【0220】
1−2.分散性、分散安定性の評価
得られた顔料分散液(X−1)〜(X−30)の粘度を、分散1日(24時間)後及び14日(336時間)後に測定することで、分散性、分散安定性を評価した。粘度の測定には、TV−22型粘度計コーンプレートタイプ(東機産業株式会社製)を用いた。評価環境は25℃であった。
顔料分散液の粘度の値が小さいことは、顔料の分散性に優れることを表す。また、顔料分散液の粘度が小さく、かつ、経時による増粘度が小さいほど、顔料の分散安定性が良好であることを表す。
結果を表3に示す。
【0221】

【0222】
表3中に示す、顔料誘導体(W1)、(W2)、(W3)及び(W4)は、それぞれ、顔料誘導体の具体例として前掲した(A−9)、(A−10)、(A−1)及び(A−2)である。また、顔料及び樹脂の欄に記載される質量比は、固形分当たりの質量比である。表3中に示す樹脂A及び樹脂Bは、下記方法で合成した。
【0223】
(樹脂Aの合成方法)
反応器にプロピレングリコール1−モノメチルエーテル2−アセテート400質量部を仕込み、窒素気流下、90℃で攪拌した。次に、モノマー槽にジメチル−2,2’−〔オキシビス(メチレン)〕ビス−2−プロペノエート30質量部、メタクリル酸60質量部、メタクリル酸シクロヘキシル110質量部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート5.2質量部、プロピレングリコール1−モノメチルエーテル2−アセテート40質量部を、連鎖移動剤槽にn−ドデシルメルカプタン5.2質量部、プロピレングリコール1−モノメチルエーテル2−アセテート27質量部を仕込み、それぞれ135分かけて滴下を行った。滴下が終了して60分後に昇温し、反応槽を110℃にした。3時間後、乾燥空気雰囲気下にし、メタクリル酸グリシジル39.6部、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)0.4質量部、トリエチルアミン0.8質量部仕込み、110℃で9時間反応させた。得られた樹脂Aの重量平均分子量は9,000、酸価は105mgKOH/gであった。
【0224】
(樹脂Bの合成方法)

【0225】
アクリル酸ブチル200g及び連鎖移動剤(a)9.1gを窒素気流下、140℃で5時間加熱した。その後、減圧により未反応のアクリル酸ブチルを留去し、ポリアクリル酸ブチル140gを得た。次に、メタクリル酸2−ジメチルアミノエチル70gを添加し、窒素気流下、140℃で5時間加熱した。その後、減圧により未反応のメタクリル酸2−ジメチルアミノエチルを留去し、アクリル酸ブチルからなる繰り返し単位とメタクリル酸2−ジメチルアミノエチルからなる繰り返し単位を有するブロック型樹脂(B)を195g得た。重量平均分子量8,000、数平均分子量6,200、アミン価は100mgKOH/gであった。
【0226】
[実施例26〜56、比較例6〜10]
以下、液晶表示装置用のカラーフィルタ形成用として、着色硬化性組成物を調製した実施例及び比較例を挙げて説明する。
【0227】
2−1.着色硬化性組成物(塗布液)の調製
実施例1〜25、比較例1〜5にて調製した各顔料分散液を用いて、下記組成比となるよう撹拌混合して着色硬化性組成物を調製した。
【0228】
<着色硬化性組成物の組成>
・前記顔料分散液:表4に記載の種類 600部
・光重合開始剤:表4に記載の種類 20部
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 20部
・下記構造の樹脂(L−1)(30wt%PGMEA溶液) 20部(固形分換算6部)
・溶剤:PGMEA 900部
・基板密着剤:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン) 1部
上記組成中、PEGMEAは「プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート」の略称である。(以下の説明においても同様。)
【0229】

【0230】
樹脂(L−1)は、共重合比が左から60/10/30(質量%)、重量平均分子量15,000、数平均分子量9,000の樹脂である
【0231】
2−2.着色硬化性組成物層の形成
上記にて調製した着色硬化性組成物をレジスト溶液として、550mm×650mmのガラス基板に下記条件でスリット塗布した後、真空乾燥とプリベーク(prebake)(100℃80秒)を施して、ガラス基板上に着色硬化性組成物の塗布膜(着色硬化性組成物層)を形成した。
【0232】
(スリット塗布条件)
・塗布ヘッド先端の開口部の間隙:50μm
・塗布速度:100mm/秒
・基板と塗布ヘッドとのクリアランス:150μm
・乾燥膜厚1.75μm
・塗布温度:23℃
【0233】
2−3.露光処理、現像処理
その後、着色硬化性組成物の塗布膜を、線幅20μmのフォトマスクを介して、日立ハイテクノロジー社製のLE4000Aを用いて、2.5kWの超高圧水銀灯により、パターン状に100mJ/cm2露光した。露光後、塗布膜の全面を無機系現像液(商品名:CDK−1、富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)の1%水溶液で被い、60秒間静止した。
【0234】
2−4.加熱処理
静止後、純水をシャワー状に噴射して現像液を洗い流し、露光(光硬化)処理及び現像処理を施した塗布膜を220℃のオーブンにて1時間加熱処理した(ポストベーク)。これにより、ガラス基板上に着色硬化性組成物のパターン(着色層)を形成したカラーフィルタを得た。
・・・中略・・・
【0241】

【0242】
表4中に示す、光重合開始剤(Z−1)〜(Z−7)の詳細は、以下の通りである。なお、下記に示す光重合開始剤(Z−1)は、(Z−1−a):(Z−1−b)=20:10(質量部)の混合物である。
【0243】

