• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H03F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H03F
管理番号 1381583
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-06-17 
確定日 2022-02-08 
事件の表示 特願2016−218960「ドハティ型増幅器」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 5月17日出願公開、特開2018− 78446、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年11月9日の出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。

令和 2年 9月29日付け 拒絶理由通知書
令和 3年 1月 6日 意見書・手続補正書
3月24日付け 拒絶査定
6月17日 審判請求書・手続補正書

第2 原査定の概要
令和3年3月24日付け拒絶査定(以下、「原査定」という。)の概要は、以下のとおりである。

1.(新規性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

2.(進歩性)この出願の請求項1及び2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の文献1に記載された発明に基づいて、また、請求項3に係る発明は、文献1に記載された発明及び文献2に記載された技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

1.特開2012−29239号公報
2.特表2005−516524号公報

第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正(令和3年6月17日の手続補正書による補正。以下、「本件補正」という。)は、特許法第17条の2第3項から第5項までの要件に違反しているものとはいえない。
そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、本件補正後の請求項1及び2に係る発明は、同条第6項において準用する同法第126条第7項(独立特許要件)を満たすものである。

第4 本願発明
本願の請求項1及び2係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」及び「本願発明2」という。)は、本件補正によって補正された特許請求の範囲に記載される以下のとおりのものであると認める。

「【請求項1】
入力された入力信号を増幅するキャリア増幅器と、
前記入力信号のレベルに応じて動作し、前記入力信号を増幅するピーキング増幅器と、
前記キャリア増幅器の出力側に電気的に接続されるインピーダンス変換回路と、
を備えるドハティ型増幅器であって、
前記インピーダンス変換回路は、前記キャリア増幅器を構成する前記入力信号を増幅する増幅素子の出力側と電気的に接続される第1のインダクタンス素子と、前記第1のインダクタンス素子と直列に接続される第2のインダクタンス素子と、前記第1のインダクタンス素子および前記第2のインダクタンス素子との接続点に並列に接続される第1のキャパシタンス素子とを有し、
前記第1のインダクタンス素子は、前記第1のキャパシタンス素子に電気的に接続する分布定数線路と、前記分布定数線路と前記増幅素子の出力側の間に電気的に接続する第1のボンディングワイヤで構成され、前記第2のインダクタンス素子は分布定数線路で構成され、
前記第2のインダクタンス素子の分布定数線路のインダクタンスは、前記第1のインダクタンス素子の分布定数線路のインダクタンスより大きい、ドハティ型増幅器。
【請求項2】
前記インピーダンス変換回路は、前記第2のインダクタンス素子と直列に接続される第3のインダクタンス素子と、前記第2のインダクタンス素子および前記第3のインダクタンス素子との接続点に並列に接続される第2のキャパシタンス素子とをさらに有し、前記第3のインダクタンス素子は分布定数線路で構成される、請求項1に記載のドハティ型増幅器。」


第5 文献の記載事項
1 文献1の記載事項
原査定で引用された特開2012−29239号公報(以下、「文献1」という。)には、以下の事項(下線は強調のため当審にて付与した。以下同様。)が記載されている。

(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、ドハティ増幅器に関し、例えば、複数のドハティ回路を有するドハティ増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、無線通信用増幅器としてドハティ増幅器が用いられている(特許文献1)。ドハティ増幅器は、キャリアアンプとピークアンプとを備えている。キャリアアンプは、入力信号を主に増幅する増幅器であり、ピークアンプは、入力信号のピークを増幅する増幅器である。例えば、キャリアアンプは、常時入力信号を増幅する。一方、ピークアンプは、入力信号が一定以上の電力の場合入力信号を増幅する。」

(2)「【実施例2】
【0032】
実施例2は、ドハティ増幅器の具体例である。図6は、実施例2に係るドハティ増幅器の平面図である。図6のように、パッケージ80に、キャパシタ39、チップ50、52、54、56が実装されている。チップ54には、複数の伝送線路38と複数の1/4波長位相線路24bが形成されている。チップ56には複数のバイアス回路35が形成されている。バイアス回路35は、キャリアアンプ10bおよびピークアンプ12bのゲートに電圧を供給する回路である。チップ50には、GaNFETからなる複数のキャリアアンプ10bおよび複数のピークアンプ12bが形成されている。チップ52には、複数の伝送線路38と複数の1/4波長位相線路22bが形成されている。各チップ間はボンディングワイヤ82を用い接続されている。キャリアアンプ10b、ピークアンプ12b、1/4波長位相線路24b、22bおよびバイアス回路35は、ドハティ回路100を構成する。」


