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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1381567
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-05-10 
確定日 2022-01-21 
事件の表示 特願2016−150552「情報処理装置、及びその制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 2月 1日出願公開、特開2018− 18445、請求項の数(19)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年7月29日の出願であって、その手続の経緯は次のとおりである。

令和元年 7月29日 :手続補正書の提出
令和2年 3月23日付け:拒絶理由通知書
令和2年 5月25日 :意見書、手続補正書の提出
令和2年 8月19日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書
令和2年10月23日 :意見書、手続補正書の提出
令和3年 1月25日付け:令和2年10月23日付け手続補正書でした
補正の却下の決定、拒絶査定(原査定)
令和3年 5月10日 :拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和3年1月25日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

[理由1]進歩性
本願請求項1ないし4、9ないし16、18及び19に係る発明は、以下の引用文献1及び2に記載された発明に基いて、また、本願請求項5ないし8及び17に係る発明は、以下の引用文献1ないし3に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

1 特開2016−55550号公報
2 特開2015−00501号公報
3 特開2016−34735号公報(周知技術を示す文献)

[理由2]明確性
本願請求項16ないし19に係る発明は、「前記第1の情報前記第1の所定値より小さく」との記載が不明確であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

第3 本願発明
本願請求項1ないし19に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明19」という。)は、令和3年5月10日に提出された手続補正書に係る手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし19に記載された事項により特定される発明であり、そのうち本願発明1は、以下のとおりの発明である。

「 所定の部分への電力の供給を停止する第1の電力状態と、前記所定の部分へ電力を供給する第2の電力状態とを少なくとも含む複数の電力状態を有する情報処理装置であって、
人検知手段と、
前記人検知手段の感度を設定する設定手段と、
前記人検知手段の出力に基づいて、前記人検知手段と人との間の距離に対応する第1の情報を出力し、前記人検知手段の出力に基づいて、前記情報処理装置に向かう人の移動量に対応する第2の情報を出力する制御手段と、
(1)前記設定手段によって第1の感度が設定されると、前記第1の情報が第1の所定値より大きく及び前記第1の所定値より大きい第2の所定値より小さく且つ前記第2の情報が第3の所定値より大きいことを条件に前記情報処理装置の電力状態を前記第1の電力状態から前記第2の電力状態へ移行し、前記第1の情報が前記第1の所定値より小さいことを条件に前記情報処理装置の電力状態を前記第1の電力状態から前記第2の電力状態へ移行し、(2)前記設定手段によって第2の感度が設定されると、前記第1の情報が前記第1の所定値より小さいことを条件に前記情報処理装置の電力状態を前記第1の電力状態から前記第2の電力状態へ移行するが、前記第1の情報が前記第1の所定値より大きく及び前記第2の所定値より小さくても前記情報処理装置の電力状態を前記第1の電力状態から前記第2の電力状態へ移行しない、電力制御手段と、
を備えることを特徴とする情報処理装置。」

なお、本願発明2ないし15は、本願発明1を減縮するものであり、本願発明16は、本願発明1を方法の発明として特定したものであり、本願発明17ないし19は、本願発明16を減縮するものである。

第4 原査定の理由1(進歩性)についての判断
1 引用文献記載事項、引用発明
(1)引用文献1について
ア 引用文献1記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は、強調のために当審が付与した。(これ以降においても同様。)

「【0011】
画像形成装置100は、プリント機能、スキャナ機能、コピー機能、FAX機能などの複数の機能を提供するMFP(Multifunction Peripheral)である。画像形成装置100は、画像形成装置100に接近する人を検知するための超音波センサ15を備える。超音波センサ15は、本実施形態では、図1に示すように、画像形成装置100の操作部に設けられている例で説明するが、限定する意図はなく画像形成装置100の周辺の物を検知可能な位置であればどこに設けられてもよい。超音波センサ15が画像形成装置100に接近する人を検知した場合、画像形成装置100は、上記機能の何れかが使用可能なスタンバイ状態よりも消費電力の小さい省電力状態から当該スタンバイ状態に復帰する。」

