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審決分類 審判 査定不服 発明同一 取り消して特許、登録 A63F
管理番号 1381578
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-06-02 
確定日 2022-01-19 
事件の表示 特願2016−237323号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 6月14日出願公開、特開2018− 89274号、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年12月7日の出願であって、令和2年7月27日付けで拒絶の理由が通知され、同年8月18日に意見書及び手続補正書が提出され、同年10月27日付けで拒絶の理由が通知され、同年12月8日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、令和3年1月22日付け(送達日:同年3月2日)で拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされ、それに対して、同年6月2日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

この出願の請求項1に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特願2016−146822号(特開2018−15165号)
2.特開2015−24096号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2006−14892号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2009−234号公報(周知技術を示す文献)

第3 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和3年6月2日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりの発明である(A〜Lは、本願発明を分説するために当審で付した。)。

「【請求項1】
A 筐体と、該筐体の前面を覆う前扉を含む遊技機において、
B 各種回路に電力を供給する電源部と、
C 外周面に複数種類の図柄が配置された複数の回胴と、
D 遊技毎に役を内部抽選する役抽選手段と、
E 遊技毎に複数の回胴を回転させ、各々の回胴に対応して設けられた停止スイッチの操作を受け付けて、対応する回胴を個々に停止させ、前記内部抽選の結果に応じて図柄を表示する図柄表示制御手段と、
F 複数種類の遊技比率を算出する遊技比率算出手段と、
G 前記遊技比率を表示する比率表示器と、
H エラーによる遊技の中止状態を解除する時に使用するエラー解除スイッチと、
を具備し、
I 前記比率表示器は、左側の2つで識別子記号を表示し、右側の2つで遊技比率をパーセント表示し、
J 前記電源部の電源スイッチがオフ状態において、
前記電源スイッチをオン状態にすると、前記比率表示器は、前記左側の2つで識別子記号を表示し、前記右側の2つで前記遊技比率を表示する一方、設定変更状態では、該比率表示器は、該遊技比率を表示しないようになり、
K 前記電源部の電源スイッチがオン状態において、
前記前扉が閉じた状態から開いた状態にすると、前記比率表示器は、前記遊技比率を表示しない一方、該遊技比率を表示しない状態で、前記エラー解除スイッチを1回押下する度に、複数種類の識別子記号と遊技比率を順次表示する
L こと、を特徴とする遊技機。」

第4 引用文献等に記載されている事項
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献等1であって、本願の出願日前の他の特許出願であって、本願の出願後に出願公開された特願2016−146822号(特開2018−15165号)(出願日:平成28年7月26日、出願人:サミー株式会社、発明者:松田健二)(以下、「先願」という。)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「先願明細書等」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

