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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B29C
審判 全部申し立て 2項進歩性  B29C
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  B29C
管理番号 1381637
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-02-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-06-12 
確定日 2021-11-17 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6666637号発明「射出装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6666637号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし4〕について訂正することを認める。 特許第6666637号の請求項1及び4に係る特許を維持する。 特許第6666637号の請求項2及び3に係る特許に対する特許異議申立を却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6666637号の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、平成29年12月12日に出願され、令和2年2月26日にその特許権の設定登録がされ、同年3月18日に特許掲載公報が発行され、その後、本件特許については、同年5月8日付けで移転登録申請(一般承継)がされ、本件特許権につき、株式会社名機製作所から株式会社日本製鋼所(以下、「特許権者」という。)に、同年6月24日付けで権利の移転登録がされた。その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和2年 6月12日 : 特許異議申立人 齋藤 瞳(以下、
「異議申立人」という。)による
特許異議の申立て
同年11月27日付け : 取消理由通知
令和3年 2月 4日 : 特許権者による訂正請求及び意見書の
提出
同年 2月19日付け : 特許法第120条の5第5項の通知
同年 3月18日 : 異議申立人による意見書の提出
同年 6月 7日付け : 取消理由通知(決定の予告)
同年 7月27日 : 特許権者による訂正請求及び意見書の
提出
なお、令和3年2月4日にされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
また、下記「第2 訂正の適否についての判断」にあるように、令和3年7月27日になされた特許権者による訂正請求によって特許請求の範囲が相当程度減縮され、事件において提出された全ての証拠や意見等を踏まえて更に審理を進めたとしても特許を維持すべきとの結論となると当審が判断したため、当該訂正請求に対し、特許法第120条の5第5項ただし書における特別の事情と認め、異議申立人に対して同法同条第5項の通知を行っていない。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和3年7月27日付けの本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「基台上に立設され加熱バレルが配設される前方ブロックと、
基台上で前方ブロックに対してスクリュの軸方向に移動可能に設けられ計量モータが配設される可動ブロックとが備えられ、
前記可動ブロックは、少なくとも射出プランジャが固定されるとともに材料供給孔が形成されたハウジングブロックと該ハウジングブロックの後方側に設けられスクリュが保持されるスクリュ保持ブロックの2枚のブロックを備えており、」
と記載されているのを、
「基台上で前方ブロックに対してその後方側のみにスクリュの軸方向に移動可能に設けられ1基の計量用サーボモータが配設される可動ブロックとが備えられ、
前記可動ブロックは、少なくとも射出プランジャが固定されるとともに幅方向の中央には材料供給孔が上面から前記射出プランジャの材料供給孔に向けて垂直方向に形成され該射出プランジャが固定される部分の両側にはそれぞれ射出用サーボモータにより駆動されるボールねじが挿通されるボールねじナットが配設されたハウジングブロックと、該ハウジングブロックの後方側に設けられスクリュが保持されるスクリュ保持ブロックの2枚のブロックを備えており、
前記スクリュ保持ブロックはスクリュの軸部およびその延長線上の位置以外に前記1基の計量用サーボモータのモータ本体が前方に向けて固定されるとともに、該1基の計量用サーボモータの駆動軸に固定される駆動プーリと該スクリュ保持ブロックの後面側に設けられ前記スクリュの軸部に固定される従動プーリとの間にはベルトが掛け渡されており、
前記ハウジングブロックは基台上のガイドレールとハウジングブロックの脚部からなるリニアガイドによって前後方向に移動可能にガイドされており、」
に訂正する。
請求項1の記載を引用する請求項4についても同様に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に、
「前記ハウジングブロックとスクリュ保持ブロックの2枚の可動ブロックは基台上のガイド部材によりガイドされていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の射出装置。」と記載されているのを、
「前記ハウジングブロックとスクリュ保持ブロックの2枚の可動ブロックのうちハウジングブロックは基台上のガイドレールとハウジングブロックの脚部からなるリニアガイドによって前後方向に移動可能にガイドされ、スクリュ保持ブロックは基台上のハウジングブロックの後部から突出形成された2本のガイド棒により移動可能にガイドされていることを特徴とする請求項1に記載の射出装置。」に訂正する。

2 一群の請求項について
訂正事項1による本件訂正は、訂正前の請求項1ないし4を訂正するものであるところ、本件訂正前の請求項2ないし4は、訂正請求の対象である請求項1の記載を直接又は間接的に引用する関係にあるから、訂正前の請求項1ないし4は一群の請求項であって、本件訂正は、一群の請求項〔1ないし4〕について請求されたものである。

3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1に係る請求項1の訂正について
訂正事項1に係る請求項1の訂正は、訂正前の請求項1の「可動ブロック」について、「前方ブロックに対して、その後方側のみに」と、配設位置に限定を付加し、「計量モータ」について、「1基の計量用サーボモータ」に限定し、ハウジングブロックの「材料供給孔」について、可動ブロックの「幅方向の中央には」、「上面から前記射出プランジャの材料供給孔に向けて垂直方向に」と配設位置を限定し、「ハウジングブロック」について、「該射出プランジャが固定される部分の両側にはそれぞれ射出用サーボモータにより駆動されるボールねじが挿通されるボールねじナットが配設された」と限定を付加すると共に、「基台上のガイドレールとハウジングブロックの脚部からなるリニアガイドによって前後方向に移動可能にガイドされており、」との限定を付加するものであって、さらに、「スクリュ保持ブロック」について、「スクリュの軸部およびその延長線上の位置以外に前記1基の計量用サーボモータのモータ本体が前方に向けて固定されるとともに、該1基の計量用サーボモータの駆動軸に固定される駆動プーリと該スクリュ保持ブロックの後面側に設けられ前記スクリュの軸部に固定される従動プーリとの間にはベルトが掛け渡されており、」との限定を付加するものである。
したがって、訂正事項1に係る請求項1の訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1に係る請求項1の訂正は、本件特許の明細書の段落【0022】、【0029】、【0036】に記載からみて、本件特許の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲の拡張し、又は変更するものではない。
さらに、請求項1を引用する請求項4に関しても同様である。

(2)訂正事項2に係る請求項2の訂正について
請求項2に係る訂正は、請求項2の削除を目的とするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、本件特許の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲の拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項3に係る請求項3の訂正について
請求項3に係る訂正は、請求項3の削除を目的とするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、本件特許の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲の拡張し、又は変更するものではない。

(4)訂正事項4に係る請求項4の訂正について
訂正事項4に係る請求項4の訂正は、訂正前の請求項4の「前記ハウジングブロックとスクリュ保持ブロックの2枚の可動ブロック」のうちのハウジングブロックについて、「基台上のガイドレールとハジングブロックの脚部からなるリニアガイドによって前後方向に移動可能にガイドされ、スクリュ保持ブロックは基台上のハウジングブロックの後部から突出形成された2本のガイド棒により移動可能にガイドされている」と、限定を付加するとともに、引用する請求項を請求項1に限定するものである。
したがって、訂正事項4は特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項4は、本件特許の明細書の段落【0026】に記載されていることから、本件特許の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲の拡張し、又は変更するものではない。

4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件訂正は適法なものであり、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし4〕について訂正することを認める。

第3 本件特許発明
上記第2で示したとおり、本件訂正は認められたため、本件特許の請求項1及び4に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、本件特許発明1及び4を総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1及び4に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。
「【請求項1】
加熱バレルに挿入された筒状の射出プランジャ内にスクリュを回転可能に配置し前記スクリュの回転により溶融材料を加熱バレル内に供給するとともに、加熱バレルに対して射出プランジャとスクリュを前進させて加熱バレル内の溶融材料を射出する射出装置において、
基台上に立設され加熱バレルが配設される前方ブロックと、
基台上で前方ブロックに対してその後方側のみにスクリュの軸方向に移動可能に設けられ1基の計量用サーボモータが配設される可動ブロックとが備えられ、
前記可動ブロックは、少なくとも射出プランジャが固定されるとともに幅方向の中央には材料供給孔が上面から前記射出プランジャの材料供給孔に向けて垂直方向に形成され該射出プランジャが固定される部分の両側にはそれぞれ射出用サーボモータにより駆動されるボールねじが挿通されるボールねじナットが配設されたハウジングブロックと、該ハウジングブロックの後方側に設けられスクリュが保持されるスクリュ保持ブロックの2枚のブロックを備えており、
前記スクリュ保持ブロックはスクリュの軸部およびその延長線上の位置以外に前記1基の計量用サーボモータのモータ本体が前方に向けて固定されるとともに、該1基の計量用サーボモータの駆動軸に固定される駆動プーリと該スクリュ保持ブロックの後面側に設けられ前記スクリュの軸部に固定される従動プーリとの間にはベルトが掛け渡されており、
前記ハウジングブロックは基台上のガイドレールとハウジングブロックの脚部からなるリニアガイドによって前後方向に移動可能にガイドされており、
前記ハウジングブロックとスクリュ保持ブロックの間を接続して可動ブロックにはスクリュの軸部およびその延長線上の位置以外の位置にスクリュ前後進機構が備えられたことを特徴とする射出装置。
【請求項4】
前記ハウジングブロックとスクリュ保持ブロックの2枚の可動ブロックのうちハウジングブロックは基台上のガイドレールとハウジングブロックの脚部からなるリニアガイドによって前後方向に移動可能にガイドされ、スクリュ保持ブロックは基台上のハウジングブロックの後部から突出形成された2本のガイド棒により移動可能にガイドされていることを特徴とする請求項1に記載の射出装置。」

