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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G05B
管理番号 1381576
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-05-28 
確定日 2022-01-25 
事件の表示 特願2017− 32680「設備機器管理システム及び設備機器管理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 8月30日出願公開、特開2018−136885、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年2月23日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和2年10月29日付け:拒絶理由通知
令和2年12月 3日 :意見書の提出
令和3年 4月13日付け:拒絶査定(原査定)
令和3年 5月28日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
本願の請求項1−6に係る発明は、以下の引用文献1−3、6−8に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また、本願の請求項2−5に係る発明は、以下の引用文献1−8に基いて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献
1.特開2013−125509号公報
2.特開平11−264747号公報
3.特開2009−41886号公報
4.特開2001−357152号公報
5.特開2015−138395号公報
6.特開2015−1851号公報
7.特開平7−319535号公報
8.特開2003−233412号公報

第3 本願発明
本願の請求項1−6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」−「本願発明6」という。)は、令和3年5月28日に提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1−6に記載された事項により特定される以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
施設において、設備機器を管理するための設備機器管理システムであって、
前記施設における前記設備機器の位置及び前記施設の設計情報である三次元CAD(Computer Aided Design)データを含む施設情報、並びに、前記設備機器のエネルギー使用量及び動作状況を含む設備機器情報を記憶する記憶部と、
前記設備機器情報に基づいて、前記設備機器のメンテナンス時期を推定する推定部と、
前記推定部の推定結果に応じて、前記設備機器をメンテナンス時期毎のグループに分類する分類部と、
前記分類部の分類結果及び前記施設情報に応じて、メンテナンスが必要なグループに含まれる設備機器のメンテナンスを行う順序を示すメンテナンス経路を特定する特定部と、を備える
設備機器管理システム。
【請求項2】
前記設備機器管理システムは、さらに、前記設備機器のメンテナンス価格情報及び部品供給可否情報の少なくとも一方を取得する取得部を備え、
前記分類部は、前記推定結果、並びに、前記メンテナンス価格情報及び前記部品供給可否情報の少なくとも一方に応じて、前記設備機器をメンテナンス時期毎のグループに分類する
請求項1に記載の設備機器管理システム。
【請求項3】
前記特定部は、前記メンテナンス経路を複数特定する
請求項1又は2に記載の設備機器管理システム。
【請求項4】
前記設備機器管理システムは、さらに、特定された前記メンテナンス経路を出力する出力部を備える
請求項1〜3のいずれか1項に記載の設備機器管理システム。
【請求項5】
前記特定部は、前記メンテナンス経路として、最短経路を特定する
請求項1〜4のいずれか1項に記載の設備機器管理システム。
【請求項6】
施設において、設備機器を管理するための設備機器管理方法であって、
前記設備機器のエネルギー使用量及び動作状況を含む設備機器情報に基づいて、前記設備機器のメンテナンス時期を推定する推定ステップと、
前記推定ステップでの推定結果に応じて、前記設備機器をメンテナンス時期毎のグループに分類する分類ステップと、
前記分類ステップでの分類結果、並びに、前記施設における前記設備機器の位置及び前記施設の設計情報である三次元CADデータを含む施設情報に応じて、メンテナンスが必要なグループに含まれる設備機器のメンテナンスを行う順序を示すメンテナンス経路を特定する特定ステップと、を含む
設備機器管理方法。」

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1(特開2013−125509号公報)について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

ア「【0012】
図1は、本発明の設備保全支援システムの実施の一形態のハードウェア構成を示す図である。
【0013】
図1に示すように本形態におけるハードウェア構成は、ビル管理システム1と、設備保全ライフサイクル予測システム・サーバ5と、設備保全ライフサイクル予測システム・クライアント6とから構成されている。
【0014】
ビル管理システム1は、ビル管理装置2と、設備機器監視端末3と、電力設備や空調設備、熱源設備等の設備機器4から構成されている。設備機器監視端末3は、設備機器4の稼動状態(運転状態、運転時間、故障回数等)をリアルタイムに蓄積する。
【0015】
ビル管理装置2は、設備機器監視端末3にて蓄積された稼動状態を収集し、一元管理している。
【0016】
設備保全ライフサイクル予測システムは、設備保全ライフサイクル予測システム・サーバ5と、設備保全ライフサイクル予測システム・クライアント6と、プリンタ7とから構成されている。
【0017】
設備保全ライフサイクル予測システム・サーバ5は、ビル管理装置2にて一元管理されている設備機器4の稼動状態をオンラインで自動収集し、設備保全ライフサイクル予測システム・サーバ5のデータベースにて一元管理する。」

