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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B41M
管理番号 1381642
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-02-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-08-04 
確定日 2021-11-10 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6647497号発明「インクジェット印刷物の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6647497号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜11〕について訂正することを認める。 特許第6647497号の請求項2、3、6、8ないし11に係る特許を維持する。 特許第6647497号の請求項1、4、5、7に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続等の経緯
特許第6647497号の請求項1〜11に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願(特願2019−527480号)は、2019年(平成31年)2月20日(先の出願に基づく優先権主張 平成30年5月7日)を国際出願日とする出願であって、令和2年1月17日にその特許権の設定登録がされ、令和2年2月14日に特許掲載公報が発行された。
本件特許について、特許掲載公報の発行の日から6月以内である令和2年8月4日に特許異議申立人 大塚博明(以下「特許異議申立人」という。)から全請求項に対して特許異議の申立てがされた。その後の手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。
令和 2年11月27日付け:取消理由通知書
令和 3年 1月26日付け:意見書(特許権者)
令和 3年 3月31日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和 3年 6月 3日付け:訂正請求書
令和 3年 6月 3日付け:意見書(特許権者)

なお、特許異議申立人に対して、令和3年7月13日付け通知書により訂正請求があった旨の通知(特許法120条の5第5項の通知)をしたが、特許異議申立人から意見書は提出されなかった。


第2 本件訂正請求について
1 請求の趣旨
令和3年6月3日にした訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)の趣旨は、「特許第6647497号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1〜11について訂正することを求める。」というものである。

2 訂正の内容
本件訂正請求において特許権者が求める訂正の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正された箇所を示す。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に、
「前記基材の材質は、金属であり、」
と記載されているのを、
「前記基材の材質は、金属であり、前記表面は、金属が露出している面であり、」
に訂正する。
請求項2の記載を引用して記載された請求項3、請求項6、請求項8〜請求項11についても、同様に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項2に、
「前記低光沢領域のISO 25178で規定される算術平均高さSaが0.05〜5.0μmであり、
前記低光沢領域のISO 25178で規定される最大高さSzが0.5〜40μmであり、」
と記載されているのを、
「前記低光沢領域のISO 25178で規定される算術平均高さSaが0.160〜0.454μmであり、
前記低光沢領域のISO 25178で規定される最大高さSzが1.939〜16.403μmであり、」
に訂正する。
請求項2の記載を引用して記載された請求項3、請求項6、請求項8〜請求項11についても、同様に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項2に、
「前記硬化型インクジェットインクは光硬化型であり、」
と記載されているのを、
「前記硬化型インクジェットインクは光硬化型であり、前記硬化型インクジェットインクの粘度は5〜40mPa・sであり、」
に訂正する。
請求項2の記載を引用して記載された請求項3、請求項6、請求項8〜請求項11についても、同様に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項3に、
「請求項1または2に記載のインクジェット印刷物の製造方法であって、」
と記載されているのを、
「請求項2に記載のインクジェット印刷物の製造方法であって、」
に訂正する。
請求項3の記載を引用して記載された請求項6、請求項8〜請求項11についても、同様に訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項4を削除する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項5を削除する。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項6に、
「請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット印刷物の製造方法であって、」
と記載されているのを、
「請求項2または3に記載のインクジェット印刷物の製造方法であって、」
に訂正する。
請求項6の記載を引用して記載された請求項8〜請求項11についても、同様に訂正する。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項7を削除する。

(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項8に、
「請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクジェット印刷物の製造方法であって、」
と記載されているのを、
「請求項2、3または6に記載のインクジェット印刷物の製造方法であって、」
に訂正する。
請求項8の記載を引用して記載された請求項9〜請求項11についても、同様に訂正する。

(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項9に、
「請求項1〜8のいずれか1項に記載のインクジェット印刷物の製造方法であって、」
と記載されているのを、
「請求項2、3、6または8に記載のインクジェット印刷物の製造方法であって、」
に訂正する。
請求項9の記載を引用して記載された請求項10〜請求項11についても、同様に訂正する。

(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項10に、
「請求項1〜9のいずれか1項に記載のインクジェット印刷物の製造方法であって、」
と記載されているのを、
「請求項2、3、6、8または9に記載のインクジェット印刷物の製造方法であって、」
に訂正する。
請求項10の記載を引用して記載された請求項11についても、同様に訂正する。

(13)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項11に、
「請求項1〜10のいずれか1項に記載のインクジェット印刷物の製造方法であって、」
と記載されているのを、
「請求項2、3、6、8、9または10に記載のインクジェット印刷物の製造方法であって、」
に訂正する。

(14)一群の請求項について
本件訂正請求は、一群の請求項である請求項1〜請求項11に対して請求されたものである。

3 訂正の適否
(1)訂正事項1について
訂正事項1による訂正は、特許請求の範囲の請求項1を削除する訂正である。
そうすると、訂正事項1による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当する。
また、訂正事項1による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。

(2)訂正事項2について
訂正事項2による訂正は、請求項2に記載された「光沢のある基材(ただし、透明基材を除く)の表面」を「金属が露出している面」と限定する訂正である。そして、この点は、請求項2の記載を引用して記載された請求項3、請求項6、請求項8〜請求項11についてみても、同じである。
そうすると、訂正事項2による訂正は、120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とする訂正に該当する。
また、訂正事項2による訂正は、本件特許の明細書の【0028】、【0029】及び【0102】の記載から導き出すことができる事項であり、当業者によって、明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。
そうすると、訂正事項2による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正である。
加えて、訂正事項2による訂正によって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとならないことは明らかである。
そうすると、訂正事項2による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。

(3)訂正事項3について
訂正事項3による訂正は、請求項2に記載された「算術平均高さSa」の数値範囲を、「0.05〜5.0μm」から「0.160〜0.454μm」に限定し、また、「最大高さSz」の数値範囲を、「0.5〜40μm」から「1.939〜16.403μm」に限定する訂正である。そして、この点は、請求項2の記載を引用して記載された請求項3、請求項6〜請求項11についてみても、同じである。
そうすると、訂正事項3による訂正は、120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とする訂正に該当する。
また、訂正事項3による訂正は、本件特許の明細書の【0117】【表4】及び【0134】【表9】の記載から導き出すことができる事項であり、当業者によって、明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。
そうすると、訂正事項3による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正である。
加えて、訂正事項3による訂正によって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとならないことは明らかである。
そうすると、訂正事項3による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。

(4)訂正事項4について
訂正事項4による訂正は、請求項2に記載された「硬化型インクジェットインク」の粘度を、「5〜40mPa・s」と限定する訂正である。そして、この点は、請求項2の記載を引用して記載された請求項3、請求項6、請求項8〜請求項11についてみても、同じである。
そうすると、訂正事項4による訂正は、120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とする訂正に該当する。
また、訂正事項4による訂正は、本件特許の明細書の【0088】の記載から導き出すことができる事項であり、当業者によって、明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。
そうすると、訂正事項4による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正である。
加えて、訂正事項4による訂正によって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとならないことは明らかである。
そうすると、訂正事項4による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。

(5)訂正事項5について
訂正事項5による訂正は、訂正事項1による訂正で特許請求の範囲の請求項1を削除することに伴って、これと整合するように請求項3の記載を改める訂正である。
そうすると、訂正事項5による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正に該当する。
また、訂正事項5による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。

(6)訂正事項6について
訂正事項6による訂正は、特許請求の範囲の請求項4を削除する訂正である。
そうすると、訂正事項6による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当する。
また、訂正事項6による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。

(7)訂正事項7について
訂正事項7による訂正は、特許請求の範囲の請求項5を削除する訂正である。
そうすると、訂正事項7による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当する。
また、訂正事項7による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。

(8)訂正事項8について
訂正事項8による訂正は、訂正事項1、6及び7による訂正で、それぞれ特許請求の範囲の請求項1、4及び5を削除することに伴って、これと整合するように請求項6の記載を改める訂正である。
そうすると、訂正事項8による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正に該当する。
また、訂正事項8による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。

(9)訂正事項9について
訂正事項9による訂正は、特許請求の範囲の請求項7を削除する訂正である。
そうすると、訂正事項9による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当する。
また、訂正事項9による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。

(10)訂正事項10について
訂正事項10による訂正は、訂正事項1、6、7及び9による訂正で、それぞれ特許請求の範囲の請求項1、4、5及び7を削除することに伴って、これと整合するように請求項8の記載を改める訂正である。
そうすると、訂正事項10による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正に該当する。
また、訂正事項10による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。

