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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B32B
審判 全部申し立て 2項進歩性  B32B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B32B
管理番号 1381632
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-02-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-04-13 
確定日 2021-11-10 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6599789号発明「ハードコート積層フィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6599789号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2、7、9〜18〕、19について訂正することを認める。 特許第6599789号の請求項1〜19に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6599789号の請求項1〜18に係る特許についての出願は、平成28年2月12日(優先権主張 平成27年11月25日、平成28年2月2日)の出願であって、令和元年10月11日にその特許権の設定登録がされ、令和元年10月30日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。

令和2年4月13日 :特許異議申立人山内博明(以下「申立人」という。)による請求項1〜18に係る特許に対する特許異議の申立て
令和2年9月29日付け:取消理由通知書
令和2年11月24日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和3年2月17日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和3年4月2日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出(以下、訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。)

なお、本件訂正請求がされたので、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、当該期間内に申立人からは何ら応答がなかった。

第2 訂正の適否
1 訂正の内容
本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、次のとおりである。

(1)訂正事項1
本件訂正前の請求項1に記載された
「上記樹脂フィルムは、(α)重合性モノマーに由来する構造単位の総和を100モル%として、メチルメタクリレートに由来する構造単位を50〜95モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構造単位を50〜5モル%の量で含むアクリル系樹脂の層を少なくとも1層含む」を、
「上記樹脂フィルムは、(α)重合性モノマーに由来する構造単位の総和を100モル%として、メチルメタクリレートに由来する構造単位を50〜95モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構造単位を50〜5モル%の量で含むアクリル系樹脂の層を少なくとも1層含み、
ここで上記樹脂フィルムが、
上記(α)重合性モノマーに由来する構造単位の総和を100モル%として、メチルメタクリレートに由来する構造単位を50〜95モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構造単位を50〜5モル%の量で含むアクリル系樹脂の単層フィルム、
上記(α)重合性モノマーに由来する構造単位の総和を100モル%として、メチルメタクリレートに由来する構造単位を50〜95モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構造単位を50〜5モル%の量で含むアクリル系樹脂の層;
(β)芳香族ポリカーボネート系樹脂の層;、及び
上記(α)重合性モノマーに由来する構造単位の総和を100モル%として、メチルメタクリレートに由来する構造単位を50〜95モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構造単位を50〜5モル%の量で含むアクリル系樹脂の層;が、
この順に直接積層された多層樹脂フィルム、又は、
上記(α)重合性モノマーに由来する構造単位の総和を100モル%として、メチルメタクリレートに由来する構造単位を50〜95モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構造単位を50〜5モル%の量で含むアクリル系樹脂の層;
(γ)重合性モノマーに由来する構造単位の総和を100モル%として、メチルメタクリレートに由来する構造単位を50〜95モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構造単位を50〜5モル%の量で含むアクリル系樹脂100質量部とコアシェルゴム1〜100質量部を含む樹脂組成物の層;及び
上記(α)重合性モノマーに由来する構造単位の総和を100モル%として、メチルメタクリレートに由来する構造単位を50〜95モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構造単位を50〜5モル%の量で含むアクリル系樹脂の層;が、
この順に直接積層された多層樹脂フィルムである」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2、7、16〜18も同様に訂正する)。

(2)訂正事項2
本件訂正前の請求項9に記載された
「(ホ)上記第1ハードコート表面の往復2万回綿拭後の水接触角が100度以上」を、
「(ホ)上記第1ハードコート表面の往復2万回綿拭後の水接触角が100度以上:
ここで上記第1ハードコート表面の往復2万回綿拭後の水接触角は、
縦150mm、横50mmの大きさで、ハードコート積層フィルムのマシン方向が試験片の縦方向となるように採取した試験片を、ハードコート積層フィルムの第1ハードコートが表面になるようにJIS L 0849:2013の学振形試験機に置き、学振形試験機の摩擦端子に、4枚重ねのガーゼ(川本産業株式会社の医療用タイプ1ガーゼ)で覆ったステンレス板(縦10mm、横10mm、厚み1mm)を取付け、該ステンレス板の縦横面が試験片と接触するようにセットし、350g荷重を載せ、試験片の第1ハードコート面を、摩擦端子の移動距離60mm、速度1往復/秒の条件で往復2万回擦った後、当該綿拭箇所について、JIS R 3257:1999に従い、自動接触角計を使用し、蒸留水の水滴の幅と高さとから算出する方法で水接触角を測定する」に訂正する(請求項9の記載を直接的又は間接的に引用する請求項12〜18も同様に訂正する)。

(3)訂正事項3
本件訂正前の請求項10に記載された
「(ホ)上記第1ハードコート表面の往復2万回綿拭後の水接触角が100度以上」を、
「(ホ)上記第1ハードコート表面の往復2万回綿拭後の水接触角が100度以上:
ここで上記第1ハードコート表面の往復2万回綿拭後の水接触角は、
縦150mm、横50mmの大きさで、ハードコート積層フィルムのマシン方向が試験片の縦方向となるように採取した試験片を、ハードコート積層フィルムの第1ハードコートが表面になるようにJIS L 0849:2013の学振形試験機に置き、学振形試験機の摩擦端子に、4枚重ねのガーゼ(川本産業株式会社の医療用タイプ1ガーゼ)で覆ったステンレス板(縦10mm、横10mm、厚み1mm)を取付け、該ステンレス板の縦横面が試験片と接触するようにセットし、350g荷重を載せ、試験片の第1ハードコート面を、摩擦端子の移動距離60mm、速度1往復/秒の条件で往復2万回擦った後、当該綿拭箇所について、JIS R 3257:1999に従い、自動接触角計を使用し、蒸留水の水滴の幅と高さとから算出する方法で水接触角を測定する」に訂正する(請求項10の記載を直接的又は間接的に引用する請求項11〜18も同様に訂正する)。

(4)訂正事項4
本件訂正前の請求項15に記載された
「上記第2ハードコートの厚みが、5〜30μmである、請求項3〜14の何れか1項に記載のハードコート積層フィルム。」を
「上記第2ハードコートの厚みが、5〜30μmである、請求項3〜6、8〜14の何れか1項に記載のハードコート積層フィルム。」に訂正する(請求項15の記載を直接的又は間接的に引用する請求項16〜18も同様に訂正する)。

(5)訂正事項5
新たな請求項19として、以下の請求項を追加する。
「表面側から順に第1ハードコート、第2ハードコート、及び樹脂フィルムの層を有し、
上記第1ハードコートは、
(A)多官能(メタ)アクリレート100質量部;
(B)撥水剤0.01〜7質量部;及び
(C)シランカップリング剤0.01〜10質量部;及び
(F)平均粒子径0.5〜10μmの樹脂微粒子0.01〜15質量部;
を含み、かつ無機粒子を含まない塗料からなり;
上記第2ハードコートは、
(A)多官能(メタ)アクリレート100質量部;及び
(D)平均粒子径1〜300nmの無機微粒子50〜300質量部;
を含む塗料からなり;
上記第2ハードコートの厚みが、5〜30μmであり;
上記樹脂フィルムは、(α)重合性モノマーに由来する構造単位の総和を100モル%として、メチルメタクリレートに由来する構造単位を50〜95モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構造単位を50〜5モル%の量で含むアクリル系樹脂の層を少なくとも1層含む;
ハードコート積層フィルム。」

2 一群の請求項について
本件訂正請求は本件訂正前の一群の請求項〔1、2、7、9〜18〕に対して請求されたものである。
また、本件訂正後の請求項19については、引用関係の解消を目的とする訂正であるから、当該請求項についての訂正が認められる場合には請求項19は、請求項1、2、7、9〜18とは別途訂正することを求めている。
したがって、本件訂正請求は、一群の請求項〔1、2、7、9〜18〕、19について請求されたものである。