「【0012】
超音波センサ15は、非可聴域の40KHzのパルス波を出力すると共に、物体(人等)で反射した当該パルス波の反射波を受信することにより、画像形成装置の周辺に位置する物を検知することができる。そして、超音波センサ15は、パルス波を出力してから反射波を受信するまでの時間に基づいて、画像形成装置100と物体との間の距離を計測する。計測は時間毎に実施され、時間毎の画像形成装置100と物体との距離の遷移が確認できる。なお、ここでは、超音波センサ15を用いる例について説明したが、人を検知可能なセンサであれば、人から放射される赤外線を受光する赤外線受光センサであってもよい。また、超音波センサ15の代わりに、センサと対象物体との間の静電容量に基づいてセンサと対象物体との間の距離を計測する静電容量センサを用いてもよい。また、超音波センサ15の代わりに、赤外線受光部がライン状又はマトリクス状に配置された赤外線アレイセンサを用いてもよい。また、超音波センサ15は、扇形の検知範囲A1を有する。なお、この超音波センサ15は、机の上に置かれたコンピュータなどの障害物の影響を受けずに人を検知するために、パルス波の出力方向が上方になるように配置してもよい。」

「【0037】
<状態遷移>
次に、図4を参照して、画像形成装置100の状態遷移について説明する。画像形成装置100は、スタンバイ状態ST1、表示部復帰状態ST2、静音復帰状態ST3、省電力状態ST4及び電源オフ状態ST5の動作状態を有する。」

「【0077】
<人検知の処理手順>
次に、図13のフローチャートを用いて、図12で説明した人検知(人判定)の判断を行うための、操作部12のマイコン203による処理手順について説明する。また、以下で説明する処理は、物を検知した後に、定期的に行われる距離の測定ごとにマイコン203によって実行される。マイコン203は、時間毎に検知範囲A1に存在する物との距離を測定し、その時間毎の距離データを記憶しており、最新の測定距離と、過去の測定距離とを比較することができる。
【0078】
まず、S1301で、マイコン203は、検知範囲A1に物が存在するか否かを判定するため、超音波センサ15を用いて当該物との距離を測定する。距離が測定されるとS1302に進み、マイコン203は、S1301で測定された物が検知範囲A1の遠エリアに存在するか否かを判定する。遠エリアに存在する場合はS1303に進み、そうでない場合はS1304に進む。S1303で、マイコン203は、今回と前回の測定距離を比較し、距離が減少しているか否かを判定する。即ち、ここでは、検知した物が画像形成装置100に近づいているか否かを判定している。
【0079】
前回の距離結果が測定不可だった場合は、減少していないとの判断となる。距離が減少していない場合にはステップS1301に戻る。距離が減少している場合には、S1305に進み、マイコン203は、減少幅が大きいか否か、即ち、所定の閾値以上であるか否かを判定する。減少幅が大きければ(所定の閾値以上であれば)S1306に進み、大きくなければS1301に戻る。S1305により、図12のケース4のように画像形成装置100に対して斜めに近付くような場合に、人の検知が行われなくなる。一方、幅が大きければS1306に進み、マイコン203は、人として検知する。
【0080】
一方、S1302で人が近エリアに存在すると判断した場合、S1304で、マイコン203は、前回との距離に変化があるかや減少しているか、又はそれら以外であるかを判断する。変化無しや減少している場合はS1306に進み、そうでない場合はS1301に戻る。S1306で、マイコン203は、人として検知する。人として検知した後は、使用者であるか否かの判定に進む。また、人として検知した場合は、画像形成装置100は、図10に示すように、省電力状態ST4から静音復帰状態ST3へ遷移する。」

「【図12】



「【図13】」



イ 引用発明
前記アより、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 複数の機能を提供するMFPである画像形成装置100であって、
画像形成装置100は、画像形成装置100に接近する人を検知するための超音波センサ15を備え、超音波センサ15が画像形成装置100に接近する人を検知した場合、画像形成装置100は、上記機能の何れかが使用可能なスタンバイ状態よりも消費電力の小さい省電力状態から当該スタンバイ状態に復帰し、
超音波センサ15は、扇形の検知範囲A1を有し、
画像形成装置100は、スタンバイ状態ST1、表示部復帰状態ST2、静音復帰状態ST3、省電力状態ST4及び電源オフ状態ST5の動作状態を有し、
マイコン203は、検知範囲A1に物が存在するか否かを判定するため、超音波センサ15を用いて当該物との距離を測定し、距離が測定されると測定された物が検知範囲A1の遠エリアに存在するか否かを判定し、
遠エリアに存在する場合は、今回と前回の測定距離を比較し、距離が減少しているか否かを判定し、距離が減少している場合には、減少幅が大きいか否か、即ち、所定の閾値以上であるか否かを判定し、減少幅が大きければ(所定の閾値以上であれば)S1306に進み、
一方、近エリアに存在すると判断した場合、前回との距離に変化があるかや減少しているか、又はそれら以外であるかを判断し、変化無しや減少している場合はS1306に進み、
S1306では、人として検知する、
画像形成装置100。」

