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審決分類 審判 訂正 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) 訂正する G03B
審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する G03B
審判 訂正 判示事項別分類コード:857 訂正する G03B
管理番号 1381602
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-02-25 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2021-03-29 
確定日 2021-10-08 
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6422800号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第6422800号の特許請求の範囲を、本件審判請求書に添付された、令和3年7月7日付けの手続補正により補正された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−11〕について訂正することを認める。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6422800号の請求項1〜7に係る特許についての出願は、平成27年3月10日に出願され、平成30年10月26日にその特許権の設定登録がされ、平成30年11月14日に特許掲載公報が発行された。
その後、その特許に対し、特許権者である泉株式会社(以下「請求人」という。)は、令和3年3月29日に本件特許訂正審判の請求を行ったところ、令和3年6月17日付けで当審による訂正拒絶理由が通知されたので、これに対して令和3年7月7日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで審判請求書及び訂正特許請求の範囲を対象とする手続補正がされたものである。
なお、本件特許訂正審判に係る訂正を、以下「本件訂正」という。


第2 本件訂正審判の請求の趣旨及び本件訂正の内容
1 本件訂正審判の請求の趣旨は、「特許第6422800号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1〜11について訂正することを認める、との審決を求める。」というものである。

2 本件訂正前の特許請求の範囲の記載
本件訂正前の特許請求の範囲の記載は、以下のとおりである。

「【請求項1】
可搬式のマグネットスクリーン装置であって、
投影面と該投影面に対向するマグネット面とを備えたスクリーンシート、および
スクリーンシートを巻き取るためのロール部材
を有して成り、
非使用時ではマグネット面が投影面に対して相対的に内側となるようにスクリーンシートがロール部材に巻き取られており、
巻き出される又は巻き取られるスクリーンシートと接するように設けられた長尺部材、並びに、スクリーンシート、ロール部材および長尺部材を収納するケーシングを更に有して成り、スクリーンシートの巻き出し時又は巻き取り時において長尺部材が投影面と直接的に接し、ケーシングはスクリーンシートの巻き出しおよび巻き取りのための開口部を有し、および長尺部材が、該開口部に位置付けられており、かつ、マグネットスクリーン装置が設けられる設置面に対して相対的に近い側に位置付けられるロール部材の下側ロール胴部分に隣接して設けられていることを特徴とする、マグネットスクリーン装置。
【請求項2】
マグネットスクリーン装置が設けられる設置面に相対的に近く位置付けられる近位ロール側部と、該近位ロール側部に対向して設置面に相対的に遠く位置付けられる遠位ロール側部とを有するロール部材について、遠位ロール側部からスクリーンシートが巻き出し又は巻き取りされることを特徴とする、請求項1 に記載のマグネットスクリーン装置。
【請求項3】
設置面に設けたマグネットスクリーン装置につき下側に設置面が位置する一方、上側にロール部材が位置するように方向を規定した場合、ロール部材におけるスクリーンシートの巻き出しポイント又は巻き取りポイントがロール部材の上側半分に位置付けられることを特徴とする、請求項1または2に記載のマグネットスクリーン装置。
【請求項4】
長尺部材が、巻き出される又は巻き取られるスクリーンシートとの摺動接触に起因して回転可能となっていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のマグネットスクリーン装置。
【請求項5】
長尺部材が中空構造を有していることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のマグネットスクリーン装置。
【請求項6】
スクリーンシートが樹脂層とマグネット層とを含んで構成され、
非使用時ではマグネット層が樹脂層に対して相対的に内側となるようにスクリーンシートがロール部材に巻き取られていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のマグネットスクリーン装置。
【請求項7】
ロール部材がスプリングロールであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のマグネットスクリーン装置。」

3 本件訂正の訂正事項
本件訂正の内容は、以下のとおりである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「巻き出される又は巻き取られるスクリーンシートと接するように設けられた長尺部材、並びに、スクリーンシート、ロール部材および長尺部材を収納するケーシングを更に有して成り」とあるのを、

「巻き出される又は巻き取られるスクリーンシートと接するように設けられた長尺部材、並びに、スクリーンシート、ロール部材および長尺部材を収納するケーシングを更に有して成り、非使用時並びに巻き出し時および巻き取り時において、前記ロール部材および前記長尺部材が前記ケーシングに収納されており」に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に、
「マグネットスクリーン装置が設けられる設置面に相対的に近く位置付けられる近位ロール側部と、該近位ロール側部に対向して設置面に相対的に遠く位置付けられる遠位ロール側部とを有するロール部材について、遠位ロール側部からスクリーンシートが巻き出し又は巻き取りされることを特徴とする、請求項1に記載のマグネットスクリーン装置。」とあるのを、
独立形式に改め、請求項1(訂正前)を引用する請求項2(訂正前)を、訂正後の請求項2として、以下のように訂正する。

(訂正後の請求項2)
「可搬式のマグネットスクリーン装置であって、
投影面と該投影面に対向するマグネット面とを備えたスクリーンシート、および
スクリーンシートを巻き取るためのロール部材
を有して成り、
非使用時ではマグネット面が投影面に対して相対的に内側となるようにスクリーンシートがロール部材に巻き取られており、
巻き出される又は巻き取られるスクリーンシートと接するように設けられた長尺部材、並びに、スクリーンシート、ロール部材および長尺部材を収納するケーシングを更に有して成り、スクリーンシートの巻き出し時又は巻き取り時において長尺部材が投影面と直接的に接し、ケーシングはスクリーンシートの巻き出しおよび巻き取りのための開口部を有し、および長尺部材が、該開口部に位置付けられており、かつ、マグネットスクリーン装置が設けられる設置面に対して相対的に近い側に位置付けられるロール部材の下側ロール胴部分に隣接して設けられ、
マグネットスクリーン装置が設けられる設置面に相対的に近く位置付けられる近位ロール側部と、該近位ロール側部に対向して設置面に相対的に遠く位置付けられる遠位ロール側部とを有するロール部材について、遠位ロール側部からスクリーンシートが巻き出し又は巻き取りされることを特徴とする、マグネットスクリーン装置。」

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に、
「設置面に設けたマグネットスクリーン装置につき下側に設置面が位置する一方、上側にロール部材が位置するように方向を規定した場合、ロール部材におけるスクリーンシートの巻き出しポイント又は巻き取りポイントがロール部材の上側半分に位置付けられることを特徴とする、請求項1または2に記載のマグネットスクリーン装置。」とあるのを、
独立形式に改め、請求項1(訂正前)を引用する請求項3(訂正前)を、訂正後の請求項3として、請求項2(訂正前)を引用する請求項3(訂正前)を、訂正後の請求項8として、以下のように訂正する。

(訂正後の請求項3)
「可搬式のマグネットスクリーン装置であって、
投影面と該投影面に対向するマグネット面とを備えたスクリーンシート、および
スクリーンシートを巻き取るためのロール部材
を有して成り、
非使用時ではマグネット面が投影面に対して相対的に内側となるようにスクリーンシートがロール部材に巻き取られており、
巻き出される又は巻き取られるスクリーンシートと接するように設けられた長尺部材、並びに、スクリーンシート、ロール部材および長尺部材を収納するケーシングを更に有して成り、スクリーンシートの巻き出し時又は巻き取り時において長尺部材が投影面と直接的に接し、ケーシングはスクリーンシートの巻き出しおよび巻き取りのための開口部を有し、および長尺部材が、該開口部に位置付けられており、かつ、マグネットスクリーン装置が設けられる設置面に対して相対的に近い側に位置付けられるロール部材の下側ロール胴部分に隣接して設けられ、
設置面に設けたマグネットスクリーン装置につき下側に設置面が位置する一方、上側にロール部材が位置するように方向を規定した場合、ロール部材におけるスクリーンシートの巻き出しポイント又は巻き取りポイントがロール部材の上側半分に位置付けられることを特徴とする、マグネットスクリーン装置。」

(訂正後の請求項8)
「可搬式のマグネットスクリーン装置であって、
投影面と該投影面に対向するマグネット面とを備えたスクリーンシート、および
スクリーンシートを巻き取るためのロール部材
を有して成り、
非使用時ではマグネット面が投影面に対して相対的に内側となるようにスクリーンシートがロール部材に巻き取られており、
巻き出される又は巻き取られるスクリーンシートと接するように設けられた長尺部材、並びに、スクリーンシート、ロール部材および長尺部材を収納するケーシングを更に有して成り、スクリーンシートの巻き出し時又は巻き取り時において長尺部材が投影面と直接的に接し、ケーシングはスクリーンシートの巻き出しおよび巻き取りのための開口部を有し、および長尺部材が、該開口部に位置付けられており、かつ、マグネットスクリーン装置が設けられる設置面に対して相対的に近い側に位置付けられるロール部材の下側ロール胴部分に隣接して設けられ、
マグネットスクリーン装置が設けられる設置面に相対的に近く位置付けられる近位ロール側部と、該近位ロール側部に対向して設置面に相対的に遠く位置付けられる遠位ロール側部とを有するロール部材について、遠位ロール側部からスクリーンシートが巻き出し又は巻き取りされ、
設置面に設けたマグネットスクリーン装置につき下側に設置面が位置する一方、上側にロール部材が位置するように方向を規定した場合、ロール部材におけるスクリーンシートの巻き出しポイント又は巻き取りポイントがロール部材の上側半分に位置付けられることを特徴とする、マグネットスクリーン装置。」

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に、
「長尺部材が、巻き出される又は巻き取られるスクリーンシートとの摺動接触に起因して回転可能となっていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のマグネットスクリーン装置。」とあるのを、
独立形式に改め、請求項1(訂正前)を引用する請求項4(訂正前)を、訂正後の請求項4とし、請求項2(訂正前)を引用する請求項4(訂正前)を、訂正後の請求項9とし、請求項1(訂正前)を引用する請求項3(訂正前)を引用する請求項4(訂正前)を、訂正後の請求項10とし、請求項2(訂正前)を引用する請求項3(訂正前)を引用する請求項4(訂正前)を、訂正後の請求項11として、以下のように訂正する。

(訂正後の請求項4)
「可搬式のマグネットスクリーン装置であって、
投影面と該投影面に対向するマグネット面とを備えたスクリーンシート、および
スクリーンシートを巻き取るためのロール部材
を有して成り、
非使用時ではマグネット面が投影面に対して相対的に内側となるようにスクリーンシートがロール部材に巻き取られており、
巻き出される又は巻き取られるスクリーンシートと接するように設けられた長尺部材、並びに、スクリーンシート、ロール部材および長尺部材を収納するケーシングを更に有して成り、スクリーンシートの巻き出し時又は巻き取り時において長尺部材が投影面と直接的に接し、ケーシングはスクリーンシートの巻き出しおよび巻き取りのための開口部を有し、および長尺部材が、該開口部に位置付けられており、かつ、マグネットスクリーン装置が設けられる設置面に対して相対的に近い側に位置付けられるロール部材の下側ロール胴部分に隣接して設けられ、
長尺部材が、巻き出される又は巻き取られるスクリーンシートとの摺動接触に起因して回転可能となっていることを特徴とする、マグネットスクリーン装置。」