1 記載事項
(1)「【0061】
また、スタートスイッチ41は、(左、中、右のすべての)リール31を始動させるときに遊技者が操作するスイッチである。
さらにまた、ストップスイッチ42は、3つ(左、中、右)のリール31に対応して3つ設けられ、対応するリール31を停止させるときに遊技者が操作するスイッチである。
さらに、精算スイッチ46は、スロットマシン10内部にベット及び/又は貯留(クレジット)されたメダルを払い戻す(ペイアウトする)ときに遊技者が操作するスイッチである。
・・・
【0085】
セグメント6〜9は、管理情報表示LED74を構成し、セグメント6及び7は、管理情報のうち、情報種別を表示する。また、セグメント8及び9は、管理情報のうち、セグメント6及び7で表示した情報種別に対応する数値を表示する。デジット6〜9のセグメントDPは未使用である。ただし、管理情報表示LED74を点灯させるときには、デジット7のセグメントDPを点灯させることも可能である。また、デジット7のセグメントDPを点灯させることにより、情報種別を示すデジット6及び7と数値を示すデジット8及び9の境界を明確にし、確認を容易にすることができる。
・・・
【0089】
リール31は、リング状のものであって、その外周面には複数種類の図柄(役に対応する図柄の組合せを構成している図柄)を印刷したリールテープを貼付したものである。なお、リール31上の図柄の具体的配列は、後述する。
また、各リール31には、1個(2個以上であってもよい)のインデックスが設けられている。インデックスは、リール31のたとえば周側面に凸状に設けられており、リール31が所定位置を通過したか否かや、1回転したか否か等を検出するときに用いられる。そして、各インデックスは、リールセンサ33により検知される。リールセンサ33の信号は、メイン制御基板50に電気的に接続されている。そして、インデックスがリールセンサ33を検知する(切る)と、その入力信号がメイン制御基板50に入力され、そのリール31が所定位置を通過したことが検知される。
・・・
【0094】
また、電源スイッチ11は、スロットマシン10の電源のオン/オフを行うスイッチである。
設定キースイッチ12は、設定キー挿入口から設定キーが挿入され、右90度(時計回り)に回転しているときにオンとなるスイッチであり、設定確認時や設定変更時にオンとされる。
・・・
【0103】
また、図6(A)は、スロットマシン10のフロントドア(前面扉。図示せず。)に設けられた表示窓(透明窓)17と、各リール31の位置関係と、有効ライン(図柄の組合せを表示する表示ライン)とを示す図である。 各リール31は、本実施形態では横方向に並列に3つ(左リール31、中リール31、及び右リール31)設けられている。さらに、各リール31は、表示窓17から、上下に連続する3図柄が見えるように配置されている。よって、スロットマシン10の表示窓17から、合計9個の図柄(コマ)が見えるように配置されている。なお、各図柄の右下の数字は図柄番号を示している。」

(2)「【0124】
役抽選手段61は、条件装置(当選役)の抽選(決定、選択)を行う。したがって、役抽選手段61は、条件装置決定(抽選又は選択)手段、当選役決定(抽選又は選択)手段、等とも称される。
また、「条件装置の当選」は、役抽選結果、抽選結果、当選番号、当選結果、等とも称される。
・・・
【0127】
乱数抽出手段は、乱数発生手段によって発生した乱数を、所定の時、本実施形態では遊技者によりスタートスイッチ41が操作(オン)された時に抽出する。判定手段は、乱数抽出手段により抽出された乱数値を、後述する条件装置抽選テーブルと照合することにより、その乱数値が属する領域に対応する条件装置を決定する。たとえば、抽出した乱数値が入賞及びリプレイ条件装置番号「1」(リプレイA)の領域に属する場合は、リプレイAの当選と判定する。
・・・
【0181】
図1において、リール制御手段65は、リール31の回転開始命令を受けたとき、特に本実施形態ではスタートスイッチ41が操作されたときに、すべて(3つ)のリール31の回転を開始するように制御する。さらに、リール制御手段65は、役抽選手段61により条件装置の抽選が行われた後、今回遊技における当選フラグのオン/オフを参照して、当選フラグのオン/オフに対応する停止位置決定テーブルを選択するとともに、ストップスイッチ42が操作されたときに、ストップスイッチ42が操作されたときのタイミングに基づいて、そのストップスイッチ42に対応するリール31の停止位置を決定するとともに、モータ32を駆動制御して、その決定した位置にそのリール31を停止させるように制御する。
【0182】
たとえば、リール制御手段65は、少なくとも1つの当選フラグがオンである遊技では、リール31の停止制御の範囲内において、当選役(当選フラグがオンになっている役)に対応する図柄の組合せを有効ラインに停止可能にリール31を停止制御するとともに、当選役以外の役(当選フラグがオフになっている役)に対応する図柄の組合せを有効ラインに停止させないようにリール31を停止制御する。
・・・
【0293】
RT制御手段68は、毎遊技、全リール31の停止時に、RTの移行条件を満たすか否かを判断し、RTの移行条件を満たすと判断したときは、RTの移行を行うように制御するものである。
図22は、本実施形態におけるRT移行図を示す図である。本実施形態のRTは、上述したように、非RT、RT1〜RT4、1BBA作動(1BBA遊技)、1BBB作動(1BBB遊技)を備える。そして、図17及び図18で示したように、RTごとに、抽選される条件装置の種類(数)やその当選確率が異なっている。」