(2)引用文献2について
ア 引用文献2記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0020】
画像形成装置100の電力状態が通常電力モードである時、スイッチ119がONとなり、電源管理部114は、電力線117、118を介して各ブロック全てに電源を供給する。また、画像形成装置100の電力状態がスリープモードであるとき、スイッチ119はOFFとなり、電源管理部114は、RAM104、人体検知部105、ネットワークI/F115、節電キー部127に対してのみ電力線118を介して電源を供給する。画像形成装置100は、少なくとも通常電力モードと、通常電力モードより消費電力の少ないスリープモードの2つの電力状態で動作可能な画像形成装置である。なお、画像形成装置100内の各ブロック間の信号の送信は、システムバス101を介して行われる。」

「【0049】
図8は、実施例2における画像形成装置100の構成の一例を示すブロック図である。なお、実施例1と同じ部分に関しての説明は割愛し、異なる部分のみを説明する。
画像形成装置100には、人体検知部122が備わっており、人体検知部122には第1の検知部106が備わっている。電源管理部114は、電力線118を通じて第1の検知部106に電源を供給する。実施例2においては、第1の検知部106は、人体を検知する感度の強弱を変更可能なものである。
【0050】
図9は、人体検知部122の内部構造と、人体検知部122と電源管理部114の間の信号、電源供給の詳細の一例を示すブロック図である。
電源管理部114は、電力線118を通じて第1の検知部106に電源を供給する。また、メインCPU102は、第1の検知部106に制御信号を送信して、第1の検知部106の焦電センサのセンサ感度の強弱を変更することができる。
【0051】
以下、図10、図11を参照して、実施例2における画像形成装置100の電力状態の制御について説明する。
図10は、実施例2における画像形成装置100の電力状態の制御手順の一例を示すフローチャートである。図11は、実施例2における画像形成装置100の状態が正常状態である場合とエラー状態である場合の焦電センサの検知範囲を示す図である。
【0052】
画像形成装置100が通常電力モードからスリープモードに移行する直前に、メインCPU102は、図10の処理を開始する。なお、S301、S302の処理は、図5のS201、S202の処理と同様のため説明を割愛する。
【0053】
まず、画像形成装置100がエラー状態でない場合、特に画像形成装置100がスリープ移行してもスリープ復帰後に直ぐに使用できる状態(正常状態)である場合について説明する。
【0054】
画像形成装置100がエラー状態でない場合(S302でNoの場合)、メインCPU102は、S310において、第1の検知部106に対して、焦電センサのセンサ感度を、画像形成装置100の状態がエラー状態である時の焦電センサのセンサ感度より低くするよう制御信号を送信する。第1の検知部106は、メインCPU102からの制御信号を受信して、焦電センサのセンサ感度を低く設定する。これにより、焦電センサのセンサ感度が低くなり、焦電センサの検知範囲が狭くなる。焦電センサの検知範囲を図11に示す。
【0055】
図11の1101に示すように、画像形成装置100の状態が正常状態である場合は、焦電センサの検知範囲は、操作部110を操作するために画像形成装置100の前に立ったユーザを焦電センサで人体検知できる程度の検知範囲とする。また、後述するが、画像形成装置100の状態がエラー状態である場合は、焦電センサの検知範囲は、1101に示すように、画像形成装置100の近くを通る通行人を焦電センサで人体検知できる程度の検知範囲とする。
【0056】
次に、S311の処理は、図5のS211の処理と同様のため説明を割愛する。そして、第1の検知部106の焦電センサで人体を検知すると(S312)、第1の検知部106が検知信号を電源管理部114に送信する。電源管理部114は、第1の検知部106からの検知信号を受信すると、図8に示したスイッチ119をONにし、電力線117に接続される各ブロックへの電源の供給が開始される。これにより、画像形成装置100はスリープモードから通常モードに復帰する(S313)。
【0057】
次に、画像形成装置100がエラー状態である場合について説明する。
画像形成装置100がエラー状態である場合(S302でYesの場合)、メインCPU102は、S303において、第1の検知部106に対して、焦電センサのセンサ感度を、画像形成装置100が正常状態である時の焦電センサのセンサ感度よりも高くするよう制御信号を送信する。第1の検知部106は、メインCPU102からの制御信号を受信して、焦電センサのセンサ感度を高く設定する。これにより、図11の1102に示すように、焦電センサのセンサ感度が高くなり、焦電センサの検知範囲が広くなる。
【0058】
次のS304の処理は、図5のS204の処理と同様のため説明を割愛する。そして、第1の検知部106の焦電センサで人体を検知すると(S305)、第1の検知部106が検知信号を電源管理部114に送信する。電源管理部114は、第1の検知部106からの検知信号を受信すると、図8に示したスイッチ119をONにし、電力線117に接続される各ブロックへの電源の供給が開始される。これにより、画像形成装置100はスリープモードから通常モードに復帰する(S306)。
【0059】
次のS307、S308の処理は、図5のS207、S208の処理と同様のため説明を割愛する。そして、S309において、メインCPU102は、第1の検知部106に対して、焦電センサのセンサ感度を、前述した画像形成装置100の状態がエラー状態である時の焦電センサのセンサ感度より低く設定するよう制御信号を送信する。第1の検知部106は、メインCPU102からの制御信号を受信して、焦電センサのセンサ感度を低く設定する。これにより、焦電センサのセンサ感度が低くなり、図11の1101に示すように、焦電センサの検知範囲が狭くなる。
【0060】
以上説明したように、人感センサとして焦電センサを1つのみ備えた画像形成装置100において、画像形成装置100の状態がエラー状態である場合、画像形成装置100の状態が正常状態である場合と比較して人感センサのセンサ感度を高く設定する。そうすることで、人感センサの検知範囲を広くする。これにより、画像形成装置100の状態がエラー状態である場合、画像形成装置100の周囲にユーザがいない間はスリープモードに入ることで消費電力を抑え、かつ周囲にユーザがいる時はスリープ復帰しエラー状態を通知することでエラー状態の解除を促すことが可能となる。
【0061】
また、本実施例では、画像形成装置100の人体検知部105に、焦電センサを用いる構成を説明した。しかし、人体検知部105に用いる人感センサは、焦電センサに限定されるものではなく、検知感度を変更可能な他の人感センサを用いてもよい。」