3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1の「樹脂フィルム」について限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項1は、本件特許の明細書【0086】、【0087】、【0089】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という)に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2)訂正事項2、3について
訂正事項2、3は、本件訂正前の請求項9、10の「水接触角」について限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項2、3は、本件特許の明細書【0112】、【0139】、【0140】の記載に基づくものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項2、3は、本件訂正前の請求項9、10に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)訂正事項4について
訂正事項4は、本件訂正前の請求項15の記載が請求項7の記載を引用し、請求項7の記載が請求項1又は2の記載を引用する場合、請求項15の「上記第2ハードコート層」の記載より前に「第2ハードコート層」という記載がないために本件訂正前の請求項15に係る発明が不明確となっていたものを、当該不明確となっていた発明を削除することによって、本件訂正後の請求項15に係る発明における「上記第2ハードコート層」の意味する内容を明らかにするために記載を正すものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
訂正事項4は、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(4)訂正事項5について
訂正事項5は、本件訂正前の請求項15の記載が請求項7の記載を引用し、請求項7の記載が請求項3の記載を引用していたものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項3及び7の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるものであって、請求項間の引用関係の解消を目的とするものに該当する。
訂正事項5は、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項並びに第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2、7、9〜18〕、19について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明
上記第2のとおり本件訂正が認められたことから、本件特許の請求項1〜19に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1〜19に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
表面側から順に第1ハードコート、及び樹脂フィルムの層を有し、
上記第1ハードコートは、
(A)多官能(メタ)アクリレート 100質量部;及び
(B)撥水剤 0.01〜7質量部;
を含み、かつ無機粒子を含まない塗料からなり;
上記樹脂フィルムは、(α)重合性モノマーに由来する構造単位の総和を100モル%として、メチルメタクリレートに由来する構造単位を50〜95モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構造単位を50〜5モル%の量で含むアクリル系樹脂の層を少なくとも1層含み、
ここで上記樹脂フィルムが、
上記(α)重合性モノマーに由来する構造単位の総和を100モル%として、メチルメタクリレートに由来する構造単位を50〜95モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構造単位を50〜5モル%の量で含むアクリル系樹脂の単層フィルム、
上記(α)重合性モノマーに由来する構造単位の総和を100モル%として、メチルメタクリレートに由来する構造単位を50〜95モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構造単位を50〜5モル%の量で含むアクリル系樹脂の層;
(β)芳香族ポリカーボネート系樹脂の層;、及び
上記(α)重合性モノマーに由来する構造単位の総和を100モル%として、メチルメタクリレートに由来する構造単位を50〜95モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構造単位を50〜5モル%の量で含むアクリル系樹脂の層;が、
この順に直接積層された多層樹脂フィルム、又は、
上記(α)重合性モノマーに由来する構造単位の総和を100モル%として、メチルメタクリレートに由来する構造単位を50〜95モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構造単位を50〜5モル%の量で含むアクリル系樹脂の層;
(γ)重合性モノマーに由来する構造単位の総和を100モル%として、メチルメタクリレートに由来する構造単位を50〜95モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構造単位を50〜5モル%の量で含むアクリル系樹脂100質量部とコアシェルゴム1〜100質量部を含む樹脂組成物の層;及び
上記(α)重合性モノマーに由来する構造単位の総和を100モル%として、メチルメタクリレートに由来する構造単位を50〜95モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構造単位を50〜5モル%の量で含むアクリル系樹脂の層;が、
この順に直接積層された多層樹脂フィルムである;
ハードコート積層フィルム。
【請求項2】
上記(B)撥水剤が、(メタ)アクリロイル基含有フルオロポリエーテル系撥水剤を含む、請求項1に記載のハードコート積層フィルム。
【請求項3】
表面側から順に第1ハードコート、第2ハードコート、及び樹脂フィルムの層を有し、
上記第1ハードコートは、
(A)多官能(メタ)アクリレート 100質量部;
(B)撥水剤 0.01〜7質量部;及び
(C)シランカップリング剤 0.01〜10質量部;
を含み、かつ無機粒子を含まない塗料からなり;
上記第2ハードコートは、
(A)多官能(メタ)アクリレート 100質量部;及び
(D)平均粒子径 1〜300nmの無機微粒子 50〜300質量部;
を含む塗料からなり;
上記樹脂フィルムは、(α)重合性モノマーに由来する構造単位の総和を100モル%として、メチルメタクリレートに由来する構造単位を50〜95モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構造単位を50〜5モル%の量で含むアクリル系樹脂の層を少なくとも1層含む;
ハードコート積層フィルム。
【請求項4】
上記(B)撥水剤が、(メタ)アクリロイル基含有フルオロポリエーテル系撥水剤を含む、請求項3に記載のハードコート積層フィルム。
【請求項5】
上記(C)シランカップリング剤が、アミノ基を有するシランカップリング剤、及びメルカプト基を有するシランカップリング剤からなる群から選択される1種以上を含む、請求項3又は4に記載のハードコート積層フィルム。
【請求項6】
上記第2ハードコートを形成する塗料が、更に(E)レベリング剤 0.01〜1質量部;を含む、請求項3〜5の何れか1項に記載のハードコート積層フィルム。
【請求項7】
上記第1ハードコートを形成する塗料が、更に(F)平均粒子径 0.5〜10μmの樹脂微粒子0.01〜15質量部;を含む、請求項1〜6の何れか1項に記載のハードコート積層フィルム。
【請求項8】
表面側から順に第1ハードコート、第2ハードコート、及び樹脂フィルムの層を有し、
上記第1ハードコートは無機粒子を含まない塗料からなり;
上記第2ハードコートは無機粒子を含む塗料からなり;
上記樹脂フィルムは、(α)重合性モノマーに由来する構造単位の総和を100モル%として、メチルメタクリレートに由来する構造単位を50〜95モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構造単位を50〜5モル%の量で含むアクリル系樹脂の層を少なくとも1層含み;
下記(イ)〜(ハ)を満たすハードコート積層フィルム。
(イ)全光線透過率が85%以上。
(ロ)上記第1ハードコート表面の鉛筆硬度が5H以上。
(ハ)黄色度指数 3以下。
【請求項9】
更に、下記(ニ)及び(ホ)を満たす請求項8に記載のハードコート積層フィルム。
(ニ)上記第1ハードコート表面の水接触角が100度以上。
(ホ)上記第1ハードコート表面の往復2万回綿拭後の水接触角が100度以上:
ここで上記第1ハードコート表面の往復2万回綿拭後の水接触角は、
縦150mm、横50mmの大きさで、ハードコート積層フィルムのマシン方向が試験片の縦方向となるように採取した試験片を、ハードコート積層フィルムの第1ハードコートが表面になるようにJIS L 0849:2013の学振形試験機に置き、学振形試験機の摩擦端子に、4枚重ねのガーゼ(川本産業株式会社の医療用タイプ1ガーゼ)で覆ったステンレス板(縦10mm、横10mm、厚み1mm)を取付け、該ステンレス板の縦横面が試験片と接触するようにセットし、350g荷重を載せ、試験片の第1ハードコート面を、摩擦端子の移動距離60mm、速度1往復/秒の条件で往復2万回擦った後、当該綿拭箇所について、JIS R 3257:1999に従い、自動接触角計を使用し、蒸留水の水滴の幅と高さとから算出する方法で水接触角を測定する。
【請求項10】
表面側から順に第1ハードコート、第2ハードコート、及び樹脂フィルムの層を有し、
上記第1ハードコートは無機粒子を含まない塗料からなり;
上記第2ハードコートは無機粒子を含む塗料からなり;
上記樹脂フィルムは、(α)重合性モノマーに由来する構造単位の総和を100モル%として、メチルメタクリレートに由来する構造単位を50〜95モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構造単位を50〜5モル%の量で含むアクリル系樹脂の層を少なくとも1層含み;
下記(ニ)及び(ホ)を満たすハードコート積層フィルム。
(ニ)上記第1ハードコート表面の水接触角が100度以上。
(ホ)上記第1ハードコート表面の往復2万回綿拭後の水接触角が100度以上:
ここで上記第1ハードコート表面の往復2万回綿拭後の水接触角は、
縦150mm、横50mmの大きさで、ハードコート積層フィルムのマシン方向が試験片の縦方向となるように採取した試験片を、ハードコート積層フィルムの第1ハードコートが表面になるようにJIS L 0849:2013の学振形試験機に置き、学振形試験機の摩擦端子に、4枚重ねのガーゼ(川本産業株式会社の医療用タイプ1ガーゼ)で覆ったステンレス板(縦10mm、横10mm、厚み1mm)を取付け、該ステンレス板の縦横面が試験片と接触するようにセットし、350g荷重を載せ、試験片の第1ハードコート面を、摩擦端子の移動距離60mm、速度1往復/秒の条件で往復2万回擦った後、当該綿拭箇所について、JIS R 3257:1999に従い、自動接触角計を使用し、蒸留水の水滴の幅と高さとから算出する方法で水接触角を測定する。
【請求項11】
更に、下記(ロ)を満たす、請求項10に記載のハードコート積層フィルム。
(ロ)上記第1ハードコート表面の鉛筆硬度が5H以上。
【請求項12】
上記第1ハードコートが撥水剤を含み、かつ無機粒子を含まない塗料からなる請求項8〜11の何れか1項に記載のハードコート積層フィルム。
【請求項13】
上記第1ハードコートが、(A)多官能(メタ)アクリレート 100質量部;
及び(B)撥水剤 0.01〜7質量部;を含み、かつ無機粒子を含まない塗料からなる請求項8〜12の何れか1項に記載のハードコート積層フィルム。
【請求項14】
上記第1ハードコートの厚みが、0.5〜5μmである、請求項3〜13の何れか1項に記載のハードコート積層フィルム。
【請求項15】
上記第2ハードコートの厚みが、5〜30μmである、請求項3〜6、8〜14の何れか1項に記載のハードコート積層フィルム。
【請求項16】
上記樹脂フィルムが、
(α)重合性モノマーに由来する構造単位の総和を100モル%として、メチルメタクリレートに由来する構造単位を50〜95モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構造単位を50〜5モル%の量で含むアクリル系樹脂の層;
(β)芳香族ポリカーボネート系樹脂の層;、及び
(α)重合性モノマーに由来する構造単位の総和を100モル%として、メチルメタクリレートに由来する構造単位を50〜95モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構造単位を50〜5モル%の量で含むアクリル系樹脂の層;が、
この順に直接積層された多層樹脂フィルムである;
請求項1〜15の何れか1項に記載のハードコート積層フィルム。
【請求項17】
上記樹脂フィルムが、
(α)重合性モノマーに由来する構造単位の総和を100モル%として、メチルメタクリレートに由来する構造単位を50〜95モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構造単位を50〜5モル%の量で含むアクリル系樹脂の層;
(γ)重合性モノマーに由来する構造単位の総和を100モル%として、メチルメタクリレートに由来する構造単位を50〜95モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構造単位を50〜5モル%の量で含むアクリル系樹脂100質量部とコアシェルゴム1〜100質量部を含む樹脂組成物の層;及び
(α)重合性モノマーに由来する構造単位の総和を100モル%として、メチルメタクリレートに由来する構造単位を50〜95モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構造単位を50〜5モル%の量で含むアクリル系樹脂の層;が、
この順に直接積層された多層樹脂フィルムである;
請求項1〜15の何れか1項に記載のハードコート積層フィルム。
【請求項18】
請求項1〜17の何れか1項に記載のハードコート積層フィルムを含む物品。
【請求項19】
表面側から順に第1ハードコート、第2ハードコート、及び樹脂フィルムの層を
有し、
上記第1ハードコートは、
(A)多官能(メタ)アクリレート100質量部;
(B)撥水剤0.01〜7質量部;
(C)シランカップリング剤0.01〜10質量部;及び
(F)平均粒子径0.5〜10μmの樹脂微粒子0.01〜15質量部;
を含み、かつ無機粒子を含まない塗料からなり;
上記第2ハードコートは、
(A)多官能(メタ)アクリレート100質量部;及び
(D)平均粒子径1〜300nmの無機微粒子50〜300質量部;
を含む塗料からなり;
上記第2ハードコートの厚みが、5〜30μmであり;
上記樹脂フィルムは、(α)重合性モノマーに由来する構造単位の総和を100モル%として、メチルメタクリレートに由来する構造単位を50〜95モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構造単位を50〜5モル%の量で含むアクリル系樹脂の層を少なくとも1層含む;
ハードコート積層フィルム。」

第4 取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
令和2年11月24日提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1〜19に係る特許に対して、当審が令和3年2月17日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。

取消理由1(明確性
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

・請求項9、10に記載された「水接触角」の測定について、その測定条件が規定されておらず、ハードコート積層フィルムの特性を特定することができないために、発明が不明確である。