(3)「【0393】
図1において、管理情報制御手段72は、管理情報表示LED74に表示する管理情報を制御(記憶、演算、表示等)する手段である。
本実施形態において、管理情報表示LED74に表示すべき情報は、
(1)有利区間割合(累計)
(2)連続役物比率(6000遊技(15セット合計))
(3)役物比率(6000遊技(15セット合計))
(4)連続役物比率(累計)
(5)役物比率(累計)
の5つである(後述する図38参照)。
・・・
【0433】
これに対し、「復帰可能エラー」とは、電源スイッチ11のオン/オフ等なく復帰させることができるエラーを指す。たとえば、メダル詰まりエラー、メダル滞留エラー、メダル不正通過エラー、通路センサ43aの異常、投入センサ44の異常、払出しセンサ37の異常、メダル異常投入エラー等が挙げられる。
復帰可能エラーの発生時は、エラー内容を表示してメイン処理を停止するが、ホール店員がエラー解除操作を実行し(エラー要因を除去し)、リセットスイッチ14を操作すると、エラーが解除されたか否かを判断して、エラーが解除されたと判断したときは、処理を再開する。
・・・
【0472】
本実施形態では、スロットマシン10のフロントドアを開放し(これにより、ドアスイッチ15がオンとなる)、設定キーを挿入し、時計回りに90度回転させると、設定キースイッチ12がオンとなる。この状態は、いわゆる設定確認中である。このため、設定値表示LED73には、現設定値が表示される。なお、設定確認中は、設定変更中とは異なるので、設定スイッチ13を操作しても設定値が変更されることはない。
【0473】
そして、本実施形態では、この設定確認中において、設定スイッチ13を1回押すと、「有利区間割合」が、図3中、デジット6〜9に表示される。まず、デジット6及び7は、情報種別を表示する。図38の例では、有利区間割合を「U7」と表示する。また、この例では、有利区間割合は、「50(%)」であると仮定し、デジット7及び8に「50」と表示する。よって、管理情報表示LED74(デジット6〜9)には、「U750」と表示される。
なお、管理情報の数値を表示するときは、10進数表記である。
【0474】
次に、設定スイッチ13をもう1回押すと、「連続役物比率(6000遊技(15セット))」の表示となり、この情報の種別として「y6」と表示し、この例では比率を「45(%)」と表示している。
さらに、設定スイッチ13をもう1回押すと、「役物比率(6000遊技(15セット))」の表示となり、この情報の種別として「y7」と表示し、この例では比率を「60(%)」と表示している。」