「【図11】



イ 引用発明2
前記アより、上記引用文献2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「 画像形成装置100は、少なくとも通常電力モードと、通常電力モードより消費電力の少ないスリープモードの2つの電力状態で動作可能な画像形成装置であり、
画像形成装置100には、人体検知部122が備わっており、人体検知部122には第1の検知部106が備わっており、第1の検知部106は、人体を検知する感度の強弱を変更可能なものであり、
画像形成装置100がエラー状態でない場合、メインCPU102は、第1の検知部106に対して、焦電センサのセンサ感度を、画像形成装置100の状態がエラー状態である時の焦電センサのセンサ感度より低くするよう制御信号を送信し、第1の検知部106は、メインCPU102からの制御信号を受信して、焦電センサのセンサ感度を低く設定し、これにより、焦電センサのセンサ感度が低くなり、焦電センサの検知範囲が狭くなり、
画像形成装置100がエラー状態である場合、メインCPU102は、第1の検知部106に対して、焦電センサのセンサ感度を、画像形成装置100が正常状態である時の焦電センサのセンサ感度よりも高くするよう制御信号を送信し、第1の検知部106は、メインCPU102からの制御信号を受信して、焦電センサのセンサ感度を高く設定し、これにより、焦電センサのセンサ感度が高くなり、焦電センサの検知範囲が広くなり、
第1の検知部106の焦電センサで人体を検知すると、第1の検知部106が検知信号を電源管理部114に送信し、画像形成装置100はスリープモードから通常モードに復帰する、
画像形成装置。」

