ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02K 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02K |
---|---|
管理番号 | 1381884 |
総通号数 | 3 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2022-03-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-02-10 |
確定日 | 2022-02-16 |
事件の表示 | 特願2014−158297「トルクリップルが低減されたスポーク永久磁石機械およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年2月16日出願公開、特開2015−33329〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成26年8月4日(パリ条約による優先権主張2013年8月5日、米国)の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成29年 7月24日 :手続補正書の提出 平成30年 6月19日付け:拒絶理由通知書 平成30年 9月11日 :意見書、手続補正書の提出 平成31年 3月27日付け:拒絶理由通知書 令和 元年 6月24日 :意見書、手続補正書の提出 令和 元年11月 6日付け:拒絶査定 令和 2年 2月10日 :審判請求書、手続補正書の提出 令和 2年12月15日付け:拒絶理由通知書 令和 3年 3月11日 :意見書、手続補正書の提出 令和 3年 5月14日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書 令和 3年 6月25日 :意見書、手続補正書の提出 第2 令和3年6月25日提出の手続補正書でした補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和3年6月25日提出の手続補正書でした補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1〜8の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。) 「【請求項1】 内部永久磁石機械であって、 複数のステータティース(44)を含むステータコア(40)と、 前記複数のステータティース(44)の周りに巻回され、交流電流で励磁されるとステータ磁界を発生させるステータ巻線(50)と、 を備えるステータ組立体(14)と、 前記ステータ組立体(14)により画定された空洞(46)内に配置されかつ前記ステータ組立体(14)に対して回転するように構成されたロータ組立体(12)であって、 シャフトボディ(24)と前記シャフトボディ(24)から径方向外側に延びる複数の突起(22)とを備える軸(18)であって、前記複数の突起(22)が前記シャフトボディ(24)を中心(76)として円周に前記シャフトボディ(24)の軸線方向長さに沿って形成され、周方向に複数配置される、前記軸(18)と、 前記複数の突起(22)を受け入れるように、前記軸(18)の周囲に配設された複数の薄板積層体(60)であって、前記複数の薄板群(62、64、66)の各々が複数の薄板(30)を備える、前記複数の薄板積層体(60)と、 前記ステータ磁界と相互作用してトルクを生成する磁界を発生させるように構成された複数の永久磁石(34)であって、前記複数の永久磁石(34)の各々が蟻継ぎ状凹部(32)内に配置され、前記蟻継ぎ状凹部(32)は、隣接する薄板積層体(60)の対の間に形成される、前記複数の永久磁石(34)と、 を備える前記ロータ組立体(12)とを備え、 前記複数の突起(22)の各々が、前記複数の薄板群(62、64、66)に渡って前記シャフトボディ(24)の軸線方向長さに沿って連続して形成され、 前記複数の突起(22)の各々が、異なる半径位置において周方向に突出する複数の突部を備え、 前記複数の薄板(30)の各々が、前記複数の突起(22)の1つを受け入れてスポークロータ軸を形成するように前記薄板(30)に形成された軸突起切欠き部(58)を含み、 前記複数の薄板群(62、64、66)の1つに形成された前記軸突起切欠き部(58)が、前記複数の薄板群(62、64、66)の他の1つに形成された前記軸突起切欠き部(58)から角度的にオフセットされ、 前記軸突起切欠き部(58)の径方向の最大長さが、前記複数の薄板(30)の径方向の最大長さの60%未満である、内部永久磁石機械。 