(11)訂正事項11について
訂正事項11による訂正は、訂正事項1、6、7及び9による訂正で、それぞれ特許請求の範囲の請求項1、4、5及び7を削除することに伴って、これと整合するように請求項9の記載を改める訂正である。
そうすると、訂正事項11による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正に該当する。
また、訂正事項11による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。

(12)訂正事項12について
訂正事項12による訂正は、訂正事項1、6、7及び9による訂正で、それぞれ特許請求の範囲の請求項1、4、5及び7を削除することに伴って、これと整合するように請求項10の記載を改める訂正である。
そうすると、訂正事項12による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正に該当する。
また、訂正事項12による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。

(13)訂正事項13について
訂正事項13による訂正は、訂正事項1、6、7及び9による訂正で、それぞれ特許請求の範囲の請求項1、4、5及び7を削除することに伴って、これと整合するように請求項11の記載を改める訂正である。
そうすると、訂正事項13による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正に該当する。
また、訂正事項13による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。

4 まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書、同条9項に置いて準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
よって、結論に記載のとおり、特許第6647497号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜11〕について訂正することを認める。


第3 本件特許発明
前記「第2」のとおり、本件訂正請求による訂正は認められることとなったから、本件特許の請求項2、請求項3、請求項6及び請求項8〜請求項11に係る発明(以下、請求項の番号とともに「本件特許発明1」などという。)は、特許請求の範囲の請求項2、請求項3、請求項6及び請求項8〜請求項11に記載された事項によって特定されるとおりの、以下のものである。

「【請求項2】
光沢のある基材(ただし、透明基材を除く)の表面に、少なくとも1200μm×1200μmの広さを有し、硬化型インクジェットインクの硬化物による凹凸が露出して存在することにより前記基材そのものの表面よりも低光沢となっている低光沢領域が設けられたインクジェット印刷物の製造方法であって、
前記低光沢領域内の1200μm×1200μmの領域を観察すると、硬化型インクジェットインクの硬化物による凸部が複数確認され、
前記基材の材質は、金属であり、前記表面は、金属が露出している面であり、
前記低光沢領域のISO 25178で規定される算術平均高さSaが0.160〜0.454μmであり、
前記低光沢領域のISO 25178で規定される最大高さSzが1.939〜16.403μmであり、
前記低光沢領域は、25℃での表面張力が20〜50mN/mである硬化型インクジェットインクの液滴を前記基材の表面に付与するインク付与工程と、前記表面に付与されたインクの液滴を硬化させる硬化工程とにより形成され、
前記硬化型インクジェットインクは光硬化型であり、前記硬化型インクジェットインクの粘度は5〜40mPa・sであり、
前記硬化工程は、前記表面に付与されたインクの液滴に対して光を照射する光照射工程であり、
前記インク付与工程において、前記液滴が前記基材の表面に付与されてから、前記光照射工程の開始までの時間は0.1〜3.0秒であり、
前記低光沢領域においては、前記基材の表面の30〜80%が、インクの液滴の硬化物により被覆されている、インクジェット印刷物の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載のインクジェット印刷物の製造方法であって、
照射される光の積算光量が50〜10000mJ/cm2である、インクジェット印刷物の製造方法。」
「【請求項6】
請求項2または3に記載のインクジェット印刷物の製造方法であって、
前記インク付与工程において、前記基材に1000〜100000個/cm2の密度でインクの液滴を付与する、インクジェット印刷物の製造方法。」
「【請求項8】
請求項2、3または6に記載のインクジェット印刷物の製造方法であって、
前記硬化型インクジェットインクが、カチオン重合型である、インクジェット印刷物の製造方法。
【請求項9】
請求項2、3、6または8に記載のインクジェット印刷物の製造方法であって、
前記インク付与工程におけるインクの液滴の体積が2〜50pLである、インクジェット印刷物の製造方法。
【請求項10】
請求項2、3、6、8または9に記載のインクジェット印刷物の製造方法であって、
前記低光沢領域が、疑似エッチング調の外観を示す、インクジェット印刷物の製造方法。
【請求項11】
請求項2、3、6、8、9または10に記載のインクジェット印刷物の製造方法であって、
前記硬化型インクジェットインクは、着色剤を含まないクリヤーインクである、インクジェット印刷物の製造方法。」


第4 取消しの理由の概要
令和3年3月31日付け取消理由通知書(決定の予告)により特許権者に通知した取消しの理由は、概略、以下のとおりである。
理由(進歩性)本件特許の請求項1〜11に係る発明は、先の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基づいて、先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜11に係る特許は、いずれも、特許法29条の規定に違反してされたものである。
・甲第1号証:特開2014−123033号公報(以下「甲1」という。)
・甲第2号証:特開2014−80014号公報(以下「甲2」という。)
(当合議体注:甲第1号証及び甲第2号証は、いずれも主引用例である。)


第5 当合議体の判断
1 引用文献の記載・引用発明
(1)甲1の記載
取消しの理由で引用された甲1(特開2014−123033号公報)には、次の事項が記載されている。なお、下線は当合議体が付したものであり、発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。

ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材表面上の一部に形成されたレンズ状粒子とを備え、該レンズ状粒子が形成された基材表面部分を部位(A)とし、該レンズ状粒子が形成されていない基材表面部分を部位(B)とする複合材料であり、前記レンズ状粒子が、活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物から得られ、前記部位(A)の光沢度が、入射角20°から85°に亘って、前記部位(B)の光沢度の値より20%以上低いことを特徴とする複合材料。
【請求項2】
前記レンズ状粒子は、平均高さが1μm〜100μmで且つ平均直径が1μm〜1000μmであることを特徴とする請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
インクジェットプリンタによって、活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物を基材表面上の一部に吐出し、次いで、該活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物を硬化させ、レンズ状粒子を形成させることを特徴とする請求項1又は2に記載の複合材料の製造方法。」

イ 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材とレンズ状粒子との複合材料及び該複合材料の製造方法に関し、特には、高意匠なデザインを表示させることが可能な複合材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ステンレス、アルミニウム、チタニウムといった金属板は、物理的に研磨したり、化学薬品でエッチング処理を行ったりすることで、該金属板の表面にデザインが施された表示物が付与されている。特に高意匠なデザインが要求される場合には、エッチング処置を行い特定の金属板表面を溶解し、金属板上に凹面を形成することで精細な模様が形成される。エッチング処理は、化学薬品により金属板表面を腐食し加工する処理方法であり、具体的には、最初に金属板表面のエッチングを行わない部位をマスキングしたうえで、腐食液(エッチング液)を用いてマスキングされていない金属板表面部位を溶解することにより金属板表面に凹面を形成する方法である。金属板の種類によって、適切なエッチング液が選択され、塩酸、硝酸、硫酸銅、それらの混合液などの化学薬品が用いられる。一方、ガラス板表面にデザインを施す際にも、同様に、マスキング工程及びその後の化学薬品によるエッチング工程を含むエッチング処理をガラス板表面に行うことで、ガラス表面に凹面を形成することが可能である。例えば、特許文献1では、石英ガラスの表面処理に、フッ酸がエッチング液として使用されている。また、エッチング液を使用する代わりに、砂などの研磨剤を高速で基材に衝突させて基材に精細な模様を形成する方法としてサンドブラスト処理がある。研磨剤としては、砂の他、アルミナ、シリカなど多様な粒子が使用される。具体的には、エッチング処理と同様に、基材表面をマスキングしておいて、マスキングされていない部位に粒子を衝突させて表面を削る方法である。このように高意匠なデザインを金属板やガラス板表面に形成する場合、マスキング工程とエッチング工程又はサンドブラスト工程とを行う必要があり、表示物中の解像度は、マスキングパターンの精度や削り深さに依存する。このため、高解像度の画像などを形成するには、レーザー照射装置、サンドブラスターなどの大規模な設備導入や、マスキング剤の選定など熟練した加工技術が必要である。また、処理後のエッチング液やマスキング剤は、産業廃棄物となり、環境負荷が大きいため課題となっている。
【0003】
一方で、基材表面上にレンズ状粒子を形成させることにより凹凸面を形成する技術が報告されている。例えば、特許文献2には、LCD用スペーサー、光拡散シートや防眩フィルムに適した特異な形状を有する樹脂粒子及びその製造方法が記載されている。また、特許文献3には、特定のアスペクト比を有する微粒子を基材上に配置することによって、光透過性に優れた光学フィルム及びその製造方法が記載されている。しかしながら、特許文献2に記載の樹脂粒子及び特許文献3に記載の光学フィルムは、専ら光学的な特徴を発現することを目的としており、高意匠なデザインを表示することを目的としていない。」

