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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 B29B 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 B29B 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 B29B |
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管理番号 | 1381645 |
総通号数 | 2 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2022-02-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2020-08-19 |
確定日 | 2021-11-11 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | true |
事件の表示 | 特許第6668839号発明「ペレタイザ、及び、これを用いたペレットの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6668839号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし5〕について訂正することを認める。 特許第6668839号の請求項1ないし4に係る特許を取り消す。 特許第6668839号の請求項5に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6668839号の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、平成28年3月11日に出願され、令和2年3月2日にその特許権の設定登録がされ、同年3月18日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和2年 8月19日 : 特許異議申立人 吉田 真理奈(以下、 「特許異議申立人」という。)による 特許異議の申立て 同年12月14日付け : 取消理由通知 令和3年 2月12日 : 特許権者 日本ポリプロ株式会社 (以下、「特許権者」という。)による 訂正請求及び意見書の提出 同年 2月19日付け : 特許法第120条の5第5項の通知 同年 3月30日 : 特許異議申立人による意見書の提出 同年 5月10日付け : 取消理由通知(決定の予告) なお、取消理由通知(決定の予告)後、特許権者からは指定期間内に応答はなかった。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 令和3年2月12日付けの本件訂正請求による訂正の内容は、以下の(1)及び(2)のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「同一のカッター刃の刃面と接する複数のノズルについて、隣り合う当該ノズル間の距離(Lz)が6mm以上となるように間隔を置いて配置されている」と記載されているのを、 「同一のカッター刃の刃面と接する複数のノズルについて、全ての隣り合う当該ノズル間の距離(Lz)が6mm以上となるように間隔を置いて配置されている」に訂正する。 請求項1の記載を引用する請求項2ないし5についても同様に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項3に 「前記ダイス上に配置された任意の三つのノズル穴中心点により、外周長が最小となるように構成される三角形について、その外周長(Ly)とノズル穴径(d)とが下記の関係式を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載のペレタイザ。 Ly−3×d≧20.5」 と記載されているのを、 「前記ダイス上に配置された任意の三つのノズル穴中心点により、外周長が最小となるように構成される三角形について、その外周長(Ly)とノズル穴径(d)とが下記の関係式を満たし、 前記外周長(Ly)の単位がmmであり、前記ノズル穴径(d)の単位がmmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のペレタイザ。 Ly−3×d≧20.5(mm)」 に訂正する。 請求項3の記載を引用する請求項4及び5も同様に訂正する。 2 一群の請求項について 訂正事項1による本件訂正は、訂正前の請求項1ないし5を訂正するものであり、訂正事項2による本件訂正は、訂正前の請求項3ないし5を訂正するものであるところ、本件訂正前の請求項2ないし5は、訂正請求の対象である請求項1の記載を直接又は間接的に引用する関係にあるから、訂正前の請求項1ないし5は一群の請求項であって、本件訂正は、一群の請求項〔1ないし5〕について請求されたものである。 3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)請求項1の訂正(訂正事項1)について 訂正事項1による請求項1についての訂正は、訂正前の請求項1の「隣り合う当該ノズル間の距離(Lz)が6mm以上となるように間隔を置いて配置されている」ことについて、訂正後の請求項1は、「全ての」隣り合うものに限定するものである。 したがって、訂正事項1による請求項1についての訂正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項1による請求項1についての訂正は、本件特許の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲の拡張し、又は変更するものではない。 さらに、請求項1を引用する請求項2ないし5についても同様である。 (2)請求項3の訂正(訂正事項2)について 訂正事項2による請求項3についての訂正は、訂正前の請求項3の外周長(Ly)、ノズル穴径(d)及びこれらの関係式の単位を明確にしようとするものである。 したがって、訂正事項2による請求項3についての訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、訂正事項2による請求項3についての訂正は、本件特許の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 さらに、請求項3を引用する請求項4及び5についても同様である。 4 小括 以上のとおりであるから、訂正事項1による請求項1についての訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、訂正事項2による請求項3についての訂正は、同法同条同項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、本件訂正は適法なものであり、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−5〕について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記第2で示したとおり、本件訂正は認められたため、本件特許の請求項1ないし5に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、本件特許発明1ないし5を総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。 「【請求項1】 押出筒の先端に装着されたダイス面中のノズルより冷却水槽に押出されるポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂を、前記ダイス面の先端表面に近接して配設された回転カッター刃により前記冷却水槽でペレット状に切断されるとともに、水冷固化するようになっているペレタイザにおいて、 同一のカッター刃の刃面と接する複数のノズルについて、全ての隣り合う当該ノズル間の距離(Lz)が6mm以上となるように間隔を置いて配置されていることを特徴とするペレタイザ。 【請求項2】 前記カッター刃が接するノズルの開口部分の長さ(Wn)の和(ΣWn)の最大値(ΣWn)maxと、当該カッター刃と当該開口部分を含む前記ダイス面とが重なる部分の長さ(Lx)とは、下記の関係式を満たすことを特徴とする請求項1に記載のペレタイザ。 (ΣWn)max/Lx≦0.2 【請求項3】 前記ダイス上に配置された任意の三つのノズル穴中心点により、外周長が最小となるように構成される三角形について、その外周長(Ly)とノズル穴径(d)とが下記の関係式を満たし、 前記外周長(Ly)の単位がmmであり、前記ノズル穴径(d)の単位がmmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のペレタイザ。 Ly−3×d≧20.5(mm) 【請求項4】 前記水冷固化において、前記冷却水槽に注入される冷却水の温度が20℃を超え、45℃以下である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のペレタイザ。 【請求項5】 請求項1乃至4のいずれか一項に記載のペレタイザを用いて、融点110〜145℃、曲げ弾性率50〜350MPaのポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂からペレットを製造することを特徴とするペレットの製造方法。」 第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由及び取消理由の概要 1 特許異議申立書に記載した申立理由の概要 令和2年8月19日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書に記載した申立理由の概要は次のとおりである。 (1)申立理由1(甲第1号証を主引用文献とする新規性) 本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (2)申立理由2(甲第1号証を主引用文献とする進歩性) 本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (3)申立理由3(サポート要件) 本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 概要は、以下のとおり。 ア カッテング不良なく安定にペレットを製造するには、距離Lz以外の様々な条件を適切に設定する必要がある。 具体的には、本件の【0006】には、「樹脂温度やダイス熱媒温度を低下させる」ことや「冷却水の温度を低下させる」ことでペレット融着を防止することが記載されている。また、同段落には、「樹脂線速を増大させること」により異形体ペレットを発生させてしまうことが記載されている。 本件の【0025】には、「カッティング面とカッター刃の平行度3/100mm以下の精度を要求される」ことが記載されている。よって、カッティング不良なく安定にペレットを製造するには、樹脂の温度および線速、ダイスの熱媒温度、冷却水の温度、カッティング面(ダイス)とカッター刃との平行度など、距離Lz以外の様々な条件を適切に設定する必要があることが、本件の発明の詳細な説明に記載されていると言える。