(4)「【0501】
図41は、スロットマシン10の基体部1を示す外観斜視図である。図41では、フロントドアの図示を省略している。なお、フロントドアは、図41中、「フロントドア開閉軸」(図中、左側)を支持軸として、基体部1の前面を開放/閉塞する。また、図41は、第2実施形態の説明で用いるが、第1実施形態の構造も図41と同一である。
図41に示すように、基体部1の内部には、電源スイッチ11を含む電源ユニット、ホッパー35を含むメダル払出し装置、3個のリール31を含む図柄表示装置等が収容されている。
また、サブ制御基板80は、基体部1の内面側の左側面に取り付けられている。これに対し、基板ケース16及びその内部に収容されたメイン制御基板50は、基体部1の内面内側の背面に取り付けられている。さらにまた、基板ケース16及びメイン制御基板50は、図柄表示装置よりも上方部に取り付けられ、フロントドアを開放したときに、基板ケース16のかしめ部16aの状態を目視で容易に確認できるようにするために、基体部1内の比較的見やすい位置に取り付けられている。
このため、メイン制御基板50上に搭載された管理情報表示LED74についても、目視で比較的容易に確認できるようになっている。
・・・
【0516】
(7)上記実施形態では、設定スイッチ13を押すごとに、管理情報を順番通りに表示していくようにした。しかし、設定スイッチ13に限らず、他のスイッチ、たとえばベットスイッチ40等であってもよく、あるいは、管理情報の表示専用のスイッチを別途設けてもよい。
また、本実施形態では、設定スイッチ13とリセットスイッチ14とを別個に設けたが、設定変更/リセットスイッチとして、設定スイッチとリセットスイッチとを1つのスイッチから構成することが考えられる。この場合、設定変更/リセットスイッチの操作がリセット(初期化)操作と重ならないようにすれば、設定変更/リセットスイッチの操作により、管理情報を表示することが可能である。本実施形態のように設定スイッチ13とリセットスイッチ14とを別個に設けた場合において、リセットスイッチ14の操作によって管理情報を表示させる場合も同様である。
・・・
【0519】
このように、管理情報を表示させるスイッチをどのスイッチにするかや、管理情報を表示するスイッチの操作と表示パターン(表示している時間)との関係をどのようにするかは、種々のバリエーションが考えられ、本実施形態で示したものに限定されるものではない。
さらにまた、たとえば、メイン制御基板50上に管理情報表示LED74を搭載する場合に、管理情報の表示パターンとしては、
a)管理情報を常時表示させておく表示パターン
b)フロントドアを開放したとき(ドアスイッチ15がオンとなったとき)に管理情報を表示するパターン
c)フロントドアを開放し、かつ所定のスイッチを操作したときに管理情報を表示するパターン
d)フロントドアを開放し、設定キーを差し込んで設定キースイッチ12をオンにし、かつ所定のスイッチを操作したときに管理情報を表示するパターン
等が挙げられる。
ただし、設定変更モードに移行する操作が行われ、設定変更モードに移行したときは、管理情報表示モードには移行させず、管理情報は表示させないようにする。すなわち、設定変更モードでは、デジット5は点灯するが、デジット6〜9は消灯となる。」

(5)「【図3】



2 認定事項
(1)記載事項(3)の【0433】の「復帰可能エラーの発生時は、エラー内容を表示してメイン処理を停止するが、ホール店員がエラー解除操作を実行し(エラー要因を除去し)、リセットスイッチ14を操作すると、エラーが解除されたか否かを判断して、エラーが解除されたと判断したときは、処理を再開する。」との記載から、リセットスイッチ14を、エラー内容を表示してメイン処理を停止した状態を解除する時に使用することは明らかである。
さらに、上記事項と記載事項(4)の【0516】の「設定スイッチ13とリセットスイッチ14とを別個に設けたが、設定変更/リセットスイッチとして、設定スイッチとリセットスイッチとを1つのスイッチから構成することが考えられる。」との記載を踏まえると、スロットマシン10が「エラー内容を表示してメイン処理を停止した状態を解除する時に使用する設定変更/リセットスイッチ」を備えることを認定できる。

(2)記載事項(5)の【図3】(a)より、管理情報表示LED74のデジット6〜9のうち、デジット6及び7は左側に設けられ、デジット8及び9は右側に設けられていると認められる。また、上記記載事項(1)の【0094】の「電源スイッチ11は、スロットマシン10の電源のオン/オフを行うスイッチである。」との記載より、管理情報表示LED74に表示する際、スロットマシン10の電源のオン/オフを行うスイッチである電源スイッチ11がオン状態であることは自明である。
さらに、上記事項と記載事項(1)の【0085】の「情報種別を示すデジット6及び7と数値を示すデジット8及び9」との記載、記載事項(3)の【0473】の「有利区間割合は、「50(%)」である」との記載及び【0474】の「「連続役物比率(6000遊技(15セット))」・・・を「45(%)」と表示している。・・・「役物比率(6000遊技(15セット))」を「60(%)」と表示している。」との記載を踏まえると、「電源スイッチ11がオン状態において、管理情報表示LED74は、左側のデジット6及び7で情報種別を表示し、右側のデジット8及び9で数値である有利区間割合、連続役物比率、役物比率を%で表示」することを認定できる。