第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由及び取消理由の概要
1 特許異議申立書に記載した申立理由の概要
令和2年6月12日に異議申立人が提出した特許異議申立書に記載された申立理由の概要は次のとおりである。
(1)申立理由1(甲第1号証を主引用文献とする進歩性
本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(2)申立理由2(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
概略は以下の通り。
ア 本件特許発明の開示範囲において、スクリュを前進させて加熱バレル内の溶融材料を射出する装置の全長を短くできるというためには、後方ブロック19を請求項1に加えられるべきである。
イ 仮に後方ブロック19が存在していないとしても、突き出したスクリュ前後進機構53の後端とスクリュ保持ブロック38の後端の相対位置関係を特定しない限り、装置の全長を短くできるということはできない。
(3)申立理由3(実施可能要件
本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
概略は以下の通り。
ア スクリュ33を「後方に抜き取る」場合であっても、ベアリング64が備えられたスクリュコネクタ51を、スクリュ保持ブロック38から引き抜かなければならない。ところで、ベアリング64およびスクリュコネクタ51は、金属の塊であり大重量物であるとともに、スクリュ33を回転揺動するという用途に起因して、スクリュ軸と精緻に同軸でなければ回転揺動によるスクリュ33の破損につながる。つまり、ベアリング64およびスクリュコネクタ51はスクリュ保持ブロックに精密に組み込まれるべき部材であるところ、スクリュ33を抜き取る際のメンテナンス作業が容易とは言えない。したがって、本件特許明細書および図面の記載によっては、精緻に嵌め合わされた大重量物を押し出さなければならないスクリュ抜き取りのメンテナンス作業が容易であるとは到底言えない。
イ 本件特許明細書および図面には、引用文献2には示されていないかまたは甲第4号証(引用文献2)を超える「スクリュの抜き取り作業等のメンテナンスを容易」にする手段が記載されていない。
(4)証拠方法
異議申立人は、特許異議申立書に添付して以下の証拠を提出した。
甲第1号証:米国特許第4422842号公報
甲第2号証:特開昭60−49909号公報
甲第3号証:令和1年10月4日付けで、株式会社名機製作所が提出
した意見書
甲第4号証:特開平10−305461号公報
異議申立人の提出した上記甲第1号証ないし甲第4号証を、以下、「甲1」ないし「甲4」という。
また、令和3年3月18日の意見書に添付して、以下の参考資料を提出した。
参考資料1:特開平3−219935号公報
参考資料2:特開2014−24305号公報
参考資料3:特許第4820719号公報
参考資料4:実願昭60−98837号(実開昭62−5914号)
のマイクロフィルム
異議申立人の提出した上記参考資料1ないし4を、以下、「参1」ないし「参4」という。

2 取消理由通知に記載した取消理由の概要
当審が令和3年6月7日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりであり、特許異議申立書に記載した申立理由1を含むものである。
取消理由1(甲1を主引用文献とする進歩性
本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

第5 取消理由(決定の予告)についての当審の判断
1 各証拠の記載事項等
(1)甲1の記載事項等
ア 甲1の記載事項
甲1には、プラスチック及びエラストマの射出装置について、概略、次の記載がある(下線については当審において付与したものである。以下、同様。)。
(ア)「An injection apparatus for plastics materials containing glass reinforcing fibers includes a fixed sheath 5, a movable sheath 7 slidably disposed within the fixed sheath, a mixing screw 9 rotatable within the movable sheath, a pressurized supply hopper or funnel 8 for feeding material to the mixing and conveying screw, and a piston/cylinder unit 14-16 for advancing the movable sheath and screw to inject a charge of plastics material within a chamber 26 to a mold M.
(当審訳:強化ガラス繊維を含有するプラスチック材料のための射出装置は、固定シース5、固定シース内に摺動可能に配置された可動シース7、可動シース内で回転可能な混合スクリュ9、混合運搬スクリュに材料を供給するための加圧供給ホッパ又は漏斗8と、金型Mに可動シース及びスクリュを前進させてチャンバ26内のプラスチック材料を射出するための、ピストン/シリンダユニット14-16とを備えている。」(要約)
(イ)「The present invention overcomes the above noted disadvantages of the prior art by providing an injection apparatus construction including a fixed sheath, a movable sheath slidably disposed within the fixed sheath and defining therewith a variable volume chamber, a plastics material supply device carried by the movable sheath and exiting thereinside, valve means for opening and closing an orifice communicating between the inside of the movable sheath and the variable volume chamber, and means for activating the movable sheath to inject the plastics material into the mold.
(当審訳:本発明は、固定シースと、固定シース内に摺動可能に配置され、それと共に可変容積チャンバを画定する可動シースと、可動シースによって運搬され、その中から出てくるプラスチック材料供給デバイス、可変容積チャンバの内部とを連通するオリフィスを開閉するための弁手段と、プラスチック材料を金型内に射出するために作動させる手段、を含む射出装置構造を提供することにより、従来技術の上記の欠点を克服する。)」(第1欄第66行〜第2欄第8行)
(ウ)「An injection apparatus I according to the invention is mounted to slide under the action of a jack V on frame B.
The injection device I comprises a sole plate 1 bearing first and second upstanding and parallel frame plates 2, 3 connected to each other by four parallel columns 4. A fixed cylinder or sheath 5 is connected to the first plate 2 by two flat parallel plates 6 which form fixing means and which are located on either side of a second movable cylinder or sheath 7 which slides in the sheath 5 and first plate 2, and which carries a feed funnel 8 for the supply of plastic. A mixing screw 9 is slidably and rotatably mounted inside the sheath 7, and the sheath 5 is fitted on its end adjacent the mold M with an exit nozzle or orifice 10 having a disconnecting tap 11. The movable sheath 7 has a generally conically shaped nozzle 12 at its end cooperable with the conical end 13 of the mixing screw 9 to form a valve. The means for activating the injection apparatus comprises a jack 14 having a base formed by the second plate 3 and a cylinder 15 housing a piston 16. The piston supports, on its end opposite screw 9, an electric or hydraulic motor 17 which rotates the screw via a stem 18, freely rotatable inside the piston 16 but supported by a bearing 19 within the piston and by a butt plate 20 connected thereto. The end of the movable sheath 7, opposite the nozzle, is formed by a collar plate 21 parallel to the butt plate 20 and connected thereto by two diametrically opposite jacks 22, each having a cylinder 23 connected to the collar plate and a piston 24 connected to the butt plate.
(当審訳:本発明による射出装置Iは、フレームB上のジャッキVの作用下で摺動するように取り付けられている。
射出装置Iは、4本の平行な柱4によって互いに連結された第1及び第2の直立かつ平行なフレームプレート2、3を支持するソールプレート1を備える。固定シリンダ又はシース5は、固定手段を形成し、シース5及び第1のプレート2内を摺動する第2の可動シリンダ又はシース7のいずれかの側に配置される2つの平らな平行プレート6によって第1のプレート2に接続されると共に、第2の可動シリンダ又はシース7は、プラスチックの供給のための供給漏斗8を支持する。混合スクリュ9は、シース7内で摺動可能、回転可能に取り付けられている。また、シース5は、離接タップ11を有する出口ノズル又はオリフィス10を金型Mに隣接してその端部に取り付けられている。可動シース7は、その端部に、混合スクリュ9の円錐状端部13と協働して弁を形成する略円錐状ノズル12を有している。
射出装置を作動させるための手段は、第2のプレート3によって形成された台座と、ピストン16を収納するシリンダ15とを有するジャッキ14を備えている。ピストンは、その反対側のスクリュ9の端部に、ステム18を介してスクリュを回転させる電気又は油圧モータ17を支持している。ステムはピストン16内で回転自在であるが、ピストン内のベアリング19及びピストンに接続されたバットプレート20によって支持される。可動シース7のノズルと反対側の端部は、バットプレート20に平行なカラープレート21によって形成され、カラープレートに接続されたシリンダ23とバットプレートに接続されたピストン24とを有する直径方向に対向する2つのジャッキ22によって接続されている。」(第2欄第52行〜第3欄第15行)
(エ)「In operation, when jack V is in a position such that the injection apparatus I is separated from the mold M, and the piston 16 is advanced against the second plate 3 and the deactivated jacks 22, the screw 9 and the movable sheath 7 under the action of the collar plate 21 are in an advanced position against the nozzle 10 of the fixed sheath 5. The material supply device is in a retracted position whereat the compression plate 35 has been drawn upwardly by the jack 38 to abut the lower surface of plate 39, which is then withdrawn from the mouth of the funnel 8 by the retraction of jack 41.
The piston 16 is then withdrawn by a length L to open a small passage or canal 25 between the conical end 13 of the screw 9 and the end 12 of the movable sheath 7. This minor withdrawal movement is implemented by pressurizing the jacks 22.
The thermosettable glass fiber containing plastic to be injected is next loaded into the funnel 8 through its open or exposed top, whereafter the jack 41 is actuated to slide the plate 39 in its guides 40 back over the top of the funnel 8. Jack 38 is then actuated to urge the compression plate 35 downwardly into the funnel and against the plastic material loaded therein, with the lip of the watertight joint 36 providing a tight seal against the wall of the funnel. The motor 17 is then energized to rotate screw 9, which simultaneously conveys and mixes a charge of injection material from the bottom of funnel 8 towards and into a chamber 26 defined between the end 12 of the movable sheath 7 and the disconnecting tap 11 of the closing orifice 10 of the fixed sheath 5. As the pressur of this material within chamber 26 increases, the movable sheath 7, screw 9 and piston 16 are further withdrawn to the right in FIG. 2; the pressurized jacks 22 maintain the passage 25 open.
When the quantity of plastic material desired for a particular molding operation resides within chamber 26, the rotation of the screw 9 is halted and the pressure exerted by jack 38 on the material remaining in the funnel 8 is relieved.
(当審訳:操作において、ジャッキVが、注射装置Iが金型Mから分離した位置にあり、ピストン16が、第2プレート3、非作動のジャッキ22、スクリュ9及び可動シース7に対して前進する時、カラープレート21は、シース5のノズル10に対して前進した位置にある。材料供給装置は、圧縮プレート35がジャッキ38によって上方に引き上げられてプレート39の下面に隣接し、次いでジャッキ41の後退により漏斗8の口部から引き出される格納位置にある。
次いで、ピストン16は、長さLだけ引き出され、スクリュ9の円錐形端部13とシース7の端部12との間の小さな通路又は孔25を開くためのこの僅かな後退運動は、ジャッキ22を加圧することによって実現される。
射出成形されるプラスチックを含む熱硬化性ガラス繊維は、次に、その開放または露出された頂部を通って漏斗8内へ充填され、その後、ジャッキ41が作動して、ガイド40内のプレート39を漏斗8の上部にスライドさせて戻す。次に、ジャッキ38が作動して、圧縮プレート35を漏斗内の下方に押し込み、そこに装填されたプラスチック材料に対して押し付け、水密接合部46のリップは、漏斗の壁に対して堅固なシールを提供する。次にモータ17を付勢し、スクリュ9は、漏斗8の底から注入材料の充填量を可動シース7の端部12とシース5のオリフィス10のタップ11との間に形成されたチャンバ26内に向けて搬送する。チャンバ26内の樹脂圧が増加するにつれて、可動シース7、スクリュ9及びピストン16は、図2において右側へ引き戻され、加圧ジャッキ22は、通路25を開いた状態に維持する。
特定の成形動作のために所望されるプラスチック材料の量がチャンバ26の中にあると、スクリュ9の回転が停止され、ジャッキ38により漏斗8に残存している物質に加えられた圧力は解放される。)」(第3欄第39行〜第4欄第9行)
(オ)「Since the screw 9 ensures the movement of the sheath 7 during injection by the engagement therewith of its end opposite the end 13, the size of the jacks 22 may be minimized since they are not required to transmit the massive injection forces but need only develop sufficient pressure to separate the movable sheath 7 and the screw 9 by the distance L.
(当審訳:スクリュ9は、端部13と反対側の端部の係合により、注入中に、シース7を確実に移動するので、ジャッキ22の大きさは、それらが大量の噴射力を伝達する必要があるのではなく、可動シース7およびスクリュ9を分離する距離Lだけに十分な圧力を発生するにすぎないので、最小化することができる。」(第5欄第4〜10行)
(カ)「