イ「【0025】
ビル管理システム1のビル管理装置2にて一元管理されている設備機器4の設備稼動情報データは、ビル管理システム1の設備稼動情報データテーブル16に格納されている。そして、ビル管理システム1とオンライン接続された設備保全ライフサイクル予測システム・サーバ5のデータ収集処理部10において、設備稼動情報データテーブル16に格納されている設備機器4の稼働情報データが自動で定期的に収集され、データベースサーバ14内の設備稼動情報収集データテーブル17に格納される。
【0026】
そして、演算処理部11において、設備稼動情報収集データテーブル17に格納された設備稼動情報データに基づいて、演算処理プログラム22によって、設備機器4の運転稼動率及び点検予測日が自動で定期的に算出される。
【0027】
まず、演算処理プログラム22によって、設備機器4の現在の稼動状態(運転時間、運転回数、警報回数)が設備稼動情報収集データテーブル17から取得される。また、演算処理プログラム22によって、設備機器4の稼動状態目標値(目標運転時間、目標運転回数、目標警報回数)が設備機器情報データテーブル18から取得される。」

ウ「【0039】
演算処理プログラム28によって、設備機器情報データテーブル18から設備機器4の機器種別情報と作業修繕費用データが取得されるとともに、運転稼動率・点検予測日データテーブル23から点検予測日データが取得され、設備機器4の機器種別と点検予測日から点検予測年度、並びに年月で設備機器4が機器種別毎に分類される。そして、設備機器4の作業修繕費用データから、点検予測年月及び機器種別単位で作業修繕費用が算出される。この演算結果(何年何月に機器種別毎にどのくらいの作業修繕費用が発生するか)が保全予算計画データテーブル29に格納される。
【0040】
保全予算計画データテーブル29に格納された情報は、画面表示部12の検索機能を有し、クライアントからのブラウザ表示可能とする保全予算計画表情報表示画面プログラム30により、年度、年月または機器種別に検索範囲指定を可能とする選択手段により絞り込み検索され、年度または年月単位で機器種別4毎に集計された作業修繕費用がグラフ表示出力される。また、検索された情報は、印刷処理部13に格納された保全予算計画表情報リスト印字プログラムにより、プリンタ7にてリスト一覧帳票として印字出力される。」

(2)上記(1)より、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているといえる。
「設備保全支援システムであって(上記ア参照。)
設備機器4の稼働情報データを格納する設備稼動情報収集データテーブル17と、(上記イ参照。)
前記設備機器4の稼働情報データに基づいて、設備機器4の点検予測日を算出する演算処理部11(上記イ参照。)と
設備機器4の点検予測日から設備機器4を点検予測年度、並びに年月で分類する演算処理プログラム28(上記ウ参照。)、を備える
設備保全支援システム」

第5 当審の判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。
ア 引用発明1の「設備保全支援システム」は、施設(ビル)において、「設備機器4」を管理(保全)するものであるので、本願発明1の「施設において、設備機器を管理するための設備機器管理システム」に相当する。
イ 引用発明1の「設備機器4の稼働情報データ」は、設備機器の運転時間等の稼働情報を含んでいる点(引用文献1の段落【0027】参照。)で、本願発明1の「動作状況を含む設備機器情報」に相当し、引用発明1の「設備機器4の稼働情報データを格納する設備稼動情報収集データテーブル17」は、設備機器の稼働情報を収集しており、稼働情報を含む設備機器情報を記憶する点で、本願発明1の「前記施設における前記設備機器の」「動作状況を含む設備機器情報を記憶する記憶部」に相当する。
ウ 引用発明1の「前記設備機器4の稼働情報データに基づいて、設備機器4の点検予測日を算出する演算処理部11」は、設備機器の稼働情報に基づいて点検予測日を算出し、点検の時期を推定している点で、本願発明1の「前記設備機器情報に基づいて、前記設備機器のメンテナンス時期を推定する推定部」に相当する。
エ 引用発明1の「設備機器4の点検予測日から設備機器4を点検予測年度、並びに年月で分類する演算処理プログラム28」は、点検予測日から設備機器4を点検予測年度、並びに年月で分類しており、設備機器を点検の時期毎のグループに分類している点で、本願発明1の「前記推定部の推定結果に応じて、前記設備機器をメンテナンス時期毎のグループに分類する分類部」に相当する。
オ 上記ア−エより、本願発明1と引用発明1との一致点及び相違点は以下のとおりである。