取消理由2(サポート要件)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

(1)請求項1、3、8、12、13、19に係る発明、及び請求項1、3、12、13に係る発明を直接的又は間接的に引用する請求項2、4〜7、14〜18に係る発明は、「第1ハードコート」に所定の配合量の「撥水剤」を含むことによって課題を解決しようとするものであると解されるところ、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されていないため、発明の詳細な説明に記載したものではない。

(2)請求項9、10に係る発明、及び請求項9、10に係る発明を直接的又は間接的に引用する請求項11〜18に係る発明は、「第1ハードコート表面の水接触角」を特定することによって課題を解決しようとするものであると解されるところ、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されていないため、発明の詳細な説明に記載したものではない。

取消理由3(進歩性
本件特許の請求項1、2、7、14、18に係る発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された事項、及び引用文献4に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

[引用文献等一覧]
引用文献1:国際公開第2011/145630号(甲第1号証)
引用文献2:特開2013−76029号公報(甲第2号証)
引用文献4:特開2015−182273号公報(甲第4号証)
以下、甲第1号証、甲第2号証及び甲第4号証は、それぞれ、「甲1」、「甲2」及び「甲4」ともいう。

2 当審の判断
(1)取消理由1(明確性)について
「第1ハードコート表面の往復2万回綿拭後の水接触角」の測定については、綿の諸元、荷重及び水の種類等の測定条件の規定が必要であるところ、請求項9、10には、「縦150mm、横50mmの大きさで、ハードコート積層フィルムのマシン方向が試験片の縦方向となるように採取した試験片を、ハードコート積層フィルムの第1ハードコートが表面になるようにJIS L 0849:2013の学振形試験機に置き、学振形試験機の摩擦端子に、4枚重ねのガーゼ(川本産業株式会社の医療用タイプ1ガーゼ)で覆ったステンレス板(縦10mm、横10mm、厚み1mm)を取付け、該ステンレス板の縦横面が試験片と接触するようにセットし、350g荷重を載せ、試験片の第1ハードコート面を、摩擦端子の移動距離60mm、速度1往復/秒の条件で往復2万回擦った後、当該綿拭箇所について、JIS R 3257:1999に従い、自動接触角計を使用し、蒸留水の水滴の幅と高さとから算出する方法で水接触角を測定する」と、その測定条件が規定されているため、請求項9、10に係る「ハードコート積層フィルム」の「第1ハードコート表面の往復2万回綿拭後の水接触角」を特定することができる。
よって、本件発明9〜18は、明確である。

(2)取消理由2(サポート要件)について
発明の詳細な説明の「本発明の課題は、耐擦傷性に優れたハードコート積層フィルムを提供することにある。本発明の更なる課題は、耐擦傷性に優れ、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、及びエレクトロルミネセンスディスプレイなどの画像表示装置の部材(タッチパネル機能を有する画像表示装置及びタッチパネル機能を有しない画像表示装置を含む。)、特にタッチパネル機能を有する画像表示装置のディスプレイ面板として好適なハードコート積層フィルムを提供することにある。」(【発明が解決しようとする課題】【0005】。下線は、理解の便宜のため当審が付した。)の記載から、本件特許の発明が解決しようとする課題は、「耐擦傷性に優れたハードコート積層フィルムを提供すること」である。
そして、発明の洋裁な説明の「上記第1ハードコートは、無機粒子を含まない塗料からなる。・・・」(【0026】)、「無機粒子・・・は、ハードコートの硬度を高めるのに効果が大きい。一方、上記成分(A)などの樹脂成分との相互作用は弱く、耐擦傷性を不十分なものにする原因となっていた。そこで本発明においては、最表面を形成する第1ハードコートには無機粒子を含まないようにして耐擦傷性を保持し、・・・、この問題を解決したものである。」(【0027】)の記載から、上記課題を解決するための手段は、「第1ハードコート」が「無機粒子を含まない塗料からなる」ことである。
独立形式で記載された本件発明1、3、8、10及び19は、発明の課題を解決するための手段である「第1ハードコート」が「無機粒子を含まない塗料からなる」ことを発明特定事項としている。
よって、本件発明1〜19は、発明の詳細な説明に記載した範囲内のものである。

(3)取消理由4(進歩性)について
ア 引用文献の記載事項
(ア)引用文献1には、次の事項が記載されている。
「技術分野
[0001]
本発明は、合成樹脂積層体に関し、詳しくは、透明性基板材料や透明性保護材料に使用され、ポリカーボネート樹脂層と特定の構造を有するビニル共重合樹脂層とからなり、層間密着性、高温高湿環境における形状安定性、表面硬度及び耐衝撃性に優れる合成樹脂積層体に関する。
背景技術
[0002]
ポリカーボネート樹脂板は、透明性や耐衝撃性に優れ、防音隔壁やカーポート、看板、グレージング材などとして利用されている。近年では、例えば特許文献1に記載されたような透明性や表面硬度に優れるアクリル系樹脂をポリカーボネート上に積層した積層体が情報表示機器前面板などとして応用されている。しかしながら、そのような積層体はアクリル系樹脂とポリカーボネート樹脂との吸水特性や、ガラス転移温度に代表される耐熱性の違いにより大きな反りを生じることがあり、使用方法によっては問題となることがある。
特許文献2には、積層体の反りを抑えるために、吸水率の低い樹脂をポリカーボネート樹脂上に積層した積層体が開示されている。しかしながら、温度85℃、相対湿度85%といった高温高湿環境では、該積層体はポリカーボネート樹脂の吸湿により大きな反りを生じることがある。また、吸水率の低い樹脂は親水性が乏しいため、ハードコート処理や反射防止処理、防汚処理、あるいは防眩処理といった表面コートとの層間剥離や、表面硬度の不足が生じることもあり、使用方法によっては問題となることがある。
特許文献3には、特定の(メタ)アクリル酸エステル構成単位を含有するビニル共重合樹脂とポリカーボネート樹脂とを積層した、耐衝撃性、耐熱性、耐候性、耐擦傷性に優れた積層体が開示されているが、使用条件によっては積層体の界面で剥離を生じることがある。
また、ポリカーボネート樹脂層の両面にアクリル系樹脂層を積層した積層体が知られているが、その積層体の片面に面衝撃を与えた際に、その反対面のアクリル系樹脂層においてクラックを生じ易く、使用方法によっては問題となることがある。」
「発明が解決しようとする課題
[0004]
本発明は、以上のような状況から、透明性基板材料や透明性保護材料に使用される、層間密着性、高温高湿環境における形状安定性、表面硬度及び耐衝撃性に優れる合成樹脂積層体を提供することを目的とする。」
「[0012]
本発明によれば、高温高湿環境における形状安定性、ならびに表面硬度及び耐衝撃性に優れる合成樹脂積層体が提供され、該合成樹脂積層体は透明性基板材料、透明性保護材料として用いられる。具体的には携帯電話端末、携帯型電子遊具、携帯情報端末、モバイルPCといった携帯型のディスプレイデバイスや、ノート型PC、デスクトップ型PC液晶モニター、液晶テレビといった設置型のディスプレイデバイスなどに好適に使用される。
[0013]
本発明の合成樹脂積層体は、ビニル共重合樹脂(A)層、及びポリカーボネート樹脂(B)層を有し、該ポリカーボネート樹脂(B)層の片面に該ビニル共重合樹脂(A)層が直接に積層された合成樹脂積層体であって、前記ビニル共重合 樹脂(A)が、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)と、下記一般式(2)で表される脂肪族ビニル構成単位(b)とを含み、前記(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)と前記脂肪族ビニル構成単位(b)との合計割合が前記ビニル共重合樹脂(A)中の全構成単位の合計に対して90〜100モル%であり、前記(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)の割合が前記ビニル共重合樹脂(A)中の全構成単位の合計に対して65〜80モル%であることを特徴とするものである。
[0014][化3]

[0015]
(式中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は炭素数1〜18のアルキル基である。)
[0016][化4]