(3)「【実施例4】
【0037】
実施例4は、インピーダンス変換器として、1/4波長位相線路の代わりにL−CのT型素子を用いる例である。図8は、実施例4に係るドハティ増幅器の平面図である。図8のように、チップ52および54に複数のキャパシタ43と複数の線路38aとが形成されている。キャパシタ43とボンディングワイヤ82とでL−CのT型素子42が形成されている。その他の構成は、実施例2の図6と同じであり説明を省略する。」

(4)「【0039】
実施例4および5のように、インピーダンス変換器をL−CのT型素子を用い構成することができる。図10(a)から図10(d)はL−CのT型素子を示す図である。図10(a)のように、L−CのT型素子は、入力と出力との間に、インダクタL1およびL2が直列に、キャパシタC1が並列に接続されている。図10(b)のように、L−CのT型素子は、チップコンデンサまたはMIM(Metal Insulator Metal)キャパシタであるキャパシタ64と、キャパシタ64に接続された2つのボンディングワイヤ66とを用い構成することができる。図10(c)のように、L−CのT型素子は、MIMキャパシタ65とキャパシタ65に接続された2つのスパイラルインダクタ68とを用い構成することができる。図10(d)のように、L−CのT型素子は、オープンスタブ62とオープンスタブ62の両側に接続された2つの細い高インピーダンス線路60と、を用い構成することができる。」

(5)「【0041】
実施例4および実施例5のように、インピーダンス変換器は、T型またはπ型の素子とすることができる。ドハティ増幅器102が複数のドハティ回路100に分割されているため、T型またはπ型の素子を小型化することができる。よって、ドハティ増幅器の集積化が可能となる。また、インダクタをボンディングワイヤを用い代用することが可能となる。T型またはπ型の素子は、図10(b)、図10(c)、図11(b)および図11(c)のように、集中定数素子を用いてもよい。また、図10(d)および図11(d)のように、分布定数素子を用いてもよい。また、集中定数素子と分布定数素子の混成でもよい。」

(6)「【符号の説明】
【0048】
10b キャリアアンプ
12b ピークアンプ
16 入力端子
18 出力端子
20b 合成器
22b 1/4波長位相線路
24b 1/4波長位相線路
26b 1/4波長位相線路
30 整合回路
34 結合器
36 入力分配器」

(7)図6


(8)図8


図8及び【0037】の記載によれば、文献1には、L−CのT型素子42は、ボンディングワイヤによりキャリア増幅器12bと接続するとともに、ボンディングワイヤによりキャパシタ39を介して出力端子18と接続することが開示されている。

(9)図10


図10(a)によれば、文献1には、L−CのT型素子は、インダクタンスL1及びL2が直列に接続され、インダクタンスL1及びL2の接続点に並列にキャパシタンスC1が接続されることが開示されている。

(10)文献1には、実施例2の説明として「キャリアアンプ10b、ピークアンプ12b、1/4波長位相線路24b、22bおよびバイアス回路35は、ドハティ回路100を構成する。」(【0032】)との記載があり、実施例4の説明として「実施例4は、インピーダンス変換器として、1/4波長位相線路の代わりにL−CのT型素子を用いる例である。」との記載及び「キャパシタ43とボンディングワイヤ82とでL−CのT型素子42が形成されている。その他の構成は、実施例2の図6と同じであり説明を省略する。」(【0037】)との記載がある。
上記記載並びに図6及び図8を参照すると、実施例4においては、図6の「1/4波長位相線路22b」の代わりに図8の「L−CのT型素子42」が用いられているのが明らかである。なお、図6の「1/4波長位相線路24b」の代わりに図8で用いられている素子には参照符号が付されていないが、図8左側の1つの「キャパシタ43」と2つの「バイアス回路35」との間に2本のボンディングワイヤが存在し、該「キャパシタ43」及び「2本のボンディングワイヤ」が、図6の「1/4波長位相線路24b」の代わりに用いられていることが明らかである。
以上によれば、文献1には、実施例4として、「キャリアアンプ10b、ピークアンプ12b、インピーダンス変換器としての図8左側のキャパシタ43及び2本のボンディングワイヤ、インピーダンス変換器としてのL−CのT型素子42並びにバイアス回路35は、ドハティ回路100を構成する。」ことが開示されている。

