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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A63F
審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  A63F
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A63F
審判 全部申し立て 2項進歩性  A63F
管理番号 1381665
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-02-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-01-15 
確定日 2021-11-26 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6721659号発明「サーバシステム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6721659号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし4〕について訂正することを認める。 特許第6721659号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6721659号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、平成25年3月29日に出願した特願2013−71229号の一部を平成29年11月30日に新たな特許出願とした特願2017−230290号の一部を平成30年11月15日に特願2018−214289号として新たな特許出願としたものであって、令和2年6月22日に特許権の設定登録がされ、同年7月15日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和3年1月15日に特許異議申立人佐藤奈苗(以下「申立人」という。)により請求項1ないし4に係る特許に対して特許異議の申立てがされ、当審は、同年4月27日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である同年7月9日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、当該訂正の請求を「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)を行い、本件訂正請求に対して、申立人は、意見書を提出しなかった。

第2 本件訂正の適否
1 本件訂正の内容
本件訂正請求の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1ないし4について訂正することを求める、というものであるところ、本件訂正は次のとおりである(下線は訂正箇所を示す。以下同様。)。

特許請求の範囲の請求項1に、
「複数のプレーヤ端末と通信可能であり、ゲーム空間内に配置されたゲーム要素を動かして楽しむクレーンゲーム機又はプッシャーゲーム機である実際の業務用ゲーム装置をその場でプレイしているかのようなゲームプレイを前記プレーヤ端末に提供するサーバシステムであって、
前記ゲームプレイは、前記プレーヤ端末での操作入力に基づいて1回毎のゲームプレイによりゲーム空間内に配置されたゲーム要素の配置位置(以下、この配置位置にゲーム要素が配置されたゲーム空間の状態のことを「ゲーム状況」という。)が変化し、次回のゲームプレイに前回のゲーム状況が引き継がれるゲームに係るゲームプレイであり、」
と記載されているのを、
「複数のプレーヤ端末と通信可能であり、ゲーム空間内に配置されたゲーム要素を動かして楽しむクレーンゲーム機又はプッシャーゲーム機である実際の業務用ゲーム装置をコンピュータ上で仮想的にシミュレーションすることで、その場で前記業務用ゲーム装置をプレイしているかのような仮想的なゲームプレイを前記プレーヤ端末に提供するサーバシステムであって、
前記ゲームプレイは、前記プレーヤ端末での操作入力に基づいて1回毎のゲームプレイにより仮想的なゲーム空間内に配置されたゲーム要素の配置位置(以下、この配置位置にゲーム要素が配置されたゲーム空間の状態のことを「ゲーム状況」という。)が変化し、次回のゲームプレイに前回のゲーム状況が引き継がれるゲームに係るゲームプレイであり、」
に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2ないし4も同様に訂正する)。

2 訂正の適否
(1)訂正の目的について
本件訂正は、請求項1及びこれを直接又は間接的に引用する請求項2ないし4において、発明特定事項である「サーバシステム」が「プレーヤ端末に提供する」「ゲームプレイ」に関して、訂正前の「ゲーム空間内に配置されたゲーム要素を動かして楽しむクレーンゲーム機又はプッシャーゲーム機である実際の業務用ゲーム装置をその場でプレイしているかのようなゲームプレイ」を、「ゲーム空間内に配置されたゲーム要素を動かして楽しむクレーンゲーム機又はプッシャーゲーム機である実際の業務用ゲーム装置をコンピュータ上で仮想的にシミュレーションすることで、その場で前記業務用ゲーム装置をプレイしているかのような仮想的なゲームプレイ」として発明特定事項を付加して限定するとともに、訂正前の「前記プレーヤ端末での操作入力に基づいて1回毎のゲームプレイによりゲーム空間内に配置されたゲーム要素の配置位置(以下、この配置位置にゲーム要素が配置されたゲーム空間の状態のことを「ゲーム状況」という。)が変化し、次回のゲームプレイに前回のゲーム状況が引き継がれるゲームに係るゲームプレイ」を、「前記プレーヤ端末での操作入力に基づいて1回毎のゲームプレイにより仮想的なゲーム空間内に配置されたゲーム要素の配置位置(以下、この配置位置にゲーム要素が配置されたゲーム空間の状態のことを「ゲーム状況」という。)が変化し、次回のゲームプレイに前回のゲーム状況が引き継がれるゲームに係るゲームプレイ」として発明特定事項を付加して限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(2)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
本件訂正は、上記(1)で述べたように、発明特定事項を付加して限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

(3)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
本件訂正は、本件特許明細書の
「【0034】
[ゲーム概要]
本実施形態のゲームシステムでは、クレーンゲームが行われる。このクレーンゲームは、実際のゲームセンタ等に設置される業務用ゲーム装置であるクレーンゲーム装置を仮想的に再現した構成となっている。
・・・
【0039】
なお、これらのゲーム装置の動作、特にクレーン装置22の動作や景品の配置計算などは、仮想的なシミュレーションとして実行されるものである。例えば、景品それぞれには予め仮想的な重量が設定され、左右のアーム22bのアーム力等も仮想的に設定される。そして、公知の物理演算処理により、アーム22bの把持や、景品の移動・落下、景品同士の干渉、等が計算される。」(下線は当審で付した。)
等の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

(4)一群の請求項について
訂正前の請求項2ないし4は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、訂正前の請求項1ないし4は一群の請求項である。
そして、本件訂正は、訂正前の請求項1ないし4に係る事項を訂正するものであり、一群の請求項に対して請求されたものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。

(5)特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件においては、訂正前の請求項1ないし4について特許異議の申立てがされているので、本件訂正に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

(6)小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定及び同法第120条の5第4項の規定に適合するので、訂正後の請求項1ないし4について訂正することを認める。

第3 訂正後の請求項1ないし4に係る発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし4に係る発明(以下「本件発明1ないし4」などという。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
複数のプレーヤ端末と通信可能であり、ゲーム空間内に配置されたゲーム要素を動かして楽しむクレーンゲーム機又はプッシャーゲーム機である実際の業務用ゲーム装置をコンピュータ上で仮想的にシミュレーションすることで、その場で前記業務用ゲーム装置をプレイしているかのような仮想的なゲームプレイを前記プレーヤ端末に提供するサーバシステムであって、
前記ゲームプレイは、前記プレーヤ端末での操作入力に基づいて1回毎のゲームプレイにより仮想的なゲーム空間内に配置されたゲーム要素の配置位置(以下、この配置位置にゲーム要素が配置されたゲーム空間の状態のことを「ゲーム状況」という。)が変化し、次回のゲームプレイに前回のゲーム状況が引き継がれるゲームに係るゲームプレイであり、
一のプレーヤによって前記ゲームプレイがなされている際に、当該プレイ中のゲーム状況の閲覧要求を他のプレーヤから受け付ける受付手段と、
前記閲覧要求に応じて、前記プレイ中のゲーム状況を前記他のプレーヤのプレーヤ端末に表示させる制御を行うゲーム状況表示制御手段と、
前記他のプレーヤによる前記一のプレーヤの次のゲームプレイの予約を登録する予約登録手段と、
前記予約の状況を前記一のプレーヤのプレーヤ端末に表示させる制御を行う予約状況表示制御手段と、
を備えたサーバシステム。
【請求項2】
前記予約状況表示制御手段は、予約したプレーヤの人数に応じた表示を前記一のプレーヤのプレーヤ端末に表示させる制御を行う、
請求項1に記載のサーバシステム。
【請求項3】
前記一のプレーヤのゲームプレイ終了後に、前記予約登録手段による登録順に従って、予約したプレーヤのプレーヤ端末にゲームプレイが可能となった旨を通知する予約履行可能通知手段、
を更に備えた請求項1又は2に記載のサーバシステム。
【請求項4】
前記一のプレーヤのゲームプレイから所与の優先受付期間の間は、当該一のプレーヤによるゲームプレイ要求を優先して受け付ける優先受付手段を更に備え、
前記予約履行可能通知手段は、前記優先受付期間の経過後に、予約したプレーヤのプレーヤ端末にゲームプレイが可能となった旨を通知する、
請求項3に記載のサーバシステム。」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1ないし4に係る特許に対して、当審が令和3年4月27日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

(1)取消理由1(サポート要件)
本件特許請求の範囲の請求項1ないし4の記載は、以下の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号に該当するから、取り消されるべきものである。
ア 請求項1の「ゲーム空間内に配置されたゲーム要素を動かして楽しむクレーンゲーム機又はプッシャーゲーム機である実際の業務用ゲーム装置をその場でプレイしているかのようなゲームプレイを前記プレーヤ端末に提供するサーバシステム」という記載は、実際の業務用のゲーム装置を用いることなくコンピュータ上で仮想的なシミュレーションとして実行される仮想的なゲームプレイを意味しているのか、実際の業務用のゲームを遠隔制御するゲームプレイを意味するものなのか特定されておらず、後者を意味するものであれば、明細書の段落【0004】ないし【0008】に記載された、クレーンゲームやプッシャーゲームなどのゲームプレイ毎に景品やメダルの配置位置といったゲーム状況が変化する実際の業務用のゲーム装置で味わうことのできる面白さを、ソーシャルゲームの仮想的なゲームプレイで実現するという課題を解決できないことは明らかであるから、コンピュータ上で仮想的なシミュレーションとして実行される仮想的なゲームプレイをプレーヤ端末に提供する内容が反映されていない請求項1は、明細書に記載した範囲を超えて特許を請求するものである。

イ 請求項1の「前記ゲームプレイは、前記プレーヤ端末での操作入力に基づいて1回毎のゲームプレイによりゲーム空間内に配置されたゲーム要素の配置位置(以下、この配置位置にゲーム要素が配置されたゲーム空間の状態のことを「ゲーム状況」という。)が変化し、次回のゲームプレイに前回のゲーム状況が引き継がれるゲームに係るゲームプレイであり」という記載のうちの「ゲーム空間」という用語は、実際の業務用のゲーム装置を用いることなくコンピュータ上で仮想的なシミュレーションとして実行される仮想的なゲームプレイを行う空間を意味しているのか、実際の業務用のゲーム装置におけるゲーム空間を意味するものなのか特定されておらず、後者を意味するものであれば、明細書の段落【0004】ないし【0008】に記載された、クレーンゲームやプッシャーゲームなどのゲームプレイ毎に景品やメダルの配置位置といったゲーム状況が変化する実際の業務用のゲーム装置で味わうことのできる面白さを、ソーシャルゲームの仮想的なゲームプレイで実現するという課題を解決できないことは明らかであるから、「ゲーム空間」がコンピュータ上で仮想的なシミュレーションとして実行される仮想的なゲームプレイを行う空間であるという内容が反映されていない請求項1は、明細書に記載した範囲を超えて特許を請求するものである。