しかし、請求項1には、距離Lzを6mm以上とすること以外の様々な条件については規定されていない。そのため、本件特許発明1には、本件【0007】に記載の課題を解決できないものが含まれている。 イ 本件【0007】に記載の、「安定にペレットを製造する」という本件特許発明の課題を解決するには、同一のカッター刃の刃面と接する複数のノズルの全ての隣り合う当該ノズル間で「距離Lzを6mm以上」という条件が満たされる必要があると考えられる。したがって、 本件特許発明1には、本件【0007】に記載の課題を解決できないものが含まれている。 (4)申立理由4(明確性要件) 本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 概要は、以下のとおり。 ア 本件の請求項1に係る特許は、複数か所の「隣り合う当該ノズル間」 の一部で距離Lzが6mm未満であることが許容されるか否かが不明である。 イ 本件の請求項1には、「前記ダイス面の先端表面に近接して配設された回転カッター刃」と記載されているところ、この記載の「近接」の程度が不明確である。 ウ 本件の請求項3には「Ly−3×d≧20.5」という関係式が記載されているところ、 L「y−3×d」および「20.5」の単位が不明である。そのため、この関係式の技術的意味が不明であり、本件特許発明3は明確でない。 (5)証拠方法 特許異議申立書に添付して以下の証拠を提出した。 甲第1号証:特開2008−307711号公報 甲第2号証:特開2001−105429号公報 甲第4号証:国際公開第2009/057318号 甲第5号証:特開平9−141652号公報 甲第6号証:特開昭64−87213号公報 甲第7号証:特開2014−43008号公報 甲第8号証:特開平4−187407号公報 異議申立人の提出した上記甲第1号証ないし甲第8号証を、以下、「甲1」ないし「甲8」という。 2 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の概要 当審が令和3年5月10日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりであり、特許異議申立書に記載した申立理由2(甲1を主引用文献とする進歩性)を含むものである。 ・取消理由3(甲1を主引用文献とする進歩性) 本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 第5 当審の判断 当審は、以下に述べるように、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、取消理由(決定の予告)で通知した上記取消理由3によって、取り消すべきものであり、本件特許の請求項5に係る特許は、特許異議申立書に記載した申立理由によっては、取り消すことはできないと判断する。 1 取消理由(決定の予告)について 本件特許の請求項1ないし4に係る特許について、令和3年5月10日付けで取消理由(決定の予告)を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者は応答しなかった。 そして、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、この取消理由(決定の予告)によって取り消すべきものである。 2 取消理由(決定の予告)において採用しなかった申立理由について 上記1のとおり、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は取り消されることから、以下、請求項5に係る特許に対する申立理由である申立理由2(甲1を主引用文献とする進歩性)、申立理由3(サポート要件)、申立理由4(明確性要件)について検討する。 (1)申立理由2(甲1を主引用文献とする進歩性)について ア 証拠の記載事項等 (ア)甲1の記載事項等 a 甲1の記載事項 甲1には、ペレタイザについて、概略、次の記載がある(下線については当審において付与したものである。以下、同様。)。 「【請求項1】 押出筒の先端に装着されたダイス面中のノズルより押出される溶融樹脂を、ダイス面の先端表面に近接して配設された回転カッター刃によりペレット状に切断した後、水冷固化するようになっているペレタイザにおいて、 任意のカッター刃が溶融樹脂を切断するとき、該カッター刃がダイス面を一周する履歴中で接するノズル開口部分(Wn)の長さの和(ΣWn)の最大値(ΣmaxWn)と、該カッター刃とダイス面とが重なる部分の長さ(Lx)とが、 下記の関係式を満たすことを特徴とするペレタイザ。 ΣmaxWn/Lx≦0.2 ・・・<略>・・・ 【請求項7】 請求項1〜6のいずれか一項に記載のペレタイザを用いて高流動性溶融樹脂からペレットを製造することを特徴とするペレットの製造方法。 【請求項8】 高流動性溶融樹脂がエチレン系重合体又はプロピレン系重合体であることを特徴とする請求項7に記載のペレットの製造方法。」 「【0004】 近年、成形性や成形サイクル短縮の観点から、製造される樹脂の高流動化傾向が強まっている。樹脂の高流動化については、重合時に高流動樹脂を製造する方法もあるが、押出機内に過酸化物などを添加し変成させることによって、流動性を高めるという製法もよく知られている。さらに、上記変成過程を経ると、樹脂の分子量分布が狭くなるという特徴が見られることが一般的である。このような高流動あるいは/かつ分子量分布の狭い樹脂は、カッティングがむずかしいことが知られており、カッティング不良によって、数珠つなぎになったペレットやペレットにならなかった大きな樹脂が発生したり、さらにはカッター刃が折れてしまったりといったようなトラブルが多発している。 ・・・<略>・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 本発明の目的は、上記のような現状を鑑み、高流動かつ分子量分布の狭い、従来カッティングがむずかしいとされていた樹脂についても、カッティング不良がなく、安定にペレットを製造することができるペレタイザ及びこれを用いたペレットの製造方法を提供することを発明の課題とする。」 「【発明の効果】 【0017】 本発明のペレタイザ及びこれを用いたペレットの製造方法によれば、カッター刃が接するノズルの開口部分(Wn)の長さの和(ΣWn)と、該カッター刃とダイス面とが重なる部分の長さ(Lx)とが、特定の関係式を満たすように制御されてなることにより、高流動かつ分子量分布の狭い、従来カッティングがむずかしいとされていた樹脂についても、カッティング不良がなく、安定にペレットを製造することができるという効果がある。 特に、本発明は、具体的にはMFRが30g/min以上である樹脂のカッティングを安定的効率的に行うことができるため、カッティングされるポリマーのMFRが高いとき、具体的には30g/10min以上のときに、その効果がより顕著に発揮される。こういった高いMFRを持つ樹脂の代表的なものであるポリプロピレン系樹脂は、近年射出成形工程の生産性を向上させるために望まれて いるものであることから、これらの効率的な造粒に好適に用いることができる。 また、本発明のペレタイザは同時に流動性が比較的低い溶融樹脂のカッティングにも適用できることから、一台で低流動性溶融樹脂から高流動性溶融樹脂までの広い流動性の範囲のさまざまな樹脂の造粒工程に対応することができ、これらに好適に用いることができるという効果がある。 さらに、本発明のペレタイザによれば、カッティング不良がなく、安定にペレットが製造できることから、カッターの破損等がほとんどなく、低コスト、効率的にペレットを製造できるという効果がある。 また、本発明により、カッティング不良を生じないで安定に製造されたペレットは、切断後のペレットの形状欠陥が減少し、外観不良によって商品価値が低下することなく、また、押出あるいは射出成形時のホッパー部での引っかかり等を起こさないという効果がある。 さらに、本発明のペレタイザは、既存の各ペレタイザの小規模な改善を実施することによって、ほとんどの既存ペレタイザで実現できるため、設備を新規に導入したり、大規模な改善を行う必要がなく、容易にかつ低コストで高流動性溶融樹脂のペレットを安定に製造できるという効果がある。」 「【0021】 上記のようなペレタイザを用いるペレット製造工程において、スクリュー押出機(単軸押出機、二軸混錬機等)、ギヤーポンプ等の供給装置より、ダイス6の面に加圧された溶融樹脂が供給され、多数のノズル開口部分5から、連続的にストランド状で冷却水槽11に押し出される。連続的に冷却水槽11に押し出されるストランドは、カッティングを容易にするためにノズル開口部分5の出口で水に触れて冷却され、回転する複数枚のカッター刃がカッティング面全幅に接触し、連続的にノズル開口部分5より吐出されるストランドを切断する。」 「【0030】 本発明の好ましい態様においては、ダイスの外径は200mm以上であることが好ましい。また外径が大きいほうが生産性は高まるが、装置があまりにも大きすぎると保守が困難となるので、外径は1000mm以下が好ましい。ダイスの面積は20000〜200000mm2であることが好ましい。 また、ノズルの直径は、溶融樹脂や製造されるペレットサイズにもよるが、2.0mm〜4.0mm、より好ましくは2.2〜3.0mmである。ノズルの個数は300個以上が好ましく、また5000個以下が好ましい。開口部分の面積は600〜20000mm2であることが好ましい。 「開口部分の面積/ダイス面積」で求められるノズル開口率は、2.5〜12%、好ましくは3.0〜10%である。ノズル開口率が2.5%より狭すぎると、押し出し量が減ってしまい生産効率が悪化するおそれがある。12%より広すぎるとダイス温度のコントロール性が低下するおそれがあるため、好ましくない。 ノズル開口部分は、溶融樹脂の押出を調節するため、テーパー孔とすることもできる。 (一般に、ノズル開口部分同士の距離は通常1.0〜3.5mmであり、ノズル開口部分の中心間距離は通常4.5〜7.0mmである。) ダイスの大きさにもよるが、カッター刃の数は、10〜50個である。 また、カッターの材質は、SUS440C等のマルテンサイト系ステンレス、チタンカーバイド(TiC)等が好適に用いられる。 【0031】 本発明のペレタイザは、新規に設備を導入することで実現できることはもちろんのこと、既存の各ペレタイザの小規模な改善を実施することによって、ほとんどの既存ペレタイザで実現できる点が特徴の1つである。既存のペレタイザの場合は、本発明の要件を満たすものとすることができる方法ならば、適宜選択して実施することができるが、具体的には、例えば、既存のペレタイザのノズル開口部分をピンで埋めることによって実現することができる。また、新規な設備の場合は、上記方法以外に、前記要件を満たすように予めノズルを開孔しておくことも可能である。 【0032】 本発明のペレタイザを、既存のペレタイザのノズル開口部分をピンで埋めることによって実現した一例を図面に基いて説明する。図4において、例えば、カッター刃が接するノズルの開口部分Wnが2.4mmであり、ノズル開口部分は4個であるので、Wnの長さの和ΣWnである9.6mmと、該カッター刃とダイス面とが重なる部分の長さLxが85mmである場合は、ΣWn/Lxは0.11であるので、「ΣWn/Lx≦0.2」の関係式を満たし、本発明のペレタイザの要件を満たす。