(3)引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0018】
図3は操作部500上で、この画像形成装置1の所有者ないし管理者が、装置の挙動を設定するための画面である。この設定は、人検出感度の設定と、その人検出感度に対応して決定されるタイマしきい値の設定に用いられるものである。
人検知設定8は、人が近づいてきた時に自動的に操作部500を点灯させ、自動的に省電力モードから復帰する設定とするか否かを所有者ないし管理者にOFF/ONで選択させて、設定するものである。
この人検知設定8がOFFの場合は、判断部602は、センサ601の検出結果に関係なく、通電要求信号7を出力しないよう制御を行う。」

「【0031】
S206で、ユーザは、自動作像準備設定10、人検知設定8、人検知レベル9の各パラメータにより、人検出感度14を決定する。具体的には、図6のメインコントローラ部200の一覧表により、上記した各パラメータによって、人検出感度14を決定する。
S207で、メインコントローラ部200は、センサ部の判断部602に、決定された人検出感度14を通知し、判断部602に感度設定をする。」

「【0038】
具体的には、図6で示されるように、自動作像準備設定10の設定がONの場合には、検出距離を短くするよう調整し、自動作像準備設定10がOFFの時と比較して、画像形成装置1のより近傍に来た時に限って、人が近傍にいる事を検知する。具体的には、設定された人検出感度に基づいてあらかじめ決められた所定距離の範囲よりも人が近づいた場合に人が存在することを検出する。」

2 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「複数の機能を提供するMFPである画像形成装置100」及び「超音波センサ15が画像形成装置100に接近する人を検知した場合、画像形成装置100は、上記機能の何れかが使用可能なスタンバイ状態よりも消費電力の小さい省電力状態から当該スタンバイ状態に復帰し」との構成において、「省電力状態」は、「複数の機能の何れかが使用可能なスタンバイ状態」よりも「消費電力の小さい」状態であるから、「画像形成装置100」の「複数の機能の何れか」を実行する所定の部分への電力供給が停止された電力状態であり、逆に、「スタンバイ状態」は、前記所定の部分への電力を供給する電力状態といえる。また、引用発明の「画像形成装置100」は、「スタンバイ状態ST1、表示部復帰状態ST2、静音復帰状態ST3、省電力状態ST4及び電源オフ状態ST5の動作状態を有」するものであるから、「複数の電力状態」を有するものといえる。
また、引用発明の「画像形成装置100」は「情報処理装置」といい得るものである。
よって、引用発明の「画像形成装置100」は、本願発明1の「所定の部分への電力の供給を停止する第1の電力状態と、前記所定の部分へ電力を供給する第2の電力状態とを少なくとも含む複数の電力状態を有する情報処理装置」に相当する。

イ 引用発明の「超音波センサ15」は、「画像形成装置100に接近する人を検知するための」手段であるから、本願発明1の「人検知手段」に相当する。

ウ 引用発明において、「マイコン203」が、「超音波センサ15を用いて当該物との距離を測定」するにあたり、「当該物」が「人」である場合を含み、また、「距離」に対応する情報(第1の情報)を出力することは自明であるから、本願発明1の「前記人検知手段の出力に基づいて、前記人検知手段と人との間の距離に対応する第1の情報を出力」することに相当する。
また、引用発明において、「マイコン203」が、「今回と前回の測定距離を比較し、距離が減少しているか否かを判定し、距離が減少している場合には、減少幅が大きいか否か、即ち、所定の閾値以上であるか否かを判定」するにあたり、「今回と前回の測定距離」が「減少している場合」は、人が「画像形成装置100」に向かっている状態であり、「減少幅」はその移動量であって、この「減少幅」に対応する情報(第1の情報)を出力することは自明であるから、本願発明1の「前記人検知手段の出力に基づいて、前記情報処理装置に向かう人の移動量に対応する第2の情報を出力する」することに相当する。
そして、引用発明の「マイコン203」は、「制御手段」として機能しているといえる。
よって、引用発明の「マイコン203」は、本願発明1の「前記人検知手段の出力に基づいて、前記人検知手段と人との間の距離に対応する第1の情報を出力し、前記人検知手段の出力に基づいて、前記情報処理装置に向かう人の移動量に対応する第2の情報を出力する制御手段」に相当する。