ウ よって、請求項1及びこれを直接または間接的に引用する請求項2ないし4に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。

(2)取消理由2(明確性
本件特許請求の範囲の請求項1ないし4の記載は、以下の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号に該当するから、取り消されるべきものである。

ア 請求項1において、「ゲーム空間内に配置されたゲーム要素を動かして楽しむクレーンゲーム機又はプッシャーゲーム機である実際の業務用ゲーム装置」における「ゲーム空間」、及び「前記ゲームプレイは、前記プレーヤ端末での操作入力に基づいて1回毎のゲームプレイによりゲーム空間内に配置されたゲーム要素の配置位置(以下、この配置位置にゲーム要素が配置されたゲーム空間の状態のことを「ゲーム状況」という。)が変化し、次回のゲームプレイに前回のゲーム状況が引き継がれるゲームに係るゲームプレイであり」における「ゲーム空間」のそれぞれが、実際の業務用のゲーム装置におけるゲーム空間を意味するのか、仮想的なゲーム空間を意味するのか、明確でない。

イ 請求項1において、「実際の業務用ゲーム装置をその場でプレイしているかのようなゲームプレイ」とは、実際の業務用ゲーム装置を用いることなく仮想的なシミュレーションとして実行される仮想的なゲームプレイを意味するのか、実際の業務用のゲーム装置を遠隔制御するゲームプレイを意味するのか、明確でない。

ウ したがって、請求項1に係る発明および請求項1を直接または間接的に引用する請求項2ないし4に係る発明は明確でない。

(3)取消理由3(実施可能要件
本件明細書における発明の詳細な説明の記載は、以下の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同条の規定に違反してされたものであって、同法第113条第4号に該当するから、取り消されるべきものである。

請求項1の「実際の業務用ゲーム装置をその場でプレイしているかのようなゲームプレイ」が、実際の業務用のゲーム装置を用いることなく仮想的なシミュレーションとして実行される仮想的なゲームプレイを意味するのか、実際の業務用のゲーム装置を遠隔制御するゲームプレイを意味するのか明確でないところ、後者を意味するものとすれば、実際の業務用のゲーム装置を遠隔制御するゲームプレイを実現する手段について、明細書には記載も示唆もされておらず、自明な事項でもない。
よって、本件明細書における発明の詳細な説明は、当業者が請求項1及びこれを直接または間接的に引用する請求項2ないし4に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。

(4)取消理由4(進歩性
本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし4に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明並びに周知技術に基づいて、本件特許出願遡及日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同条の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。

2 甲号証の記載
(1)甲第1号証について
本件特許に係る出願の出願遡及日前に発行された甲1号証(特許第3929674号公報)には、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

ア 「【0009】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は本実施形態に係わるゲームシステムの全体を示す図である。ゲームシステムは、インターネット10を通じてゲームサービスを提供するゲームサービスプロバイダ12(サーバ装置)と、端末装置14(端末装置14−1〜14−n)と、各所のゲームセンターなどに設置されたゲーム装置16(ゲーム装置16−1〜16−m)とが接続されて構成される。ゲームサービスプロバイダ12は、例えばCD−ROM、DVD、磁気ディスク等の記録媒体に記録されたプログラムを読み込み、このプログラムによって動作が制御されるコンピュータによって実現される。ゲームサービスプロバイダ12は、記憶媒体に記憶された所定のプログラムを実行することで、各種機能を実現すると共に各機能の実行に伴って各種データを管理する。
【0010】
ゲームサービスプロバイダ12は、各所のゲームセンターなどに設置されたゲーム装置16の状況を映像によってインターネット10を通じて取得し、Webサイトにより各ゲーム装置16から受信した映像を公開するサービスを提供する。またゲームサービスプロバイダ12は、インターネット10を介した端末装置14からの操作指示に応じて、所定のゲーム装置16を実際に動作させる機能を有する。」

イ 「【0013】
図2には、あるゲームセンター(例えば渋谷ゲームステーション)に設置されたゲーム装置16−1(ゲーム装置16a,16b,16c)とインターネット10とを接続するための構成の一例を示している。図2に示すゲーム装置は、ゲーム装置16aに示すようなクレーンゲームであって、筐体内部の景品フィールドに山積みされた景品をクレーンの操作によって掴み取ることができた場合に、景品を取得することができるゲームである。」

ウ 「【0016】
図3は、本実施形態におけるゲーム装置16(ゲーム装置16aに示すクレーンゲーム)の構成を示すブロック図である。図3に示すように、ゲーム装置16は、ゲームコントローラ30、Webコントローラ32、無線装置装置34(当審注:「無線装置装置34」は「無線装置34」の誤記と認められる。以下同様。)、クレーン駆動部36、ボタン38、コイン投入センサ40、景品獲得センサ42が設けられている。また、景品が収納される筐体内部には、クレーン50、景品ポケット52、カメラユニット54a,54bが設けられている。」

エ 「【0019】
無線装置装置34は、例えばPHSによる無線通信機能であり、ゲームセンター内などに設置された基地局20との間で無線通信を行なう。クレーン駆動部36は、ボタン38に対する操作、あるいはWebコントローラ32を介して通知されたゲーム制御用のデータに応じたゲームコントローラ30の制御のもとに、クレーン50を移動させるもので、例えばクレーン50を後移動(X方向)、右移動(Y方向)、回転移動を組み合わして移動させ、景品フィールドに山積みされた景品の方向に下降させる(Z方向)。そして、クレーン駆動部36は、クレーン50を下降させて景品が山積みされている位置に近づくタイミングで景品を掴み取るようにフックを開かせ、所定の位置まで下降するとフックを閉じると共に上昇させ、景品ポケット52が設けられた位置まで移動させた後にフックを開かせる。
【0020】ボタン38は、コイン投入によりゲームが実行される場合に、クレーン50の移動を制御するためにプレイヤによって直接に操作されるもので、筐体に設けられた操作パネル上に設けられている。ボタン38には、例えばクレーン50を後移動(X方向)、右移動(Y方向)、回転移動させるためのそれぞれに対応するボタンが設けられているものとする。」

オ 「【0026】
ゲームサービスプロバイダ12は、各所のゲームセンターに設置されたゲーム装置16からのゲーム状況を撮影した映像をインターネットを介して受信している。ゲームサービスプロバイダ12は、各所のゲームセンターに設置されたゲーム装置16から受信して映像を閲覧させるためのサイト(ホームページ)を開設しており、このサイト(ゲームサービスサイト)で各所のゲームセンターのそれぞれに設置されたゲーム装置16ごとに各ゲーム装置16の状況を撮影した映像を提供している。
【0027】
端末装置14では、インターネットを介してゲームサービスプロバイダ12が開設しているゲームサービスサイトにアクセスし、このサイト中に設けられたメニューなどをユーザの指示に応じて選択することで、所望のゲームセンターの任意のゲーム装置16のゲーム状況を撮影した映像をブラウザ画面上で閲覧することができる。従って、ゲーム装置16がクレーンゲームである場合には、どのゲーム装置16の景品フィールドにどのような景品が用意されているかをインターネットを利用して端末装置14において確認することができる。」

カ 「【0031】
ところで、前述した説明では、ゲーム装置16がゲーム動作モードにない場合を対象としているが、ゲーム装置16がゲーム動作モードにある場合にはWebコントローラ32の機能によってゲーム実行中のリアルタイムの映像を閲覧できるようにする。
【0032】
すなわち、ゲームコントローラ30は、コイン投入センサ40によってコインが投入されたことを検知するとゲーム動作モードに移行すると共に、Webコントローラ32にゲーム動作モードとなったことを通知する。ゲームコントローラ30は、ゲーム制限時間を設定し、この間のボタン38に対する操作に応じてクレーン駆動部36を動作させてクレーン50を移動させる。一方、Webコントローラ32は、ゲームコントローラ30からの通知に応じて、カメラユニット54a,54bによって撮影されたリアルタイムの映像を無線装置装置34を介して送信する。従って、ゲームサービスサイトにアクセスしている端末装置14のブラウザ画面では、図5に示すようにして、ゲームセンターで実際にプレイされているゲーム装置16の様子をリアルタイムで閲覧することができる。このため、ゲームセンターに実際にいなくても、他の人がプレイしているゲームの観客のような感じを味わうことができ、これによりゲームをプレイしようとする意識をもつように働きかけることができる。」