[0017]
(式中、R3は水素原子又はメチル基であり、R4は炭素数1〜4の炭化水素置換基を有することのあるシクロヘキシル基である。)
[0018]
本発明の合成樹脂積層体は、ポリカーボネート樹脂(B)層の片面のみにビニル共重合樹脂(A)層が積層される。片面のみにビニル共重合樹脂(A)が積層されると、硬い構造であるビニル共重合樹脂(A)層側に面衝撃を与えた際に、その反対面が柔らかい構造のポリカーボネート樹脂(B)層であることにより、衝撃を緩和し、衝撃による破壊を生じることが少ない。・・・
[0019]
・・・更に好ましいのはR1がメチル基であり、R2がメチル基であるメタクリル酸メチル構成単位である。
[0020]
・・・該脂肪族ビニル構成単位のうち、好ましいのはR3が水素原子であり、R4がシクロヘキシル基である脂肪族ビニル構成単位である。
[0021]
本発明で用いるビニル共重合樹脂(A)は、主として前記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)と、前記一般式(2)で表される脂肪族ビニル構成単位(b)とからなる。ビニル共重合樹脂(A)は、前記(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)を1種又は2種以上含有していてもよく、前記脂肪族ビニル構成単位(b)を1種又は2種以上含有していてもよい。
前記(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)と前記脂肪族ビニル構成単位(b)との合計割合は、前記ビニル共重合樹脂(A)中の全構成単位の合計に対して90〜100モル%であり、好ましくは95〜100モル%であり、より好ましくは98〜100モル%である。
すなわち、前記ビニル共重合樹脂(A)は、全構成単位の合計に対して10モル%以下の範囲で、前記(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)及び前記脂肪族ビニル構成単位(b)以外の構成単位を含有していてもよい。
前記(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)及び前記脂肪族ビニル構成単位(b)以外の構成単位としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルモノマーと芳香族ビニルモノマーとを重合した後に該芳香族ビニルモノマー由来の芳香族二重結合を水素化して得られたビニル共重合樹脂(A)における、水素化されていない芳香族二重結合を含む芳香族ビニルモノマー由来の構成単位などが挙げられる。
また、前記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)の割合は、前記ビニル共重合樹脂(A)中の全構成単位の合計に対して65〜80モル%であり、好ましくは70〜80モル%である。
ビニル共重合樹脂(A)中の全構成単位の合計に対する(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)の割合が65モル%未満であると、ポリカーボネート樹脂(B)との密着性や表面硬度が低下し、実用的でない場合がある。また80モル%を超えると、積層体の吸水による反りが発生し、実用的でない場合がある。」
「[0023]
(メタ)アクリル酸エステルモノマーと芳香族ビニルモノマーの重合には、公知の方法を用いることができるが、例えば、塊状重合法や溶液重合法などにより製造することができる。・・・」
「[0037]
本発明の合成樹脂積層体の製造方法としては、共押出による方法を用いることができる。
共押出の方法は特に限定されず、例えば、フィードブロック方式では、フィードブロックでポリカーボネート樹脂(B)層の片面にビニル共重合樹脂(A)層を積層し、Tダイでシート状に押し出した後、成形ロールを通過させながら冷却し所望の合成樹脂積層体を形成する。また、マルチマニホールド方式では、マルチマニホールドダイ内でポリカーボネート樹脂(B)層の片面にビニル共重合樹脂(A)層を積層し、シート状に押し出した後、成形ロールを通過させながら冷却し所望の合成樹脂積層体を形成する。
[0038]
本発明の合成樹脂積層体の厚みは0.1〜10.0mmの範囲であることが好ましい。・・・より好ましくは0.2〜5.0mmの範囲であり、更に好ましくは0.3〜3.0mmの範囲である。
[0039]
本発明の合成樹脂積層体におけるビニル共重合樹脂(A)層の厚みは10〜500μmの範囲であることが好ましい。10μm未満であると表面硬度、耐擦傷性及び対候性が不足する場合がある。また500μmを超えると耐衝撃性が不足する場合がある。好ましくは30〜100μmの範囲である。
[0040]
本発明の合成樹脂積層体は、ビニル共重合樹脂(A)層上、又はビニル共重合樹脂(A)層上及びポリカーボネート樹脂(B)層上にハードコート処理を施していてもよい。・・・
[0042]
本発明において、ビニル共重合樹脂(A)層上に施される、光エネルギーを用いて硬化させるハードコート塗料としては、例えば、トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレート(b1)40〜80質量%と、(b1)と共重合可能な2官能及び/又は3官能の(メタ)アクリレート化合物(b2)20〜40質量%とからなる樹脂組成物の100質量部に光重合開始剤(b3)が1〜10質量部添加された光硬化性樹脂組成物などが挙げられる。」
「[0045]
本発明の合成樹脂積層体には、その片面又は両面に反射防止処理、防汚処理、帯電防止処理、耐候性処理及び防眩処理のいずれか一つ以上を施すことができる。反射防止処理、防汚処理、帯電防止処理、耐候性処理及び防眩処理の方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、反射低減塗料を塗布する方法、誘電体薄膜を蒸着する方法、帯電防止塗料を塗布する方法などが挙げられる。
[0046] 本発明の合成樹脂積層体は透明性を有し、全光線透過率は80%以上、好ましくは88%以上、より好ましくは90%以上である。」
「[0050]<鉛筆引っかき硬度試験>
JIS K 5600−5−4に準拠し、表面に対して角度45度、荷重750gでビニル共重合樹脂(A)層の表面に次第に硬度を増して鉛筆を押し付け、きず跡を生じなかった最も硬い鉛筆の硬度を鉛筆硬度として評価した。ハードコート未処理の試験片については鉛筆硬度2H以上を合格とし、ハードコート処理した試験片については鉛筆硬度3H以上を合格とした。」
「[0058]
合成例6〔ビニル共重合樹脂(A)層に被覆するハードコート用光硬化性樹脂組成物(b)の製造〕
撹拌翼を備えた混合槽に、トリス(2−アクロキシエチル)イソシアヌレート(Aldrich社製)60質量部と、ネオペンチルグリコールオリゴアクリレート(大阪有機化学工業社製、商品名:215D)40質量部と、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(チバ・ジャパン社製、商品名:DAROCUR TPO)1質量部と、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Aldrich社製)0.3質量部と、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール(チバ・ジャパン社製、商品名:TINUVIN234)1質量部からなる混合物を導入し、40℃に保持しながら1時間撹拌して、ハードコート用光硬化性樹脂組成物(b)を得た。」
「[0063]
実施例4
実施例1で得た積層体(D1)のビニル共重合樹脂(A1)層上に、合成例6で得たハードコート用光硬化性樹脂組成物(b)を硬化後の塗膜厚さが3〜8μmとなるようバーコーターを用いて塗布した。PETフィルムで覆って圧着した後、光源距離12cm、出力80W/cmの高圧水銀灯を備えたコンベアでラインスピード1.5m/分の条件で紫外線を照射し、ハードコート用光硬化性樹脂組成物(b)を硬化させた。PETフィルムを剥離して、ビニル共重合樹脂(A1)層上にハードコートを備えた積層体(E2)を得た。・・・」

(イ)引用文献1の[0063]の記載によると、引用文献1には、「ビニル共重合樹脂(A)層上に施される光硬化性樹脂組成物を硬化させて、ビニル共重合樹脂(A)層上にハードコートを備えさせる」ことが記載されているものと認められる。

(ウ)上記(ア)、(イ)から、引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「ビニル共重合樹脂(A)層、及びポリカーボネート樹脂(B)層を有し、該ポリカーボネート樹脂(B)層の片面に該ビニル共重合樹脂(A)層が直接に積層された合成樹脂積層体であって、
前記ビニル共重合樹脂(A)が、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)と、下記一般式(2)で表される脂肪族ビニル構成単位(b)とを含み、下記一般式(1)のR1がメチル基であり、R2がメチル基であり、下記一般式(2)のR3が水素原子であり、R4がシクロヘキシル基であり、前記(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)と前記脂肪族ビニル構成単位(b)との合計割合が前記ビニル共重合樹脂(A)中の全構成単位の合計に対して90〜100モル%であり、前記(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)の割合が前記ビニル共重合樹脂(A)中の全構成単位の合計に対して65〜80モル%であり、前記ビニル共重合樹脂(A)層上に施される、ハードコート塗料としての光エネルギーを用いて硬化させるトリス(アクロキシエチル)イソシアヌレート(b1)40〜80質量%と、(b1)と共重合可能な2官能及び/又は3官能の(メタ)アクリレート化合物(b2)20〜40質量%とからなる樹脂組成物の100質量部に光重合開始剤(b3)が1〜10質量部添加された光硬化性樹脂組成物を硬化させて、ビニル共重合樹脂(A)層上にハードコートを備えさせ、
全光線透過率は88%以上であり、
ビニル共重合樹脂(A)層の表面の鉛筆硬度3H以上である合成樹脂積層体。




イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「ビニル共重合樹脂(A)」は本件発明1の「アクリル系樹脂の層」に相当し、以下同様に、「ハードコート」は「第1ハードコート」に、「2官能及び/又は3官能の(メタ)アクリレート化合物(b2)」は「(A)多官能(メタ)アクリレート」に相当する。
引用発明1の「下記一般式(1)のR1がメチル基であり、R2がメチル基であ」る「下記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)」は本件発明1の「メチルメタクリレートに由来する構造単位」に相当する。



引用発明1の「下記一般式(2)のR3が水素原子であり、R4がシクロヘキシル基であ」る「下記一般式(2)で表される脂肪族ビニル構成単位(b)」は本件発明1の「ビニルシクロヘキサンに由来する構造単位」に相当する。



引用発明1の「ハードコート塗料としての光エネルギーを用いて硬化させるトリス(アクロキシエチル)イソシアヌレート(b1)40〜80質量%と、(b1)と共重合可能な2官能及び/又は3官能の(メタ)アクリレート化合物(b2)20〜40質量%とからなる樹脂組成物の100質量部に光重合開始剤(b3)が1〜10質量部添加された光硬化性樹脂組成物」は本件発明1の「無機粒子を含まない塗料」に相当する。
引用発明1の「前記(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)と前記脂肪族ビニル構成単位(b)との合計割合が前記ビニル共重合樹脂(A)中の全構成単位の合計に対して90〜100モル%であり、前記(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)の割合が前記ビニル共重合樹脂(A)中の全構成単位の合計に対して65〜80モル%」であることは、本件発明1の「(α)重合性モノマーに由来する構造単位の総和を100モル%として、メチルメタクリレートに由来する構造単位を50〜95モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構造単位を50〜5モル%の量で含む」ことに相当する。
引用文献1の[0018]の記載によると、「ポリカーボネート樹脂(B)層の片面のみにビニル共重合樹脂(A)層が積層され」た「合成樹脂積層体」の「ビニル共重合樹脂(A)層側に面衝撃」が加わること、同[0037]、[0040]、[0042]の記載によると、「ポリカーボネート樹脂(B)層の片面にビニル共重合樹脂(A)層を積層され」た「合成樹脂積層体」の「ビニル共重合樹脂(A)層上」に「ハードコート塗料」が施されており、「ハードコート」は「ビニル共重合樹脂(A)層」の表面側に設けられるものであるといえることから、引用発明1の「前記ビニル共重合樹脂(A)層上に施され」る「光硬化性樹脂組成物を硬化させて、ビニル共重合樹脂(A)層上にハードコートを備えさせ」ることと本件発明1の「表面側から順に第1ハードコート、及び樹脂フィルムの層を有」することとは、「表面側から順に第1ハードコート、及び樹脂体の層を有」する限りで一致する。
引用発明1の「ビニル共重合樹脂(A)層、及びポリカーボネート樹脂(B)層を有し、該ポリカーボネート樹脂(B)層の片面に該ビニル共重合樹脂(A)層が直接に積層された合成樹脂積層体であって、前記ビニル共重合樹脂(A)が、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)と、下記一般式(2)で表される脂肪族ビニル構成単位(b)とを含み、下記一般式(1)のR1がメチル基であり、R2がメチル基であり、下記一般式(2)のR3が水素原子であり、R4がシクロヘキシル基であり、前記(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)と前記脂肪族ビニル構成単位(b)との合計割合が前記ビニル共重合樹脂(A)中の全構成単位の合計に対して90〜100モル%であり、前記(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)の割合が前記ビニル共重合樹脂(A)中の全構成単位の合計に対して65〜80モル%」であることと本件発明1の「上記樹脂フィルムは、(α)重合性モノマーに由来する構造単位の総和を100モル%として、メチルメタクリレートに由来する構造単位を50〜95モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構造単位を50〜5モル%の量で含むアクリル系樹脂の層を少なくとも1層含み、
ここで上記樹脂フィルムが」、
「上記(α)重合性モノマーに由来する構造単位の総和を100モル%として、メチルメタクリレートに由来する構造単位を50〜95モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構造単位を50〜5モル%の量で含むアクリル系樹脂の単層フィルム、」(以下「α単層フィルム」という。)
「上記(α)重合性モノマーに由来する構造単位の総和を100モル%として、メチルメタクリレートに由来する構造単位を50〜95モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構造単位を50〜5モル%の量で含むアクリル系樹脂の層;
(β)芳香族ポリカーボネート系樹脂の層;、及び
上記(α)重合性モノマーに由来する構造単位の総和を100モル%として、メチルメタクリレートに由来する構造単位を50〜95モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構造単位を50〜5モル%の量で含むアクリル系樹脂の層;が、
この順に直接積層された多層樹脂フィルム」(以下「α−β−α層フィルム」という。)、又は、
「上記(α)重合性モノマーに由来する構造単位の総和を100モル%として、メチルメタクリレートに由来する構造単位を50〜95モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構造単位を50〜5モル%の量で含むアクリル系樹脂の層;
(γ)重合性モノマーに由来する構造単位の総和を100モル%として、メチルメタクリレートに由来する構造単位を50〜95モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構造単位を50〜5モル%の量で含むアクリル系樹脂100質量部とコアシェルゴム1〜100質量部を含む樹脂組成物の層;及び
上記(α)重合性モノマーに由来する構造単位の総和を100モル%として、メチルメタクリレートに由来する構造単位を50〜95モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構造単位を50〜5モル%の量で含むアクリル系樹脂の層;が、
この順に直接積層された多層樹脂フィルム」(以下「α−γ−α層フィルム」という。)であることとは、「樹脂体」が、「(α)重合性モノマーに由来する構造単位の総和を100モル%として、メチルメタクリレートに由来する構造単位を50〜95モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構造単位を50〜5モル%の量で含むアクリル系樹脂を1層含む」限りで一致する。