(11)前記(1)から(10)によれば、文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。なお、後の参照での便宜のため、引用発明を構成毎に分説し、それぞれの構成にA〜Iの記号を付した。

「A 複数のドハティ回路を有するドハティ増幅器であって(【0001】)、
B ドハティ回路100は、キャリアアンプ10b、ピークアンプ12b、インピーダンス変換器としてのL−CのT型素子42及びバイアス回路35を備え(前記10)、
C キャリアアンプは、入力信号を主に増幅する増幅器であり、ピークアンプは、入力信号のピークを増幅する増幅器であり(【0002】)、
D ピークアンプは、入力信号が一定以上の電力の場合入力信号を増幅し(【0002】)、
E1 L−CのT型素子42は、キャパシタ43とボンディングワイヤ82とで形成され(【0037】)、
E2 L−CのT型素子42は、ボンディングワイヤによりキャリア増幅器12bと接続するとともに、ボンディングワイヤによりキャパシタ39を介して出力端子18と接続し(前記8)、
F L−CのT型素子は、インダクタンスL1及びL2が直列に接続され、インダクタンスL1及びL2の接続点に並列にキャパシタンスC1が接続され(前記9)、
F1 L−CのT型素子は、キャパシタ64と、キャパシタ64に接続された2つのボンディングワイヤ66とを用い構成することができ(【0039】)、
F2 L−CのT型素子は、MIMキャパシタ65とキャパシタ65に接続された2つのスパイラルインダクタ68とを用い構成することができ(【0039】)、
F3 L−CのT型素子は、オープンスタブ62とオープンスタブ62の両側に接続された2つの細い高インピーダンス線路60と、を用い構成することができ(【0039】)、
G インダクタをボンディングワイヤを用い代用することが可能であり(【0041】)、
H T型素子は、集中定数素子を用いてもよく、分布定数素子を用いてもよく、また、集中定数素子と分布定数素子の混成でもよい(【0041】)、
I ドハティ増幅器。」

2 文献2の記載事項
原査定で引用された特表2005−516524号公報(以下、「文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。

(1)「【0012】
本発明は上述したような問題点を解決するために案出されたもので、出力電圧の大きさに応じて補助増幅器に印加される入力電圧、例えば入力DCバイアス電圧を制御することにより、特に出力電力によって低い出力電力モードで電力増幅装置がドハーティモードに動作されるように補助増幅器の入力電圧を制御し、高い出力電力モードでは電力増幅装置の非線形特性を満足する地点まで補助増幅器の入力電圧を引き上げるように制御することで、效率と線形性を向上できるようにしたポータブル端末機の電力増幅装置を提供することを目的とする。」

(2)「【0020】
以下、本発明の望ましい実施形態によるポータブル端末機の電力増幅装置を添付図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施形態によるポータブル端末機の電力増幅装置の構成図で、3dBハイブリッド結合器(3dB Hybrid Coupler)(110)と、主増幅器(120)と、補助増幅器(130)と、出力整合部(140)と、包絡線検出部(150)と、デジタル回路部(160)と、電圧制御部(170)とを備えて構成される。」

(3)「【0029】
図3は図1における出力整合部(140)の構成図で、出力整合部(140)で第1λ/4変換器(143)と第2λ/4変換器(145)のαとβの値を調節することで、補助増幅器(130)が動作しない低い出力電力領域で主増幅器(120)は主増幅器自体が出すことができる最大出力電力より小さな出力電力領域で最大の效率を得ることができる。
【0030】
前述した、第1のλ/4変換器(143)及び第2のλ/4変換器(145)は図3に示すようにλ/4送信ライン(Transmission Line;T−Line)で構成されることもできるし、図4に示したように集中素子(lumped elements)(143a、143b、143c、143d、…、145a、145b、145c、145d、…)又はその他の同様の素子で構成されることもできるし、また、LTCC技法に構成されることもできる。」