キ 「【0036】
以下、図7に示すフローチャートを参照しながら、ゲームサービスプロバイダ12によるゲームサービスの処理について説明する。ゲームサービスプロバイダ12は、ゲームサービスサイトを通じた端末装置14からのアクセス要求に応じて、前述のようにして特定のゲームセンターのあるゲーム装置16の映像を送信する(ステップA1)。端末装置14ではブラウザ画面において、映像を閲覧中のゲーム装置16がゲーム動作モード中でなければ、図5中に示すページ中に設けられた「ゲーム開始」アイコンを指定することでゲーム開始要求をゲームサービスプロバイダ12に送信することができる。
【0037】
ゲームサービスプロバイダ12は、端末装置14からゲーム開始要求を受信すると(ステップA2)、その端末装置14に対して会員登録の際に指定したユーザID、パスワードを入力するためのページを送信する。このページにおいてユーザID、パスワードが入力されると、ゲームサービスプロバイダ12は、会員データベースに登録された会員登録の情報を参照して正規の会員であるかを判別する。正規の会員であることが判別されると、ゲームサービスプロバイダ12は、映像閲覧中のゲーム装置16に対してゲーム動作モードに移行させる指示を送信すると共に(ステップA3)、会員登録時に登録されたクレジットカードからゲーム料金を徴収するための課金処理を実行する。
【0038】
例えば、渋谷ゲームステーションのゲーム装置16aに対するゲーム開始が指示されると、ゲーム装置16aは、ゲーム動作モードに移行してゲームを開始する。ゲーム装置16aは、ゲーム制限時間のカウントを開始し、カウント値をゲームサービスプロバイダ12に送信する。ゲームサービスプロバイダ12は、ゲーム装置16aからのカウント値をもとに、ゲーム開始要求を行った端末装置14がアクセスしている図5に示すページにおいてゲーム制限時間の残り秒を表示させる。
【0039】
端末装置14のブラウザ画面に表示されたページ中にはゲーム装置16aに設けられたボタン38と同様のクレーン50を後移動(X方向)、右移動(Y方向)、回転移動させるためのそれぞれに対応するボタンが設けられている。端末装置14のユーザは、このページ中のボタン対する操作(例えばマウスによるクリック)を行なうことで、ゲーム装置16aにおけるボタン38に対する操作と同様にクレーン50の移動を制御することができる。
【0040】
ゲームサービスプロバイダ12は、端末装置14においてボタンの操作があったことを検知すると(ステップA4)、ゲーム装置16aに対して選択されたボタンを通知する(ステップA5)。ゲーム装置16aのゲームコントローラ30は、Webコントローラ32を介してゲームサービスプロバイダ12から送信された操作ボタンの通知を受信する。ゲームコントローラ30は、ボタン38が操作された場合と同様にして、Webコントローラ32からの操作ボタンの通知に応じて、クレーン駆動部36を動作させてクレーン50を移動させる。端末装置14では、クレーン50が移動している様子を、図5に示すようにブラウザ画面中で確認することができる。
【0041】
ここでは、2回のボタン操作によって、クレーン50の位置決め操作が行われるものとする。従って、制限時間内に(ステップA7)、端末装置14のブラウザ画面中で映像が確認されながらユーザの意図する位置でボタン操作が再度行われると、前述と同様にしてこのボタン操作に応じてゲーム装置16aのクレーン50の移動方向が制御される。
【0042】
ゲーム装置16aでは、2回のボタン操作によってクレーン50の降下位置が決められると、クレーン駆動部36によりクレーン50が下降して景品を掴むための動作をする。その後、クレーン50は、景品ポケット52の上方位置まで移動されてフックが開かれる。
【0043】
クレーン50によって景品が掴み取れた場合には、景品が景品ポケット52に落下して、景品の獲得が景品獲得センサ42によって検出される。ゲームコントローラ30は、景品獲得センサ42により景品獲得が検出されると、Webコントローラ32を通じてゲームサービスプロバイダ12に操作結果として景品獲得を通知する(ステップA8)。この時、ゲームコントローラ30は、各ゲームのプレイごとに固有の景品パスワードを発行して、ゲームサービスプロバイダ12に通知する。ゲームサービスプロバイダ12は、景品取得の操作結果をアクセス要求元の端末装置14に景品パスワードと共に通知する(ステップA9)。なお、景品が獲得できなかった場合には、景品が獲得できなかった操作結果が通知される。
【0044】
景品獲得が通知された端末装置14のユーザは、例えば最寄りのゲームセンターに行って、景品パスワードにより景品獲得を確認してもらい、実際の景品を獲得することができる。また、ゲームサービスプロバイダ12に登録された会員データベースに登録された住所のデータをもとにして、景品が配送されるようにしても良い。
【0045】
このようにして、インターネットを通じて各所のゲームセンターに設置されたゲーム装置16の状況を映像で確認しながら、実際に端末装置14において表示されたページに対する操作によって、実際のゲーム装置16を利用することができる。従って、ゲームセンターのゲーム装置16がゲームセンターに訪れた人によってのみプレイされるだけでなく、より多くの人によってプレイされることになり稼働率の向上が期待される。また、プレイヤにとっても、欲しい景品があることを簡単に確認した上でゲーム装置16をプレイすることができるので、プレイし易くなる。」

以上から、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

「端末装置14(端末装置14−1〜14−n)と、各所のゲームセンターなどに設置されたゲーム装置16とに接続されるゲームサービスプロバイダ12の機能を実現するサーバ装置であって、
ゲーム装置16は、ゲーム装置16に設けられたボタン38に対する操作、あるいはWebコントローラ32を介して通知されたゲーム制御用のデータに応じた制御のもとに、クレーン50を後移動(X方向)、右移動(Y方向)、回転移動を組み合わして移動させ、景品フィールドに山積みされた景品の方向に下降させ(Z方向)、景品が山積みされている位置に近づくタイミングで景品を掴み取るようにフックを開かせ、所定の位置まで下降するとフックを閉じると共に上昇させ、景品ポケット52が設けられた位置まで移動させた後にフックを開かせ、景品を取得することができるクレーンゲームであり、
ゲームサービスプロバイダ12は、各所のゲームセンターに設置されたゲーム装置16からのゲーム状況を撮影した映像をインターネットを介して受信して、その映像を閲覧させるためのゲームサービスサイト(ホームページ)を開設して、このゲームサービスサイトで各所のゲームセンターのそれぞれに設置されたゲーム装置16ごとに各ゲーム装置16の状況を撮影した映像を提供し、端末装置14で、インターネットを介してゲームサービスプロバイダ12が開設しているゲームサービスサイトにアクセスし、このサイト中に設けられたメニューなどをユーザの指示に応じて選択することで、所望のゲームセンターの任意のゲーム装置16がゲーム動作モードにある場合にはゲーム実行中のリアルタイムのゲーム状況を撮影した映像をブラウザ画面上で閲覧できるようにし、
ゲームサービスプロバイダ12は、端末装置14のブラウザ画面において映像閲覧中のゲーム装置16がゲーム動作モード中でなければ、端末装置14からゲーム開始要求を受信すると、映像閲覧中のゲーム装置16に対してゲーム動作モードに移行させる指示を送信し、端末装置14においてボタン操作があったことを検知すると、ゲーム装置16に対して選択されたボタンを通知し、ゲーム装置16に設けられたボタン38が操作された場合と同様に、Webコントローラ32からの操作ボタンの通知に応じてクレーン50を移動させる、
ゲームサービスプロバイダ12の機能を実現するサーバ装置。」

(2)甲第2号証について
本件特許に係る出願の出願遡及日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第2号証(Bandicam、「ネットキャッチャーネッチ」、[online]、公知日2013年3月3日、YouTube、令和2年10月29日検索]、インターネット<https://www.youtube.com/watch?v=TNoFekhoSNI>)から、次の事項が看取できる。

ア 「YouTube」(ウェブページ左上部)

イ 「ネットキャッチャー ネッチ
・・・回視聴・2013/03/03
ネットキャッチャー ネッチ
チャンネル登録者数・・・人
ネットで獲って、自宅に届く♪
いつでもどこでもクレーンゲームが楽しめるネットキャッチャー【ネッチ】
リニューアルオープン致しましたので、是非ご来場下さいませ!」(ウェブページの動画の下)

ウ ウェブページの動画の内容を括弧内の再生時間毎に以下に示す。
(0:00秒)画面中央には、下方の赤いステージ、左右の壁及び後方の壁に囲まれた空間が撮影されている映像が表示されており、後方の壁面には「黒雪姫」「PURE COLORS SPECIAL FIGURE」などが記載されたポスターが掲示され、ステージ上にはフィギュアが入った2つの直方体の箱が左右に置かれ、右上方にはクレーンが配置されている。
また、撮影映像の右側には、上から下に、「ログオフ」の文字が付された緑色の長方形の絵柄、「並んでいる人」と「人」の文字の間の黒地に「0」のデジタル表示、「1PLAY1000NP」の文字、「保有NP」の文字、黒地に「58000」のデジタル表示、「ポイント購入」の文字が付された緑色の長方形の絵柄、「プレイ予約」の文字が付された緑色の長方形の絵柄、円内の左矢印上に「ヨコ」の文字が付されたグレー色の円形の絵柄、円内の上矢印上に「タテ」の文字が付されたグレー色の円形の絵柄が表示されている。
さらに、撮影映像の下側には、左から右に、サウンドのピンクのアイコンと「サウンド」の文字、マニュアルの緑のアイコンと「マニュアル」の文字、お問い合わせのアイコンと「お問い合わせ」の文字、「カメラ」の文字が付されたグレー色のビデオカメラ形状の絵柄、青い「前」の文字が付された薄い青の長方形の絵柄、青い「横」の文字が付された薄い青の長方形の絵柄が表示されている。

(0:01秒)「プレイ予約」の文字が付された緑色の長方形の絵柄が、「プレイ予約」の文字が付されたピンク色の長方形の絵柄に切り替わり、すぐに「プレイ予約」の文字が付されたピンク色の長方形の絵柄が、「予約中」の文字が付されたピンク色の長方形の絵柄に切り替わる。

(0:02秒)「予約中」の文字が付されたピンク色の長方形の絵柄は、「START」の文字が付されたピンク色の長方形の絵柄に切り替わる。

(0:03秒)「START」の文字が付されたピンク色の長方形の絵柄が、「START」の文字が付されたグレー色の長方形の絵柄に切り替わり、円内の左矢印上に「ヨコ」の文字が付されたグレー色の円形の絵柄の色が、ピンク色に切り替わる。

(0:04秒)円内の左矢印上に「ヨコ」の文字が付されたピンク色の円形の絵柄の色が、緑色に切り替わり、「保有NP」の文字の下の黒地に「58000」のデジタル表示が、「57000」に切り替わり、クレーンが左方向へ移動する。

(0:05秒)円内の左矢印上に「ヨコ」の文字が付された緑色の円形の絵柄の色が、グレー色に切り替わり、右側の直方体の箱上部でクレーンの左方向への移動が停止する。

(0:07秒)円内の上矢印上に「タテ」の文字が付されたグレー色の円形の絵柄の色が、ピンク色に切り替わり、撮影方向が前方から左方に切り替わる。ステージの前方には、ステージのない下方に拡がる空間が設けられ、クレーンはステージのない下方に拡がる空間の上部に位置している。