(訂正後の請求項9)
「可搬式のマグネットスクリーン装置であって、
投影面と該投影面に対向するマグネット面とを備えたスクリーンシート、および
スクリーンシートを巻き取るためのロール部材
を有して成り、
非使用時ではマグネット面が投影面に対して相対的に内側となるようにスクリーンシートがロール部材に巻き取られており、
巻き出される又は巻き取られるスクリーンシートと接するように設けられた長尺部材、並びに、スクリーンシート、ロール部材および長尺部材を収納するケーシングを更に有して成り、スクリーンシートの巻き出し時又は巻き取り時において長尺部材が投影面と直接的に接し、ケーシングはスクリーンシートの巻き出しおよび巻き取りのための開口部を有し、および長尺部材が、該開口部に位置付けられており、かつ、マグネットスクリーン装置が設けられる設置面に対して相対的に近い側に位置付けられるロール部材の下側ロール胴部分に隣接して設けられ、
マグネットスクリーン装置が設けられる設置面に相対的に近く位置付けられる近位ロール側部と、該近位ロール側部に対向して設置面に相対的に遠く位置付けられる遠位ロール側部とを有するロール部材について、遠位ロール側部からスクリーンシートが巻き出し又は巻き取りされ、
長尺部材が、巻き出される又は巻き取られるスクリーンシートとの摺動接触に起因して回転可能となっていることを特徴とする、マグネットスクリーン装置。」

(訂正後の請求項10)
「可搬式のマグネットスクリーン装置であって、
投影面と該投影面に対向するマグネット面とを備えたスクリーンシート、および
スクリーンシートを巻き取るためのロール部材
を有して成り、
非使用時ではマグネット面が投影面に対して相対的に内側となるようにスクリーンシートがロール部材に巻き取られており、
巻き出される又は巻き取られるスクリーンシートと接するように設けられた長尺部材、並びに、スクリーンシート、ロール部材および長尺部材を収納するケーシングを更に有して成り、スクリーンシートの巻き出し時又は巻き取り時において長尺部材が投影面と直接的に接し、ケーシングはスクリーンシートの巻き出しおよび巻き取りのための開口部を有し、および長尺部材が、該開口部に位置付けられており、かつ、マグネットスクリーン装置が設けられる設置面に対して相対的に近い側に位置付けられるロール部材の下側ロール胴部分に隣接して設けられ、
設置面に設けたマグネットスクリーン装置につき下側に設置面が位置する一方、上側にロール部材が位置するように方向を規定した場合、ロール部材におけるスクリーンシートの巻き出しポイント又は巻き取りポイントがロール部材の上側半分に位置付けられ、
長尺部材が、巻き出される又は巻き取られるスクリーンシートとの摺動接触に起因して回転可能となっていることを特徴とする、マグネットスクリーン装置。」

(訂正後の請求項11)
「可搬式のマグネットスクリーン装置であって、
投影面と該投影面に対向するマグネット面とを備えたスクリーンシート、および
スクリーンシートを巻き取るためのロール部材
を有して成り、
非使用時ではマグネット面が投影面に対して相対的に内側となるようにスクリーンシートがロール部材に巻き取られており、
巻き出される又は巻き取られるスクリーンシートと接するように設けられた長尺部材、並びに、スクリーンシート、ロール部材および長尺部材を収納するケーシングを更に有して成り、スクリーンシートの巻き出し時又は巻き取り時において長尺部材が投影面と直接的に接し、ケーシングはスクリーンシートの巻き出しおよび巻き取りのための開口部を有し、および長尺部材が、該開口部に位置付けられており、かつ、マグネットスクリーン装置が設けられる設置面に対して相対的に近い側に位置付けられるロール部材の下側ロール胴部分に隣接して設けられ、
マグネットスクリーン装置が設けられる設置面に相対的に近く位置付けられる近位ロール側部と、該近位ロール側部に対向して設置面に相対的に遠く位置付けられる遠位ロール側部とを有するロール部材について、遠位ロール側部からスクリーンシートが巻き出し又は巻き取りされ、
設置面に設けたマグネットスクリーン装置につき下側に設置面が位置する一方、上側にロール部材が位置するように方向を規定した場合、ロール部材におけるスクリーンシートの巻き出しポイント又は巻き取りポイントがロール部材の上側半分に位置付けられ、
長尺部材が、巻き出される又は巻き取られるスクリーンシートとの摺動接触に起因して回転可能となっていることを特徴とする、マグネットスクリーン装置。」

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5を削除する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6を削除する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7を削除する。

(8)一群の請求項について
本件訂正の前記訂正事項1〜7は、訂正前の請求項1〜7について訂正するものであるところ、訂正前の請求項1〜7は、請求項2〜7が訂正の請求の対象である請求項1の記載を直接又は間接的に引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項〔1〜7〕について請求されている。
なお、請求人は、訂正後の請求項2〜11に係る訂正について、当該訂正が認められるときに、請求項1とは別の訂正単位として扱われることを求める「別の訂正単位とする求め」をしていない。


第3 当審の判断
1 訂正事項1
(1) 訂正の目的について
訂正事項1の訂正は、訂正前の請求項1の「巻き出される又は巻き取られるスクリーンシートと接するように設けられた長尺部材、並びに、スクリーンシート、ロール部材および長尺部材を収納するケーシング」について、「ロール部材」および「長尺部材」の「ケーシング」への収納に関し、さらに、「非使用時並びに巻き出し時および巻き取り時において、前記ロール部材および前記長尺部材が前記ケーシングに収納されており」と限定するものである。

したがって、前記訂正事項1の訂正は、特許法126条1項ただし書き1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(2) 新規事項の有無について
ア 願書に添付した明細書及び図面に記載された事項
願書に添付した明細書及び図面には、以下の事項が記載されている。下線は当審によるものである。

「【0044】
図示される態様から分かるように、本発明のマグネットスクリーン装置100では、スクリーンシート10、ロール部材20および長尺部材30がケーシング40内に収納されている。より具体的には、ロール部材20に対して巻回保持されたスクリーンシート10がケーシング40の内部に収められており、かかる巻回状態のスクリーンシート10に隣接して長尺部材30も同様にケーシング40内に収められている。ケーシング40は、全体として長尺形態を有しており、図10に示すように例えば2パーツ構成を有している。即ち、ケーシング40が「第1サブ・ケーシング40A」と「第2サブ・ケーシング40B」とから構成されている。」

「【0046】
ロール部材20は、例えばスプリングロールなどであってよい。図示する態様から分かるように、かかるロール部材20は、その端部がケーシングの内壁に取り付けられており、ロール部材20の回転付勢力が好適に発現できるようになっている。」

「【0048】
図示する態様(特に図9の断面図)から分かるように、長尺部材30は、ケーシング40の開口部46に位置付けられている。より具体的にいえば、スクリーンシート10の巻出し又は巻取りのためのケーシング開口部46に長尺部材30が位置付けられている。換言すれば、長尺部材30の長手軸がスリット形状のケーシング開口部46の長手軸と互いに整合するように、長尺部材30がケーシング40の開口部46の内側に位置付けられている。このような構成によって、使用に際して巻き出される又は巻き取られるスクリーンシートが長尺部材30によって局所的に抑え込まれることになる。
【0049】
長尺部材30は、金属製であってよく、好ましくは中空構造を有している(図10参照)。中空構造を有する長尺部材の場合、長尺部材の軸方向(長手軸の方向)に中空部分32が延在していることが好ましく、かかる中空部分32が、ケーシングに取り付けられた突起具48に位置付けられることが好ましい。換言すれば、突起具48が中空部分32に挿入された形態となるように、長尺部材30が設けられることが好ましい。これによって、長尺部材30が回転可能となる。かかる長尺部材30は、巻き出される又は巻き取られるスクリーンシートとの摺動接触に起因して回転可能(特に、長尺部材の軸方向中心に回転可能)となっており、それによって、「設置面側に抑え込まれるスクリーンシート10」に起因して長尺部材30にもたらされ得る摩擦抵抗が減じられることになり、よりスムーズな巻き出し又は巻き取りが実現される。」

「【図9】



「【図10】



イ 訂正事項1について
訂正事項1に係る構成が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載されているかについて、以下検討する。

訂正事項1に係る構成である「非使用時並びに巻き出し時および巻き取り時において、前記ロール部材および前記長尺部材が前記ケーシングに収納されて」いることに関して、【0044】には、「ロール部材20に対して巻回保持されたスクリーンシート10がケーシング40の内部に収められており、かかる巻回状態のスクリーンシート10に隣接して長尺部材30も同様にケーシング40内に収められている。」と記載されている。「ロール部材20」がケーシング40の内部に収められていることについては、直接記載はないものの、「スクリーンシート10」は「ロール部材20」に対して巻回されており、巻回保持された「スクリーンシート10」の内側に「ロール部材20」が位置することは明らかであるから、「巻回保持されたスクリーンシート10」がケーシング40の内部に収められている以上、その内側に位置する「ロール部材20」も「ケーシング40」の内部に収められているものであると理解される。
また、【図9】に示された構成も、このような理解と矛盾しないものである。
なお、「長尺部材30」は「ロール部材20」と異なり中空部分を有するため、巻き出される又は巻き取られるスクリーンシート10から受ける力や中空部分の内径に応じて、その位置が非使用時、巻き出し時及び巻き取り時で変動し得るものではあるが、その変動は「突起具48」を中心とする一定の範囲(中空部分の内径によって決まる範囲)内に収まるものであって、少なくとも「長尺部材30」全体がケーシング40の外側へ移動することはないのであるから、「非使用時並びに巻き出し時および巻き取り時において、」ケーシングに収納されているものであるといえる。

したがって、前記訂正事項1は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであって、当初明細書等に記載した事項の全てを総合することによって導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、前記訂正事項1による訂正は、特許法126条5項の規定に適合するものである。


(3) 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
前記訂正事項1は、発明特定事項を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
したがって、前記訂正事項1による訂正は、特許法126条6項の規定に適合するものである。

(4) 独立特許要件について
前記訂正事項1は、前記(1)で示したとおり、訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項の一部を限定するものであるから、訂正後の請求項1に係る発明(以下「本件訂正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて検討する。

ア 本件訂正発明
本件訂正発明は、本件訂正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、当該訂正後の請求項1の記載は、次のとおりである。

「【請求項1】
可搬式のマグネットスクリーン装置であって、
投影面と該投影面に対向するマグネット面とを備えたスクリーンシート、および
スクリーンシートを巻き取るためのロール部材
を有して成り、
非使用時ではマグネット面が投影面に対して相対的に内側となるようにスクリーンシートがロール部材に巻き取られており、
巻き出される又は巻き取られるスクリーンシートと接するように設けられた長尺部材、並びに、スクリーンシート、ロール部材および長尺部材を収納するケーシングを更に有して成り、非使用時並びに巻き出し時および巻き取り時において、前記ロール部材および前記長尺部材が前記ケーシングに収納されており、スクリーンシートの巻き出し時又は巻き取り時において長尺部材が投影面と直接的に接し、ケーシングはスクリーンシートの巻き出しおよび巻き取りのための開口部を有し、および長尺部材が、該開口部に位置付けられており、かつ、マグネットスクリーン装置が設けられる設置面に対して相対的に近い側に位置付けられるロール部材の下側ロール胴部分に隣接して設けられていることを特徴とする、マグネットスクリーン装置。」