したがって、この部分に特に変更の必要はない。 しかし、図5において、図4と同様に、カッター刃が接するノズルの開口部分Wnが2.4mmであり、ノズル開口部分は8個であるので、Wnの長さの和ΣWnである19.2mmと、該カッター刃とダイス面とが重なる部分の長さLxが85mmである場合は、ΣWn/Lxは0.23であるので、上記の関係式を満たさない。そのため、図5においては、本発明のペレタイザの要件を満たすようにノズル孔(ノズル開口部分)の配置を考慮するか、あるいはすでに存在するものについては条件に適合するようにノズル孔をいくつか塞ぐ変更を実施すればよい。ここでは、ノズル孔を7個にすればよいため、ノズル孔を1つ塞ぐ変更を実施すればよい。どのノズル孔を塞ぐかは、適宜に決めることができる。ノズル孔を塞いだ例を図6に示す。 【0033】 したがって、本発明のペレタイザは、これを実現するために設備を新規に導入したり大規模な改善を行う必要がなく、容易にかつ低コストで高流動性溶融樹脂のペレットを安定に製造できるという効果をも奏するものである。」 「【実施例】 【0037】 本発明を以下に実施例を示して具体的に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限りこれら実施例によって制約を受けるものではない。なお、物性値の測定方法および装置は以下のとおりである。 【0038】 1.物性値の測定方法 (1)MFR測定 ポリプロピレン系重合体はJIS−K−6758により測定したメルトインデックス値を示す。 (2)Mw/Mn(分子量分布の指標)の測定方法 分子量分布の指標であるMw/Mnを算出するための、ゲル・パーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法の測定方法は以下のとおりである。 保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。 使用する標準ポリスチレンは何れも東ソー(株)製の以下の銘柄である。 F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、 A5000、A2500、A1000。 各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して較正曲線を作成する。 較正曲線は最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。 分子量への換算に使用する粘度式[η]=K×Mαは以下の数値を用いる。 PS:K=1.38×10−4、α=0.7 PP:K=1.03×10−4、α=0.78 なお、GPCの測定条件は以下の通りである。 装置:Waters社製GPC(ALC/GPC 150C) 検出器:FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器 (測定波長:3.42μm) カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本) 移動相溶媒:ο−ジクロロベンゼン 測定温度:140℃ 流速:1.0L/分 注入量:0.2ml 試料の調製:試料はODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)を用いて1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させる。なお、得られたクロマトグラムのベースラインと区間は、図7のように行う。 【0039】 2.使用したペレタイザ 以下のサイズをもつペレタイザを使用した。 ダイスの外径:500mm ダイスの内径:370mm カッター刃全長 L:129mm カッター部分長さ Lx:72mm ダイスノズル径 Wn:2.4mm これは、カッター刃が、一度に最高で9穴のノズル開口部分を一気に横切るような箇所が存在しているものであった。この場合、カッター部分長さLxに対するノズル開口部合計ΣWnの割合は以下の式より、0.300であった。この改善前ダイスを、比較例に用いた。 2.4×9÷72=0.300 【0040】 この改善前ダイスのノズル開口部分の一部を、直径2.4mmのアルミピンで埋めることにより開口部分を塞ぎ、ノズル開口部分の数を変える改善を施したダイスを、実施例に用いた。 なお、本実施例で用いるカッター部分長さLxが72mmであり、ダイスノズル系Wnが2.4mmである場合のΣmaxWn/Lxの値は、Wnの数により、表1のとおりとなる。 【0041】 【表1】 ![]() 【0042】 3.使用した樹脂 以下の表2に示すようなMFR及び分子量分布(Mw/Mn)を有するポリプロピレン単独重合体を使用した。 樹脂A: Zn系触媒によりスラリー法を用いて製造したものである。 樹脂B: Zn系触媒によりスラリー法を用いて製造したものである。 樹脂C: 樹脂Aを押出機内に過酸化物を添加することにより変成したものである。 樹脂D、E、F 樹脂Bを押出機内に過酸化物を添加することにより変成したものであり、添加する過酸化物の量によって、変成度合いを変化させたものである。 【0043】 【表2】 ![]() 【0044】 (比較例1) 上記ペレタイザにおいて、改善前のダイスを用いた。これは、一度に最高で9穴のノズル開口部分を一気に横切るような箇所が存在しているものであった。この場合のカッター部分長さに対するノズル開口部合計の割合は、0.300であった。 このペレタイザを用いて、前述の各樹脂をそれぞれ溶融樹脂として使用し、ペレット製造を行ったところ、樹脂C〜Fのカッティングにおいて、ペレタイザ運転開始直後にカッティング不良によるトラブル停止が生じた。カッティング不良の内容を見ると、カッター刃にカッティングできなかった樹脂塊の巻き付きが多数発見され、カッター刃の折損が、全カッター刃数18本のうち、半数以上に見られた。樹脂A、Bのカッティングにおいては、カッティング不良やトラブルが全くなく、ペレットを製造することができた。 【0045】 (比較例2) 上記ペレタイザにおいて、カッター刃が一度に横切るノズル穴数を最高8穴になるようノズルを塞いだ。この場合のカッター部分長さに対するノズル開口部合計の割合は、0.233であった。 このペレタイザを用いて、前述の各樹脂をそれぞれ溶融樹脂として使用し、ペレット製造を行ったところ、樹脂C、E、Fのカッティングにおいて、ペレタイザ運転開始直後にカッティング不良によるトラブル停止が生じた。カッティング不良の内容を見ると、カッター刃にカッティングできなかった樹脂塊の巻き付きが多数発見され、カッター刃の折損が、全カッター刃数18本のうち、半数以上に見られた。樹脂A、B、Dのカッティングにおいては、カッティング不良やトラブルが全くなく、ペレットを製造することができた。 【0046】 (実施例1) 上記ペレタイザにおいて、カッター刃が一度に横切るノズル穴数を最高6穴になるようノズルを塞いだ。この場合のカッター部分長さに対するノズル開口部合計の割合は、0.200であった。 このペレタイザを用いて、前述の各樹脂をそれぞれ溶融樹脂として使用し、ペレット製造を行ったところ、全ての樹脂において、カッティング不良やトラブルが全くなく、ペレットを製造することができた。 【0047】 (実施例2) 上記ペレタイザにおいて、カッター刃が一度に横切るノズル穴数を最高4穴になるようノズルを塞いだ。この場合のカッター部分長さに対するノズル開口部合計の割合は、0.133であった。 このペレタイザを用いて、前述の各樹脂をそれぞれ溶融樹脂として使用し、ペレット製造を行ったところ、全ての樹脂において、カッティング不良やトラブルが全くなく、ペレットを製造することができた。」 「【図1】 ![]() 」 「【図4】 ![]() 」 「【図5】 ![]() 」 「【図6】 ![]() 」 b 甲1に記載された発明 甲1の請求項8、段落【0021】の記載からみて、甲1には、以下の発明が記載されているといえる。 「下記のペレタイザを用いて高流動性溶融樹脂であるエチレン系重合体又はプロピレン系重合体からペレットを製造するペレットの製造方法。 押出筒の先端に装着されたダイス面中のノズルより冷却水槽に押出されるエチレン系重合体又はプロピレン系重合体である溶融樹脂を、ダイス面の先端表面に近接して配設された回転カッター刃によりペレット状に切断した後、水冷固化するようになっているペレタイザにおいて、 任意のカッター刃が溶融樹脂を切断するとき、該カッター刃がダイス面を一周する履歴中で接するノズル開口部分(Wn)の長さの和(ΣWn)の最大値(ΣmaxWn)と、該カッター刃とダイス面とが重なる部分の長さ(Lx)とが、下記の関係式を満たすペレタイザ ΣmaxWn/Lx≦0.2」(以下、「甲1方法発明」という。) (イ)甲7の記載事項 甲7には、オレフィン系重合体ペレットについて、概略、次の記載がある。 「【請求項5】 示差走査熱量計(DSC)で測定した融点(Tm)が120℃以上155℃以下であり、引張弾性率が30MPa以上120MPa以下であるオレフィン系重合体を、溶融状態で押出機のダイスから押出し、下記(1)または(2)の方法によってペレット状にカッティングする工程を有し、 シリコーンオイルを0.1質量ppm以上40質量ppm以下含むオレフィン系重合体ペレットを得ることを特徴とするオレフィン系重合体ペレットの製造方法。 (1)シリコーンオイルを添加した水中でペレット状にカッティングする (2)ストランド状に引き取り、シリコーンオイルを添加した水中で固化後ペレット状にカッティングする」 「【0022】 オレフィン系重合体のメルトフローレート(MFR)としては、0.1g/10分以上30g/10分以下が好ましい。MFRの下限はより好ましくは0.5g/10分、上限はより好ましくは20g/10分である。MFR=0.1g/10分未満、及び、MFR=30g/10分超は、軟質樹脂としての用途が制限される場合がある。」 「【0092】 [製造例1]プロピレン系重合体(A−1)の製造 (1)触媒の調製 シリカ担持メチルアルミノキサン(担持MAO、Al担持量:14重量%)にジメチルシリレンビス(2−メチル−4、5ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロライド(錯体A)及び(1、2'−ジメチルシリレン)(2、1'−ジメチルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライド(錯体B)を、担持MAO中のAlに対して、モル比で錯体A中のZrが0.0007、錯体B中のZrが0.001になるように担持した固体触媒Aを調製した。更に、トルエン溶媒中、固体触媒1kgに対しプロピレン1.35kgを、25℃、1時間で供給し、更に、1時間保持することで、予備重合を行い、予備重合触媒Aを得た。 【0093】 (2)プロピレン・エチレンブロック共重合 350Lの重合槽に、液体プロピレン100kgを仕込み、トリイソブチルアルミニウム100ミリモルを投入した後、40℃で固体触媒Aとして17gに相当する量の予備重合触媒Aを投入して重合を開始した。 【0094】 重合開始から40分後にエチレンを重合槽に導入し、共重合を開始した。エチレン導入と同時に50℃まで昇温し、50℃で気相部のエチレン濃度が7.5mol%となるようにエチレンを供給し、70分間、共重合を継続した。 