【0244】
表4の結果から、液晶表示素子用途のカラーフィルタ製造用として用いた実施例26〜56の着色硬化性組成物は、いずれも分散性及び分散安定性に優れたものであることが判る。また、これらの着色硬化性組成物を用いて、支持体上で着色パターンを形成した場合には、比較例の着色硬化性組成物を用いた場合に対して、残渣が少なく現像性、耐光性に優れると共に、コントラストに優れたカラーフィルタが得られていることが判る。
【0245】
[実施例57〜87、比較例11〜15]
以下、固体撮像素子用途のカラーフィルタ形成用として、着色硬化性組成物を調製した実施例及び比較例を挙げて説明する。
【0246】
3−1.レジスト液の調製
下記組成の成分を混合して溶解し、レジスト液を調製した。
<レジスト液の組成>
・溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 19.20部
・溶剤:乳酸エチル 36.67部
・アルカリ可溶性樹脂:メタクリル酸ベンジル/メタクリル酸/メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル共重合体(モル比=60/22/18、重量平均分子量15,000、数平均分子量9,000)の40%PGMEA溶液 30.51部
・エチレン性不飽和二重結合含有化合物:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 12.20部
・重合禁止剤:p−メトキシフェノール 0.0061部
・フッ素系界面活性剤:F−475、DIC(株)製 0.83部
・光重合開始剤:トリハロメチルトリアジン系の光重合開始剤 0.586部
(TAZ−107、みどり化学社製)
【0247】
3−2.下塗り層付シリコン基板の作製
6inchシリコンウエハをオーブン中で200℃のもと30分加熱処理した。次いで、このシリコンウエハ上に、前記レジスト液を乾燥膜厚が1.5μmになるように塗布し、更に220℃のオーブン中で1時間加熱乾燥させて下塗り層を形成し、下塗り層付シリコンウエハ基板を得た。
【0248】
3−3.着色硬化性組成物(塗布液)の調製
実施例1〜25、比較例1〜5にて調製した顔料分散液(X−1)〜(X−30)を用いて、下記組成比となるよう撹拌混合して着色硬化性組成物を調製した。
<着色硬化性組成物の組成>
・前記顔料分散液:表5に記載の種類 600部
・前記構造の樹脂(L−1)30wt%PGMEA溶液) 20部(固形分換算6部)
・光重合開始剤:表5に記載の種類 20部
・重合性化合物:東亞合成(株)製TO−1382(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートの混合物とジペンタエリスリトールペンタアクリレートのコハク酸誘導体の混合物) 20部
・重合性化合物:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 30部
・溶剤:PGMEA 900部
・・・中略・・・
【0258】

【0259】
表5の結果から、固体撮像素子用途のカラーフィルタ製造用として用いた実施例57〜87の着色硬化性組成物は、いずれも分散性及び分散安定性に優れたものであることが判る。また、これらの着色硬化性組成物を用いて、支持体上で着色パターンを形成した場合には、比較例の着色硬化性組成物を用いた場合に対して、残渣が少なく現像性、耐光性に優れると共に、色ムラに優れたカラーフィルタが得られていることが判る。」

(2)引用発明2
引用文献2の【0219】、【0227】〜【0228】には、「表3に従い、顔料40部、顔料誘導体5部、特定樹脂又は比較用樹脂のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液60部(固形換算18部)、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート300部からなる混合液を、ビーズミル(ジルコニアビーズ0.3mm径)により3時間混合・分散して、顔料分散液(X−1)〜(X−30)を調製し」、「実施例1〜25、比較例1〜5にて調製した各顔料分散液を用いて、下記組成比となるよう撹拌混合して着色硬化性組成物を調製」することが記載されている。
「<着色硬化性組成物の組成>
・前記顔料分散液: 表4に記載の種類 600部
・光重合開始剤: 表4に記載の種類 20部
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 20部
・下記構造の樹脂(L−1)(30wt%PGMEA溶液) 20部(固形分換算6部)
・溶剤: PGMEA 900部
・基板密着剤: 3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン) 1部
上記組成中、PEGMEAは「プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート」の略称である。」
同文献の【表3】及び【表4】を参照すると、実施例46の着色硬化性組成物は、実施例15の「顔料分散液」「(X−15)」及び「光重合開始剤」「(Z−2)」を用いて「調整」されたものである。さらに、【表3】より、「顔料分散液」「(X−15)」には、「顔料」として、「PG58」及び「PY185」が含まれることが理解できる。また、同文献の【0219】より、「PG58」は「C.I.ピグメントグリーン58」を意味し、「PY185」は、「C.I.ピグメントイエロー185」を意味すると解される。
以上総合すると、引用文献2には、実施例46として、次の着色硬化性組成物の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「 C.I.ピグメントグリーン58及びC.I.ピグメントイエロー185を含む顔料40部、顔料誘導体5部、特定樹脂又は比較用樹脂のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液60部(固形換算18部) 、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート300部からなる混合液を、ビーズミル( ジルコニアビーズ0.3mm径)により3時間混合・分散して顔料分散液(X−15)を調整し、
顔料分散液(X−15)600部、下記構造の光重合開始剤(Z−2)20部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート20部、下記構造の樹脂(L−1)(30wt%PGMEA溶液)20部(固形分換算6部)、溶剤PGMEA900部及び基板密着剤である3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1部の組成比となるように攪拌混合して調整した着色硬化性組成物。




(3)対比
本願発明と引用発明2を対比する
ア 着色剤(A)
引用発明2において、「顔料分散液(X−15)」に含まれる「顔料」である「C.I.ピグメントグリーン58」及び「C.I.ピグメントイエロー185」は、その文言が意味するとおり、それぞれ、本願発明の「C.I.ピグメントグリーン58」及び「C.I.ピグメントイエロー185」に相当する。
上記構成より、引用発明2の「顔料」は、本願発明の「着色剤(A)」に相当し、「前記着色剤(A)として、「C.I.ピグメントグリーン58とC.I.ピグメントイエロー185とを含」むという要件を満たす。