【請求項2】 前記複数の永久磁石(34)の各永久磁石(34)は、複数の磁石ブロック(72)を備え、前記複数の磁石ブロック(72)の各々が前記積層群の各々に対応して配置され、 前記複数の磁石ブロック(72)の各々の半径方向内側に非金属製の下部ウェッジが配置され、 前記複数の磁石ブロック(72)の各々の半径方向外側に非金属製の上部ウェッジが配置され、 前記複数の薄板積層体(60)がロータコア(16)を集合的に形成し、前記複数の薄板積層体(60)の各々が前記ロータコア(16)のロータ極(28)を形成する、請求項1に記載の機械。 【請求項3】 前記複数の薄板群(62、64、66)が、第1の薄板群(62)と、第2の薄板群(64)と、第3の薄板群(66)とを含み、前記第2の薄板群(64)が前記第1の薄板群(62)と第3の薄板群(66)との間に軸線方向(68)に位置決めされ、 前記第2の薄板群(64)の前記薄板(82)に形成された前記軸突起切欠き部(58)が、前記薄板(82)の中心(76)に位置するように形成され、 前記第1の薄板群(62)の前記薄板(74)および前記第3の薄板群(66)の前記薄板(84)に形成された前記軸突起切欠き部(58)が、前記薄板(74、84)の中心(76)からオフセットされるように形成され、前記第1の薄板群(62)の前記薄板(74)に形成された前記軸突起切欠き部(58)が、中心(76)から第1の角度方向(78)にオフセットされ、前記第3の薄板群(66)の前記薄板(84)に形成された前記軸突起切欠き部(58)が、中心(76)から前記第1の角度方向(78)と反対方向の第2の角度方向(86)にオフセットされる、請求項1または2に記載の機械。 【請求項4】 前記第1の薄板群(62)の前記薄板(74)および前記第3の薄板群(66)の前記薄板(84)に形成された前記軸突起切欠き部(58)が、前記第2の薄板群(64)の前記薄板(82)に形成された前記軸突起切欠き部(58)を中心(76)として対称に形成されるように、中心(76)から等しい角度だけオフセットされる、 又は、 前記第1の薄板群(62)の前記薄板(74)および前記第3の薄板群(66)の前記薄板(84)に形成された前記軸突起切欠き部(58)が、前記第2の薄板群(64)の前記薄板(82)に形成された前記軸突起切欠き部(58)を中心(76)として非対称に形成されるように、中心(76)から異なる角度だけオフセットされる、請求項3に記載の機械。 【請求項5】 前記オフセット(80、88)が、ステータスロットピッチの半分以下であり、 前記ステータ組立体(14)およびロータ組立体(12)が、分布巻線(50)を有する分割型スポーク電気モータを構成する、請求項1乃至4のいずれかに記載の機械。 【請求項6】 内部永久磁石機械を組み立てる方法であって、 複数のステータティース(44)の周りに巻回され、交流電流で励磁されるとステータ磁界を発生させるステータ巻線(50)を備えた前記複数のステータティース(44)を有するステータコア(40)を備えるステータ組立体(14)を用意することと、 前記ステータ組立体(14)により形成された空洞(46)内で回転可能であるロータ組立体(12)を用意することであって、 シャフトボディ(24)と複数の突起(22)を備える軸(18)であって、前記複数の突起(22)が前記ロータ組立体(12)の回転軸の軸線方向長さに沿って径方向に延び、前記複数の突起(22)の各々が、複数の薄板群(62、64、66)に渡って前記シャフトボディ(24)の軸線方向長さに沿って連続して形成される前記軸(18)を用意することと、 複数の薄板積層体(60)が前記軸(18)の円周に位置決めされかつ前記複数の薄板積層体(60)の各々が前記軸(18)の前記軸線方向長さに沿って複数の薄板群(62、64、66)として配設されてスポークロータ軸を形成するように、前記複数の薄板積層体(60)を前記軸(18)の前記複数の突起(22)上に配置することであって、前記複数の突起(22)の各々が、異なる半径位置において周方向に突出する複数の突部を備え、前記複数の薄板群(62、64、66)の1つが前記複数の薄板群(62、64、66)の他の1つに対して角度オフセット(80、88)を有するように前記軸(18)上に位置決めされるように、前記複数の薄板積層体(60)を前記軸(18)の前記複数の突起(22)上に配置することと、 前記複数の薄板積層体(60)により画定された蟻継ぎ状の開口内に、前記ステータ磁界と相互作用してトルクを生成する磁界を発生させる複数の永久磁石(34)を固定することと、 を含む前記ロータ組立体(12)を用意することと、 を含み、 前記複数の薄板積層体(60)を前記軸(18)の前記複数の突起(22)上に配置することが、前記複数の薄板積層体(60)の各薄板(30)に、前記複数の突起(22)の1つを受け入れるように構成された軸突起切欠き部(58)を形成することを更に含み、 前記軸突起切欠き部(58)の径方向の最大長さが、前記複数の薄板(30)の径方向の最大長さの60%未満である、方法。 