【0095】 70分後に、メタノール100mLを高圧窒素で重合槽に投入し、重合を停止した。パウダースラリーをフラッシュして、得られたパウダーを加熱乾燥することによりプロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)を得た。 【0096】 得られたプロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)に、酸化防止剤としてスミライザーGP[住友化学(株)製]を1100ppm、過酸化物としてTr301−10PP[化薬アクゾ(株)製]を1.8重量%添加して押出機内で溶融混練し、冷却水中に押出し、冷却・固化させると同時にカッター刃でペレット状に切断するアンダーウォーターカット法でペレット化して、プロピレン系重合体(A−1)のペレットを製造した。 得られたプロピレン系重合体(A−1)は優れた透明性を有していた。樹脂特性を表1に示す。 【0097】 [製造例2]プロピレン系重合体(A−2)の製造 製造例1において、エチレン導入後の重合時間(メタノール投入までの時間)を90分としたことを除き、製造例1と同様にして、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2)を調製した。次いで製造例1と同様にペレット化して、プロピレン系重合体(A−2)のペレットを得た。得られたプロピレン系重合体(A−2)は優れた透明性を有していた。樹脂特性を表1に示す。 【0098】 [製造例3]プロピレン系重合体(A−3)の製造 製造例1において、エチレン導入後の重合時間(メタノール投入までの時間)を90分とし、気相部のエチレン濃度を8.0mol%になるようにエチレンを供給したことを除き、製造例1と同様にして、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−3)を調製した。次いで製造例1と同様にペレット化して、プロピレン系重合体(A−3)のペレットを得た。得られたプロピレン系重合体(A−3)は優れた透明性を有していた。樹脂特性を表1に示す。 【0099】 [製造例4]プロピレン系重合体(B)の製造 (1)固体触媒及び予備重合触媒の調製 製造例1において、ジメチルシリレンビス(2−メチル−4、5ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロライド(錯体A)を使用しないことを除き、製造例1と同様にして、固体触媒B及び予備重合触媒Bを調製した。 【0100】 (2)プロピレン重合 350Lの重合槽に、液体プロピレン100kgを投入し、トリイソブチルアルミニウム100ミロモルを投入した後、40℃で固体触媒Bとして62gに相当する量の予備重合触媒Bを投入して重合を開始した。 【0101】 重合開始から40分後にエチレンを重合槽に導入し、共重合を開始した。40℃で気相部のエチレン濃度が7.2mol%となるようにエチレンを供給し、40分間、共重合を継続した。 【0102】 40分後に、メタノール200mLを高圧窒素で重合槽に投入し、重合を停止した。パウダースラリーをフラッシュして、得られたパウダーを乾燥することによりプロピレン系重合体(B)を得た。 次いで製造例1と同様にペレット化して、プロピレン系重合体(B)のペレットを得た。 樹脂特性を表1に示す。 【0103】 ・プロピレン系重合体(C) プロピレン系重合体(C)として、(株)プライムポリマー製F−794NVを使用した。樹脂特性を表1に示す。 【0104】 【表1】 ![]() ロータリーバルブ(RV)の運転性は、前記の方法により評価した。高い引張弾性率を持つプロピレン重合体(C)のペレット、及び、低い引張弾性率ながら高融点成分を持たないプロピレン共重合体(B)のペレットでは、ロータリーバルブの駆動モーター電流値の振れ幅はモーター電流値平均の3%以内であり、非常に安定した運転が可能であった。 【0105】 一方、高融点成分を含有し、かつ低い引張弾性率を持つ、プロピレン系重合体(A−1)〜(A−3)は、ロータリーバルブのブレードとケーシング間にペレットが噛み込み、ロータリーバルブの駆動モーターの定格アンペアを超過して過負荷となり停止し、安定運転を行うことができなかった。」 (ウ)甲8の記載事項 甲8には、シンジオタクチックポリプロピレンの造粒方法について、概略、次の記載がある。 「1.重合体主鎖の立体構造がシンジオタクチック構造を有するポリプロピレンを溶融させ、ダイスよりポリプロピレンの溶融状ストランドを押し出し、この溶融ストランドをペレタイザーで引き取りながら水冷し、固化したストランドを切断してペレットとする方法であって、溶融状のストランドが最初に接する、直径がAであって、その回転方向に深さBの溝を有するロールの回転速度ωとペレタイザーにおけるストランドの引き取り速度Vとが式(1) 0.5V<(A−2B)πω<V(1) (式中、Aはロールの直径(mm)、Bは溝の深さ(mm)、ωはロールの回転速度(rpm)、Vはストランドの引取り速度である。)の関係を満足させ、かつ溶融ストランドが式(2)および(3) Log(t+1)>20/T (2) 100>T>30 (3) (式中、tは冷却時(秒)、Tは冷却温度(℃)である。)の関係をともに満足する冷却温度および冷却時間をもって冷却されることを特徴とするシンジオタクチックポリプロピレンの造粒方法。」(特許請求の範囲) 「実施例4 実施例1と同様な触媒、助触媒を用い、塊状重合し、ホモシンジオタクチックポリブロビレンの粉末を得た。融点Tmは、142℃であり、ラセミペンタッド(rrrr)は、0.88であった。実施例1と同様に添加剤を添加し、シリンダー温度を180〜200℃、ダイス温度を200℃とした以外は、実施例1と同様にして、溶融ストランド3を押し出し、第3図に示す構造のロール5(ロールの直径が70mm、ロール上に深さが8mmの溝22、22’、22″・・・を有するロール5の側面に、8枚の羽根31、31’、31″・・・を取付け、羽根の周囲を樹脂製の円筒32で覆い、この円筒に取付けた筒33より、ストランドを冷却する水の一部を流し、羽根を取付けたロールを回転させ、注入する水量を調整することにより回転数が調整出来るようにしたもの)を水槽4に取付け、水槽の中の冷却水の温度を50℃、ロ−ルの回転数を15rpm、ペレタイザー8の引張速度を3.5m/分として造粒し、シンジオタクチックポリプロピレンのペレット(メルトフローインテックス40g/10分)を得た。」(第6ページ右上欄第4行〜左下欄第5行) (2)対比・判断 請求項1を引用する本件特許発明5と甲1方法発明とを対比すると、甲1方法発明の「エチレン系重合体又はプロピレン系重合体である溶融樹脂」は、本件特許発明5の「ポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂」に相当する。 そうすると、両者は、以下の点で一致し、相違する。 <一致点> 下記のペレタイザを用いて、ポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂からペレットを製造するペレットの製造方法。 押出筒の先端に装着されたダイス面中のノズルより冷却水槽に押出されるポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂を、前記ダイス面の先端表面に近接して配設された回転カッター刃により前記冷却水槽でペレット状に切断されるとともに、水冷固化するようになっているペレタイザ。 <相違点4> ペレタイザについて、本件特許発明5が「同一のカッター刃の刃面と接する複数のノズルについて、全ての隣り合う当該ノズル間の距離(Lz)が6mm以上となるように間隔を置いて配置されている」と特定しているのに対し、甲1方法発明はそのような特定がされていない点。 <相違点6> ペレットにするポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂について、本件特許発明5が「融点110〜145℃、曲げ弾性率50〜350MPa」と特定しているのに対し、甲1方法発明はそのような特定がされていない点。 そこで、上記相違点について検討する。 事案に鑑み、<相違点6>について検討する。 甲1において、実施例において具体的に効果の実証がされている樹脂は、Zn系触媒によりスラリー法を用いて製造したポリプロピレン単独重合体である樹脂Aを押出機内に過酸化物を添加することにより変成したMFR、Mw/Mnが40、3.5である樹脂C、Zn系触媒によりスラリー法を用いて製造したポリプロピレン単独重合体である樹脂Bを押出機内に過酸化物を添加することにより変成したMFR、Mw/Mnが12、6.5である樹脂D、同じくMFR、Mw/Mnが75、4.9である樹脂E、同じくMFR、Mw/Mnが100、3.8である樹脂Fであるところ、これら実施例に記載のポリプロピレン単独重合体が、「融点110〜145℃、曲げ弾性率50〜350MPa」という物性を満足するとの理由を甲1や他の証拠及び当業者の技術常識を参酌しても見つけることはできない。 また、甲1方法発明は、甲1の段落【0007】等の記載より、「高流動かつ分子量分布の狭い、従来カッティングがむずかしいとされていた樹脂についても、カッティング不良がなく、安定にペレットを製造することができるペレットの製造方法を提供すること」を課題とするものであり、その段落【0017】には、「特に、本発明は、具体的にはMFRが30g/min以上である樹脂のカッティングを安定的効率的に行うことができるため、カッティングされるポリマーのMFRが高いとき、具体的には30g/10min以上のときに、その効果がより顕著に発揮される。」と記載されている。 そして、ポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂において、「流動性(MFR)」及び「分子量分布」の特性と、「曲げ弾性率」との特性において相関性を有することは、異議申立書で添付された証拠に示されていないし、そのような技術常識もない。 なお、甲7には、その【請求項5】において、「示差走査熱量計(DSC)で測定した融点(Tm)が120℃以上155℃以下であり、引張弾性率が30MPa以上120MPa以下であるオレフィン系重合体を、溶融状態で押出機のダイスから押出し、ペレット状にカッティングする工程を有し、シリコーンオイルを0.1質量ppm以上40質量ppm以下含むオレフィン系重合体ペレットを得ることを特徴とするオレフィン系重合体ペレットの製造方法。」について記載されているところ、「曲げ弾性率」に関する情報はない。また、その段落【0022】には、「オレフィン系重合体のメルトフローレート(MFR)としては、0.1g/10分以上30g/10分以下が好ましい。」とされており、甲1方法発明において指向する樹脂のMFRの範囲外のものである。 また、甲8も、その請求項1に、「重合体主鎖の立体構造がシンジオタクチック構造を有するポリプロピレンを溶融させ、ダイスよりポリプロピレンの溶融状ストランドを押し出し、この溶融ストランドをペレタイザーで引き取りながら水冷し、固化したストランドを切断してペレットとする方法」と記載されているところ、「曲げ弾性率」に関する情報はない。