(0:08秒)円内の上矢印上に「タテ」の文字が付されたピンク色の円形の絵柄の色が、緑色に切り替わり、クレーンが後方へ移動する。

(0:11秒)円内の上矢印上に「タテ」の文字が付された緑色の円形の絵柄の色が、グレー色に切り替わり、右側の箱の上部でクレーンの移動が停止する。

(0:12秒)クレーンがフックを開き始める。

(0:14秒)撮影方向が左方から、前方に切り替わる。

(0:15〜0:19秒)フックを開いたままクレーンがステージ付近まで下降し、右側の直方体の箱に接触する。

(0:20〜0:26秒)クレーンがフックを徐々に閉じ、箱を掴み損ね、箱を前方に移動させながら画面上部まで上昇する。

(0:27〜0:28秒)クレーンがフックを閉じたまま前方に移動し停止する。

(0:29〜0:31秒)クレーンがフックを開く。

(0:32〜0:35秒)クレーンがフックを徐々に閉じながら右方に移動し元の右上方の位置で停止する。

(0:36秒)「START」の文字が付されたグレー色の長方形の絵柄の色が、ピンク色に切り替わり、その後ピンク色からグレー色に切り替わる。

(0:37秒)円内の左矢印上に「ヨコ」の文字が付されたグレー色の円形の絵柄の色が、グレー色からピンク色に切り替わる。

(0:38秒)円内の左矢印上に「ヨコ」の文字が付されたピンク色の円形の絵柄の色が、緑色に切り替わるとともに、保有NPの下のデジタル表示が「56000」に切り替わる。

(0:39〜0:40秒)クレーンが左方に移動し、円内の左矢印上に「ヨコ」の文字が付された緑色の円形の絵柄の色が、グレー色に切り替わり、右側の直方体の箱の上部でクレーンの移動が停止する。

(0:42秒)円内の上矢印上に「タテ」の文字が付されたグレー色の円形の絵柄の色が、ピンク色に切り替わり、撮影方向が前方から左方に切り替わる。クレーンはステージのない下方に拡がる空間の上部に位置している。

(0:43秒)円内の上矢印上に「タテ」の文字が付されたピンク色の円形の絵柄の色が、緑色に切り替わり、クレーンが後方へ移動する。

(0:45秒)円内の上矢印上に「タテ」の文字が付された緑色の円形の絵柄の色が、グレー色に切り替わり、右側の箱の上部でクレーンの移動が停止する。

(0:46秒)クレーンのフックが開き始める。

(0:47秒)視点が左方から前方に切り替わり、クレーンのフックが大きく開く。

(0:48〜0:54秒)フックを開いたままクレーンがステージ付近まで下降し、右側の直方体の箱に接触する。

(0:55〜0:59秒)クレーンがフックを徐々に閉じ、箱を掴み損ね、箱を前方に移動させながら画面上部まで上昇する。

(1:00〜1:01秒)クレーンがフックを閉じたまま前方に移動し停止する。

(1:02〜1:05秒)クレーンがフックを開く。

(1:06〜1:08秒)クレーンがフックを徐々に閉じながら右方に移動し元の右上方の位置で停止する。

(1:10秒)「START」の文字が付されたグレー色の長方形の絵柄の色が、ピンク色に切り替わる。

(1:11秒)「START」の文字が付されたピンク色の長方形の絵柄の色が、グレー色に切り替わる。円内の左矢印上に「ヨコ」の文字が付されたグレー色の円形の絵柄の色が、グレー色からピンク色に切り替わる。

(1:12秒)円内の左矢印上に「ヨコ」の文字が付されたピンク色の円形の絵柄の色が、緑色に切り替わるとともに、保有NPの下のデジタル表示が「55000」に切り替わる。

(1:13〜1:14秒)クレーンが左方に移動し、円内の左矢印上に「ヨコ」の文字が付された緑色の円形の絵柄の色が、グレー色に切り替わり、右側の直方体の箱の上部でクレーンの移動が停止する。

(1:15秒)円内の上矢印上に「タテ」の文字が付されたグレー色の円形の絵柄の色が、ピンク色に切り替わり、撮影方向が前方から左方に切り替わる。クレーンはステージのない下方に拡がる空間の上部に位置している。

(1:16秒)円内の上矢印上に「タテ」の文字が付されたピンク色の円形の絵柄の色が、緑色に切り替わり、クレーンが後方へ移動する。

(1:18秒)円内の上矢印上に「タテ」の文字が付された緑色の円形の絵柄の色が、グレー色に切り替わり、右側の箱の上部でクレーンの移動が停止する。

(1:19秒)クレーンのフックが開き始める。

(1:20秒)撮影方向が左方から前方に切り替わり、クレーンのフックが大きく開く。

(1:21〜1:25秒)フックを開いたままクレーンがステージ付近まで下降し、右側の直方体の箱に接触する。

(1:26〜1:32秒)クレーンがフックを徐々に閉じ、箱を掴み損ね、箱を前方に移動させながら画面上部まで上昇する。

(1:33〜1:34秒)クレーンがフックを閉じたまま前方に移動し停止する。

(1:35〜1:37秒)クレーンがフックを開く。

(1:38〜1:40秒)クレーンがフックを徐々に閉じながら右方に移動し元の右上方位置で停止する。

(1:43秒)「START」の文字が付されたグレー色の長方形の絵柄の色が、ピンク色に切り替わり、「カメラ」の文字が付されたビデオカメラ形状の絵柄の右側の「横」の文字が付された薄い青色の長方形の絵柄の色がグレー色に切り替わる。

(1:44秒)撮影方向が前方から左方に切り替わり、右側の箱の前方の半分弱がステージのない空間へはみ出ており、「カメラ」の文字が付されたビデオカメラ形状の絵柄の右側の「横」の文字が付されたグレー色の長方形の絵柄の色が薄い青色に切り替わり、「カメラ」の文字が付されたビデオカメラ形状の絵柄の右側の「前」の文字が付された薄い青色の長方形の絵柄の色がグレー色に切り替わる。

(1:45秒)「カメラ」の文字が付されたビデオカメラ形状の絵柄の右側の「前」の文字が付されたピンク色の長方形の絵柄の色がグレー色に切り替わる。

(1:46秒)撮影方向が左方から前方に切り替わる。

(1:49秒)「START」の文字が付されたピンク色の長方形の絵柄の色が、グレー色に切り替わり、円内の左矢印上に「ヨコ」の文字が付されたグレー色の円形の絵柄の色が、ピンク色に切り替わる。

(1:50秒)円内の左矢印上に「ヨコ」の文字が付されたピンク色の円形の絵柄の色が、緑色に切り替わり、保有NPの下のデジタル表示が「55000」から「54000」に切り替わり、クレーンが左方向への移動を開始する。

(1:52秒)円内の左矢印上に「ヨコ」の文字が付された緑色の円形の絵柄の色が、グレー色に切り替わり、クレーンの左方向への移動が停止する。

(1:53秒)円内の上矢印上に「タテ」の文字が付されたグレー色の円形の絵柄の色が、ピンク色に切り替わり、撮影方向が前方から左方に切り替わる。

(1:54秒)円内の上矢印上に「タテ」の文字が付されたピンク色の円形の絵柄の色が、緑色に切り替わり、クレーンが奥行き方向への移動を開始する。

(1:55秒)円内の上矢印上に「タテ」の文字が付された緑色の円形の絵柄の色が、グレー色に切り替わり、クレーンの移動が停止する。

(1:56秒)クレーンがフックを開き始める。

(1:57秒)撮影方向が左方から、前方に切り替わる。

(1:58〜2:03秒)フックを開いたままクレーンが下降し、ステージ上の右の直方体の箱に接触して、箱をステージの前方かつ下方に移動させながら下降する。

(2:04〜2:09秒)クレーンがフックを徐々に閉じ、箱を掴み損ね、箱をステージの前方かつ下方に落下させながら上昇し、その後停止する。

(2:10〜2:12秒)クレーンがフックを開く。

(2:13〜2:15秒)クレーンがフックを徐々に閉じながら右方に移動し元の右上方位置で停止する。

(2:20秒)撮影映像が見えなくなり、「景品獲得」及び「おめでとうございます!!」の文字が表示される。

(認定事項1)
上記ア及びイの記載から、上記ウの動画は、インターネットを介してクレーンゲームが楽しめるネットキャッチャー【ネッチ】というゲームを紹介するYouTube動画であることが理解できる。

(認定事項2)
上記ウの( 0:03秒)から(0:32〜0:35秒)、(0:36秒)から(1:06〜1:08秒)、(1:10秒)から(1:38〜1:40秒)、(1:43秒)から(2:13〜2:15秒)のいずれの動画においても、クレーンやステージ上の箱が撮影された撮影映像とその撮影映像の右側に表示される絵柄について、「START」の文字が付された長方形の絵柄の色がピンク色からグレー色に切り替わり、円内の左矢印上に「ヨコ」の文字が付された円形の絵柄がグレー色から、ピンク色に続いて緑色に切り替わり、「1PLAY1000NP」の下の「保有NP」の下の表示が、1000NPずつ減算され、クレーンが左方向へ移動し、円内の左矢印上に「ヨコ」の文字が付された円形の絵柄の色がグレー色に切り替わるとクレーンが停止し、円内の上矢印上に「タテ」の文字が付された円形の絵柄の色が、グレー色からピンク色に続いて緑色に切り替わり、クレーンが後方へ移動し、円内の上矢印上に「タテ」の文字が付された円形の絵柄の色がグレー色に切り替わるとクレーンが停止し、ステージ付近まで下降してフックで箱を掴もうとする動作の後に上昇し、ステージ前方のステージのない下方に拡がる空間の上方位置に移動してフックを開き、フックを徐々に閉じながら右方に移動し元の右上方の位置で停止すること、上記ウの(2:04〜2:09秒)の動画において、クレーンが箱をステージの前方かつ下方に落下させる撮影映像が表示され、(2:20秒)の動画において、撮影映像に代えて「景品獲得」及び「おめでとうございます!!」の文字が表示されることから、上記認定事項1を踏まえれば、撮影映像や絵柄や撮影映像に代えて表示される文字はインターネットを介して実機のクレーンゲーム装置を遠隔操作するために必要な情報を表示するものであり、YouTube動画は、ネットキャッチャー【ネッチ】というゲームにおける、実機のクレーンゲーム装置をインターネットを介して遠隔操作するプレーヤ端末を示すものであると認められる。