イ 樹脂(B)
引用発明2の「樹脂(L−1)」は、その構造からみて、本願発明の「樹脂(B)」に相当する。

ウ 重合性化合物(C)
引用発明2の「ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート」は、技術常識より重合性化合物であることは明らかであり(当合議体注:引用文献2の【0129】の記載からも重合性化合物であることが理解できる。)、本願発明の「重合性化合物(C)」に相当する。

エ 重合開始剤(D)
引用発明2の「光重合開始剤(Z−2)」は、その構造からみて、O−アシルオキシム化合物に該当する。
そうすると、引用発明2の「光重合開始剤(Z−2)」は、本願発明の「重合開始剤(D)」に相当し、「O−アシルオキシム化合物を含む」という要件を満たす。

オ 着色感光性樹脂組成物
引用発明2の「着色硬化性組成物」は、上記ア〜エに記載した材料を含む構成のものであって、感光性を有するものである。
上記構成及び機能からみて、引用発明2の「着色硬化性組成物」は、本願発明の「着色感光性樹脂組成物」に相当し、「着色剤(A)、樹脂(B)、重合性化合物(C)及び重合開始剤(D)を含」むという要件を満たす。

(4)一致点及び相違点
上記(3)によれば、本願発明と引用発明2は、次の点で一致ないし相違する。
ア 一致点
本願発明と引用発明2は、以下の点で一致する。
「 着色剤(A)、樹脂(B)、重合性化合物(C)及び重合開始剤(D)を含み、
前記着色剤(A)として、C.I.ピグメントグリーン58とC.I.ピグメントイエロー185とを含み、
前記重合開始剤(D)は、O−アシルオキシム化合物を含む着色感光性樹脂組成物。」

イ 相違点
本願発明と引用発明2は、以下の点で相違する。
(相違点1)
「C.I.ピグメントイエロー185」が、本願発明では「粒径100nm以上の粒子が5質量%以下である粒度分布を有し」ているのに対し、引用発明2においては、そのように特定されていない点。

(5)判断
引用文献2の【0090】には、「本発明の顔料分散液を適用して得られるカラーフィルタが、高透過率であることが好ましいことを考慮すると、なるべく微細なものが好ましい。また、顔料分散液のハンドリング性をも考慮すると、その他の顔料の平均1次粒子径は、5nm〜100nmが好ましく、5nm〜50nmがより好ましい。」と記載されており、コントラストの向上のためには、顔料の粒径は、なるべく微細なものが好ましいことが示唆されている。
また、例えば、特開2012−172003号公報(以下「引用文献4」という。)の【0031】〜【0034】及び特開2007−140171号公報(以下「引用文献5」という。)の【0006】〜【0008】、図2、図4、図8及び図10等に記載されているように、カラーフィルタ用の着色組成物の技術分野において、コントラストの向上のために、顔料の平均一次粒子径のみならず、粒径の大きな粒子の割合を低くとどめることが好ましいことは、先の出願当時における周知技術であると認められる。さらに、引用文献5の図2等には、顔料の一次粒子の個数頻度粒度分布曲線において、粒径100nmにおいて頻度がほぼ100%である顔料が具体的に開示されている。
以上によれば、引用発明2において、引用文献2の上記示唆にしたがって、コントラストの向上を試みる当業者が、顔料の平均一次粒子径をなるべく微細なものにするとともに、上記周知技術にも配慮して、引用発明2の「C.I.ピグメントイエロー185」の粒度分布に着目し、相違点1に係る本願発明の構成、「粒径100nm以上の粒子が5質量%以下である粒度分布」を採用することは容易に想到し得たことである。
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明2及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。

(6) 引用文献2に記載されるその他の実施例について
引用文献2の実施例45、47、52〜56、76〜78、83〜87の「着色硬化性組成物」も、「C.I.ピグメントグリーン58」、「C.I.ピグメントイエロー185」及び光重合開始剤(Z−2)を含んでおり、これらを引用発明としても上記(3)〜(5)と同様の判断となる。

2 引用文献1を主引例とした場合
(1)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された、引用文献1(特開2014−26228号公報)は、先の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であるところ、そこには以下の記載がある。