また、具体的な樹脂として、実施例4で「シンジオタクチックポリプロピレンのペレット(メルトフローインテックス40g/10分)」で用いられているが、当該樹脂は、甲1方法発明において指向する樹脂のMFRの範囲外のものである。 そうすると、甲1方法発明における対象樹脂として、ポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂であっても、「流動性(MFR)」及び「分子量分布」の特性と相関関係を有しない、「曲げ弾性率50〜350MPa」である樹脂とする動機付けは甲1にはないし、また、他の証拠にもない。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明5は、請求項2ないし4を引用する本件発明との対比においても<相違点6>は同様に存在するから、甲1方法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)異議申立人の主張 異議申立人は、異議申立書の第50ないし51ページにおいて、ペレタイザにより製造されるペレットに要求される強度に応じて、材料の曲げ弾性率が適宜選択されるところ、ペレットの材料の曲げ弾性率を「50〜350MPa」を選択することは、設計的事項である旨主張している。 しかしながら、上記(2)で示したように、甲1方法発明は、「高流動かつ分子量分布の狭い、従来カッティングがむずかしいとされていた樹脂についても、カッティング不良がなく、安定にペレットを製造することができるペレットの製造方法を提供すること」を課題とするものであることから、甲1方法発明において、「曲げ弾性率50〜350MPa」である樹脂とする動機付けは甲1にはないし、また、他の証拠にもなく、さらに適宜選択し得る事項であるともえない。 よって、異議申立人の上記主張は採用できない。 (4)申立理由2についてのむすび したがって、本件特許発明5は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、申立理由2によっては、本件特許の請求項5に係る特許を取り消すことはできない。 2 申立理由3(サポート要件)について (1)サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の 範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載さ れた発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記 載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであ るか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照 らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検 討して判断すべきものである。 (2)特許請求の範囲の記載 特許請求の範囲の記載は、上記「第3 本件特許発明」に記載のとおりである。 (3)本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載 「【技術分野】 【0001】 本発明は、ペレタイザ、及び、これを用いたペレットの製造方法に関し、低融点かつ軟質である、従来カッティングが難しいとされていた樹脂について、品質不良となる融着ペレットがなく、安定にペレットを製造することができるペレタイザ、及び、これを用いたペレットの製造方法に関する。 【背景技術】 【0002】 樹脂ペレットを製造するペレタイザは、押出機の先端部に設けられた複数個のノズルを有するダイスに対面して、複数のカッター刃を先端に備えたカッターユニットを設けている。カッター刃はダイス面に接触した状態で回転し、ダイスから押し出される溶融樹脂を切断することによって、ペレットを生産している(例えば、特許文献1〜3)。 【0003】 図1は一従来例によるペレタイザ装置の概要を示す。該装置は、押出機の押出スクリュー1を内蔵する押出筒2の先端側に、ブレーカプレート3を介して押出ヘッド4が取付けられ、この押出ヘッド4の先端には、多数のノズル孔(ノズル開口部分)5を備えたダイス6および胴部(カッターボックス)7が装着されている。この胴部7にはカッター軸8が押出スクリュー1と同心上に軸支され、このカッター軸8には、ダイス6の先端表面に近接して配設されたカッター刃9が取付体(カッターホルダ)10を介して取付けられている。 胴部7の内周面に冷却水槽11が形成されるとともに、カッター軸8はモータによって高速で回転駆動され、ノズル孔5から押し出された溶融樹脂はカッター刃9によってペレット状に切断されるとともに、カッター刃9の遠心力によって放射方向に飛散し、冷却水槽11で冷却固化され、冷却水とともに排出口12から排出される。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0004】 【特許文献1】実開平1―101809号公報 【特許文献2】実開平6―24913号公報 【特許文献3】特開2003―211442号公報 【特許文献4】特開2008―246854号公報 【特許文献5】特開2008?307711号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 低融点かつ軟質の特性を持った溶融樹脂は、カッティングが難しいことが知られており、ペレット同士が完全に結晶固化しないうちに冷却水槽内で接触することで、図10に示すような複数個のペレットが融着した異形体ペレットを生成してしまう。 このような異形体ペレットは、需要者側の装置及びプロセス、特に秤量機での添加不良や成型機内での可塑化不良を発生させトラブルを引き起こすことがあるため、融着ペレットは出来るだけ低減することが望まれている。 【0006】 上記のような問題を解決するためには、従来からいくつかの方法が知られており、例えば、特許文献4には、ペレット同士の互着を防止するため冷却水へシリコーンオイルを添加する方法が提案されている。 しかしながら、シリコーンオイルや界面活性剤のような添加物が、製品であるペレットの表面に残留し、そのまま需要者に供給された場合、用途によってはコンタミとなる可能性がある。 また、ペレット融着を防止するための手段としては、通常、樹脂温度やダイス熱媒温度を低下させる方法等が挙げられる。 さらに、ペレタイザ運転操作上、最も効果がある対処策として冷却水の温度を低下させる方法が挙げられる。 しかし、過度な冷却水温度の低下は、ダイスのノズル目詰まりによる極端な小粒ペレットを発生させ、さらには、目詰まりの無いノズルにおいて局部的な樹脂線速を増大させることにより、大粒ペレットや、図11に示すような樹脂を介して数珠繋ぎのようになった連珠ペレット、つまり融着ペレットとは別の異形体ペレットを発生させてしまうという問題がある。 【0007】 本発明の目的は、上記のような現状を鑑み、低融点かつ軟質である従来カッティングが難しいとされていた樹脂について、融着ペレットがなく、安定にペレットを製造することができるペレタイザ、及び当該ペレタイザを用いたペレットの製造方法を提供することである。」 「【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明者は、上記課題を解決すべく種々検討を行った結果、複数のノズルを有するダイス面に対して複数のカッター刃を先端に備えたペレタイザにおいて、ダイスのノズル間隔を下記のように制御することで、融着ペレットが顕著に低減されることを見出し、本発明の完成に至った。 【0009】 本発明のペレタイザは、押出筒の先端に装着されたダイス面中のノズルより押出されるポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂を、前記ダイス面の先端表面に近接して配設された回転カッター刃によりペレット状に切断した後、水冷固化するようになっているペレタイザにおいて、 同一のカッター刃の刃面と接する複数のノズルについて、隣り合う当該ノズル間の距離(Lz)が6mm以上となるように間隔を置いて配置されていることを特徴とする。 【0010】 本発明のペレタイザにおいて、前記カッター刃が接するノズルの開口部分の長さ(Wn)の和(ΣWn)の最大値(ΣWn)maxと、該カッター刃と開口部を含む前記ダイス面とが重なる部分の長さ(Lx)とは、下記の関係式を満たすことが好ましい。 (ΣWn)max/Lx≦0.2 【0011】 本発明のペレタイザにおいて、前記ダイス上に配置された任意の三つのノズル穴中心点により、外周長が最小となるように構成される三角形について、その外周長(Ly)とノズル穴径(d)とが下記の関係式を満たすことが好ましい。 Ly−3×d≧20.5 【0012】 本発明のペレタイザにおいて、前記水冷固化において、冷却水槽に注入される冷却水の温度が20℃を超え、45℃以下であることが好ましい。 【0013】 本発明のペレットの製造方法は、前記ペレタイザを用いて、融点110〜145℃、曲げ弾性率50〜350MPaのポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂からペレットを製造することを特徴とする。」 「【発明の効果】 【0014】 本発明のペレタイザ及びこれを用いたペレットの製造方法によれば、カッター刃が溶融樹脂を切断する際、カッター刃面上に並んだダイスノズル同士の間隔を一定の距離以上となるように制御し、さらには、このようなカッター刃面上に並んだノズルとこれらノズルから吐出される溶融樹脂の切断を考慮すること無く、ダイスノズル間隔が一定の距離以上となるようなノズル配置のダイスを有するペレタイザを使用することにより、低融点かつ軟質を特徴とした、従来カッティングが難しいとされていた樹脂についてカッティング不良がなく、安定にペレットを製造することができる。 【0015】 本発明は、具体的には融点が110〜145℃以下かつ曲げ弾性率が50〜350MPa以下である樹脂のカッティングを安定的効率的に行うことができる。 従来技術では、上述したような低融点かつ軟質の特徴を持つポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂の造粒に関しては、冷却水の温度を極度に低下させ対応せざるを得ず、この際ダイス目詰まりによる異なる形態の異形ペレットの生成や歩留まりの問題がある。 これに対し、本発明によれば、ダイスノズル間隔に工夫を施すことで、冷却水の極端な温度低下を行わなくても融着ペレットの発生を抑制することができ、融着ペレット発生の抑制とダイス目詰まり抑制を両立しながら安定的に造粒することができる。 【0016】 また、本発明のペレタイザは、特許文献5に記載されているような高流動樹脂のカッティングにも好適である。 さらに、これら低融点、軟質、高流動といった樹脂特性に相反する樹脂特性を持つ溶融樹脂のカッティングにも適用できる。 そのため、一台のダイスで、冷却水の温度やその他の運転条件を適宜調整することにより、低融点から高融点、軟質から硬質、また低流動性から高流動性までの幅広い特徴を持ったさまざまな樹脂の造粒工程に対応することができ、これらに好適に用いることができる。 【0017】 さらに、本発明のペレタイザによれば、カッティング不良がなく、安定にペレットが製造できることから、カッターの破損等がほとんどなく、低コスト、且つ効率的にペレットを製造できる。 