エ 引用発明において、「マイコン203」は、「測定された物が検知範囲A1の遠エリアに存在するか否かを判定し」、「遠エリアに存在する場合」であって、かつ、「今回と前回の測定距離を比較し、距離が減少しているか否かを判定し、距離が減少している場合には、減少幅が大きいか否か、即ち、所定の閾値以上であるか否かを判定し、減少幅が大きければ」「S1306に進み」、一方、「近エリアに存在すると判断した場合」には、「前回との距離に変化があるかや減少しているか、又はそれら以外であるかを判断し、変化無しや減少している場合」は「S1306に進み」、「S1306」は、「人として検知する」処理であり、「人を検知した場合」の処理として、「画像形成装置100は、上記機能の何れかが使用可能なスタンバイ状態よりも消費電力の小さい省電力状態から当該スタンバイ状態に復帰」するように制御するものである。
ここで、引用発明において、「画像形成装置100と人との距離」は、「検知範囲A1」の中で「近エリア」と「遠エリア」に分けて定義されており、「遠エリア」は、「画像形成装置100と人との距離」に対応する情報(第1の情報)が、「近エリア」との境目までの距離に相当する「第1の所定値」と、「検知範囲A1」において「画像形成装置100」から最も遠い距離に相当する(「第1の所定値」より大きい)「第2の所定置」との間の範囲と言い替えることができる。
よって、引用発明において、「測定された物が検知範囲A1の遠エリアに存在する」と判定されることは、本願発明1において「前記第1の情報が第1の所定値より大きく及び前記第1の所定値より大きい第2の所定値より小さく」との条件を満たすことに相当する。
また、引用発明において、「減少幅」が「所定の閾値以上である」と判定されることは、本願発明1において、「前記第2の情報が第3の所定値より大きい」との条件を満たすことに相当する。
また、引用発明の「近エリア」は、「画像形成装置100と人との距離」が前記「第1の所定値」よりも小さい範囲といえる。また、本願発明1の「前記第1の情報が前記第1の所定値より小さいことを条件に」は、「第2の情報」(移動量)に関する条件が付加されることを除外していないから、引用発明において、「近エリアに存在すると判断した場合」に「前回との距離に変化があるかや減少しているか、又はそれら以外であるかを判断し、変化無しや減少している場合」は、本願発明1の「前記第1の情報が前記第1の所定値より小さいこと」という条件を満たすことに含まれる。
また、前記アを参酌すれば、引用発明において、「人として検知する」すなわち「人を検知した場合」に「上記機能の何れかが使用可能なスタンバイ状態よりも消費電力の小さい省電力状態から当該スタンバイ状態に復帰」することは、本願発明1の「前記情報処理装置の電力状態を前記第1の電力状態から前記第2の電力状態へ移行」することに相当する。
また、引用発明の「マイコン203」は、前記ウの認定に加え、「電力制御手段」としても機能するものといえる。
よって、引用発明の「マイコン203」と、本願発明1の「(1)前記設定手段によって第1の感度が設定されると、前記第1の情報が第1の所定値より大きく及び前記第1の所定値より大きい第2の所定値より小さく且つ前記第2の情報が第3の所定値より大きいことを条件に前記情報処理装置の電力状態を前記第1の電力状態から前記第2の電力状態へ移行し、前記第1の情報が前記第1の所定値より小さいことを条件に前記情報処理装置の電力状態を前記第1の電力状態から前記第2の電力状態へ移行し、(2)前記設定手段によって第2の感度が設定されると、前記第1の情報が前記第1の所定値より小さいことを条件に前記情報処理装置の電力状態を前記第1の電力状態から前記第2の電力状態へ移行するが、前記第1の情報が前記第1の所定値より大きく及び前記第2の所定値より小さくても前記情報処理装置の電力状態を前記第1の電力状態から前記第2の電力状態へ移行しない、電力制御手段」とは、「前記第1の情報が第1の所定値より大きく及び前記第1の所定値より大きい第2の所定値より小さく且つ前記第2の情報が第3の所定値より大きいことを条件に前記情報処理装置の電力状態を前記第1の電力状態から前記第2の電力状態へ移行し、前記第1の情報が前記第1の所定値より小さいことを条件に前記情報処理装置の電力状態を前記第1の電力状態から前記第2の電力状態へ移行する、電力制御手段」との点において共通する。