ウ 「【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、高意匠なデザインを施すことが可能な基材とレンズ状粒子との複合材料を提供することにある。また、本発明の他の目的は、高意匠なデザインを施すことが可能な基材とレンズ状粒子との複合材料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物から得られるレンズ状粒子を基材表面上の一部に形成させる際に、レンズ状粒子が形成される基材表面部分の光沢度と他の基材表面部分の光沢度を調整することによって、基材表面上に高意匠なデザインを表示できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
・・・省略・・・
【発明の効果】
【0010】
本発明の複合材料によれば、高意匠なデザインを表示させることが可能な基材とレンズ状粒子との複合材料を提供することができる。
【0011】
本発明の複合材料の製造方法によれば、高意匠なデザインを表示させることが可能な基材とレンズ状粒子との複合材料の製造方法を提供することができる。また、本発明の複合材料の製造方法では、インクジェットプリンタを用いて活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物を基材表面上の一部に吐出すればよく、エッチング処理及びサンドブラスト処理のための大規模設備が不要であるため、これら処理の優れた代替技術となる。更に、エッチング液やマスキング剤の使用及び基材の研磨が不要であるため、環境負荷が低い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】レンズ状粒子の一例の模式的平面図である。
【図2】図1に示すレンズ状粒子の模式的側面図である。
【図3】実施例1の複合材料の基材表面上に施されるデザインを示す。
【図4】実施例1の複合材料の平面図を示す。
【図5】比較例1の複合材料の基材表面上に施されるデザインを示す。
【図6】比較例1の複合材料の平面図を示す。」

エ 「【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の複合材料を詳細に説明する。本発明の複合材料は、基材と、該基材表面上の一部に形成されたレンズ状粒子とを備え、該レンズ状粒子が形成された基材表面部分を部位(A)とし、該レンズ状粒子が形成されていない基材表面部分を部位(B)とする複合材料であり、前記レンズ状粒子が、活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物から得られ、前記部位(A)の光沢度が、入射角20°〜85°に亘って、前記部位(B)の光沢度の値より20%以上低いことを特徴とする。
【0014】
本発明の複合材料は、レンズ状粒子が形成された基材表面部分(部位A)の光沢度が、入射角20°〜85°に亘って、レンズ状粒子が形成されていない基材表面部分(部位B)の光沢度の値より20%以上低いことを要する。上記特定した入射角の範囲に亘って部位Aの光沢度が部位Bの光沢度の値より20%以上低いと、光沢度の差が顕著になり、基材表面上に高意匠なデザイン、具体的にはエッチング調のデザインを表示させることができる。一方、部位Aの光沢度の値と部位Bの光沢度の値の差が20%未満であると、光沢度の差が小さすぎるため、基材表面上に高意匠なデザインを表示することができない。本発明の複合材料においては、レンズ状粒子に対する光散乱によって、レンズ状粒子が形成された基材表面部分(部位A)の光沢度を容易に調整できるため、入射角20°〜85°に亘って部位Aの光沢度を部位Bの光沢度の値より20%以上低くすることが可能である。なお、本発明において、光沢度とは、JIS Z 8741に準拠して測定される鏡面光沢度を意味する。
【0015】
本発明の複合材料を構成するレンズ状粒子は、平面部と曲面部とからなるレンズ形状を有する限り制限されるものではないが、具体例としては、図1及び2に示されるような、平面部(底面部分)1aと曲面部1bとからなるレンズ状粒子が挙げられる。なお、図1は、本発明の複合材料を構成するレンズ状粒子の一例の模式的平面図であり、図2は、図1に示すレンズ状粒子の模式的側面図である。
【0016】
本発明の複合材料において、レンズ状粒子は、平均高さが1μm〜100μmで且つ平均直径が1μm〜1000μmであることが好ましい。レンズ状粒子の平均高さ及び平均直径が上記特定した範囲内であれば、映り込みを防止することができ、更には、目視による官能評価において、優れた意匠性を表面凹凸に付与することができる。また、レンズ状粒子の平均高さが1μm未満で且つ平均直径が1μm未満では、光の散乱効果が得られ難くなるため、防眩効果を発揮し難く、また、光沢度の調整が困難な場合がある。一方、レンズ状粒子の平均高さが100μmを超え且つ平均直径が1000μmを超えると、意匠性を低減し、所望の外観が得られない恐れもある。なお、レンズ状粒子の平均高さは、1μm〜50μmの範囲が好ましく、2μm〜30μmの範囲が更に好ましい。また、レンズ状粒子の平均直径は、10μm〜500μmの範囲が好ましく、200μm〜300μmの範囲が更に好ましい。
【0017】
本発明において、レンズ状粒子の高さとは、図2に示されるように、平面部1aからのレンズ状粒子の高さHであり、レンズ状粒子の直径とは、平面部外周上の2点を結ぶ最大距離である。例えば、図1に示されるように、平面部が長径Dと短径dの楕円形状である場合、長径Dが、レンズ状粒子の直径となる。なお、上記平面部の形状は、特に限定されず、楕円形状でもよいし、円形状であってもよい。
【0018】
例えば、上記レンズ状粒子の平面部を円形状にすることで、レンズ状粒子の形状を半球状にすることができるが、本発明において、レンズ状粒子の形状は、これに限定されるものではない。図2に示す平面部と曲面部のなす角αは、1度から179度までの幅があり、この角度が小さい程、レンズ状粒子が扁平形状に近くなり、一方、大きくなる程、レンズ状粒子が球状に近くなる。
【0019】
本発明の複合材料において、上記レンズ状粒子は、基材表面に配置されるが、このレンズ状粒子が配置された領域(即ち、部位A)における基材1平方インチ当たりのレンズ状粒子の個数は、50〜360000であることが好ましい。該レンズ状粒子が基材1平方インチ当たり50個未満では、光の散乱効果が十分に得られず、防眩効果を発揮し難く、また、光沢度の調整が困難になる恐れもある。また、該レンズ状粒子が基材1平方インチ当たり360000個を超えても、レンズ状粒子同士が近づき過ぎるために十分な光の散乱効果が得られず、レンズ状粒子が形成されていない基材表面部分(部位B)と光沢度の差が小さくなり、高意匠なデザインを表示できない場合がある。
【0020】
本発明の複合材料において、上記レンズ状粒子は、本発明の目的を損なわない範囲で、基材の屈曲の程度や表面積に応じて自由に配置できる。具体的には、複数のレンズ状粒子が、独立して配置されてもよいし、接触して配置されてもよい。
【0021】
本発明の複合材料において、上記レンズ状粒子が配置された基材面における部位Aの占有面積は、該基材面の面積の99%以下であることが好ましい。該部位Aの占有面積が99%を超えると、レンズ状粒子同士が近づき過ぎるために十分な光の散乱効果が得られず、レンズ状粒子が形成されていない基材表面部分(部位B)との光沢度の差が小さくなり、高意匠なデザインを表示できない場合がある。
【0022】
本発明の複合材料において、上記レンズ状粒子は、活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物から得られることを要する。なお、活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物とは、活性エネルギー線、例えば紫外LED、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等の光源から発せられる紫外線を照射することで速やかに硬化するインクジェットプリンタ用のインク組成物を意味する。インクジェット塗装方式にて、活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物を吐出し、その液滴が基材に着弾した直後、速やかにこれを硬化させることで、所望の直径及び高さを有するレンズ状粒子を得ることが可能である。
【0023】
上記活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物は、活性エネルギー線の照射により速やかに硬化できるインクであれば特に際限なく適用可能であるが、硬化性、粘度及び耐候性の観点から、官能基数が1〜2のラジカル重合性モノマー(a)、光重合開始剤(b)及び光安定剤(c)を含有することが好ましい。
・・・省略・・・
【0041】
上記活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物は、その粘度が、1mPa・s〜2000mPa・sが好ましく、1mPa・s〜100mPa・sが更に好ましく、1〜20mPa・sが特に好ましい。上記インク組成物の粘度が1mPa・s〜2000mPa・sの範囲内であれば、好適なレンズ形状、特に半球状のレンズ状粒子が更に容易に得られる。即ち、インク組成物の粘度が1mPa・s未満では、所望のレンズ形状、例えば半球状のレンズ状粒子を形成することが困難になる場合があり、一方で、インク組成物の粘度が2000mPa・sを超えると、インク組成物の流動性が低くなり、印刷が困難になる場合がある。
【0042】
上記活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物は、その表面張力が、20〜40m N/mであることが好ましく、22〜35mN/mであることが特に好ましい。上記インク組成物の表面張力が20〜40mN/mの範囲内であれば、好適なレンズ形状、特に半球状のレンズ状粒子が更に容易に得られる。また、インク組成物の表面張力が40mN/mを超えると、基材に着弾させたコーティング材の接触角が170度を超える場合があり、この場合、着弾したインク組成物の形状が球状に近づくため、該インク組成物が着弾位置から移動したり、基材との密着性が低下したりする恐れがある。よって、レンズ状粒子の形状や基材上におけるレンズ状粒子の配置を制御することが困難になり得る。一方、インク組成物の表面張力が20mN/m未満では、基材に着弾させたインク組成物の接触角が20度未満になる場合があり、この場合、着弾したインク組成物の形状が平板形状に近づくため、レンズ状粒子の形状や基材上におけるレンズ状粒子の配置を制御することが困難になり得る。
【0043】
上記活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物は、種々のインクジェットプリンタに使用することができる。インクジェットプリンタとしては、例えば、荷電制御方式又はピエゾ方式によりインク組成物を噴出させるインクジェットプリンタを挙げることができる。また、高意匠なデザインを形成する観点から、ピエゾ方式によるインクジェットプリンタが特に好ましい。
【0044】
本発明の複合材料において、上記基材は、自動車又は鉄道車両用基材や、サインディスプレイ等の屋外用基材等が挙げられ、具体的には、鉄、ステンレススチール、アルミ、ブリキ等の金属類、プラスチック類、ガラス類、セラミックス類及び紙類、並びにそれらの表面に塗膜が設置されたもの(例えば、表面を樹脂でコーティングした紙等)が挙げられる。基材に塗膜が設置される場合、該塗膜の形成には、塗料業界で通常使用される樹脂を結合剤とする各種の溶剤系又は水系塗料等が使用される。
【0045】
また、レンズ状粒子の形状や基材上におけるレンズ状粒子の配置を制御し易くするためには、塗膜が設置された基材を使用することが好ましい。塗膜が設置された基材を使用することで、インクジェットインク組成物を好適な接触角(例えば、20〜170度)で基材上に着弾させることが容易になる。該塗膜としては、微細な凹凸構造を有する塗膜、接触角を調整する目的の添加剤や官能基を有する樹脂が含まれる塗膜等が好適に挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0046】
次に、本発明の複合材料の製造方法を詳細に説明する。本発明の複合材料の製造方法は、インクジェットプリンタによって、活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物を基材表面上の一部に吐出し、次いで、該活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物を硬化させ、レンズ状粒子を形成させることを特徴とする。
【0047】
上記インクジェットプリンタは、ピエゾ方式によるインクジェットプリンタが好ましく、通常使用されるピエゾ方式インクジェットプリンタを用いることができる。ピエゾ方式によるインクジェットプリンタを用いる場合、特定の平均直径及び平均高さを有するレンズ状粒子を容易に作製でき、更には、意匠性を向上させることもできる。
【0048】
本発明の複合材料の製造方法において、プリンタのヘッドと基材間の距離やインクジェットインク組成物の吐出量は、ノズルの性能や、目的とするレンズ状粒子の直径に応じて調整すればよい。また、基材表面に対するインクジェットインク組成物の吐出量や印刷濃度(この場合、基材に塗着するインクジェットインク組成物の面積割合)を変化させることで、レンズ状粒子を所望の位置に必要な量配置できるため、多様なデザインに対応可能である。
【0049】
また、本発明の複合材料の製造方法においては、基材上に印刷された活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物(印刷物)に、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ又は紫外線LED等を用いて紫外光等の活性エネルギー線を照射し、該印刷物を化学反応(硬化)させて、上記レンズ状粒子が形成される。該活性エネルギー線の波長は、光重合開始剤の吸収波長と重複していることが好ましく、活性エネルギー線の主波長が360〜425nmであることが好ましい。
【0050】
特に、レンズ状粒子を基材に精度よく配置するためには、基材上に着弾した活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物の形状が変化する前に硬化させるのが好ましい。例えば、インクジェットインク組成物が基材に着弾した直後に紫外光を照射した場合、凸部の高さが高く、レンズ径は小さく保たれるので、より球状に近いレンズ状粒子を形成可能である。逆に、インクジェットインク組成物が基材に着弾してから時間を経た後に紫外光を照射した場合、凸部の高さが低く、レンズ径は大きくなるため、平坦なレンズ状粒子を形成可能である。」