【請求項7】 前記軸突起切欠き部(58)を形成することが、前記軸突起切欠き部(58)を前記薄板(30)にレーザ切断すること含み、 前記角度オフセット(80、88)が、ステータスロットピッチの半分である、請求項6に記載の方法。 【請求項8】 内部永久磁石機械に使用するロータ組立体(12)であって、 シャフトボディと、前記シャフトボディから径方向外側に延びる複数の突起(22)であって、前記シャフトボディの軸線方向長さに沿って前記シャフトボディを中心(76)として円周に複数形成された前記複数の突起(22)とを含む軸(18)と、 前記複数の突起(22)上に配置された複数の薄板積層体(60)であって、前記複数の薄板積層体(60)の各々が前記軸(18)に沿って軸線方向(68)に配設された複数の薄板群(62、64、66)を備え、前記複数の薄板群(62、64、66)の各々が複数の薄板(30)を備える、前記複数の薄板積層体(60)と、 前記複数の薄板積層体(60)の間に形成される複数の蟻継ぎ状凹部(32)内に配置された複数の永久磁石(34)とを備え、 前記複数の突起(22)の各々が、前記複数の薄板群(62、64、66)に渡って前記シャフトボディ(24)の軸線方向長さに沿って連続して形成され、 前記複数の突起(22)の各々が、異なる半径位置において周方向に突出する複数の突部を備え、 前記複数の薄板積層体(60)の各々が、それぞれの軸突起(22)を受け入れてスポクロータ軸を形成するように前記薄板積層体(60)に形成された軸突起切欠き部(58)を含み、前記複数の薄板群(62、64、66)の1つに形成された前記軸突起切欠き部(58)が、前記複数の薄板群(62、64、66)の他の1つに形成された前記軸突起切欠き部(58)から角度的にオフセットされ、 前記軸突起切欠き部(58)の径方向の最大長さが、前記複数の薄板(30)の径方向の最大長さの60%未満である、 ロータ組立体(12)。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の、令和3年3月11日提出の手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1〜8の記載は次のとおりである。(下線部は、補正箇所である。) 「【請求項1】 内部永久磁石機械であって、 複数のステータティース(44)を含むステータコア(40)と、 前記複数のステータティース(44)の周りに巻回され、交流電流で励磁されるとステータ磁界を発生させるステータ巻線(50)と、 を備えるステータ組立体(14)と、 前記ステータ組立体(14)により画定された空洞(46)内に配置されかつ前記ステータ組立体(14)に対して回転するように構成されたロータ組立体(12)であって、 シャフトボディ(24)から径方向外側に延びる複数の突起(22)であって、前記シャフトボディ(24)を中心(76)として円周に前記シャフトボディ(24)の軸線方向長さに沿って形成され、周方向に複数配置された前記複数の突起(22)を備える軸(18)と、 前記複数の突起(22)を受け入れるように、前記軸(18)の周囲に配設された複数の薄板積層体(60)であって、前記複数の薄板群(62、64、66)の各々が複数の薄板(30)を備える、前記複数の薄板積層体(60)と、 前記ステータ磁界と相互作用してトルクを生成する磁界を発生させるように構成された複数の永久磁石(34)であって、前記複数の永久磁石(34)の各々が蟻継ぎ状凹部(32)内に配置され、前記蟻継ぎ状凹部(32)は、隣接する薄板積層体(60)の対の間に形成される、前記複数の永久磁石(34)と、 を備える前記ロータ組立体(12)とを備え、 前記複数の突起(22)の各々が、前記複数の薄板群(62、64、66)に渡って前記シャフトボディ(24)の軸線方向長さに沿って連続して形成され、 前記複数の突起(22)の各々が、異なる半径位置において周方向に突出する複数の突部を備え、 前記複数の薄板(30)の各々が、前記複数の突起(22)の1つを受け入れてスポークロータ軸を形成するように前記薄板(30)に形成された軸突起切欠き部(58)を含み、 前記複数の薄板群(62、64、66)の1つに形成された前記軸突起切欠き部(58)が、前記複数の薄板群(62、64、66)の他の1つに形成された前記軸突起切欠き部(58)から角度的にオフセットされ、 前記軸突起切欠き部(58)の径方向の最大長さが、前記複数の薄板(30)の径方向の最大長さの60%未満である、内部永久磁石機械。 