(2)一致点、相違点
前記(1)より、本願発明1と引用発明は、次の点において一致ないし相違する。

[一致点]
「 所定の部分への電力の供給を停止する第1の電力状態と、前記所定の部分へ電力を供給する第2の電力状態とを少なくとも含む複数の電力状態を有する情報処理装置であって、
人検知手段と、
前記人検知手段の出力に基づいて、前記人検知手段と人との間の距離に対応する第1の情報を出力し、前記人検知手段の出力に基づいて、前記情報処理装置に向かう人の移動量に対応する第2の情報を出力する制御手段と、
前記第1の情報が第1の所定値より大きく及び前記第1の所定値より大きい第2の所定値より小さく且つ前記第2の情報が第3の所定値より大きいことを条件に前記情報処理装置の電力状態を前記第1の電力状態から前記第2の電力状態へ移行し、前記第1の情報が前記第1の所定値より小さいことを条件に前記情報処理装置の電力状態を前記第1の電力状態から前記第2の電力状態へ移行する、電力制御手段と、
を備えることを特徴とする情報処理装置。」

[相違点]
<相違点1>
本願発明1は、「前記人検知手段の感度を設定する設定手段」を備えるのに対し、引用発明は、当該手段について特定していない点。

<相違点2>
共通する処理である「前記第1の情報が第1の所定値より大きく及び前記第1の所定値より大きい第2の所定値より小さく且つ前記第2の情報が第3の所定値より大きいことを条件に前記情報処理装置の電力状態を前記第1の電力状態から前記第2の電力状態へ移行し、前記第1の情報が前記第1の所定値より小さいことを条件に前記情報処理装置の電力状態を前記第1の電力状態から前記第2の電力状態へ移行」する処理が、本願発明1においては、「前記設定手段によって第1の感度が設定される」場合になされるものであり、かつ、「前記設定手段によって第2の感度が設定される」場合になされる処理として「前記設定手段によって第2の感度が設定されると、前記第1の情報が前記第1の所定値より小さいことを条件に前記情報処理装置の電力状態を前記第1の電力状態から前記第2の電力状態へ移行するが、前記第1の情報が前記第1の所定値より大きく及び前記第2の所定値より小さくても前記情報処理装置の電力状態を前記第1の電力状態から前記第2の電力状態へ移行しない」処理を備えるのに対し、引用発明は、前記共通する処理が、「第1の感度」が設定される場合になされる処理として特定されていないとともに、「第2の感度」が設定される場合になされる処理を特定していない点。

