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審決分類 |
審判 訂正 判示事項別分類コード:857 訂正する D02G 審判 訂正 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 訂正する D02G 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する D02G 審判 訂正 特許請求の範囲の実質的変更 訂正する D02G 審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する D02G 審判 訂正 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) 訂正する D02G |
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管理番号 | 1381620 |
総通号数 | 2 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2022-02-25 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2021-08-16 |
確定日 | 2021-12-02 |
訂正明細書 | true |
事件の表示 | 特許第6650545号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第6650545号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件訂正審判の請求に係る特許第6650545号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし14に係る発明についての出願は、令和元年7月23日(優先権主張 平成30年8月23日)の出願であって、令和2年1月22日に特許権の設定登録がされ、令和3年8月16日に本件訂正審判の請求がされた。 第2 請求の趣旨及び訂正の内容 本件訂正審判の請求の趣旨は、審判請求書の請求の趣旨に記載されるとおり、「特許第6650545号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める、との審決を求める」ものであって、その内容は次のとおりである。 1.訂正事項1 特許請求の範囲の請求項9に「請求項1〜6のいずれか一項に記載の心線を含む摩擦伝動ベルト」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、 「ゴム成分及び心線を含む摩擦伝動ベルトであって、 前記摩擦伝動ベルトがVリブドベルトであり、 前記ゴム成分がエチレン−α−オレフィンエラストマーであり、 前記心線が、ラング撚りコードを含み、 前記心線の総繊度が300〜1000texであり、 前記心線の少なくとも一部の表面に付着しているゴム成分を有し、 該ラング撚りコードが下撚り糸を含み、 該下撚り糸がカーボン繊維を含むとともに、 引張弾性率240〜500N/(mm・%)を有する摩擦伝動ベルト」に訂正する(請求項9の記載を引用する請求項10及び13も同様に訂正する)。 2.訂正事項2 特許請求の範囲の請求項10に「複数の心線が所定の間隔をおいて埋設されたゴム層を備え、前記複数の心線が、請求項1〜6のいずれか一項に記載の心線であり、かつS撚りのラング撚りコードとZ撚りのラング撚りコードとを含む請求項9記載の摩擦伝動ベルト」と記載されているのを 「複数の心線が所定の間隔をおいて埋設されたゴム層を備え、 前記複数の心線が、S撚りのラング撚りコードとZ撚りのラング撚りコードとを含み、 前記複数の心線の総繊度が300〜1000texであり、 前記複数の心線の少なくとも一部の表面に付着しているゴム成分を有し、 該ラング撚りコードが下撚り糸を含み、 該下撚り糸がカーボン繊維を含む請求項9記載の摩擦伝動ベルト」に訂正する(請求項10の記載を引用する請求項13も同様に訂正する)。 3.訂正事項3 特許請求の範囲の請求項13に「ベルト1mm幅当たり、85N/mm以上の動的張力が作用するベルト式ISG駆動搭載のエンジンに装着される請求項9〜12のいずれか一項に記載の摩擦伝動ベルト」と記載されているのを 「ベルト1mm幅当たり、85N/mm以上の動的張力が作用するベルト式ISG駆動搭載のエンジンに装着される請求項9又は10記載の摩擦伝動ベルト」に訂正する。 4.訂正事項4 特許請求の範囲の請求項9に「請求項1〜6のいずれか一項に記載の心線を含む摩擦伝動ベルト」とあるうち、請求項2を引用するものについて、独立形式に改め、 「ゴム成分及び心線を含む摩擦伝動ベルトであって、 前記摩擦伝動ベルトがVリブドベルトであり、 前記ゴム成分がエチレン−α−オレフィンエラストマーであり、 前記心線が、ラング撚りコードを含み、 前記心線の総繊度が300〜1000texであり、 前記心線の少なくとも一部の表面に付着しているゴム成分を有し、 該ラング撚りコードが下撚り糸を含み、 該下撚り糸がカーボン繊維を含み、 前記下撚り糸が、繊度190〜410texおよび撚り係数0.5〜2を有するとともに、 引張弾性率240〜500N/(mm・%)を有する摩擦伝動ベルト」と記載し、新たに請求項15とする。 5.