【請求項2】 前記複数の永久磁石(34)の各永久磁石(34)は、複数の磁石ブロック(72)を備え、前記複数の磁石ブロック(72)の各々が前記積層群の各々に対応して配置され、 前記複数の磁石ブロック(72)の各々の半径方向内側に非金属製の下部ウェッジが配置され、 前記複数の磁石ブロック(72)の各々の半径方向外側に非金属製の上部ウェッジが配置され、 前記複数の薄板積層体(60)がロータコア(16)を集合的に形成し、前記複数の薄板積層体(60)の各々が前記ロータコア(16)のロータ極(28)を形成する、請求項1に記載の機械。 【請求項3】 前記複数の薄板群(62、64、66)が、第1の薄板群(62)と、第2の薄板群(64)と、第3の薄板群(66)とを含み、前記第2の薄板群(64)が前記第1の薄板群(62)と第3の薄板群(66)との間に軸線方向(68)に位置決めされ、 前記第2の薄板群(64)の前記薄板(82)に形成された前記軸突起切欠き部(58)が、前記薄板(82)の中心(76)に位置するように形成され、 前記第1の薄板群(62)の前記薄板(74)および前記第3の薄板群(66)の前記薄板(84)に形成された前記軸突起切欠き部(58)が、前記薄板(74、84)の中心(76)からオフセットされるように形成され、前記第1の薄板群(62)の前記薄板(74)に形成された前記軸突起切欠き部(58)が、中心(76)から第1の角度方向(78)にオフセットされ、前記第3の薄板群(66)の前記薄板(84)に形成された前記軸突起切欠き部(58)が、中心(76)から前記第1の角度方向(78)と反対方向の第2の角度方向(86)にオフセットされる、請求項1または2に記載の機械。 【請求項4】 前記第1の薄板群(62)の前記薄板(74)および前記第3の薄板群(66)の前記薄板(84)に形成された前記軸突起切欠き部(58)が、前記第2の薄板群(64)の前記薄板(82)に形成された前記軸突起切欠き部(58)を中心(76)として対称に形成されるように、中心(76)から等しい角度だけオフセットされる、 又は、 前記第1の薄板群(62)の前記薄板(74)および前記第3の薄板群(66)の前記薄板(84)に形成された前記軸突起切欠き部(58)が、前記第2の薄板群(64)の前記薄板(82)に形成された前記軸突起切欠き部(58)を中心(76)として非対称に形成されるように、中心(76)から異なる角度だけオフセットされる、請求項3に記載の機械。 【請求項5】 前記オフセット(80、88)が、ステータスロットピッチの半分以下であり、 前記ステータ組立体(14)およびロータ組立体(12)が、分布巻線(50)を有する分割型スポーク電気モータを構成する、請求項1乃至4のいずれかに記載の機械。 【請求項6】 内部永久磁石機械を組み立てる方法であって、 複数のステータティース(44)の周りに巻回され、交流電流で励磁されるとステータ磁界を発生させるステータ巻線(50)を備えた前記複数のステータティース(44)を有するステータコア(40)を備えるステータ組立体(14)を用意することと、 前記ステータ組立体(14)により形成された空洞(46)内で回転可能であるロータ組立体(12)を用意することであって、 シャフトボディ(24)と複数の突起(22)を備える軸(18)であって、前記複数の突起(22)が前記ロータ組立体(12)の回転軸の軸線方向長さに沿って径方向に延び、前記複数の突起(22)の各々が、複数の薄板群(62、64、66)に渡って前記シャフトボディ(24)の軸線方向長さに沿って連続して形成される前記軸(18)を用意することと、 複数の薄板積層体(60)が前記軸(18)の円周に位置決めされかつ前記複数の薄板積層体(60)の各々が前記軸(18)の前記軸線方向長さに沿って複数の薄板群(62、64、66)として配設されてスポークロータ軸を形成するように、前記複数の薄板積層体(60)を前記軸(18)の前記複数の突起(22)上に配置することであって、前記複数の突起(22)の各々が、異なる半径位置において周方向に突出する複数の突部を備え、前記複数の薄板群(62、64、66)の1つが前記複数の薄板群(62、64、66)の他の1つに対して角度オフセット(80、88)を有するように前記軸(18)上に位置決めされるように、前記複数の薄板積層体(60)を前記軸(18)の前記複数の突起(22)上に配置することと、 前記複数の薄板積層体(60)により画定された蟻継ぎ状の開口内に、前記ステータ磁界と相互作用してトルクを生成する磁界を発生させる複数の永久磁石(34)を固定することと、 を含む前記ロータ組立体(12)を用意することと、 を含み、 前記複数の薄板積層体(60)を前記軸(18)の前記複数の突起(22)上に配置することが、前記複数の薄板積層体(60)の各薄板(30)に、前記複数の突起(22)の1つを受け入れるように構成された軸突起切欠き部(58)を形成することを更に含み、 前記軸突起切欠き部(58)の径方向の最大長さが、前記複数の薄板(30)の径方向の最大長さの60%未満である、方法。 