[一致点]
施設において、設備機器を管理するための設備機器管理システムであって、
前記施設における前記設備機器の動作状況を含む設備機器情報を記憶する記憶部と、
前記設備機器情報に基づいて、前記設備機器のメンテナンス時期を推定する推定部と、
前記推定部の推定結果に応じて、前記設備機器をメンテナンス時期毎のグループに分類する分類部と、を備える
設備機器管理システム。

[相違点1]
記憶部が、本願発明1では、「施設における前記設備機器の位置及び前記施設の設計情報である三次元CAD(Computer Aided Design)データを含む施設情報、並びに、前記設備機器のエネルギー使用量及び動作状況を含む設備機器情報を記憶する」のに対して、引用発明1では、動作情報を含む設備機器情報を記憶するが、そのほかの情報を記憶しない点。

[相違点2]
本願発明1では、「分類部の分類結果及び前記施設情報に応じて、メンテナンスが必要なグループに含まれる設備機器のメンテナンスを行う順序を示すメンテナンス経路を特定する特定部」を備えるのに対して、引用発明1では、メンテナンス経路を特定する特定部を有さない点。

(2)判断
事案に鑑みて、上記相違点2について先に検討する。
引用文献2には、あらかじめ点検サーバでグルーピングされた機器の効率の良い点検経路を探索して表示することが記載されて(特に段落【0017】−【0019】参照。)おり、機器をグループに分類する(グルーピングする)目的は、複数の機器の点検作業を一括して行うためであるといえる。
これに対して引用文献1は、演算処理プログラム28が設備機器4の点検予測日から設備機器4を点検予測年度、並びに年月で分類するものであって、設備機器のグループを作成すること(グルーピングすること)は記載されているといえる(特に段落【0039】−【0040】参照。)が、当該グルーピングされた設備機器は、年度又は年月単位で作業修繕費用を算出することを目的として分類されるものであって、当該設備機器のグループの点検作業を一括して行うことまでは記載も示唆もされていない。
そうすると、引用発明1の演算処理プログラム28で分類されるグループと、引用文献2に記載されたグループとは、目的が異なるものであり、引用発明1において、作業修繕費用を算出するために分類されたグループを用いて、点検作業を一括して行うために、効率的な点検経路を探索するという引用文献2に記載された技術を適用する動機付けが認められない。
また、引用文献1には、施設における設備機器の位置等の情報を記録することが記載も示唆もされておらず、点検経路の特定のために必要な設備機器の位置情報を有さない引用発明1から、点検経路を特定することが容易に想定できたとは認められず、引用発明1においてメンテナンス経路を特定する特定部を付加する動機付けも認められない。
したがって、引用発明1に、引用文献2に記載の技術を適用して、上記相違点2の構成とすることが当業者にとって容易になし得たということはできない。
また、引用文献3、6−8にも、相違点2に係る本願発明1の構成は記載されていない。

(4)小括
以上のとおりであるから、相違点1について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明1及び引用文献2−3、6−8に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたということができない。

2 本願発明2−5について
本願発明2−5は、本願発明1を引用するものであるから、上記相違点2を含むものであり、本願発明1と同じ理由により、上記相違点2は、当業者であっても、引用発明1及び引用文献2−3、6−8に記載された事項に基づいて容易になし得たということはできないから、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明2−5は、引用発明1及び引用文献2−8に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたということができない。

3 本願発明6について
本願発明6は、物の発明である本願発明1のカテゴリーを変更して方法の発明としたものであるが、その特定事項は実質的に同一であるから、上記相違点2と同様の相違点を含むものであり、当業者であっても、引用発明1及び引用文献2−3、6−8に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたということができない。

第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-01-06 
出願番号 P2017-032680
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G05B)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 刈間 宏信
特許庁審判官 大山 健
松原 陽介
発明の名称 設備機器管理システム及び設備機器管理方法  
代理人 新居 広守  
代理人 道坂 伸一  
代理人 寺谷 英作  

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