ア 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白色発光有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子(以下、「有機EL素子」ということがある。)を用いたカラー表示装置に好ましく用いられる有機EL表示装置用緑色着色組成物、カラーフィルタ、およびカラー表示装置に関する。なお、白色とは、擬似白色を含めた広い概念を意味する。
【背景技術】
【0002】
カラーフィルタを使用するカラー表示装置としては、たとえば(i)光源としてのバックライト、光シャッターとしての液晶、色調整機能(色変換機能、色分解機能、色補正機能など)を有するカラーフィルタの組み合わせからなる液晶表示装置、(ii)合成白色有機EL光源、色調整機能(色変換機能、色分解機能、色補正機能など)を有するカラーフィルタの組み合わせからなる有機EL表示装置などが挙げられる。
【0003】
現在フラットパネルディスプレイは(i)の液晶ディスプレイが主流となっており、低消費電力、省スペース等の利点から、パソコンのモニター、携帯電話のディスプレイや、ノート型パーソナルコンピューター、携帯情報端末等の様々な用途で使用され、また近年は、従来のブラウン管テレビに替わり液晶テレビの用途にも使用されている。液晶テレビの用途では、色再現性が重要視される。カラー液晶表示装置の色再現性は、赤、緑、青のフィルタセグメントから放射される光の色で決まり、それぞれのフィルタセグメントの色度点をそれぞれ(xR,yR)、(xG,yG)、(xB,yB)としたとき、x−y色度図上のこれらの3点で囲まれる三角形の面積で評価され、アメリカNationalTelevisionSystemCommittee(NTSC)により定められた標準方式の3原色、赤(0.67,0.33)、緑(0.21,0.71)、青(0.14,0.08)により囲まれる面積に対する比(単位は%、以下NTSC比と略す。)として表現される。この値は、一般のノートパソコンで40〜100%、パソコン用のモニターで50〜100%、液晶テレビでは70%〜100%となっている。
【0004】
(i)の液晶表示装置におけるバックライトとしては、冷陰極管タイプバックライト、無機材料を用いた発光ダイオードや有機EL素子を用いた、2波長ピークの擬似白色バックライトと3波長ピークのバックライトなどがある。液晶表示装置は、2枚の偏光板に挟まれた液晶層が、1枚目の偏光板を通過した光の偏光度合いを制御して、2枚目の偏光板を通過する光量をコントロールすることにより表示を行う表示装置であり、VAモード、IPSモード等があり、中でもTN(ツイストネマチック)モード型液晶を用いるタイプが主流となっている。しかしながら、これら液晶表示装置においては、黒表示でもバックライトユニットは白表示と同じ発光をし続けているため、エネルギーの無駄が大きいという問題点を有している。【0005】 (ii)の有機EL表示装置の合成白色光源としては、2波長ピークを有する光源や3波長ピークを有する光源および可視光領域に多数のピークを有するものがあり、各色に発光する有機EL材料を混ぜるか層状に重ねるなどして合成白色光を得ている。
【0006】
有機EL表示装置は、TFT(薄膜トランジスタ)などにより直接画素の光源をオン/オフコントロールすることが出来るため、指定画素の発光を消すことで黒表示を行うことが可能である。したがって、発光装置内に液晶表示装置において用いられる偏向板が不要となり、かつ液晶体によりコントロールを行う必要も無くなる。このため、表示装置における透過光の光量が増大するとともに、黒表示において発光装置を消すことにより、エネルギーの消費を大幅に減少させることができる。また真の暗闇の黒を再現することが可能となり、コントラスト比を大きくすることができる。このような液晶表示装置における問題点が解決された有機ELカラー表示装置として、例えばSONY社製「XEL−1」などの製品が既に上市されている。(例えば特許文献1参照)
【0007】
しかしながら、このような有機EL素子を用いた発光装置は、従来用いられている光源の発光スペクトルと発光スペクトルが異なっている。例えば従来の光源では420〜430nm付近にピークを有しているが、有機EL素子を用いた光源では、材料の特性から420〜430nm近辺にピークは無く、460nm付近にピークを有している。また有機EL素子を用いた光源の発光スペクトルは、従来の光源と比較して全体的にブロードなピークを有しているため、460nm近辺のピークを過ぎた後においても、500nm付近まで従来の光源よりスペクトルが高くなっている。これらの理由から、有機EL素子を用いた光源を使用した表示装置に、現在使用されているカラーフィルタをそのまま用いることができないのが現状である。このため有機EL素子を用いた光源に使用できる、最適な色相や透過率特性を持つカラーフィルタ材料の選択、開発が必要となっている。
【0008】
このような光源を有する有機EL表示装置においても、液晶表示装置と同様、NTSC比を高くすることが求められる。NTSC比を大きくするためには、それぞれのフィルタセグメントの色純度を高くする必要があるが、色純度を高くすると光源の光の利用効率(明度Y値で表す。)が低くなるため、消費電力が多くなるという問題点があった。携帯情報端末や、携帯電話等の主にバッテリーを用いて駆動する製品用途の場合、消費電力を重視するために、従来のカラー液晶表示装置は、NTSC比が30〜50%と低かった。しかし最近は、携帯情報端末や携帯電話で写真やテレビを見る機会が多くなっているため、携帯情報端末や携帯電話のディスプレイでもNTSC比を大きくする要求が高まっている。
【0009】
有機EL表示装置用緑色着色組成物において、NTSC比の大きいカラーフィルタを得るために従来はC.I.ピグメントグリーン36や、C.I.ピグメントグリーン7といった緑色顔料と、着色力に優れたC.I.ピグメントイエロー185や、C.I.ピグメントイエロー139といった黄色顔料を用いることが多い。従来のカラーフィルタにおいては、これらの顔料を使用することで、高い明度と広い色表示領域を達成することができていた。
【0010】
有機EL素子を用いたカラー表示装置は、優れた表示性能から近年注目されているが、表示色(赤色、緑色、青色)ごとにそれぞれ発光層を形成する構成では、これら有機EL発光層は、通常RGBの塗り分けで形成されており、このため素子の構造が複雑となり、素子作成時のマスクアライメントが困難であった。製造が複雑になるとコストが高くなり、また、高精密化、大画面化が困難である。これらの問題を解決する構成として発光層を白色発光層とし、カラーフィルタにより所望の発光色を得る構成が提案されている(特許文献2、3、4参照)。」

イ 「【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の着色組成物は、白色発光有機EL素子を光源として用いる有機EL表示装置において、高い明度と広い色再現性という2つの特性が満足できるカラーフィルタの提供が可能である。また、高NTSC比といった有機EL表示装置用カラーフィルタとして要求される品質も達成可能なカラー表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表わされる構造を有するキノフタロン化合物(A)およびフタロシアニン顔料(B)を含む着色剤と、バインダー樹脂と、光重合性単量体および/または光重合開始剤とを含有することを特徴とする有機EL表示装置用緑色着色組成物に関する。
・・・中略・・・
【発明の効果】
【0029】
本発明の有機EL表示装置用緑色着色組成物は、下記一般式(1)で表わされる構造を有するキノフタロン化合物(A)およびフタロシアニン顔料(B)を着色剤として含んでいることで高い明度と広い色再現領域をカバーすることができる。
またこの前記緑色着色組成物からなる緑色フィルタセグメントを有するカラーフィルタにおいては特定の白色発光有機EL素子の光源と組み合わせることで、白色の明度(Y)、NTSC比の高いカラー表示装置を得ることができる。」