【0018】 また、本発明により、カッティング不良を生じないで安定に製造されたペレットは、ペレット同士が融着した異形ペレットやペレット形状の不揃いが減少するので、外観不良によって商品価値が低下することなく、また、押出あるいは射出成形時のホッパ部での引っかかりや成型機内での可塑化不良等を起こさないという効果がある。」 「【発明を実施するための形態】 【0020】 以下に本発明のペレタイザ及びこれを用いたペレットの製造方法について、図面に基づいて説明する。 【0021】 1.ペレタイザ 図2は、本発明のペレタイザにおける、ダイス面のノズル開口部分の配置の代表的な例である。 また、図3は、本発明のペレタイザにおける、ダイス面にカッター軸およびカッター刃等からなるカッターヘッドを被せた代表的な例である。 なお、図4は図3の(a)部分の、図5は、図3の(b)部分の拡大図である。図6〜7は、図5の比較例の一例を示す図である。 図2のダイス面は、図1のノズル開口部分5を備えたダイス6部分を軸方向(以下「X軸」ともいう。)から見たものであり、図3のカッター軸およびカッター刃は、図1のカッター軸8及びカッター刃9部分を同じくX軸方向から見たものにあたる。 【0022】 本発明のペレタイザの基本的構成は従来公知のものと同様であり、主に、シリンダー、押出スクリュー、ダイス、カッターヘッド、冷却水槽により構成される。 具体的には、一例として、図1に示すように、カッターヘッドは、カッター軸8と直交するように放射状に配置された複数のカッター刃9、カッター刃9をカッター軸8に取り付けるためのカッターホルダ10、カッター刃9を均等に周方向に配分し、位置決めするカッターサポート、カッター軸8からの回転力をカッターホルダに伝達するためのキーを有し、カッター刃9はボルトによって、カッターホルダ10に固定され、カッターホルダ10とカッターサポートは、ボルトによってカッター軸8に固定される。このようにカッターヘッドは、カッター軸8のX軸まわりの回転駆動力とX軸方向の加圧力をカッター刃9に伝達する。 また、冷却水槽11にはペレットの冷却と輸送を担う冷却水循環装置が接続されており、ダイス6の面の多数のノズル開口部分5は、円盤状のダイス6の面の表面(カッティング面)に配置される。ダイス6の内部には、ダイスを加熱するための熱媒通路(図示せず)が設けられており、ダイスは必要に応じて適温に加熱される。 【0023】 上記のようなペレタイザを用いるペレット製造工程において、スクリュー押出機(単軸押出機、二軸混錬機等)、ギヤーポンプ等の供給装置より、ダイス6の面に加圧された一般的に200℃以上の溶融樹脂が供給され、多数のノズル開口部分5から、連続的にストランド状で冷却水槽11に押し出される。連続的に冷却水槽11に押し出されるストランドは、カッティングを容易にするためにノズル開口部分5の出口で一般的に60℃の冷却水に触れて冷却され、回転する複数枚のカッター刃がカッティング面全幅に接触し、連続的にノズル開口部分5より吐出されるストランドを切断する。 冷却水槽11に注入される冷却水の温度は、特に限定されないが、融着ペレットの発生を抑制し、且つ、ダイス目詰まりを抑制する観点から、20℃を超え、45℃以下であることが好ましい。 【0024】 切断の際に、カッター刃9を保持するカッターヘッドは加圧駆動源によりX軸方向の押し付け力を調整し、カッター軸8を介して軸方向に前後に移動され、カッター刃9をカッティング面に隙間無く押し付けることも可能である。 【0025】 カッティング面とカッター刃の隙間の有無は、取り扱う樹脂によって適宜選定される。カッティングが難しいポリプロピレン系樹脂の場合は、カッティング面とカッター刃の平行度3/100mm以下の精度を要求されるので、隙間無しの接触カットを採用することが好ましい。 【0026】 カッター刃をダイス面の切断面に摺動させて樹脂をカットする場合には、それらの摩耗を極力防止してメンテナンスコストを低減するのが肝要であるため、ダイス面については、超硬チップ、チタンカーバイド(TiC)、タングステンカーバイド(WC)等よりなる硬質プレートを貼り付けて切断面を構成したり、その硬質金属を溶射肉盛りまたはHIPによる加圧焼結によって接合したりして、ダイプレートの切断面の耐摩耗性を向上させる方法が公知であり、これらを用いることができる。 また、カッター刃については、カッター刃自体の素材としてチタンカーバイドや工具鋼等の硬質金属を使用したり、ステンレス鋼等の一般鋼よりなる母材にチタンカーバイドよりなる刃先を接合したものや、その母材表面に高硬度のコーティング層を形成することによって、カッター刃の耐摩耗性を向上させる方法が公知であり、これらを用いることができる。 【0027】 本発明のペレタイザは、カッター刃がダイスノズルから吐出された溶融樹脂を切断する際、同一のカッター刃の刃面と接する複数のノズルについて、隣り合う当該ノズル間の距離(Lz)が6mm以上となるように間隔を置いて配置されていることを特徴とする。 なお、カッター刃と接するノズルの状態は、カッター刃が一回転する際の瞬間瞬間で異なるものであるが、本発明においては、一周する履歴におけるどの状態であっても、Lzが6mm以上を満たすことが好ましい。 隣り合うノズル間の距離(Lz)とは、すなわち、図5に示すように、同一のカッター刃の刃面と接し且つ隣り合うノズルのノズル孔における、一方のノズル孔の外周における他方のノズル孔に最も近い位置から、他方のノズル孔の外周における一方のノズル孔に最も近い位置までの距離をいう。 Lzが6mmより小さいと、融着ペレットが顕著に発生してしまうためカッティング不良となり好ましくない。そのため、融着ペレットを主としたカッティング不良の発生を抑制する効果を高める観点から、Lzは、好ましくは、8mm以上であり、より好ましくは、10mm以上であり、より更に好ましくは、11mm以上である。また、Lzを大きくし過ぎると、ダイス穴数が減少することになる。そのため、生産性の低下を抑制する観点から、Lzは、好ましくは17mm以下、更に好ましくは15mm以下である。 また、Lzを上記範囲とすることでカッティング不良の発生を抑制することができるほか、溶融樹脂切断の際のカッター刃にかかる負荷軽減および負荷均一化により、カッター刃の刃欠けや折損に至ることも無く安定な運転を実施することが可能となる。 【0028】 本発明のペレタイザは、溶融樹脂切断の際に、カッター刃が接するノズルの開口部分の長さ(Wn)の和(ΣWn)の最大値(ΣWn)maxと、該カッター刃とダイス面とが重なる部分の長さ(Lx)とが、下記の関係式を満たすことを特徴とする。ここで、(ΣWn)maxは、ノズルの開口部分とカッター刃が接する線分の和において、カッター刃がダイス面を1周した時の最大値を意味する。 (ΣWn)max/Lx≦0.2 【0029】 上記カッター刃が接するノズルの開口部分とは、それぞれ図4においてはW1〜W3で、図6においてはW1〜W8で表される部分を示す。ノズルの開口部分からは溶融樹脂が押出され、押出された樹脂はカッター刃により切断される。 また、カッター刃が接するノズルの開口部分の長さ(Wn)の和(ΣWn)とは、それぞれ図4においてはW1+W2+W3により、図6においてはW1+W2+W3+W4+W5+W6+W7+W8で求められる、長さの和を示す。 さらに、カッター刃とダイス面とが重なる部分の長さ(Lx)とは、カッター刃と開口部を含むダイス面とが実際に重なっている部分の長さのことであり、図4においてLxで示される長さを示す。 【0030】 一般に、ダイス製作の際にノズルの配置を効率的に行うと、1枚のカッター刃がある瞬間に横切るノズルの数やノズル開口部分の長さは、角度によってまちまちである。例えばノズルの数に関しては、図4のように3個のケースもあれば、図6のように8個となるケースもあり得るし、図9のようにノズル毎にノズル開口部分の長さ(Wn)が異なるケースもある。 本発明においては、上記WnとLxとは、カッター刃がダイス面を1周する際、何れの位置にあってもΣWn/Lx≦0.2の関係式を満たすことが必要であり、即ち、(ΣWn)max/Lx≦0.2の関係式を満たすことが必要である。好ましくは、(ΣWn)max/Lx≦0.17の関係式を満たす。更に好ましくは(ΣWn)max/Lx≦0.14である。 具体的に示すと、本発明では、カッター刃の、刃の部分の全長(図4のLx)に対して、ある瞬間に横切るノズルの開口部分の長さの和は、図4であれば(W1+W2+W3)、図6であれば(W1+W2+W3+W4+W5+W6+W7+W8)であるが、その割合が、カッター刃が1周した場合にダイス面の何れの場所においても(ΣWn)max/Lx≦0.2、好ましくは(ΣWn)max/Lx≦0.17、さらに好ましくは(ΣWn)max/Lx≦0.14となるようにすることである。 ΣWn/Lx≦0.2であることにより、融着ペレットを主としたカッティング不良の発生を顕著に抑制することができる。 また、ΣWnの最小値は0であり、これは、カッター刃がノズルの開口部分を横切らないことを意味する。 さらに、(ΣWn)maxの下限も理論的には0であるが、0は即ちノズルが全く開口していないことを意味しており、0に近いほど生産性が低下する傾向にある。そのため、生産性の低下を抑制する観点から、好ましくは、0.09≦(ΣWn)max/Lxである。 【0031】 本発明のペレタイザは、図8のように、ダイス上に配置された任意の三つのノズル穴中心点により、外周長が最小となるように構成される三角形について、その外周長(Ly)とノズル穴径(d)とが、下記の関係式を満たすことを特徴とする。 Ly−3×d≧20.5 Ly−3×d<20.5であると、融着ペレットの発生を抑制する効果が低くカッティング不良となり好ましくない。そのため、融着ペレットを主としたカッティング不良の発生を抑制する効果を高める観点から、好ましくは、Ly−3×d≧21.0であり、更に好ましくは、Ly−3×d≧21.5である。 また、Ly−3×dの値が大きいことはすなわち、カッター刃が溶融樹脂を切断するか否かに依らず、近接する複数のダイスノズル開口部についてその間隔が大きいことを意味する。したがって、該ノズル間隔が大き過ぎるとダイスノズル穴数が減少することになる。そのため、生産性の低下を抑制する観点から、好ましくは、32≧Ly−3×dであり、さらに好ましくは28≧Ly−3×dである。 本発明において、ノズル穴とは、開口しているノズルの孔(開口部分)のことをいう。 一方、本発明において、ノズル開口部分長さWnとは、カッター刃が一回転する際、その瞬間瞬間におけるカッター刃とあるノズル外周との二つの交点について、その交点間の距離のことをいう。 【0032】 本発明の好ましい態様においては、ダイスの外径は200mm以上であることが好ましい。また外径が大きいほうが生産性は高まるが、装置があまりにも大きすぎると保守が困難となる他、カッター刃の反りによってダイス面とのアライメントが狂い、カッティング不良を生じ易くなる。そのため、カッティング不良の発生を抑制する観点から、外径は1000mm以下が好ましい。ダイスの面積は20000〜200000mm2であることが好ましい。 また、ノズルの直径は、溶融樹脂や製造されるペレットサイズにもよるが、2.0mm〜4.0mm、より好ましくは2.2〜3.0mmである。ノズルの個数は300個以上が好ましく、また5000個以下が好ましい。