引用発明1の「合成樹脂積層体」と本件発明1の「ハードコート積層フィルム」とは、「ハードコート積層体」である限りで一致する。

以上のことから、本件発明1と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「表面側から順に第1ハードコート、及び樹脂体の層を有し、
上記第1ハードコートは、
(A)多官能(メタ)アクリレート;
を含み、かつ無機粒子を含まない塗料からなり;
上記樹脂体は、(α)重合性モノマーに由来する構造単位の総和を100モル%として、メチルメタクリレートに由来する構造単位を50〜95モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構造単位を50〜5モル%の量で含むアクリル系樹脂を1層含む;
ハードコート積層体。」
[相違点1]
「表面側から順に第1ハードコート、及び樹脂体の層を有」することに関して、本件発明1では「表面側から順に第1ハードコート、及び樹脂フィルムの層を有」するのに対して、引用発明1では「前記ビニル共重合樹脂(A)層上に施され」る「光硬化性樹脂組成物を硬化させて、ビニル共重合樹脂(A)層上にハードコートを備えさせ」る点。
[相違点2]
本件発明1は、「無機粒子を含まない塗料」が「(A)多官能(メタ)アクリレート 100質量部;及び(B)撥水剤 0.01〜7質量部;を含」むのに対して、引用発明1は、「ハードコート塗料」としての「光硬化性樹脂組成物」が撥水剤を含まない点。
[相違点3]
「樹脂体」が、「(α)重合性モノマーに由来する構造単位の総和を100モル%として、メチルメタクリレートに由来する構造単位を50〜95モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構造単位を50〜5モル%の量で含むアクリル系樹脂を1層含む」ことに関して、本件発明1は、α単層フィルム、α−β−α層フィルム、又は、α−γ−α層フィルムであるのに対して、引用発明1は、「ビニル共重合樹脂(A)層、及びポリカーボネート樹脂(B)層を有し、該ポリカーボネート樹脂(B)層の片面に該ビニル共重合樹脂(A)層が直接に積層された合成樹脂積層体であって、前記ビニル共重合樹脂(A)が、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)と、下記一般式(2)で表される脂肪族ビニル構成単位(b)とを含み、下記一般式(1)のR1がメチル基であり、R2がメチル基であり、下記一般式(2)のR3が水素原子であり、R4がシクロヘキシル基であり、前記(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)と前記脂肪族ビニル構成単位(b)との合計割合が前記ビニル共重合樹脂(A)中の全構成単位の合計に対して90〜100モル%であり、前記(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)の割合が前記ビニル共重合樹脂(A)中の全構成単位の合計に対して65〜80モル%」である点。




[相違点4]
「ハードコート積層体」について、本件発明1では「ハードコート積層フィルム」であるのに対して、引用発明1では「合成樹脂積層体」である点。

(イ)判断
まず、相違点3について検討する。
引用文献1の[0002]、[0004]を参照すると、引用発明1は、透明性や耐衝撃性に優れた「ポリカーボネート樹脂板」に、樹脂を積層した場合に生じる問題を解決することを課題とするものであるから、引用発明1の「ビニル共重合樹脂(A)層、及びポリカーボネート樹脂(B)層」のうち「ポリカーボネート樹脂(B)層」を有しないものとし、「ビニル共重合樹脂(A)層」の単層フィルムとすることに阻害要因がある。
また、「ハードコート積層フィルム」において、「樹脂フィルム」をα−β−α層フィルムやα−γ−α層フィルムとする点については、引用文献1、2及び4、並びに甲3(特開2009−114248号公報)に記載されておらず、また本件特許出願前において周知技術であるともいえない。
したがって、引用発明1において、相違点3に係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、相違点1、2、4を検討するまでもなく、本件発明1は、当業者が引用発明1に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 本件発明2、7、14、18について
本件発明2、7、14、18は、本件発明1の特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記イで検討したのと同じ理由により、当業者が引用発明1に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

エ 小括
以上のとおりであるから、本件発明1、2、7、14、18に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

第5 取消理由通知(決定の予告)に採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立理由中、取消理由通知(決定の予告)に採用しなかったものは、概略以下のとおりである。

(1)本件訂正前の請求項3〜6、8〜13、15〜17に係る発明は、甲第1号証(引用文献1)に記載された発明、甲第2号証(引用文献2)に記載された事項、甲第3号証に記載された事項及び甲第4号証(引用文献4)に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(2)本件訂正前の請求項1〜18に係る発明は、甲第4号証(引用文献4)に記載された発明、甲第2号証(引用文献2)に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

2 当審の判断
(1)甲第1号証(引用文献1)を主引例とした進歩性について
ア 本件発明3について
本件発明3と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「第1ハードコート、及び樹脂体の層を有し、
上記第1ハードコートは、
(A)多官能(メタ)アクリレート 100質量部;
(B)撥水剤 0.01〜7質量部;及び
(C)シランカップリング剤 0.01〜10質量部;
を含み、かつ無機粒子を含まない塗料からなり;
上記樹脂体は、(α)重合性モノマーに由来する構造単位の総和を100モル%として、メチルメタクリレートに由来する構造単位を50〜95モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構造単位を50〜5モル%の量で含むアクリル系樹脂の層を少なくとも1層含む;
ハードコート積層体。」
[相違点5]
「ハードコート積層体」が「表面側から順に第1ハードコート、及び樹脂体の層を有」することに関して、本件発明3は「ハードコート積層フィルム」であって、「表面側から順に第1ハードコート、第2ハードコート、及び樹脂フィルムの層を有」し、「上記第2ハードコートは、(A)多官能(メタ)アクリレート 100質量部;及び(D)平均粒子径 1〜300nmの無機微粒子 50〜300質量部;を含む塗料から」なるのに対して、引用発明1は「合成樹脂積層体」であって、「前記ビニル共重合樹脂(A)層上に施され」る「光硬化性樹脂組成物を硬化させて、ビニル共重合樹脂(A)層上にハードコートを備えさせ」る点。
[相違点6]
本件発明3は、「無機粒子を含まない塗料」が「(A)多官能(メタ)アクリレート 100質量部;(B)撥水剤 0.01〜7質量部;及び(C)シランカップリング剤 0.01〜10質量部;」を含むのに対して、引用発明1は、「ハードコート塗料」としての「光硬化性樹脂組成物」が撥水剤及びシランカップリング剤を含まない点。

まず、相違点5について検討する。
「ハードコート積層フィルム」において、相違点5に係る本件発明3の構成は、引用文献1、2及び4並びに甲3には記載されておらず、また出願前において周知技術であるともいえない。
したがって、引用発明1において、相違点5に係る本件発明3の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、相違点6を検討するまでもなく、本件発明3は、当業者が引用発明1に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

イ 本件発明8について
本件発明8と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「第1ハードコート、及び樹脂体の層を有し、
上記第1ハードコートは無機粒子を含まない塗料からなり;
上記樹脂体は、(α)重合性モノマーに由来する構造単位の総和を100モル%として、メチルメタクリレートに由来する構造単位を50〜95モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構造単位を50〜5モル%の量で含むアクリル系樹脂の層を少なくとも1層含み;
下記(イ)を満たすハードコート積層体。
(イ)全光線透過率が85%以上。」
[相違点7]
「ハードコート積層体」が「表面側から順に第1ハードコート、及び樹脂体の層を有」することに関して、本件発明8は「ハードコート積層フィルム」であって、「表面側から順に第1ハードコート、第2ハードコート、及び樹脂フィルムの層を有」し、「上記第2ハードコートは無機粒子を含む塗料から」なるのに対して、引用発明1は「合成樹脂積層体」であって、「前記ビニル共重合樹脂(A)層上に施され」る「光硬化性樹脂組成物を硬化させて、ビニル共重合樹脂(A)層上にハードコートを備えさせ」る点。
[相違点8]
本件発明8は「上記第1ハードコート表面の鉛筆硬度が5H以上。」であるのに対して、引用発明1は「ビニル共重合樹脂(A)層の表面の鉛筆硬度3H以上であ」る点。
[相違点9]
本件発明8は「ハードコート積層フィルム」が「黄色度指数 3以下。」であるのに対して、引用発明1はその点が不明である点。