ウ 「【0078】
( 顔料の微細化)
本発明の有機EL表示装置用緑色着色組成物に使用するキノフタロン化合物( A )は、その置換基の種類によって顔料の性質を示すことがある。キノフタロン化合物が顔料の性質を示す場合、本発明の有機EL表示装置用緑色着色組成物に使用する他の着色剤と同様に、ソルトミリング処理等の方法により、顔料粒子の微細化を施すことにより、カラーフィルタ用着色剤として好適に使用することができる。顔料の一次粒子径は、10nm以上であることが好ましいが、コントラストの高いフィルタセグメントを形成するためには、80nm以下であることが好ましい。特に好ましい範囲は、20〜60nmの範囲である。
・・・中略・・・
【0109】
<光重合開始剤>
本発明の着色組成物には、該組成物を紫外線照射により硬化させ、フォトリソグラフィー法によりフィルタセグメントを形成するために、光重合開始剤を加えて溶剤現像型あるいはアルカリ現像型感光性着色組成物の形態で調製することができる。また、本発明で用いられる光重合開始剤は、ハロゲン原子を含有していないものが好ましい。
【0110】
光重合開始剤としては、ジエトキシアセトフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、または2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン等のアセトフェノン系化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、またはベンジルジメチルケタール等のベンゾイン系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、または3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;チオキサントン、2−メチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、または2,4−ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系化合物;1,2−オクタンジオン,1−〔4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)〕、またはO−(アセチル)−N−(1−フェニル−2−オキソ−2−(4’−メトキシ−ナフチル)エチリデン)ヒドロキシルアミン等のオキシムエステル系化合物;ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、または2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等のホスフィン系化合物;9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、エチルアントラキノン等のキノン系化合物;ボレート系化合物;カルバゾール系化合物;イミダゾール系化合物;あるいは、チタノセン系化合物等が用いられる。
これらの光重合開始剤は、1種を単独で、または必要に応じて任意の比率で2種以上混合して用いることができる。
【0111】
光重合開始剤の含有量は、着色剤の全重量を基準(100重量部)として、2〜200重量部であることが好ましく、光硬化性及び現像性の観点から3〜150重量部であることがより好ましい。」

エ 「【0139】
(多官能チオール)
本発明の着色組成物は多官能チオールとして、チオール(SH)基を2個以上有する化合物を含んでも良い。
多官能チオールを光重合開始剤とともに使用することにより、光照射後のラジカル重合過程において、連鎖移動剤として働き、酸素による重合阻害を受けにくいチイルラジカルが発生するので、得られる着色組成物は高感度となる。特に、SH基がメチレン、エチレン基等の脂肪族基に結合した多官能脂肪族チオールが好ましい。多官能チオールとしては、例えば、ヘキサンジチオール、デカンジチオール、1,4−ブタンジオールビスチオプロピオネート、1,4−ブタンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、トリメルカプトプロピオン酸トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,4−ジメチルメルカプトベンゼン、2、4、6−トリメルカプト−s−トリアジン、2−(N,N−ジブチルアミノ)−4,6−ジメルカプト−s−トリアジンなどが挙げられ、好ましくは、エチレングリコールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネートが挙げられる。
【0140】
これらの多官能チオールは、1種を単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
多官能チオールの含有量は、着色剤100重量部に対して0.05〜100重量部が好ましく、より好ましくは1.0〜50.0重量部である。多官能チオールの含有量が0.05重量部未満では、連鎖移動剤の効果が小さく、100重量部より多くても、重合開始機能は向上しないうえ、現像性、密着性等が不十分になる。」

オ 「【0214】
< バインダー樹脂溶液の製造方法>
( アクリル樹脂溶液1 )
セパラブル4口フラスコに温度計、冷却管、窒素ガス導入管、撹拌装置を取り付けた反応容器にシクロヘキサノン70.0部を仕込み、80℃ に昇温し、反応容器内を窒素置換した後、滴下管よりn−ブチルメタクリレート13.3部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート4.6部、メタクリル酸4.3部、パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート(東亞合成株式会社製「アロニックスM110」)7.4部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.4部の混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間反応を継続し、重量平均分子量(Mw)26000のアクリル樹脂の溶液を得た。室温まで冷却した後、樹脂溶液約2gをサンプリングして180℃ 、20分加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に合成した樹脂溶液に不揮発分が20重量% になるようにメトキシプロピルアセテートを添加してアクリル樹脂溶液1を調製した。
・・・中略・・・
【0221】
(黄色着色剤3(PY−3)の製造)
キノフタロン化合物(c)を原料として、特開2008−81566号公報に記載の合成方法に従い、化合物(1)の合成と同様の方法で、化合物(2)を得た。
【0222】 化合物(2)

【0223】
・・・中略・・・
【0229】
(黄色着色剤6(PY−6)の製造)
C.I.ピグメントイエロー185(PY185)(BASF社製「パリオゲンイエローD1155」)100部、塩化ナトリウム700部、およびジエチレングリコール180部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所製)に仕込み、80℃で6時間混練した。この混合物を温水2000部に投入し、80℃に加熱しながら1時間攪拌してスラリー状とし、濾過、水洗をくりかえして食塩および溶剤を除いた後、80℃で一昼夜乾燥し、95部の黄色着色剤6(PY−6)を得た。平均一次粒子径は40.2nmであった。
【0230】
・・・中略・・・
【0234】
(緑色着色剤2(PG−2)の製造)
C.I.ピグメントグリーン7(東洋インキ製造株式会社製「リオノールグリーンYS−07」)200部を、フタロシアニン系緑色顔料C.I.ピグメントグリーン58(DIC株式会社「FASTOGEN GREEN A110」)200部に変えた以外は、緑色着色剤1(PG−1)の製造と同様に行い、緑色着色剤2(PG−2)を得た。平均一次粒子径は51.3nmであった。
・・・中略・・・
【0250】
<着色組成物の製造方法>
(黄色着色組成物(DY−1〜9)、緑色着色組成物(DG−1、2)、青色着色組成物(DB−1〜6)、紫色着色組成物(DV−1)、赤色着色組成物(DR−1、2)の作製)
表5に示す組成(重量部)の混合物を均一になるように攪拌混合した後、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、アイガーミル(アイガージャパン社製「ミニモデルM−250MKII」)で5時間分散した後、5.0μmのフィルタで濾過し着色組成物(DY−1〜9)、(DG−1、2)、(DB−1〜6)、(DV−1)、及び(DR−1、2)を作製した。
【0251】