オ 「【実施例】
【0051】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0052】
<インクの調製例>
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート( 官能基数2,Hw/Mw0.28)35質量部、2−フェノキシエチルアクリレート(官能基数1,Hw/Mw0.25)34.5質量部、イソボルニルアクリレート(官能基数1,Hw/Mw0.15)10質量部、ウレタンアクリレートオリゴマー(ダイセル・サイテック製EBECRYL4820,官能基数3)10質量部、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−(2’−エチル)ヘキシル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン0.5質量部、及び2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド10質量部を混合することによって、インクを調製した。
【0053】
<実施例1>
図3に示されるデザイン1に従ってインクがステンレス基材表面に着弾するように、ピエゾ方式によるインクジェットプリンタを用いて、上記インクをステンレス基材表面に塗装した。ヘッドと基材間の距離は1mmであった。塗装後に、波長385nmのLEDランプを用い、照射条件400mJ/cm2で紫外光をインクに直接照射し、これを硬化させ、レンズ状粒子が形成された塗装板を作製した。作製された塗装板の写真を図4に示す。
【0054】
<比較例1>
図5に示されるデザイン2に従ってインクがステンレス基材表面に着弾するように、ピエゾ方式によるインクジェットプリンタを用いて、上記インクをステンレス基材表面に塗装した。ヘッドと基材間の距離は1mmであった。塗装後に、波長385nmのLEDランプを用い、照射条件400mJ/cm2で紫外光をインクに直接照射し、これを硬化させ、レンズ状粒子が形成された塗装板を作製した。作製された塗装板写真を図6に示す。
【0055】
ステンレス基材表面に形成したレンズ状粒子の平均直径及び平均高さを、レーザー顕微鏡((株)キーエンス製VK−8510)で測定した。結果を表1に示す。
【0056】
また、光沢度及び意匠性を以下のように評価した。結果を表1に示す。なお、比較例2には、ステンレス基材単独での結果を示す。
【0057】
<意匠性>
太陽光下で基材を目視し、基材の意匠性を官能的に評価した。なお、ここでの高意匠性とは、図中に示されたデザインに従ってエッチング調のデザインが表示できることを意味する。
○ 高意匠性が確認された
× 高意匠性が確認されなかった
【0058】
<光沢度>
JIS Z 8741に準拠し、ビックケミー・ジャパン株式会社製マイクロートリーグロス光沢度計を用いて、レンズ状粒子が形成された基材表面部分(部位A)及びレンズ状粒子が形成されていないステンレス基材表面部分(部位B)について20度鏡面光沢度(%)及び85度鏡面光沢度(%)を測定した。なお、部位Aと部位Bのそれぞれについて、20度鏡面光沢度では9×9mm、そして85度鏡面光沢度では7×42mmの測定面積で光沢度を測定した。また、比較例2の20度鏡面光沢度は、67%であり、85度鏡面光沢度は、109%であった。
【0059】
【表1】

【0060】
表1から、実施例1では、部位Aの20度鏡面光沢度が10%で、85度鏡面光沢度が32%であるため、部位Aの20度鏡面光沢度は、部位Bの値より57%低く、85度鏡面光沢度は、部位Bの値より77%低いことが分かる。一方、比較例1では、部位Aの85度鏡面光沢度は、65%であり、部位Bの値より44%低いが、20度鏡面光沢度は、52%であり、部位Bの値より15%しか低下していないことが分かる。
【符号の説明】
【0061】
1a 平面部
1b 曲面部
D 長径
d 短径
H 平面部からのレンズ状粒子の高さ
α 平面部と曲面部のなす角」