まず、相違点7について検討する。
「ハードコート積層フィルム」において、相違点7に係る本件発明8の構成は、引用文献1、2及び4並びに甲3には記載されておらず、また出願前において周知技術であるともいえない。
したがって、引用発明1において、相違点7に係る本件発明8の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、相違点8及び9を検討するまでもなく、本件発明8は、当業者が引用発明1に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 本件発明10について
本件発明10と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「第1ハードコート、及び樹脂体の層を有し、
上記第1ハードコートは無機粒子を含まない塗料からなり;
上記樹脂体は、(α)重合性モノマーに由来する構造単位の総和を100モル%として、メチルメタクリレートに由来する構造単位を50〜95モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構造単位を50〜5モル%の量で含むアクリル系樹脂の層を少なくとも1層含む;ハードコート積層体。」
[相違点10]
「ハードコート積層体」が「表面側から順に第1ハードコート、及び樹脂体の層を有」することに関して、本件発明10は「ハードコート積層フィルム」であって、「表面側から順に第1ハードコート、第2ハードコート、及び樹脂フィルムの層を有」し、「上記第2ハードコートは無機粒子を含む塗料から」なるのに対して、引用発明1は「合成樹脂積層体」であって、「前記ビニル共重合樹脂(A)層上に施され」る「光硬化性樹脂組成物を硬化させて、ビニル共重合樹脂(A)層上にハードコートを備えさせ」る点。
[相違点11]
本件発明10は「(ニ)上記第1ハードコート表面の水接触角が100度以上。(ホ)上記第1ハードコート表面の往復2万回綿拭後の水接触角が100度以上:ここで上記第1ハードコート表面の往復2万回綿拭後の水接触角は、縦150mm、横50mmの大きさで、ハードコート積層フィルムのマシン方向が試験片の縦方向となるように採取した試験片を、ハードコート積層フィルムの第1ハードコートが表面になるようにJIS L 0849:2013の学振形試験機に置き、学振形試験機の摩擦端子に、4枚重ねのガーゼ(川本産業株式会社の医療用タイプ1ガーゼ)で覆ったステンレス板(縦10mm、横10mm、厚み1mm)を取付け、該ステンレス板の縦横面が試験片と接触するようにセットし、350g荷重を載せ、試験片の第1ハードコート面を、摩擦端子の移動距離60mm、速度1往復/秒の条件で往復2万回擦った後、当該綿拭箇所について、JIS R 3257:1999に従い、自動接触角計を使用し、蒸留水の水滴の幅と高さとから算出する方法で水接触角を測定する。」を満たすのに対して、引用発明1はその点が不明である点。

まず、相違点10について検討する。
「ハードコート積層フィルム」において、相違点10に係る本件発明10の構成は、引用文献1、2及び4並びに甲3には記載されておらず、また出願前において周知技術であるともいえない。
したがって、引用発明1において、相違点10に係る本件発明10の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、相違点11を検討するまでもなく、本件発明10は、当業者が引用発明1に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

エ 本件発明4〜6、9、11〜13、15〜17について
本件発明4〜6、9、11〜13、15〜17は、本件発明1、3、8、10のいずれかの特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記第4(3)イ及び上記ア、イで検討したのと同じ理由により、当業者が引用発明1に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

オ 本件発明19について
本件発明19は、本件発明3の特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記アで検討したのと同じ理由により、当業者が引用発明1に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)甲第4号証(引用文献4)を主引例とした進歩性について
ア 引用文献の記載事項
(ア)引用文献1
上記第4の2(3)ア(ア)の記載事項から、引用文献1には次の発明(以下「引用発明1’」という。)が記載されていると認められる。
「ビニル共重合樹脂(A)が、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)と、下記一般式(2)で表される脂肪族ビニル構成単位(b)とを含み、下記一般式(1)のR1がメチル基であり、R2がメチル基であり、下記一般式(2)のR3が水素原子であり、R4がシクロヘキシル基であり、前記(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)と前記脂肪族ビニル構成単位(b)との合計割合が前記ビニル共重合樹脂(A)中の全構成単位の合計に対して90〜100モル%であり、前記(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)の割合が前記ビニル共重合樹脂(A)中の全構成単位の合計に対して65〜80モル%であること。




(イ)引用文献4
引用文献4には、次の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は、ハードコート積層体からなる物品の製造方法に関する。更に詳しくは、透明性、表面硬度、耐擦傷性、表面平滑性、及び外観に優れたハードコート積層体からなり、タッチパネルのディスプレイ面板や透明導電性基板として好適に用いることのできる物品の製造方法に関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、透明性、表面硬度、耐擦傷性、表面平滑性、及び外観に優れ、タッチパネルのディスプレイ面板や透明導電性基板として好適に用いることのできる、ハードコート積層体からなる物品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意研究した結果、切削加工後、支持体を物品から剥がす前に、熱や活性エネルギー線などを使用し、支持体と物品との粘着強度を一定の値以下に低下させることにより、上記課題を達成できることを見出した。」
「【0025】
上記ハードコート積層体は、タッチパネルのディスプレイ面板や透明導電性基板として好適に用いることができる物品を得るために、最表層側のハードコート層表面の下記(1)に従い測定した(イ)鉛筆硬度は、好ましくは7H以上、より好ましくは8H以上、更に好ましくは9H以上である。
【0026】
上記ハードコート積層体は、本発明の製造方法により生産される物品がタッチパネルのディスプレイ面板や透明導電性基板として用いられることから、高い透明性を有し、かつ着色のないものであることが求められる。そのため上記ハードコート積層体の下記(2)に従い測定した(ロ)全光線透過率は、通常85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上である。全光線透過率は高いほど好ましい。・・・」
「【0029】
上記ハードコート層を形成するための塗料としては、透明性、無着色性、表面硬度、及び耐擦傷性に優れ、切削加工適性を有するハードコート層を形成することのできるものであること以外は、制限されず、任意の塗料を用いることができる。好ましいハードコート層形成用塗料としては、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物をあげることができる。・・・
【0031】
・・・トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有3官能反応性モノマー;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有4官能反応性モノマー;及び、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有6官能反応性モノマーなどから選択される1種以上を、あるいは上記1種以上を構成モノマーとする樹脂をあげることができる。
・・・
【0036】
上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に所望に応じて用いる任意成分の中で、好ましいものとしては、粒子径1〜300nmの微粒子をあげることができる。上記微粒子を活性エネルギー線硬化性樹脂成分100質量部に対して1〜300質量部、好ましくは20〜100質量部使用することによりハードコート層の表面硬度を高めることができる。
【0037】
上記微粒子としては、無機微粒子、有機微粒子のどちらも用いることができる。無機微粒子としては、例えば、シリカ(二酸化珪素);酸化アルミニウム、ジルコニア、チタニア、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化インジウム、酸化スズ、インジウムスズ酸化物、酸化アンチモン、酸化セリウム等の金属酸化物微粒子;弗化マグネシウム、弗化ナトリウム等の金属弗化物微粒子;金属硫化物微粒子;金属窒化物微粒子;金属微粒子;などをあげることができる。有機微粒子としては、例えば、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エチレン系樹脂、アミノ系化合物とホルムアルデヒドとの硬化樹脂などの樹脂ビーズをあげることができる。これらは、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。」
「【0040】
上記微粒子の粒子径は、ハードコート層の透明性を保持するために300nm以下である必要がある。また粒子径の粗い場合はハードコート層の表面硬度改良効果を得られないことがある。好ましくは200nm以下であり、より好ましくは120nm以下である。一方、粒子径の下限は特にないが、通常入手可能な微粒子は細かくてもせいぜい1nm程度である。」
「【0045】
上記ハードコート積層体の最表面を形成するハードコート層は、好ましくは7H以上の鉛筆硬度を得る観点から、17μm以上の厚みであることが好ましい。上記ハードコート層の厚みは、20μm以上がより好ましく、25μm以上が更に好ましい。一方、厚過ぎるハードコート層は、ハードコート層が切削加工適性を低下させたり、ウェブのハンドリング性を低下させるたりすることがある。上記ハードコート層の厚みは、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。」
「【0047】
上記透明樹脂フィルム層は上記ハードコート層を形成するための透明フィルム基材となる層である。上記透明樹脂フィルム層に用いる透明樹脂フィルムとしては、高い透明性を有し、かつ着色のないものであること以外は制限されず、任意の透明樹脂フィルムを用いることができる。例えば、・・・ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル等のアクリル系樹脂;・・・などのフィルムがあげられ、無延伸フィルム、一軸延伸フィルム、及び二軸延伸フィルムを包含する。」
「【0050】
更に好ましくは、上記ハードコート積層体が、最表層側から順に、第一ハードコート層(H1);第一ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂層(α1);芳香族ポリカーボネート系樹脂層(β);第二ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂層(α2);第二ハードコート層(H2);を有し、上記α1層、β層、α2層は、この順に直接積層されている。このようなハードコート積層体は、切削加工性が更に高められており、上記工程(B)の作業性や作業効率が更に高まる」
「【0060】
上記α1層及び上記α2層に用いるポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂としては、上記α層に用いるものと同様のものを用いることができる。」
「【0063】
上記芳香族ポリカーボネート系樹脂に含み得る好ましい任意成分としては、コアシェルゴムをあげることができる。・・・」

上記記載事項から、引用文献4には次の発明(以下「引用発明4」という。)が記載されていると認められる。
「最表層側から順に、第一ハードコート層(H1);第一ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂層(α1);芳香族ポリカーボネート系樹脂層(β);第二ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂層(α2);第二ハードコート層(H2);を有し、
上記第一ハードコート層(H1)は、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有3官能反応性モノマー;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有4官能反応性モノマー;及び、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有6官能反応性モノマーを含み、
ハードコート積層体の全光線透過率は、85%以上であり、
最表層側のハードコート層表面の鉛筆硬度は、7H以上である
ハードコート積層体。」

イ 本件発明1について
本件発明1と引用発明4とを対比する。
引用発明4の「第一ハードコート層(H1)」は、本件発明1の「第一ハードコート」に相当する。
引用発明4の「トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有3官能反応性モノマー;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有4官能反応性モノマー;及び、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有6官能反応性モノマー」は、本件発明1の「多官能(メタ)アクリレート」に相当する。
引用発明4の「第一ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂層(α1);芳香族ポリカーボネート系樹脂層(β);第二ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂層(α2);」は、本件発明1の「樹脂フィルム」に相当する。