【0252】
なお、表5中、EFKA4300、BYK−LPN6919、およびPGMAcは以下のものである。
EFKA4300:エフカケミカル社製、アミン価56mgKOH/gBYK−LPN6919:ビックケミー社製、アミン価74mgKOH/g
PGMAc:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0253】
<感光性緑色着色組成物の製造方法>
(感光性緑色着色組成物(アルカリ現像型着色レジスト材)(RG−1)の作製)
下記の混合物を均一になるように攪拌混合した後、1.0μmのフィルタで濾過し感光性着色組成物(RG−1)を作製した。
緑色着色組成物(DG−1) :24.7部
黄色着色組成物(DY−1) :42.0部
アクリル樹脂溶液1 : 4.3部
光重合単量体 : 4.2部
東亞合成社製「アロニックスM402」
光重合開始剤 : 1.2部
チバ・ジャパン社製「イルガキュアー907」
増感剤 : 0.4部
保土谷化学社製「EAB−F」
溶剤 :23.2部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAC)
【0254】
(感光性緑色着色組成物(RG−2〜22、RB−1、RR−1))
以下、着色組成物、造塩化合物含有樹脂溶液、アクリル樹脂溶液、光重合性単量体、光重合開始剤、増感剤、溶剤を表6に示す種類、および配合量(重量部)に変更した以外は感光性緑色着色組成物1(RG−1)と同様にして、感光性緑色着色組成物(RG−2〜22、RB−1、RR−1)を作製した。
なお、表6中の光重合成単量体としては東亞合成社製「アロニックスM402」を、光重合開始剤としては、チバ・ジャパン社製「イルガキュアー907」を、増感剤としては保土谷化学社製「EAB−F」を用いた。
【0255】

【0256】
[実施例1〜17、比較例1〜5]
ガラス基板上にブラックマトリクスをパターン加工し、該基板上にスピンコーターで表5に示す着色組成物を用いて有機EL素子(EL−1)において、表7記載のx、yの値になるような膜厚にそれぞれ塗布し、着色組成物の被膜を形成した。該被膜にフォトマスクを介して、超高圧水銀ランプを用いて150mJ/cm2の紫外線を照射した。次いで炭酸ナトリウム0.15重量%炭酸水素ナトリウム0.05重量%陰イオン系界面活性剤(花王社製「ペリレックスNBL」)0.1重量%及び水99.7重量%からなるアルカリ現像液によりスプレー現像して未露光部分を取り除いた後、イオン交換水で洗浄し、この基板を230℃で20分加熱して、表7に示す緑色フィルタセグメントを形成した。
【0257】

【0258】
<緑色フィルタセグメントの評価>
得られた緑色フィルタセグメントにおける色特性および膜厚の評価を下記方法で行った。表7に評価結果を示す。
【0259】
(色特性・膜厚評価)
実施例1〜17、比較例1〜5で作製した緑色フィルタに、有機EL素子1(EL−1)を用いて光を照射したときの緑色フィルタセグメントの色特性(x、y、Y)を顕微分光光度計(オリンパス光学社製「OSP−SP100」)を用いて測定した。
膜厚については表面形状測定器DEKTAK150(アルバックイーエス社製)を用いて測定した。
【0260】
実施例1〜17と比較例1〜5を比較すると、従来用いられてきたC.I.ピグメントイエロー185等を含有する着色組成物によって形成された緑色フィルタセグメントと比較してキノフタロン化合物(A)を含有したフィルタセグメントは高い明度Yを示しながら、かつ3.0μm以下という実用的な範囲内で形成することが可能であった。」

(2)引用発明1
ア 引用文献1の【0254】によると、「感光性緑色着色組成物1(RG−17)」は、「感光性緑色着色組成物(RG−1)」の製造方法において、「着色組成物、造塩化合物含有樹脂溶液、アクリル樹脂溶液、光重合性単量体、光重合開始剤、増感剤、溶剤を表6に示す種類、および配合量(重量部)に変更し」て作製したものである。そして、表6より、「感光性緑色着色組成物」「(RG−17)」は、着色組成物として、「緑色着色組成物(DG−2)」を「59.1部」、「黄色着色組成物(DY−3)」を「3.8部」、「黄色着色組成物(DY−6)」を「3.8部」含むことが見て取れる。また、「感光性緑色着色組成物」「(RG−17)」が含む「アクリル樹脂溶液1」は、同文献の【0214】に記載される方法により調整される。

イ 引用文献1の【0234】及び【0229】の記載を参照すると、表5に記載される「(PG−2)」は「C.I.ピグメントグリーン58」を含む緑色着色剤(PG−2)であり、「(PY−6)」は「C.I.ピグメントイエロー185」を含む黄色着色剤(PY−6)である。
また、黄色着色組成物(DY−6)は、上記着色剤(PY−6)を含む混合物を均一になるように攪拌混合した後、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、アイガーミル(アイガージャパン社製「ミニモデルM−250MKII」)で5時間分散した後、5.0μmのフィルタで濾過して作製されるものであり(同文献【0250】を参照。)、緑色着色組成物(DG−2)は、上記着色剤(PG−2)を含む混合物を均一になるように攪拌混合した後、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、アイガーミル(アイガージャパン社製「ミニモデルM−250MKII」)で5時間分散した後、5.0μmのフィルタで濾過して作製される。