カ 「【図1】

【図2】

【図3】

【図4】



(2)引用発明1
前記(1)ア〜カによると、甲1には、請求項1を引用する請求項2を引用する請求項3に係る発明として、次の発明が記載されていると認められる(以下「引用発明1」という。)。

「インクジェットプリンタによって、活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物を基材表面上の一部に吐出し、次いで、該活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物を硬化させ、レンズ状粒子を形成させる、複合材料の製造方法であって、
前記複合材料は、
基材と、該基材表面上の一部に形成されたレンズ状粒子とを備え、該レンズ状粒子が形成された基材表面部分を部位(A)とし、該レンズ状粒子が形成されていない基材表面部分を部位(B)とする複合材料であり、前記レンズ状粒子が、活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物から得られ、前記部位(A)の光沢度が、入射角20°から85°に亘って、前記部位(B)の光沢度の値より20%以上低く、前記レンズ状粒子は、平均高さが1μm〜100μmで且つ平均直径が1μm〜1000μmである、
複合材料の製造方法。」

(3)甲2の記載
取消しの理由で引用された甲2(特開2014−80014号公報)には、次の事項が記載されている。なお、下線は当合議体が付したものであり、発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。

ア「【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材の少なくとも1つの面に配置されたレンズ状粒子とを備える複合材料であって、該レンズ状粒子の平均高さが1μm〜100μmで且つ平均直径が1μm〜1000μmであることを特徴とする複合材料。
【請求項2】
前記レンズ状粒子が配置された基材面におけるレンズ状粒子の占有面積は、該基材面の面積の10〜100%であることを特徴とする請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記レンズ状粒子が、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂及びシラザン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種類の合成樹脂から形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の複合材料。
【請求項4】
前記レンズ状粒子が、活性エネルギー線硬化性樹脂から形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項5】
前記合成樹脂が、撥水性を有する合成樹脂であることを特徴とする請求項3に記載の複合材料。
【請求項6】
スプレー方式、インクジェット方式、ディスペンサー方式又はシルクスクリーン方式のいずれかの塗装方法によって、基材の少なくとも1つの面に、コーティング材を、レンズ形状で塗装する工程と、次いで、該コーティング材を乾燥及び/又は化学反応により硬化させ、レンズ状粒子を形成する工程とを含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合材料の製造方法。」

イ「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材とレンズ状粒子との複合材料及び該複合材料の製造方法に関し、特には、光源の映り込みを防止することが可能であり且つ表面凹凸に関する平滑性に優れた複合材料に関するものである。
【背景技術】
・・・省略・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、光源の映り込みを防止することが可能であり且つ表面凹凸に関する平滑性に優れた基材とレンズ状粒子との複合材料を提供することにある。また、本発明の他の目的は、基材と、該基材の少なくとも1つの面に配置されたレンズ状粒子とを備える複合材料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、基材に特定の高さ及び直径を有するレンズ状粒子を形成させることによって、光沢度を抑えて、光源の映り込みを防止でき、更には、目視による官能評価において、優れた平滑性を表面凹凸に付与できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
・・・省略・・・
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、基材の少なくとも1つの面に特定の高さ及び直径を有するレンズ状粒子を形成させることによって、光源の映り込みを防止することが可能であり且つ表面凹凸に関する平滑性に優れる基材とレンズ状粒子との複合材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の複合材料を構成するレンズ状粒子の一例の模式的平面図である。
【図2】図1に示すレンズ状粒子の模式的側面図である。」