訂正事項5 特許請求の範囲の請求項9に「請求項1〜6のいずれか一項に記載の心線を含む摩擦伝動ベルト」とあるうち、請求項3を引用するものについて、独立形式に改め、 「ゴム成分及び心線を含む摩擦伝動ベルトであって、 前記摩擦伝動ベルトがVリブドベルトであり、 前記ゴム成分がエチレン−α−オレフィンエラストマーであり、 前記心線が、ラング撚りコードを含み、 前記心線の心線径が0.7〜1.2mmであり、 前記心線の総繊度が300〜1000texであり、 前記心線の少なくとも一部の表面に付着しているゴム成分を有し、 該ラング撚りコードが下撚り糸を含み、 前記ラング撚りコードが下撚り糸の本数が2〜3であり、 該下撚り糸がカーボン繊維を含むとともに、 引張弾性率240〜500N/(mm・%)を有する摩擦伝動ベルト」と記載し、新たに請求項16とする。 6.訂正事項6 特許請求の範囲の請求項9に「請求項1〜6のいずれか一項に記載の心線を含む摩擦伝動ベルト」とあるうち、請求項4を引用するものについて、独立形式に改め、 「ゴム成分及び心線を含む摩擦伝動ベルトであって、 前記摩擦伝動ベルトがVリブドベルトであり、 前記ゴム成分がエチレン−α−オレフィンエラストマーであり、 前記心線が、ラング撚りコードを含み、 前記心線の総繊度が300〜1000texであり、 前記心線の少なくとも一部の表面に付着しているゴム成分を有し、 該ラング撚りコードが下撚り糸を含み、 該下撚り糸がカーボン繊維を含み、 上撚り係数が下撚り係数の1〜7倍であるとともに、 引張弾性率240〜500N/(mm・%)を有する摩擦伝動ベルト」と記載し、新たに請求項17とする。 7.訂正事項7 特許請求の範囲の請求項9に「請求項1〜6のいずれか一項に記載の心線を含む摩擦伝動ベルト」とあるうち、請求項5を引用するものについて、独立形式に改め、 「ゴム成分及び心線を含む摩擦伝動ベルトであって、 前記摩擦伝動ベルトがVリブドベルトであり、 前記ゴム成分がエチレン−α−オレフィンエラストマーであり、 前記心線が、ラング撚りコードを含み、 前記心線の総繊度が300〜1000texであり、 前記心線の少なくとも一部の表面に付着しているゴム成分を有し、 該ラング撚りコードが下撚り糸を含み、 該下撚り糸がカーボン繊維を含み、 前記下撚り糸を構成する単繊維間に存在する接着成分をさらに有するとともに、 引張弾性率240〜500N/(mm・%)を有する摩擦伝動ベルト」と記載し、新たに請求項18とする。 8.訂正事項8 特許請求の範囲の請求項9に「請求項1〜6のいずれか一項に記載の心線を含む摩擦伝動ベルト」とあるうち、請求項6を引用するものについて、独立形式に改め、 「ゴム成分及び心線を含む摩擦伝動ベルトであって、 前記摩擦伝動ベルトがVリブドベルトであり、 前記ゴム成分がエチレン−α−オレフィンエラストマーであり、 前記心線が、ラング撚りコードを含み、 前記心線の総繊度が300〜1000texであり、 前記心線の少なくとも一部の表面に付着しているゴム成分を有し、 該ラング撚りコードが下撚り糸を含み、 該下撚り糸がカーボン繊維を含み、 前記下撚り糸を構成する単繊維間に存在する接着成分をさらに有し、 前記下撚り糸における接着成分の付着率が原糸に対して10〜25質量%であるとともに、 引張弾性率240〜500N/(mm・%)を有する摩擦伝動ベルト」と記載し、新たに請求項19とする。 9.訂正事項9 特許請求の範囲の請求項1〜8、11〜12及び14を削除する。 第3 当審の判断 1.訂正事項1について (1)訂正の目的について ア.請求項9において、請求項2〜6を引用しないものとした上で、請求項1を引用するものについて独立形式請求項へ改める訂正は、特許法第126条第1項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。 イ.請求項9の「心線を含む摩擦伝動ベルト」が、心線以外の構成要素として、「ゴム成分」を含み、その「ゴム成分」が、「前記ゴム成分がエチレン−α−オレフィンエラストマー」であり、さらに、「摩擦伝動ベルト」が「Vリブドベルト」であり、「引張弾性率240〜500N/(mm・%)を有する」ことを特定する訂正は、摩擦伝動ベルトの構成を具体的に特定して限定するものである。 したがって、イに係る訂正事項は、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (2)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことについて 請求項9において、請求項2〜6を引用しないものとした上で、請求項1を引用するものについて独立形式請求項へ改め、さらに、摩擦伝動ベルトの構成を具体的に特定して限定する訂正は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項に適合する。 (3)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること ア.願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書」という。)には、次の記載がある。なお、下線は、当審で付与した。以下同様。 「【0053】 [摩擦伝動ベルト] 本発明の摩擦伝動ベルトの詳細を、Vリブドベルトを例にとって説明すると、以下の通りである。本発明のVリブドベルトの形態は、ベルト長手方向に沿って互いに平行して延びる複数のVリブ部を有していれば、特に制限されず、例えば、図1に示す形態が例示される。図1は本発明の摩擦伝動ベルト(Vリブドベルト)の一例を示す概略断面図(ベルト幅方向に沿って切断した断面図)である。図1に示されるVリブドベルトは、ベルト下面(内周面)からベルト上面(背面)に向かって順に、圧縮ゴム層2、ベルト長手方向に心線1を埋設した接着ゴム層4、カバー帆布(織物、編物、不織布など)またはゴム組成物で構成された伸張層5を積層した形態を有している。圧縮ゴム層2には、ベルト長手方向に伸びる複数の断面V字状の溝が形成され、この溝の間には断面V字形(逆台形)の複数のVリブ部3(図1に示す例では4個)が形成されている。