(4)図1


(5)図3


(6)図4


(7)前記(1)から(6)によれば、文献2には、以下の技術(以下、「文献2技術」という。)が記載されている。

「ドハーティモードに動作されるポータブル端末機の電力増幅装置であって(【0012】)、
3dBハイブリッド結合器と、主増幅器と、補助増幅器と、出力整合部(140)と、包絡線検出部と、デジタル回路部と、電圧制御部とを備えて構成され(【0020】)、
出力整合部(140)で第1λ/4変換器(143)と第2λ/4変換器(145)のαとβの値を調節し(【0029】)、
第1のλ/4変換器(143)及び第2のλ/4変換器(145)はλ/4送信ラインで構成されることもできるし、集中素子(143a、143b、143c、143d、…、145a、145b、145c、145d、…)又はその他の同様の素子で構成されることもできるし、また、LTCC技法に構成されることもできる、
電力増幅装置。」

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「キャリアアンプ10b」は、「入力信号を主に増幅する増幅器であ」る(構成C)から、本願発明1の「入力された入力信号を増幅するキャリア増幅器」に相当する。

イ 引用発明の「ピークアンプ12b」は、「入力信号のピークを増幅する増幅器であ」る(構成C)から、本願発明1の「前記入力信号を増幅するピーキング増幅器」に相当する。
そして、引用発明の「ピークアンプ12b」は、「入力信号が一定以上の電力の場合入力信号を増幅」する(構成D)から、入力信号のレベルに応じて動作するといえる。
よって、本願発明1と引用発明とは、「前記入力信号のレベルに応じて動作し、前記入力信号を増幅するピーキング増幅器」を備える点で一致する。

ウ 引用発明の「L−CのT型素子42」は、「インピーダンス変換器」である(構成B)から、本願発明1の「インピーダンス変換回路」に相当する。
そして、引用発明の「L−CのT型素子42」は、「キャリア増幅器12bと接続するとともに、キャパシタ39を介して出力端子18と接続」する(構成E)から、「キャリア増幅器12b」の出力側に電気的に接続されているといえる。
よって、本願発明1と引用発明とは、「前記キャリア増幅器の出力側に電気的に接続されるインピーダンス変換回路」を備える点で一致する。

エ 引用発明は「複数のドハティ回路を有するドハティ増幅器」であるから、ドハティ型増幅器であるといえる。
よって、本願発明1と引用発明とは「ドハティ型増幅器」である点で一致する。

オ 引用発明において、「L−CのT型素子42」が「キャパシタ43とボンディングワイヤ82とで形成され」る(構成E1)こと及び「キャパシタ64と、キャパシタ64に接続された2つのボンディングワイヤ66とを用い構成することができ」ること(構成F1)、「インダクタをボンディングワイヤを用い代用することが可能」であること(構成G)、並びに、「L−CのT型素子は、インダクタンスL1及びL2が直列に接続され、インダクタンスL1及びL2の接続点に並列にキャパシタンスC1が接続され」ること(構成F)によれば、引用発明の「ボンディングワイヤ82」ないし「ボンディングワイヤ66」は、「インダクタンスL1及びL2」として機能していることが明らかである。
そこで、「キャリア増幅器12bと接続する」「ボンディングワイヤ」(構成E2)を「インダクタンスL1」と同一視し、キャパシタ39を介して「出力端子」に接続される「ボンディングワイヤ」(構成E2)を「インダクタンスL2」と同一視すると、引用発明の「インダクタンスL1」は「キャリア増幅器12b」の出力側と電気的に接続されており、「インダクタンスL2」は「インダクタンスL1」と直列に接続されており、「インダクタンスL1」及び「インダクタンスL2」との接続点に並列に「キャパシタンスC1」(これは「キャパシタ43」及び「キャパシタ64」と同一視できる。)が接続されている。
よって、引用発明の「インダクタンスL1」、「インダクタンスL2」及び「キャパシタンスC1」は、それぞれ本願発明1の「第1のインダクタンス素子」、「第2のインダクタンス素子」及び「第1のキャパシタンス素子」に相当し、本願発明1と引用発明とは「前記インピーダンス変換回路は、前記キャリア増幅器を構成する前記入力信号を増幅する増幅素子の出力側と電気的に接続される第1のインダクタンス素子と、前記第1のインダクタンス素子と直列に接続される第2のインダクタンス素子と、前記第1のインダクタンス素子および前記第2のインダクタンス素子との接続点に並列に接続される第1のキャパシタンス素子とを有」する点で一致する。