」(図1、図2)
(キ)「

」(図3、図4)
(ク)「This invention relates to an apparatus for injecting plastics, elastomers, or the like, particularly intended for reinforced plastics such as thermosettable materials containing glass fibers.
(当審訳:本発明は、プラスチック、エラストマー等を注入するための装置、特にガラス繊維を含有する熱硬化性材料のような強化プラスチックに関するものである。)」(第1欄第6〜9行)
(ケ)「With this invention the injection apparatus may be moved in relation to or withdrawn from the mold to thereby minimize the contact times between the mold M and the fixed sheath 5. This feature enables any unwanted heat and/or cold transfer between the mold and the injection apparatus to be substantially avoided. The heat for the injection of thermosettable materials or the cold in the case of thermoplastic materials creates the polymerization of the material or its hardening through cooling, respectively, in the nozzle 10 and in the chamber 26 of the fixed sheath 5. This movement of the injection apparatus in relation to the mold is obtained due to the connection of the fixed sheath 5 to the injection jack 14 by the parallel plates 6.
(当審訳:本発明では、射出装置を金型に対して移動させるか、金型から引き抜いて、金型Mと固定シース5との間の接触時間を最小限に抑えることができる。この機能により、金型と射出装置の間の不要な熱および/または冷間移動を実質的に回避できる。熱硬化性材料の注入のための熱または熱可塑性材料の場合の低温は、それぞれ、固定シース5のノズル10およびチャンバ26において、材料の重合または冷却によるその硬化を引き起こす。型に対する注入装置のこの動きは、平行板6による注入ジャック14への固定シース5の接続によって得られる。)」(第4欄第37〜50行)

イ 甲1に記載された発明
甲1の上記記載事項ア(ア)、(ウ)の特に下線部の記載からみて、甲1には、以下の発明が記載されているといえる。
「強化ガラス繊維を含有するプラスチック材料のための射出装置であって、固定シース5、固定シース5内に摺動可能に配置された可動シース7、可動シース7内で回転可能な混合スクリュ9と、を備え、
4本の平行な柱4によって互いに連結された第1及び第2の直立かつ平行なプレート2、3を支持するソールプレート1を備え、
固定シース5は、固定手段を形成し、固定シース5及び第1のプレート2内を摺動する可動シース7に配置される2つの平らな平行プレート6によって第1のプレート2に接続されると共に、可動シース7は、プラスチック材料の供給のための加圧供給漏斗8を支持しており、
金型Mに可動シース7及びスクリュ9を前進させてチャンバ26内のプラスチック材料を射出するための手段は、第2のプレート3によって形成された台座と、ピストン16を収納するシリンダ15とを有するジャッキ14を備え、
ピストン16は、その反対側のスクリュ9の端部に、ステム18を介してスクリュ9を回転させる電気又は油圧モータ17を支持しており、
ステム18はピストン16内で回転自在であるが、ピストン16内のベアリング19及びピストン16に接続されたバットプレート20によって支持されると共に、可動シース7のノズルと反対側の端部は、バットプレート20に平行なカラープレート21によって形成され、カラープレート21に接続されたシリンダ23とバットプレート20に接続されたピストン24とを有する直径方向に対向する2つのジャッキ22によって接続されている、射出装置。」(以下、「甲1発明」という。)

(2)甲2の記載事項
甲2には、樹脂材料の可塑化計量注入装置について、概略、次の記載がある。
ア「亦、他の形式の成形装置として添付した図面の第5図に示すようなインランンスクリウ式射出成形機が熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂或いはゴム等の各種の成形材料の射出成形に広く使用されている。周知のようにこの射出成形機はホッパ4から可塑化シリンダ1内に給送された樹脂材料が駆動モータ3により回転するスクリウ2により先端に向けて送られるに従ってヒータ8の加熱と相俟って順次圧縮混線溶融して可塑化シリンダ1の先端貯留室26に蓄積され、スクリウ2は蓄積された溶融樹脂の脊圧により徐々に後退し、樹脂が所要量に達すると、油圧シリンダ28とピストン27を作動してスクリウ2をプランジャと同様に前進せしめ貯留室26内の1バッチ分の溶融樹脂をノズル9から図示しない金型内に注入するものである。」(第2ページ右上欄第4〜19行)
イ「次にこの発明を第1図の実施例について説明すると、1は押出機における可塑化シリンダで、その中心穴内に嵌装されたスクリウ2は可塑化シリンダ1の後端近傍に配設されてスクリウ2の後端部に連結された油圧モータ3により回転駆動され、可塑化シリンダ1の後端部上面に立設したホッパ4内に投入された熱可塑性或いは熱硬化性樹脂粉粒素材を徐々に可塑化シリンダ1内に送り込み、回転するスクリウ2のフライトによりその先端に向って送られる間にスクリウ2の機械的エネルギと外周に配設されたヒータ8の熱エネルギを受けて順次圧縮混練された樹脂材料は可塑化溶融して可塑化シリンダ1の先端押出口5より押出される。」(第2ページ左下欄第18行〜右下欄第11行)
ウ「

」(第1図)
エ「

」(第5図)