(認定事項3)
上記ウの動画において、(0:01秒)に「プレイ予約」の文字が付された緑色の長方形の絵柄が、「プレイ予約」の文字が付されたピンク色の長方形の絵柄に切り替わり、「プレイ予約」の文字付されたピンク色の長方形の絵柄が、「予約中」の文字が付されたピンク色の長方形の絵柄に切り替わり、(0:02秒)に「予約中」の文字が付されたピンク色の長方形の絵柄は、「START」の文字が付されたピンク色の長方形の絵柄に切り替わり、(0:03秒)以降にクレーンが動作されていることから、ネットキャッチャー【ネッチ】というゲームは、ゲームのプレイ予約を行うことができることが明らかであり、プレイ予約を登録するプレイ予約登録手段を備えることも明らかといえる。

(認定事項4)
上記認定事項3のとおり、プレイ予約ができる以上、プレイ中のプレーヤのプレーヤ端末に表示される「並んでいる人」と「人」の文字の間のデジタル表示は、常識的にみて、予約中でプレイを待機して並んでいる人の人数である予約の状況を示していることは明らかであるといえ、ネットキャッチャー【ネッチ】というゲームは、予約中でプレイを待機して並んでいる人の人数である予約の状況をプレイ中の一のプレーヤのプレーヤ端末に表示させる制御を行う予約状況表示制御手段を備えるものと認められる。

(認定事項5)
ネットキャッチャー【ネッチ】というゲームは、上記認定事項3のとおり、プレイ予約を登録することができるものであり、上記認定事項4のとおり、予約中でプレイを待機して並んでいる人の人数である予約の状況をプレイ中の一のプレーヤのプレーヤ端末に表示させるものであることから、一のプレーヤがプレイ中のときも他のプレーヤがプレイ予約を登録することができるものであることは明らかである。
また、上記ウの(0:00秒)の動画において、一のプレーヤのプレー中のものではないが、プレイ予約をするときには、クレーンやステージ上の箱を含む撮影映像が表示されていることから、ネットキャッチャー【ネッチ】というゲームは、一のプレーヤのプレイ中であれば、他のプレーヤが一のプレーヤのプレイ中の撮影映像をプレーヤ端末で閲覧中にプレイ予約を行うことができるものであることも明らかである。
さらに、ネットキャッチャー【ネッチ】というゲームにおいて、一のプレーヤのプレイ中の撮影画像を閲覧中の他のプレーヤによるプレイ予約は、他のプレーヤ以外のプレーヤの予約中ではなく、一のプレーヤが次のゲームプレイを行わなければ、一のプレーヤの次のゲームプレイのプレイ予約となることも明らかである。
したがって、ネットキャッチャー【ネッチ】というゲームは、一のプレーヤのプレイ中の撮影画像を閲覧中の他のプレーヤによる一のプレーヤの次のゲームプレイのプレイ予約を登録するプレイ予約登録手段を備えるものと認められる。

以上から、甲第2号証には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が開示されていると認められる。

「実機のクレーンゲーム装置をインターネットを介してプレーヤ端末により遠隔操作できるネットキャッチャー【ネッチ】というゲームであって、
一のプレーヤのプレイ中の撮影画像を閲覧中の他のプレーヤによる一のプレーヤの次のゲームプレイのプレイ予約を登録するプレイ予約登録手段を備え、
予約中でプレイを待機して並んでいる人の人数である予約の状況をプレイ中の一のプレーヤのプレーヤ端末に表示させる制御を行う予約状況表示制御手段を備える
ゲーム。」

(3)甲第4号証について
本件特許に係る出願の出願遡及日前に公開された甲第4号証(特開2006−158815号公報)には、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

「【0042】
5.店側が、遊技者の要望に沿って予約処理(つまりネット遊技の予約処理)を行う。例えば、ID、台番号、ネット遊技開始予定日付及び時刻を入力する。入力されたデータは台予約データベースに格納される。
店側は、このネット遊技の予約がなされた台の制御装置をセットする。これは、図3に示したように、遠隔操作器81を遊技機11の側方から手前側に引き出して遊技機11の必要箇所にセットすることで行う。
6.台の予約は閉店間際まで遊技していた者に最優先の権利があり、それ以外の予約希望者は予約時刻順の待ち行列に入る。
7.最終遊技者(最優先のネット遊技権利を持つ者)が上記6.で予約したネット遊技開始予定時刻(店側が任意に設定する時刻:例えば閉店時間から1時間以内の任意の時刻)を一定時間超えた(店側が任意に設定するタイムアウト時間:例えば15分)場合、遊技の権利は失効となり、待ち行列1番目の者がネット遊技権(ネット遊技権利のこと)を得ることになる。
【0043】
D.ネット遊技(専用端末でネット遊技を行うことの権利が確定した場合)
2.(当審注:「2.」は「1.」の誤記と認められる。)ネット遊技予約者は帰宅し、会員カードを専用端末61のカードリーダライタ63dに挿入し、LCD表示器63bを見てPTZ制御ボタン63cにある問い合せボタン(エントリーボタン)を押す。
2.専用端末61はカード上のID番号を読取り、ネット遊技サーバ12(NTPサーバ)に接続し、現在時刻を取得し、インターネット上の台予約データベースに対して照合処理を行う。
3.照合されたID所有者が台の予約をしていたら、データベースから台の番号と予約開始日時データを遊技者の専用端末61に返す。
4.専用端末61は、予約日時データよりも15分以上(上記段落[0043]の7.の説明による例の場合)経過していない場合、ネット遊技の権利が確定し、遊技可能となる。
【0044】
これにより、遊技者は自宅に居ながら専用端末61を操作してネット遊技サーバ12にアクセスし、パチンコ店1に実際に設置されている台を遠隔的に制御して遊技を行う。遠隔操作は遠隔操作器81を用いて行われ、カップ82を発射ハンドル91に押しあてて吸引し、モータ機構84により発射ハンドル91を回転させて、発射ハンドル91の角度を変えて玉の発射勢を変化させ自由に玉を発射させる。また、リーチが発生した場合には、PTZ制御ボタン63cを操作して特図のズームアップを図り、リーチの醍醐味を味わう。さらに、リーチ目が発生した場合やリーチが発生した場合に、マウス67が振動し、リーチを体感する。」

以上から、甲第4号証には、次の技術事項(以下「甲4技術事項」という。)が開示されていると認められる。

「台の予約は閉店間際まで遊技していた者に最優先の権利があり、それ以外の予約希望者は予約時刻順の待ち行列に入ることとなり、最終遊技者が遊技開始予定時刻を一定時間超えた(タイムアウト時間)場合、遊技の権利は失効となり、待ち行列1番目の者がネット遊技権を得る」という技術事項。

3 当審の判断
(1)取消理由1(サポート要件)について
ア 請求項1は、本件訂正により、「ゲーム空間内に配置されたゲーム要素を動かして楽しむクレーンゲーム機又はプッシャーゲーム機である実際の業務用ゲーム装置をコンピュータ上で仮想的にシミュレーションすることで、その場で前記業務用ゲーム装置をプレイしているかのような仮想的なゲームプレイ」と特定されたから、「ゲームプレイ」が「コンピュータ上で仮想的にシミュレーションすること」による「仮想的なゲームプレイ」と限定され、実際の業務用のゲームを遠隔制御するゲームプレイが除外されることとなり、明細書の段落【0004】ないし【0008】に記載された、クレーンゲームやプッシャーゲームなどのゲームプレイ毎に景品やメダルの配置位置といったゲーム状況が変化する実際の業務用のゲーム装置で味わうことのできる面白さを、ソーシャルゲームの仮想的なゲームプレイで実現するという課題を解決できることを当業者が認識できるものといえる。

イ 請求項1は、本件訂正により、「前記プレーヤ端末での操作入力に基づいて1回毎のゲームプレイにより仮想的なゲーム空間内に配置されたゲーム要素の配置位置(以下、この配置位置にゲーム要素が配置されたゲーム空間の状態のことを「ゲーム状況」という。)が変化し、次回のゲームプレイに前回のゲーム状況が引き継がれるゲームに係るゲームプレイ」と特定されたから、このうちの「ゲーム空間」が「仮想的なゲーム空間」と限定され、実際の業務用のゲーム装置におけるゲーム空間が除外されることとなり、明細書の段落【0004】ないし【0008】に記載された、クレーンゲームやプッシャーゲームなどのゲームプレイ毎に景品やメダルの配置位置といったゲーム状況が変化する実際の業務用のゲーム装置で味わうことのできる面白さを、ソーシャルゲームの仮想的なゲームプレイで実現するという課題を解決できることを当業者が認識できるものといえる。

ウ したがって、本件訂正後の請求項1及びこれを直接または間接的に引用する請求項2ないし4の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないとはいえず、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではなく、同法第113条第4号に該当しないから、取り消されるべきものではない。

(2)取消理由2(明確性)について
ア 請求項1は、本件訂正により、「前記プレーヤ端末での操作入力に基づいて1回毎のゲームプレイにより仮想的なゲーム空間内に配置されたゲーム要素の配置位置(以下、この配置位置にゲーム要素が配置されたゲーム空間の状態のことを「ゲーム状況」という。)が変化し、次回のゲームプレイに前回のゲーム状況が引き継がれるゲームに係るゲームプレイ」と特定されたから、このうちの「ゲーム空間」が「仮想的なゲーム空間」と限定され、実際の業務用のゲーム装置におけるゲーム空間が除外されることとなり、これに対し、請求項1の「ゲーム空間内に配置されたゲーム要素を動かして楽しむクレーンゲーム機又はプッシャーゲーム機である実際の業務用ゲーム装置」における「ゲーム空間」が、実際の業務用のゲーム装置におけるゲーム空間を意味することが明らかとなり、明確となった。

イ 請求項1は、本件訂正により、「ゲーム空間内に配置されたゲーム要素を動かして楽しむクレーンゲーム機又はプッシャーゲーム機である実際の業務用ゲーム装置をコンピュータ上で仮想的にシミュレーションすることで、その場で前記業務用ゲーム装置をプレイしているかのような仮想的なゲームプレイ」と特定されたから、「実際の業務用ゲーム装置を」「その場で」「プレイしているかのようなゲームプレイ」が、「コンピュータ上で仮想的にシミュレーションすること」による「仮想的なゲームプレイ」と限定され、実際の業務用のゲーム装置を遠隔制御するゲームプレイが除外されることとなり、明確となった。