(3)認定事項(1)、記載事項(3)の【0472】、【0473】及び【0474】より、スロットマシン10のフロントドアを開放し、設定キーを挿入し、時計回りに90度回転させると、設定キースイッチ12がオンとなることで設定確認中となり、この設定確認中において、設定変更/リセットスイッチを1回押すと、管理情報表示LED74に有利区間割合を「U750」と表示し、設定変更/リセットスイッチをもう1回押すと、連続役物比率を「y645」と表示し、設定スイッチ13をもう1回押すと、役物比率を「y760」と表示すると認められる。
そうすると、管理情報表示LED74に有利区間割合、連続役物比率、役物比率を表示するためには、スロットマシン10のフロントドアを開放した後、設定キースイッチ12を時計回りに90度回転させることが必要であることから、スロットマシン10のフロントドアを開放しただけの状態では、有利区間割合、連続役物比率、役物比率を表示しないことは明らかである。
また、管理情報表示LED74に有利区間割合、連続役物比率、役物比率を表示する際に、スロットマシン10の電源のオン/オフを行うスイッチである電源スイッチ11がオン状態であることは自明である。
以上のことから、「電源スイッチ11がオン状態において、スロットマシン10のフロントドアを開放すると、有利区間割合、連続役物比率、役物比率を表示しない一方、スロットマシン10のフロントドアを開放した状態で、設定キーを挿入し、時計回りに90度回転させて設定キースイッチ12をオンとすることで設定確認中とし、この設定確認中で、設定変更/リセットスイッチを1回押す度に有利区間割合、連続役物比率、役物比率を順次表示する」ことが認定できる。

したがって、記載事項(1)〜(5)及び認定事項(1)〜(3)を総合すると、先願明細書等には、以下の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されている(分説a〜lは、本願発明の分説A〜Lに概ね対応させて付与した。)。
「a 基体部1と基体部1の前面を開放/閉塞するフロントドアを含むスロットマシン10において(【0501】)、
b スロットマシン10の電源のオン/オフを行う電源スイッチ11を含む電源ユニットと(【0094】、【0501】)、
c 外周面に複数種類の図柄を印刷したリールテープを貼付した左リール31、中リール31、及び右リール31と(【0089】、【0103】)、
d 毎遊技に遊技者によりスタートスイッチ41が操作された時に当選役の抽選を行う役抽選手段61と(【0124】、【0127】、【0293】)、
e 毎遊技にスタートスイッチ41が操作されたときに、3つのリール31の回転を開始するように制御し、3つのリール31に対応して3つ設けられたストップスイッチ42が操作されたときに、ストップスイッチ42が操作されたときのタイミングに基づいて、そのストップスイッチ42に対応するリール31を、当選役に対応する図柄の組合せを有効ラインに停止させるリール制御手段65と(【0061】、【0181】、【0182】、【0293】)、
f 管理情報である有利区間割合、連続役物比率、役物比率を演算する管理情報制御手段72と(【0393】)、
g 有利区間割合、連続役物比率、役物比率を表示する管理情報表示LED74と(【0393】)、
h エラー内容を表示してメイン処理を停止した状態を解除する時に使用する設定変更/リセットスイッチと、を設け(認定事項(1))、
i 管理情報表示LED74は、左側のデジット6及び7で情報種別を表示し、右側のデジット8及び9で数値である有利区間割合、連続役物比率、役物比率を%で表示し(認定事項(2))、
j 電源スイッチ11がオン状態において、管理情報表示LED74は、左側のデジット6及び7で情報種別を表示し、右側のデジット8及び9で数値である有利区間割合、連続役物比率、役物比率を%で表示する一方、設定変更モードでは、管理情報は表示させないものであり(認定事項(2)、【0519】)、
k 電源スイッチ11がオン状態において、スロットマシン10のフロントドアを開放すると、有利区間割合、連続役物比率、役物比率を表示しない一方、スロットマシン10のフロントドアを開放した状態で、設定キーを挿入し、時計回りに90度回転させて設定キースイッチ12をオンとすることで設定確認中とし、この設定確認中で、設定変更/リセットスイッチを1回押す度に有利区間割合、連続役物比率、役物比率を順次表示する(認定事項(3))
l スロットマシン10(【0501】)。」