(3) 参4の記載事項
参4には、プラスチック可塑化射出装置について、概略、次の記載がある。
ア「以下本考案の実施例を図面に基き詳述する。
1は射出プランジャーで、射出ラム17に同調して前進後退自由とする。該プランジャー1は先端部に脱着可能なブレーカープレート7を嵌装する。2は上記な射出プランジャー1に内蔵するスクリュー軸で、3、4の駆動装置及び電動機によって回転し、材料の可塑化を行い、上記射出プランジャーと共に前後動する。」(第4ページ第5〜13行)
イ「

」(第1図)

2 検討
(1)対比、判断
ア 本件特許発明1
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
・甲1発明の「固定シース5」、固定シース5内に摺動可能に配置された「可動シース7」、可動シース7内で回転可能な「混合スクリュ9」は、本件特許発明1の「バレル」、バレルに挿入された筒状の「射出プランジャ」、射出プランジャ内に回転可能に配置した「スクリュ」に相当する。
そして、甲1発明の「金型Mに可動シース7及びスクリュ9を前進させてチャンバ26内のプラスチック材料を射出するための手段」を有する「射出装置」は、本件特許発明1の「バレルに対して射出プランジャとスクリュを前進させてバレル内の溶融材料を射出する射出装置」に相当する。
・甲1発明の「ソールプレート1」は、本件特許発明1の「基台」に相当する。
そして、甲1発明における「固定シース5」は、2つの平らな平行プレート6によって第1のプレート2に連結されているものであり、第1のプレート2は、ソールプレート1から直立で支持されているものであるため、「第1のプレート2」及び「2つの平らな平行プレート6」は、本件特許発明1の基台上に立設されバレルが配設される「前方ブロック」に相当する。
・甲1発明の「加圧供給漏斗8」は、プラスチック供給のためのものであるから、材料供給孔を有するものである。
そして、甲1発明は、可動シース7のノズルと反対側の端部は、「加圧供給漏斗8」を支持すると共に、カラープレート21を形成していることから、甲1発明の「加圧供給漏斗8」、「カラープレート21」及び「それら両部材を繋ぐ可動シース7の部分」は、本件特許発明1の射出プランジャが固定されるとともに材料供給孔が形成された「ハウジングブロック」に相当する。
また、上記記載事項1(1)ア(カ)の図1、図2より、甲1発明の「バットプレート20」、「ピストン16」、ピストン16内の「ベアリング19」及び「ステム18」は、「カラープレート21」の後方側に設けられると共に、スクリュ9が保持されているため、本件特許発明1の「スクリュ保持ブロック」に相当する。
・上記記載事項1(1)ア(オ)より、甲1発明の「ジャッキ22」は、スクリュを距離Lだけ移動させるものであるから、本件特許発明1の「スクリュ前後進機構」に相当する。
そして、「ジャッキ22」は、バットプレート20とカラープレート21の間を接続しており、また、上記記載事項1(1)ア(カ)の図1、図2より、スクリュの軸部およびその延長線上の位置以外の位置に設けられている。
・上記記載事項1(1)ア(エ)の「次にモータ17を付勢し、スクリュ9は、漏斗8の底から注入材料の充填量を可動シース7の端部12とシース5のオリフィス10のタップ11との間に形成されたチャンバ26内に向けて搬送する。」との記載より、甲1発明の「電気又は油圧モータ17」は、射出充填量を計量するものであるから、本件特許発明1の「計量モータ」に相当する。
そして、上記記載事項1(1)ア(カ)の図1、図2より、「バットプレート20」と「加圧供給漏斗8」、「カラープレート21」及び「それら両部材を繋ぐ可動シース7の部分」は、本件特許発明1の「可動ブロック」に相当し、「第1のプレート2」及び「2つの平らな平行プレート6」に対して移動可能に設けられる共に、ベアリング19、ステム18を介して「電気又は油圧モータ17」に接続され、さらにソールプレート1の上方に配設されている。
・上記記載事項1(1)ア(カ)の図5より、「加圧供給漏斗8」の幅方向の中央に、材料供給孔が上面から「可動シース7」の材料供給孔に向けて垂直方向に形成されていることが見て取れる。
そうすると、両者は、以下の点で一致する。
<一致点>
バレルに挿入された筒状の射出プランジャ内にスクリュを回転可能に配置し前記スクリュの回転により溶融材料をバレル内に供給するとともに、バレルに対して射出プランジャとスクリュを前進させてバレル内の溶融材料を射出する射出装置において、
基台上に立設されバレルが配設される前方ブロックと、
基台上で前方ブロックに対してスクリュの軸方向に移動可能に設けられ計量モータが配設される可動ブロックとが備えられ、
前記可動ブロックは、少なくとも射出プランジャが固定されるとともに幅方向の中央には材料供給孔が上面から前記射出プランジャの材料供給孔に向けて垂直方向に形成されハウジングブロックと該ハウジングブロックの後方側に設けられスクリュが保持されるスクリュ保持ブロックの2枚のブロックを備えており、
前記ハウジングブロックとスクリュ保持ブロックの間を接続して可動ブロックにはスクリュの軸部およびその延長線上の位置以外の位置にスクリュ前後進機構が備えられたことを特徴とする射出装置。
また、両者は、以下の点で相違する。
<相違点1−1>
バレルについて、本件特許発明1が「加熱」手段を有することを特定するのに対し、甲1発明はそのような特定がされていない点。
<相違点1−2>
可動ブロックの配設位置について、本件特許発明1が前方ブロックに対して「その後方側のみに」と特定するのに対し、甲1発明はそのような特定がされていない点。
<相違点1−3>
計量モータについて、本件特許発明1が「1基の計量用サーボモータ」と特定するのに対し、甲1発明はそのような特定がされていない点。
<相違点1−4>
ハウジングブロックについて、本件特許発明1が「該射出プランジャが固定される部分の両側にはそれぞれ射出用サーボモータにより駆動されるボールねじが挿通されるボールねじナットが配設された」と特定するのに対し、甲1発明はそのような特定がされていない点。
<相違点1−5>
ハウジングブロックについて、本件特許発明1が「基台上のガイドレールとハウジングブロックの脚部からなるリニアガイドによって前後方向に移動可能にガイドされており」と特定するのに対し、甲1発明はそのような特定がされていない点。
<相違点1−6>
スクリュ保持ブロックについて、本件特許発明1が「スクリュの軸部およびその延長線上の位置以外に前記1基の計量用サーボモータのモータ本体が前方に向けて固定されるとともに、該1基の計量用サーボモータの駆動軸に固定される駆動プーリと該スクリュ保持ブロックの後面側に設けられ前記スクリュの軸部に固定される従動プーリとの間にはベルトが掛け渡されており」と特定するのに対し、甲1発明はそのような特定がされていない点。

そこで、上記相違点について検討する。
事案に鑑み、<相違点1−4>から検討する。
まず、甲1発明のプラスチック材料を射出するための手段は、第2のプレート3によって形成された台座と、「ピストン16」を収納するシリンダ15とを有するジャッキ14からなる、いわゆる「油圧シリンダ」であって、「射出用サーボモータ」ではない。
そして、本件特許発明1の「スクリュ保持ブロック」に相当するのは、甲1発明においては、「バットプレート20」と、「ピストン16」、さらにピストン16内の「ベアリング19」及び「ステム18」の部材からなるものである。
そのため、仮に甲1発明において、プラスチック材料を射出するための手段として、いわゆる「油圧シリンダ」に代えて「射出用サーボモータ」に変更した場合、「ピストン16」は不要となり、もって「ピストン16」との接続がなくなる「バットプレート20」は、本件特許発明1の「スクリュ保持ブロック」を構成する部材ではなくなってしまう。
そうすると、甲1及びその他の証拠を参酌したとしても、<相違点1−4>に係る発明特定事項を当業者であっても容易に導き出すことはできない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

イ 本件特許発明4について
本件特許発明4は請求項1を引用する発明であり、本件特許発明1の特定事項をすべて有するものである。
よって、上記アのとおり、本件特許発明4も、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(3)取消理由1についてのむすび
したがって、本件特許発明1及び4は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1及び4に係る特許は、取消理由1によっては取り消すことはできない。

第6 取消理由で採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由について
取消理由で採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由は、申立理由2(サポート要件)、申立理由3(実施可能要件)であるため、以下検討する。
1 申立理由2(サポート要件)について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