イ 先願発明の認定
(ア) 先願明細書1に記載された事項と先願発明1の認定
a 先願明細書1に記載された事項
本願特許出願日前の特許出願であって、本件特許出願後に出願公開がされた特願2014−104585号(特開2015−217642号公報)の明細書又は図面(以下、両者を含めて「先願明細書1」という。)には、以下の事項が記載されている。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、黒板に映写スクリーンを設置した黒板装置に関する。」

「【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明の好適な一実施形態を図面に基づいて説明すると、本発明に係る黒板装置の全体を示す図1及びその詳細を示す図2において、1は曲面状の黒板で、図2の(b)に示すように、黒板本体1aと、この黒板本体1aの表面側に貼着された鋼板(磁性金属材)製の表面材1bと、からなるもので、黒板1の上下側縁部には上下縁枠2a,2bが、左右側縁部には左右縁枠2c,2cが夫々取り付けられている。尚、図1の(a)〜(c)において、31は黒板1の下端部に設けられた粉受け、32は黒板取付枠で、この黒板取付枠32を介して黒板1を建物壁面等に取り付けるようになっている。
【0023】
黒板1の上下端部には、黒板1の曲面に対応する曲線状のガイドレール3,4が黒板1の全長にわたって取り付けられており、上下両ガイドレール3,4にはスクリーン収納用スライド枠5の上下端部が転動子6(図2の(d)参照)を介してスライド可能に取り付けられている。このスクリーン収納用スライド枠5は、図2の(a)に示すように、枠本体5aと、これに取り付けられたカバー体5bとからなるもので、図1の(a)及び図2の(d)に示すように、枠本体5aの上下端部に設けられたブラケット18,19に夫々複数の転動子6が軸着され、各転動子6が上下ガイドレール3,4に夫々スライド可能に嵌合され、それによってスクリーン収納用スライド枠5が上下両ガイドレール3,4に沿って横方向にスライドできるようになっている。尚、図2の(d)は上部ガイドレール3部分の断面構造を示し、下部ガイドレール4部分の断面構造は図示を省略している。
【0024】
また図2の(a)に示すように、スクリーン収納用スライド枠5には、一端部7aが黒板1の一端部に固定される映写スクリーン7の他端部をコイルバネ8の付勢力によって巻き取り収納する巻取軸9と、前記コイルバネ8の付勢力に抗して巻取軸9から引き出される映写スクリーン7の裏面側を黒板1の表面材1bに近接させるように案内するガイドローラ10とが設けられている。尚、このガイドローラ10は、上記のように映写スクリーン7の裏面側を黒板1の表面材1bに近接させると共に、映写スクリーン7の表面側が巻取軸9に対し外向きになるように案内するローラである。この実施形態の黒板装置では、映写スクリーン7は、図1の(a),(b)及び図2の(a)に示すように、その一端部7aが、黒板1の表面材1bの左側端部で左側の縁枠2cに挟まれた状態で固定されている。
【0025】
映写スクリーン7は、図2の(b)に示すように、表面側のスクリーン生地11と、このスクリーン生地11の裏面に貼着されたマグネットシート12とからなるもので、スクリーン生地11は、例えば塩化ビニルからなる支持体(図示せず)の表面側にフッ素フィルム(図示せず)を積層したものからなり、またマグネットシート12は、磁性粉末を含有する合成ゴムシートからなるものである。
【0026】
そして、この映写スクリーン7を巻取軸9に巻き取るにあたり、図2の(c)に示すように、映写スクリーン7の表面側スクリーン生地11が巻取軸9に対して外向きに配され、裏面側マグネットシート12が巻取軸9に対して内向きに配されて巻き取られるようになっている。」

「【0031】
上記のように構成される黒板装置の作用について説明すると、先ず、映写スクリーン7を使用しない時は、スクリーン収納用スライド枠5を、図1の(a)の仮想線図示のように黒板1の左端に寄せておけば、黒板1はそのほぼ全面を使用することができる。尚、この時、ストッパー13は、そのストップバー14を図2の実線図示のような停止位置にセットしておく。
【0032】
そして、ビデオプロジェクターVPを図1の(a),(b)の実線図示のように黒板1の左側上端部に停止させておいて、この位置から映写スクリーン7にビデオを放映する時は、ストッパー13のストップバー14を回動操作用ハンドル16で図2の(a)の実線で示す停止位置から仮想線図示位置まで回動させることで停止解除状態とした後、スクリーン収納用スライド枠5を図1の(a)の仮想線図示から同図の右方向へスライドさせると、映写スクリーン7は、コイルバネ8の付勢力に抗して巻取軸9から引き出され、その裏面側のマグネットシート12が黒板1の表面材1b上に磁着されていく。
【0033】
前記したように、映写スクリーン7は、巻取軸9に対し、表面側のスクリーン生地11が外向きに配され、裏面側マグネットシート12が内向きに配されて巻き取られているため、上記のように映写スクリーン7がコイルバネ8の付勢力に抗して巻取軸9から引き出される時は、図2の(c)に示すように、映写スクリーン7のスクリーン生地11側に矢印ハで示すように伸張力が働いて、映写スクリーン7の表面側が伸張し、マグネットシート12側には矢印ニで示すように収縮力が働いて、映写スクリーン7の裏面側が収縮することになる。このため、映写スクリーン7の開放端部である幅方向両端部は、内側へ反り返った状態とはなっても、外側へ反り返ってカールを形成するようなことがなく、従って映写スクリーン7の幅方向両端部は、黒板1の表面材1b上に隙間なく密着した状態で磁着される。これにより、スクリーン表面の平面性が維持されて、映写時に明るさムラなどを発生するおそれがない。
【0034】
スクリーン収納用スライド枠5を図1の(a)の実線で示すように黒板1の長手方向中央位置までスライドさせたならば、ストッパー13のストップバー14を回動操作用ハンドル16で図2の(a)の仮想線で示す図示位置から実線で示す停止解除位置から実線図示の停止位置まで回動させることによって、スクリーン収納用スライド枠5を黒板1の表面材1b上に固定する。」

「【0039】
尚、学校に設置される黒板装置の場合には、映写スクリーン7の非使用時に、生徒・児童が授業以外の時間で勝手に動かさないように、スクリーン収納用スライド枠5及びスクリーン引出端部保持用スライド枠20を黒板1の端部にロックするロック手段を設けておくとよい。このロック手段としては、例えば、図3の(a)に概略示すように、鎖等の索体Kの一端部を黒板1の左端部に固定し、その他端部にロックピンPを止着しておいて、スクリーン収納用スライド枠5及びスクリーン引出端部保持用スライド枠20が黒板1の左端に寄せられた位置で、スクリーン収納用スライド枠5の下端側のブラケット19に設けた錠LにロックピンPを差し込んで、この錠Lを鍵(図示せず)で施錠することにより、ロックピンPをロックして、スクリーン収納用スライド枠5及びスクリーン引出端部保持用スライド枠20を動かないように固定することができる。」

「【図1】



「【図2】



【図2】(a)から、巻取軸9とガイドローラ10が、スクリーン収納用スライド枠5の枠本体5a及びこれに取り付けられたカバー体5bに収納されていることが読み取れる。

【図2】(a)から、ガイドローラ10は、枠本体5aとカバー体5bの間の開口部に、巻取軸9より下側に設けられており、映写スクリーン7は、その表面がガイドローラ10に接した状態で、当該開口部から引き出される又は巻き取られていることが読み取れる。

b 先願発明1の認定
上記aの記載事項を総合すると、先願明細書1には、次の発明(以下「先願発明1」という。)が記載されているものと認められる。

<先願発明1>
「黒板1の上下端部に取り付けられた上下両ガイドレール3,4に、転動子6を介してスライド可能に取り付けられたスクリーン収納用スライド枠5であって(【0023】)、
このスクリーン収納用スライド枠5は、枠本体5aと、これに取り付けられたカバー体5bとからなり(【0023】)、
スクリーン収納用スライド枠5には、一端部7aが黒板1の一端部に固定される映写スクリーン7の他端部をコイルバネ8の付勢力によって巻き取り収納する巻取軸9と、前記コイルバネ8の付勢力に抗して巻取軸9から引き出される映写スクリーン7の裏面側を黒板1の表面材1bに近接させるように案内するガイドローラ10とが設けられており(【0024】)、
巻取軸9とガイドローラ10は、スクリーン収納用スライド枠5の枠本体5a及びこれに取り付けられたカバー体5bに収納されており(【図2】(a))、
映写スクリーン7は、表面側のスクリーン生地11と、このスクリーン生地11の裏面に貼着されたマグネットシート12とからなるものであり(【0025】)、
映写スクリーン7の表面側スクリーン生地11が巻取軸9に対して外向きに配され、裏面側マグネットシート12が巻取軸9に対して内向きに配されて巻き取られるようになっており(【0026】)、
ガイドローラ10は、スクリーン収納用スライド枠5の枠本体5aとカバー体5bの間の開口部に、巻取軸9より下側に設けられ、映写スクリーン7は、その表面がガイドローラ10に接した状態で、当該開口部から引き出される又は巻き取られる(【図2】(a))、
スクリーン収納用スライド枠5。」

(イ) 先願明細書2に記載された事項と先願発明2−1、2−2の認定
a 先願明細書2に記載された事項
本願特許出願日前の特許出願であって、本件特許出願後に出願公開がされた特願2013−176317号(特開2015−45715号公報)の明細書又は図面(以下、両者を含めて「先願明細書2」という。)には、以下の事項が記載されている。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、黒板、ホワイトボード等の被磁着面に磁力で固定して使用されるマグネットスクリーンに関する。」