ウ 上記ア〜イによれば、引用文献1には、次の感光性緑色着色組成物(RG−17)の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。なお、「感光性着色組成物」及び「感光性緑色着色組成物」は、「感光性緑色着色組成物」に用語を統一した。

「 C.I.ピグメントイエロー185を含む混合物を均一になるように攪拌混合した後、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、アイガーミル(アイガージャパン社製「ミニモデルM−250MKII」)で5時間分散した後、5.0μmのフィルタで濾過し黄色着色組成物(DY−6)を作製し、C.I.ピグメントグリーン58を含む混合物を均一になるように攪拌混合した後、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、アイガーミル(アイガージャパン社製「ミニモデルM−250MKII」)で5時間分散した後、5.0μmのフィルタで濾過して緑色着色組成物(DG−2)を作製し、
セパラブル4口フラスコに温度計、冷却管、窒素ガス導入管、撹拌装置を取り付けた反応容器にシクロヘキサノン70.0部を仕込み、80℃ に昇温し、反応容器内を窒素置換した後、滴下管よりn−ブチルメタクリレート13.3部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート4.6部、メタクリル酸4.3部、パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート(東亞合成株式会社製「アロニックスM110」)7.4部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.4 部の混合物を2時間かけて滴下し、滴下終了後、更に3時間反応を継続し、重量平均分子量(Mw)26000のアクリル樹脂の溶液を得て、室温まで冷却した後、樹脂溶液約2gをサンプリングして180℃、20分加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に合成した樹脂溶液に不揮発分が20重量%になるようにメトキシプロピルアセテートを添加してアクリル樹脂溶液1を調製し、
下記の混合物を均一になるように攪拌混合した後、1.0μmのフィルタで濾過し作製した感光性緑色着色組成物(RG−17)。
緑色着色組成物(DG−2) :59.1部
黄色着色組成物(DY−3) : 3.8部
黄色着色組成物(DY−6) : 3.8部
アクリル樹脂溶液1 : 4.3部
光重合単量体 : 4.2部
東亞合成社製「アロニックスM402」
光重合開始剤 : 1.2部
チバ・ジャパン社製「イルガキュアー907」
増感剤 : 0.4部
保土谷化学社製「EAB−F」
溶剤 :23.2部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAC)。」

(3)対比
本願発明と引用発明1を対比する。
ア 着色剤(A)
引用発明1の「緑色着色組成物(DG−2)」は、「C.I.ピグメントグリーン58を含む混合物を均一になるように攪拌混合し」て「作製し」たものである。また、引用発明1の「黄色着色組成物(DY−6)」は、「C.I.ピグメントイエロー185を含む混合物を均一になるように攪拌混合し」て「作製し」たものである。
ここで、引用発明1の「C.I.ピグメントグリーン58」及び「C.I.ピグメントイエロー185」は、文字どおり、それぞれ本願発明の「C.I.ピグメントグリーン58」及び「C.I.ピグメントイエロー185」に相当する。
上記構成からみて、引用発明1の「緑色着色組成物(DG−2)」、「黄色着色組成物(DY−3)」及び「黄色着色組成物(DY−6)」は、本願発明の「着色剤(A)」に相当し、「C.I.ピグメントグリーン58とC.I.ピグメントイエロー185とを含」むという要件を満たす。

イ 樹脂(B)
引用発明1の「アクリル樹脂溶液1」は、「n−ブチルメタクリレート13.3部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート4.6部、メタクリル酸4.3部、パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート(東亞合成株式会社製「アロニックスM110」)7.4部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.4 部の混合物を2時間かけて滴下し、滴下終了後、更に3時間反応を継続し」、「得」られた「アクリル樹脂の溶液を」「室温まで冷却した後、樹脂溶液約2gをサンプリングして180℃、20分加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に合成した樹脂溶液に不揮発分が20重量%になるようにメトキシプロピルアセテートを添加して」「調整し」たものであり、技術的にみて、本願発明の「樹脂(B)」に相当する。

ウ 重合性化合物(C)
引用発明1の「アロニックスM402」は、光が照射されることによって重合し得る「光重合単量体」であるから、本願発明の「重合性化合物(C)」に相当する。

エ 重合開始剤(D)
引用発明1の「イルガキュアー907」は、「光重合開始剤」であるから、本願発明の「重合開始剤(D)」に相当する。

オ 着色感光性樹脂組成物
引用発明1の「感光性緑色着色組成物(RG−17)」は、上記ア〜エに記載した「混合物」を「均一になるように攪拌混合し」て「作製し」たものである。
上記構成からみて、引用発明1の「感光性緑色着色組成物(RG−17)」は、本願発明の「着色感光性樹脂組成物」に相当し、「着色剤(A)、樹脂(B)、重合性化合物(C)及び重合開始剤(D)を含」むという要件を満たす。

(4)一致点及び相違点
上記(3)によれば、本願発明と引用発明1は、次の点で一致ないし相違する。
ア 一致点
本願発明と引用発明1は、次の点で一致する。
「 着色剤(A)、樹脂(B)、重合性化合物(C)及び重合開始剤(D)を含み、
前記着色剤(A)として、C.I.ピグメントグリーン58とC.I.ピグメントイエロー185とを含む着色感光性樹脂組成物。」

イ 相違点
本願発明と引用発明1は、以下の点で相違する。
(相違点2)
「C.I.ピグメントイエロー185」が、本願発明では「粒径100nm以上の粒子が5質量%以下である粒度分布を有し」ているのに対し、引用発明1においては、そのように特定されていない点。
(相違点3)
「重合開始剤(D)」が、本願発明では、「O−アシルオキシム化合物を含む」のに対し、引用発明1においては、「イルガキュアー907」であって、O−アシルオキシム化合物を含まない点。