ウ「【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の複合材料を詳細に説明する。本発明の複合材料は、基材と、該基材の少なくとも1つの面に配置されたレンズ状粒子とを備える複合材料であって、該レンズ状粒子の平均高さが1μm〜100μmで且つ平均直径が1μm〜1000μmであることを特徴とする。
【0019】
本発明の複合材料を構成するレンズ状粒子は、平面部と曲面部とからなるレンズ形状を有する限り制限されるものではないが、具体例としては、図1及び2に示されるような、平面部(底面部分)1aと曲面部1bとからなるレンズ状粒子が挙げられる。なお、図1は、本発明の複合材料を構成するレンズ状粒子の一例の模式的平面図であり、図2は、図1に示すレンズ状粒子の模式的側面図である。
【0020】
本発明の複合材料において、レンズ状粒子は、平均高さが1μm〜100μmで平均直径が1μm〜1000μmであることを要する。レンズ状粒子の平均高さ及び平均直径が上記特定した範囲内であれば、光源の映り込みを防止することができ、更には、目視による官能評価において、優れた平滑性を表面凹凸に付与することができる。また、レンズ状粒子の平均高さが1μm未満で且つ平均直径が1μm未満では、光の散乱効果が得られ難くなるため、防眩効果を発揮し難い。一方、レンズ状粒子の平均高さが100μmを超え且つ平均直径が1000μmを超えると、表面凹凸に関する平滑性が十分に得られず、更には、意匠性を低減し、所望の外観が得られ難い。なお、レンズ状粒子の平均高さは、1μm〜50μmの範囲が好ましく、2μm〜30μm の範囲が更に好ましい。また、レンズ状粒子の平均直径は、10μm〜500μmの範囲が好ましく、200μm〜300μmの範囲が更に好ましい。
【0021】
本発明において、レンズ状粒子の高さとは、図2に示されるように、平面部1aからのレンズ状粒子の高さHであり、レンズ状粒子の直径とは、平面部外周上の2点を結ぶ最大距離である。例えば、図1に示されるように、平面部が長径Dと短径dの楕円形状である場合、長径Dが、レンズ状粒子の直径となる。なお、上記平面部の形状は、特に限定されず、楕円形状でもよいし、円形状であってもよい。
【0022】
例えば、上記レンズ状粒子の平面部を円形状にすることで、レンズ状粒子の形状を半球状にすることができるが、本発明において、レンズ状粒子の形状は、これに限定されるものではない。図2に示す平面部と曲面部のなす角αは、1度から179度までの幅があり、この角度が小さい程、レンズ状粒子が扁平形状に近くなり、一方、大きくなる程、レンズ状粒子が球状に近くなる。
【0023】
本発明の複合材料において、上記レンズ状粒子は、基材表面に配置されるが、このレンズ状粒子が配置された領域における基材1平方インチ当たりのレンズ状粒子の個数は、50〜360000であることが好ましい。該レンズ状粒子が基材1 平方インチ当たり50個未満では、光の散乱効果が十分に得られず、防眩効果を発揮できない場合がある。また、該レンズ状粒子が基材1平方インチ当たり360000個を超えても、レンズ状粒子同士が近づき過ぎるために十分な光の散乱効果が得られず、防眩効果を発揮できない場合がある。
・・・省略・・・
【0025】
本発明の複合材料において、上記レンズ状粒子が配置された基材面におけるレンズ状粒子の占有面積は、該基材面の面積の10〜100%であることが好ましい。該レンズ状粒子の占有面積が10%未満では、光の散乱効果が十分に得られず、防眩効果を発揮できない場合がある。一方、該レンズ状粒子の占有面積が100%であると、レンズ状粒子同士が密着するものの、該レンズ状粒子の高さを調整することで、防眩効果を十分に確保することができる。
・・・省略・・・
【0028】
本発明の複合材料において、上記レンズ状粒子を形成するためには、固形分含有率が高い状態で使用できる活性エネルギー線硬化型コーティング材を用いることが特に好ましい。なお、上記活性エネルギー線硬化型コーティング材は、活性エネルギー線硬化性樹脂及び光重合開始剤を必須成分として配合されたものが好ましい。
・・・省略・・・
【0030】
また、上記活性エネルギー線硬化性樹脂としては、カチオン開環重合型のビニル−2−エチルヘキシルエーテル、ビニルデシルエーテル、1,2−エポキシシクロヘキサン、ジシクロペンタジエンジオキサイド、ソルビトールポリグリシジルエーテル等も使用出来る。
・・・省略・・・
【0034】
本発明の複合材料において、上記コーティング材の粘度は、0.1mPa・s〜2000mPa・sが好ましく、1mPa・s〜100mPa・sが更に好ましい。上記コーティング材の粘度が0.1mPa・s〜2000mPa・sの範囲内であれば、好適なレンズ形状、特に半球状のレンズ状粒子が容易に得られる。即ち、コーティング材の粘度が0.1mPa・s未満では、所望のレンズ形状、例えば半球状のレンズ状粒子を形成することが困難になる場合があり、一方で、コーティング材の粘度が2000mPa・sを超えると、コーティング材の流動性が低くなり、塗装が困難になる場合がある。なお、コーティング材の塗装方法(吐出方法)によって最適な粘度が異なり、例えばインクジェット方式の場合には、1〜20mPa・sの粘度が好ましい。このため、使用する吐出装置(ヘッド)の特性に合わせた粘度に調整すればよい。
【0035】
本発明の複合材料において、上記コーティング材の表面張力は、20〜40mN/mであることが好ましい。上記コーティング材の表面張力が20〜40mN/mの範囲内であれば、好適なレンズ形状、特に半球状のレンズ状粒子が容易に得られる。また、コーティング材の表面張力が40mN/mを超えると、基材に着弾させたコーティング材の接触角が170度を超える場合があり、この場合、着弾したコーティング材の形状が球状に近づくため、該コーティング材が着弾位置から移動したり、基材との密着性が低下したりする恐れがある。よって、レンズ状粒子の形状や基材上におけるレンズ状粒子の配置を制御することが困難になり得る。一方、コーティング材の表面張力が20mN/m未満では、基材に着弾させたコーティング材の接触角が20度未満になる場合があり、この場合、着弾したコーティング材の形状が平板形状に近づくため、レンズ状粒子の形状や基材上におけるレンズ状粒子の配置を制御することが困難になり得る。なお、コーティング材の塗装方法(吐出方法)によって最適な表面張力が異なり、例えば、吐出方法がインクジェット方式の場合には、22〜35mN/mの表面張力が好ましく、使用する吐出装置(ヘッド)の特性に合わせた表面張力を調整すればよい。
【0036】
本発明の複合材料において、上記基材は、特に限定されるものではないが、自動車又は鉄道車両用基材等が好ましく、具体的には、鉄、ステンレススチール、アルミ、ブリキ等の金属基材や、それらの金属基材表面に塗膜が設置された基材等が挙げられる。基材に塗膜が設置される場合、該塗膜の形成には、塗料業界で通常使用される樹脂を結合剤とする各種の溶剤系又は水系コーティング材等が使用される。また、上記基材が凹凸面を有する場合、該凹凸面にレンズ状粒子を配置させることが特に好ましい。なぜなら、入射した光がレンズ状粒子により散乱するため、防眩効果が得られ、基材の凹凸が目立たなくなり、基材のうねりに由来する強い正反射光を低減できるからである。また、この効果により、パテ材を使用しなくとも、自動車や鉄道車両の車体外板の凹凸を目立たなくし、視覚的に平滑性を演出する機能(目視による基材の凹凸感の低減)を付与することができる。
【0037】
また、レンズ状粒子の形状や基材上におけるレンズ状粒子の配置を制御し易くするためには、塗膜が設置された基材を使用することが好ましい。塗膜が設置された基材を使用することで、コーティング材を好適な接触角(例えば、20〜170度)で基材上に着弾させることが容易になる。該塗膜としては、微細な凹凸構造を有する塗膜、接触角を調整する目的の添加剤や官能基を有する樹脂が含まれる塗膜等が好適に挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0038】
以下に、本発明の複合材料の製造方法を詳細に説明する。本発明の複合材料の製造方法においては、まず、スプレー方式、インクジェット方式、ディスペンサー方式又はシルクスクリーン方式のいずれかの塗装方法によって、上記基材の少なくとも1 つの面に、上記コーティング材を、レンズ形状で塗装する工程が行われる。
【0039】
本発明の複合材料の製造方法において、塗装方法としては、スプレー方式、インクジェット方式、ディスペンサー方式及びシルクスクリーン方式といったデジタルコーティング方式が採用される。デジタルコーティング方式とは、基材表面の所望の位置にレンズ状粒子を形成可能なコーティング方式であり、基材におけるレンズ状粒子の占有率を調整し、レンズ状粒子を一定距離間隔で規則的に並べて配置させることが可能である。特に、デジタルデータを入力することによって、レンズ状粒子の形状及び粒子数を制御可能であるインクジェット方式が好ましい。
【0040】
本発明の複合材料の製造方法においては、次に、レンズ形状で塗装されたコーティング材を乾燥及び/ 又は化学反応により硬化させ、レンズ状粒子を形成する工程が行われる。上記コーティング材の硬化方法は、コーティング材の種類に応じて適宜選択すればよい。特に、レンズ状粒子を基材に精度よく配置するためには、活性エネルギー線硬化性樹脂を含むコーティング材をインクジェット方式の塗装方法で基材上に塗装する。この場合、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ又は紫外線LED等を用いて紫外光を照射しコーティング材を化学反応させ、コーティング材の形状が変化する前に硬化させる。例えば、コーティング材が基材に着弾した直後に紫外光を照射した場合、凸部の高さが高く、レンズ径は小さく保たれるので、より球状に近いレンズ状粒子を形成可能である。逆に、コーティング材が基材に着弾してから時間を経た後に紫外光を照射した場合、凸部の高さが低く、レンズ径は大きくなるため、平坦なレンズ状粒子を形成可能である。
・・・省略・・・
【0042】
インクジェット塗装において、ヘッドと基材間の距離やコーティング材の吐出量は、ノズルの性能や、目的とするレンズ状粒子の粒子径に応じて調整すればよい。また、基材表面に対するコーティング材の吐出量や印刷濃度(この場合、基材に塗着するコーティング材の面積割合)を変化させることで、レンズ状粒子を所望の位置に必要な量配置できるため、多様なデザインに対応可能である。」

エ 「【実施例】
【0043】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0044】
実施例では、多官能アクリレートとしてトリメチロールプロパントリアクリレート20質量部、単官能アクリレートとしてイソボルニルアクリレート74質量部及びシリコーン系アクリレート1質量部からなる活性エネルギー線硬化性樹脂と、光重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド5質量部とを配合ことにより調製されたコーティング材を用いた。塗装方法としては、インクジェット方式を選択し、コーティング材を下記に示す塗布条件で基材表面にコーティングした。吐出装置のヘッドと基材間の距離は3mmであった。コーティング後に、波長395nmのLED ランプを用い、照射条件400mJ/cm2で紫外光をコーティング材に直接照射し、これを硬化させ、レンズ状粒子を形成した。
【0045】
基材表面に形成したレンズ状粒子の平均直径及び平均高さを、レーザー顕微鏡(株式会社キーエンス製VK−8510)で測定した。
【0046】
なお、実施例及び比較例に使用した基材を以下の通り準備した。JIS K 5600に規定された耐カッピング性試験で使用されるカッピング試験装置を用いて、ブリキ板に直径27mm、深さ1mmの凹部位を作製し、その後、白色又は黒色のコーティング材(大日本塗料株式会社、商品名:イノーバ)を塗布した。白色のコーティング材が塗布されたブリキ板を白塗板とし、黒色のコーティング材が塗布されたブリキ板を黒塗板とした。
【0047】
また、平滑性及び光沢度は、以下のように評価された。
【0048】
<平滑性>
入射角85度で光を基材の凹部に照射し、目視にて基材の凹部を確認し、凹凸感を官能的に評価した。
○ 凹凸感が確認されない
× 凹凸感が確認された
【0049】
<光沢度>
JIS Z 8741に準拠して、基材平坦部位のレンズ状粒子が配置された部位の85度鏡面光沢の光沢度(%)を測定して、レンズ状粒子の光散乱効果を確認した。なお、実施例5では、85度鏡面光沢の光沢度の他、20度鏡面光沢の光沢度(%)及び60度鏡面光沢の光沢度(%)の測定も行い、レンズ状粒子の光散乱効果を確認した。
【0050】
(実施例1)
基材に黒塗板を用いて、解像度600×600dpi、液滴量5pl及び印刷濃度50%の条件で、該黒塗板にコーティング材を5回重ね打ちした。その結果を表1に示す。レンズ状粒子を形成しない場合と比較して、目視による基材の凹凸感の低減と光沢度の低下が確認された。
【0051】
(実施例2)
基材に黒塗板を用いて、解像度600×600dpi、液滴量5pl及び印刷濃度25%の条件で、該黒塗板にコーティング材を5回重ね打ちした。その結果を表1に示す。レンズ状粒子を形成しない場合と比較して、目視による基材の凹凸感の低減と光沢度の低下が確認された。
【0052】
(実施例3)
基材に白塗板を用いて、解像度600×600dpi、液滴量5pl及び印刷濃度50%の条件で、該白塗板にコーティング材を5回重ね打ちした。その結果を表1に示す。レンズ状粒子を形成しない場合と比較して、目視による基材の凹凸感の低減と光沢度の低下が確認された。
【0053】
(実施例4)
基材に白塗板を用いて、解像度600×600dpi、液滴量5pl及び印刷濃度25%の条件で該白塗板にコーティング材を5回重ね打ちした。その結果を表1に示す。レンズ状粒子を形成しない場合と比較して、目視による基材の凹凸感の低減と光沢度の低下が確認された。
【0054】
(比較例1)
黒塗板の平滑性と光沢度を評価した。その結果を表1に示す。目視による基材の凹凸感は悪く、光沢度は高かった。
【0055】
(比較例2)
白塗版の平滑性と光沢度を評価した。その結果を表1に示す。目視による基材の凹凸感は悪く、光沢度は高かった。
【0056】
(実施例5)
基材に白塗板を用いて、該白塗板にコーティング材をコーティングした。ここで、塗布条件は、解像度が720×1200dpiであり、3種類の液滴量(7pl、21pl、35pl)が同時に吐出され、塗布回数が1回である。その結果を表2に示す。レンズ状粒子を形成しない場合と比較して、すべての角度で光沢度の低下が確認された。このように、すべての角度で光沢度が低下しているため、塗板のフラット感が高いことが分かる。実際、平滑性の評価では、レンズ状粒子を形成しない場合と比較して、目視による基材の凹凸感の低減が確認された。
【0057】
【表1】