「【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、本発明に係るマグネットスクリーンの一実施形態をスクリーン本体を引き出した張設状態で示す正面図である。このマグネットスクリーン1は、収納ケース2と、巻取りロール3と、スクリーン本体4と、押さえ部5と、を備えている。
【0031】
前記収納ケース2は、例えば金属や合成樹脂等で形成された横長の容器からなる。前記収納ケース2に巻取りロール3が回動自在に取り付けられている。前記巻取りロール3は、前記収納ケース2内に収容されている。通常、非使用時には、前記巻取りロール3にロール状に巻き取られたスクリーン本体4が、前記収納ケース2内に収容されている(図5(A)参照)。前記収納ケース2には、スクリーン本体4の引き出し、巻き取りを行うための開口部2Bが、ケース2の長さ方向に沿って形成されている(図3〜5参照)。
【0032】
前記巻取りロール3には、図示しないスプリングにより、前記スクリーン本体4を巻き取ることのできる巻き取り力が常時付与されている。
【0033】
前記スクリーン本体4は、少なくとも、一方の表面にスクリーン層4aを有し、他方の表面にマグネット層4bを有する構成である(図1、3参照)。前記スクリーン本体4は、通常は、平面視略矩形状に形成されている。
【0034】
前記スクリーン本体4の一端部(巻取りロール側の端部)におけるマグネット層4b側の面が前記巻取りロール3に接合されている。従って、非使用時等には、スクリーン本体4は、マグネット層4b側を内側にして(即ちスクリーン層4a側を外側にして)巻取りロール3にロール状に巻き取られて、収納ケース2内に収容されている(図3(A)及び図5(A)参照)。
【0035】
前記スクリーン本体4の先端側縁部(引き出す方向側の縁部)に固定用バー8が接合されている(図1参照)。前記固定用バー8の長さ方向の両端部に図示しない永久磁石が埋設されており、この永久磁石の磁力によって固定用バー8を被磁着体90に固定することができる。前記固定用バー8の長さ方向の略中心位置に取手9が設けられている(図1参照)。
【0036】
前記押さえ部5は、前記巻取りロール3の軸線に対し平行状に配置された棒状体で形成されている(図1、2参照)。即ち、前記棒状体からなる押さえ部5の軸線と、前記巻取りロール3の軸線が、平行状になるように、前記押さえ部5が配置されている。前記棒状体の横断面視での外形形状(外周面の形状)は、円弧面に形成されている(図3参照)。前記押さえ部5の長さは、スクリーン本体4の幅より大きく、収納ケース2の長さより短い(図1参照)。
【0037】
前記収納ケース2の長さ方向の両端部に図示しない永久磁石が埋設されており、この永久磁石の磁力によって収納ケース2を被磁着体90に固定することができる。」
【0038】
前記収納ケース2内における長さ方向の両端部に取付具10、10が取り付けられている(図2参照)。図6に示すように、前記取付具10は、ベース板11と、可動片12とを備えている。前記ベース板11の一端部と、前記可動片12の一端部とが枢軸13で枢着されている(図6参照)。前記可動片12における前記枢軸13側の一端部から係止用湾曲突片15が延設されている。また、前記ベース板11の内面に係止板14が接合されている。前記係止板14における前記枢軸13側の一端部14aは、図6(A)に示すように、前記可動片12側に斜めに屈曲した態様に成形されている。しかして、図6(A)に示すように、前記ベース板11に対して可動片12を重ね合わせた状態では、前記斜め屈曲片14aと前記係止用湾曲突片15は、ほぼ互いに干渉し合わない状態になっており、一方、図6(B)に示すように、ベース板11に対して可動片12を略直角になる状態まで開くと、可動片12の係止用湾曲突片15により前記係止板14の斜め屈曲片14aがベース板11の側に向けて押し込まれ、該押し込まれたことによる前記斜め屈曲片14aの反発力(図6(A)の状態に戻ろうとする復帰反発力)が存在する状態下において、可動片12をベース板11に重ね合わせる方向に動かそうとすると(図6(A)の状態に戻そうとすると)、係止用湾曲突片15が、斜め屈曲片14aをベース板11の側に向けてさらに押し込むことになるので、斜め屈曲片14aの反発力の影響により、小さい力では可動片12を動かすことはできず、従って、前記可動片12は、前記ベース板11に対して略直角に開いた状態でロック状態になる(図6(B)参照)。そして、図6(B)に示すロック状態(安定状態)から、少し強い力を用いて可動片12をベース板11の側に向けて約10〜約30度程度傾けて近づけると、前記ロック状態(可動片12がベース板11に対して略直角に開いた状態でのロック状態)が解消されて、その後は自然に(力を入れなくても)図6(A)に示すベース板11に対して可動片12が重ね合わされた状態まで戻る。ベース板11に対して可動片12が重ね合わされた状態が、斜め屈曲片14aと係止用湾曲突片15とが最も干渉し合わないので、従って、前記ロック状態が解消された後、力が加えられていない状態では、自然に、図6(A)に示すベース板11に対して可動片12が重ね合わされた状態まで戻る。前記取付具10の市販品としては、株式会社栃木屋製の「ステンレスパチン錠TL?345」を例示できる。
【0039】
図2、3に示すように、前記収納ケース2の底壁2aの長さ方向の両端部のそれぞれに、断面形状が略コの字状の支持部材17の下板部17aが固定され、該支持部材17の上板部17bに、固定用板18の長さ方向の一端側が接合固定されている。前記固定用板18の長さ方向の他端側に、前記取付具10のベース板11が固定されている。このような取付構造により、前記収納ケース2内における長さ方向の両端部に取付具10、10が取り付けられている(図2参照)。
【0040】
前記一端側の取付具10の可動片12に前記押さえ部5の長さ方向の一端部が固定されると共に、前記他端側の取付具10の可動片12に該押さえ部5の長さ方向の他端部が固定されている(図2、3参照)。即ち、前記収納ケース2に、取付具10を介して押さえ部5が取り付けられている。
【0041】
そして、図4に示すように、ベース板11に可動片12を重ね合わせた状態にすることで、押さえ部5を被磁着体90から離した態様(第1配置態様)に固定することができる一方、図3、5に示すように、ベース板11に対して可動片12を略90度開いたロック状態にすることで、押さえ部5を被磁着体90に近接した態様(第2配置態様)に固定することができる。このように、押さえ部5は、収納ケース2に対し移動可能に取り付けられている。
【0042】
次に、上記構成のマグネットスクリーン1の使用手順を説明する。通常は、持ち運び時や格納時等の非使用時には、スクリーン本体4は、マグネット層4bを内側にして(即ちスクリーン層4aを外側にして)巻取りロール3にロール状に巻き取られて収納ケース2に収納された状態になっている(図5参照)。
【0043】
使用時には、まず、収納ケース2(の底壁2a)を、黒板、ホワイトボード等の被磁着体90に磁着させる(図5参照)。次いで、固定用バー8の取手9を手で持って引っ張ることによりスクリーン本体4を引き出していくのであるが、この時、スクリーン本体4が被磁着体90に近接した位置にあると、スクリーン本体4が被磁着体90に磁着しやすくて引き出し操作をスムーズに行い難いし、スクリーン本体4の表面に傷が付くことがあることから、引き出しを開始する前に、図4に示すように、ベース板11に可動片12を重ね合わせた状態(ロック状態)にして、押さえ部5を被磁着体90から離した態様(第1配置態様)に固定する。そして、この第1配置態様の状態でスクリーン本体4を引き出していく(図4参照)。このような引き出し操作を行うことにより、スクリーン本体4をスムーズに引き出して張設することができるし、スクリーン本体4に傷が付くことも防止できる。
【0044】
スクリーン本体4の引き出し操作が完了した後、固定用バー8を被磁着体90に磁着させて固定すると共に、図3に示すように、ベース板11に対して可動片12を略90度開いた状態のロック状態にすることで、押さえ部5を被磁着体90に近接させた態様(第2配置態様)に固定することにより、スクリーン本体4(のマグネット層4b)を被磁着体90に磁着させて、スクリーン本体4を張設する。
【0045】
この時、スクリーン本体4は、マグネット層4b側を内側にして(スクリーン層4a側を外側にして)巻取りロール3に巻き取られた収納状態から引き出されているので、スクリーン本体4の両端部が、捲れ上がることがなくて、被磁着体90から浮き上がりを生じることなくスクリーン本体4を張設することができる。従って、スクリーン本体4のスクリーン層4aの幅方向の両端部も有効面として使用することができると共に、スクリーン本体4の張設時の見栄え、外観も良好なものとなる。
【0046】
更に、張設されたスクリーン本体4における巻取りロール3に近接した部位を幅全体にわたって押さえ部5によって被磁着体90側に向けて押さえ付けることができるので(図3(A)参照)、巻取りロール3に近接した部位をも被磁着体90に磁着させた状態でスクリーン本体4を張設することができ、これにより、引き出されたスクリーン本体4のスクリーン層4aの略全面(略全領域)を有効面として使用することができる。
【0047】
使用後に、スクリーン本体4を巻取りロール3に巻き取って収納ケース2に収納する際には、巻き取りを開始する前に、図4に示すように、前記略90度開いたロック状態を解除し、ベース板11に可動片12を重ね合わせた状態にして、押さえ部5を被磁着体90から離した態様(第1配置態様)に固定する。そして、固定用バー8を被磁着体90から離間させると共に、スクリーン本体4も被磁着体90から離間させて浮かせた状態で、前記スプリング(図示しない)により付与される巻き取り力によって巻取りロール3にスクリーン本体4を巻き取らせていく(図4参照)。このような巻き取り操作を行うことにより、スクリーン本体4をスムーズに巻き取って収納することができるし、スクリーン本体4に傷が付くことも防止できる。
【0048】
スクリーン本体4の巻き取りを終了したとき、図5に示すように、ベース板11に対して可動片12を略90度開いたロック状態にして、この開いた状態の可動片12に固定用バー8を当接させた状態にすることにより、固定用バー8をできるだけ巻取りロール3に近い位置で収容する。このような収容を行うことにより、マグネットスクリーン1の格納スペースを低減させることができる。」