このVリブ部3の二つの傾斜面(表面)が摩擦伝動面を形成し、プーリと接して動力を伝達(摩擦伝動)する。接着ゴム層4内には、複数の心線1が、ベルト長手方向にそれぞれ延在し、かつベルト幅方向に所定のピッチで互いに離隔して配置されている。」 「【0058】 本発明の摩擦伝動ベルト(特に、Vリブドベルト)の引張弾性率は、例えば240〜500N/(mm・%)、好ましくは250〜480N/(mm・%)、さらに好ましくは300〜450N/(mm・%)(特に350〜400N/(mm・%))程度である。ベルトの引張弾性率が小さすぎると、ベルト伸びが大きくなってスリップが大きくなり、動力伝達不良、異音の発生、発熱による耐久性の低下が起こる虞がある。ベルトの引張弾性率が大きすぎると、ベルトの張力変動が大きくなり、耐久性が低下する虞がある。」 「【0062】 (ゴム組成物) 圧縮ゴム層2、接着ゴム層4および伸張層5は、ゴム成分を含むゴム組成物で形成されていてもよい。特に、圧縮ゴム層をゴム組成物で形成することにより、優れた静粛性、動力伝達性能をベルトに付与できるとともに、圧縮ゴム層や接着ゴム層をゴム組成物で形成することにより、既存の方法を用いて、心線との接着処理を行うことが可能となる。 【0063】 ゴム成分としては、加硫または架橋可能なゴムを用いてもよく、例えば、ジエン系ゴム(天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(ニトリルゴム)、水素化ニトリルゴム等)、エチレン−α−オレフィンエラストマー、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、アルキル化クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリル系ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴムなどが挙げられる。これらのゴム成分は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。好ましいゴム成分は、エチレン−α−オレフィンエラストマー(エチレン−プロピレン共重合体(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)等)およびクロロプレンゴムである。さらに、耐オゾン性、耐熱性、耐寒性、耐候性を有し、ベルト重量を低減できる点から、エチレン−α−オレフィンエラストマー(エチレン−プロピレン共重合体(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)等)が特に好ましい。ゴム成分がエチレン−α−オレフィンエラストマーを含む場合、ゴム成分中のエチレン−α−オレフィンエラストマーの割合は50質量%以上(特に80〜100質量%程度)であってもよく、100質量%(エチレン−α−オレフィンエラストマーのみ)が特に好ましい。」 イ.したがって、訂正事項1のうち、摩擦伝動ベルトが「ゴム成分」を含むものであり、「前記ゴム成分がエチレン−α−オレフィンエラストマー」であること、「摩擦伝動ベルトがVリブドベルト」であること、及び、摩擦伝動ベルトが「引張弾性率240〜500N/(mm・%)を有する」ことは、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項の規定に適合する。 (4)特許出願の際に独立して特許を受けることができること 訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許法第126条第7項の規定に該当するものであるか、すなわち、訂正後の特許請求の範囲の請求項9に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けるものであることか否か検討を要するものである。しかし、本件訂正後の請求項9に記載されている事項により特定される発明について、特許要件の適否について見直すべき新たな事情は存在せず、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるとする理由は見当たらないので、訂正事項1は、特許法第126条第7項の規定に適合する。 (5)小括 以上のとおりであるから、訂正事項1による訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号及び第4号を目的とするものに該当し、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合する。 2.訂正事項2について 請求項10において、心線について、請求項1〜6のいずれかを引用する記載であったものを、請求項2〜6を引用しないものとした上で、請求項1を引用するものについて書き改める訂正は、引用する請求項の数を減少させる訂正であることから、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。 また、請求項10において、心線について、請求項1〜6のいずれかを引用する記載であったものを、請求項2〜6を引用しないものとした上で、請求項1を引用するものについて書き改める訂正は、実質的な内容の変更を伴うものではなく、本件特許明細書に記載された事項の範囲内の訂正であることは明らかであるから、訂正事項2は、特許法第126条第5項及び第6項に適合する。 そして、訂正事項2は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許法第126条第7項の規定に該当するものであるか、すなわち、訂正後の特許請求の範囲の請求項10に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けるものであることか否か検討を要するものである。