(2)特許請求の範囲の記載
本件特許の特許請求の範囲の記載は、上記第3のとおりである。

(3)発明の詳細な説明の記載
本件特許の発明の詳細の記載は次のとおりである。
「【背景技術】
【0002】
加熱バレルに挿入された筒状の射出プランジャ内にスクリュを回転可能に配置し前記スクリュの回転により溶融材料を加熱バレル内に供給するとともに、加熱バレルに対して射出プランジャとスクリュを前進させて加熱バレル内の溶融材料を射出する射出装置は、装置の長さの割に大容量の可塑化および射出を行える場合が多く、従来から特許文献1および特許文献2に記載されたもの等が知られている。
【0003】
そして前記特許文献1、特許文献2の射出装置においては、射出プランジャに対してスクリュが前後進可能となっている。そのため特許文献1では「発明の実施の形態」欄の(0032)、「発明の効果」欄に記載されるようにスクリュ10にもプランジャ機能を持たせて前進させることにより射出シリンダ12内の縮小貯留部60に貯留された溶融図示がノズル孔22を通じて射出されることにより射出シリンダ12内の溶融樹脂の残留量を減らすことができる。また特許文献2では「(5)発明の作用」欄の第3頁右下欄に記載されるように射出シリンダ1の押圧口5を押圧させて樹脂流路を閉塞することにより計量室7に貯留された溶融樹脂のバックフロ―を防止した後、油圧シリンダ14を前進作動して射出を行うことができ、射出用を安定させることが期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−305461号公報(請求項1、0032、図1)
【特許文献2】特開昭60−49909号公報(請求項1、第3頁右下欄、第3B図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1、特許文献2は、射出プランジャに対してスクリュを前後進させる機構やスクリュを回転させるモータがスクリュの軸部の延長線上にあるため次のような問題があった。即ちスクリュを前後進させる機構やスクリュを回転させるモータをスクリュの延長線上に設けると射出装置の長さが長くなりがちである。またスクリュを前後進させる機構やスクリュを回転させるモータをスクリュの延長線上に設けると装置が複雑になり、特にはスクリュを抜き取る際の作業が複雑になる場合があった。
【0006】
本発明では上記の問題を鑑みて、加熱バレルに挿入された筒状の射出プランジャ内にスクリュを回転可能に配置し前記スクリュの回転により溶融材料を加熱バレル内に供給するとともに、加熱バレルに対して射出プランジャとスクリュを前進させて加熱バレル内の溶融材料を射出する射出装置において、装置の全長を短くするかまたは装置のメンテナンスを容易にした射出装置を提供することを目的とする。」
「【発明の効果】
【0011】
本発明の射出装置は、加熱バレルに挿入された筒状の射出プランジャ内にスクリュを回転可能に配置し前記スクリュの回転により溶融材料を加熱バレル内に供給するとともに、加熱バレルに対して射出プランジャとスクリュを前進させて加熱バレル内の溶融材料を射出する射出装置において、基台上に立設され加熱バレルが配設される前方ブロックと、基台上で前方ブロックに対してスクリュの軸方向に移動可能に設けられ計量モータが配設される可動ブロックとが備えられ、前記可動ブロックは、少なくとも射出プランジャが固定されるとともに材料供給孔が形成されたハウジングブロックと該ハウジングブロックの後方側に設けられスクリュが保持されるスクリュ保持ブロックの2枚のブロックを備えており、前記ハウジングブロックとスクリュ保持ブロックの間を接続して可動ブロックにはスクリュの軸部およびその延長線上の位置以外の位置にスクリュ前後進機構が備えられているので装置の全長を短くするかまたは装置のメンテナンスが容易になる。」
「【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態の射出成形機11の射出装置12について、図1ないし図3を参照して説明する。横型の射出成形機11は、ベッド13上に配置される射出装置12と図示しない型締装置とから構成されている。型締装置はいずれのタイプのものでもよく、固定金型が取付けられる固定盤がベッド13上に固定的に配置されている。また固定盤に対して可動金型が取付けられる可動盤がベッド上面のガイドの上を型開閉方向に移動可能に設けられている。なお型締装置の可動盤の型開閉機構のみ、または型開閉機構と型締機構をサーボモータ等の電動モータにより駆動すると、本発明の射出装置との組合せにより一層省エネルギー性能が向上する。
【0014】
射出装置12について図1ないし図3において左側のノズル26の側を前方、右側を後方と称して説明する。ベッド13の上には射出装置12の基台14が前方の型締装置に向けて図示しないノズルタッチ機構により前後進可能に設けられている。そして基台14の上面の前寄りには前方ブロック15が立設されている。前方ブロック15は一定の厚みを備えた盤体であり基台14に固定されている。前方ブロック15の操作側?反操作側の方向(図2において上下方向、以後は幅方向と称す)の中央には、射出プランジャ16が挿入される貫通孔17が形成されている。貫通孔17の大きさは挿入された射出プランジャ16の周囲に空間が維持される大きさである。そして前方ブロック15の前面には加熱バレル18が固定されている。また前方ブロック15の操作側の上側角部の近傍位置と対角側の下側角部の近傍位置にはそれぞれ後方ブロック19に向けてガイド棒20、20の一端が固定されている。また前方ブロック15の操作側の側部近傍の中間高さの位置および反操作側の側部近傍の中間高さの位置にはそれぞれボールねじ21,21の一端がそれぞれベアリング22,22により回転可能に保持されている。前方ブロック15には図示しないが温調用流路を設け温度制御を行うことが望ましい。
【0015】
前方ブロック15の貫通孔17の周囲の前面に固定される加熱バレル18は軸方向に内孔23が形成された円筒形の部材であり、周囲には軸方向に複数のヒータ24等の加熱手段が取付けられている。また加熱バレル18の前側の部分であるシリンダヘッド部25にはノズル26が固定されている。加熱バレル18の後部面は、貫通孔17の内部に臨んでおり前記内孔23が開口している。
【0016】
加熱バレル18の内孔23の直径は、後述する射出プランジャ16の外径よりも僅かに大きく設けられ、内孔23に射出プランジャ16が挿入された際に両者の間から溶融材料(溶融樹脂)が漏れないようになっている。また前記内孔23の前部側はテーパー状に形成され、前記ノズル26の軸芯のノズル孔に連通されている。ノズル26についてはシャットオフバルブ等の開閉バルブを設けてもよい。計量される溶融材料の量が多くて計量時間が長時間におよぶ場合、ノズル26を固定金型に常時ノズルタッチさせているとノズルの熱が金型に奪われるので、ノズルに26に開閉バルブを設けておいて射出装置12を後退させてノズル26を金型から離隔させた際に前記バルブを閉鎖して計量を行うようにしてもよい。
【0017】
そして基台14の上面の後ろ寄りには後方ブロック19が立設されている。後方ブロック19は一定の厚みを備えた盤体であって基台14に固定されている。後方ブロック19の幅方向の一方の上側角部の近傍と対角側の下側角部の近傍には前記ガイド棒20、20の他端が固定されている。従って2本のガイド棒20,20は、前方ブロック15と後方ブロック19の間を接続して平行に配設されている。また後方ブロック19の側部近傍の操作側の中間高さの位置および反操作側の側部近傍の中間高さの位置にはそれぞれボールねじ21,21の他端近傍がベアリング27,27により回転可能に保持されている。従って2本のボールねじ21,21は、前方ブロック15と後方ブロック19の間を接続して平行に配設されている。
【0018】
後方ブロック19の上部には射出用サーボモータ28,28(射出用アクチュエータ)がそれぞれ配設されている。射出用サーボモータ28,28は、後方ブロック19の操作側の上部と反操作側の上部にそれぞれ設けられたモータ取付用ブラケット29に対して駆動軸28a側の面が当接するように取付けられ、モータ本体が射出装置12の前方に向けられている。そして駆動軸28aには、駆動プーリ30が固定されている。このように射出用サーボモータ28,28を後方ブロック19に取付けることにより、後方ブロック19から後方に突出する長さが最小限に抑えられ、射出装置12の全長短縮に寄与する。本実施形態ではボールねじ21,21の取付位置の上方(鉛直方向)に射出用サーボモータ28,28がそれぞれ配置されており、射出装置12の幅を抑制している。しかし射出用サーボモータ28,28は後方ブロック19の側部(側部上方を含む)に取り付けられたものでもよい。
【0019】
後方ブロック19の後部側の面からは、ボールねじ21,21の他端部が一定長さだけ突出している。そして前記ボールねじ21,21の他端部には従動プーリ32,32がそれぞれ固定されている。ボールねじ21,21に固定される従動プーリ32,32の直径は、後述するスクリュ33の軸部34に固定される従動プーリ58よりも大径となっている。より具体的にはボールねじ21,21に固定される従動プーリ32,32の直径は、前方ブロック15や後方ブロック19の幅の1/3以上となっている。また射出装置12を後方側から見た際の従動プーリ32,32の外径のうちそれぞれ装置中心側の位置は、同じく後方側から投影した加熱バレル18の外周の直径よりも中心側となっている。このように従動プーリ32,32が大径であるので、本発明の射出装置12では、スクリュ33を内蔵する射出プランジャ16の軸方向に直交する方向の受圧面積(加熱バレルの内孔の断面積とほぼ一致)が一般的なインラインスクリュ式のスクリュの軸方向に直交する方向の面積よりもかなり大きい場合であっても所望の射出圧力を得ることができる。
【0020】