ウ したがって、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1ないし4の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとはいえず、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではなく、同法第113条第4号に該当しないから、取り消されるべきものではない。

(3)取消理由3(実施可能要件)について
請求項1は、本件訂正により、「ゲーム空間内に配置されたゲーム要素を動かして楽しむクレーンゲーム機又はプッシャーゲーム機である実際の業務用ゲーム装置をコンピュータ上で仮想的にシミュレーションすることで、その場で前記業務用ゲーム装置をプレイしているかのような仮想的なゲームプレイ」と特定されたから、「ゲームプレイ」が「コンピュータ上で仮想的にシミュレーションすること」による「仮想的なゲームプレイ」と限定され、実際の業務用のゲーム装置を遠隔制御するゲームプレイが除外されることとなり、実際の業務用のゲーム装置を遠隔制御するゲームプレイを実現する手段について、明細書に記載する必要がないことが明らかとなった。
したがって、本件訂正後の本件明細書における発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえず、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同条の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第4号に該当しないから、取り消されるべきものではない。

(4)理由4(進歩性)について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(a)甲1発明の「端末装置14(端末装置14−1〜14−n)」は、本件発明1の「複数の」「端末」に相当する。
また、甲1発明は、「端末装置14においてボタン操作があったことを検知すると、ゲーム装置16に対して選択されたボタンを通知し、ゲーム装置16に設けられたボタン38が操作された場合と同様に、Webコントローラ32からの操作ボタンの通知に応じてクレーン50を移動させ」「景品を取得することができるクレーンゲーム」を「端末装置14」のプレーヤに提供するものといえるから、甲1発明の「端末操作14」は、本件発明1の「プレーヤ端末」に相当する。
そして、甲1発明の「サービスプロバイダ12の機能を実現するサーバ装置」は、「端末装置14においてボタン操作があったことを検知」可能に「接続されて」いるから、端末装置14と通信可能といえ、本件発明1の「端末と通信可能であ」る「サーバシステム」に相当する。

(b)甲1発明の「景品フィールド」、「景品」及び「各所のゲームセンターなどに設置されたゲーム装置16」は、本件発明1の「ゲーム空間」、「ゲーム要素」及び「実際の業務用ゲーム装置」に相当する。
そして、甲1発明の「ゲーム装置16に設けられたボタン38に対する操作、あるいはWebコントローラ32を介して通知されたゲーム制御用のデータに応じた制御のもとに、クレーン50を後移動(X方向)、右移動(Y方向)、回転移動を組み合わして移動させ、景品フィールドに山積みされた景品の方向に下降させ(Z方向)、景品が山積みされている位置に近づくタイミングで景品を掴み取るようにフックを開かせ、所定の位置まで下降するとフックを閉じると共に上昇させ、景品ポケット52が設けられた位置まで移動させた後にフックを開かせ、景品を取得することができるクレーンゲームであ」る「各所のゲームセンターなどに設置されたゲーム装置16」は、クレーンゲームがクレーンの操作によって景品を掴み取ったり掴み損ねたりして景品の配置を動かして楽しむものであるという技術常識に鑑みれば、本件発明1の「ゲーム空間内に配置されたゲーム要素を動かして楽しむクレーンゲーム機」「である実際の業務用ゲーム装置」に相当する。
また、甲1発明の「各所のゲームセンターなどに配置されたゲーム装置16」と「インターネット10を通じて」「接続された」「端末装置14においてボタン操作があったことを検知すると、ゲーム装置16に対して選択されたボタンを通知し、ゲーム装置16に設けられたボタン38が操作された場合と同様に」「クレーン50を移動させる」「ゲームサービスプロバイダ12の機能を実現するサーバ装置」は、インターネット10を通じた端末装置14のボタン操作により、各所のゲームセンターなどに配置された実際の業務用のゲーム装置16を、端末装置14のボタン操作によりクレーン50を移動させて、その場でプレイしているかのようなゲームプレイを端末装置に提供するものといえる。
そうすると、本件発明1の「実際の業務用ゲーム装置をコンピュータ上で仮想的にシミュレーションすることで、その場で前記業務用ゲーム装置をプレイしているかのような仮想的なゲームプレイを前記プレーヤ端末に提供するサーバシステム」と、甲1発明とは、「実際の業務用ゲーム装置をその場でプレイしているかのようなゲームプレイを前記プレーヤ端末に提供するサーバシステム」の点で共通する。

(c)甲1発明の「端末装置14にお」ける「ボタン操作」は、本件発明1の「プレーヤ端末での操作入力」に相当する。
そうすると、甲1発明の「端末装置14」の「ボタン操作」による、「クレーンゲームであ」る「ゲーム装置16に設けられたボタン38が操作された場合と同様」の「クレーン50を後移動(X方向)、右移動(Y方向)、回転移動を組み合わして移動させ、景品フィールドに山積みされた景品の方向に下降させ(Z方向)、景品が山積みされている位置に近づくタイミングで景品を掴み取るようにフックを開かせ、所定の位置まで下降するとフックを閉じると共に上昇させ、景品ポケット52が設けられた位置まで移動させた後にフックを開かせ」るというゲームプレイは、クレーンゲームがクレーンの操作によって景品を掴み取ったり掴み損ねたりして1回毎のゲームプレイにより景品の配置位置が変化し、次回のゲームプレイに前回のゲームプレイにより変化した景品の配置位置が引き継がれるものであるという技術常識に鑑みれば、本件発明1の「前記ゲームプレイは、前記プレーヤ端末での操作入力に基づいて1回毎のゲームプレイにより仮想的なゲーム空間内に配置されたゲーム要素の配置位置(以下、この配置位置にゲーム要素が配置されたゲーム空間の状態のことを「ゲーム状況」という。)が変化し、次回のゲームプレイに前回のゲーム状況が引き継がれるゲームに係るゲームプレイ」と、甲1発明とは、「前記プレーヤ端末での操作入力に基づいて1回毎のゲームプレイによりゲーム空間内に配置されたゲーム要素の配置位置が変化し、次回のゲームプレイに前回のゲーム状況が引き継がれるゲームに係るゲームプレイ」の点で共通する。

(d)甲1発明の「ゲームサービスプロバイダ12」は、「端末装置14で、インターネットを介してゲームサービスプロバイダ12が開設しているゲームサービスサイトにアクセスし、このサイト中に設けられたメニューなどをユーザの指示に応じて選択することで、所望のゲームセンターの任意のゲーム装置16」「のゲーム状況を撮影した映像をブラウザ画面上で閲覧できるように」するものであり、ゲーム状況を撮影した映像の閲覧の指示をユーザから受け付けることができるものといえ、その受け付けのための受付手段を有するものといえるから、本件発明1の「ゲーム状況の閲覧要求を他のプレーヤから受け付ける受付手段」に相当する構成を有するといえる。
また、甲1発明の「ゲーム装置16がゲーム動作モードにある場合」の「ゲーム実行中のリアルタイムのゲーム状況」に、「端末操作14からのゲーム開始要求の受信」により「ゲーム動作モードに移行」した後の「端末装置14に」おける「ボタン操作」によるゲーム実行中のリアルタイムのゲーム状況が含まれることは明らかであるから、これが、本件発明1の「一のプレーヤによって前記ゲームプレイがなされている際」の「当該プレイ中のゲーム状況」に相当する。

(e)甲1発明の「ゲームサービスプロバイダ12」は、「端末装置14で、インターネットを介してゲームサービスプロバイダ12が開設しているゲームサービスサイトにアクセスし、このサイト中に設けられたメニューなどをユーザの指示に応じて選択することで、所望のゲームセンターの任意のゲーム装置16がゲーム動作モードにある場合にはゲーム実行中のリアルタイムのゲーム状況を撮影した映像をブラウザ画面上で閲覧できるように」するものであり、ユーザの閲覧の指示に応じて、ゲーム実行中のリアルタイムのゲーム状況を、他のプレーヤたるユーザの端末装置14のブラウザ画面上に表示させる制御を行うものといえ、その表示の制御のための表示制御手段を有するものといえるから、甲1発明の「ゲームサービスプロバイダ12」は、本件発明1の「前記閲覧要求に応じて、前記プレイ中のゲーム状況を前記他のプレーヤのプレーヤ端末に表示させる制御を行うゲーム状況表示制御手段」に相当する構成を有するものといえる。

そうすると、本件発明1と甲1発明とは、
「複数のプレーヤ端末と通信可能であり、ゲーム空間内に配置されたゲーム要素を動かして楽しむクレーンゲーム機である実際の業務用ゲーム装置をその場でプレイしているかのようなゲームプレイを前記プレーヤ端末に提供するサーバシステムであって、
前記ゲームプレイは、前記プレーヤ端末での操作入力に基づいて1回毎のゲームプレイによりゲーム空間内に配置されたゲーム要素の配置位置(以下、この配置位置にゲーム要素が配置されたゲーム空間の状態のことを「ゲーム状況」という。)が変化し、次回のゲームプレイに前回のゲーム状況が引き継がれるゲームに係るゲームプレイであり、
一のプレーヤによって前記ゲームプレイがなされている際に、当該プレイ中のゲーム状況の閲覧要求を他のプレーヤから受け付ける受付手段と、
前記閲覧要求に応じて、前記プレイ中のゲーム状況を前記他のプレーヤのプレーヤ端末に表示させる制御を行うゲーム状況表示制御手段と、
を備えたサーバシステム。」
の点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
実際の業務用ゲーム装置をその場でプレイしているかのようなゲームプレイに関して、本件発明1は「実際の業務用ゲーム装置をコンピュータ上で仮想的にシミュレーションすることで、その場で前記業務用ゲーム装置をプレイしているかのような仮想的なゲームプレイ」であって「前記プレーヤ端末での操作入力に基づいて1回毎のゲームプレイにより仮想的なゲーム空間内に配置されたゲーム要素の配置位置」「が変化し、次回のゲームプレイに前回のゲーム状況が引き継がれるゲームに係るゲームプレイ」をプレーヤ端末に提供するものであるのに対し、甲1発明は「各所のゲームセンターなどに配置されたゲーム装置16」と「インターネット10を通じて」「接続された」「端末装置14においてボタン操作があったことを検知すると、ゲーム装置16に対して選択されたボタンを通知し、ゲーム装置16に設けられたボタン38が操作された場合と同様に」「クレーン50を移動させる」もの、すなわち、インターネット10を通じた端末装置14のボタン操作により、各所のゲームセンターなどに配置された実際の業務用のゲーム装置16を、端末装置14のボタン操作によりクレーン50を移動させて、その場でプレイしているかのようなゲームプレイを端末装置に提供するものである点。