開口部分の面積は600〜20000mm2であることが好ましい。 「ノズル開口部分の面積/ダイス面積」で求められるノズル開口率は、2.5〜12%、好ましくは3.0〜10%である。ノズル開口率を2.5%以上にすることにより、押し出し量の減少を抑制し、生産性の低下を抑制することができる。一方、ノズル開口率を12%以下にすることにより、ダイス温度のコントロール性の低下を抑制することができる。 ノズル開口部分は、溶融樹脂の押出を調節するため、テーパー孔とすることもできる。 ダイスの大きさにもよるが、カッター刃の数は、10〜50個である。 また、カッターの材質は、SUS440C等のマルテンサイト系ステンレス、チタンカーバイド(TiC)等が好適に用いられる。 【0033】 本発明のペレタイザを、既存のペレタイザのノズル開口部分をピンで埋めることによって実現した一例を図面に基づいて説明する。 図6において、例えば、カッター刃の刃面と接する複数のノズルについて、隣り合う当該ノズル間の距離Lzが全て4.6mmの場合、「隣り合うノズル間の距離Lzが6mm以上」の関係を満たさない。また、カッター刃が接するノズルの開口部分の長さWnが2.4mm、該カッター刃とダイス面とが重なる部分の長さLxが72mmである場合は、ノズル開口部分は8個であるので、Wnの和ΣWnは19.2mm、ΣWn/Lxは0.27となり、「ΣWn/Lx≦0.2」の関係も満たさない。 このため、図6においては、本発明のペレタイザの要件を満たすようにノズル孔(ノズル開口部分)の配置を考慮するか、あるいはすでに存在するものについては条件に適合するようにノズル孔をいくつか塞ぐ変更を実施すればよい。ここでは、ノズル孔を一つおきに塞ぐ変更を実施すればよく、好適にノズル孔を塞いだ例を図5に示す。どのノズル孔を塞ぐかは、適宜に決めることができるが、図7に示すような塞ぎ方では、いくつかの箇所で隣り合うノズル間の距離Lzが6mmより小さくなってしまい好ましくない。 なお、図7においては、ノズル開口部分は5個であるので、Wnの和ΣWnは12.0mm、ΣWn/Lxは0.17となり、「ΣWn/Lx≦0.2」の関係は満たすが、「隣り合うノズル間の距離Lzが6mm以上」の関係は満たさないため、本発明のペレタイザの要件は満足しておらず、融着ペレットの発生抑制効果は乏しいと推測される。」 「【0034】 2.ペレットの製造方法 本発明の1つは、上記のペレタイザを用いて低融点かつ軟質の溶融樹脂からペレットを製造することを特徴とするペレットの製造方法である。本発明のペレットの製造方法によれば、上述したように、低融点かつ軟質である、従来カッティングが難しいとされていた樹脂、具体的には融点110〜145℃、曲げ弾性率が50〜350MPaである樹脂を用いてペレットを製造することができる。 【0035】 本発明の製造方法に用いる樹脂は熱可塑性樹脂であり、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリ酢酸ビニル、ABS樹脂、またはこれらの共重合体を材料とすることができる。特に、従来安定的効率的にペレット化することが難しかった低融点且つ軟質のペレットを安定的効率的に製造することができる。 したがって、本発明のペレットの製造方法は、発明の効果が顕著に発揮される、融点110〜145℃、曲げ弾性率50〜350MPaであるポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂を材料とすることが好ましい。 【0036】 前記の樹脂を用いて、本発明のペレタイザを使用することにより、安定的効率的に原料樹脂のペレットを製造することができる。 切断された樹脂(ペレット)は、一般的に、顆粒状の樹脂である。顆粒状の樹脂の寸法は、好ましくは、径を0.1mm〜3mm(中でも、0.5mm〜2mm、さらには1mm〜2mm)にし、長さ(押出方向の長さ)を0.5mm〜3mm(中でも1mm〜2mm)の大きさとされ、冷却水槽に放出される。 こうして得られたペレットは融着ペレットを含まず、均一形状であるため、その後の射出成形等にもトラブルを起こさない等の効果も生ずる。 製造されたペレットは冷却水循環装置で輸送及び冷却され、最終的に冷却水と分離乾燥されて袋詰めして製品となる。」 「【実施例】 【0037】 本発明を以下に実施例を示して具体的に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限りこれら実施例によって制約を受けるものではない。なお、装置および融着ペレットの測定法は以下のとおりである。 【0038】 1.使用したペレタイザ 以下の機器仕様のペレタイザを使用した。 ダイスの外径:445mm ダイスの内径:315mm カッター全長 L:128mm カッター刃部分長さ Lx:72mm ダイスノズル径 d:2.4mm 【0039】 2.使用した樹脂 メタロセン触媒を用いて気相法プロセスで製造した、示差走査熱量測定法による融解ピーク温度が132℃、曲げ試験(ISO 178)による曲げ弾性率が280MPaのポリプロピレン系樹脂であるランダムブロックコポリマーを使用した。 【0040】 3.融着ペレット発生率 ペレタイザ下流のサンプル弁から採取したペレット中に含まれる、2個以上のペレットが融着した融着ペレットの重量分率とした。 【0041】 以下の表1に、実施例1〜2及び比較例1〜2における、ダイスノズルのアレンジ条件、ペレット冷却水温度、融着ペレットの発生率、およびダイスノズルの目詰まり状況を記した。 【0042】 【表1】 ![]() 【0043】 (実施例1) 上記のペレタイザにおいて、溶融樹脂を切断するときにカッター刃と接する、隣り合うノズル間距離Lzを6mm以上、すなわち11.6mmとし、カッター刃部分長さLxに対するノズル開口部分長さ合計ΣWnの割合を0.20以下、すなわち(ΣWn)max/Lx=0.13とし、外周長が最小となるように任意の三つのノズル穴で構成される三角形について、その外周長Lyとノズル穴径dとがLy?3×d≧20.5の関係になるように、すなわちLy−3×d=21.9とし、冷却水温度を25℃に設定してペレット製造を行った。 その結果、融着ペレットの発生率は0.45%となり、後述する実施例2よりもさらに低減された。また、融着ペレットが低減できているため、後述する実施例2と同様にペレット冷却水の温度をことさら低くしなくても良くなり、冷却水温度を25℃と高くした効果により、ダイスノズルの目詰まりも大幅に改善され、小粒ペレット生成やペレット形状の不揃いが軽減できた。 【0044】 (実施例2) 上記のペレタイザにおいて、Lzを10.6mmとし、(ΣWn)max/Lx=0.13とし、Ly−3×d=20.1とし、冷却水温度を25℃に設定してペレット製造を行った。 その結果、融着ペレットの発生率は1.20%に低減された。また、融着ペレットが低減できているため、ペレット冷却水の温度をことさら低くしなくても良くなり、冷却水温度を25℃と高くした効果により、ダイスノズルの目詰まりも大幅に改善され、小粒ペレットの生成やペレット形状の不揃いが軽減できた。 【0045】 (比較例1) 上記ペレタイザにおいて、改善前のダイスを用いて、Lzを6mm未満、すなわち4.1mmとし、(ΣWn)max/Lx=0.23とし、Ly−3×d=20.1とし、冷却水温度を20℃に設定してペレット製造を行った。 その結果、融着ペレット発生率は2.00%と高く、また融着ペレットを低減するためにペレット冷却水温度を20℃と低く設定しているため、ダイスノズルの目詰まりが顕著であり、正規品ペレットのサイズよりも小さい小粒ペレットが顕著に多く発生し、ペレット形状の不揃いも認められた。 【0046】 (比較例2) 上記のペレタイザにおいて、Lzを4.1mmとし、(ΣWn)max/Lx=0.13とし、Ly−3×d=20.1とし、冷却水温度を20℃に設定してペレット製造を行った。 その結果、融着ペレット発生率は1.90%とまだ高く、また比較例1と同様に融着ペレットを低減するためにペレット冷却水温度を20℃と低く設定しているため、ダイスノズルの目詰まりが顕著であり、正規品ペレットのサイズよりも小さい小粒ペレットが顕著に多く発生し、ペレット形状の不揃いも認められた。 【0047】 (評価) 実施例および比較例の結果を対比すると、本発明を満足しない条件、特に比較例2に示す条件である、「カッター刃部分長さLxに対するノズル開口部分長さ合計ΣWnの割合を0.20以下」にしただけでは融着ペレットの抑制はできず、安定的効率的にペレットを製造することができなかった。 一方、実施例1〜2に示す条件である、「カッター刃部分長さLxに対するノズル開口部分長さ合計ΣWnの割合を0.20以下」にすることに加え、「カッター刃がダイスノズルから吐出された溶融樹脂を切断する際、カッター刃と接する、隣り合うノズル間距離Lzを6mm以上」の要件を満たすことにより、融着ペレットを低減することができた。 さらに、実施例1に示す条件である、「外周長が最小となるように任意の三つのノズル穴で構成される三角形について、その外周長(Ly)とノズル穴径(d)とがLy−3×d≧20.5」の要件を満たすことにより、融着ペレットを顕著に低減することができた。 そして、実施例の結果から、融点110〜145℃、曲げ弾性率50〜350MPaのポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂のカッティングであれば、ダイスの目詰まり無く安定的効率的に行うことができると推定される。 したがって、本発明によれば、上記したような低融点かつ軟質樹脂を用いて安定的効率的にペレットを製造できることがわかった。」 「【符号の説明】 【0048】 1 押出スクリュー 2 押出筒 3 ブレーカプレート 4 押出ヘッド 5 ノズル開口部分(ノズル孔) 6 ダイス 7 胴部(カッターボックス) 8 カッター軸 9 カッター刃 10 取付体(カッターホルダー) 11 冷却水槽 12 排出口」 「 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() 」 (4)判断 本件特許発明5の課題は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0007】等から、「低融点かつ軟質である従来カッティングが難しいとされていた樹脂について、融着ペレットがなく、安定にペレットを製造することができるペレタイザを用いたペレットの製造方法を提供すること」である。 そして、同段落【0008】ないし【0013】には、「本発明者は、上記課題を解決すべく種々検討を行った結果、複数のノズルを有するダイス面に対して複数のカッター刃を先端に備えたペレタイザにおいて、ダイスのノズル間隔を下記のように制御することで、融着ペレットが顕著に低減されることを見出し、本発明の完成に至った。・・・略・・・本発明のペレットの製造方法は、前記ペレタイザを用いて、融点110〜145℃、曲げ弾性率50〜350MPaのポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂からペレットを製造することを特徴とする。」と記載され、同段落【0015】には、「本発明は、具体的には融点が110〜145℃以下かつ曲げ弾性率が50〜350MPa以下である樹脂のカッティングを安定的効率的に行うことができる。