そして射出用サーボモータ28,28を後方ブロック19に設けることにより次のようなメリットがある。射出装置が前方ブロックと後方ブロック(可動ブロック)の2つのブロックから構成されている場合または前方ブロックと後方ブロックと可動ブロックの3つのブロックから構成されている場合に係わらず、射出用サーボモータを前方ブロックの加熱バレル側に配置することは次のような点で不利である。即ち加熱バレル内に射出プランジャを内蔵した射出装置では、加熱バレルの太さが一般的なスクリュインライン式の射出装置よりも太くなる。そのため前方ブロックに射出用サーボモータを配置すると加熱バレルとの間の距離が狭くなり、射出用サーボモータがヒータからの輻射熱の影響を受けやすい。また前記のようにボールねじ21,21に大径の従動プーリ32,32を取付ける必要があるので、前方ブロックに射出用サーボモータを設け、前方ブロックの加熱バレル側に従動プーリを取付けると前方ブロックの幅をその分大きくする必要があり装置構造の点で不利である。
【0021】
また前記の中で射出装置が2つのブロックから構成されている場合、後方ブロック(可動ブロック)に射出用サーボモータを取付けることも考えられる。しかしながら本発明のような射出プランジャを備えた装置では後方ブロック(可動ブロック)にスクリュのみならず射出プランジャも固定されるので、後方ブロック(可動ブロック)の重量が重くなる。その上更に後方ブロック(可動ブロック)に射出用サーボモータを取付けることは、更に後方ブロックの重量が重くなり、可動ブロック移動時のイナーシャの点において不利である。前記の観点から本発明の射出装置12では、射出用サーボモータ28,28は基台14に対して固定的に設けた後方ブロック19に配設することがより望ましい。
【0022】
基台14の上面で前方ブロック15と後方ブロック19の間には1基の計量用サーボモータ35(計量用モータ)が配設される可動ブロック36が、スクリュ33の軸方向に移動可能に設けられている。そして可動ブロック36において計量用サーボモータ35が配置される位置は、可動ブロック36の上部のスクリュ33の軸部34およびその延長線上の位置以外の位置となっている。本実施形態では可動ブロック36は、射出プランジャ16が固定されたハウジングブロック37と、計量用サーボモータ35が配設されたスクリュ保持ブロック38の2枚の2つのブロックからなっている。ハウジングブロック37の側面近傍には前記ガイド棒20を挿入するための孔が形成されている。またハウジングブロック37の操作側の側部近傍の中間高さの位置および反操作側の側部近傍の中間高さのボールねじ21,21に対応する位置にはそれぞれボールねじナット39,39が固定されており、ボールねじナット39,39には上記ボールねじ21,21が挿入されている。そして少なくとも一方のボールねじナット39とハウジングブロック37の間にはロードセル40が取付けられている。なおロードセル40が取付けられる位置は別のブロックも含めて他の位置でもよい。またハウジングブロック37は、基台14上のガイドレール41とハウジングブロック37の底面の脚部42からなるリニアガイド43等のガイドによっても前後進方向にガイドがなされている。なおハウジングブロック37(可動ブロック)をガイドするガイド棒20は必須ではなく、基台14上のガイドのみにより前後進するものでもよい。または基台14上のガイドも必須ではなく、ガイド棒20のみによりガイドされるものでもよく、ガイド棒20の位置や本数も限定されない。
【0023】
ハウジングブロック37の幅方向の中央には貫通孔44が形成され、貫通孔44には射出プランジャ16が挿通および固定されている。射出プランジャ16は軸方向に内孔45を備えた筒状の部材であり、前記内孔45内にスクリュ33が回転可能に配置されている。そして射出プランジャ16の筒部46のハウジングブロック37に挿入される部分には、内孔45に向けて材料供給孔47が貫通形成されている。またハウジングブロック37の上面から射出プランジャ16の前記材料供給孔47に向けて垂直方向に材料供給孔48が形成され両者が連通している。そしてハウジングブロック37の上面の材料供給孔48の部分には図示しない材料供給装置が接続され、材料供給孔48,47を介して射出プランジャ16内に樹脂材料等の材料が供給可能となっている。射出プランジャ16はその後端がハウジングブロック37の後面と一致するかまたは僅かに突出した位置となるように固定されている。
【0024】
射出プランジャ16の筒部46の外周には複数のヒータ49が取付けられている。また図4にも詳細が示されるように射出プランジャ16の筒部46の前端寄りの外周部50の直径は、前記加熱バレル18の内孔23の直径よりもごく僅かに小さく形成されており、射出プランジャ16が加熱バレル18の内孔23に挿入された際に加熱バレル18と射出プランジャ16の間から溶融樹脂が漏出しないようになっている。また射出プランジャ16の前端面52は加熱バレル18の内孔23の前端側の形状に合わせてテーパー状になっている。なお射出プランジャ16の前端面は軸方向の直交する平面からなるものでもよい。
【0025】
また射出プランジャ16の内孔45内にはスクリュ33が回転可能に配置されている。スクリュ33は後部から順にフィードゾーン、コンプレッションゾーン、メタリングゾーンが形成されている。なおスクリュ33の形状は限定されない。本実施形態ではスクリュ33の前部に逆流防止弁は取付けられていない。ハウジングブロック37の後部からはスクリュ33の軸部34(スクリュ本体の軸部33以外に、軸部33にカップリング65等を用いて接続されるスクリュコネクタ51等の部材もまたスクリュ33の軸部34に含まれる)が突出している。
【0026】
次にスクリュ保持ブロック38とスクリュ前後進機構53について説明する。ハウジングブロック37の後部面には、操作側の上側と反操作側の下側というように対角方向に2本のガイド棒54,54が所定長さに突出形成されている。またハウジングブロック37の後部面の操作側下側と反操作側の上側というように反対側の対角方向にそれぞれスクリュ前後進機構53の油圧シリンダ55,55のシリンダ部55a,55aが取付けられている。そして前記ガイド棒54,54は、スクリュ保持ブロック38のガイド孔38a,38aに挿通されている。また油圧シリンダ55、55のロッド部55b,55bはスクリュ保持ブロック38の前面にそれぞれ取付けられている。従って油圧シリンダ55,55は、可動ブロック36のスクリュ33の軸部およびその延長線上以外の位置において、ハウジングブロック37とスクリュ保持ブロック38の間を接続して取付けられている。そして油圧シリンダ55,55は図示しないバルブやポンプ等の油圧回路に接続されている。このことによりスクリュ保持ブロック38は、前記ガイド棒54,54によって保持され、油圧シリンダ55,55の作動によりスクリュ33の軸方向に移動可能となっている。そしてスクリュ33の軸部34は、スクリュ保持ブロック38の内部に設けられた図示しないベアリング64により保持されている。そしてスクリュ33の軸部34のうちのスクリュ保持ブロック38から後部側に突出した部分には従動プーリ32が固定されている。
【0027】
このようにスクリュ前後進機構53の油圧シリンダ55,55を取付けることにより、特許文献2の射出装置と比較して油圧シリンダ55,55が可動ブロック36内ではなく外部に露出して取付けられているためパッキンの交換等の作業が容易になる。また計量用サーボモータ35やスクリュ前後進機構53の油圧シリンダ55,55がスクリュ33の軸部34およびその延長線上の位置に配置されていないので、射出装置12の全長が短くできるとともに、スクリュ33のメンテナンス時にスクリュを前方または後方に抜き取る作業が容易となる。
【0028】
射出装置12からスクリュ33の抜き取り作業(メンテナンス作業)の一例について記載すると、スクリュ33の軸部34とスクリュコネクタ51を固定するカップリング65を外す。そして射出装置12の後部ブロック19の中央部の窓部66から、スクリュ33の軸部34の後端に形成された図示しないねじ孔に向けて図示しない先端にねじの形成された工具を挿入する。そして工具によりスクリュ33を前方に押し出す。この際に前方ブロック15から加熱バレル18は外されており、基台14は図示しない旋回装置により旋回されて射出装置12が固定盤に正対しない位置となっている。
【0029】
また可動ブロック36であるスクリュ保持ブロック38の上部には計量用サーボモータ35が配設されている。具体的には計量用サーボモータ35は、スクリュ保持ブロック38の幅方向の中央部の上面に設けられたモータ取付用ブラケット56に対して駆動軸側の面が当接するように取付けられ、モータ本体が射出装置12の前方に向けられている。そして駆動軸35aには、駆動プーリ57が固定されている。本発明では前記したようにスクリュ33は射出プランジャ16の内部に挿入されており、可動ブロック36であるスクリュ保持ブロック38の後面側に従動プーリ58が配置されているので、可動ブロック36の後面側の上方に計量用サーボモータ35の駆動プーリ57が位置するように取付ける必要がある。そして更に前記計量用サーボモータ35の駆動プーリ57と前記従動プーリ58の間にはベルト59(タイミングベルト)が掛け渡されている。なお場合によってはハウジングブロック37とスクリュ保持ブロック38の間のスクリュ33の軸部34の部分に従動プーリ58を固定し、スクリュ保持ブロック38に取付ける計量用サーボモータ35を駆動軸35aが前方方向を向くように取付けてもよい。なお可動ブロック36に計量用サーボモータ35を取付ける位置は、スクリュ保持ブロック38(可動ブロック36)の側部(側部上方を含む)であってもよいが、その場合射出装置12の幅が大きくなる不利がある。
【0030】