【請求項7】 前記軸突起切欠き部(58)を形成することが、前記軸突起切欠き部(58)を前記薄板(30)にレーザ切断すること含み、 前記角度オフセット(80、88)が、ステータスロットピッチの半分である、請求項6に記載の方法。 【請求項8】 内部永久磁石機械に使用するロータ組立体(12)であって、 シャフトボディと、前記シャフトボディから径方向外側に延びる複数の突起(22)であって、前記シャフトボディの軸線方向長さに沿って前記シャフトボディを中心(76)として円周に複数形成された前記複数の突起(22)とを含む軸(18)と、 前記複数の突起(22)上に配置された複数の薄板積層体(60)であって、前記複数の薄板積層体(60)の各々が前記軸(18)に沿って軸線方向(68)に配設された複数の薄板群(62、64、66)を備え、前記複数の薄板群(62、64、66)の各々が複数の薄板(30)を備える、前記複数の薄板積層体(60)と、 前記複数の薄板積層体(60)の間に形成される複数の蟻継ぎ状凹部(32)内に配置された複数の永久磁石(34)とを備え、 前記複数の突起(22)の各々が、前記複数の薄板群(62、64、66)に渡って前記シャフトボディ(24)の軸線方向長さに沿って連続して形成され、 前記複数の突起(22)の各々が、異なる半径位置において周方向に突出する複数の突部を備え、 前記複数の薄板積層体(60)の各々が、それぞれの軸突起(22)を受け入れてスポクロータ軸を形成するように前記薄板積層体(60)に形成された軸突起切欠き部(58)を含み、前記複数の薄板群(62、64、66)の1つに形成された前記軸突起切欠き部(58)が、前記複数の薄板群(62、64、66)の他の1つに形成された前記軸突起切欠き部(58)から角度的にオフセットされ、 前記軸突起切欠き部(58)の径方向の最大長さが、前記複数の薄板(30)の径方向の最大長さの60%未満である、 ロータ組立体(12)。」 2 補正の適否 (1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1、6及び8には、令和3年3月11日提出の手続補正書でした補正により、「前記軸突起切欠き部(58)の径方向の最大長さが、前記複数の薄板(30)の径方向の最大長さの60%未満である」という事項が追加されたところ、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1、6及び8にも、依然として「前記軸突起切欠き部(58)の径方向の最大長さが、前記複数の薄板(30)の径方向の最大長さの60%未満である」という事項が記載されている。 そこで、特許請求の範囲の請求項1、6及び8の記載を、「前記軸突起切欠き部(58)の径方向の最大長さが、前記複数の薄板(30)の径方向の最大長さの60%未満である」という記載を含むものとする補正事項を含んだ本件補正が、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものといえるかを、以下、検討する。 (2)当初明細書等の明細書及び特許請求の範囲には、軸突起切欠き部(58)の径方向の長さに関する記載は一切存在しないが、請求人は、令和3年3月11日提出の意見書にて、軸突起切欠き部(58)の径方向の最大長さが、複数の薄板(30)の最大長さの60%未満であるとする根拠を、少なくとも図4及び段落[0031]と主張することから、出願当初の図4並びに図4に関連する段落[0014]、[0015]及び[0031]の記載を検討する。 出願当初の図4並びに図4に関連する段落[0014]、[0015]及び[0031]には、次のとおり記載されている。 ([図4]) 「図面は、本発明を実施するために現在考えられる好ましい実施形態を例示する。」(段落[0014]) 「【図1A】本発明の例示的な実施形態に係る、ステータ組立体とロータ組立体とを含む、内部永久磁石(IPM)機械の断面図である。 【図1B】本発明の例示的な実施形態に係る、ステータ組立体とロータ組立体とを含む、内部永久磁石(IPM)機械の断面図である。 【図2】本発明の例示的な実施形態に係る図1AのIPM機械の部分断面図である。 【図3】本発明の例示的な実施形態に係る図1AのIPM機械の斜視図である。 