以上のことから、本件発明1と引用発明4との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「表面側から順に第1ハードコート、及び樹脂フィルムの層を有し、
上記第1ハードコートは、
(A)多官能(メタ)アクリレート
を含み、かつ無機粒子を含まない塗料からなり;
上記樹脂フィルムは、アクリル系樹脂の層を少なくとも1層含むハードコート積層フィルム。」
[相違点A]
本件発明1は、第1ハードコートが(A)多官能(メタ)アクリレート 100質量部に対し(B)撥水剤0.01〜7質量部含むのに対し、引用発明4は、第一ハードコート層(H1)は撥水剤を含まない点。
[相違点B]
本件発明1は、「上記樹脂フィルムは、(α)重合性モノマーに由来する構造単位の総和を100モル%として、メチルメタクリレートに由来する構造単位を50〜95モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構造単位を50〜5モル%の量で含むアクリル系樹脂の層を少なくとも1層含み、ここで上記樹脂フィルムが」、α単層フィルム、α−β−α層フィルム、又は、α−γ−α層フィルムであるのに対し、引用発明4は、第一ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂層(α1)がどの重合性モノマーに由来する構造単位を含む樹脂なのか不明である点。

まず、相違点Bについて検討する。
引用発明4と引用発明1’は、共に、ハードコート積層体という技術分野に属するものである(引用文献4の【0001】、引用文献1の[0001])。
しかし、引用発明4は、切削加工後、支持体を物品から剥がす前に、熱や活性エネルギー線などを使用し、支持体と物品との粘着強度を一定の値以下に低下させることにより、透明性、表面硬度、耐擦傷性、表面平滑性、及び外観に優れ、タッチパネルのディスプレイ面板や透明導電性基板として好適に用いることのできる、ハードコート積層体からなる物品の製造方法を提供することを課題とするものである(引用文献4の【0005】、【0006】)のに対し、引用発明1’は、透明性基板材料や透明性保護材料に使用される、層間密着性、高温高湿環境における形状安定性、表面硬度及び耐衝撃性に優れる合成樹脂積層体を提供することを課題とするもの(引用文献1の[0004])である。
そして、引用発明4は、「最表層側から順に、第一ハードコート層(H1);第一ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂層(α1);芳香族ポリカーボネート系樹脂層(β);第二ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂層(α2);第二ハードコート層(H2);を有」する構成とすることによって、切削加工性が更に高められたものであり(引用文献4の【0050】)、引用発明1’は、上記課題を解決するために、ポリカーボネート樹脂層の片面に特定の構造を有するビニル共重合樹脂を積層させたものである(引用文献1の[0005])。
そうすると、引用発明4と引用発明1’は、課題及びその解決手段が異なるから、引用発明1’を引用発明4に適用する動機付けはない。
また、相違点Bに係る本件発明1の構成は、引用文献1、2及び4並びに甲3に記載されておらず、また出願前において周知技術であるともいえない。
したがって、引用発明4において、相違点Bに係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、相違点Aを検討するまでもなく、本件発明1は、当業者が引用発明4に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 本件発明3について
本件発明3と引用発明4とは、次の点で相違し、その余の点で一致する。
[相違点C]
本件発明3は「表面側から順に第1ハードコート、第2ハードコート、及び樹脂フィルムの層を有」し、「上記第2ハードコートは、(A)多官能(メタ)アクリレート 100質量部;及び(D)平均粒子径 1〜300nmの無機微粒子 50〜300質量部;を含む塗料から」なるのに対して、引用発明4は「第一ハードコート層(H1)」と「第一ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂層(α1);芳香族ポリカーボネート系樹脂層(β);第二ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂層(α2)」との間にそのような「第2ハードコート」を有していない点。
[相違点D]
本件発明3の「第1ハードコート」が「(A)多官能(メタ)アクリレート 100質量部;(B)撥水剤 0.01〜7質量部;及び(C)シランカップリング剤 0.01〜10質量部;」を含むのに対し、引用発明4の「第一ハードコート層(H1)」は撥水剤及びシランカップリング剤を含まない点。
[相違点E]
本件発明3は、「上記樹脂フィルムは、(α)重合性モノマーに由来する構造単位の総和を100モル%として、メチルメタクリレートに由来する構造単位を50〜95モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構造単位を50〜5モル%の量で含むアクリル系樹脂の層を少なくとも1層含む」のに対し、引用発明4は、第一ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂層(α1)がどの重合性モノマーに由来する構造単位を含む樹脂なのか不明である点。

まず、相違点Eについて検討するに、上記イにおいて相違点Bについてした検討と同様、引用発明4において、相違点Eに係る本件発明3の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、相違点C及びDを検討するまでもなく、本件発明3は、当業者が引用発明4に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

エ 本件発明8について
本件発明8と引用発明4とは、次の点で相違し、その余の点で一致する。
[相違点F]
本件発明8は「表面側から順に第1ハードコート、第2ハードコート、及び樹脂フィルムの層を有」し、「上記第2ハードコートは無機粒子を含む塗料から」なるのに対して、引用発明4は「第一ハードコート層(H1)」と「第一ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂層(α1);芳香族ポリカーボネート系樹脂層(β);第二ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂層(α2)」との間にそのような「第2ハードコート」を有していない点。
[相違点G]
本件発明8は、「上記樹脂フィルムは、(α)重合性モノマーに由来する構造単位の総和を100モル%として、メチルメタクリレートに由来する構造単位を50〜95モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構造単位を50〜5モル%の量で含むアクリル系樹脂の層を少なくとも1層含む」のに対し、引用発明4は、第一ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂層(α1)がどの重合性モノマーに由来する構造単位を含む樹脂なのか不明である点。
[相違点H]
本件発明8は「ハードコート積層フィルム」が「黄色度指数 3以下。」であるのに対して、引用発明4はその点が不明である点。

まず、相違点Fについて検討するに、上記イにおいて相違点Bについてした検討と同様、引用発明4において、相違点Fに係る本件発明8の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、相違点G及びHを検討するまでもなく、本件発明8は、当業者が引用発明4に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

オ 本件発明10について
本件発明10と引用発明4とは、次の点で相違し、その余の点で一致する。
[相違点I]
「ハードコート積層体」が「表面側から順に第1ハードコート、及び樹脂体の層を有」することに関して、本件発明10は「ハードコート積層フィルム」であって、「表面側から順に第1ハードコート、第2ハードコート、及び樹脂フィルムの層を有」し、「上記第2ハードコートは無機粒子を含む塗料から」なるのに対して、引用発明4は「第一ハードコート層(H1)」と「第一ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂層(α1);芳香族ポリカーボネート系樹脂層(β);第二ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂層(α2)」との間にそのような「第2ハードコート」を有していない点。
[相違点J]
本件発明10は、「上記樹脂フィルムは、(α)重合性モノマーに由来する構造単位の総和を100モル%として、メチルメタクリレートに由来する構造単位を50〜95モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構造単位を50〜5モル%の量で含むアクリル系樹脂の層を少なくとも1層含む」のに対し、引用発明4は、第一ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂層(α1)がどの重合性モノマーに由来する構造単位を含む樹脂なのか不明である点。
[相違点K]
本件発明10は「(ニ)上記第1ハードコート表面の水接触角が100度以上。(ホ)上記第1ハードコート表面の往復2万回綿拭後の水接触角が100度以上:ここで上記第1ハードコート表面の往復2万回綿拭後の水接触角は、縦150mm、横50mmの大きさで、ハードコート積層フィルムのマシン方向が試験片の縦方向となるように採取した試験片を、ハードコート積層フィルムの第1ハードコートが表面になるようにJIS L 0849:2013の学振形試験機に置き、学振形試験機の摩擦端子に、4枚重ねのガーゼ(川本産業株式会社の医療用タイプ1ガーゼ)で覆ったステンレス板(縦10mm、横10mm、厚み1mm)を取付け、該ステンレス板の縦横面が試験片と接触するようにセットし、350g荷重を載せ、試験片の第1ハードコート面を、摩擦端子の移動距離60mm、速度1往復/秒の条件で往復2万回擦った後、当該綿拭箇所について、JIS R 3257:1999に従い、自動接触角計を使用し、蒸留水の水滴の幅と高さとから算出する方法で水接触角を測定する。」を満たすのに対して、引用発明4はその点が不明である点。

まず、相違点Jについて検討するに、上記イにおいて相違点Bについてした検討と同様、引用発明4において、相違点Jに係る本件発明10の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、相違点I、Kを検討するまでもなく、本件発明10は、当業者が引用発明4に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

カ 本件発明2、4〜7、9、11〜18について
本件発明2、4〜7、9、11〜18は、本件発明1、3、8、10のいずれかの特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記イ〜エで検討したのと同じ理由により、当業者が引用発明4に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