第5 対比・判断
1 本願発明と先願発明との対比
(1)先願発明の構成aの「基体部1」、「基体部1の前面を開放/閉塞するフロントドア」は、本願発明の構成Aの「筐体」、「筐体の前面を覆う前扉」に相当する。
また、先願発明の構成a、lの「スロットマシン10」は、本願発明の構成A、Lの「遊技機」に相当する。
よって、先願発明の構成a、lは、本願発明の構成A、Lに相当する構成を備える。

(2)先願発明の構成bの「スロットマシン10の電源のオン/オフを行う電源スイッチ11を含む電源ユニット」が、「スロットマシン10」の各種回路に電力を供給することは自明であるから、当該「スロットマシン10の電源のオン/オフを行う電源スイッチ11を含む電源ユニット」は、本願発明の構成Bの「各種回路に電力を供給する電源部」に相当する。
よって、先願発明の構成bは、本願発明の構成Bに相当する構成を備える。

(3)先願発明の構成cの「外周面に複数種類の図柄を印刷したリールテープを貼付した左リール31、中リール31、及び右リール」は、本願発明の構成Cの「外周面に複数種類の図柄が配置された複数の回胴」に相当する。
よって、先願発明の構成cは、本願発明の構成Cに相当する構成を備える。

(4)先願発明の構成dの「毎遊技」、「当選役」は、本願発明の構成Dの「遊技毎」、「役」に相当する。
よって、先願発明の構成dの「毎遊技に」「当選役の抽選を行う役抽選手段61」は、本願発明の構成Dの「遊技毎に役を内部抽選する役抽選手段」に相当する。
よって、先願発明の構成dは、本願発明の構成Dに相当する構成を備える。

(5)先願発明の構成eの「毎遊技に」「3つのリール31の回転を開始する」こと、「3つのリール31に対応して3つ設けられたストップスイッチ42が操作され」ること、「そのストップスイッチ42に対応するリール31を」「停止させる」ことは、それぞれ本願発明の構成Eの「遊技毎に複数の回胴を回転させ」ること、「各々の回胴に対応して設けられた停止スイッチの操作を受け付け」ること、「対応する回胴を個々に停止させ」ることに相当する。
また、先願発明の構成eの「当選役に対応する図柄の組合せを有効ラインに停止させる」ことは、「当選役に対応する図柄の組合せを有効ラインに停止させ」た上で、「停止させ」た「図柄の組合せ」を表示することであるのは自明であるから、当該「当選役に対応する図柄の組合せを有効ラインに停止させる」ことは、本願発明の構成Eの「前記内部抽選の結果に応じて図柄を表示する」ことに相当する。
さらに、先願発明の構成eの「リール制御手段65」は、本願発明の構成Eの「図柄表示制御手段」に相当する。
よって、先願発明の構成eは、本願発明の構成Eに相当する構成を備える。

(6)先願発明の構成fの「管理情報である有利区間割合、連続役物比率、役物比率」、「演算する」は、本願発明の構成Fの「複数種類の遊技比率」、「算出する」に相当する。
よって、先願発明の構成fの「管理情報である有利区間割合、連続役物比率、役物比率を演算する管理情報制御手段72」は、本願発明の構成Fの「複数種類の遊技比率を算出する遊技比率算出手段」に相当する。
よって、先願発明の構成fは、本願発明の構成Fに相当する構成を備える。

(7)先願発明の構成gの「有利区間割合、連続役物比率、役物比率を表示する管理情報表示LED74」は、本願発明の構成Gの「前記遊技比率を表示する比率表示器」に相当する。
よって、先願発明の構成gは、本願発明の構成Gに相当する構成を備える。