【図4】本発明の例示的な実施形態に係る図3のIPM機械に使用する、中心から第1の方向に角度的にオフセットされた軸突起切欠き部が形成されたロータ薄板の図である。 【図5】本発明の例示的な実施形態に係る図3のIPM機械に使用する、中心から第1の方向に角度的にオフセットされた軸突起切欠き部が形成されたロータ薄板の図である。 【図6】本発明の例示的な実施形態に係る図3のIPM機械に使用する、中心に位置する軸突起切欠き部が形成されたロータ薄板の図である。 【図7】本発明の例示的な実施形態に係る図3のIPM機械に使用する、中心に位置する軸突起切欠き部が形成されたロータ薄板の図である。 【図8】本発明の例示的な実施形態に係る図3のIPM機械に使用する、中心から第2の方向に角度的にオフセットされた軸突起切欠き部が形成されたロータ薄板の図である。 【図9】本発明の例示的な実施形態に係る図3のIPM機械に使用する、中心から第2の方向に角度的にオフセットされた軸突起切欠き部が形成されたロータ薄板の図である。」(段落[0015]) 「まず図4および図5を参照すると、ロータ薄板74に形成された軸突起切欠き部58が中心(すなわち、中心線76)から第1の角度方向78にオフセットされた第1の非標準的な薄板形態を有するロータ薄板74が示されている。本発明の実施形態によれば、ロータ薄板74は、複数の薄板積層体60の各々に第1の薄板群62を形成するために使用される。このように、第1の薄板群62の軸線方向長さの範囲内にある軸線方向位置を有するロータ組70の各ロータ薄板74(すなわち、第1の群の範囲内にある特定の軸線方向位置において軸を中心として円周に配設された全ての薄板)は、第1の非標準的な薄板形態を有する。図4および図5に示すように、軸突起切欠き部58は、ロータ薄板74の製造中に選択された(80として表す)角度で中心からオフセットされるように形成される。軸突起切欠き部58を中心から外して位置決めする角度80は、最大値がスロットピッチの約半分であり、この角度は、極対数を乗じた2つのスロットの間の角度として定義される。中心76からの軸突起切欠き部58の角度オフセット80がこの最大値未満であり得ることが理解される。」(段落[0031]) (3)図4には、ロータ薄板74及びロータ薄板74に形成された軸突起切欠き部58が描写されているものの、ロータ薄板74の径方向の最大長さに対する軸突起切欠き部58の径方向の最大長さの割合について、その具体的な数値は記載されていない。そして、図4に関連する段落[0014]、[0015]及び[0031]にも、ロータ薄板74の径方向の長さに対する軸突起切欠き部58の径方向の長さの割合について記載されていない。 図4について、段落[0014]の「図面は、本発明を実施するために現在考えられる好ましい実施形態を例示する。」との記載、段落[0015]の「【図4】本発明の例示的な実施形態に係る図3のIPM機械に使用する、中心から第1の方向に角度的にオフセットされた軸突起切欠き部が形成されたロータ薄板の図である。」との記載から、図4は、本願発明を実施するために現在考えられる好ましい実施形態を例示するものと理解できる。そして、「一般に、特許出願の願書に添付される図面は、明細書を補完し、特許を受けようとする発明に係る技術内容を当業者に理解させるための説明図であるから、当該発明の技術内容を理解するために必要な程度の正確さを備えていれば足り、当該図面に表示された寸法については、必ずしも厳密な正確さが要求されるものではない。」(知財高判平成25年10月30日 平成25年(行ケ)10015号)とされている。してみるに、図4は、本願発明を実施するために現在考えられる好ましい実施形態を例示する説明図であって、図4が薄板(30)の長さに対する軸突起切欠き部(58)の径方向の最大長さを厳密に特定できるほどの正確さを有したものとは認められない。このことは、図4を実測して求めた、薄板(30)に対応するロータ薄板(74)の径方向の最大長さに対する軸突起切欠き部(58)の径方向の最大長さの割合が、約53%であるのに対し、図4と同じ実施形態の図面である図2を実測して求めた、この割合が、約66%であることからも裏付けられるものである。 したがって、図4を実測した場合に、軸突起切欠き部(58)の径方向の最大長さが、複数の薄板(30)の径方向の最大長さの約53%であるとしても、このことをもって、この割合が約53%であるという事項が、図4から把握できるものとはいえない。 そして、仮に、軸突起切欠き部(58)の径方向の最大長さが、複数の薄板(30)の径方向の最大長さの約53%であるという事項が、図4から把握できたとしても、当初明細書等には、薄板(30)の径方向の最大長さに対する軸突起切欠き部(58)の径方向の最大長さの割合の上限値を特定することについて、何ら記載されていないから、当初明細書等の記載から「前記軸突起切欠き部(58)の径方向の最大長さが、前記複数の薄板(30)の径方向の最大長さの60%未満である」という事項を把握することはできない。