キ 本件発明19について
本件発明19は、本件発明3の特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記エで検討したのと同じ理由により、当業者が引用発明4に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由、及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件発明1〜19に係る特許を取り消すことはできない。さらに、他に請求項1〜19に係る特許を取り消すべき理由は発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面側から順に第1ハードコート、及び樹脂フィルムの層を有し、
上記第1ハードコートは、
(A)多官能(メタ)アクリレート 100質量部;及び
(B)撥水剤0.01〜7質量部;
を含み、かつ無機粒子を含まない塗料からなり;
上記樹脂フィルムは、(α)重合性モノマーに由来する構造単位の総和を100モル%として、メチルメタクリレートに由来する構造単位を50〜95モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構造単位を50〜5モル%の量で含むアクリル系樹脂の層を少なくとも1層含み、
ここで上記樹脂フィルムが、
上記(α)重合性モノマーに由来する構造単位の総和を100モル%として、メチルメタクリレートに由来する構造単位を50〜95モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構造単位を50〜5モル%の量で含むアクリル系樹脂の単層フィルム、
上記(α)重合性モノマーに由来する構造単位の総和を100モル%として、メチルメタクリレートに由来する構造単位を50〜95モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構造単位を50〜5モル%の量で含むアクリル系樹脂の層;
(β)芳香族ポリカーボネート系樹脂の層;、及び
上記(α)重合性モノマーに由来する構造単位の総和を100モル%として、メチルメタクリレートに由来する構造単位を50〜95モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構造単位を50〜5モル%の量で含むアクリル系樹脂の層;が、
この順に直接積層された多層樹脂フィルム、又は、
上記(α)重合性モノマーに由来する構造単位の総和を100モル%として、メチルメタクリレートに由来する構造単位を50〜95モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構造単位を50〜5モル%の量で含むアクリル系樹脂の層;
(γ)重合性モノマーに由来する構造単位の総和を100モル%として、メチル、メタクリレートに由来する構造単位を50〜95モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構造単位を50〜5モル%の量で含むアクリル系樹脂100質量部とコアシェルゴム1〜100質量部を含む樹脂組成物の層;及び
上記(α)重合性モノマーに由来する構造単位の総和を100モル%として、メチルメタクリレートに由来する構造単位を50〜95モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構造単位を50〜5モル%の量で含むアクリル系樹脂の層;が、
この順に直接積層された多層樹脂フィルムである;
ハードコート積層フィルム。
【請求項2】
上記(B)撥水剤が、(メタ)アクリロイル基含有フルオロポリエーテル系撥水剤を含む、請求項1に記載のハードコート積層フィルム。
【請求項3】
表面側から順に第1ハードコート、第2ハードコート、及び樹脂フィルムの層を有し、
上記第1ハードコートは、
(A)多官能(メタ)アクリレート 100質量部;
(B)撥水剤0.01〜7質量部;及び
(C)シランカップリング剤0.01〜10質量部;
を含み、かつ無機粒子を含まない塗料からなり;
上記第2ハードコートは、
(A)多官能(メタ)アクリレート 100質量部;及び
(D)平均粒子径 1〜300nmの無機微粒子 50〜300質量部;
を含む塗料からなり;
上記樹脂フィルムは、(α)重合性モノマーに由来する構造単位の総和を100モル%として、メチルメタクリレートに由来する構造単位を50〜95モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構造単位を50〜5モル%の量で含むアクリル系樹脂の層を少なくとも1層含む;
ハードコート積層フィルム。
【請求項4】
上記(B)撥水剤が、(メタ)アクリロイル基含有フルオロポリエーテル系撥水剤を含む、請求項3に記載のハードコート積層フィルム。
【請求項5】
上記(C)シランカップリング剤が、アミノ基を有するシランカップリング剤、及びメルカプト基を有するシランカップリング剤からなる群から選択される1種以上を含む、請求項3又は4に記載のハードコート積層フィルム。
【請求項6】
上記第2ハードコートを形成する塗料が、更に(E)レベリング剤 0.01〜1質量部;を含む、請求項3〜5の何れか1項に記載のハードコート積層フィルム。
【請求項7】
上記第1ハードコートを形成する塗料が、更に(F)平均粒子径 0.5〜10μmの樹脂微粒子0.01〜15質量部;を含む、請求項1〜6の何れか1項に記載のハードコート積層フィルム。
【請求項8】
表面側から順に第1ハードコート、第2ハードコート、及び樹脂フィルムの層を有し、
上記第1ハードコートは無機粒子を含まない塗料からなり;
上記第2ハードコートは無機粒子を含む塗料からなり;
上記樹脂フィルムは、(α)重合性モノマーに由来する構造単位の総和を100モル%として、メチルメタクリレートに由来する構造単位を50〜95モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構造単位を50〜5モル%の量で含むアクリル系樹脂の層を少なくとも1層含み;
下記(イ)〜(ハ)を満たすハードコート積層フィルム。
(イ)全光線透過率が85%以上。
(ロ)上記第1ハードコート表面の鉛筆硬度が5H以上。
(ハ)黄色度指数 3以下。
【請求項9】
更に、下記(ニ)及び(ホ)を満たす請求項8に記載のハードコート積層フィルム。
(ニ)上記第1ハードコート表面の水接触角が100度以上。
(ホ)上記第1ハードコート表面の往復2万回綿拭後の水接触角が100度以上:
ここで上記第1ハードコート表面の往復2万回綿拭後の水接触角は、
縦150mm、横50mmの大きさで、ハードコート積層フィルムのマシン方向が試験片の縦方向となるように採取した試験片を、ハードコート積層フィルムの第1ハードコートが表面になるようにJIS L 0849:2013の学振形試験機に置き、学振形試験機の摩擦端子に、4枚重ねのガーゼ(川本産業株式会社の医療用タイプ1ガーゼ)で覆ったステンレス板(縦10mm、横10mm、厚み1mm)を取付け、該ステンレス板の縦横面が試験片と接触するようにセットし、350g荷重を載せ、試験片の第1ハードコート面を、摩擦端子の移動距離60mm、速度1往復/秒の条件で往復2万回擦った後、当該綿拭箇所について、JIS R 3257:1999に従い、自動接触角計を使用し、蒸留水の水滴の幅と高さとから算出する方法で水接触角を測定する。
【請求項10】
表面側から順に第1ハードコート、第2ハードコート、及び樹脂フィルムの層を有し、
上記第1ハードコートは無機粒子を含まない塗料からなり;
上記第2ハードコートは無機粒子を含む塗料からなり;
上記樹脂フィルムは、(α)重合性モノマーに由来する構造単位の総和を100モル%として、メチルメタクリレートに由来する構造単位を50〜95モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構造単位を50〜5モル%の量で含むアクリル系樹脂の層を少なくとも1層含み;
下記(ニ)及び(ホ)を満たすハードコート積層フィルム。
(ニ)上記第1ハードコート表面の水接触角が100度以上。
(ホ)上記第1ハードコート表面の往復2万回綿拭後の水接触角が100度以上:
ここで上記第1ハードコート表面の往復2万回綿拭後の水接触角は、
縦150mm、横50mmの大きさで、ハードコート積層フイルムのマシン方向が試験片の縦方向となるように採取した試験片を、ハードコート積層フィルムの第1ハードコートが表面になるようにJIS L 0849:2013の学振形試験機に置き、学振形試験機の摩擦端子に、4枚重ねのガーゼ(川本産業株式会社の医療用タイプ1ガーゼ)で覆ったステンレス板(縦10mm、横10mm、厚み1mm)を取付け、該ステンレス板の縦横面が試験片と接触するようにセットし、350g荷重を載せ、試験片の第1ハードコート面を、摩擦端子の移動距離60mm、速度1往復/秒の条件で往復2万回擦った後、当該綿拭箇所について、JIS R 3257:1999に従い、自動接触角計を使用し、蒸留水の水滴の幅と高さとから算出する方法で水接触角を測定する。
【請求項11】
更に、下記(ロ)を満たす、請求項10に記載のハードコート積層フィルム。
(ロ)上記第1ハードコート表面の鉛筆硬度が5H以上。
【請求項12】
上記第1ハードコートが撥水剤を含み、かつ無機粒子を含まない塗料からなる請求項8〜11の何れか1項に記載のハードコート積層フィルム。
【請求項13】
上記第1ハードコートが、(A)多官能(メタ)アクリレート 100質量部;及び(B)撥水剤 0.01〜7質量部;を含み、かつ無機粒子を含まない塗料からなる請求項8〜12の何れか1項に記載のハードコート積層フィルム。
【請求項14】
上記第1ハードコートの厚みが、0.5〜5μmである、請求項3〜13の何れか1項に記載のハードコート積層フィルム。
【請求項15】
上記第2ハードコートの厚みが、5〜30μmである、請求項3〜6、8〜14の何れか1項に記載のハードコート積層フィルム。
【請求項16】
上記樹脂フィルムが、
(α)重合性モノマーに由来する構造単位の総和を100モル%として、メチルメタクリレートに由来する構造単位を50〜95モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構造単位を50〜5モル%の量で含むアクリル系樹脂の層;
(β)芳香族ポリカーボネート系樹脂の層;、及び
(α)重合性モノマーに由来する構造単位の総和を100モル%として、メチルメタクリレートに由来する構造単位を50〜95モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構造単位を50〜5モル%の量で含むアクリル系樹脂の層;が、
この順に直接積層された多層樹脂フィルムである;
請求項1〜15の何れか1項に記載のハードコート積層フィルム。
【請求項17】
上記樹脂フィルムが、
(α)重合性モノマーに由来する構造単位の総和を100モル%として、メチルメタクリレートに由来する構造単位を50〜95モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構造単位を50〜5モル%の量で含むアクリル系樹脂の層;
(γ)重合性モノマーに由来する構造単位の総和を100モル%として、メチルメタクリレートに由来する構造単位を50〜95モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構造単位を50〜5モル%の量で含むアクリル系樹脂100質量部とコアシェルゴム1〜100質量部を含む樹脂組成物の層;及び
(α)重合性モノマーに由来する構造単位の総和を100モル%として、メチルメタクリレートに由来する構造単位を50〜95モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構造単位を50〜5モル%の量で含むアクリル系樹脂の層;が、
この順に直接積層された多層樹脂フィルムである;
請求項1〜15の何れか1項に記載のハードコート積層フィルム。
【請求項18】
請求項1〜17の何れか1項に記載のハードコート積層フィルムを含む物品。
【請求項19】
表面側から順に第1ハードコート、第2ハードコート、及び樹脂フィルムの層を有し、
上記第1ハードコートは、
(A)多官能(メタ)アクリレート100質量部;
(B)撥水剤0.01〜7質量部;
(C)シランカップリング剤0.01〜10質量部;及び
(F)平均粒子径0.5〜10μmの樹脂微粒子0.01〜15質量部;
を含み、かつ無機粒子を含まない塗料からなり;
上記第2ハードコートは、
(A)多官能(メタ)アクリレート100質量部;及び
(D)平均粒子径1〜300nmの無機微粒子50〜300質量部;
を含む塗料からなり;
上記第2ハードコートの厚みが、5〜30μmであり;
上記樹脂フィルムは、(α)重合性モノマーに由来する構造単位の総和を100モル%として、メチルメタクリレートに由来する構造単位を50〜95モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構造単位を50〜5モル%の量で含むアクリル系樹脂の層を少なくとも1層含む;
ハードコート積層フィルム。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-10-27 
出願番号 P2016-024288
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (B32B)
P 1 651・ 121- YAA (B32B)
P 1 651・ 113- YAA (B32B)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 石井 孝明
特許庁審判官 藤原 直欣
藤井 眞吾
登録日 2019-10-11 
登録番号 6599789
権利者 リケンテクノス株式会社
発明の名称 ハードコート積層フィルム  
代理人 瀬田 寧  
代理人 特許業務法人浅村特許事務所  
代理人 特許業務法人浅村特許事務所  
代理人 瀬田 寧  

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