(相違点2)
本件発明1は、「前記他のプレーヤによる前記一のプレーヤの次のゲームプレイの予約を登録する予約登録手段と、前記予約の状況を前記一のプレーヤのプレーヤ端末に表示させる制御を行う予約状況表示制御手段と」を備えているのに対し、甲1発明は、その点が特定されていない点。

イ 判断
(相違点1について)
相違点1に係る本件発明1の構成である「実際の業務用ゲーム装置をコンピュータ上で仮想的にシミュレーションすることで、その場で前記業務用ゲーム装置をプレイしているかのような仮想的なゲームプレイ」であって「前記プレーヤ端末での操作入力に基づいて1回毎のゲームプレイにより仮想的なゲーム空間内に配置されたゲーム要素の配置位置」「が変化し、次回のゲームプレイに前回のゲーム状況が引き継がれるゲームに係るゲームプレイ」をプレーヤ端末に提供する点については、異議申立人が提出した甲第1号証、甲第2号証及び甲第4号証のいずれにも記載されておらず、甲1発明の「各所のゲームセンターなどに配置されたゲーム装置16」と「インターネット10を通じて」「接続された」「端末装置14においてボタン操作があったことを検知すると、ゲーム装置16に対して選択されたボタンを通知し、ゲーム装置16に設けられたボタン38が操作された場合と同様に」「クレーン50を移動させる」もの、すなわち、インターネット10を通じた端末装置14のボタン操作により、各所のゲームセンターなどに配置された実際の業務用のゲーム装置16を、端末装置14のボタン操作によりクレーン50を移動させて、その場でプレイしているかのようなゲームプレイを端末装置に提供するものに代えて、相違点1に係る本件発明1の構成とすることは当業者が容易になし得たことということはできない。

なお、申立人が、本件訂正前の請求項3に係る発明の「一のプレーヤのゲームプレイ終了後に、前記予約登録手段による登録順に従って、予約したプレーヤのプレーヤ端末にゲームプレイが可能となった旨を通知する予約履行可能通知手段」に対して副引用例として提出した、本件特許に係る出願の出願遡及日前に公開された甲第3号証(特開2008−220598号公報には、サテライト400でゲームを行っている他のプレイヤがゲーム終了操作を行うと、ターミナル300はサテライト400の状態を「着席待ち」に更新し、順番待ち端末リストの先頭の携帯端末IDを取得し、当該携帯端末IDの携帯端末500に空きサテライト400の案内情報を送信する手段を備えるゲームシステムが記載されているものの(段落【0015】、【0038】、【0070】及び【0073】ないし【0076】参照)、上記相違点1に係る本件発明1の構成については何ら記載されておらず、上記判断を左右するものではない。

したがって、相違点2を検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲第1号証ないし甲第4号証の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではないから、本件特許の請求項1に係る特許は、同条の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当しないから、取り消されるべきものではない。

(2)本件発明2ないし4について
本件発明2ないし4は、請求項1を直接又は間接的に引用して記載された発明であり、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに他の事項を付加したものである。
そうすると、上記(1)で検討したとおり、本件発明1が、甲1発明及び甲第1号証ないし甲第4号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明2ないし4に係る発明も、甲1発明及び甲第1号証ないし甲第4号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件請求項2ないし4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものということはできない。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立ての理由について
1 サポート要件違反について
申立人は、発明の詳細な説明には、請求項1及びこれを引用する請求項2ないし4における「ゲーム要素」、「受付手段」、「ゲーム状況表示制御手段」及び「予約状況表示制御手段」という用語が記載されているとは認められないため、審査基準のサポート要件違反の類型中の「(1)請求項に記載されている事項が、発明の詳細な説明中に記載も示唆もされていない場合」に該当し、サポート要件を満たさず、仮にこれらの用語が発明の詳細な説明中に示唆されていたとしても、それはあくまで仮想的なゲームプレイに関する示唆であり、実際の業務用のゲーム装置を遠隔制御するゲームプレイに関する示唆ではありえないため、サポート要件を満たさない旨主張する。

しかしながら、請求項1ないし4において、「ゲーム要素」は、「クレーンゲーム機又はプッシャーゲーム機である実際の業務用ゲーム装置」の「ゲーム空間内に配置され」て「動かして楽しむ」ものであり、「プレーヤ端末での操作入力に基づいて1回毎のゲームプレイにより仮想的なゲーム空間内に配置された」「配置位置」「が変化」するものであるから、明細書の段落【0005】の「クレーンゲームに代表されるような実物の景品を取得する業務用のゲーム装置や、ゲーム空間に大量に置かれた実物のメダルがプッシャー機構で押されて移動する業務用のメダルゲーム装置(プッシャーゲーム)・・・」との記載及び段落【0006】の「業務用のゲーム装置には、ゲームプレイ毎に景品やメダルの配置位置といったゲーム状況が変化するといった面白さ・・・」との記載うちの「景品」や「メダル」に相当することは明らかである。
また、請求項1ないし4において、「受付手段」は、「一のプレーヤによって前記ゲームプレイがなされている際に、当該プレイ中のゲーム状況の閲覧要求を他のプレーヤから受け付ける」ものであり、明細書の段落【0104】及び【0106】に記載された、ゲームサーバ1000において実行される仮想ゲーム装置の閲覧及び予約を管理する処理において、プレーヤ端末2000から閲覧要求を受信する(ステップA5)というゲームサーバ1000の機能に相当することは明らかである。
さらに、請求項1ないし4において、「ゲーム状況表示制御手段」は、「前記閲覧要求に応じて、前記プレイ中のゲーム状況を前記他のプレーヤのプレーヤ端末に表示させる制御を行う」ものであるから、明細書の段落【0104】及び【0106】に記載された、ゲームサーバ1000において実行される仮想ゲーム装置の閲覧及び予約を管理する処理において、要求された閲覧対象の仮想ゲーム装置の詳細情報を生成し、当該プレーヤ端末2000へ送信し(ステップA7)、次いで、要求元のプレーヤを閲覧プレーヤとして、閲覧対象の仮想ゲーム装置の閲覧プレーヤリスト356に追加し(ステップA9)、更に、閲覧対象の仮想ゲーム装置のプレイ状況がプレイ中ならば(ステップA11:YES)、当該仮想ゲーム装置へ閲覧状況情報を送信する(ステップA13)というゲームサーバ1000の機能に相当することは明らかである。
そして、請求項1ないし4において、「予約状況表示制御手段」は、「前記予約の状況を前記一のプレーヤのプレーヤ端末に表示させる制御を行う」ものであるから、明細書の段落【0104】及び【0108】に記載された、ゲームサーバ1000において実行される仮想ゲーム装置の閲覧及び予約を管理する処理において、プレーヤ端末2000から予約要求を受信したならば(ステップA23:YES)、要求元のプレーヤを予約プレーヤとして、要求された予約対象の仮想ゲーム装置の予約プレーヤリスト358に追加し(ステップA25)、次いで、予約対象の仮想ゲーム装置のプレイ状況がプレイ中ならば(ステップA27:YES)、当該仮想ゲーム装置へ予約状況情報を送信する(ステップA29)というゲームサーバ1000の機能に相当することは明らかである。
そのうえ、本件訂正により、「プレーヤ端末に」「提供」される「ゲームプレイ」が、「実際の業務用ゲーム装置をコンピュータ上で仮想的にシミュレーションすることで、その場で前記業務用ゲーム装置をプレイしているかのよう」に「提供」される「仮想的なゲームプレイ」であり、「ゲーム要素」が、「仮想的なゲーム空間内に配置された」ものであることが特定されたことから、「ゲーム要素」、「受付手段」、「ゲーム状況表示制御手段」及び「予約状況表示制御手段」のいずれもが「仮想的なゲームプレイ」に係るものであり、実際の業務用のゲーム装置を遠隔制御するゲームプレイに係るものが除外されることとなり、仮想的なゲームプレイに係るものとして記載された発明の詳細な説明と整合する。
そうすると、請求項1ないし4における「ゲーム要素」、「受付手段」、「ゲーム状況表示制御手段」及び「予約状況表示制御手段」は、発明の詳細な説明に記載された範囲を超えるものではないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。