さらに、「前記軸突起切欠き部(58)の径方向の最大長さが、前記複数の薄板(30)の径方向の最大長さの60%未満である」という事項は、下限値の特定がないため、「60%未満」である1%、10%、30%等も含み得るものであり、軸突起切欠き部(58)の径方向の最大長さがかなり短い形態を含むが、このような形態は当初明細書等に記載されたものではなく、また当初明細書等の記載から自明な事項でもない。 (4)次に、請求人の主張について検討する。請求人は、令和3年6月25日提出の意見書にて、以下の点を主張する。 「また、図4に示されたロータ薄板の形状をそのまま採用してロータ薄板を制作して、本発明を実施できることは当業者に明らかでありますので、『図4は軸突起切欠き部(58)の径方向の最大長さが、複数の薄板(30)の径方向の最大長さの約53%である』と図4を把握することが可能であり、この把握に基づき特定された『前記軸突起切欠き部(58)の径方向の最大長さが、前記複数の薄板(30)の径方向の最大長さの60%未満である』という事項は、当初明細書等に記載されたものであると言えると思料いたします。」(以下、「主張1」という。) 「明細書に開示のない事項にかかる補正の新規事項の該当性に関する判断を行った判決については、知財高判平成30年8月22日 平成29年(行ケ)10216号等を参照すべきであると思料いたします。」(以下、「主張2」という。) 主張1に関し、上述したとおり「図4は軸突起切欠き部(58)の径方向の最大長さが、複数の薄板(30)の径方向の最大長さの約53%である」という事項及び「前記軸突起切欠き部(58)の径方向の最大長さが、前記複数の薄板(30)の径方向の最大長さの60%未満である」という事項は、当初明細書等に記載されたものではなく、また当初明細書等の記載から自明な事項でもない。 主張2に関し、補正が、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしているか否かは、事案毎に判断されるべきものであり、「明細書に開示のない事項にかかる補正の新規事項の該当性に関する判断を行った判決」が存在することが、直ちに本件における判断に影響を与えるものでない。 以上から、主張1及び主張2は採用できない。 (5)よって、請求項1、6及び8の「前記軸突起切欠き部(58)の径方向の最大長さが、前記複数の薄板(30)の径方向の最大長さの60%未満である」という事項は、当初明細書等に記載されたものではなく、また当初明細書等の記載から自明な事項でもないから、本件補正は、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものとはいえない。 3 本件補正についてのむすび したがって、本件補正は、特許法17条の2第3項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和3年6月25日提出の手続補正書でした補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1〜8に係る発明は、令和3年3月11日提出の手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1〜8に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 当審における拒絶の理由 令和3年5月14日付けで当審が通知した拒絶理由(最後の拒絶理由)のうち理由1は、令和3年3月11日提出の手続補正書でした補正は、下記の点で当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない、というものである。 記 上記手続補正書でした補正により、請求項1、6及び8に「前記軸突起切欠き部(58)の径方向の最大長さが、前記複数の薄板(30)の径方向の最大長さの60%未満である」事項が追加された。 請求人は、当該事項の補正の根拠について、同日(令和3年3月11日)付けの意見書で以下のとおり主張する。 「軸突起切欠き部(58)の径方向の最大長さが、複数の薄板(30)の径方向の最大長さの60%未満である点は、少なくとも図4及び、本願明細書第0031段落の『まず図4および図5を参照すると、ロータ薄板74に形成された軸突起切欠き部58が中心(すなわち、中心線76)から第1の角度方向78にオフセットされた第1の非標準的な薄板形態を有するロータ薄板74が示されている。本発明の実施形態によれば、ロータ薄板74は、複数の薄板積層体60の各々に第1の薄板群62を形成するために使用される。