カ 前記ア〜オによれば、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。

〈一致点〉
「入力された入力信号を増幅するキャリア増幅器と、
前記入力信号のレベルに応じて動作し、前記入力信号を増幅するピーキング増幅器と、
前記キャリア増幅器の出力側に電気的に接続されるインピーダンス変換回路と、
を備えるドハティ型増幅器であって、
前記インピーダンス変換回路は、前記キャリア増幅器を構成する前記入力信号を増幅する増幅素子の出力側と電気的に接続される第1のインダクタンス素子と、前記第1のインダクタンス素子と直列に接続される第2のインダクタンス素子と、前記第1のインダクタンス素子および前記第2のインダクタンス素子との接続点に並列に接続される第1のキャパシタンス素子とを有する
ドハティ型増幅器。」
である点。

〈相違点〉
本願発明1では「前記第1のインダクタンス素子は、前記第1のキャパシタンス素子に電気的に接続する分布定数線路と、前記分布定数線路と前記増幅素子の出力側の間に電気的に接続する第1のボンディングワイヤで構成され、前記第2のインダクタンス素子は分布定数線路で構成され」、「前記第2のインダクタンス素子の分布定数線路のインダクタンスは、前記第1のインダクタンス素子の分布定数線路のインダクタンスより大きい」のに対し、少なくとも引用発明の「インダクタンスL1」は分布定数線路及びボンディングワイヤの2つから構成されるものではない点。

(2)判断
前記(1)カに示した相違点について検討する。

ア 引用発明では、「L−CのT型素子42」の「インダクタンスL1」を、(A)ボンディングワイヤで構成すること(構成E1、E2、F1、G)、(B)スパイラルインダクタ68で構成すること(構成F2)、
(C)高インピーダンス線路60(分布定数線路と解される。)で構成すること(構成F3)、及び、
(D)集中定数素子と分布定数素子の混成で構成すること(構成H)については想定されているものの、「分布定数線路及びボンディングワイヤ」によって構成することは、以下の(ア)及び(イ)のとおり、想定されていない。

(ア)引用発明において「インダクタンスL1」として用いられるボンディングワイヤは、明らかに分布定数素子として働くものであって、「集中定数素子」ではないから、前記(D)の「集中定数素子と分布定数素子の混成」として、「ボンディングワイヤ」と前記(C)の「高インピーダンス線路60」との混成は想定されていない。

(イ)引用発明の「スパイラルインダクタ68」は集中定数素子であると解されるが、これを「ボンディングワイヤ」で構成することは想定されていないし、「スパイラルインダクタ68」と「ボンディングワイヤ」との混成や、「スパイラルインダクタ68」と前記(C)の「高インピーダンス線路60」との混成は、想定されていない。

イ 加えて、引用発明の「L−CのT型素子42」は、構成F1、F2及びF3のいずれにおいても(図10を参照)、2つのインダクタンスの形状に非対称は見られない。このことから、引用発明においては、「インダクタンスL1」の構成と「インダクタンスL2」の構成とを違えることは想定されていないといえる。
したがって、本願発明1のように「第1のインダクタンス素子」を「分布定数線路」及び「ボンディングワイヤ」によって構成し、「第2のインダクタンス素子」を「分布定数線路」のみで構成するような、非対称なインダクタンスの構成は、当業者といえども引用発明からは想到し得ない。
これにともない、本願発明1のように、「第2のインダクタンス素子の分布定数線路のインダクタンスは、前記第1のインダクタンス素子の分布定数線路のインダクタンスより大きい」ように構成することについても、当業者が引用発明から想到し得ることではない。

ウ また、本願発明1の前記(1)カに示した相違点に係る本願発明1の構成は、文献2に記載も示唆もされていない。
したがって、前記相違点に係る本願発明1の構成は、当業者が引用発明及び文献2技術から容易に想到し得るものではない。

エ 以上によれば、本願発明1は、当業者が引用発明及び文献2技術から容易に想到し得るものではない。

2 本願発明2について
本願発明2は、本願発明1の従属発明であるから、前記相違点を含む。
したがって、前記1(2)のとおりであるから、本願発明2は、当業者が引用発明及び文献2技術から容易に想到し得るものではない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1及び2は、当業者が引用発明及び文献2技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-01-24 
出願番号 P2016-218960
審決分類 P 1 8・ 113- WY (H03F)
P 1 8・ 121- WY (H03F)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 伊藤 隆夫
特許庁審判官 佐藤 智康
丸山 高政
発明の名称 ドハティ型増幅器  
代理人 龍華国際特許業務法人  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