なお可動ブロック36については、ガイド棒20,20やガイドレール41等のガイド部材がスクリュ保持ブロック38のみをガイドするように取り付けられ、ハウジングブロック37についてはガイドされないものでもよい。またはハウジングブロック37とスクリュ保持ブロック38の双方の可動ブロック36がガイド部材によりガイドされるものでもよい。更にはボールねじナット39,39についてもスクリュ保持ブロック38に取付けられるものでもよい。
【0031】
またスクリュ前後進機構53の駆動源については上記に限定されず、油圧シリンダを用いる場合は単動シリンダであってもよい。その場合スクリュの前進または後退の一方向はバネにより復帰させてもよい。更にはスクリュ前後進機構53の駆動源は、電動機とボールねじ機構や電磁石によるものでもよい。駆動源が電動機の場合、クサビ機構などによりスクリュを前進させ位置保持してもよい。更には可動ブロックについては1枚のブロックとしてそのブロックに計量用サーボモータを取付けてもよい。その場合可動ブロックの内部にスクリュの軸部を前後進させる油圧シリンダ等が配置される。そしてスクリュの軸部にはスプライン状に所定の厚みを備えた歯車が採用され計量用サーボモータの駆動歯車と係合されるようにする。このような構造にすることによりスクリュが前後進しても歯車同士の係合が外れることはない。またはスクリュ前進時にはスクリュは回転されないので計量用サーボモータからの駆動力の伝達が解除されるものでもよい。いずれにしてもスクリュ前後進機構53のアクチュエータは、可動ブロック36のスクリュ33の軸部34およびその延長線上の位置以外の位置に配置されることが望ましい。
【0032】
次に図4によりスクリュ33の先端形状と射出プランジャ16の内孔形状からなるシール構造について説明する。射出プランジャ16の内孔45の先端側はテーパー面60を経て中心の断面積の小さい連通孔61となっている。またスクリュ33についても先端面はテーパー面62となっている。また前記テーパー面62の中でも中心軸寄りの部分は前記テーパー面62とは角度の異なりプランジャ16のテーパー面60と角度が一致するテーパー面からなる当接面63となっている。従ってスクリュ前後進機構53の油圧シリンダ55,55が作動されスクリュ保持ブロック38と共にスクリュ33が最前進位置まで前進すると前記当接面63が射出プランジャ16の内孔45のテーパー面60に当接して溶融樹脂の流路がシールされるようになっている。なお射出プランジャ16の内孔45の筒の部分に段差を設け、該段差にスクリュ33の肩部が当接されるなど、スクリュ33と射出プランジャ16との間のシール構造は図4の記載のものに限定されない。
【0033】
次に本実施形態の射出成形機11の射出装置12の1サイクルにおける作動について説明する。ノズル26、加熱バレル18、射出プランジャ16はそれぞれ図示しない制御装置により制御されるヒータ24等により所定の設定温度に温度制御されている。またハウジングブロック37、前方ブロック15、金型等も制御装置を含む温調装置により所定の設定温度に温度制御されている。そしてまず前回の射出工程(射出充填と保圧)が終了すると図示しない型締装置の金型内のキャビティで成形品の冷却工程が行われる。本発明の成形機は、限定されるものではないが大容積または肉厚の成形品の成形を行うことも想定されており、その場合は冷却時間も一例として20秒〜120秒というように長時間となる。成形品の冷却工程と並行して射出装置12では次の成形のための計量工程が行われる。
【0034】
計量工程の開始の際はスクリュ前後進機構53の油圧シリンダ55,55を作動させ、可動ブロック36のうちのスクリュ保持ブロック38をハウジングブロック37に対して後退移動させる。それにより同時にスクリュ33も後退し、スクリュ前端の当接面63と射出プランジャ16の内孔45のテーパー面60との間のシール状態も解消される。従って射出プランジャ16の内孔45とその前方の連通孔61が連通され、前記内孔45と加熱バレル18の内孔23も連通される。なお油圧シリンダ55,55の油圧回路をドレンに接続して圧抜を行い、計量用サーボモータ35を回転してもスクリュ33を後退させることもできる。
【0035】
図示しない制御装置からの信号により計量用サーボモータ35が駆動されると駆動プーリ57、ベルト59、従動プーリ58を介して駆動力が伝達されスクリュ33が回転される。スクリュ33は設定回転数で回転され、材料供給孔47,48から射出プランジャ16の内孔45内に供給された樹脂材料をフィードゾーン、コンプレッションゾーン、メタリングゾーンを経て前方に送ることにより溶融状態の溶融樹脂とする。そして前記溶融樹脂は後方のスクリュ33側からの圧力により連通孔61を通過して前方の加熱バレル18の内孔23内に供給される。この際に射出用サーボモータ28,28のトルク制御により可動ブロック36に前進方向の力を付与して背圧制御が行われる(ただし背圧0制御の場合も含む)。加熱バレル18の内孔23内には溶融樹脂が満たされているにもかかわらず更にスクリュ回転により溶融樹脂が供給されるので、射出プランジャ16とスクリュ33は共に徐々に後退する。そして所定の計量完了位置まで射出プランジャ16が後退すると計量用サーボモータ35の回転を停止する。その後にスクリュ前後進機構53の油圧シリンダ55,55を作動させて射出プランジャ16に対してスクリュ33を前進させる。そのことによりスクリュ33の前端の当接面63が射出プランジャ16のテーパー面63に当接して流路が閉鎖されシールが完成する。なおその際にも射出プランジャ16の内孔45内の溶融樹脂が加熱バレル18内に僅かに供給される場合があるので、スクリュ前進後の射出プランジャ16の位置が計量完了位置となるように制御してもよい。本実施形態では射出工程の開始前に射出プランジャ16とスクリュ33の間のシールが行われるので、特許文献1、特許文献2のように射出工程の開始によりスクリュが前進した際に初めてリングバルブが後退してシールされるものよりも射出量を安定させることができる。
【0036】
次に型締装置側で成形品の冷却工程が完了すると型開、成形品取出、型閉、型締などの工程が行われ、型締完了が確認されると射出工程となる。射出工程では図示しない制御装置からの信号により射出用サーボモータ28,28が駆動されると駆動プーリ30,30、ベルト31,31、従動プーリ32,32を介してボールねじ21,21が定位置で回転される。ボールねじ21,21の回転と共にボールねじナット39,39とハウジングブロック37と射出プランジャ16が設定された射出速度で前方に向けて移動され、同時にスクリュ保持ブロック38とスクリュ33も移動される。この際に上記したように射出プランジャ16の内孔45とスクリュ33の間は当接されシールされているから両者は一体となって前進し、溶融樹脂が加熱バレル18の内部から射出プランジャ16の内部に向けて逆流することはない。
【0037】
そして加熱バレル18に対して射出プランジャ16とスクリュ33が所定の位置まで前進したことが検出されるかまたはロードセル40に所定の力が付与されたことが検出されると保圧工程となり、保圧工程が完了すると型締装置の側は上記の通り再び冷却工程となり、射出装置12の側では再び次の計量工程が開始される。
【0038】
上記の実施形態の変形例として、後方ブロック19に配設される射出用サーボモータは1個または3個以上であってもよい。射出用サーボモータが1個の場合は、射出用サーボモータは後方ブロックの中央上部に固定され、ボールねじも後方ブロックの中央のスクリュ33の軸部34の延長線上に軸支される。そして射出用サーボモータの駆動プーリとボールねじに固定された従動プーリにはベルト(タイミングベルト)が掛け渡される。そして可動ブロックの後部分の中央のスクリュ33の軸部34の延長線上にボールねじナットが固定され、ボールねじがボールねじナットに挿通される。可動ブロックの計量用モータによるスクリュの駆動部分は図1等の実施形態と同じである。しかしこの構造は、ボールねじナットを可動ブロックの後部に突出して設ける上に、可動ブロック後退時に前記ボールねじがボールねじナットから前方に突き出すスペースが必要となる。従って複数の射出用サーボモータ28,28を後方ブロック19の両側寄りの上部にそれぞれ配置した図1ないし図3の実施形態の射出装置12のほうが、射出用サーボモータが1基の射出装置よりも射出装置12の全長が短くなる場合が多い。
【0039】
また本実施形態の射出装置12ではスクリュ前後進機構53は、スクリュ33を射出プランジャ16に向けて僅かなストロークだけ前後進させシールをする目的であるが次のようなものでもよい。即ち計量工程においてスクリュ33の回転とともに射出プランジャ16内のスクリュ33が後退して射出プランジャ内のスクリュ33の前方にも溶融樹脂が貯留されるものでもよい。この場合上記の連通孔61の部分に開閉弁を設けることにより種々の使い方ができる。即ち連通孔61の開閉弁を閉鎖して保圧中に計量工程を開始したり、計量工程において加熱バレル18内に溶融樹脂が充満されてから更にスクリュ33を後退させて射出プランジャ16内に溶融樹脂を貯留するなどの使い方をすることができる。これらのケースではスクリュ33には逆流防止弁を設けるようにしてもよい。またスクリュ前後進機構33の油圧シリンダ等のアクチュエータもストロークおよび出力の大きなものが採用されることが望ましい。
【0040】
本発明については、一々列挙はしないが、上記した本実施形態のものに限定されず、上記の各記載を組み合わせたものや当業者が本発明の趣旨を踏まえて追加や変更を加えたものについても、適用されることは言うまでもないことである。本発明の射出成形機は、竪方向に型開閉される竪型型締装置を備えたものでもよい。」
「【符号の説明】
【0041】
11 射出成形機
12 射出装置
14 基台
15 前方ブロック
16 射出プランジャ
18 加熱バレル
19 後方ブロック
21 ボールねじ
28 射出用サーボモータ
33 スクリュ
35 計量用サーボモータ
36 可動ブロック
37 ハウジングブロック
38 スクリュ保持ブロック
39 ボールねじナット
53 スクリュ前後進機構
55 油圧シリンダ」
「【図1】