しかし、本件訂正後の請求項10に記載されている事項により特定される発明について、特許要件の適否について見直すべき新たな事情は存在せず、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるとする理由は見当たらないので、訂正事項2は、特許法第126条第7項の規定に適合する。 以上のとおりであるから、訂正事項2による訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号を目的とするものに該当し、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合する。 3.訂正事項3について 請求項13において、請求項9〜12のいずれかを引用する記載であったものを、請求項11および12を引用しないものとした上で、請求項9または10を引用するものに書き改める訂正は、引用する請求項の数を減少させる訂正であることから、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、請求項13において、請求項9〜12のいずれかを引用する記載であったものを、請求項11および12を引用しないものとした上で、請求項9又は10を引用するものに書き改める訂正は、実質的な内容の変更を伴うものではなく、本件特許明細書に記載された事項の範囲内の訂正であることは明らかであるから、訂正事項3は、特許法第126条第5項及び第6項に適合する。 そして、訂正事項3は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許法第126条第7項の規定に該当するものであるか、すなわち、訂正後の特許請求の範囲の請求項13に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けるものであることか否か検討を要するものである。しかし、本件訂正後の請求項13に記載されている事項により特定される発明について、特許要件の適否について見直すべき新たな事情は存在せず、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるとする理由は見当たらないので、訂正事項3は、特許法第126条第7項の規定に適合する。 以上のとおりであるから、訂正事項3による訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号を目的とするものに該当し、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合する。 4.訂正事項4について (1)訂正の目的について 請求項9において、請求項1、3〜6を引用しないものとした上で、請求項2を引用するものについて独立形式請求項へ改め、新たに請求項15とする訂正は、特許法第126条第1項ただし書き第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。 また、上記1.(1)イ.のとおり、摩擦伝動ベルトの構成を具体的に特定して限定する訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (2)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことについて 請求項9において、請求項1、3〜6を引用しないものとした上で、請求項2を引用するものについて独立形式請求項へ改め、さらに摩擦伝動ベルトの構成を具体的に特定して限定する訂正は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項に適合する。 (3)本件特許明細書に記載した事項の範囲内の訂正であること 摩擦伝動ベルトの構成を具体的に特定して限定する訂正は、上記1.(3)のとおり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項の規定に適合する。 (4)特許出願の際に独立して特許を受けることができること 訂正事項4は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許法第126条第7項の規定に該当するものであるか、すなわち、訂正後の特許請求の範囲の請求項15に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けるものであることか否か検討を要するものである。しかし、本件訂正後の請求項15に記載されている事項により特定される発明について、特許要件の適否について見直すべき新たな事情は存在せず、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるとする理由は見当たらないので、訂正事項4は、特許法第126条第7項の規定に適合する。 (5)小括 以上のとおりであるから、訂正事項4による訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号及び第4号を目的とするものに該当し、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合する。 5.訂正事項5について (1)訂正の目的について 請求項9において、請求項1〜2、4〜6を引用しないものとした上で、請求項3を引用するものについて独立形式請求項へ改め、新たに請求項16とする訂正は、特許法第126条第1項ただし書き第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。 また、上記1.(1)イ.