「【0051】
次に、本発明に係るマグネットスクリーンの他の実施形態について説明する。図7は、他の実施形態をスクリーン本体を引き出した張設状態で示す正面図である。このマグネットスクリーン1は、収納ケース2と、巻取りロール3と、スクリーン本体4と、を備えている。
【0052】
前記収納ケース2は、例えば金属や合成樹脂等で形成された横長の容器からなる。本実施形態では、前記収納ケース2は、ケース本体21と、可動体24と、からなる(図9〜11)。前記ケース本体21は、横断面形状が略L字形状である(図9参照)。前記ケース本体21の幅方向の一端部(図9で上端部)に、該ケース本体21の長さ方向に沿って枢着用内側軸部22が設けられている。前記枢着用内側軸部22の外周面の横断面形状は、開口部を除いて円弧面に形成されている。前記可動体24の幅方向の一端部(図9で右端部)に、該可動体24の長さ方向に沿って枢着用外側中空軸部25が設けられている。前記枢着用外側中空軸部25は、中空部を有し、該中空軸部25の内周面の横断面形状は、開口部を除いて円弧面に形成されている。しかして、図9に示すように、前記可動体24の枢着用外側中空軸部25の中空部に、前記ケース本体21の枢着用内側軸部22が挿通配置されることによって、可動体24の幅方向の一端部が、ケース本体21の幅方向の一端部に枢着されている。
【0053】
前記収納ケース2に巻取りロール3が回動自在に取り付けられている。前記巻取りロール3は、前記収納ケース2内に収容されている。通常、非使用時には、前記巻取りロール3にロール状に巻き取られたスクリーン本体4が、前記収納ケース2内に収容されている(図11(A)参照)。前記収納ケース2には、スクリーン本体4の引き出し、巻き取りを行うための開口部2Bが、ケース2の長さ方向に沿って形成されている(図9〜11参照)。即ち、前記可動体24の幅方向の他端の先端部26と、前記ケース本体21の幅方向の他端部(図9で左端部)との間に、ケース2の長さ方向に沿って延びる開口部2Bが設けられている。
【0054】
前記巻取りロール3には、図示しないスプリングにより、前記スクリーン本体4を巻き取ることのできる巻き取り力が常時付与されている。
【0055】
前記スクリーン本体4は、少なくとも、一方の表面にスクリーン層4aを有し、他方の表面にマグネット層4bを有する構成である(図7、9参照)。前記スクリーン本体4は、通常は、平面視略矩形状に形成されている。
【0056】
前記スクリーン本体4の一端部(巻取りロール側の端部)におけるマグネット層4b側の面が前記巻取りロール3に接合されている。従って、非使用時等には、スクリーン本体4は、マグネット層4b側を内側にして(即ちスクリーン層4a側を外側にして)巻取りロール3にロール状に巻き取られて、収納ケース2内に収容されている(図9(A)及び図11(A)参照)。
【0057】
前記スクリーン本体4の先端側縁部(引き出す方向側の縁部)に固定用バー8が接合されている(図7参照)。前記固定用バー8の長さ方向の両端部に図示しない永久磁石が埋設されており、この永久磁石の磁力によって固定用バー8を被磁着体90に固定することができる。前記固定用バー8の長さ方向の略中心位置に取手9が設けられている(図7参照)。
【0058】
前記収納ケース2の長さ方向の両端部に図示しない永久磁石が埋設されており、この永久磁石の磁力によって収納ケース2を被磁着体90に固定することができる。
【0059】
前記収納ケース2内における長さ方向の両端部のそれぞれに、固定用第1部材31及び固定用第2部材33が取り付けられている(図8参照)。即ち、図8に示すように、前記ケース本体21の底壁2aの長さ方向の両端部のそれぞれに、断面形状が略コの字状の支持部材17の下板部17aが固定され、該支持部材17の上板部17bに固定用第1部材31が固定されている。更に、図8に示すように、可動体24の内面の長さ方向の両端部のそれぞれに、固定用第2部材33が固定されている。
【0060】
前記ケース本体21の長さ方向の両端部に固定された固定用第1部材31は、図10(B)に示すように、その上端部に、一対の係止用アーム部32が取り付けられている。前記一対の係止用アーム部32の互いの対向面に係止用凹部32aが形成されている(図10(B)参照)。一方、前記可動体24の長さ方向の両端部に固定された固定用第2部材33は、図10(B)に示すように、その下端部に、係止用台座部34が固定されている。前記係止用台座部34の先端には、左右一対の係止用凸部34aが突設されている(図10(B)参照)。そして、固定用第2部材33の係止用凸部34aが、固定用第1部材31の一対の係止用アーム部32の間に押し込まれると、係止用凸部34aが、係止用アーム部32の係止用凹部32aに係合されて、ロック状態になるように構成されている。即ち、ロック状態になって固定用第2部材33と固定用第1部材31とが互いに固定されるように構成されている(図9(B)、図11(B)参照)。一方、このような固定状態から、可動体24を開口部2Bを閉じるように少し強い力で押し込むと、前記ロック状態が解消されて、固定用第2部材33の係止用凸部34aが、固定用第1部材31の一対の係止用アーム部32から離脱して、固定用第2部材33と固定用第1部材31とを分離できるように構成されている(図10(B)参照)。前記固定用第1部材31の市販品としては、スガツネ工業株式会社製の「プッシュラッチESN?195/BLK」を例示できる。前記固定用第2部材33の市販品としては、スガツネ工業株式会社製の「ストライクESN?195?ST」を例示できる。
【0061】
上記マグネットスクリーン1の使用手順を説明する。通常は、持ち運び時や格納時等の非使用時には、スクリーン本体4は、マグネット層4bを内側にして(即ちスクリーン層4aを外側にして)巻取りロール3にロール状に巻き取られて収納ケース2に収納された状態になっている(図11参照)。
【0062】
使用時には、まず、収納ケース2(の底壁2a)を、黒板、ホワイトボード等の被磁着体90に磁着させる(図11参照)。次いで、固定用バー8の取手9を手で持って引っ張ることによりスクリーン本体4を引き出していくのであるが、この時、スクリーン本体4が被磁着体90に近接した位置にあると、スクリーン本体4が被磁着体90に磁着しやすくて引き出し操作をスムーズに行い難いし、スクリーン本体4の表面に傷が付くことがあることから、引き出しを開始する前に、図10に示すように、可動体24を開口部2Bを閉じるように少し強い力で押し込むことによって、前記ロック状態を解消せしめて、即ち固定用第2部材33の係止用凸部34aを、固定用第1部材31の一対の係止用アーム部32から離脱させて、次いで開口部2Bを開くように可動体24を手で動かして、可動体24の先端部26を被磁着体90から離した態様(第1配置態様)にする。そして、この第1配置態様の状態でスクリーン本体4を引き出していく(図10参照)。このような引き出し操作を行うことにより、スクリーン本体4をスムーズに引き出して張設することができるし、スクリーン本体4に傷が付くことも防止できる。更に、前記可動体24の先端部26の横断面視での外形形状は、少なくとも前記スクリーン本体4と接触し得る部分が円弧面に形成されているので(図10参照)、引き出し操作の際のスクリーン本体4の傷付きを十分に防止することができる。
【0063】
スクリーン本体4の引き出し操作が完了した後、固定用バー8を被磁着体90に磁着させて固定すると共に、図9に示すように、可動体24を手で持って開口部2Bを閉じるようにケース本体21に近づけていき、可動体24の先端部26を被磁着体90に近接させた態様(第2配置態様)に固定することにより、スクリーン本体4(のマグネット層4b)を被磁着体90に磁着させて、スクリーン本体4を張設する。この時、ケース本体21に対し可動体24を開口部2Bを閉じるように近づけていくと、図9(B)に示すように、収納ケース2の両端部において、可動体24に固定された固定用第2部材33の係止用凸部34aが、ケース本体21に固定された固定用第1部材31の一対の係止用アーム部32の係止用凹部32aに係合されて、ロック状態になるから、即ち固定用第2部材33と固定用第1部材31とが相互に固定されるから、前記可動体24は、被磁着体90に近接した第2配置態様でケース本体21に固定された状態になる(図9参照)。このような状態でスクリーン本体4を張設する。
【0064】
上記張設されたスクリーン本体4は、マグネット層4b側を内側にして(スクリーン層4a側を外側にして)巻取りロール3に巻き取られた収納状態から引き出されたものであるので、スクリーン本体4の両端部が、捲れ上がることがなくて、このように被磁着体90から浮き上がりを生じることなくスクリーン本体4を張設することができる。従って、スクリーン本体4のスクリーン層4aの幅方向の両端部も有効面として使用することができると共に、スクリーン本体4の張設時の見栄え、外観も良好なものとなる。
【0065】
更に、張設されたスクリーン本体4における巻取りロール3に近接した部位を幅全体にわたって可動体24の先端部26によって被磁着体90側に向けて押さえ付けることができるので(図9(A)参照)、巻取りロール3に近接した部位をも被磁着体90に磁着させた状態でスクリーン本体4を張設することができ、従って、引き出されたスクリーン本体4のスクリーン層4aの略全面(略全領域)を有効面として使用できる。
【0066】
使用後に、スクリーン本体4を巻取りロール3に巻き取って収納ケース2に収納する際には、巻き取りを開始する前に、図10に示すように、可動体24を開口部2Bを閉じるように少し強い力で押し込むことによって、前記ロック状態を解消せしめて、即ち固定用第2部材33の係止用凸部34aを、固定用第1部材31の一対の係止用アーム部32から離脱させて、次いで開口部2Bを開くように可動体24を手で動かして、可動体24の先端部26を被磁着体90から離した態様(第1配置態様)にする。そして、固定用バー8を被磁着体90から離間させると共に、スクリーン本体4も被磁着体90から離間させて浮かせた状態で、前記スプリング(図示しない)により付与される巻き取り力によって巻取りロール3にスクリーン本体4を巻き取らせていく(図10参照)。このような巻き取り操作を行うことにより、スクリーン本体4をスムーズに巻き取って収納することができるし、スクリーン本体4に傷が付くことも防止できる。更に、前記可動体24の先端部26の横断面視での外形形状は、少なくとも前記スクリーン本体4と接触し得る部分が円弧面に形成されているので(図10参照)、巻き取り操作の際のスクリーン本体4の傷付きを十分に防止することができる。
【0067】
スクリーン本体4の巻き取りを終了したとき、図11に示すように、可動体24の先端部26を被磁着体90に近接させた態様(第2配置態様)に固定して、この第2配置態様の可動体24の外面に固定用バー8を当接させた状態にすることにより、固定用バー8をできるだけ巻取りロール3に近い位置で収容する。このような収容を行うことにより、マグネットスクリーン1の格納スペースを低減させることができる。」

「【図1】



「【図3】



「【図4】



「【図7】



「【図9】



「【図10】


【0043】、【図4】から、押さえ部5を被磁着体90から離した態様(第1配置態様)では、押さえ部5は収納ケース2に収納されていないことと、押さえ部5はスクリーン本体4のスクリーン層4aを有する表面と接していることが読み取れる。

【0031】、【0044】、【図3】から、押さえ部5を被磁着体90に近接させた態様(第2配置態様)では、押さえ部5は、収納ケース2の開口部2Bの巻取りロール3より下側に位置して、収納ケース2に収納されていることが読み取れる。

【0062】、【図10】から、可動体24の先端部26を被磁着体90から離した態様(第1配置態様)では、可動体24の先端部26はスクリーン本体4のスクリーン層4aを有する表面と接していることが読み取れる。

b 先願発明2−1、2−2の認定
上記aの記載事項を総合すると、先願明細書2には、次の2つの発明(以下「先願発明2−1」、「先願発明2−2」という。)が記載されているものと認められる。

<先願発明2−1>
「収納ケース2と、巻取りロール3と、スクリーン本体4と、押さえ部5と、を備えているマグネットスクリーン1であって(【0030】)、
前記巻取りロール3は、前記収納ケース2内に収容され、前記収納ケース2には、スクリーン本体4の引き出し、巻き取りを行うための開口部2Bが形成され(【0031】)、
前記スクリーン本体4は、少なくとも、一方の表面にスクリーン層4aを有し、他方の表面にマグネット層4bを有する構成であり(【0033】)、
前記押さえ部5は、棒状体で形成され、前記棒状体の横断面視での外形形状(外周面の形状)は、円弧面に形成され(【0036】)、
持ち運び時や格納時等の非使用時には、スクリーン本体4は、マグネット層4bを内側にして(即ちスクリーン層4aを外側にして)巻取りロール3にロール状に巻き取られて収納ケース2に収納された状態になっており(【0042】)、
使用時には、まず、収納ケース2(の底壁2a)を、黒板、ホワイトボード等の被磁着体90に磁着させ、次いで、押さえ部5を被磁着体90から離した態様(第1配置態様)に固定し、この第1配置態様の状態でスクリーン本体4を引き出し(【0043】)、
スクリーン本体4の引き出し操作が完了した後、押さえ部5を被磁着体90に近接させた態様(第2配置態様)に固定することにより、スクリーン本体4(のマグネット層4b)を被磁着体90に磁着させて、スクリーン本体4を張設し(【0044】)、
前記押さえ部5を被磁着体90から離した態様(第1配置態様)では、押さえ部5は収納ケース2に収納されておらず、かつ押さえ部5はスクリーン本体4のスクリーン層4aを有する表面と接しており(【0043】、【図4】)、
前記押さえ部5を被磁着体90に近接させた態様(第2配置態様)では、押さえ部5は、収納ケース2の開口部2Bの巻取りロール3より下側に位置して、収納ケース2に収納されている(【0044】、【図3】)、
マグネットスクリーン1。」