このように、第1の薄板群62の軸線方向長さの範囲内にある軸線方向位置を有するロータ組70の各ロータ薄板74(すなわち、第1の群の範囲内にある特定の軸線方向位置において軸を中心として円周に配設された全ての薄板)は、第1の非標準的な薄板形態を有する。図4および図5に示すように、軸突起切欠き部58は、ロータ薄板74の製造中に選択された(80として表す)角度で中心からオフセットされるように形成される。』との記載に基づくものでありますので、新規事項を導入するものではないと思料致します。 すなわち、図4は軸突起切欠き部(58)の径方向の最大長さが、複数の薄板(30)の径方向の最大長さの約53%である実施例を示しております。」 しかし、請求人が主張する段落[0031]には、軸突起切欠き部(58)の径方向の最大長さを、複数の薄板(30)の径方向の最大長さの60%未満であるとする点は記載されておらず、当初明細書等の他の段落にも何ら記載されていない。また、図4に関し当初明細書等には、「図面は、本発明を実施するために現在考えられる好ましい実施形態を例示する。」(段落[0014])及び「【図4】本発明の例示的な実施形態に係る図3のIPM機械に使用する、中心から第1の方向に角度的にオフセットされた軸突起切欠き部が形成されたロータ薄板の図である。」(段落[0015])と記載されている。そして、「一般に、特許出願の願書に添付される図面は、明細書を補完し、特許を受けようとする発明に係る技術内容を当業者に理解させるための説明図であるから、当該発明の技術内容を理解するために必要な程度の正確さを備えていれば足り、当該図面に表示された寸法については、必ずしも厳密な正確さが要求されるものではない。」(知財高判平成25年10月30日 平成25年(行ケ)10015号)とされている。 以上から、図4は、本願発明を実施するために現在考えられる好ましい実施形態を例示する図にすぎず、図4が、薄板の長さに対する軸突起切欠き部の径方向の最大長さを厳密に特定できるほどの正確さを有したものとは認めらない。したがって、図4及び段落[0031]を根拠として、「図4は軸突起切欠き部(58)の径方向の最大長さが、複数の薄板(30)の径方向の最大長さの約53%である」と図4を把握し、この把握に基づき特定された「前記軸突起切欠き部(58)の径方向の最大長さが、前記複数の薄板(30)の径方向の最大長さの60%未満である」という事項は、当初明細書等に記載されたものではなく、また当初明細書等の記載から自明な事項でもないから、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を 導入しないものとはいえない。 よって、請求項1、6及び8についての本願補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 3 当審の判断 令和3年3月11日提出の手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1、6及び8には、「前記軸突起切欠き部(58)の径方向の最大長さが、前記複数の薄板(30)の径方向の最大長さの60%未満である」事項が記載されている。そして、前記第2[理由]2で検討したとおり、当該事項は、当初明細書等に記載されたものではなく、また当初明細書等の記載から自明な事項でもないから、令和3年3月11日提出の手続補正書でした補正は、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものとはいえない。 第4 むすび 以上のとおり、令和3年3月11日提出の手続補正書でした補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。よって、この出願は拒絶をすべきものである。 したがって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。 審判長 柿崎 拓 出訴期間として在外者に対し90日を附加する。 |
審理終結日 | 2021-09-01 |
結審通知日 | 2021-09-07 |
審決日 | 2021-09-29 |
出願番号 | P2014-158297 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H02K)
P 1 8・ 55- WZ (H02K) |
最終処分 | 02 不成立 |
特許庁審判長 |
柿崎 拓 |
特許庁審判官 |
関口 哲生 岡澤 洋 |
発明の名称 | トルクリップルが低減されたスポーク永久磁石機械およびその製造方法 |
代理人 | 黒川 俊久 |
代理人 | 小倉 博 |