のとおり、摩擦伝動ベルトの構成を具体的に特定して限定する訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (2)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことについて 請求項9において、請求項1〜2、4〜6を引用しないものとした上で、請求項3を引用するものについて独立形式請求項へ改め、さらに、摩擦伝動ベルトの構成を具体的に特定して限定する訂正は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項に適合する。 (3)本件特許明細書に記載した事項の範囲内の訂正であること 摩擦伝動ベルトの構成を具体的に特定して限定する訂正は、上記1.(3)のとおり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項の規定に適合する。 (4)特許出願の際に独立して特許を受けることができること 訂正事項5は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許法第126条第7項の規定に該当するものであるか、すなわち、訂正後の特許請求の範囲の請求項16に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けるものであることか否か検討を要するものである。しかし、本件訂正後の請求項16に記載されている事項により特定される発明について、特許要件の適否について見直すべき新たな事情は存在せず、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるとする理由は見当たらないので、訂正事項5は、特許法第126条第7項の規定に適合する。 (5)小括 以上のとおりであるから、訂正事項5による訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号及び第4号を目的とするものに該当し、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合する。 6.訂正事項6について (1)訂正の目的について 請求項9において、請求項1〜3、5〜6を引用しないものとした上で、請求項4を引用するものについて独立形式請求項へ改め、新たに請求項17とする訂正は、特許法第126条第1項ただし書き第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。 また、上記1.(1)イ.のとおり、摩擦伝動ベルトの構成を具体的に特定して限定する訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (2)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことについて 請求項9において、請求項1〜3、5〜6を引用しないものとした上で、請求項4を引用するものについて独立形式請求項へ改め、さらに摩擦伝動ベルトの構成を具体的に特定して限定する訂正は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項に適合する。 (3)本件特許明細書に記載した事項の範囲内の訂正であること 摩擦伝動ベルトの構成を具体的に特定して限定する訂正は、上記1.(3)のとおり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項の規定に適合する。 (4)特許出願の際に独立して特許を受けることができること 訂正事項6は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許法第126条第7項の規定に該当するものであるか、すなわち、訂正後の特許請求の範囲の請求項17に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けるものであることか否か検討を要するものである。しかし、本件訂正後の請求項17に記載されている事項により特定される発明について、特許要件の適否について見直すべき新たな事情は存在せず、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるとする理由は見当たらないので、訂正事項6は、特許法第126条第7項の規定に適合する。 (5)小括 以上のとおりであるから、訂正事項6による訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号及び第4号を目的とするものに該当し、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合する。 7.訂正事項7について (1)訂正の目的について 請求項9において、請求項1〜4、6を引用しないものとした上で、請求項5を引用するものについて独立形式請求項へ改め、新たに請求項18とする訂正は、特許法第126条第1項ただし書き第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。 また、上記1.(1)イ.のとおり、摩擦伝動ベルトの構成を具体的に特定して限定する訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (2)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことについて ア.請求項9において、請求項1〜4、6を引用しないものとした上で、請求項5を引用するものについて独立形式請求項へ改め、さらに摩擦伝動ベルトの構成を具体的に特定して限定する訂正は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項に適合する。 (3)本件特許明細書に記載した事項の範囲内の訂正であること 摩擦伝動ベルトの構成を具体的に特定して限定する訂正は、上記1.(3)のとおり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項の規定に適合する。 (4)特許出願の際に独立して特許を受けることができること 訂正事項7は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許法第126条第7項の規定に該当するものであるか、すなわち、訂正後の特許請求の範囲の請求項18に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けるものであることか否か検討を要するものである。しかし、本件訂正後の請求項18に記載されている事項により特定される発明について、特許要件の適否について見直すべき新たな事情は存在せず、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるとする理由は見当たらないので、訂正事項7は、特許法第126条第7項の規定に適合する。 (5)小括 以上のとおりであるから、訂正事項7による訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号及び第4号を目的とするものに該当し、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合する。 8.訂正事項8について (1)訂正の目的について 請求項9において、請求項1〜5を引用しないものとした上で、請求項6を引用するものについて独立形式請求項へ改め、新たに請求項19とする訂正は、特許法第126条第1項ただし書き第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。 また、上記1.(1)イ.のとおり、摩擦伝動ベルトの構成を具体的に特定して限定する訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (2)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことについて 請求項9において、請求項1〜5を引用しないものとした上で、請求項6を引用するものについて独立形式請求項へ改め、さらに、摩擦伝動ベルトの構成を具体的に特定して限定する訂正は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項に適合する。 (3)本件特許明細書に記載した事項の範囲内の訂正であること 摩擦伝動ベルトの構成を具体的に特定して限定する訂正は、上記1.(3)のとおり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項の規定に適合する。 (4)特許出願の際に独立して特許を受けることができること 訂正事項8は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許法第126条第7項の規定に該当するものであるか、すなわち、訂正後の特許請求の範囲の請求項19に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けるものであることか否か検討を要するものである。しかし、本件訂正後の請求項19に記載されている事項により特定される発明について、特許要件の適否について見直すべき新たな事情は存在せず、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるとする理由は見当たらないので、訂正事項8は、特許法第126条第7項の規定に適合する。 (5)小括 以上のとおりであるから、訂正事項8による訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号及び第4号を目的とするものに該当し、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合する。 9.訂正事項9について 訂正事項9は、本件特許請求の範囲の請求項1〜8、11〜12及び14を削除するものである。 したがって、訂正事項9による訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項9は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、本件特許明細書に記載された事項の範囲内の訂正であることは明らかであるから、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 さらに、訂正事項9は、訂正前の請求項1〜8、11〜12及び14を削除するものであり、独立特許要件の判断の対象となる請求項は存在しないから、訂正事項9による訂正は、独立特許要件違反となるものではなく、特許法第126条第7項の規定に適合する。 よって、訂正事項9による訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号を目的とするものに該当し、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合する。 第4 むすび したがって、本件訂正審判の請求に係る訂正事項1ないし9による訂正は、特許法第126条第1ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合する。