(8)先願発明の構成hの「メイン処理を停止した状態」は、本願発明の構成Hの「エラーによる遊技の中止状態」に相当するから、先願発明の構成hの「エラー内容を表示してメイン処理を停止した状態を解除する時に使用する設定変更/リセットスイッチ」は、本願発明の構成Hの「エラーによる遊技の中止状態を解除する時に使用するエラー解除スイッチ」に相当する。
よって、先願発明の構成hは、本願発明の構成Hに相当する構成を備える。

(9)先願発明の構成iの「左側のデジット6及び7」、「情報種別」、「有利区間割合、連続役物比率、役物比率」、「右側のデジット8及び9」は、本願発明の構成Iの「左側の2つ」、「識別子記号」、「遊技比率」、「右側の2つ」に相当する。
よって、先願発明の構成iの「管理情報表示LED74は、左側のデジット6及び7で情報種別を表示し、右側のデジット8及び9で数値である有利区間割合、連続役物比率、役物比率を%で表示」することは、本願発明の構成Iの「前記比率表示器は、左側の2つで識別子記号を表示し、右側の2つで遊技比率をパーセント表示」することに相当する。
よって、先願発明の構成iは、本願発明の構成Iに相当する構成を備える。

(10)先願発明の構成jの「設定変更モード」は、本願発明の構成Jの「設定変更状態」に相当する。
よって、先願発明の構成jの「管理情報表示LED74は、左側のデジット6及び7で情報種別を表示し、右側のデジット8及び9で数値である有利区間割合、連続役物比率、役物比率を%で表示する一方、設定変更モードでは、管理情報は表示させないものであ」ることは、本願発明の構成Jと「前記比率表示器は、前記左側の2つで識別子記号を表示し、前記右側の2つで前記遊技比率を表示する一方、設定変更状態では、該比率表示器は、該遊技比率を表示しないようにな」ることである点で共通する。

(11)先願発明の構成kの「電源スイッチ11がオン状態において、スロットマシン10のフロントドアを開放すると、有利区間割合、連続役物比率、役物比率を表示しない」ことは、本願発明の構成Kの「前記電源部の電源スイッチがオン状態において、前記前扉が閉じた状態から開いた状態にすると、前記比率表示器は、前記遊技比率を表示しない」ことに相当する。
また、先願発明の構成kの「設定変更/リセットスイッチを1回押す度に有利区間割合、連続役物比率、役物比率を順次表示する」ことは、本願発明の構成Kの「前記エラー解除スイッチを1回押下する度に、複数種類の識別子記号と遊技比率を順次表示すること」に相当する。
よって、先願発明の構成kの「電源スイッチ11がオン状態において、スロットマシン10のフロントドアを開放すると、有利区間割合、連続役物比率、役物比率を表示しない一方、」「設定変更/リセットスイッチを1回押す度に有利区間割合、連続役物比率、役物比率を順次表示する」ことは、本願発明の構成Kと「前記電源部の電源スイッチがオン状態において、前記前扉が閉じた状態から開いた状態にすると、前記比率表示器は、前記遊技比率を表示しない一方、」「前記エラー解除スイッチを1回押下する度に、複数種類の識別子記号と遊技比率を順次表示する」ことである点で共通する。

(12)上記(1)〜(11)を踏まえると、本願発明と先願発明とは、
「A 筐体と、該筐体の前面を覆う前扉を含む遊技機において、
B 各種回路に電力を供給する電源部と、
C 外周面に複数種類の図柄が配置された複数の回胴と、
D 遊技毎に役を内部抽選する役抽選手段と、
E 遊技毎に複数の回胴を回転させ、各々の回胴に対応して設けられた停止スイッチの操作を受け付けて、対応する回胴を個々に停止させ、前記内部抽選の結果に応じて図柄を表示する図柄表示制御手段と、
F 複数種類の遊技比率を算出する遊技比率算出手段と、
G 前記遊技比率を表示する比率表示器と、
H エラーによる遊技の中止状態を解除する時に使用するエラー解除スイッチと、
を具備し、
I 前記比率表示器は、左側の2つで識別子記号を表示し、右側の2つで遊技比率をパーセント表示し、
J’前記比率表示器は、前記左側の2つで識別子記号を表示し、前記右側の2つで前記遊技比率を表示する一方、設定変更状態では、該比率表示器は、該遊技比率を表示しないようになり、
K’前記電源部の電源スイッチがオン状態において、
前記前扉が閉じた状態から開いた状態にすると、前記比率表示器は、前記遊技比率を表示しない一方、前記エラー解除スイッチを1回押下する度に、複数種類の識別子記号と遊技比率を順次表示する、
L 遊技機。」である点で一致し、次の点で相違する。