(5)判断
ア 相違点2について
引用文献1の【0078】には、「顔料の一次粒子径は、10nm以上であることが好ましいが、コントラストの高いフィルタセグメントを形成するためには、80nm以下であることが好ましい。特に好ましい範囲は、20〜60nmの範囲である。」と記載されており、コントラストの向上のためには、顔料の粒径は、80nm以下に小さくすることが好ましいことが示唆されている。
そして、引用発明1において、引用文献1の上記示唆にしたがって、コントラストの向上を試みる当業者が、上記1(5)に示した理由と同様に、顔料の平均一次粒子径をなるべく微細なものにするとともに、引用文献4〜5に記載される周知技術にも配慮して、引用発明1の「C.I.ピグメントイエロー185」の粒度分布に着目し、相違点2に係る本願発明の構成、「粒径100nm以上の粒子が5質量%以下である粒度分布」を採用することは容易に想到し得たことである。

イ 相違点3について
引用文献1の【0110】には、光重合開始剤として、「オキシムエステル系化合物」を用いることが示唆されている。
また、着色感光性樹脂組成物において「O−アシルオキシム化合物を含む」光重合開始剤を用いることは、引用文献2(【0148】〜【0154】、【0242】〜【0243】等参照。)の他、特開2012−53278号公報の【0090】〜【0091】にも記載されているように周知技術である。
そして、引用文献1の上記示唆及び周知技術に基づいて、引用発明1において、光重合開始剤として、「イルガキュア−907」に代えて、「O−アシルオキシム化合物」を採用することは、当業者であれば通常の創作能力の発揮により適宜なし得たことである。
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明1及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。

(6) 引用文献1に記載されるその他の実施例について
引用文献1に記載される感光性緑色着色組成物(RG−22)の発明も、着色料として「C.I.ピグメントグリーン58」及び「C.I.ピグメントイエロー185」等を含むものであり、これを引用発明としても上記(3)〜(5)と同様の判断となる。

3 発明の効果について
本願発明の効果として、本件出願の明細書の【0007】には、「薄膜であっても、コントラスト及び明度が高く且つ低い位相差を示す高精細カラーフィルタの提供が可能な着色感光性樹脂組成物を取得できる。」と記載されている。また、【0010】には、「粒径100nm以上の粒子の含有率が前記範囲内であれば、位相差の値が低い良好な塗膜が得られる。」と記載されている。
しかしながら、上記1(5)に記載したとおり、引用発明2において、「C.I.ピグメントイエロー185」が「粒径100nm以上の粒子が5質量%以下である粒度分布を有」する構成を採用することは当業者が容易に想到し得たことであり、このようにして容易に推考された発明(組成物)が上記効果を奏することは当業者が予想可能な範囲のものであって、格別顕著なものともいえない。すなわち、「位相差の値が低い良好な塗膜を得られる」という効果に関して、一般に、粒子を含むフィルタの位相差は当該粒子の形状(等方的か否か)にも依存すると考えられるところ、平均粒子径から大きく離れた、粒径100nmを超える粗大粒子(より小さい粒子と比べて、光学的にみて異方的な形状を呈する場合が多い)の割合を減らすことで位相差の発生が抑制されることは、光学分野の通常の知識を有する当業者にとって予測可能な範囲内の事項である。
したがって、上記効果は、引用発明2又は引用発明1及び周知技術等に基づいて容易に想到し得る発明が具備する効果であるか、容易に想到し得る発明が奏する効果として当業者が予測可能な範囲内のものであって、顕著なものとはいえない。

4 請求人の主張について
請求人は、令和3年4月28日提出の審判請求書において、
「しかしながら本願発明では、着色剤(A)としてC.I.ピグメントグリーン58とC.I.ピグメントイエロー185とを含むときに、C.I.ピグメントイエロー185という特定の顔料をただ単に微細化するのではなく、粒径100nm以上の粒子が5質量%以下であるという特定の粒度分布を有させることにより、形成されるカラーフィルタのコントラストを高めるのみではなく、位相差を低減させるという効果を奏しております(発明の効果の欄、実施例)。
これに対して、引用文献1〜4には特定の顔料に特定の粒度分布を有させることにより、形成されるカラーフィルタの位相差が低減できることは一切教示されておりません。・・・中略・・・よって、コントラストが高いのみならず位相差の値が低いカラーフィルタを提供できるという、相関性のない性能を並立して良好とすることが可能な本願発明の効果は、位相差については一切開示されていない引用文献1〜4に記載される発明からは、当業者であっても予測できない異質な効果であると言えます。・・・中略・・・他方、本願実施例3と着色剤、樹脂等の含有率が同じですが、含有させるC.I.ピグメントイエロー185の粒径100nm以上の粒子の量が7質量%というように5質量%超である本願比較例1の着色感光性樹脂組成物は(表1、段落0136)、当該組成物から形成された塗膜の位相差評価結果は105nmというように、本願実施例3よりも約4倍も高い結果となっております(表2)。・・・中略・・・よって、着色剤(A)としてC.I.ピグメントグリーン58とC.I.ピグメントイエロー185とを含む態様において、前記C.I.ピグメントイエロー185が、粒径100nm以上の粒子が5質量%以下である粒度分布を有するとの本願発明の要件により、形成されるカラーフィルタの位相差低減という引用文献からは予測できない異質な効果を発揮することが可能となっていると言えます。またC.I.ピグメントイエロー185の粒度分布についての数値規定は設計的事項ではなく、効果の点でも臨界的意義を有しているとも言えます。」と主張している。
しかしながら、位相差を低減させる等の効果については、上記3に示したとおりである。
したがって、請求人の上記主張は、採用することができない。


第3 まとめ
本願発明は、引用文献2又は引用文献1に記載された発明及び周知技術等に基づいて、先の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2021-09-29 
結審通知日 2021-10-05 
審決日 2021-10-28 
出願番号 P2016-014153
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03F)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 里村 利光
特許庁審判官 関根 洋之
下村 一石
発明の名称 着色感光性樹脂組成物  
代理人 特許業務法人アスフィ国際特許事務所  
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