【表2】

【符号の説明】
【0059】
1a 平面部
1b 曲面部
D 長径
d 短径
H 平面部からのレンズ状粒子の高さ
α 平面部と曲面部のなす角」

オ 「【図1】

【図2】



(4)引用発明2
前記(3)ア〜オによると、甲2には、請求項1を引用する請求項4を引用する請求項6に係る発明として、次の発明が記載されていると認められる(以下「引用発明2」という。)。

「インクジェット方式の塗装方法によって、基材の少なくとも1つの面に、コーティング材を、レンズ形状で塗装する工程と、次いで、該コーティング材を化学反応により硬化させ、レンズ状粒子を形成する工程とを含む、複合材料の製造方法であって、
前記複合材料は、
基材と、該基材の少なくとも1つの面に配置されたレンズ状粒子とを備え、該レンズ状粒子の平均高さが1μm〜100μmで且つ平均直径が1μm〜1000μmであり、前記レンズ状粒子が、活性エネルギー線硬化性樹脂から形成される、
複合材料の製造方法。」

2 本件特許発明2について
(1)甲1を主引用例とする場合
ア 対比
本件特許発明2と引用発明1とを対比する。
(ア)引用発明1における「複合材料」は、「基材と、該基材表面上の一部に形成されたレンズ状粒子とを備え、該レンズ状粒子が形成された基材表面部分を部位(A)とし、該レンズ状粒子が形成されていない基材表面部分を部位(B)とする複合材料であり、前記レンズ状粒子が、活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物から得られ、前記部位(A)の光沢度が、入射角20°から85°に亘って、前記部位(B)の光沢度の値より20%以上低く、前記レンズ状粒子は、平均高さが1μm〜100μmで且つ平均直径が1μm〜1000μmであ」ものであり、また、「インクジェットプリンタによって、活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物を基材表面上の一部に吐出し、次いで、該活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物を硬化させ、レンズ状粒子を形成させる」ことにより「製造」されるものである。
引用発明1の構成からみて、引用発明1の「基材表面」は「光沢」を有し、「基材表面」に、「活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物を硬化させ」た硬化物である「レンズ状粒子」による凹凸が存在することにより「基材」そのものの「表面」よりも低光沢となっている領域である「部位(A)」が設けられているといえる。また、引用発明1の「基材表面」に「部位(A)」が設けられている「複合材料」は、「インクジェットプリンタによって」「製造」されるから、インクジェット印刷物であるといえる。さらに、引用発明1の「部位(A)」内を観察すると、「活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物を硬化させ」た硬化物である「レンズ状粒子」による凸部が複数確認されるといえる。
そうすると、引用発明1の「基材」、「活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物」、「部位(A)」及び「複合材料」は、それぞれ、本件特許発明2の「基材」、「硬化型インクジェットインク」、「低光沢領域」及び「インクジェット印刷物」に相当する。そして、引用発明1は、本件特許発明2の「光沢のある基材」「の表面に、」「硬化型インクジェットインクの硬化物による凹凸が存在することにより前記基材そのものの表面よりも低光沢となっている低光沢領域が設けられたインクジェット印刷物の製造方法であって」という要件及び「低光沢領域内」「を観察すると、硬化型インクジェットインクの硬化物による凸部が複数確認され」という要件を満たしている。

(イ)引用発明1の前記構成からみて、引用発明1の「部位(A)」は、「インクジェットプリンタによって、」「活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物」の液滴「を基材表面上の一部に吐出」して、インクを付与する工程と、「次いで、活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物」の液滴「を硬化させ」る工程により形成されているといえる(甲1【0022】の記載からも確認できる事項である。)。
そうすると、引用発明1は、本件特許発明2の「前記低光沢領域は、」「硬化型インクジェットインクの液滴を前記基材の表面に付与するインク付与工程と、前記表面に付与されたインクの液滴を硬化させる硬化工程とにより形成され」という要件を満たしている。

(ウ)引用発明1の「硬化型インクジェットインク組成物」は「活性エネルギー線硬化型」である。この「活性エネルギー線」は「活性エネルギー線、例えば紫外LED、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等の光源から発せられる紫外線」(甲1【0022】)であるから、「光」が想定されたものと理解することができる。また、引用発明1の「活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物」は、「活性エネルギー線の照射により速やかに硬化できるインク」である(甲1【0023】)から、「活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物を硬化させ」る工程は、「基材表面」に付与されたインクの液滴に対して光を照射する光照射工程であるといえる。
そうすると、引用発明1は、本件特許発明2の「前記硬化型インクジェットインクは光硬化型であり、前記硬化工程は、前記表面に付与されたインクの液滴に対して光を照射する光照射工程であり」という要件を満たしている。

(エ)前記(ア)〜(ウ)より、引用発明1と本件特許発明2は、「インクジェット印刷物の製造方法であって、」「インク付与工程と、」「硬化工程と」を備え、「前記硬化工程は、」「光照射工程であ」る、「インクジェット印刷物の製造方法」である点で共通する。

イ 一致点
上記アによると、本件特許発明2と引用発明1は次の点で一致する。
「光沢のある基材の表面に、硬化型インクジェットインクの硬化物による凹凸が存在することにより前記基材そのものの表面よりも低光沢となっている低光沢領域が設けられたインクジェット印刷物の製造方法であって、
前記低光沢領域内を観察すると、硬化型インクジェットインクの硬化物による凸部が複数確認され、
前記低光沢領域は、硬化型インクジェットインクの液滴を前記基材の表面に付与するインク付与工程と、前記表面に付与されたインクの液滴を硬化させる硬化工程とにより形成され、
前記硬化型インクジェットインクは光硬化型であり、
前記硬化工程は、前記表面に付与されたインクの液滴に対して光を照射する光照射工程である、
インクジェット印刷物の製造方法。」

ウ 相違点
他方、本件特許発明2と引用発明1は次の点で相違する。
(相違点2−1)
「基材」が、本件特許発明2は、「基材(ただし、透明基材を除く)」であって、「材質は、金属であ」のに対し、引用発明1は、そのような構成であるのかが明らかでない点。

(相違点2−2)
「低光沢領域」が、本件特許発明2は、「少なくとも1200μm×1200μmの広さを有」するものであるのに対し、引用発明1は、そのような構成であるのかが明らかでない点。

(相違点2−3)
「光沢のある基材」「の表面」が、本件特許発明2は、「金属が露出している面であ」るのに対し、引用発明1は、そのような構成であるのかが明らかでない点。

(相違点2−4)
本件特許発明2は、「低光沢領域のISO 25178で規定される算術平均高さSaが0.160〜0.454μmであ」るのに対し、引用発明1は、そのような構成であるのかが明らかでない点。

(相違点2−5)
本件特許発明2は、「低光沢領域のISO 25178で規定される最大高さSzが1.939〜16.403μmであ」るのに対し、引用発明1は、そのような構成であるのかが明らかでない点。