【図2】

【図3】

【図4】



(4)サポート要件の判断
本件特許の発明の詳細な説明の段落【0002】ないし【0006】によると、本件特許発明1及び4の解決しようとする課題(以下、「本件特許発明の課題」という。)は、「加熱バレルに挿入された筒状の射出プランジャ内にスクリュを回転可能に配置し前記スクリュの回転により溶融材料を加熱バレル内に供給するとともに、加熱バレルに対して射出プランジャとスクリュを前進させて加熱バレル内の溶融材料を射出する射出装置において、装置の全長を短くするかまたは装置のメンテナンスを容易にした射出装置を提供すること」である。
そして、発明の詳細な説明の同【0011】には、「本発明の射出装置は、加熱バレルに挿入された筒状の射出プランジャ内にスクリュを回転可能に配置し前記スクリュの回転により溶融材料を加熱バレル内に供給するとともに、加熱バレルに対して射出プランジャとスクリュを前進させて加熱バレル内の溶融材料を射出する射出装置において、基台上に立設され加熱バレルが配設される前方ブロックと、基台上で前方ブロックに対してスクリュの軸方向に移動可能に設けられ計量モータが配設される可動ブロックとが備えられ、前記可動ブロックは、少なくとも射出プランジャが固定されるとともに材料供給孔が形成されたハウジングブロックと該ハウジングブロックの後方側に設けられスクリュが保持されるスクリュ保持ブロックの2枚のブロックを備えており、前記ハウジングブロックとスクリュ保持ブロックの間を接続して可動ブロックにはスクリュの軸部およびその延長線上の位置以外の位置にスクリュ前後進機構が備えられているので装置の全長を短くするかまたは装置のメンテナンスが容易になる。」、同【0027】に「また計量用サーボモータ35やスクリュ前後進機構53の油圧シリンダ55,55がスクリュ33の軸部34およびその延長線上の位置に配置されていないので、射出装置12の全長が短くできるとともに、スクリュ33のメンテナンス時にスクリュを前方または後方に抜き取る作業が容易となる。」と記載されている。
そうすると、当業者は、「加熱バレルに挿入された筒状の射出プランジャ内にスクリュを回転可能に配置し前記スクリュの回転により溶融材料を加熱バレル内に供給するとともに、加熱バレルに対して射出プランジャとスクリュを前進させて加熱バレル内の溶融材料を射出する射出装置において、基台上に立設され加熱バレルが配設される前方ブロックと、基台上で前方ブロックに対してスクリュの軸方向に移動可能に設けられ計量モータが配設される可動ブロックとが備えられ、前記可動ブロックは、少なくとも射出プランジャが固定されるとともに材料供給孔が形成されたハウジングブロックと該ハウジングブロックの後方側に設けられスクリュが保持されるスクリュ保持ブロックの2枚のブロックを備えており、前記ハウジングブロックとスクリュ保持ブロックの間を接続して可動ブロックにはスクリュの軸部およびその延長線上の位置以外の位置にスクリュ前後進機構を備える」という特定事項により、本件発明の課題を解決できると認識するものである。
そして、本件件特許発明1は、上記特定事項を有するものであるから、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件発明の課題を解決できるものである。
したがって、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件特許発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
また、本件特許発明4についても同様である。
よって、本件特許発明1及び4に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件を充足する。

(5)異議申立人の主張について
異議申立人は、特許異議申立書において、上記第4 1(2)でア及びイの主張をしている。しかしながら、上記(4)において示したように、本件特許発明1及び4は、本件発明の課題を解決できると認識される上記特定事項を有するものであるから、「後方ブロック19」が本件件特許発明1及び4の発明特定事項にないことをもって、本件発明の課題が解決出来ないと言うことはできない。
よって、異議申立人の主張は首肯できない。

(6)申立理由2についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1及び4に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、申立理由2によっては取り消すことはできない。

2 申立理由3(実施可能要件)について
(1)判断基準
本件特許発明1及び4は何れも物の発明であるところ、物の発明の実施とは、その物の生産及び使用等をする行為であるから、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明において、当業者が、発明の詳細な記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があることを要する。

(2)発明の詳細な説明の記載
発明の詳細な説明の記載は、上記1(3)のとおりである。

(3)実施可能要件の判断
本件特許の発明の詳細な説明の段落【0013】ないし【0041】及び各図面には、本件特許発明1及び4の各発明特定事項についての具体的な記載がある。
したがって、発明の詳細な説明において、当業者が、発明の詳細な記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1及び4に係る射出装置を生産し、使用することができる程度の記載があるといえる。
よって、本件特許発明1及び4に関して、発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を充足する。

(4)異議申立人の主張について
異議申立人は、特許異議申立書において、上記第4 1(3)でア及びイ主張をしている。しかしながら、上記(3)で示したように、本件件特許発明1及び4に関して、発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を充足するものである。
そして、ベアリング64が備えられたスクリュコネクタ51を、スクリュ保持ブロック38から引き抜く際、それら部材が大重量物であろうと、当業者であれば、それら部材はクレーン等の手段により、適宜保持することにより過度の試行錯誤を要することなく、当業者は引き抜くことが可能であると認められる。
なお、異議申立人の上記主張ア及びイは、本件特許発明と本件特許発明の課題との関係性に基づく主張であることから、サポート要件に関するものであって、実施可能要件に関するものではないため、異議申立人の上記主張は失当である。また、本件特許発明1及び4に関して、特許請求の範囲の記載がサポート要件を充足することは上記1で述べたとおりである。
よって、異議申立人の上記主張は首肯できない。

(5)申立理由3についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1及び4に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、申立理由3によっては、取り消すことはできない。

第7 結語
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由、及び、特許異議申立書に記載した申立理由によっては、本件特許の請求項1及び4に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件特許の請求項1及び4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、本件特許の請求項2及び3に係る特許は、訂正により削除されたため、異議申立人による請求項2及び3に係る特許異議の申立ては、いずれも、申立ての対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱バレルに挿入された筒状の射出プランジャ内にスクリュを回転可能に配置し前記スクリュの回転により溶融材料を加熱バレル内に供給するとともに、加熱バレルに対して射出プランジャとスクリュを前進させて加熱バレル内の溶融材料を射出する射出装置において、
基台上に立設され加熱バレルが配設される前方ブロックと、
基台上で前方ブロックに対してその後方側のみにスクリュの軸方向に移動可能に設けられ1基の計量用サーボモータが配設される可動ブロックとが備えられ、
前記可動ブロックは、少なくとも射出プランジャが固定されるとともに幅方向の中央には材料供給孔が上面から前記射出プランジャの材料供給孔に向けて垂直方向に形成され該射出プランジャが固定される部分の両側にはそれぞれ射出用サーボモータにより駆動されるボールねじが挿通されるボールねじナットが配設されたハウジングブロックと、該ハウジングブロックの後方側に設けられスクリュが保持されるスクリュ保持ブロックの2枚のブロックを備えており、
前記スクリュ保持ブロックはスクリュの軸部およびその延長線上の位置以外に前記1基の計量用サーボモータのモータ本体が前方に向けて固定されるとともに、該1基の計量用サーボモータの駆動軸に固定される駆動プーリと該スクリュ保持ブロックの後面側に設けられ前記スクリュの軸部に固定される従動プーリとの間にはベルトが掛け渡されており、
前記ハウジングブロックは基台上のガイドレールとハウジングブロックの脚部からなるリニアガイドによって前後方向に移動可能にガイドされており、
前記ハウジングブロックとスクリュ保持ブロックの間を接続して可動ブロックにはスクリュの軸部およびその延長線上の位置以外の位置にスクリュ前後進機構が備えられたことを特徴とする射出装置。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
前記ハウジングブロックとスクリュ保持ブロックの2枚の可動ブロックのうちハウジングブロックは基台上のガイドレールとハウジングブロックの脚部からなるリニアガイドによって前後方向に移動可能にガイドされ、スクリュ保持ブロックは基台上のハウジングブロックの後部から突出形成された2本のガイド棒により移動可能にガイドされていることを特徴とする請求項1に記載の射出装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-11-05 
出願番号 P2017-237353
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (B29C)
P 1 651・ 537- YAA (B29C)
P 1 651・ 536- YAA (B29C)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 須藤 康洋
特許庁審判官 細井 龍史
植前 充司
登録日 2020-02-26 
登録番号 6666637
権利者 株式会社日本製鋼所
発明の名称 射出装置  
代理人 家入 健  
代理人 家入 健  

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