(3)相違点についての判断
事案に鑑みて先に上記相違点2について検討する。
引用発明2は、「通常電力モードと、通常電力モードより消費電力の少ないスリープモードの2つの電力状態で動作可能な画像形成装置」において、「焦電センサ」の検知範囲を狭くしたり広くしたりすることにより、当該「焦電センサ」が人を検知する「感度」を低くしたり高くしたりすることができるという技術的事項を含むものである。
引用発明と引用発明2は、人検知手段を用いて人を検知したときに電力状態を変更する画像形成装置である点において共通するものの、引用発明は、人検知手段として、人(物)との間の距離を測定することが可能な「超音波センサ」を用いるものであり、一方、引用発明2は、人の検知範囲を変更可能な「焦電センサ」を用いるものである点において異なる。
そして、相違点2に係る本願発明1の構成のうち、「前記第1の情報が前記第1の所定値より大きく及び前記第2の所定値より小さくても前記情報処理装置の電力状態を前記第1の電力状態から前記第2の電力状態へ移行しない」との構成は、「制御手段」が、「人検知手段」と人との間の距離に対応する「第1の情報」が「第1の所定値」より大きく「第2の所定値」よりも小さい場合であっても前記「第1の情報」を出力することができること、すなわち、「人検知手段」は、「人検知手段」からの距離が「第1の所定値」から「第2の所定値」の範囲内に人が存在する場合であっても当該人の検知を行うことができることを前提としている。
よって、仮に、引用発明に引用発明2に係る技術的事項を適用し、相違点2に係る本願発明1の構成のうち「第2の感度が設定されると、前記第1の情報が前記第1の所定値より小さいことを条件に前記情報処理装置の電力状態を前記第1の電力状態から前記第2の電力状態へ移行する」との構成が得られるように、人の検知範囲を、「人検知手段」と人との距離が「第1の所定値」内の範囲となるように「人検知手段」の感度を低くすると、「人検知手段」と人との距離が「第1の所定値」を越える位置に人が存在する場合には、「人検知手段」は、当該人を検知することができなくなるから、相違点2に係る本願発明1の構成のうち「前記第1の情報が前記第1の所定値より大きく及び前記第2の所定値より小さくても前記情報処理装置の電力状態を前記第1の電力状態から前記第2の電力状態へ移行しない」との構成には至らない。
また、引用文献3には、ユーザにより設定された人検出感度に基づいて、検出距離を短くするよう調整することが記載されているにとどまり、仮に、引用発明に、引用文献3に記載された技術事項を適用しても、少なくとも相違点2に係る本願発明1の構成のうち「前記第1の情報が前記第1の所定値より大きく及び前記第2の所定値より小さくても前記情報処理装置の電力状態を前記第1の電力状態から前記第2の電力状態へ移行しない」との構成には至らない。
仮に、電力状態を変更する判断基準となる「感度」を、検知した人との間の距離の範囲が小さくなるように設定することが本願出願時における周知技術であり、かつ、当該周知技術を引用発明に適用することができたとしても、そのように設定された「感度」においては、引用発明の「検知範囲A1」が全体的に小さくなり、それに比例して「遠エリア」及び「近エリア」のそれぞれの範囲が狭くなるにすぎず、そうすると、相違点2に係る本願発明1の構成のうち「(2)前記設定手段によって第2の感度が設定されると、前記第1の情報が前記第1の所定値より小さいことを条件に前記情報処理装置の電力状態を前記第1の電力状態から前記第2の電力状態へ移行するが、前記第1の情報が前記第1の所定値より大きく及び前記第2の所定値より小さくても前記情報処理装置の電力状態を前記第1の電力状態から前記第2の電力状態へ移行しない」との構成には至らない。
また、相違点2に係る本願発明1の「(1)前記設定手段によって第1の感度が設定されると、前記第1の情報が第1の所定値より大きく及び前記第1の所定値より大きい第2の所定値より小さく且つ前記第2の情報が第3の所定値より大きいことを条件に前記情報処理装置の電力状態を前記第1の電力状態から前記第2の電力状態へ移行し、前記第1の情報が前記第1の所定値より小さいことを条件に前記情報処理装置の電力状態を前記第1の電力状態から前記第2の電力状態へ移行し、(2)前記設定手段によって第2の感度が設定されると、前記第1の情報が前記第1の所定値より小さいことを条件に前記情報処理装置の電力状態を前記第1の電力状態から前記第2の電力状態へ移行するが、前記第1の情報が前記第1の所定値より大きく及び前記第2の所定値より小さくても前記情報処理装置の電力状態を前記第1の電力状態から前記第2の電力状態へ移行しない」との構成は、本願出願時における技術常識であるともいえない。
したがって、上記相違点1について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用文献1及び2に記載された発明並びに引用文献3に記載された技術事項に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 本願発明2ないし15について
本願発明2ないし15は、本願発明を減縮するものであり、上記相違点2に係る本願発明1の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても引用文献1及び2に記載された発明並びに引用文献3に記載された技術事項に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

4 本願発明16ないし19について
本願発明16は、本願発明1に対応する方法の発明であり、また、本願発明17ないし19は、本願発明16を減縮するものであり、本願発明16ないし19は、上記相違点2に係る本願発明1の構成に対応する技術的事項を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても引用文献1及び2に記載された発明並びに引用文献3に記載された技術事項に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

よって、原査定の理由1(進歩性)は解消した。

第5 原査定の理由2(明確性)についての判断
本願発明16ないし19において、「前記第1の情報前記第1の所定値より小さく」との誤記は、令和3年5月10日に提出された手続補正書により「前記第1の情報が第1の所定値より大きく前記第1の所定値より大きい第2の所定値より小さく」と補正されて明確となり、他に不明確な点もない。
よって、原査定の理由2(明確性)は解消した。

第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-01-04 
出願番号 P2016-150552
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 稲葉 和生
特許庁審判官 野崎 大進
林 毅
発明の名称 情報処理装置、及びその制御方法  
代理人 特許業務法人大塚国際特許事務所  

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