従来技術では、上述したような低融点かつ軟質の特徴を持つポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂の造粒に関しては、冷却水の温度を極度に低下させ対応せざるを得ず、この際ダイス目詰まりによる異なる形態の異形ペレットの生成や歩留まりの問題がある。これに対し、本発明によれば、ダイスノズル間隔に工夫を施すことで、冷却水の極端な温度低下を行わなくても融着ペレットの発生を抑制することができ、融着ペレット発生の抑制とダイス目詰まり抑制を両立しながら安定的に造粒することができる。」と記載され、同段落【0027】には、「本発明のペレタイザは、カッター刃がダイスノズルから吐出された溶融樹脂を切断する際、同一のカッター刃の刃面と接する複数のノズルについて、隣り合う当該ノズル間の距離(Lz)が6mm以上となるように間隔を置いて配置されていることを特徴とする。なお、カッター刃と接するノズルの状態は、カッター刃が一回転する際の瞬間瞬間で異なるものであるが、本発明においては、一周する履歴におけるどの状態であっても、Lzが6mm以上を満たすことが好ましい。隣り合うノズル間の距離(Lz)とは、すなわち、図5に示すように、同一のカッター刃の刃面と接し且つ隣り合うノズルのノズル孔における、一方のノズル孔の外周における他方のノズル孔に最も近い位置から、他方のノズル孔の外周における一方のノズル孔に最も近い位置までの距離をいう。Lzが6mmより小さいと、融着ペレットが顕著に発生してしまうためカッティング不良となり好ましくない。」と記載されている。 そして、【実施例】において、メタロセン触媒を用いて気相法プロセスで製造した、示差走査熱量測定法による融解ピーク温度が132℃、曲げ試験(ISO 178)による曲げ弾性率が280MPaのポリプロピレン系樹脂であるランダムブロックコポリマーを使用して、隣り合うノズル間距離Lzを6mm以上、すなわち11.6mm、10.6mmに設定したペレタイザを用いてペレットの製造を行った実施例1、2においては、融着ペレットの発生率が各々0.45%、1.20%と融着ペレットが低減されており、ノズルの目詰まりが「無」となっているのに対し、同ポリマーを使用して、隣り合うノズル間距離Lzを6mm未満、すなわち4.1mmとしたペレタイザを用いてペレットの製造を行った比較例1、2においては、融着ペレットの発生率が各々2.00%、1.90%と融着ペレットの発生率が高く、ノズルの目詰まりが「有」となっている。 すなわち、発明の詳細な説明の記載から、当業者は、同一のカッター刃の刃面と接する複数のノズルについて、全ての隣り合う当該ノズル間の距離(Lz)が6mm以上となるように間隔を置いて配置されているペレタイザを用いることにより、融点110〜145℃、曲げ弾性率50〜350MPaのポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂から、ダイスの目詰まり無く安定的効率的に、ペレットを製造することができることを認識する。 したがって、本件特許発明5は、当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。 よって、本件特許発明5に関して、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 (5)異議申立人の主張 異議申立人は、上記第4 1(3)において摘記したア、イの主張をしているので、以下検討する。 ・主張アについて 樹脂の温度および線速、ダイスの熱媒温度、冷却水の温度、カッティング面(ダイス)とカッター刃との平行度など、距離Lz以外の様々な条件は、本件特許発明5を実施するにあたり、当業者が適宜設定すれば良い技術常識というべき条件である。そして、上記(4)で示したように、当業者は、同一のカッター刃の刃面と接する複数のノズルについて、全ての隣り合う当該ノズル間の距離(Lz)が6mm以上となるように間隔を置いて配置されているペレタイザを用いることにより、融点110〜145℃、曲げ弾性率50〜350MPaのポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂から、ダイスの目詰まり無く安定的効率的に、ペレットを製造することができることを認識するのであるから、上記各条件が、本件特許発明の課題を解決するために欠くことのできない事項とは言えない。 よって、異議申立人の上記主張アは採用することができない。 ・主張イについて 本件特許発明5は、上記訂正により、隣り合う当該ノズル間の距離(Lz)が6mm以上となるように間隔を置いて配置されている」ことについて、「全ての」隣り合うものに特定されている。 よって、異議申立人の上記主張イは解消されている。 (6)申立理由3についてのむすび したがって、本件特許の請求項5に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえず、申立理由3によっては、本件特許の請求項5に係る特許を取り消すことはできない。 3 申立理由4(明確性要件)について (1)明確性要件の判断基準 特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきものである。 (2)本件特許請求の範囲及び特許明細書の発明の詳細な説明の記載 上記第3及び上記2(3)に記載のとおりである。 (3)検討 本件訂正後の本件特許の特許請求の範囲1及び3の記載及びこれを引用する請求項5の記載は不明確ではなく、かつ、本件特許明細書の記載も特許請求の範囲の請求項1、3及び5の記載と矛盾するものではないから、当業者の出願日における技術常識の基礎として、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。 また、異議申立人は、上記第4 1(4)において、摘記した理由アないしウについて主張しているので、以下検討する。 ・理由ア、ウについて 本件特許発明5は、上記訂正により、本件特許発明5が引用する本件特許発明1において、隣り合う当該ノズル間の距離(Lz)が6mm以上となるように間隔を置いて配置されている」事項について、「全ての」隣り合う当該ノズル間の距離(Lz)であることが特定された。 また、本件特許発明5は、上記訂正により、本件特許発明5が引用する本件特許発明3において、「y−3×d」および「20.5」の単位が「mm」であることが特定された。 よって、上記理由ア、ウは解消されている。 ・理由イについて 「近接」とは、「近くにあること」(新村出編 広辞苑第2版、岩波書店昭和49年9月20日 第2版第8刷発行)を一般的に意味する。そして、ダイス面の先端表面と回転カッター刃との関係について、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0025】には、「カッティング面とカッター刃の隙間の有無は、取り扱う樹脂によって適宜選定される。カッティングが難しいポリプロピレン系樹脂の場合は、カッティング面とカッター刃の平行度3/100mm以下の精度を要求されるので、隙間無しの接触カットを採用することが好ましい。」と記載されており、上記一般的に認識されている意味との齟齬はない。 また、ダイス面の先端表面と回転カッター刃が「近接」される間隔は、カッティングが損なわれないように、適宜選定されるものであって、当該「近接」される間隔が数値で規定されていないことにより、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確とはいえない。 よって、本件特許発明5は明確である。 (3)申立理由4についてのむすび したがって、本件特許の請求項5に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえず、申立理由4によっては、本件特許の請求項5に係る特許を取り消すことはできない。 第6 むすび 上記第5のとおり、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 また、本件特許の請求項5に係る特許は、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。さらに、他に本件特許の請求項5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この決定に対する訴えは、この決定の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 押出筒の先端に装着されたダイス面中のノズルより冷却水槽に押出されるポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂を、前記ダイス面の先端表面に近接して配設された回転カッター刃により前記冷却水槽でペレット状に切断されるとともに、水冷固化するようになっているペレタイザにおいて、 同一のカッター刃の刃面と接する複数のノズルについて、全ての隣り合う当該ノズル間の距離(Lz)が6mm以上となるように間隔を置いて配置されていることを特徴とするペレタイザ。 【請求項2】 前記カッター刃が接するノズルの開口部分の長さ(Wn)の和(ΣWn)の最大値(ΣWn)maxと、当該カッター刃と当該開口部分を含む前記ダイス面とが重なる部分の長さ(Lx)とは、下記の関係式を満たすことを特徴とする請求項1に記載のペレタイザ。 (ΣWn)max/Lx≦0.2 【請求項3】 前記ダイス上に配置された任意の三つのノズル穴中心点により、外周長が最小となるように構成される三角形について、その外周長(Ly)とノズル穴径(d)とが下記の関係式を満たし、 前記外周長(Ly)の単位がmmであり、前記ノズル穴径(d)の単位がmmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のペレタイザ。 Ly−3×d≧20.5(mm) 【請求項4】 前記水冷固化において、前記冷却水槽に注入される冷却水の温度が20℃を超え、45℃以下である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のペレタイザ。 【請求項5】 請求項1乃至4のいずれか一項に記載のペレタイザを用いて、融点110〜145℃、曲げ弾性率50〜350MPaのポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂からペレットを製造することを特徴とするペレットの製造方法。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照 |
異議決定日 | 2021-09-24 |
出願番号 | P2016-047813 |
審決分類 |
P
1
651・
113-
ZDA
(B29B)
P 1 651・ 537- ZDA (B29B) P 1 651・ 121- ZDA (B29B) |
最終処分 | 08 一部取消 |
特許庁審判長 |
大島 祥吾 |
特許庁審判官 |
細井 龍史 大畑 通隆 |
登録日 | 2020-03-02 |
登録番号 | 6668839 |
権利者 | 日本ポリプロ株式会社 |
発明の名称 | ペレタイザ、及び、これを用いたペレットの製造方法 |
代理人 | 山下 昭彦 |
代理人 | 山本 典輝 |
代理人 | 山下 昭彦 |
代理人 | 岸本 達人 |
代理人 | 岸本 達人 |
代理人 | 山本 典輝 |