(相違点2−6)
本件特許発明2は、「硬化型インクジェットインクの液滴」の「25℃での表面張力」が、「20〜50mN/mである」のに対し、引用発明1は、そのような構成であるのかが明らかでない点。

(相違点2−7)
本件特許発明2は、「硬化型インクジェットインクの粘度は5〜40mPa・sであ」るのに対し、引用発明1は、そのような構成であるのかが明らかでない点。

(相違点2−8)
「インク付与工程において、前記液滴が前記基材の表面に付与されてから、前記光照射工程の開始までの時間」が、本件特許発明2は、「0.1〜3.0秒」であるのに対し、引用発明1は、そのような構成であるのかが明らかでない点。

(相違点2−9)
本件特許発明2は、「低光沢領域においては、前記基材の表面の30〜80%が、インクの液滴の硬化物により被覆されている」のに対し、引用発明1は、そのような構成であるのかが明らかでない点。

エ 判断
事案に鑑み、相違点2−4、相違点2−5及び相違点2−9を併せて検討する。

算術平均高さSa、最大高さSz及びインクの液滴の硬化物により被覆されている基材の表面の割合(被覆率)は、技術的にみて相互に関係する構成であるところ、算術平均高さSaが0.160〜0.454μm、最大高さSzが1.939〜16.403μm、被覆率が30〜80%である低光沢領域が設けられたインクジェット印刷物を製造することは、特許異議申立人が提出した甲第1号証〜甲第4号証に記載されていないし、当該技術的事項が公知又は周知であることを示す他の証拠を発見しない。
より詳細には、次のとおりである。
甲1発明の「レンズ状粒子」の平均高さの下限値は1μmである。そして、甲1発明の「基材」の低光沢領域に相当する領域において、インクの液滴の硬化物であるレンズ状粒子により被覆されている割合は明らかでない。ここで、本件特許発明1の「算術平均高さSa」は、その定義からみて、上記被覆されている割合(以下「被覆率」という。)と密接に関係するものであるが、甲1には、レンズ状粒子の平均高さ及び被覆率と、複合材料の防眩効果ないし意匠性との間の定量的な関係についての手がかりは記載されていない。
そうしてみると、被覆率が明らかでない甲1発明においては、当業者にとって、相違点2−4に係る「算術平均高さSaが0.160〜0.454μmであ」るとの構成(相違点2−5及び相違点2−9に係る構成も含む。)に到ることが容易であるといえるほどの動機を見出すことは困難である。

そして、前記相違点2−4、相違点2−5及び相違点2−9に係る構成を有することにより、本件特許発明1は、より意匠性の高い疑似エッチング調の外観を得ることができるという効果(本件特許の明細書【0045】〜【0047】、【実施例】参照。)を有するものである。
すなわち、前記相違点2−4、相違点2−5及び相違点2−9に係る構成を有する場合、疑似エッチング調の評価は、40点満点中32点以上という非常に高い評価となっており、このような効果は、先の出願時における当業者が、上記相違点に係る構成から予測することができた範囲内のものということはできない。
そうしてみると、相違点2−4、相違点2−5及び相違点2−9に係る本件特許発明1の構成は、当業者が適宜採用することができた単なる設計変更ということはできない。

以上により、他の相違点について言及するまでもなく、本件特許発明1は、当業者といえども、容易に発明をすることができたものということはできない。

オ 小括
したがって、本件特許発明1は、甲1に記載された発明並びに甲3及び甲4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(2)甲2を主引用例とする場合
ア 対比・一致点・相違点
前記(1)アと同様にして、本件特許発明2と引用発明2とを対比すると、両者は、前記(1)イと同様の一致点で一致し、前記(1)ウと同様の相違点(相違点2−A〜相違点2−I:前記相違点2−1〜相違点2−9が、それぞれ、相違点2−A〜相違点2−Iに対応する。)において相違する。

イ 判断
事案に鑑み、相違点2−D、相違点2−E及び相違点2−Iを併せて検討する。
相違点2−D、相違点2−E及び相違点2−Iについての判断は、相違点2−4、相違点2−5及び相違点2−9についての判断(前記(1)エ)と同様である。

ウ 小括
したがって、本件特許発明2は、甲2に記載された発明並びに甲3及び甲4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

3 本件特許発明3、6、8〜11について
本件特許の特許請求の範囲の請求項3、請求項6及び請求項8〜請求項11は、いずれも、請求項2を引用するものであって、本件特許発明3、本件特許発明6及び本件特許発明8〜本件特許発明11は、いずれも、本件特許発明2の構成を全て具備し、これに限定を加えたものに該当する。そうすると、前記2のとおり、本件特許発明2が、甲1に記載された発明又は甲2に記載された発明等に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたということはできない以上、本件特許発明3、本件特許発明6及び本件特許発明8〜本件特許発明11は、いずれも、甲1に記載された発明又は甲2に記載された発明等に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

第6 むすび
1 請求項2、3、6及び8〜11に係る特許は、いずれも、特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由及び当合議体が通知した取消しの理由によっては取り消すことはできない。
また、他に請求項2、3、6及び8〜11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

2 請求項1、4、5及び7は、本件訂正請求による訂正で削除された。これにより、特許異議申立人による特許異議の申立てのうち、本件特許の請求項1、4、5及び7に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。

3 よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(削除)
【請求項2】
光沢のある基材(ただし、透明基材を除く)の表面に、少なくとも1200μm×1200μmの広さを有し、硬化型インクジェットインクの硬化物による凹凸が露出して存在することにより前記基材そのものの表面よりも低光沢となっている低光沢領域が設けられたインクジェット印刷物の製造方法であって、
前記低光沢領域内の1200μm×1200μmの領域を観察すると、硬化型インクジェットインクの硬化物による凸部が複数確認され、
前記基材の材質は、金属であり、前記表面は、金属が露出している面であり、
前記低光沢領域のISO 25178で規定される算術平均高さSaが0.160〜0.454μmであり、
前記低光沢領域のISO 25178で規定される最大高さSzが1.939〜16.403μmであり、
前記低光沢領域は、25°Cでの表面張力が20〜50mN/mである硬化型インクジェットインクの液滴を前記基材の表面に付与するインク付与工程と、前記表面に付与されたインクの液滴を硬化させる硬化工程とにより形成され、
前記硬化型インクジェットインクは光硬化型であり、前記硬化型インクジェットインクの粘度は5〜40mPa・sであり、
前記硬化工程は、前記表面に付与されたインクの液滴に対して光を照射する光照射工程であり、
前記インク付与工程において、前記液滴が前記基材の表面に付与されてから、前記光照射工程の開始までの時間は0.1〜3.0秒であり、
前記低光沢領域においては、前記基材の表面の30〜80%が、インクの液滴の硬化物により被覆されている、インクジェット印刷物の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載のインクジェット印刷物の製造方法であって、
照射される光の積算光量が50〜10000mJ/cm2である、インクジェ ット印刷物の製造方法。
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
請求項2または3に記載のインクジェット印刷物の製造方法であって、
前記インク付与工程において、前記基材に1000〜100000個/cm2の密度でインクの液滴を付与する、インクジェット印刷物の製造方法。
【請求項7】
(削除)
【請求項8】
請求項2、3または6に記載のインクジェット印刷物の製造方法であって、
前記硬化型インクジェットインクが、カチオン重合型である、インクジェット印刷物の製造方法。
【請求項9】
請求項2、3、6または8に記載のインクジェット印刷物の製造方法であって、
前記インク付与工程におけるインクの液滴の体積が2〜50pLである、インクジェット印刷物の製造方法。
【請求項10】
請求項2、3、6、8または9に記載のインクジェット印刷物の製造方法であって、
前記低光沢領域が、疑似エッチング調の外観を示す、インクジェット印刷物の製造方法。
【請求項11】
請求項2、3、6、8、9または10に記載のインクジェット印刷物の製造方法であって、
前記硬化型インクジェットインクは、着色剤を含まないクリヤーインクである、インクジェット印刷物の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-10-28 
出願番号 P2019-527480
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (B41M)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 里村 利光
特許庁審判官 関根 洋之
下村 一石
登録日 2020-01-17 
登録番号 6647497
権利者 ナトコ株式会社
発明の名称 インクジェット印刷物の製造方法  
代理人 速水 進治  
代理人 速水 進治  
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