・相違点1(構成J)
本願発明では、「前記比率表示器は、前記左側の2つで識別子記号を表示し、前記右側の2つで前記遊技比率を表示する」条件として、「前記電源部の電源スイッチがオフ状態において、前記電源スイッチをオン状態にすると」との特定がなされているのに対し、先願発明では、そのような特定がなされておらず、「電源スイッチ11」を「オフ」から「オン」状態にすると、「管理情報表示LED74は、左側のデジット6及び7で情報種別を表示し、右側のデジット8及び9で有利区間割合、連続役物比率、役物比率を%で表示する」か明らかでない点。

・相違点2(構成K)
本願発明では、「前記エラー解除スイッチを1回押下する度に、複数種類の識別子記号と遊技比率を順次表示する」直前の状態が、「該遊技比率を表示しない状態」、すなわち「前記電源部の電源スイッチがオン状態において、前記前扉が閉じた状態から開いた状態」であるのに対し、先願発明では、「スロットマシン10のフロントドアを開放した状態で、設定キーを挿入し、時計回りに90度回転させて設定キースイッチ12をオンとすることで」なる「設定確認中」である点。

2 判断
事案の内容に鑑み、上記相違点2について検討する。
先願発明では、「設定変更/リセットスイッチを1回押す度に有利区間割合、連続役物比率、役物比率を順次表示する」にあたり、「スロットマシン10のフロントドアを開放した状態」とした上で、「設定キーを挿入し、時計回りに90度回転させて設定キースイッチ12をオンとすることで設定確認中と」する必要があると認められる。そうすると、「スロットマシン10のフロントドアを開放した状態」では、「有利区間割合、連続役物比率、役物比率を表示しない」状態となっているものの、この状態から「設定確認中」を経ずに、「設定変更/リセットスイッチを」「押」しても、「有利区間割合、連続役物比率、役物比率」は表示されないと認められる。
そして、先願明細書等には、「スロットマシン10のフロントドアを開放し」、「有利区間割合、連続役物比率、役物比率を表示しない」状態から、「設定変更/リセットスイッチを」「押」すことにより、「有利区間割合、連続役物比率、役物比率を順次表示する」ことは記載されていないから、上記相違点2に係る本願発明の構成Kの「前記エラー解除スイッチを1回押下する度に、複数種類の識別子記号と遊技比率を順次表示する」直前の状態を、「前記電源部の電源スイッチがオン状態において、前記前扉が閉じた状態から開いた状態」とする構成については、記載されているとはいえない。さらに、先願明細書等に、構成Kに関する構成が示唆されておらず、かつ、構成Kが、周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等にも相当せず、課題解決のための具体化手段における微差であるともいえない。
したがって、上記相違点1(構成J)について検討するまでもなく、本願発明が、先願発明と同一であるとすることはできない。

第6 原査定について
1 理由(特許法第29条の2)について
本願発明は、上記「第5」「1 本願発明と先願発明との対比」及び「2 判断」で示したとおり、先願発明と実質的に同一であるとはいえない。
よって、本願発明は、先願明細書等に記載された発明と同一ではなく、特許法第29条の2の規定に該当しない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-01-04 
出願番号 P2016-237323
審決分類 P 1 8・ 161- WY (A63F)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 瀬津 太朗
特許庁審判官 澤田 真治
▲高▼木 尚哉
発明の名称 遊技機  

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