<先願発明2−2>
「収納ケース2と、巻取りロール3と、スクリーン本体4と、を備えているマグネットスクリーン1であって(【0051】)、
前記収納ケース2は、ケース本体21と、可動体24と、からなり(【0052】)、
前記巻取りロール3は、前記収納ケース2内に収容され、前記収納ケース2には、スクリーン本体4の引き出し、巻き取りを行うための開口部2Bが、形成され(【0053】)、
前記スクリーン本体4は、少なくとも、一方の表面にスクリーン層4aを有し、他方の表面にマグネット層4bを有する構成であり(【0055】)、
持ち運び時や格納時等の非使用時には、スクリーン本体4は、マグネット層4bを内側にして(即ちスクリーン層4aを外側にして)、巻取りロール3にロール状に巻き取られて収納ケース2に収納された状態になっており(【0061】
)、
使用時には、まず、収納ケース2(の底壁2a)を、黒板、ホワイトボード等の被磁着体90に磁着させ、次いで、可動体24を手で動かして、可動体24の先端部26を被磁着体90から離した態様(第1配置態様)にして、この第1配置態様の状態でスクリーン本体4を引き出し(【0062】)、
スクリーン本体4の引き出し操作が完了した後、可動体24を手で持って開口部2Bを閉じるようにケース本体21に近づけていき、可動体24の先端部26を被磁着体90に近接させた態様(第2配置態様)に固定することにより、スクリーン本体4(のマグネット層4b)を被磁着体90に磁着させて、スクリーン本体4を張設し(【0063】)、
前記可動体24の先端部26を被磁着体90から離した態様(第1配置態様)では、可動体24の先端部26はスクリーン本体4のスクリーン層4aを有する表面と接している(【0062】、【図10】)、
マグネットスクリーン1。」

ウ 先願発明1について
(ア) 本件訂正発明と先願発明1の対比
本件訂正発明と先願発明1を対比する。
a 先願発明1の「スクリーン収納用スライド枠5」は、裏面にマグネットシート12が貼着された映写スクリーン7を収納しているから、本願訂正発明の「可搬式のマグネットスクリーン装置」と、「マグネットスクリーン装置」という点で共通する。

b 先願発明1の「スクリーン生地11」の「表面」は、本件訂正発明の「投影面」に相当するから、先願発明1の「表面側のスクリーン生地11と、このスクリーン生地11の裏面に貼着されたマグネットシート12とからなる」「映写スクリーン7」は、本件訂正発明の「投影面と該投影面に対向するマグネット面とを備えたスクリーンシート」に相当する。

c 先願発明1の「映写スクリーン7の他端部をコイルバネ8の付勢力によって巻き取り収納する巻取軸9」は、本件訂正発明の「スクリーンシートを巻き取るためのロール部材」に相当する。

d 先願発明1の「映写スクリーン7の表面側スクリーン生地11が巻取軸9に対して外向きに配され、裏面側マグネットシート12が巻取軸9に対して内向きに配されて巻き取られるようになって」いることは、非使用時に映写スクリーン7が巻き取られることは自明であるから、本件訂正発明の「非使用時ではマグネット面が投影面に対して相対的に内側となるようにスクリーンシートがロール部材に巻き取られて」いることに相当する。

e 先願発明1の「スクリーン収納用スライド枠5の枠本体5aとカバー体5bの間の開口部に、巻取軸9より下側に設けられ、映写スクリーン7は、その表面がガイドローラ10に接した状態で、当該開口部から引き出される又は巻き取られる」「ガイドローラ10」は、本件訂正発明の「巻き出される又は巻き取られるスクリーンシートと接するように設けられた長尺部材」に相当する。

f 先願発明1は、「巻取軸9とガイドローラ10は、スクリーン収納用スライド枠5の枠本体5a及びこれに取り付けられたカバー体5bに収納されて」おり、また「スクリーン収納用スライド枠5」は、スクリーン収納用であるから、当然に、映写スクリーン7を収納しているものである。
よって、先願発明1の「スクリーン収納用スライド枠5の枠本体5a及びこれに取り付けられたカバー体5b」は、本件訂正発明の「スクリーンシート、ロール部材および長尺部材を収納するケーシング」に相当する。

g 先願発明1の「巻取軸9」及び「ガイドローラ10」は、「スクリーン収納用スライド枠5」に設けられており、その位置は常に固定されているものと認められるから、本件訂正発明の「非使用時並びに巻き出し時および巻き取り時において、前記ロール部材および前記長尺部材が前記ケーシングに収納されて」いることに相当する。

h 先願発明1の「ガイドローラ10」が「巻取軸9より下側に設けられ」ていることは、本件訂正発明の「マグネットスクリーン装置が設けられる設置面に対して相対的に近い側に位置付けられるロール部材の下側ロール胴部分に隣接して設けられて」いることに相当する。
よって、先願発明1の「ガイドローラ10」が「スクリーン収納用スライド枠5の枠本体5aとカバー体5bの間の開口部に、巻取軸9より下側に設けられ、映写スクリーン7は、その表面がガイドローラ10に接した状態で、当該開口部から引き出される又は巻き取られる」ことは、本件訂正発明の「スクリーンシートの巻き出し時又は巻き取り時において長尺部材が投影面と直接的に接し、ケーシングはスクリーンシートの巻き出しおよび巻き取りのための開口部を有し、および長尺部材が、該開口部に位置付けられており、かつ、マグネットスクリーン装置が設けられる設置面に対して相対的に近い側に位置付けられるロール部材の下側ロール胴部分に隣接して設けられている」ことに相当する。

(イ) 一致点及び相違点
上記(ア)の検討を総合すると、本件訂正発明と先願発明1の両者は、以下の一致点で一致し、以下の相違点において相違する。

<一致点>
マグネットスクリーン装置であって、
投影面と該投影面に対向するマグネット面とを備えたスクリーンシート、および
スクリーンシートを巻き取るためのロール部材
を有して成り、
非使用時ではマグネット面が投影面に対して相対的に内側となるようにスクリーンシートがロール部材に巻き取られており、
巻き出される又は巻き取られるスクリーンシートと接するように設けられた長尺部材、並びに、スクリーンシート、ロール部材および長尺部材を収納するケーシングを更に有して成り、非使用時並びに巻き出し時および巻き取り時において、前記ロール部材および前記長尺部材が前記ケーシングに収納されており、スクリーンシートの巻き出し時又は巻き取り時において長尺部材が投影面と直接的に接し、ケーシングはスクリーンシートの巻き出しおよび巻き取りのための開口部を有し、および長尺部材が、該開口部に位置付けられており、かつ、マグネットスクリーン装置が設けられる設置面に対して相対的に近い側に位置付けられるロール部材の下側ロール胴部分に隣接して設けられていることを特徴とする、
マグネットスクリーン装置、である点。

<相違点>
本件訂正発明は、「可搬式のマグネットスクリーン装置」であるのに対して、先願発明1の「スクリーン収納用スライド枠5」は、黒板1の上下端部に取り付けられた上下両ガイドレール3,4に、転動子6を介してスライド可能に取り付けられており、「可搬式」ではない点。

(ウ) 当審の判断
上記相違点について検討する。
先願発明1の「スクリーン収納用スライド枠5」は、黒板1の上下端部に取り付けられた上下両ガイドレール3,4に、転動子6を介してスライド可能に取り付けられているところ、先願明細書1の【図2】(d)から、容易に取り外しが可能でない構成であることが認められる。
さらに、先願明細書1の【0039】には、「尚、学校に設置される黒板装置の場合には、映写スクリーン7の非使用時に、生徒・児童が授業以外の時間で勝手に動かさないように、スクリーン収納用スライド枠5及びスクリーン引出端部保持用スライド枠20を黒板1の端部にロックするロック手段を設けておくとよい。」と記載されており、当該記載からみても、また先願明細書1のその他の記載からみても、先願発明1の「スクリーン収納用スライド枠5」は、「据え置き式」を前提としており、取り外し可能にして「可搬式」とすることは想定されていないことが認められる。
また、「可搬式」と「据え置き式」では、その耐久性やコンパクト化に対する課題が異なり、構成についても、それらの課題解決に適した異なる構成であると認められるから、「可搬式」とすることについて想定されていない先願発明1を、「可搬式」として、それに適した構成とすることが、課題解決のための具体化手段における微差とは認められない。
よって、本件訂正発明は、先願発明1と同一ではない。

エ 先願発明2−1について
(ア) 本件訂正発明と先願発明2−1の対比
本件訂正発明と先願発明2−1を対比する。
a 先願発明2−1の「マグネットスクリーン1」は、持ち運び時や格納時等の非使用時に、スクリーン本体4が巻取りロール3にロール状に巻き取られて収納ケース2に収納された状態とされるものであり、非使用時に持ち運ぶことを想定しているものであるから、本願訂正発明の「可搬式のマグネットスクリーン装置」に相当する。

b 先願発明2−1の「スクリーン層4a」を有する「一方の表面」は、本件訂正発明の「投影面」に相当するから、先願発明2−1の「少なくとも、一方の表面にスクリーン層4aを有し、他方の表面にマグネット層4bを有する」「スクリーン本体4」は、本件訂正発明の「投影面と該投影面に対向するマグネット面とを備えたスクリーンシート」に相当する。

c 先願発明2−1の「スクリーン本体4」を「ロール状に巻き取」る「巻取りロール3」は、本件訂正発明の「スクリーンシートを巻き取るためのロール部材」に相当する。

d 先願発明2−1の「持ち運び時や格納時等の非使用時には、スクリーン本体4は、マグネット層4bを内側にして(即ちスクリーン層4aを外側にして)巻取りロール3にロール状に巻き取られて」いることは、本件訂正発明の「非使用時ではマグネット面が投影面に対して相対的に内側となるようにスクリーンシートがロール部材に巻き取られて」いることに相当する。

e 先願発明2−1の「押さえ部5」は、横断面視での外形形状(外周面の形状)が円弧面に形成されている棒状体で形成されており、またスクリーン本体4を引き出す時の第1配置態様において、押さえ部5はスクリーン本体4と接しているから、本件訂正発明の「巻き出される又は巻き取られるスクリーンシートと接するように設けられた長尺部材」に相当する。

f 先願発明2−1の「収納ケース2」は、巻取りロール3を収容し、非使用時にスクリーン本体4を収納し、かつスクリーン本体4の引き出し操作が完了した後、押さえ部5を被磁着体90に近接させた態様(第2配置態様)とする時に押さえ部5を収納しているから、本件訂正発明の「スクリーンシート、ロール部材および長尺部材を収納するケーシング」に相当する。

g 先願発明2−1の「収納ケース2」は、巻取りロール3を収容しているものの、スクリーン本体4を引き出す時の、押さえ部5を被磁着体90から離した態様(第1配置態様)では、押さえ部5を収納していないから、本件訂正発明の「非使用時並びに巻き出し時および巻き取り時において、前記ロール部材および前記長尺部材が前記ケーシングに収納されて」いることと、「非使用時並びに巻き出し時および巻き取り時において、前記ロール部材が前記ケーシングに収納されて」いる点で共通する。

h 先願発明2−1の「スクリーン本体4を引き出す時の第1配置態様において、押さえ部5はスクリーン本体4のスクリーン層4aを有する表面と接して」いる構成は、本件訂正発明の「スクリーンシートの巻き出し時又は巻き取り時において長尺部材が投影面と直接的に接し」ている構成に相当する。

i 先願発明2−1の「収納ケース2には、スクリーン本体4の引き出し、巻き取りを行うための開口部2Bが形成さ」れている構成は、本件訂正発明の「ケーシングはスクリーンシートの巻き出しおよび巻き取りのための開口部を有し」ている構成に相当する。
また、先願発明2−1の「巻取りロール3より下側に位置し」ていることは、本件訂正発明の「マグネットスクリーン装置が設けられる設置面に対して相対的に近い側に位置付けられるロール部材の下側ロール胴部分に隣接して設けられ」ることに相当するから、先願発明2−1の「押さえ部5を被磁着体90に近接させた態様(第2配置態様)では、押さえ部5は、収納ケース2の開口部2Bの巻取りロール3より下側に位置して、収納ケース2に収納されている」ことは、本件訂正発明の「長尺部材が、該開口部に位置付けられており、かつ、マグネットスクリーン装置が設けられる設置面に対して相対的に近い側に位置付けられるロール部材の下側ロール胴部分に隣接して設けられている」ことに相当する。