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 (削除) 【請求項2】 (削除) 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 (削除) 【請求項5】 (削除) 【請求項6】 (削除) 【請求項7】 (削除) 【請求項8】 (削除) 【請求項9】 ゴム成分及び心線を含む摩擦伝動ベルトであって、 前記摩擦伝動ベルトがVリブドベルトであり、 前記ゴム成分がエチレン−α−オレフィンエラストマーであり、 前記心線が、ラング撚りコードを含み、 前記心線の総繊度が300〜1000texであり、 前記心線の少なくとも一部の表面に付着しているゴム成分を有し、 該ラング撚りコードが下撚り糸を含み、 該下撚り糸がカーボン繊維を含むとともに、 引張弾性率240〜500N/(mm・%)を有する摩擦伝動ベルト。 【請求項10】 複数の心線が所定の間隔をおいて埋設されたゴム層を備え、 前記複数の心線が、S撚りのラング撚りコードとZ撚りのラング撚りコードとを含み、 前記複数の心線の総繊度が300〜1000texであり、 前記複数の心線の少なくとも一部の表面に付着しているゴム成分を有し、 該ラング撚りコードが下撚り糸を含み、 該下撚り糸がカーボン繊維を含む請求項9記載の摩擦伝動ベルト。 【請求項11】 (削除) 【請求項12】 (削除) 【請求項13】 ベルト1mm幅当たり、85N/mm以上の動的張力が作用するベルト式ISG駆動搭載のエンジンに装着される請求項9又は10記載の摩擦伝動ベルト。 【請求項14】 (削除) 【請求項15】 ゴム成分及び心線を含む摩擦伝動ベルトであって、 前記摩擦伝動ベルトがVリブドベルトであり、 前記ゴム成分がエチレン−α−オレフィンエラストマーであり、 前記心線が、ラング撚りコードを含み、 前記心線の総繊度が300〜1000texであり、 前記心線の少なくとも一部の表面に付着しているゴム成分を有し、 該ラング撚りコードが下撚り糸を含み、 該下撚り糸がカーボン繊維を含み、 前記下撚り糸が、繊度190〜410texおよび撚り係数0.5〜2を有するとともに、 引張弾性率240〜500N/(mm・%)を有する摩擦伝動ベルト。 【請求項16】 ゴム成分及び心線を含む摩擦伝動ベルトであって、 前記摩擦伝動ベルトがVリブドベルトであり、 前記ゴム成分がエチレン−α−オレフィンエラストマーであり、 前記心線が、ラング撚りコードを含み、 前記心線の心線径が0.7〜1.2mmであり、 前記心線の総繊度が300〜1000texであり、 前記心線の少なくとも一部の表面に付着しているゴム成分を有し、 該ラング撚りコードが下撚り糸を含み、 前記ラング撚りコードが下撚り糸の本数が2〜3であり、 該下撚り糸がカーボン繊維を含むとともに、 引張弾性率240〜500N/(mm・%)を有する摩擦伝動ベルト。 【請求項17】 ゴム成分及び心線を含む摩擦伝動ベルトであって、 前記摩擦伝動ベルトがVリブドベルトであり、 前記ゴム成分がエチレン−α−オレフィンエラストマーであり、 前記心線が、ラング撚りコードを含み、 前記心線の総繊度が300〜1000texであり、 前記心線の少なくとも一部の表面に付着しているゴム成分を有し、 該ラング撚りコードが下撚り糸を含み、 該下撚り糸がカーボン繊維を含み、 上撚り係数が下撚り係数の1〜7倍であるとともに、 引張弾性率240〜500N/(mm・%)を有する摩擦伝動ベルト。 【請求項18】 ゴム成分及び心線を含む摩擦伝動ベルトであって、 前記摩擦伝動ベルトがVリブドベルトであり、 前記ゴム成分がエチレン−α−オレフィンエラストマーであり、 前記心線が、ランク撚りコードを含み、 前記心線の総繊度が300〜1000texであり、 前記心線の少なくとも一部の表面に付着しているゴム成分を有し、 該ランク撚りコードが下撚り糸を含み、 該下撚り糸がカーボン繊維を含み、 前記下撚り糸を構成する単繊維間に存在する接着成分をさらに有するとともに、 引張弾性率240〜500N/(mm・%)を有する摩擦伝動ベルト。 【請求項19】 ゴム成分及び心線を含む摩擦伝動ベルトであって、 前記摩擦伝動ベルトがVリブドベルトであり、 前記ゴム成分がエチレン−α−オレフィンエラストマーであり、 前記心線が、ランク撚りコードを含み、 前記心線の総繊度が300〜1000texであり、 前記心線の少なくとも一部の表面に付着しているゴム成分を有し、 該ランク撚りコードが下撚り糸を含み、 該下撚り糸がカーボン繊維を含み、 前記下撚り糸を構成する単繊維間に存在する接着成分をさらに有し、 前記下撚り糸における接着成分の付着率が原糸に対して10〜25質量%であるとともに、 引張弾性率240〜500N/(mm・%)を有する摩擦伝動ベルト。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照 |
審理終結日 | 2021-11-10 |
結審通知日 | 2021-11-12 |
審決日 | 2021-11-24 |
出願番号 | P2019-135145 |
審決分類 |
P
1
41・
856-
Y
(D02G)
P 1 41・ 854- Y (D02G) P 1 41・ 851- Y (D02G) P 1 41・ 855- Y (D02G) P 1 41・ 841- Y (D02G) P 1 41・ 857- Y (D02G) |
最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
藤原 直欣 |
特許庁審判官 |
矢澤 周一郎 井上 茂夫 |
登録日 | 2020-01-22 |
登録番号 | 6650545 |
発明の名称 | 摩擦伝動ベルト用心線および摩擦伝動ベルトならびにそれらの製造方法 |
代理人 | 阪中 浩 |
代理人 | 鍬田 充生 |
代理人 | 阪中 浩 |
代理人 | 鍬田 充生 |