明確性違反について
(1)「前記ゲームプレイは、前記プレーヤ端末での操作入力に基づいて1回毎のゲームプレイによりゲーム空間内に配置されたゲーム要素の配置位置(以下、この配置位置にゲーム要素が配置されたゲーム空間の状態のことを「ゲーム状況」という。)が変化し、次回のゲームプレイに前回のゲーム状況が引き継がれるゲームに係るゲームプレイ」との記載について
申立人は、請求項1及びこれを引用する請求項2ないし4における「前記ゲームプレイは、前記プレーヤ端末での操作入力に基づいて1回毎のゲームプレイによりゲーム空間内に配置されたゲーム要素の配置位置(以下、この配置位置にゲーム要素が配置されたゲーム空間の状態のことを「ゲーム状況」という。)が変化し、次回のゲームプレイに前回のゲーム状況が引き継がれるゲームに係るゲームプレイ」という記載について、
ア 特許請求の範囲において、括弧書きを用いているため、その発明特定事項の定義が不明確であり、その技術的範囲が明確でなく、
イ 段落【0044】には、「ここで、ゲーム状況はゲーム空間の状態を表し、具体的には、各景品の配置位置や、クレーン装置22のアームカやアーム幅、爪の大きさ等の設定等である。」と記載されているところ、「ゲーム状況」の定義が請求項1に記載されている内容と異なっているから、括弧書きされた「ゲーム状況」の意味が不明確であり、
ウ 「1回毎のゲームプレイによりゲーム空間内に配置されたゲーム要素の配置位置」という表現において、「ゲーム要素」の定義が不明確であるため、何がどのように配置される配置位置であるかが特定できず、
エ 「次回のゲームプレイに前回のゲーム状況が引き継がれるゲームに係るゲームプレイ」という表現では、ゲーム状況が引き継がれるとはどのような処理が行われるのか特定されないのであり、「ゲーム状況が引き継がれる」とは、仮想的なシミュレーションとして実行される仮想的なゲームプレイにおいては、例えば、前回のゲームプレイにおける各ゲーム要素のパラメータを次のゲームプレイに引き継ぎ、前回のゲームプレイと同じ状態とすることが必要なものと想定され、例えば、明細書段落【0044】には、次のゲームプレイに引き継がれるパラメータとして「各景品の配置位置や、クレーン装置22のアームカやアーム幅、爪の大きさ等の設定等」が例示されている一方、実際の業務用のゲーム装置を遠隔制御するゲームプレイにおいては、前回のゲームプレイ後に景品の状態をそのまま維持することが想定され、つまり、何らかの処理が行われるのではなく、各ゲーム要素が前回のゲームプレイ後から放置されることで結果的にゲーム状況が引継がれることを意味するため、請求項1における当該表現が意味する技術的事項が仮想的なゲームプレイの場合と根本的に異なるものであり、ここで、仮想的なシミュレーションとして実行される仮想的なゲームプレイが、実際の業務用のゲーム装置を遠隔制御するゲームプレイとは区別して認識されることが本件出願時の技術常識であり、係る技術常識を考慮すると、請求項1において、ゲームプレイが仮想的なゲームプレイのみを意味し、「ゲーム要素の配置位置」及び 「ゲーム状況が引き継がれる」という表現を仮想的なシミュレーションとして実行される仮想的なゲームプレイとして特定するための事項が不足していることは明らかであり、したがって、請求項1の記載から発明を明確に把握することができない
旨主張する。

しかしながら、上記アについては、「前記プレーヤ端末での操作入力に基づいて1回毎のゲームプレイによりゲーム空間内に配置されたゲーム要素の配置位置(以下、この配置位置にゲーム要素が配置されたゲーム空間の状態のことを「ゲーム状況」という。)」との記載は、これ以降の記載において、「前記プレーヤ端末での操作入力に基づいて1回毎のゲームプレイによりゲーム空間内に配置されたゲーム要素の配置位置にゲーム要素が配置されたゲーム空間の状態」という冗長な表現を繰り返すことを防ぐためにこれを「ゲーム状況」と言い換えることを意味するものであることは明らかであり、括弧書きの記載によって、「前記プレーヤ端末での操作入力に基づいて1回毎のゲームプレイによりゲーム空間内に配置されたゲーム要素の配置位置にゲーム要素が配置されたゲーム空間の状態」という発明特定事項の定義が不明確となるものではなく、その技術的範囲が不明確となるものでもない。
上記イについては、請求項1の記載においては、「前記プレーヤ端末での操作入力に基づいて1回毎のゲームプレイにより仮想的なゲーム空間内に配置されたゲーム要素の配置位置にゲーム要素が配置されたゲーム空間の状態」のことを「ゲーム状況」ということが明確に記載されており、また、これは、段落【0044】に記載されている「ゲーム状況」のうちの「各景品の配置位置」に対応することが明らかであるから、請求項1に記載されている「ゲーム状況」に係る記載は明確である。
上記ウについては、上記1で検討したように、「ゲーム要素」が、明細書の記載うちの「景品」や「メダル」に相当することは明らかであって、「1回毎のゲームプレイにより仮想的なゲーム空間内に配置されたゲーム要素の配置位置」における「ゲーム要素」の意味は明確であり、当該記載は、1回毎のゲームプレイにより仮想的なゲーム空間内に配置された景品やメダルの配置位置を意味することは明らかであり、明確である。
上記エについては、本件訂正により、「次回のゲームプレイに前回のゲーム状況が引き継がれるゲームに係るゲームプレイ」が「コンピュータ上で仮想的にシミュレーションすること」による「仮想的なゲームプレイ」と特定され、実際の業務用のゲーム装置を遠隔制御するゲームプレイが除外さえることとなり、引き継がれるゲーム状況が、明細書段落【0044】に記載されている、次のゲームプレイに引き継がれるパラメータとして例示されている「各景品の配置位置」と整合するものとなったため、請求項1の記載から発明を明確に把握することができるから、当該記載は明確である。
そうすると、「前記ゲームプレイは、前記プレーヤ端末での操作入力に基づいて1回毎のゲームプレイによりゲーム空間内に配置されたゲーム要素の配置位置(以下、この配置位置にゲーム要素が配置されたゲーム空間の状態のことを「ゲーム状況」という。)が変化し、次回のゲームプレイに前回のゲーム状況が引き継がれるゲームに係るゲームプレイ」との記載は明確であるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たす。

(2)「前記閲覧要求に応じて、前記プレイ中のゲーム状況を前記他のプレーヤのプレーヤ端末に表示させる制御を行うゲーム状況表示制御手段」との記載について
申立人は、本件特許発明1及びこれを直接又は間接的に引用する請求項2ないし4における「前記閲覧要求に応じて、前記プレイ中のゲーム状況を前記他のプレーヤのプレーヤ端末に表示させる制御を行うゲーム状況表示制御手段」という記載は、「プレイ中のゲーム状況」が、仮想的なシミュレーションとして実行される仮想的なゲームプレイの状況なのか、実際の業務用のゲーム装置を遠隔制御するゲームプレイの状況なのか特定できないため、上記「ゲーム状況表示制御手段」がどのような制御を行う手段であるのか特定できず、また、仮想的なシミュレーションとして実行される仮想的なゲームプレイが、実際の業務用のゲーム装置を遠隔制御するゲームプレイとは区別して認識されることが本件出願時の技術常識であり、係る技術常識を考慮すると、請求項1において、ゲームプレイが仮想的なゲームプレイのみを意味し、「プレイ中のゲーム状況」という表現を仮想的なシミュレーションとして実行される仮想的なゲームプレイとして特定するための事項が不足していることは明らかであるから、請求項1の記載から発明を明確に把握することができない旨主張する。

しかしながら、本件訂正により、「プレーヤ端末に」「提供」される「ゲームプレイ」が、「実際の業務用ゲーム装置をコンピュータ上で仮想的にシミュレーションすることで、その場で前記業務用ゲーム装置をプレイしているかのよう」に「提供」される「仮想的なゲームプレイ」であり、「ゲーム要素」が、「仮想的なゲーム空間内に配置された」ものであることが特定されたことから、「前記閲覧要求に応じて、前記プレイ中のゲーム状況を前記他のプレーヤのプレーヤ端末に表示させる制御を行うゲーム状況表示制御手段」のうちの「プレイ中のゲーム状況」が、仮想的なシミュレーションとして実行される仮想的なゲームプレイの状況に対応することとなり、当該記載は明確であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たす。

(3)小括
よって、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立ての理由によっては、本件特許の請求項1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。

第6 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立ての理由によっては、本件請求項1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。
そして、他に本件請求項1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のプレーヤ端末と通信可能であり、ゲーム空間内に配置されたゲーム要素を動かして楽しむクレーンゲーム機又はプッシャーゲーム機である実際の業務用ゲーム装置をコンピュータ上で仮想的にシミュレーションすることで、その場で前記業務用ゲーム装置をプレイしているかのような仮想的なゲームプレイを前記プレーヤ端末に提供するサーバシステムであって、
前記ゲームプレイは、前記プレーヤ端末での操作入力に基づいて1回毎のゲームプレイにより仮想的なゲーム空間内に配置されたゲーム要素の配置位置(以下、この配置位置にゲーム要素が配置されたゲーム空間の状態のことを「ゲーム状況」という。)が変化し、次回のゲームプレイに前回のゲーム状況が引き継がれるゲームに係るゲームプレイであり、
一のプレーヤによって前記ゲームプレイがなされている際に、当該プレイ中のゲーム状況の閲覧要求を他のプレーヤから受け付ける受付手段と、
前記閲覧要求に応じて、前記プレイ中のゲーム状況を前記他のプレーヤのプレーヤ端末に表示させる制御を行うゲーム状況表示制御手段と、
前記他のプレーヤによる前記一のプレーヤの次のゲームプレイの予約を登録する予約登録手段と、
前記予約の状況を前記一のプレーヤのプレーヤ端末に表示させる制御を行う予約状況表示制御手段と、
を備えたサーバシステム。
【請求項2】
前記予約状況表示制御手段は、予約したプレーヤの人数に応じた表示を前記一のプレーヤのプレーヤ端末に表示させる制御を行う、
請求項1に記載のサーバシステム。
【請求項3】
前記一のプレーヤのゲームプレイ終了後に、前記予約登録手段による登録順に従って、予約したプレーヤのプレーヤ端末にゲームプレイが可能となった旨を通知する予約履行可能通知手段、
を更に備えた請求項1又は2に記載のサーバシステム。
【請求項4】
前記一のプレーヤのゲームプレイから所与の優先受付期間の間は、当該一のプレーヤによるゲームプレイ要求を優先して受け付ける優先受付手段を更に備え、
前記予約履行可能通知手段は、前記優先受付期間の経過後に、予約したプレーヤのプレーヤ端末にゲームプレイが可能となった旨を通知する、
請求項3に記載のサーバシステム。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照
異議決定日 2021-11-11 
出願番号 P2018-214289
審決分類 P 1 651・ 851- YAA (A63F)
P 1 651・ 536- YAA (A63F)
P 1 651・ 537- YAA (A63F)
P 1 651・ 121- YAA (A63F)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 藤本 義仁
特許庁審判官 吉村 尚
藤田 年彦
登録日 2020-06-22 
登録番号 6721659
権利者 株式会社バンダイナムコエンターテインメント
発明の名称 サーバシステム  
代理人 黒田 泰  
代理人 井上 一  
代理人 竹腰 昇  
代理人 黒田 泰  
代理人 竹腰 昇  
代理人 井上 一  

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