(イ) 一致点及び相違点
上記(ア)の検討を総合すると、本件訂正発明と先願発明2−1の両者は、以下の一致点で一致し、以下の相違点において相違する。

<一致点>
可搬式のマグネットスクリーン装置であって、
投影面と該投影面に対向するマグネット面とを備えたスクリーンシート、および
スクリーンシートを巻き取るためのロール部材
を有して成り、
非使用時ではマグネット面が投影面に対して相対的に内側となるようにスクリーンシートがロール部材に巻き取られており、
巻き出される又は巻き取られるスクリーンシートと接するように設けられた長尺部材、並びに、スクリーンシート、ロール部材および長尺部材を収納するケーシングを更に有して成り、非使用時並びに巻き出し時および巻き取り時において、前記ロール部材が前記ケーシングに収納されており、スクリーンシートの巻き出し時又は巻き取り時において長尺部材が投影面と直接的に接し、ケーシングはスクリーンシートの巻き出しおよび巻き取りのための開口部を有し、および長尺部材が、該開口部に位置付けられており、かつ、マグネットスクリーン装置が設けられる設置面に対して相対的に近い側に位置付けられるロール部材の下側ロール胴部分に隣接して設けられていることを特徴とする、
マグネットスクリーン装置、である点。

<相違点>
巻き出し時および巻き取り時において、本件訂正発明では、「前記長尺部材が前記ケーシングに収納されて」いるのに対して、先願発明2−1では、押さえ部5は収納ケース2に収納されていない点。

(ウ) 当審の判断
上記相違点について検討する。
先願発明2−1において、押さえ部5を被磁着体90から離した態様(第1配置態様)で、スクリーン本体4を引き出すのは、先願明細書2の【0043】に記載されているように、スクリーン本体4をスムーズに引き出して張設するとともに、スクリーン本体4に傷が付くことを防止するという課題を解決するためと認められる。
そして、先願発明2−1において、スクリーン本体4を引き出すときに、押さえ部5を被磁着体90から離した態様(第1配置態様)とせずに、押さえ部5が収納ケース2を収納したままにした場合、上記課題を解決し得なくなることは明らかである。
したがって、先願発明2−1における上記相違点に係る構成は、課題解決のための具体化手段における微差とは認められない。
よって、本件訂正発明は、先願発明2−1と同一ではない。

オ 先願発明2−2について
(ア) 本件訂正発明と先願発明2−2の対比
本件訂正発明と先願発明2−2を対比する。
a 先願発明2−2の「マグネットスクリーン1」は、持ち運び時や格納時等の非使用時に、スクリーン本体4が巻取りロール3にロール状に巻き取られて収納ケース2に収納された状態とされるものであり、非使用時に持ち運ぶことを想定しているものであるから、本願訂正発明の「可搬式のマグネットスクリーン装置」に相当する。

b 先願発明2−2の「スクリーン層4a」を有する「一方の表面」は、本件訂正発明の「投影面」に相当するから、先願発明2−2の「少なくとも、一方の表面にスクリーン層4aを有し、他方の表面にマグネット層4bを有する」「スクリーン本体4」は、本件訂正発明の「投影面と該投影面に対向するマグネット面とを備えたスクリーンシート」に相当する。

c 先願発明2−2の「スクリーン本体4」を「ロール状に巻き取」る「巻取りロール3」は、本件訂正発明の「スクリーンシートを巻き取るためのロール部材」に相当する。

d 先願発明2−2の「持ち運び時や格納時等の非使用時には、スクリーン本体4は、マグネット層4bを内側にして(即ちスクリーン層4aを外側にして)巻取りロール3にロール状に巻き取られて」いることは、本件訂正発明の「非使用時ではマグネット面が投影面に対して相対的に内側となるようにスクリーンシートがロール部材に巻き取られて」いることに相当する。

e 先願発明2−2の「可動体24の先端部26を被磁着体90から離した態様(第1配置態様)では、可動体24の先端部26はスクリーン本体4のスクリーン層4aを有する表面と接している」ように構成された「先端部26」は、本件訂正発明の「巻き出される又は巻き取られるスクリーンシートと接するように設けられ」ている「長尺部材」に相当する。
また先願発明2−2の「収納ケース2」が、巻取りロール3を収容し、非使用時にスクリーン本体4を収納していることは、本件訂正発明の「スクリーンシート、ロール部材および長尺部材を収納するケーシングを更に有して成り、非使用時並びに巻き出し時および巻き取り時において、前記ロール部材および前記長尺部材が前記ケーシングに収納されて」いることと、「スクリーンシート、ロール部材を収納するケーシングを更に有して成り、非使用時並びに巻き出し時および巻き取り時において、前記ロール部材が前記ケーシングに収納されて」いる点で共通する。

f 先願発明2−2の「可動体24の先端部26を被磁着体90から離した態様(第1配置態様)では、可動体24の先端部26はスクリーン本体4のスクリーン層4aを有する表面と接している」構成は、本件訂正発明の「長尺部材が」「スクリーンシートの巻き出し時又は巻き取り時において」「投影面と直接的に接し」ている構成に相当する。
また先願発明2−2の「収納ケース2には、スクリーン本体4の引き出し、巻き取りを行うための開口部2Bが形成さ」れていることは、本件訂正発明の「ケーシングはスクリーンシートの巻き出しおよび巻き取りのための開口部を有し、および長尺部材が、該開口部に位置付けられており、かつ、マグネットスクリーン装置が設けられる設置面に対して相対的に近い側に位置付けられるロール部材の下側ロール胴部分に隣接して設けられている」ことと、「ケーシングはスクリーンシートの巻き出しおよび巻き取りのための開口部を有している」点で共通する。

(イ) 一致点及び相違点
上記(ア)の検討を総合すると、本件訂正発明と先願発明2−2の両者は、以下の一致点で一致し、以下の相違点において相違する。

<一致点>
可搬式のマグネットスクリーン装置であって、
投影面と該投影面に対向するマグネット面とを備えたスクリーンシート、および
スクリーンシートを巻き取るためのロール部材
を有して成り、
非使用時ではマグネット面が投影面に対して相対的に内側となるようにスクリーンシートがロール部材に巻き取られており、
巻き出される又は巻き取られるスクリーンシートと接するように設けられた長尺部材、並びに、スクリーンシート、ロール部材を収納するケーシングを更に有して成り、非使用時並びに巻き出し時および巻き取り時において、前記ロール部材が前記ケーシングに収納されており、スクリーンシートの巻き出し時又は巻き取り時において長尺部材が投影面と直接的に接し、ケーシングはスクリーンシートの巻き出しおよび巻き取りのための開口部を有していることを特徴とする、
マグネットスクリーン装置、である点。

<相違点>
本件訂正発明では、「長尺部材を収納するケーシングを更に有して成り、非使用時並びに巻き出し時および巻き取り時において」、「前記長尺部材が前記ケーシングに収納されており」、「長尺部材が、該開口部に位置付けられており、かつ、マグネットスクリーン装置が設けられる設置面に対して相対的に近い側に位置付けられるロール部材の下側ロール胴部分に隣接して設けられている」のに対して、先願発明2−2では、そのような構成を有していない点。

(ウ) 当審の判断
上記相違点について検討する。
先願発明2−2における、ケース本体21と可動体24からなる「収納ケース2」は、前記(ア)eにおいて示したとおり、本件訂正発明の「ケーシング」に相当するものであるが、先願発明2−2の「可動体24の先端部26」は、前記可動体24と一体化されて、その一部を構成するものであり、可動体24に収納されているものとはいえないから、本件訂正発明の「非使用時並びに巻き出し時および巻き取り時において」、「前記ケーシングに収納されて」いる「長尺部材」に相当するものとはいえない。
また、先願発明2−2の「可動体24の先端部26」は、可動体24を手で動かして、可動体24の先端部26を被磁着体90から離した態様(第1配置態様)においては、本件訂正発明の「マグネットスクリーン装置が設けられる設置面に対して相対的に近い側に位置付けられるロール部材の下側ロール胴部分に隣接して設けられている」「長尺部材」に相当するものとはいえない。
さらに、当該「可動体24の先端部26」以外に、本件訂正発明の「長尺部材」に相当する構成も、先願発明2−2に見当たらない。
そして、先願発明2−2において、「可動体24の先端部26」を被磁着体90から離した態様(第1配置態様)で、スクリーン本体4を引き出すのは、先願明細書2の【0062】に記載されているように、スクリーン本体4をスムーズに引き出して張設するとともに、スクリーン本体4に傷が付くことを防止するという課題を解決するためであるから、前記エ(ウ)で先願発明2−1について検討したのと同様、先願発明2−2において上記相違点に係る構成とした場合、上記課題を解決し得なくなることは明らかであるから、当該相違点に係る構成は課題解決のための具体化手段における微差とは認められない。
よって、本件訂正発明は、先願発明2−2と同一ではない。

カ 独立特許要件についてのまとめ
以上のとおり、本件訂正発明は、先願発明1、先願発明2−1及び2―2のいずれとも同一ではないから、特許法29条の2の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものとはいえない。
そして、その他に、本件訂正発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができない理由もない。
したがって、前記訂正事項1による訂正は、特許法126条7項に規定する独立特許要件を満たすものである。

(5) 小括
よって、訂正前の請求項1について行う訂正は、上述したとおり、前記訂正事項1が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、さらに訂正後の請求項1に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものでもないから、特許法126条5項、6項及び7項の規定に適合する。


2 訂正事項2〜4
訂正事項2〜4に係る訂正は、訂正前の請求項2〜4が、訂正前の他の請求項の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、当該他の請求項の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法126条1項ただし書き4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
また、当該訂正は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法126条5項及び6項に適合する。
さらに、当該訂正は、特許法126条1項ただし書き4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正であって、同項ただし書き1号又は2号に掲げる事項を目的とする訂正ではないから、当該訂正後の請求項2〜4、8〜11に係る発明に、特許法126条7項の独立特許要件は課されない。


3 訂正事項5〜7
訂正事項5〜7に係る訂正は、訂正前の請求項5〜7の記載を削除するものであるから、訂正事項5〜7は、特許法126条1項ただし書き1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、前記訂正事項5〜7は、訂正前の請求項5〜7の記載を削除するものであるから、当初明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないため、特許法126条5項及び6項に適合する。さらに、前記訂正事項5〜7が、訂正前の請求項5〜7の記載を削除するものであるから、特許法126条7項の規定に適合することも明らかである。


第4 むすび
以上のとおり、前記訂正事項1、5〜7は、特許法126条1項ただし書き1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、さらに訂正後の請求項1、5〜7に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものでもないから、特許法126条5項、6項及び7項の規定に適合し、訂正後の請求項1、5〜7に係る訂正は、訂正要件を満たしている。
また、前記訂正事項2〜4は、特許法126条1項ただし書き4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正であり、実質的な内容の変更を伴うものでないから、特許法126条5項及び6項の規定に適合し、訂正後の請求項2〜4、8〜11に係る訂正は、訂正要件を満たしている。
よって、結論のとおり審決する。




 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可搬式のマグネットスクリーン装置であって、
投影面と該投影面に対向するマグネット面とを備えたスクリーンシート、および
スクリーンシートを巻き取るためのロール部材
を有して成り
非使用時ではマグネット面が投影面に対して相対的に内側となるようにスクリーンシートがロール部材に巻き取られており、
巻き出される又は巻き取られるスクリーンシートと接するように設けられた長尺部材、並びに、スクリーンシート、ロール部材および長尺部材を収納するケーシングを更に有して成り、非使用時並びに巻き出し時および巻き取り時において、前記ロール部材および前記長尺部材が前記ケーシングに収納されており、スクリーンシートの巻き出し時又は巻き取り時において長尺部材が投影面と直接的に接し、ケーシングはスクリーンシートの巻き出しおよび巻き取りのための開口部を有し、および長尺部材が、該開口部に位置付けられており、かつ、マグネットスクリーン装置が設けられる設置面に対して相対的に近い側に位置付けられるロール部材の下側ロール胴部分に隣接して設けられていることを特徴とする、マグネットスクリーン装置。
【請求項2】
可搬式のマグネットスクリーン装置であって、
投影面と該投影面に対向するマグネット面とを備えたスクリーンシート、および
スクリーンシートを巻き取るためのロール部材
を有して成り、
非使用時ではマグネット面が投影面に対して相対的に内側となるようにスクリーンシートがロール部材に巻き取られており、
巻き出される又は巻き取られるスクリーンシートと接するように設けられた長尺部材、並びに、スクリーンシート、ロール部材および長尺部材を収納するケーシングを更に有して成り、スクリーンシートの巻き出し時又は巻き取り時において長尺部材が投影面と直接的に接し、ケーシングはスクリーンシートの巻き出しおよび巻き取りのための開口部を有し、および長尺部材が、該開口部に位置付けられており、かつ、マグネットスクリーン装置が設けられる設置面に対して相対的に近い側に位置付けられるロール部材の下側ロール胴部分に隣接して設けられ、
マグネットスクリーン装置が設けられる設置面に相対的に近く位置付けられる近位ロール側部と、該近位ロール側部に対向して設置面に相対的に遠く位置付けられる遠位ロール側部とを有するロール部材について、遠位ロール側部からスクリーンシートが巻き出し又は巻き取りされることを特徴とする、マグネットスクリーン装置。
【請求項3】
可搬式のマグネットスクリーン装置であって、
投影面と該投影面に対向するマグネット面とを備えたスクリーンシート、および
スクリーンシートを巻き取るためのロール部材
を有して成り、
非使用時ではマグネット面が投影面に対して相対的に内側となるようにスクリーンシートがロール部材に巻き取られており、
巻き出される又は巻き取られるスクリーンシートと接するように設けられた長尺部材、並びに、スクリーンシート、ロール部材および長尺部材を収納するケーシングを更に有して成り、スクリーンシートの巻き出し時又は巻き取り時において長尺部材が投影面と直接的に接し、ケーシングはスクリーンシートの巻き出しおよび巻き取りのための開口部を有し、および長尺部材が、該開口部に位置付けられており、かつ、マグネットスクリーン装置が設けられる設置面に対して相対的に近い側に位置付けられるロール部材の下側ロール胴部分に隣接して設けられ、
設置面に設けたマグネットスクリーン装置につき下側に設置面が位置する一方、上側にロール部材が位置するように方向を規定した場合、ロール部材におけるスクリーンシートの巻き出しポイント又は巻き取りポイントがロール部材の上側半分に位置付けられることを特徴とする、マグネットスクリーン装置。
【請求項4】
可搬式のマグネットスクリーン装置であって、
投影面と該投影面に対向するマグネット面とを備えたスクリーンシート、および
スクリーンシートを巻き取るためのロール部材
を有して成り、
非使用時ではマグネット面が投影面に対して相対的に内側となるようにスクリーンシートがロール部材に巻き取られており、
巻き出される又は巻き取られるスクリーンシートと接するように設けられた長尺部材、並びに、スクリーンシート、ロール部材および長尺部材を収納するケーシングを更に有して成り、スクリーンシートの巻き出し時又は巻き取り時において長尺部材が投影面と直接的に接し、ケーシングはスクリーンシートの巻き出しおよび巻き取りのための開口部を有し、および長尺部材が、該開口部に位置付けられており、かつ、マグネットスクリーン装置が設けられる設置面に対して相対的に近い側に位置付けられるロール部材の下側ロール胴部分に隣接して設けられ、
長尺部材が、巻き出される又は巻き取られるスクリーンシートとの摺動接触に起因して回転可能となっていることを特徴とする、マグネットスクリーン装置。
【請求項5】(削除)
【請求項6】(削除)
【請求項7】(削除)
【請求項8】
可搬式のマグネットスクリーン装置であって、
投影面と該投影面に対向するマグネット面とを備えたスクリーンシート、および
スクリーンシートを巻き取るためのロール部材
を有して成り、
非使用時ではマグネット面が投影面に対して相対的に内側となるようにスクリーンシートがロール部材に巻き取られており、
巻き出される又は巻き取られるスクリーンシートと接するように設けられた長尺部材、並びに、スクリーンシート、ロール部材および長尺部材を収納するケーシングを更に有して成り、スクリーンシートの巻き出し時又は巻き取り時において長尺部材が投影面と直接的に接し、ケーシングはスクリーンシートの巻き出しおよび巻き取りのための開口部を有し、および長尺部材が、該開口部に位置付けられており、かつ、マグネットスクリーン装置が設けられる設置面に対して相対的に近い側に位置付けられるロール部材の下側ロール胴部分に隣接して設けられ、
マグネットスクリーン装置が設けられる設置面に相対的に近く位置付けられる近位ロール側部と、該近位ロール側部に対向して設置面に相対的に遠く位置付けられる遠位ロール側部とを有するロール部材について、遠位ロール側部からスクリーンシートが巻き出し又は巻き取りされ、
設置面に設けたマグネットスクリーン装置につき下側に設置面が位置する一方、上側にロール部材が位置するように方向を規定した場合、ロール部材におけるスクリーンシートの巻き出しポイント又は巻き取りポイントがロール部材の上側半分に位置付けられることを特徴とする、マグネットスクリーン装置。
【請求項9】
可搬式のマグネットスクリーン装置であって、
投影面と該投影面に対向するマグネット面とを備えたスクリーンシート、および
スクリーンシートを巻き取るためのロール部材
を有して成り、
非使用時ではマグネット面が投影面に対して相対的に内側となるようにスクリーンシートがロール部材に巻き取られており、
巻き出される又は巻き取られるスクリーンシートと接するように設けられた長尺部材、並びに、スクリーンシート、ロール部材および長尺部材を収納するケーシングを更に有して成り、スクリーンシートの巻き出し時又は巻き取り時において長尺部材が投影面と直接的に接し、ケーシングはスクリーンシートの巻き出しおよび巻き取りのための開口部を有し、および長尺部材が、該開口部に位置付けられており、かつ、マグネットスクリーン装置が設けられる設置面に対して相対的に近い側に位置付けられるロール部材の下側ロール胴部分に隣接して設けられ、
マグネットスクリーン装置が設けられる設置面に相対的に近く位置付けられる近位ロール側部と、該近位ロール側部に対向して設置面に相対的に遠く位置付けられる遠位ロール側部とを有するロール部材について、遠位ロール側部からスクリーンシートが巻き出し又は巻き取りされ、
長尺部材が、巻き出される又は巻き取られるスクリーンシートとの摺動接触に起因して回転可能となっていることを特徴とする、マグネットスクリーン装置。
【請求項10】
可搬式のマグネットスクリーン装置であって、
投影面と該投影面に対向するマグネット面とを備えたスクリーンシート、および
スクリーンシートを巻き取るためのロール部材
を有して成り、
非使用時ではマグネット面が投影面に対して相対的に内側となるようにスクリーンシートがロール部材に巻き取られており、
巻き出される又は巻き取られるスクリーンシートと接するように設けられた長尺部材、並びに、スクリーンシート、ロール部材および長尺部材を収納するケーシングを更に有して成り、スクリーンシートの巻き出し時又は巻き取り時において長尺部材が投影面と直接的に接し、ケーシングはスクリーンシートの巻き出しおよび巻き取りのための開口部を有し、および長尺部材が、該開口部に位置付けられており、かつ、マグネットスクリーン装置が設けられる設置面に対して相対的に近い側に位置付けられるロール部材の下側ロール胴部分に隣接して設けられ、
設置面に設けたマグネットスクリーン装置につき下側に設置面が位置する一方、上側にロール部材が位置するように方向を規定した場合、ロール部材におけるスクリーンシートの巻き出しポイント又は巻き取りポイントがロール部材の上側半分に位置付けられ、
長尺部材が、巻き出される又は巻き取られるスクリーンシートとの摺動接触に起因して回転可能となっていることを特徴とする、マグネットスクリーン装置。
【請求項11】
可搬式のマグネットスクリーン装置であって、
投影面と該投影面に対向するマグネット面とを備えたスクリーンシート、および
スクリーンシートを巻き取るためのロール部材
を有して成り、
非使用時ではマグネット面が投影面に対して相対的に内側となるようにスクリーンシートがロール部材に巻き取られており、
巻き出される又は巻き取られるスクリーンシートと接するように設けられた長尺部材、並びに、スクリーンシート、ロール部材および長尺部材を収納するケーシングを更に有して成り、スクリーンシートの巻き出し時又は巻き取り時において長尺部材が投影面と直接的に接し、ケーシングはスクリーンシートの巻き出しおよび巻き取りのための開口部を有し、および長尺部材が、該開口部に位置付けられており、かつ、マグネットスクリーン装置が設けられる設置面に対して相対的に近い側に位置付けられるロール部材の下側ロール胴部分に隣接して設けられ、
マグネットスクリーン装置が設けられる設置面に相対的に近く位置付けられる近位ロール側部と、該近位ロール側部に対向して設置面に相対的に遠く位置付けられる遠位ロール側部とを有するロール部材について、遠位ロール側部からスクリーンシートが巻き出し又は巻き取りされ、
設置面に設けたマグネットスクリーン装置につき下側に設置面が位置する一方、上側にロール部材が位置するように方向を規定した場合、ロール部材におけるスクリーンシートの巻き出しポイント又は巻き取りポイントがロール部材の上側半分に位置付けられ、
長尺部材が、巻き出される又は巻き取られるスクリーンシートとの摺動接触に起因して回転可能となっていることを特徴とする、マグネットスクリーン装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照
審理終結日 2021-09-09 
結審通知日 2021-09-14 
審決日 2021-09-30 
出願番号 P2015-047415
審決分類 P 1 41・ 857- Y (G03B)
P 1 41・ 851- Y (G03B)
P 1 41・ 841- Y (G03B)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 中塚 直樹
特許庁審判官 濱本 禎広
居島 一仁
登録日 2018-10-26 
登録番号 6422800
発明の名称 マグネットスクリーン装置  
代理人 江間 晴彦  
代理人 田村 啓  
代理人 高岡 健  
代理人 高岡 健  
代理人 江間 晴彦  
代理人 田村 啓  
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